JP4477575B2 - 大腸がんの検査に使用する遺伝子セット - Google Patents

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Description

本発明は、早期大腸がんの検査方法に関する。より詳しくは、サンプル中(血液、便など)の特定遺伝子セットの発現量を指標とした大腸がん細胞のスクリーニング方法とそのためのプライマー、プローブ、固相化試料等に関する。
日本人のがん死亡の原因で最も多いのは胃がんである。しかし、近年胃がんは減少傾向にあり、それに代って増加傾向の著しいのが大腸がんである。全がん死亡者の中にしめる大腸がんの割合は、1955年から年々確実に増えており、21世紀には死亡者数は胃がんを抜いてトップになるともいわれている。
一方で、大腸がんは進行が比較的緩やかであり、進行がんでも治癒切除が完全に行なわれれば予後は比較的良好であり、Dukes A, Dukes B, Dukes Cそれぞれの5年生存率は 95%、80%、50〜60%とされている。しかし、かなり進行するまで自覚症状が少なく確定診断時にすでに転移や浸潤などを起こして切除不可能な場合も少なくない。このため、早期発見が強く求められている。(参考:国立がんセンター がんの統計)
現在、大腸がんの検診には主に便潜血反応という方法が用いられている。便潜血検査とは血液中のヘモグロビンを化学的に測定し、肉眼ではそれとは認識できない大腸の内腔表面からの出血を検出する方法である。この方法は非常に鋭敏で、便に血液がごく微量混じっているだけでも検出が可能である。しかしながら、化学的便潜血反応は、感度は良いが、ヒトのヘモグロビンに特異的ではなく、食物として食べた肉や緑色野菜、薬物などとも反応して偽陽性が見られるため、検査前には厳密な食事制限を必要とする。
さらに近年、抗体を用いて便中のヒトヘモグロビンを特異的に検出する免疫学的便潜血反応という手法が開発され、この方法が実際の検査に現在用いられている。免疫学的便潜血反応は、便中のヒトヘモグロビンを特異的に検出するが、ヘモグロビンは便中では壊れやすいため、免疫法では壊れたヘモグロビンは測定できないという問題がある。
また、この方法における陽性率は進行がんでは90%であるが、早期がんと進行がんをあわせた全ステージでは50%に過ぎない(非特許文献2参照)。すなわち、大腸がん患者の2人に1人は見逃される可能性がある。また、出血を確認する検査方法であるためがん以外の痔でも陽性になり、陽性反応が出た人の中で実際に大腸がんである確率(陽性的中率)は約1〜2%程度でしかない(非特許文献3参照)。さらに、偽陽性率(健常人が陽性になる確率)は5〜10%であり、更なる改善が望まれている。
これに対し、腫瘍マーカーによる診断方法も提案されている。大腸がんの腫瘍マーカーとしては、Carcinoembryonic antigen (CEA)、CA19-9、NCC-ST-439、STNなどがあるが、治療効果の判定や再発のモニターとして用いられている(非特許文献1参照)。便中のDNA(K-RAS、P53、APCなど)のmutationをターゲットにする方法も研究されている。しかしながら、便中のDNA(K-RAS、P53、APCなど)のmutationをターゲットにする方法は、実用化へのハードルが高く、まだ研究段階である。
腫瘍マーカーによる方法においてすら、病期別腫瘍マーカー陽性率は治癒切除可能なDukes Cにおいても、CEA、CA19-9、NCC-ST-439、STNで各々36%、30%、35%、21%にすぎず、早期大腸がんの発見に関して十分な腫瘍マーカーであるとはいえないものであった(非特許文献1参照)。
大倉久直他 大腸がんの腫瘍マーカー、CRC1(4)、42-47、1992 Launoy G et al., Int. J. Cancer, 1997, 73: 220-224 Jack SM, et al., N. Engl. J. Med., 2000, 343(22):1603-1607
本発明の課題は、従来の方法に比べて高精度に大腸がん患者を検出することが可能な大腸がんの早期診断方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明者らは検討を重ねた結果、大腸がん細胞において高い関連性を有する遺伝子57種を特定し、これらの発現レベルを測定することにより、高精度に大腸がん患者を検出できることを見出した。
そして、これら遺伝子の発現レベルを調べるためのプローブとして、各遺伝子に特異的な部分塩基配列を特定した。また、各遺伝子を極微量な検体RNA中から特異的に増幅するためのプライマーを設計した。
さらに、上記プローブを固相化した担体を作製し、マルチプレックスRT-PCR(1本のチューブで複数のcDNAをPCRで増幅する)で標識した遺伝子と作用させることにより、同時に複数の遺伝子の発現レベルが測定可能な方法も開発した。
すなわち、本発明は、表1および表30記載の遺伝子群から選択される少なくとも2種以上の遺伝子または遺伝子産物の発現量を解析することにより、検体中の大腸がん細胞をスクリーニングする方法を提供する。
表1記載の遺伝子群のうち、特に、表26、表28、表30に記載の遺伝子は、痔と大腸がんを区別することができる遺伝子であって、たとえ検体中に血液が含まれていたとしても、がん細胞の有無をスクリーニングすることができる好適な遺伝子である。
本発明において、遺伝子の発現量は、検体中のmRNA量を測定することによって解析でき、遺伝子産物の発現量は該遺伝子産物に対する抗体を用いて解析できる。また、検体としては、被験者より得た便のスメア等を用いることができる。便のスメアを用いる場合、便(大便)中に剥離した大腸がん細胞中における各遺伝子の発現レベルを測定するために、まず採取された自然排出便に、室温でバッファーを添加した試料を準備し、不純物を除去する。そして、不純物が除去された検体中のがん細胞を固相担体に吸着させ、この吸着したがん細胞を回収する。これにより、便中に剥離してきた大腸がん細胞を生きたまま効率的に回収することが可能となる。
表28および表30に記載の遺伝子は便中に剥離した微量の大腸がん細胞の有無をスクリーニングするのに特に好適な遺伝子である。
上記の大腸がん細胞のスクリーニングにより被験者の大腸がん、特に早期大腸がんを簡便に検査・診断することができる。本発明はそのようなin vitroでの大腸がんの検査方法も提供する。
さらに本発明は、表1および表30から選ばれるいずれか1の遺伝子を特異的に増幅するためのプライマー、表1および表30から選ばれるいずれか1の遺伝子に特異的にハイブリダイズし、該遺伝子を検出するためのプローブ、ならびに該プローブを固相担体上に固定化した固相化試料を提供する。これらのプライマーとプローブおよび/または固相化試料は、表1および表30記載の遺伝子検出用キットとして、大腸がんの検査に利用できる。
本発明は、表1記載の50遺伝子から選ばれる少なくとも2種以上の遺伝子からなる大腸がん検査用遺伝子セット(遺伝子マーカーセット)、および表30記載の7遺伝子から選ばれる少なくとも2種以上の遺伝子からなる大腸がん検査用遺伝子セットと、これら遺伝子の発現を解析するためのプライマー、プローブ、および固相化試料を提供する。本発明によれば、検体中より前記遺伝子の発現を同時解析できるため、簡便な大腸がんの早期診断が可能となる。
以下、本発明について詳細に説明するが、いずれの記述も本発明内容を好適に実施するための一例であり、本発明による他の実施形態を制限するものではない。
本発明による大腸がんの診断に有用な情報を提供するため、大腸がん組織で発現が高く、正常大腸粘膜で発現がないか極めて低いと判断された遺伝子50種を各種の発現解析により選び出した。
市販のマイクロアレイにより、早期大腸がん組織、進行大腸がん組織、および正常大腸粘膜について、約39000遺伝子の発現プロファイルを取得した。これらの結果と公共のデータベースとを用いて50遺伝子を選抜した(表1)。このうち、大腸粘膜、抹消血では検出されず、早期大腸がん(Dukes A, B)で強く発現し、進行大腸がん(Dukes C, D)でも発現が検出されるものが30遺伝子、進行大腸がんで強く発現し、早期大腸がんでも発現が検出されるものが16遺伝子、全ステージのがん(Dukes A-D)で強く発現するものが4遺伝子であった。
さらにRT-PCRによって、早期大腸がん(22症例の混合試料)と進行大腸がん(8症例の混合試料)との両方もしくはどちらかで陽性、かつ抹消血で陰性であることが確認できる15遺伝子を選抜した(表26)。これら15種の遺伝子は、nested PCR(内外2組のプライマーによって、2回行う高サイクルPCR)を行っても陰性であり、痔と大腸がんを区別することができる遺伝子である。すなわち、これらの遺伝子の発現を指標とすることにより、たとえ検体中に血液が含まれていたとしても、がん細胞の有無をスクリーニングすることができる。
また、大腸がん患者及び健常者の便から得られた細胞についても市販のマイクロアレイによる解析、RT-PCRを行い、がん細胞の有無をスクリーニングすることができる7遺伝子(表30)を選抜した。表28及び表30に記載の遺伝子は便から得られた細胞中のがん細胞を非常に好適にスクリーニングすることができる。
本発明によるスクリーニング方法は、上記表1、表26、表28または表30に記載の遺伝子セットを用いて大腸がんのスクリーニングを行う。スクリーニングは遺伝子セットから選択した2以上の遺伝子の発現量を測定することによって行なう。遺伝子の発現量は、検体サンプル中のmRNA量を測定しても良いし、該遺伝子産物である蛋白を免疫染色やELISAを用いて検出しても良い。
表1、表26、表28および表30に記載の遺伝子に対し、各遺伝子を特異的に検出するためのプローブの好適な塩基配列の一例は、それぞれ配列番号1〜50、および151〜157に示される。各プローブはいずれも各遺伝子の塩基配列の部分配列を有しているが、他の遺伝子由来の部分配列に対して非特異的なハイブリダイゼーションがなるべく起こらないよう設計されている。プローブはいずれも塩基長が50〜60merの鎖長である。プローブは、複数のプローブを同時に用いてハイブリダイゼーションを行うことを想定して、プローブ間で互いにTm値等が大きく異ならないよう調整している。ただし、所望の効果を失わない程度であれば、検出対象遺伝子の塩基配列を参照し、適宜塩基長を加減して用いることも可能である。また、対応する遺伝子への特異性を失わない範囲であれば、各プローブは配列番号1〜50、および151〜157に示される塩基配列に対して、1もしくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列を有するように設計してもよい。
また、検体(例えば人の便)から得られた細胞より抽出した核酸、例えばDNAは二本鎖DNAとして、プローブとハイブリダイゼーションさせることもあるため、そのような場合に用いるプローブの配列は、表1に示す塩基配列の相補配列であっても構わない。本発明のスクリーニング方法では、これらのプローブから選択される2種以上をセットとして用いる。すなわち、本発明は、表1に記載の遺伝子から選ばれる2種以上の遺伝子を検出可能なプローブセットを提供する。さらに、表30に記載の遺伝子から選ばれる2種以上の遺伝子を検出可能なプローブセットを提供する。
本発明のプローブは特異性が高く、検出対象の遺伝子と一対一で厳密に対応しているため、クロスハイブリダイゼーションを生じることなく、複数種のプローブを、同時に使用することができる。本発明のプローブは、液相、固相を問わず使用可能であるが、複数遺伝子の同時検出という点では、物理的に隔離された担体上に各プローブを固定して用いる方が好ましい。
固相で使用する場合、プローブの固相化方法は特に限定されず、吸着、イオン結合、共有結合など、公知の固定化方法を適宜用いることができる。この場合、プローブをより強固に結合させるために、検体とプローブのハイブリダイゼーションを大きく損なわない範囲でプローブに化学的な修飾を施し、その修飾残基を利用して結合させてもよい。そのような化学修飾方法としては、5’末端にアミノ基を導入する方法、チオール基を導入する方法、ビオチンを修飾する方法などが挙げられる。
固相化する担体の形態は、平面基板、ビーズ、繊維など特に限定されず、またその材質も、金属、ガラス、ポリマーなど、特に限定されない。
固相化試料の好適な例として、高感度に複数遺伝子を同時検出可能なDNAマイクロアレイを挙げることができる。DNAマイクロアレイとは、平面基板の表面に複数種のプローブが高密度にアレイ状に並んだ核酸検出のためのデバイスである。DNAマイクロアレイの作製には、公知の種々の方法を用いることができる。その中でも、固相担体としてガラスを用い、これをアミノ基が導入可能なアミノシランカップリング剤で処理し、さらにEMCS等によりマレイミド基をその表面に導入したのち、5’末端にチオール基を修飾したオリゴヌクレオチドプローブとマレイミド基を反応させれば、全て共有結合によりプローブをガラス表面に導入することが可能である。
担体がガラス基板など平面状の担体である場合、プローブをその表面に供給する手段としてはピペッティング等が代表的であるが、より少量のプローブ溶液を高密度に供給するために、バブルジェット方式やピエゾ方式などインクジェット法を用いた溶液供給方法が好適に用いられる。
本発明のスクリーニング方法において、検体は、検出のための標識化と、感度を高めるための増幅の、主として2つの事前処理を施す。ただし、プローブとのハイブリダイゼーションを行ったのちにプローブとサンプル検体のハイブリダイゼーションを別途検出する手段がある場合には標識化は必ずしも必要が無く、また検体中に検出対象物が多く存在する場合には増幅は必ずしも必要ではない。
検体RNAは一般に微量(サブマイクログラム)であることが多いため、通常増幅工程が必要とされる。増幅方法としては、in vitro transcription反応やRT-PCR反応が一般的に用いられる。このうちRT-PCRによる増幅では、増幅したい領域、すなわち各遺伝子の核酸塩基配列中、プローブが設定されている領域を挟み込む2つのプライマーを的確に設定する必要がある。そこで本発明で選抜された表1、表26、表28および表30に記載された各遺伝子に対し、これらを特異的に増幅可能なプライマーを設計した。各プライマーの塩基配列の好適な一例は配列番号51〜150、および158〜171に示される。プライマーは、プローブと同様、複数遺伝子の同時増幅を想定して、プライマー間で互いにTm値等が大きく異ならないように調整されているが、所望の特異性や増幅率を損なわない範囲であれば塩基配列の加減は可能である。塩基配列の加減は5’末端、3’末端若しくはその両方に1若しくは数個の塩基を加減することにより行われる。
検体RNAの標識化は、上記増幅工程中において標識化した基質を用いることにより容易に実施可能である。あるいは、プライマー自体をあらかじめ標識しておく方法や、増幅工程後に、得られた検体中の特定の官能基に対し、化学的あるいは酵素的手法で標識物質を結合させる方法によっても可能である。標識方法としては、例えば、蛍光標識、放射性標識、酵素標識等の公知のいずれの標識方法を用いてもよい。
PCR反応は、本発明のプライマーは遺伝子に対する特異性が高く、複数種を組み合わせて使うことが可能であり、必要に応じて組み合わせたプライマーセットとして検体RNAを鋳型としたRT-PCRに用いることができる。
また、これらのプライマーセットを上記固相化試料、例えば、DNAマイクロアレイと組み合わせることで、特定の遺伝子を検出するためのキットとして利用することが可能である。もちろん、プライマーセットのみでも、適当なバッファー溶液に希釈して、遺伝子検出キットとして利用できる。
本発明で選抜された遺伝子は、大腸がん細胞と強い相関を有するため、その発現レベルを測定することにより、大腸がん細胞のスクリーニングを行うことが出来る。特に本発明のプローブを用いて測定された遺伝子の発現プロファイルは、大腸がんの早期診断に好適に用いることが可能である。
本発明の方法は、標識されたプローブの蛍光強度や放射線強度により、各遺伝子の発現レベルを高感度に測定することができる。測定にあたっては、各プローブ、検体ごとにしかるべき規格化を行い、各検体間で比較可能な予後判定を行うことで、より精度の高い判定が可能になる。例えば検体ごとにRNAの回収量に差がある場合には、細胞ごとに一定量の発現が知られているハウスキーピング遺伝子(例えばベータアクチン)などの発現量との比較を行うことで、その回収量の補正を行うことが可能である。また、一定濃度の検体に対する結合力がプローブごとに異なる場合には、人工的に合成した既知濃度の合成検体に対する輝度値などから検量グラフ(検量線)を作成し、その値を参照してサンプル検体中に含まれる検出対象遺伝子の発現レベルを測定する。その測定結果を参考に判定を行うことで、より精度の高い判定が可能となる。
なお、本発明にかかるプローブ、プライマー、固相化試料、ならびにこれらを用いた遺伝子検出方法は、上記の通り、大腸がんの診断に好適に用いることができる。しかし他の目的や検体についても、これらは、表1、表26、表28および表30に記載の遺伝子の検出に好適に利用することができる。
大腸がん細胞のスクリーニングは、上記のような遺伝子(mRNA)の解析のほか、表1記載の遺伝子の翻訳産物である蛋白の発現量を解析することによっても実施可能である。遺伝子産物である蛋白の発現量の解析は、当該蛋白に特異的な抗体を用いて、ウェスタンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法、ELISA法、およびRIA法などの周知の方法によって実施できる。
以下、具体的な実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1 (選抜工程1)大腸がんスクリーニングのためのマーカー遺伝子の第1次選抜
(1)total RNAの抽出
末梢血、正常大腸粘膜6症例、早期大腸がん組織(Dukes A, B)6症例および進行大腸がん組織(Dukes C, D)19症例を採取し、total RNAの回収を行った。total RNAの回収は常法に従い、以下に示す方法で行った。
まず、各組織を破砕し(末梢血はそのまま用いた)、株式会社 ニッポンジーン社製ISOGENを加えてホモジナイズし、少量のクロロホルムを入れ、8000rpmで15分間遠心分離させる。上清を採取し、採取量と等量のイソプロパノールを加え、15分以上室温でインキュベートした後、15000rpmで15分間遠心して、ペレットに回収する。そして、エタノール沈殿(70%)によりtotal RNAを得た。
(2)マイクロアレイによる約39000遺伝子の発現プロファイルの取得とマーカー遺伝子の選抜
大腸がん患者の便に含まれる細菌以外の生細胞は、少量のがん細胞、リンパ球、赤血球、肛門扁平上皮細胞であり、大腸粘膜から脱落する細胞には、生細胞は含まれないと考えられている。一方、健常人(ただし痔の人を含む)の便には、リンパ球、赤血球、肛門扁平上皮細胞が含まれる。したがって、早期および進行大腸がんのほとんどの症例で発現し、末梢血および扁平上皮細胞で発現しない遺伝子は、便からの大腸がんスクリーニングの良いマーカーとなりうる。脱落大腸粘膜中に含まれるごく僅かな生細胞の存在を考慮し、大腸正常粘膜で発現しないという条件をさらに加えて、マーカー候補の絞り込みを行った。絞り込みは、マイクロアレイを用いたゲノム網羅的遺伝子発現解析によって行った。
マイクロアレイは、human U133 oligonucleotide probe arrays (Affymetrix社、米国)を用い、製造会社の推奨する方法にしたがって行った。以下、これについて簡単に記述する。5 μg の total RNA からT7RNApolymeraseのプロモーターを有するcDNAを合成後、 T7-transcription法によってビオチン化cRNAプローブを作製した。次に、化学的に切断した10μg のcRNA をマイクロアレイと45 ℃、16 時間反応させた。アレイは 6xSSPEで 25 ℃で洗浄し、さらに二次洗浄液 (100 mM MES (pH6.7), 0.1 M NaCl, and 0.01% Tween 20) で50 ℃で洗浄した。次に、再会合した分子をstreptavidin phycoerythrin (Molecular Probes)で染色後、6xSSPEで洗浄し、さらにbiotinylated anti-streptavidin IgGを反応させ、streptavidin phycoerythrin で再度染色し、6xSSPEで洗浄した。マイクロアレイ上のシグナルは GeneArray scanner (Affymetrix)を用いて3μmの解像度で読み込み、その強度をコンピュータソフトMicroarray Suite 5.0 (Affymetrix)を用いて解析した。
遺伝子発現量の解析はMicrosoft Excel を用いた。上記全ての大腸がん症例で検出され、大腸正常粘膜および末梢血で検出されない遺伝子を選抜した結果、50種の遺伝子が選ばれた(表1)。これら50遺伝子は、公共のデータベース(SBM DB: http://www.lsbm.org/db/index.html)で調査した結果、皮膚や子宮頚部の扁平上皮細胞での発現は極めて低いものであった。したがって、これら50遺伝子の全ては、大腸がんスクリーニングのマーカーとして発明者らが考えた条件を満たしている。これら50遺伝子について、表1および表2に示すような特異的プローブとプライマーを設計した。
Figure 0004477575
Figure 0004477575
実施例2 50選抜遺伝子のPCR条件の至適化
(1)逆転写(1st strandの合成)
実施例1で得られた進行大腸がん組織のtotal RNA のうち5μgを、Invitrogen社製 SUPER SCRIPT Choice Systemを用いてランダムヘキサマープライマーによる逆転写を行った。具体的には下記の方法で行った。
total RNAを10μg/10μlとなるように調製し、これにランダムヘキサマープライマー1μlを加え、68℃で10分間保温し熱変性させる。氷上にて2分以上置き急冷させた後、表3に示した通りに試薬を加えて、25℃10分間、42℃60分、68℃15分で保温した。その後急冷してスピンダウンした後、RNase H 1μlを加え、37℃で20分保った。こうして、1st strand cDNA溶液約20μlを回収した。
Figure 0004477575
(2)PCR増幅
回収された1st strand cDNA溶液をテンプレートとして、表1に記載の50遺伝子に関し、PCR増幅を行なった。各PCR反応は、テンプレートとして(1)で合成した大腸がん組織の1st strand cDNA溶液を3倍に希釈したものを用い、プライマーとして表2に記載のプライマーセットを用いた。PCR反応液は、タカラバイオ株式会社製PCR酵素、TaKaRa Ex Taqを用い、表4に示す組成で調製した。
Figure 0004477575
調製された反応液について、市販のサーマルサイクラーを用いて、表5の温度サイクル・プロトコルに従って、PCR増幅反応を行った。終了後の反応液は4℃で保存した。
Figure 0004477575
(3)電気泳動
得られた各PCR産物から10μlを用いて1.5%アガロースゲル電気泳動を行い、EtBr溶液で染色した。その結果、各PCR産物とも表2に示す所望の鎖長において1本の濃いバンドが検出され、主な産物は1種であることがわかった。
以上(1)から(3)の実験により、大腸がん細胞から常法に従ってtotal RNAを抽出し、設計したプライマーを用いてRT-PCRを行うことにより、目的とする増幅領域の増幅が確認できた。
実施例3 (選抜工程2) 50遺伝子のRT-PCRによる第2次選抜
便から上皮細胞特異的抗体(Dynabeads Epithelial Enrich、ダイナル社)を用いたMACS(Magnetic cell sorting)で分離した細胞(実施例6の1で詳細に記述)にはリンパ球や赤血球はほとんど含まれない。よって、選抜工程1で選ばれた50遺伝子は、この分離細胞による大腸がんスクリーニングに有効な遺伝子である。一方、便から直接RNAを抽出してスクリーニングするためには、リンパ球や赤血球では全く検出されない遺伝子を再選抜する必要がある。
そこで、実施例1と同様に、別の22症例のDukes A, B、8症例のDukes C, Dおよび末梢血からtotal RNAを抽出し、以下の方法でRT-PCRを行い50遺伝子の特徴を把握した。
(1)逆転写反応 (1本鎖cDNA合成)
得られたtotal RNA のうち5μgを、Invitrogen社製 SUPER SCRIPT Choice Systemを用いてランダムヘキサマープライマーによる逆転写を行った。具体的には下記の方法で行った。
total RNAを10μg/10μlとなるように調製し、これにランダムヘキサマープライマー1μlを加え、68℃で10分間保温し熱変性させる。氷上にて2分以上置き急冷させた後、前述の表3に示した試薬を加えて、25℃10分、42℃60分、68℃15分で保温した。その後、急冷してスピンダウンした後、RNase H 1μlを加え、37℃で20分間保った。こうして、1st strand cDNA溶液約20μlを回収した。
(2)PCR増幅
回収された1st strand cDNA溶液をテンプレートとして、表1に記載の50遺伝子に関し、PCR増幅を行った。各PCR反応は、テンプレートとして(1)で回収した大腸がん細胞の1st strand cDNA溶液を3倍に希釈したものを用い、プライマーとして表2に記載のプライマーセットを用いた。
PCR反応はタカラバイオ株式会社製PCRキットTaKaRa Ex Taqを用い、前記表4に示した反応液を調製した。調製された反応液について、市販のサーマルサイクラーを用いて、前記表5の温度サイクル・プロトコルに従って、PCR増幅反応を行った。PCR終了後の反応液は4℃で保存した。
(3)電気泳動
得られた各PCR産物の10μlを用いて1.5%アガロースゲル電気泳動を行い、EtBr溶液で染色した。
(4)実験結果
50遺伝子のうち、末梢血で検出されなかった遺伝子は、15種(遺伝子No. 1, 2, 6, 8, 10, 11, 25, 30, 37, 38, 40, 41, 42, 46, 50)であった。そのうち代表的な遺伝子として、No. 1, 2, 6, 10, 11, 30, 42の電気泳動の結果を、図1に示した。また表6に全15遺伝子の30症例の大腸がん組織における発現の有無を示した。早期がん(Dukes A, B)でも進行がん(Dukes C, D)でも、70〜100%の症例で発現が認められ、どの症例も複数(7〜15種)の遺伝子の発現を認めた。
これら15種の遺伝子は、PCR 30サイクルの後、さらに20サイクル行っても末梢血では検出できなかったことから、痔と大腸がんを区別できるマーカー遺伝子であると結論した。なお、上記15遺伝子とそのプローブおよびプライマーは、表26および表27にまとめて示す。
Figure 0004477575
実施例4 DNAマイクロアレイによる発現解析
I.DNAマイクロアレイの作製
(1)ガラス基板の洗浄
合成石英のガラス基板(サイズ(W×L×T):25mm×75mm×1mm、飯山特殊ガラス社製)を耐熱、耐アルカリ性のラックに入れ、所定の濃度に調製した超音波洗浄用の洗浄液に浸した。一晩、洗浄液中で浸した後、20分間超音波洗浄を行った。続いて、ガラス基板を取り出し、軽く純水で漱いだ後、超純水中で20分超音波洗浄を行った。次に、80℃に加熱した1N水酸化ナトリウム水溶液中に10分間、ガラス基板を浸した。再び、純水洗浄と超純水洗浄を行い、DNAチップ用の洗浄済石英ガラス基板を用意した。
(2)表面処理
シランカップリング剤KBM-603(信越シリコーン社製)を、1%の濃度となるように純水中に溶解させ、2時間室温で攪拌した。続いて、洗浄済石英ガラス基板を、このシランカップリング剤水溶液に浸し、20分間室温で放置した。ガラス基板を引き上げ、軽く純水で表面を洗浄した後、ガラス基板の両面に窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。次に、窒素ブロー乾燥したガラス基板を、120℃に加熱したオーブン中で1時間ベークし、カップリング剤処理を完結させた。このカップリング剤処理により、ガラス基板表面に、シランカップリング剤由来のアミノ基が導入された。
一方、同仁化学研究所社製のN-マレイミドカプロイロキシスクシイミド(N-(6-Maleimidocaproyloxy)succinimido);以下、EMCSと略す)を、ジメチルスルホキシドとエタノールの1:1混合溶媒中に最終濃度が0.3mg/mlとなるように溶解したEMCS溶液を用意した。ベーク終了後、カップリング剤処理済ガラス基板を放冷し、調製したEMCS溶液中に室温で2時間浸した。この浸漬処理間に、カップリング剤処理済ガラス基板の表面に導入されているアミノ基と、EMCSのスクシイミド基とが反応し、ガラス基板表面にEMCS由来のマレイミド基が導入された。EMCS溶液から引き上げたガラス基板を、先述のジメチルスルホキシドとエタノールの混合溶媒を用いて洗浄し、さらに、エタノールにより洗浄した後、窒素ガス雰囲気下で乾燥させた。
(3)プローブDNAの合成
表1に示した50遺伝子を検出するためのプローブDNA(配列番号1〜50)をそれぞれ合成した。
プローブDNAは、上記の表面にマレイミド基が導入されガラス基板に対して共有結合させるため、常法に従って、5’末端にチオール化処理を施した。その後、DNA合成時における副反応を避けるために、保護基を脱保護し、さらにHPLC精製および脱塩処理を施した。
得られたプローブDNAは、純水に溶解し、それぞれ、最終濃度(インク溶解時)10μMとなるように分注した後、凍結乾燥を行い、水分を除いた。
(4)BJプリンターによるプローブDNA吐出、および基板表面への結合
グリセリン7.5wt%、チオジグリコール7.5wt%、尿素7.5wt%、アセチレノールEH(川研ファインケミカル社製)1.0wt%を含む水溶液を用意した。続いて、分注したプローブDNAを上記の混合溶媒に規定濃度(10μM)となるように溶解した。得られたプローブDNA溶液を、バブルジェットプリンター(商品名:BJF-850 キヤノン社製)用インクタンクに充填し、印字ヘッドに装着した。
なお、前記バブルジェットプリンターは、平板へのインクジェット印刷が可能なように改造を施したものである。また、該改造バブルジェットプリンターは、所定のファイル作成方法に従って印字パターンを入力することにより、約5plのDNA溶液液滴を、約190μmピッチでスポッティングすることが可能となっている。
続いて、この改造バブルジェットプリンターを用いて、ガラス基板表面に、プローブDNA溶液のスポッティング操作をおこなった。DNAマイクロアレイ1枚あたり、各プローブごとに16スポットの吐出が行われるよう印字のパターンを予め作成し、インクジェット印字した。目的のパターンにDNA溶液のスポッティングが確実に行われていることを拡大鏡等により確認した後、30分間常温で加湿チャンバー内に静置し、ガラス基板表面のマレイミド基とプローブDNA5’末端のスルファニル基(-SH)とを反応させた。
(5)洗浄
加湿チャンバー内における30分間の反応後、100mMのNaClを含む10mMのリン酸緩衝液(pH7.0)により、ガラス基板表面に残った未反応のプローブDNAを洗い流した。ガラス基板表面に、各DNAチップ当たり16スポットに所定の一本鎖プローブDNAが、それぞれ固定された、DANマイクロアレイ型DNAチップを得た。
II.ハイブリダイゼーション反応
(1)検体の増幅と標識化(取り込み標識によるPCR増幅)
検体としては、実施例1で合成した1st strand cDNA溶液を用いた。1st strand cDNA溶液をテンプレートとして、表1に記載の50遺伝子のうち、表9に示す10遺伝子に関し、それぞれ取り込み標識によるPCR増幅を行なった。プライマーとしては表2に記載のプライマーセットを用いた。PCR反応はタカラバイオ株式会社製PCR酵素TaKaRa Ex Taqを用い、表7に示す反応液の調製によって行った。なお、dNTPの最終濃度は、200μMになるように調製した。
Figure 0004477575
調製された反応液について、市販のサーマルサイクラーを用いて、前記表5の温度サイクル・プロトコルに従って、PCR増幅反応を行った。終了後の反応液は4℃で保存した。
反応終了後、精製用カラム(QIAGEN社製 QIAquick PCR Purification Kit)を用いて精製し、50μlの蒸留水で溶出した後、精製物を標識化検体とした。
Iで作製したDNAマイクロアレイと、これらの標識化検体10種を用いて、マイクロアレイ上でのハイブリダイゼーションを行った。
(2)DNAマイクロアレイのブロッキング
BSA(牛血清アルブミンFraction V:Sigma社製)を1wt%となるように、100mM NaCl/10mM Phosphate Bufferに溶解し、この溶液にIIで作製したDNAマイクロアレイを室温で2時間浸し、ガラス基板面のブロッキングを行った。ブロッキング終了後、0.1wt%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を含む0.1×SSC溶液(NaCl 15mM、Sodium Citrate(trisodium citrate dihydrate,C6H5Na3・2H2O) 1.5mM、p.H. 7.0)で洗浄を行った後、純水でリンスした。その後、スピン・ドライ装置でDNAマイクロアレイの水切りを行った。
(3)ハイブリダイゼーション溶液の調製
最終濃度が6×SSPE/10% Form amide/PCR増幅産物溶液(6×SSPE: NaCl 900mM、NaH2PO4・H2O 60mM、EDTA 6mM、p.H. 7.4)となるよう、各PCR産物に対しハイブリダイゼーション溶液を調製した。なお、各PCR増幅産物溶液はそれぞれ精製物の約半量である25.0μl使用した。
(4)ハイブリダイゼーション
水切りしたDNAチップを、ハイブリダイゼーション装置(Genomic Solutions Inc. Hybridization Station)にセットし、上記組成のハイブリダイゼーション溶液を用いて、表8に示す手順・条件でハイブリダイゼーション反応を行った。
Figure 0004477575
(5)蛍光測定
ハイブリダイゼーション反応終了後、スピン・ドライ乾燥したDNAチップについて、DNAマイクロアレイ用蛍光検出装置(Axon社製、Genepix 4000B)を用いて、ハイブリッド体に由来する蛍光測定を行った。蛍光輝度を測定した結果を表9に示す。
輝度の算出にあたっては、各スポットからの見掛けの蛍光強度より、バックグランド値を差し引いた値を、蛍光強度の実測値とし、16個のスポットの平均値を算出し、これを蛍光輝度値とした。なお、DNAチップ上の、プローブDNAのスポットの無い部分において観測される蛍光強度をバックグランド値とした。
この結果から明らかなように、各遺伝子の発現が十分なシグナル値をもって測定可能であることが示された。同様な実験を他の遺伝子についても同様に行い、全てのプローブ、プライマーで、特異的かつ高感度に対象とする遺伝子の発現の解析が可能であることが示された。
Figure 0004477575
実施例5 マルチプレックスRT-PCRによって増幅した遺伝子のDNAマイクロアレイによる発現解析
(1)検体の増幅と標識化(取り込み標識によるマルチプレックスPCR増幅)
検体としては、大腸進行がん患者より大腸がん組織、正常大腸粘膜、および血液を採取した。それぞれについて、実施例1および実施例2で示した手法でtotal RNAの回収、1st strandの合成を行なった。なお、ここでも個人差をなくすために7人の患者から採取したものを混合した。得られた1st strandcDNA溶液を検体とした遺伝子の増幅、および、標識化反応を以下に示す。本実施例においては、実施例4で選択した遺伝子10種を検出対象とし、プライマーに関しては、10種すべてのプライマーを1本のPCRチューブ中に添加、すなわちマルチプレックスPCRを行った。基質としては実施例4と同様にCy3-dUTPを添加し、PCR産物の標識化を行った。PCR反応の溶液組成は表10に示した通りである。
Figure 0004477575
調製された反応液について、市販のサーマルサイクラーを用いて、実施例2で記載した、表5の温度サイクル・プロトコルに従って、PCR増幅反応を行った。終了後の反応液は4℃で保存した。
反応終了後、精製用カラム(QIAGEN社製 QIAquick PCR Purification Kit)を用いて精製し、50μlの蒸留水で溶出した後、精製物を標識化検体とした。 実施例4のIで作製したDNAマイクロアレイと、これらの標識化検体3種を用いて、実施例4で示した方法で、マイクロアレイ上でのハイブリダイゼーションを行った。各プローブに対する蛍光輝度値を表11に示す。
Figure 0004477575
この結果から明らかなように、マルチプレックスPCRによる検体調整を行っても、各遺伝子の発現が十分なシグナル値をもって測定可能であることが示された。
また、各遺伝子とも大腸がんで強く発現し、正常組織では発現量が少なく、血液ではほとんど発現していないか大腸がん細胞の場合とは蛍光輝度値に差があり、検体に血液が混入していても大腸がんの診断が可能であることが確認された。
実施例6 大腸がん患者便から分離した細胞を用いたRT-PCR解析
5種の遺伝子(No. 1, 2, 6, 38, 50それぞれPAP, REG1A, DPEP1, MET, REG1B)についての7人の健常人および25人の大腸がん患者の便から分離した細胞RNAを用いてRT-PCRの解析を行った。なお、上記5遺伝子とそのプローブおよびプライマーは、表28および表29にまとめて示す。
(1)便からの細胞分離
手術前の大腸がん患者由来便を検体として使用した。便の使用に関しては事前に被験者へ実験内容の説明を行い、同意を得た。
便(約5〜80g)が入ったストマッカーバッグに200mlの10%FBS含有Hanks液(ニッスイ)を入れ、シールした後、ストマッカーを用いて(200rpm,1min)便の懸濁液を作成した。
フィルタ付きストマッカーバッグを使用した場合はバッグ内のフィルタを用いて懸濁液をろ過した。フィルターがないストマッカーバッグを使用した場合は筒状プラスチック容器にセットした漏斗型フィルタに懸濁液を通してろ過し、ろ液をビーカーに回収した。ろ液はさらに、50mlの遠沈管5本に分注した。
遠沈管1本当たり、40μlのBer-EP4抗体結合磁気ビーズ(Dynabeads Epithelial Enrich、 ダイナル社)を加え、ミックスローター(VMR-5、 AS ONE社)を用いて混和し(4℃、60rpm、30分間)、ろ液中の細胞をBer-EP4抗体に結合させた。
各遠沈管を磁石スタンド(Dynal MPC-1、ダイナル社)にセットした後、マイルドミキサー(SI-36、TAITEC社)上に横向きに置き、15分間シーソー運動を行い(60往復/1分間)、ろ液を混和し、磁気ビーズを遠沈管側壁へ集めた。
ろ液を除去した後、遠沈管をスタンドから外し、一本当たり500μlの10%FBS含有Hanks液を加えて、壁面に集められたビーズを洗浄した。
ビーズを含んだ洗浄液をあらかじめ500μlの10%FBS含有Hanks液が入れられたエッペンチューブ(1.5ml用)5本に回収した。軽く懸濁後、磁石スタンド(Dynal MPC-S、ダイナル社)にセットし、エッペンチューブの側壁に磁気ビーズを集めた。
洗浄液を除去した後、エッペンチューブをスタンドから外し、1本当たり1mlの10%FBS含有Hanks液を加えて、壁面に集められたビーズを洗浄した。同様に、チューブを磁石スタンドにセットし、エッペンチューブの側壁に磁気ビーズを集めた後、上清を除去して、細胞−ビーズ複合体のペレットを得た。続いて、このペレットからISOGEN(ニッポンジーン)を使用してRNAを抽出した。
(2)RT-PCR解析
(i) cDNA合成(1回目)
上記で得られたtotal RNAのうち1μgをInvitrogen社製 SUPER SCRIPT Choice Systemを用いてオリゴ(dT)プライマーによる逆転写反応を行った。total RNA(10μl)に100μMのT7-oligo dT 24 primer を1μl (1 μg)加え、65℃で10分間保温する。その後、氷上にて2分以上置き、急冷させた後、表12に示した試薬を加えて、37℃で2分間保温した。
Figure 0004477575
その後、SuperScriptII RTを1μl加えて、37℃で1時間保温した。こうして、1st strand cDNA溶液約20μlを回収した。
続いて、2nd strand cDNA合成を下記に示す方法により行った。1st strand cDNA溶液に、表13に示した通りに試薬を加え、16℃で2時間保温した。
Figure 0004477575
さらに、T4 DNA polymerase 2μlを加えて16℃で5分間保温し、2nd strand cDNAの末端を平滑化した。次に、2nd strand cDNAの精製を行った。上記の生成物に対し、表14に示した通りに試薬を加え15,000 rpmで10分間遠心した。
Figure 0004477575
続いて、クロロホルム150μlを加え、15,000 rpmで10分間遠心し、上清のみを採取し、別のチューブへ移した。さらに、表15に示した通りに試薬を加え室温で15分間保持し、15,000 rpmで10分間遠心し、上清のみを採取し、別のチューブへ移した。
Figure 0004477575
そして、70% エタノール500μlを加え15,000 rpmで10分間遠心し(エタノールリンス)し、今度は沈殿のみを残し、溶液を捨てた。残った沈殿に対し、表16に示した通りに試薬を加え室温で15分間保持し、15,000 rpmで10分間遠心し、沈殿のみを残して溶液を捨てた。残った沈殿に対し、70% エタノール500μlを加え15,000 rpmで10分間遠心し、溶液を捨てた。最後に、風乾させ、8μlの水に溶解させた。
Figure 0004477575
(ii) cRNAの合成:in vitro transcription (1回目)
Ambion社製MEGAscriptT7Kitを用いて以下の反応を行った。(i)で作成した、cDNA溶液8μlに対し、表17に示した通りに試薬を加え、37℃で5時間保温した。次に、DNase ( RNase free ) 1μlを加え37℃で15分間保温し、DNAを除去した。
Figure 0004477575
続いて、cRNAの精製を行った。表18に示した通りに試薬を加え15,000 rpmで5分間遠心し、さらに、イソプロパノール300μlを加えて室温で15分間保温し、15,000 rpmで10分間遠心し、上清のみを採取し、別のチューブへ移した。そして、70% エタノール500μlを加え15,000 rpmで5分間遠心し、沈殿のみを残して溶液を捨て、風乾させ、8μlの蒸留水に溶解させた。
Figure 0004477575
(iii) cDNA合成(2回目)
上記で得られたcRNA溶液に対し、ランダムヘキサマープライマーを用いて2回目の逆転写反応を行った。0.5μg/μl ランダムヘキサマーを1μl (1 μg)加え、65℃で10分間保温する。その後氷上にて2分以上置き、急冷させた後、前述の表12に示した通りに試薬を加えて、37℃で2分間保温する。その後、SuperScriptII RTを1μl加えて、37℃で1時間保温する。こうして、1st strand cDNA溶液約20μlを回収した。続いて、RNase H 1μlを加えてRNAの除去を行う。37℃で20分間保温し、RNAとDNAを離すため95℃で2分間保温し、その後氷上にて2分以上置き、急冷させる。
次に、2nd strand cDNA合成を下記に示す方法により行った。1st strand cDNA溶液に100μMのT7-oligo dT 24 primer を1μl (1μg)加え、68℃で5分間保温後、42℃で10分間保温する。そして、表19に示した通りに試薬を加え、16℃で2時間保温する。さらに、T4 DNA polymerase 2μlを加えて16℃で5分間保温し、2nd strand cDNAの末端を平滑化する。次に、2nd strand cDNAの精製を行う。
Figure 0004477575
上記の生成物に対し、フェノール150μlを加え15,000 rpmで10分間遠心する。続いて、クロロホルム150μlを加え、15,000 rpmで10分間遠心し、上清のみを採取し、別のチューブへ移す。さらに、表15に示した通りに試薬を加え室温で15分間保持し、15,000 rpmで10分間遠心し、上清のみを採取し、別のチューブへ移す。そして、70% エタノール500μlを加え15,000 rpmで10分間遠心し(エタノールリンス)し、今度は沈殿のみを残し、溶液を捨てる。残った沈殿に対し、表16に示した通りに試薬を加え室温で15分間保持し、15,000 rpmで10分間遠心し、沈殿のみを残して溶液を捨てる。残った沈殿に対し、70% エタノール500μlを加え15,000 rpmで10分間遠心し、溶液を捨てる。最後に、風乾させ、22μlの蒸留水に溶解させる。
(iv) cRNAの合成:in vitro transcription (2回目)
(iii)で作成した、cDNA溶液22μlに対し、(ii)で行ったのと同様の方法でcRNAの合成を行った。ただし、最後は10μlの蒸留水に溶解させた(RNA量は5μg〜10μg)。
(v) 逆転写反応(1st strand cDNA合成)
(iv)で作成した、cRNA溶液10μlに対し、0.5μg/μl ランダムヘキサマーを1μl (1 μg)加え、65℃で10分間保温する。その後氷上にて2分以上置き、急冷させた後、表12に示した通りに試薬を加えて、逆転写反応が効率良く起きるように37℃で2分間保温する。その後、SuperScriptII RTを1μl加えて、37℃で1時間保温する。続いて、RNase Hを1μl加えてRNAの除去を行う。37℃で20分間保温し、RNAとDNAを離すため95℃で2分間保温し、その後氷上にて2分以上置き、急冷させる。上記反応液約20μlに20μlの精製水を加え、そのうち1μlを鋳型としてPCRを行った。PCRの条件とその産物の電気泳動は実施例3の(2)および(3)と同様に行った。
(3)実験結果
5遺伝子による結果として、7人の健常人の便はすべて陰性であったのに対して、25人の大腸がん患者の便では、全体として約50%(12/25)で少なくとも1つの遺伝子が陽性であった。アクチン mRNAが検出された、すなわち細胞数が多かった症例に関しては、約80%(7/9)で少なくとも1つの遺伝子が陽性であった(図2)。すなわち、陽性的中率は100%であり、便鮮血検査(約0.1%)を遥かに凌ぐものであった。
実施例7 大腸がん患者便から分離した細胞を用いた高感度チップ解析
実施例6で合成したcDNA溶液を検体とし、取り込み標識によるマルチプレックスPCR増幅を行った後、DNAマイクロアレイによる発現解析を行った。すなわち、実施例6と同様に、7人の健常人、および25人の大腸がん患者、計32例全てについて解析を行った。
本実施例においては、実施例6で選択した遺伝子5種を検出対象とし、プライマーに関しては、5種すべてのプライマーを1本のPCRチューブ中に添加してマルチプレックスPCRを行った。基質としては実施例4と同様にCy3-dUTPを添加し、PCR産物の標識化を行った。PCR反応の溶液組成は表20に示した通りである。
Figure 0004477575
調製された反応液について、市販のサーマルサイクラーを用いて、実施例2で記載した、表4の温度サイクル・プロトコルに従って、PCR増幅反応を行った。ただし、サイクル数は35回とした。終了後の反応液は4℃で保存した。
反応終了後、精製用カラム(QIAGEN社製 QIAquick PCR Purification Kit)を用いて精製した後、精製物を標識化検体とした。
実施例4のIで作製したDNAマイクロアレイと、これらの標識化検体32種を用いて、実施例4で示した方法で、マイクロアレイ上でのハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション結果画像を図3に、また、各プローブに対する蛍光輝度値を表21に示す。
Figure 0004477575
3)実験結果
表22に各症例における5遺伝子の発現の有無をまとめたものを示す。表21の蛍光輝度値において、25以上の値のものを陽性とした。5遺伝子中1遺伝子以上陽性であれば、陽性判定は「○」とした。なお、βアクチンの発現有無は、実施例6のPCR結果によるものである。また、最右列の細胞診は、便から回収した細胞を用いて細胞診を行った結果である。
5遺伝子による結果として、7人の健常人の便は2人で5遺伝子中1遺伝子が陽性となった(偽陽性2/7)。一方、25人の大腸がん患者の便では、全体として陽性率56%(14/25)であった。アクチン mRNAが検出された症例、すなわち細胞数が多かった症例では、約90%(8/9)で少なくとも1つの遺伝子が陽性であった。細胞診では、陽性が6/25であり、この結果と比較しても本発明における遺伝子セットを用いて発現解析を行った結果は有意なデータであるといえる。また、陽性的中率も約90%(14/16)と高く、便潜血検査を凌ぐものであった。
Figure 0004477575
表23に、細胞診結果とマイクロアレイによる発現解析に結果との比較を示す。細胞診陽性の症例6例のうち、5例がマイクロアレイでも検出されている。また、細胞診陰性の症例19例についても9例、すなわち約50%を陽性と診断することができている。
この結果から明らかなように、マルチプレックスPCRによる検体調整および、マイクロアレイによる解析により、便から回収した微量な細胞でも大腸がんの診断が可能であることが示された。
Figure 0004477575
なお、本実施例のマイクロアレイによる解析結果は、実施例6に示したRT-PCRの結果に比べて、感度の点で優れており、32検体でのべ15スポットの拾い上げがあった。その一方で、マルチプレックスPCRであるために、PCRのかかりが悪くRT-PCRでは検出されていても、マイクロアレイでは検出できないものが6スポットあった(図3)。両者の特長を合わせて、各症例における5遺伝子の発現の有無をまとめたものを表24に示す。RT-PCR結果とマイクロアレイのどちらかでも陽性であれば陽性判定は「○」とした。また、この結果から陽性率を計算し、細胞診の結果と比較した(表25)。表24、25に示した、RT-PCRとマイクロアレイとの検出結果をあわせることにより、大腸がん患者の陽性率は72%(18/25)となり、本発明にかかる遺伝子セットが大腸がんの診断に有効であることが確認された。
Figure 0004477575
Figure 0004477575
Figure 0004477575
Figure 0004477575
Figure 0004477575
Figure 0004477575
実施例8 便を用いた大腸がんスクリーニングのためのマーカー遺伝子の選抜
(マイクロアレイによる約39000遺伝子の発現プロファイルの取得とマーカー遺伝子の選抜)
実施例6(1)で抽出したtotal RNAをターゲットとしてマイクロアレイ(human U133 oligonucleotide probe arrays (Affymetrix社 米国))を用いてゲノム網羅的遺伝子発現解析を行った。実験方法は製造会社の推奨する方法に従った(実施例1(2)参照)。ターゲットとしては大腸がん患者の便から分離した細胞RNA4種、および健常者の便から分離した細胞RNA7種を混合したもの、計5種を用いた。
マイクロアレイとターゲットとのハイブリダイゼーションによって得られたシグナルはGeneArray scanner(Affymetrix)を用いて読み込み、その強度をコンピュータソフトMicroarray Suite 5.0(Affymetrix)を用いて解析した。遺伝子発現量の解析はMicrosoft Excelを用い、上記全ての大腸がん症例において高発現で、健常者及び抹消血(実施例1の結果)で検出されない遺伝子を選抜した結果、7種の遺伝子が選ばれた(表30)。これら7遺伝子の全ては、便を検体とした大腸がんスクリーニングのマーカーとして発明者らが考えた条件を満たしている。これら7遺伝子について、表30および表31に示すような特異的プローブとプライマーを設計した。
Figure 0004477575
Figure 0004477575
実施例9 大腸がん患者便から分離した細胞を用いたRT-PCR及び高感度チップ解析
(1)RT-PCR解析
実施例8で選抜した7遺伝子についての7人の健常人および25人の大腸がん患者の便から分離した細胞RNAを用いてRT−PCRの解析を行った。なお、上記7遺伝子とそのプローブおよびプライマーは、表30および表31にまとめて示す。また、実験手順は実施例6の(i)〜(v)の通りである。
7遺伝子による結果として、7人の健常人の便は1人だけ1遺伝子(No.102)で陽性になったのみであった。それに対し、25人の大腸がん患者の便では、全体として64%(16/25)で少なくとも1つの遺伝子が陽性であった。βアクチンmRNAが検出された、すなわち細胞数が多かった症例9例に関しては、約90%(8/9)で陽性であった(表32)。
Figure 0004477575
(2)チップ解析
実施例8で選抜した7遺伝子を検出するためのプローブDNA(配列番号151〜157)を合成し、実施例4のIで示した通りにDNAマイクロアレイを作製した。このDNAマイクロアレイを用いて、実施例7と同様に、表31に示したプライマーを用いて7遺伝子を検出対象とした取り込み標識マルチプレックスPCR増幅を行った後、発現解析を行った。プライマーは7種全てを1本のPCRチューブ中に添加してマルチプレックスPCRを行った。基質はCy3-dUTPを添加してPCR産物の標識化を行った。PCR反応の溶液組成、温度サイクル・プロトコル、DNAマイクロアレイとのハイブリダイゼーション方法は実施例7と同様である。標識化検体32種に対する各プローブの蛍光輝度値を表33に示す。
Figure 0004477575
(3)実験結果
表34に各症例における7遺伝子の発現の有無をまとめたものを示す。表33の蛍光輝度値において、30以上の値のものを陽性とした。また、7遺伝子中1遺伝子以上陽性であれば、陽性判定は「○」とした。βアクチンの発現有無、細胞診は、実施例7中表22と同様である。
7遺伝子による結果として、7人の健常人の便は全て陰性であった。一方、25人の大腸がん患者の便では、全体として陽性率64%(16/25) であった。アクチン mRNAが検出された症例、すなわち細胞数が多かった症例では、約90%(8/9)で少なくとも1つの遺伝子が陽性であった。細胞診では、陽性が6/25であり、この結果と比較しても本発明における7遺伝子のセットを用いて発現解析を行った結果は有意なデータであるといえる。また、陽性的中率は100%であり、便潜血検査を遥かに凌ぐものであった。
Figure 0004477575
表32と表34の結果より、(1)のRT-PCRの結果と(2)のDNAマイクロアレイの解析結果はほとんど同じであることが示された。この結果より、マルチプレックスPCRによる検体調整およびマイクロアレイによる解析によって、便から回収した微量な細胞でも大腸がんの診断が可能であることが示された。
更に、実施例7で示した結果と合わせた結果を表35に示す。なお、対象とした遺伝子は検出率が比較的低かったNo.38を除く、11遺伝子とした。11遺伝子による結果では、7人の健常人の便は1例で1遺伝子が陽性となった。一方で、25人の大腸がん患者の便では、20例で少なくとも1つの遺伝子が陽性となっており、陽性率80%(20/25)であった。アクチン mRNAが検出された症例、すなわち細胞数が多かった症例では、100%(9/9)陽性であった。
表36に、細胞診結果とマイクロアレイによる発現解析の結果との比較を示す。細胞診陽性の症例6例はマイクロアレイでも全て検出されている。また、細胞診陰性の症例19例についても、マイクロアレイで14例、すなわち約70%を陽性と診断することができており、この結果は細胞診の結果を遥かにしのいでいる。以上より、本発明にかかる遺伝子セットが大腸がんの診断に有効であることが確認された。
Figure 0004477575
Figure 0004477575
本発明にかかる57遺伝子は大腸がんの診断マーカーとして有用である。したがって、本発明のプローブ、プライマー、固相化試料は、大腸がんの早期診断に利用できる。
図1は、選抜遺伝子における大腸がん手術材料と血液RNAのRT-PCRの結果を示す。 図2は、便検体から採取したRNAにおけるRT-PCRの結果を示す。 図3は、便検体から採取したRNAにおけるチップハイブリダイゼーション結果を示す。
配列番号1〜50−人口配列の説明:プローブ
配列番号51〜150−人口配列の説明:プライマー
配列番号151〜157−人口配列の説明:プローブ
配列番号158〜171−人口配列の説明:プライマー

Claims (11)

  1. 配列番号1、2、6、38および50で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むプローブの全ての組み合わせ、あるいは
    前記塩基配列の少なくとも一以上において1〜3個の塩基が欠失、置換または付加した塩基配列で、かつそれぞれの対応する遺伝子に特異的にハイブリダイズする塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むプローブの全ての組み合わせ
    を用いて、被験体由来の検体中からそれぞれのプローブが特異的にハイブリダイズするmRNAの量を測定する大腸がん細胞をスクリーニングする方法。
  2. 前記検体が、便のスメアであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 配列番号151〜157で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むプローブの全ての組み合わせ、あるいは
    前記塩基配列の少なくとも一以上において1〜3個の塩基が欠失、置換または付加した塩基配列で、かつそれぞれの対応する遺伝子に特異的にハイブリダイズする塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むプローブの全ての組み合わせ
    を用いて、被験体由来の便中からそれぞれのプローブが特異的にハイブリダイズするmRNAの量を測定する大腸がん細胞をスクリーニングする方法。
  4. 配列番号1、2、6、50および151〜157で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むプローブの全ての組み合わせ、あるいは
    前記塩基配列の少なくとも一以上において1〜3個の塩基が欠失、置換または付加した塩基配列で、かつそれぞれの対応する遺伝子に特異的にハイブリダイズする塩基配列
    からなるオリゴヌクレオチドを含むプローブの全ての組み合わせ、
    を用いて、被験体由来の便中からそれぞれのプローブが特異的にハイブリダイズするmRNAの量を測定する大腸がん細胞をスクリーニングする方法。
  5. 前記測定した被験体由来の検体におけるmRNA量が健常者由来の検体におけるそのmRNA量に基づいて算出された基準値よりも高い場合には、該被験体由来の検体が大腸がん細胞を含んでいると判定する、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の方法を用いる採取された検体中の大腸がん細胞の判定方法。
  7. 大腸がんが早期大腸がんである、請求項に記載の方法。
  8. 配列番号51〜54、61、62、125、126、149、150または158〜171のいずれか1に示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含み、かつ表29または表31に記載の対応する遺伝子を特異的に増幅するための請求項1〜のいずれか1項に記載の方法において用いるプライマー。
  9. 請求項1、3または4のそれぞれに記載のプローブの全ての組み合わせからなり、表28または表30に記載の対応する遺伝子にそれぞれ特異的にハイブリダイズして該遺伝子を検出するための請求項1〜のいずれか1項に記載の方法に用いるプローブセット
  10. 請求項記載のプローブセットを固相担体上に固定化したことを特徴とする、固相化試料。
  11. 表29および表31記載の遺伝子群から選択される少なくとも2種以上の遺伝子について、請求項記載のプライマーと請求項記載のプローブセットおよび/または請求項10記載の固相化試料とを含む、大腸がん細胞の遺伝子検出用キット。
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