以下、本発明の詳細を図示の実施形態によって説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる現像ユニットの概略構成を示す図である。本ユニットは、図1に示すように、上部に被処理基板100が固定される固定台101が、固定台101及び被処理基板100を回転させる回転機構102に接続されている。回転機構102の回転による被処理基板100の回転時に、被処理基板100上の現像液や洗浄液等が周囲に飛散されることを防止するため、被処理基板の周囲を覆う保護カップ103が設置されている。
固定台101上には、現像液供給ノズル111が設けられている。現像液供給ノズル111には、パイプ112を介して脱気された現像液が貯蔵された現像タンク113が接続されている。現像タンク113内には、現像液として、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)などのアルカリ性の水溶液が貯蔵されている。現像液のアルカリ濃度は1%以上4%未満である。
パイプ112には、酸素やオゾン等の酸化性ガスを脱気した現像液に溶解させる酸化性ガス溶解機構114、及び水素等の還元性ガスを脱気した現像液に溶解させる還元性ガス溶解機構115が設けられている。
酸化性ガス溶解機構114は、酸化性ガス発生器114aで発生したガスに触れている酸化性ガス溶解膜(テフロン(登録商標)の中空糸膜)114bに、脱気した現像液を通して、ガス分子を現像液中に溶解させる。還元性ガス溶解機構115は、還元性ガス発生器115aで発生したガスに触れている還元性ガス溶解膜(テフロン(登録商標)の中空糸膜)115bに、脱気した現像液を通して、ガス分子を現像液中に溶解させる。なお、以下では、酸化性ガスが溶解した現像液を酸化性現像液、還元性ガスが溶解した現像液を還元性現像液と記す。
なお、酸化性ガス溶解機構又は還元性ガス溶解機構は、同様に酸化性または還元性現像液を生成できるのであれば、該溶解膜に純水を通してガス分子を溶解させ、その後、予め濃度の高められた現像液と混合することで該現像液を生成する構成でもよい。
現像液供給ノズル111は、図示されない走査機構により被処理基板100周外から被処理基板100上を一方向に走査し、被処理基板100に対して相対的に移動する。前記走査方向に対して垂直方向の現像液供給ノズル111の長さは、被処理基板100の直径以上である。現像液供給ノズル111が被処理基板100上を走査しつつ、現像液を100上に吐出することによって、被処理基板100の全面に現像液が塗布される。
また、被処理基板100の上方には、被処理基板100上に塗布された薬液を攪拌する攪拌機構として、中央に吸気孔を設けた平板状の回転円盤からなる整流板104、及び整流板の昇降機構が設置されている。
なお、現像液供給ノズル111は、被処理基板上に均一に薬液を供給できるのであれば上記の形態に限らない。また、攪拌機構は、現像中、現像液を攪拌する作用があれば上記の形態に限らない。
固定台上に純水輸送ライン122から供給された純水等の洗浄液を被処理基板100表面に吐出する洗浄液供給ノズル121が設置されている。図1に示す現像ユニットは、酸化性ガス溶解機構114、還元性ガス溶解機構115を併せ持つ構成であったが、必要に応じてどちらか一方のみ設置してもよい。また、ガスをインラインで供給できる場合、ガス発生器114a,115aは不要である。
次に、図1に示した現像ユニットにより、現像液として酸化性現像液を被処理基板に表面に供給する現像方法について、図2,3を参照しつつ説明する。図2,3は、本発明の第1の実施形態に係わる現像工程を示す工程図である。先ず、被処理基板上に反射防止膜、化学増幅型レジストを塗布し、KrFエキシマレーザを用い、露光用レチクルを介し所望のパターンを縮小投影露光する。被処理基板は、熱処理(PEB)が行われた後、現像ユニットへ搬送され、固定台101上にて保持される(図2(a))。
次いで、現像液供給ノズル111を被処理基板の一方の端から他方の端へ走査させ、カーテン状に酸化性現像液を吐出させることで被処理基板100上に現像液膜201を形成する(図2(b))。従来の現像液は、TMAHに界面活性剤を添加したものである。本実施形態では、酸化性ガス発生器114aから酸素ガスを発生させ、この酸素ガスを含ませた酸化性ガス溶解膜114bに現像液を通した、酸化性現像液を用いている。
次いで、被処理基板100上に形成された現像液201中の反応生成物による現像液の濃度むらをなくすため、被処理基板100上に設けられた整流板104を降下させた後、整流板104を3000rpmで回転させ被処理基板100上に気流を形成して、その気流により現像液膜201を攪拌した(図2(c))。
所望のレジストパターンがえられる現像時間が経過した後、被処理基板100を回転させながら、洗浄液供給ノズルより水素溶解させた純水である水素水(還元性液体)202を被処理基板100上へ吐出して、現像を停止させ、被処理基板100上の現像液及び反応生成物等を10秒間洗い流した(図3(d))。
洗浄液として、水素ガスを含む還元性液体を被処理基板100に供給することで、有機パーティクルが還元されて、有機パーティクルとレジスト表面との間に働く親和力を緩和し、有機パーティクルがレジスト表面に付着する事を抑制し、欠陥が発生することを抑制する。
洗浄後、被処理基板100を高速回転させて、被処理基板100上の水素水202を遠心力により振り切ると共に、被処理基板100表面を乾燥させた(図3(e))。以上説明した処理によりレジストの現像工程を終了し、被処理基板を回収した(図3(f))。
なお、現像液膜201の形成方法は、現像液供給ノズル111を基板の一方の端から他方の端へ走査させ液膜を形成する方法に限らず、例えば現像液供給ノズル111と被処理基板100とを相対的に回転しながら現像液を吐出することで、現像液膜を形成する方法や、基板全面に一様にスプレーノズルから現像液を吹き付けることで現像液膜を形成する方法など、基板上に均一に現像液膜を形成できる方法であれば方法にこだわらない。また、形成された現像液膜の攪拌方法は、被処理基板100上の整流板104を回転させることで気流を発生させて行ったが、例えば被処理基板100自体を回転させる方法や、外部からの振動子により液体に振動を与える方法等、現像液を基板全面で流動させる作用があるならばどのような方法でもよい。
酸化性現像液として、酸素気体分子を溶解膜を通し、現像液に溶解させた、酸素分子溶解現像液を用いたが、同様の効果があれば溶解させる気体分子は酸素に限らず、オゾン、一酸化炭素、過酸化水素などの酸化性ガスでもかまわない。また、直接気体分子を溶解膜を通し現像液に溶解したものではなく、上記の気体分子を溶解膜を通し、脱気した純水に溶解し、その後、濃度を予め高めた現像液と混合し、機能性現像液としてもよい。
また、洗浄液として、十分な効果がえられるのであれば、還元性液体、酸化性液体、純水のどれを用いても構わない。また、洗浄効果が高められるのであれば、これらの液を適宜組み合わせることも可能である。特に、還元性液体を供給したのち、洗浄効果を高めるため、純水を供給して洗浄を行う方法が、好ましい形態である。また、現像終了時、現像液から洗浄液に置換される過程で析出し、基板上に付着する可能性のある有機物を分解除去し、洗浄効果を高めるため、オゾン水などの酸化性液体を供給し、洗浄したのち、引き続き水素水などの還元性液体で洗浄する方法も好ましい形態である。
現像液として、適当な量の酸素を溶解した酸化性現像液を用いて現像を行うことにより、現像中に大きく分けて3つの作用がある。第一は、現像開始直後から発生する反応生成物の現像液中の酸素分子による酸化とそれによる反応生成物の分解である。第二は、現像液中におけるレジスト表面の酸化である。第三は、現像中に発生する反応生成物の、凝集によるサイズ成長の緩和である。上記、3つの作用について、詳細を以下に述べる。
(1)第一の作用 反応生成物の酸化分解
露光され、熱処理されたポジ型感光性レジストは、現像液に浸漬することにより、露光部が溶解され、非露光部はほとんど溶解されない。現像工程において、感光性レジストの露光部が現像液に触れると、溶解が始まると同時に中和反応による反応生成物が生じる。この反応生成物は現像液中に拡散するが、一部はレジストパターンの間から拡散せずに、レジスト樹脂と弱く結合して、レジストパターン間に留まる。このレジストパターン間に留まった反応生成物は、凝集し、有機パーティクルとなる。露光部の面積が多く、パターン寸法が微細な領域では、これら有機パーティクルが多く存在し、その付近での現像液中のアルカリイオンの濃度を低下させる。その結果、その付近で局所的にレジストパターンの現像速度が遅くなり、現像後のレジストパターンの寸法の均一性を悪化させる。また、これらの有機パーティクルは、レジスト表面に付着し、凝集すると、現像後のレジストパターン上に、欠陥として残る可能性がある。
図4(a)に示すように、現像液142に酸素分子144を溶かすことで、現像中、現像液中の酸素分子144が、現像により生じた反応生成物143に衝突し、ある確率で反応生成物143を酸化して酸化物145を形成すると共に、酸化物145が分解して分解物146が形成されると考えられる。分解物146は、低分子となり、その質量が十分小さくなることから液中への拡散も容易になる。なお、図4(a)において、140は基体、141はポジ型感光性レジスト、141aは露光部、141bは非露光部である。
十分な濃度の酸素分子144が現像液142中に存在していれば、反応生成物143が酸化され分解される割合も高くなり、反応生成物143の現像液142中への拡散は、促進され、レジスト141のパターン間やレジスト141表面付近に停滞する有機パーティクルの量が低減される。また、現像液142中のアルカリイオンが露光部141aの反応面に容易に拡散することも期待できる。この効果が大きい場合、現像工程での攪拌を行わなくてよい。この結果、局所的な現像液のアルカリイオン濃度の低下が抑制され、被処理基板面内での現像速度むらの発生を抑えることができ、図4(b)に示すように、均一なレジスト141のパターンが形成される。また有機パーティクルを酸化分解し、液中へ拡散させることから、現像後にレジストパターン上に残る有機物付着欠陥の発生する確率を著しく低減することができる。
(2)第二の作用 レジスト表面の酸化改質
現像中、感光性レジストの露光部表面の分子と現像液中のアルカリイオンとの間には強い親和力が働くが、一方で感光性レジストの非露光部表面の分子と現像液中のアルカリイオンとの間には、互いに接近することで自由エネルギーが高い状態となるため、斥力が働く。このため、被処理レジスト膜上で露光部と非露光部の面積比が異なる領域では、アルカリイオンのレジスト表面から受ける親和力は大きく異なる。この結果、アルカリイオンがレジスト表面へ到達する量が、露光部と非露光部の面積比により変化し、現像の進行度も変化する。つまり、現像速度が被処理レジスト面上の場所で異なる。このため、現像後のレジストパターン寸法の面内での均一性が悪化する。現像液中に溶け込んだ酸素分子は、現像時レジスト表面に接触すると、レジスト表面を酸化することが知られている。現像の進行しない非露光部のレジスト表面や、現像が進行して形成されたパターンの側壁などに、酸素分子による酸化のため、カルボン酸が生成される。生成されたカルボン酸はアルカリイオンとの間に比較的強い親和力を有しているため、露光部、非露光部の親和力の違いを緩和し、局所的に現像中に発生する現像速度の違いを低減し、現像後の面内均一性を向上させる。
また、現像工程で、レジスト反応生成物のレジスト表面への付着による欠陥が発生することが問題となっているが、これは、レジスト表面と凝集した反応生成物のパーティクル表面との間に、分子間相互作用による親和力が働くためである。現像中の酸素分子は、レジスト表面を酸化し、カルボン酸を生成し、レジスト表面と反応生成物パーティクルの表面での分子間相互作用による親和力を変化させることができ、現像後に欠陥になりうる反応生成物パーティクルのレジスト表面への付着を抑制する。このため、酸素分子溶解現像液による現像により、現像工程で発生する現像後レジストパターンに付着する有機物欠陥の発生を大幅に抑制することができる。
(3)第三の作用 反応生成物の凝集の抑制
現像中、生成された反応生成物は現像液中で凝集し、次第にそのサイズを大きくしている。第一の作用で、生成された反応生成物は現像液中の酸素により酸化され、分解されることを述べたが、溶け出す反応生成物の量、さらには各々の反応生成物の含む分子数は液中の酸素分子量に比べ多いため、すべてを酸化、分解することはできない。分解されずに残った反応生成物は、液中で凝集の核になりうる。液中に凝集の核となる分子があると、それを中心に液中の反応生成物は凝集を始める。この時の凝集は、特に現像液中という環境下において、反応生成物のどうしの親和力が比較的強いことから起こる。すなわち、反応生成物の表面を構成する分子は、周囲に存在する他の反応生成物の表面分子との間に直接相互作用を及ぼし合うのではなく、現像液中のイオン、分子を介して、状態をより安定化させるために、間接的に引き付け合うと考えられる。現像液中に酸素分子を含ませることで、反応生成物と現像液との界面におけるエネルギーを下げることができる。このため、反応生成物どうしに働く親和力が見かけ上、弱まる方向へ変化する。凝集の核になりうる分子が液中に存在していても、それが実際に核となって凝集を始める確率は、酸素を液中に含んでいないものに比べ、十分低くなっている。このため、酸素を含んだ現像液中では、反応生成物による凝集の発生確率が低減され、また凝集の始まった反応生成物も、凝集を引き起こす親和力が弱まるためその成長速度が緩慢になる。したがって、反応性生成物の凝集が抑制される。
また、上記の露光部非露光部の現像液に対する親和力の差を緩和し、更に反応生成物の液中への拡散を促進する作用から、現像中の攪拌工程において、僅かな揺動力を与えるだけで効率的に攪拌を行うことができる。
以下に、実際に発明者らが、酸化性現像液による効果を確かめるために行った実験の結果について以下に説明する。実験は、本実施形態で示した手順に従って行った。また、リファレンスとして従来の現像液による現像、酸化性現像液による攪拌無しの現像を行った。酸化性現像液として酸素気体分子を溶解膜を通し、脱気した現像液に溶解したものを用いた。なお、現像時間は、全て同一な条件で行った。結果を(表1)に示す。
従来の現像液による現像法に比べ、酸化性現像液による現像法では、寸法均一性を表す3σの値が向上した。さらに、本発明である酸化性現像を用いて現像中に現像液を攪拌することによって、寸法均一性は格段に向上した。また、現像後のこれらサンプルの有機物付着欠陥数を計測したところ、従来現像液による現像法では、基板全面で245個の欠陥が計測されたが、酸化性現像液を用いた場合には、攪拌工程なしで23個、攪拌工程ありの場合で18個と著しく低減させることができた。これらの結果から、本発明の効果が確かめられた。また、酸化性現像液を用いて現像を行った場合、パターン寸法が2〜3%、さらに攪拌工程を加えた場合、パターン寸法が5%程度減少することが分かった。所望のパターン寸法を得るための現像時間を調査したところ、酸化性現像液を用いて現像を行った場合には、現像時間は、従来現像時間の3/4に、さらに攪拌工程を加えた場合従来時間の2/3に短縮されることがわかった。従って酸化性現像液を用いた現像を行うことで、工程時間を短縮でき、現像工程におけるスループットが25〜30%向上させることが可能である。
(第2の実施形態)
次に、図1に示した現像ユニットにより、現像液として還元性現像液を被処理基板に表面に供給する現像方法について、図5,6を参照しつつ説明する。図5,6は、本発明の第2の実施形態に係わる現像工程を示す工程図である。先ず、被処理基板上に反射防止膜、化学増幅型レジストを塗布し、KrFエキシマレーザを用い、露光用レチクルを介し所望のパターンを縮小投影露光する。被処理基板は、熱処理(PEB)が行われた後、現像ユニットへ搬送され、固定第101上にて保持される(図5(a))。
次いで、現像液供給ノズル111を被処理基板100の一方の端から他方の端へ走査させ、カーテン状に還元性現像液を吐出させることで被処理基板100上に現像液膜211を形成した(図5(b))。従来、現像液はTMAHに界面活性剤を添加したものを用いている。本実施形態では、還元性ガス発生器115aから水素ガスを発生させ、この水素ガスを含ませた還元性ガス溶解膜115bに現像液を通した、還元性現像液を用いている。
次いで、被処理基板100上に形成された現像液211中の反応生成物による現像液の濃度むらをなくすため、被処理基板100上に設けられた整流板104を降下させた後、整流板104を3000rpmで回転させ被処理基板100上に気流を形成して、その気流により現像液膜211を攪拌した(図5(c))。
所望のパターンが得られる時間が経過した後、被処理基板を回転させながら洗浄液供給ノズルより、純水にオゾンを含ませたオゾン水(酸化性液体)212を被処理基板上へ吐出し、現像を停止させ、現像液及び反応生成物等を10秒間洗い流した(図6(d))。洗浄液として、オゾンガスを含む酸化性液体を被処理基板100に供給することで、現像液中に残存する有機パーティクルが酸化分解されると共に、現像後に露出するレジスト膜表面が酸化され、レジスト表面に有機パーティクルが付着することを防ぎ、レジスト表面に欠陥が発生することを抑制することができる。
洗浄後、被処理基板100を高速回転させて、被処理基板100上のオゾン水212を遠心力により振り切ると共に、被処理基板100表面を乾燥させた(図6(e))。以上説明した処理によりレジストの現像工程を終了し、被処理基板100を回収した(図6(f))。
なお、現像液膜211の形成方法は、現像液供給ノズル111を基板の一方の端から他方の端へ走査させ液膜を形成する方法に限らず、例えば現像液供給ノズル111と被処理基板100とを相対的に回転しながら、ノズル111から現像液を吐出することで、現像液膜211を形成する方法や、被処理基板100全面に一様にスプレーノズルから現像液を吹き付けることで現像液膜を形成する方法など、基板上に均一現像液を吐出し均一に形成できる方法であれば方法にこだわらない。また、形成された現像液膜の攪拌方法は、基板上の整流板を回転させることで気流を発生させて行ったが、例えば基板自体を回転させる方法や、外部からの振動子により液体に振動を与える方法等、現像液を基板全面で流動させる作用があるならばどのような方法でもよい。
還元性現像液として、脱気した現像液を水素気体分子を含む還元性ガス溶解膜に通し、現像液に水素気体分子溶解させた、水素分子溶解現像液を用いたが、同様の効果があれば溶解させる気体分子は水素に限らず、H2S、HNO2、H2SO3等の還元性ガスでもかまわない。また、直接気体分子を溶解膜を通し現像液に溶解したものではなく、上記の気体分子を溶解膜を通し、脱気した純水に溶解し、その後、濃度を予め高めた現像液と混合し、還元性現像液としてもよい。
また、洗浄液として、十分な効果がえられるのであれば、還元性液体、酸化性液体、純水のどれを用いても構わない。また、洗浄効果が高められるのであれば、これらの液を適宜組み合わせることも可能である。特に、酸化性液体を供給したのち、洗浄効果を高めるため、純水を供給して洗浄を行う方法が好ましい。また、現像終了時、現像液から洗浄液に置換される過程で析出し、基板上に付着する可能性のある有機物を分解除去し、洗浄効果を高めるため、オゾン水などの酸化性液体を供給して洗浄したのち、引き続き水素水などの還元性液体で洗浄する方法も特に好ましい。
本実施形態における、還元性現像液を用いて現像を行うことによる作用について説明する。
現像液として、還元性のある気体を適当な濃度だけ溶解した還元現像液を用いて現像を行うことにより、現像中に大きく分けて次のような3つの作用がある。
1.水素分子によるレジスト表面改質
2.反応生成物の現像液中への拡散の促進
3.反応生成物のレジスト表面への再付着防止
これらの3つの作用について、以下に詳細を述べる。
(1)レジスト表面改質
露光され、熱処理されたポジ型感光性レジストは現像中、レジストの露光部表面の分子と現像液中のアルカリイオンとの間に働く親和力と、レジストの非露光部表面の分子と現像液中のアルカリイオンとの間に働く親和力の強さが異なる。この為に、被処理レジスト膜上で露光部と非露光部との面積比が異なる領域では、現像液中のアルカリイオンがレジスト表面から受ける親和力は大きく異なる。この結果、レジスト表面に流れ込むアルカリイオンの量は、露光部と非露光部の面積比により変化する為に、現像の進行速度が変化する。即ち、現像速度が被処理レジスト面上の場所で異なる。このため、現像後のレジストパターン寸法の均一性が悪化する。
図7(a)に示すように、現像液242中に溶解している水素分子244は、現像時、基体240上のレジスト241表面に接触すると、レジスト241表面を還元する作用を有する。これにより、露光部241a表面に対する現像液の親和力と、非露光部241bの還元されたレジスト241c表面の現像液に対する親和力との差を緩和することで、局所的に現像中に発生する現像速度の違いを低減し、現像後の寸法均一性を向上させる。
(2)反応生成物の現像液中への拡散の促進
ポジ型レジストは、現像工程において、露光部は現像液に溶解されるのに対し、非露光部はほとんど溶解されない特性を有する。これは感光性レジストの露光部では現像液との中和反応によって生じる反応生成物が現像液中に溶解する為である。しかし、レジスト上で露光部と非露光部の占める面積比が異なる場合は反応生成物の生成量は大きく異なる。例えば、孤立パターンの場合には周囲に広く露光部が存在する為にL/Sパターンに比べ、反応生成物の量は著しく多い。生成した反応生成物はパターン間に留まりやすく、現像液中に拡散されにくい為に、孤立パターン周辺の現像液のアルカリ濃度がL/Sパターンのアルカリ濃度に比べ低くなる。その為、所望のパターン寸法を形成するのに必要とされる時間がパターンによって異なる。即ち、パターンの違いによって現像に必要とされる時間が異なることで、現像後のレジストパターン寸法の疎密寸法差が大きくなることが問題となっている。この疎密差を現像途中に攪拌のみによって反応生成物を完全に除去し、寸法差を改善することは困難である。
図7(a)に示すように、現像液中に加えた水素分子244が中和反応によって生じた反応生成物243と還元反応して還元物245が形成されることによって、還元物245の表面電位が変化する。これにより、還元物245間に斥力が生じ、互いの凝集が妨げられることで、反応生成物は現像液中に速やかに拡散され、現像が進行する。即ち、水素分子244によって反応生成物の表面電位を変化させることで、現像液242のアルカリ濃度差によって生じる疎密寸法差を大幅に低減でき、図7(b)に示すような均一なレジスト241のパターンを形成することができる。
(3)反応生成物の凝集の緩和
現像反応によって生じた反応生成物は1度現像液中に拡散されても、その後、液中で反応生成物間で働く相互作用により凝集する可能性がある。その為、凝集した反応生成物がレジスト上に再付着することで欠陥になることが問題となっている。
現像液中に水素分子を溶解させることで、水素分子は反応生成物、またはレジストの表面状態を改質させる効果がある。これにより反応生成物間に働く分子間相互作用の程度を弱めさせることができ、現像液中の水素分子が反応生成物の凝集を抑制することが可能になる。すなわち、レジスト表面に再付着する反応生成物量が減少され、凝集した反応生成物のレジスト表面への再付着が原因となる欠陥の量が大幅に抑制される。
また、上記の露光部非露光部の現像液に対する親和力の差を緩和し、更に反応生成物の液中への拡散を促進する作用から、現像中の攪拌工程において、僅かな揺動力を与えるだけで効率的に攪拌を行うことができる。
実際に発明者らが行った実験の結果について以下に説明する。
実験は上記の、本実施形態記載の手順に従って行った。また、リファレンスとして従来の現像液による現像、還元性現像液による攪拌無しの現像を行った。
還元性現像液として水素気体分子を溶解膜を通し、脱気した現像液に溶解したものを用いた。結果を(表2)に示す。
従来の現像液による現像法に比べ、還元性現像液による現像法では、寸法均一性を表す3σの値が向上した。さらに、本発明である還元性現像を用いて現像中に現像液を攪拌することによって、寸法均一性は格段に向上した。また、現像後のこれらサンプルの有機物付着欠陥数を計測したところ、従来現像液による現像法では、基板全面で245個の欠陥が計測されたが、酸化性現像液を用いた場合には、攪拌工程なしで86個、攪拌工程ありの場合で58個と低減させることができた。これらの結果から、本発明の効果が確かめられた。
また、還元性現像液を用いて現像を行った場合、パターン寸法が2〜3%、さらに攪拌工程を加えた場合、パターン寸法が5%程度減少することが分かった。所望のパターン寸法を得るための現像時間を調査したところ、還元性現像液を用いて現像を行った場合には、現像時間は、従来現像時間の3/4に、さらに攪拌工程を加えた場合従来時間の2/3に短縮されることがわかった。従って還元性現像液を用いた現像を行うことで、工程時間を短縮でき、現像工程におけるスループットを25〜30%向上させることが可能である。
(第3の実施形態)
図8は、本発明の第3の実施形態に係わるレジスト剥離装置の概略構成を示す図である。
本装置は、図8に示すように、後述する酸化性剥離液302が蓄えられた処理槽301を具備する。複数の被処理基板が格納されたウェハカセット300を酸化性剥離液302に浸漬することによって、被処理基板表面のレジストを剥離する。
本装置は、処理槽301に蓄えられる酸化性剥離液を生成する酸化性ガス溶解機構310をさらに具備する。酸化性ガス溶解機構310は、剥離液タンク304に貯蔵され、脱気した剥離液に対して、酸化性ガスを溶解させて生成し、生成された酸化性剥離液は、剥離液供給ノズルから処理槽内に供給される。酸化性ガス溶解機構310は、酸化性ガス発生器311で発生したガスに触れている酸化性ガス溶解膜312に、脱気した剥離液を通して、ガス分子を現像液中に溶解させる。
本実施形態では、剥離液タンク304内に貯蔵される剥離液として、高濃度のアルカリ液を用いる。剥離液としては、ここでは例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を用いる。アルカリ濃度範囲としては、1%以上から飽和濃度以下であることが好ましい。また、溶解させた酸素の濃度は10ppm以上が好ましい。
また、本装置は、被処理基板表面のレジスト残さ剥離後に、洗浄液輸送ライン322を介して輸送された洗浄液を処理槽301内に供給する洗浄液供給ノズル321を具備する。
被処理基板上に反射防止膜、化学増幅型レジストを塗布し、KrFエキシマレーザを用い、露光用レチクルを介し所望のパターンを縮小投影露光する。該基板を熱処理し、現像処理によりレジストパターンを形成する。その後、レジストパターンをマスクとしてエッチングを行う。ウェハカセット300に格納された被処理基板を処理槽301内の酸化性剥離液302に浸漬して、残ったレジスト残さを剥離する。処理槽301から酸化性剥離液302を排出した後、洗浄液供給ノズル321から純水を処理槽内に供給して、ウェハカセット300内の被処理基板の洗浄を行う。なお、エッチングの後にアッシングを行い、剥離工程を行っても良い。
本実施形態ではアルカリ処理後の洗浄液として、純水を用いたが、洗浄効果が高まるならば、洗浄液として、オゾン水などの酸化性液体または水素水などの還元性液体、またはその両方を用いてもよい。
レジスト剥離液として、酸素を溶解した酸化性剥離液を用いてレジスト残さの剥離を行うことにより、以下のような作用がある。
エッチング後のレジスト膜の酸化分解除去エッチング後の被処理基板上にはレジストの残さが存在する。高濃度のアルカリ液により、大部分のレジストは溶解するが、酸素分子を溶かすことで、剥離中、剥離液中の酸素分子が、レジスト残さに衝突し、ある確率でレジスト残さを酸化し、分解すると考えられる。分解されたレジスト残さは、低分子となり、その質量が十分小さくなることから剥離液中への拡散も容易になり、剥離後に被処理基板上に残る有機物付着欠陥(レジスト残さ)の発生する確率を著しく低減することができる。
本発明者らが、酸化性剥離液の効果を確かめるために行った実験の結果について以下に説明する。下記に示す条件でエッチング後に、剥離処理を行った。所定時間アルカリ液に浸漬した後、超純水でリンス、乾燥して、剥離の状態を電子顕微鏡で観察した結果を(表3)に示す。
以上より、高濃度のアルカリ液に酸化性気体の酸素を溶解させた剥離液で剥離することで、十分にレジスト残さが除去できたことがわかる。
なお、剥離液に溶解させるガスとしては、酸化性ガスだけではなく、結果的に同様な効果が選られるのであれば例えば還元性ガスを用いてもよい。例えば水素分子を溶解した場合、その濃度は1PPM程度がよい。
なお、薬液処理方法は上記形態のような浸漬法に限らず、薬液供給ノズル(スプレーノズルや直管ノズル)から被処理基板上に供給し、処理後にリンスノズルから洗浄液を供給するような枚葉の処理でもよい。また、処理中に加熱処理、あるいは超音波等による攪拌処理を行っても良い。
(第4の実施形態)
図9は、本発明の第4の実施形態に係わる現像ユニットの概略構成を示す図である。
本装置は、図9に示すように、被処理基板100を固定する固定台101と、固定台101及び被処理基板100を回転させる回転機構102、水素水及び現像液を吐出する薬液供給ノズル411、薬液供給ノズル411を被処理基板100上に走査させる駆動機構を具備する。さらに、現像時被処理基板上の現像液を攪拌する攪拌機構として基板上方に配置された整流板104、及び整流板104の昇降機構からなる。また、洗浄液輸送ライン422を介して輸送された洗浄液を被処理基板100表面に供給する洗浄液供給ノズル421が、被処理基板100上方に設けられている。
薬液供給ノズル411は、複数の独立な供給口を持ち、それぞれ供給口から独立に水素水、現像液を吐出する。また、薬液供給ノズルは薬液吐出時、被処理基板100の周外から被処理基板100上を一方向に走査しつつ薬液を吐出する。攪拌機構の整流板104は、中央に吸気孔を設けた平板状の回転円盤である。薬液供給ノズル411は、被処理基板上に均一に薬液を供給できるのであれば上記の形態に限らない。また、攪拌機構は、現像中、現像液を攪拌する作用があれば上記の形態に限らない。また、十分に均一な現像が行われるのであれば、攪拌機構はなくてもよい。
次に、本装置を用いた現像方法について図10(a)〜図12(f)を参照しつつ説明する。図10〜図12は、本発明の第4の実施形態に係わる現像方法を示す工程図である。被処理基板100上に反射防止膜、化学増幅型レジストを塗布し、KrFエキシマレーザを用い、露光用レチクルを介し所望のパターンを縮小投影露光する。被処理基板100を熱処理(PEB)した後、現像ユニットへ搬送し、固定台101にて保持した(図10(a))。
従来の方法では、一般的に、この後、被処理基板に直接現像液を吐出し現像を開始するか、純水を吐出し低回転で振り切り基板表面に薄い水の層を形成させ、予め基板をぬらすことで見かけ上被処理基板表面の現像液に対するぬれ性を向上させた後、現像液と基板上に吐出し、現像を行っていた。
本実施形態では、被処理基板100の周外から被処理基板100上を一方向に走査しつつ薬液供給ノズル411から1ppm程度の水素水を吐出し、被処理基板100表面に水素水液膜431を形成する(図10(b))。被処理基板100表面全体を水素水431の液膜に5〜30秒間晒すことによりレジスト表面のみ還元させる。なお、水素水とは、純水に水素を溶解させた溶液のことである。
次いで、水素水液膜431を形成してから、5〜30秒間経過した後、被処理基板100を2000rpmで回転させることで、振り切りにより被処理基板100上に形成された水素水431を除去する(図10(c))。
次いで、被処理基板の一方の端から他方の端の走査しつつ、薬液供給ノズル411から現像液を吐出する事で、被処理基板100上に現像液432の液膜を形成する(図11(d))。
所望のパターンが得られる時間が経過した後、洗浄液供給ノズル421より洗浄液433として超純水を被処理基板100上へ吐出して現像を停止させ、現像液及び溶解生成物等を10秒間洗い流した(図11(e))。
次いで、洗浄終了後、被処理基板を高速回転させて、洗浄液433を振り切り、被処理基板100表面を乾燥させた(図11(f))。
これにより現像工程を終了し、基板を回収した(図12(g))。
また、洗浄液として、本実施形態では純水を用いたが、十分な効果がえられるのであれば、還元性液体、酸化性液体、純水のどれを用いても構わない。また、洗浄効果が高められるのであれば、これらの液を適宜組み合わせることも可能である。特に好ましい形態としては、還元性液体を供給したのち、洗浄効果を高めるため、純水を供給して洗浄を行う方法か、現像終了時、現像液から洗浄液に置換される過程で析出し、基板上に付着する可能性のある有機物を分解除去し、洗浄効果を高めるため、オゾン水などの酸化性液体を供給し、洗浄したのち、引き続き水素水などの還元性液体で洗浄する方法などがある。
還元性用液を用いた前処理の作用について以下に説明する。露光され、熱処理されたポジ型感光性レジストは現像時、レジストの露光部表面の分子と現像液中のアルカリイオンとの間に働く親和力とレジストの非露光部表面の分子と現像液中のアルカリイオンとの間に働く親和力の強さが異なる。水素水により現像前にレジストの表面を処理すると、レジスト表面の露光部に存在するカルボン酸が還元され水酸基に変化し、純水及び現像液に対して親和力が低下する。これにより、露光部表面と非露光部表面の現像液に対する親和力の差を緩和することできる。通常、露光部と非露光部が密に混じり合う局所的な領域では、その露光部非露光部の面積比に応じて、現像液中のアルカリイオンの受ける親和力も異なり、現像中に現像速度の違いを発生する。水素水による現像前処理を施すことで、局所的な領域での親和力の違いを無くすことにより、基板上の露光部非露光部の面積比等の場所によるパターン構成によらず現像速度を一定にし、現像後の寸法均一性を向上させる。第2の実施形態に記載の水素分子溶解現像液による現像法を用いても同様の効果を得られるが、現像前処理の場合、現像と同時進行ではなく、予め処理を行うことで、表面改質という効果に特に焦点を絞っている。実際、水素水による現像前処理では、水素分子溶解現像液による現像中の水素の作用よりも、レジスト表面改質という効果は顕著に表れ、露光部と、非露光部から現像液中のアルカリイオンが感じる親和力の差が緩和される効果がより顕著になる。接触角を測定したところ、1PPMの濃度の水素水を15秒レジスト表面に晒すことで、露光部と非露光部の現像液に対する接触角はほぼ等しくなった。
なお、水素水による前処理後、基板を2000RPMで回転し、水素水液膜の除去を行ったが、完全に除去せず、わずかに水素水の液膜を基板上に残し、引き続き現像液膜を水素水液膜上に形成することで、基板上で水素水と現像液を混合させることができ、本実施形態の効果以外に第2の実施形態に記載の効果も得られる。
実際に発明者らが、還元性溶液を用いて前処理を行った実験の結果について以下に説明する。実験は、本実施形態に示した手順に従って行った。レジストパターン(0.15μmL/S)の被処理基板面内での寸法バラツキの水素水処理時間に対する変化を、(表4)に示す。
水素水前処理を行うことで、明らかに寸法バラツキが低減し、寸法の均一性、つまり現像の均一性が向上した。この結果から、本発明の効果が確かめられた。
本実施形態では、還元性を有する液体として水素水を用いたが、還元作用を有する液体であれば、水素水に限らない。例えば、H2S、HNO3、H2SO3などを含む水溶液や過酸化水素水なども同様の効果があるとして考えられる。
(第5の実施形態)
図13は、本発明の第5の実施形態に係わる現像ユニットの概略構成を示す図である。なお、図13において、図1と同一な部位には同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
現像ユニットは、図13に示すように、被処理基板100に対して現像液を供給する現像液供給ノズル511と、後述する薬液を供給する薬液供給ノズル512と、現像液供給ノズル511及び薬液供給ノズル512を走査させる図示されない駆動機構とを具備する。
現像液供給ノズル511は現像液吐出時、被処理基板100周外から被処理基板上を一方向に走査することで、被処理基板100表面の全面に現像液を供給する。また、薬液供給ノズル512は、薬液液吐出時、被処理基板100周外から被処理基板上を一方向に走査することで、被処理基板100表面の全面に薬液を供給する。
次に、図14を参照しつつ、現像液供給ノズル511,薬液供給ノズル512,及び洗浄液供給ノズル121に対して溶液を供給する溶液供給系の構成について説明する。図14は、図13に示す現像ユニットの溶液供給系の概略構成を示す図である。
現像液は、現像液供給タンク531から現像液供給ノズル511に直接供給できるようになっている。純水供給源532から供給された純水は、直接、或いは酸化性ガス溶解機構540又は還元性溶解機構550を経由して、薬液供給ノズル512に供給される。酸化性ガス溶解機構540は、酸化性ガス発生器541で生成された酸化性ガスを酸化性ガス溶解膜542に導入し、酸化性ガス溶解膜542に純水を通すことで、純水に酸化性ガスを溶解させる。また、還元性ガス溶解機構550は、還元性ガス発生器551で生成された還元性ガスを還元性ガス溶解膜552に導入し、還元性ガス溶解膜に純水を通すことで、純水に還元性ガスを溶解させる。
なお、図14に示した溶液供給系では、酸化性ガス溶解機構540、還元性ガス溶解機構550との二つの機構を有する構成としたが、必要に応じてどちらか一方のみを設置してもよい。また、ガスをライン供給できる場合、ガス発生器541,551は不要である。
被処理基板上に反射防止膜、化学増幅型レジストを塗布し、KrFエキシマレーザを用い、露光用レチクルを介し所望のパターンを縮小投影露光する。該基板を熱処理し、図15のフローチャートに示すシーケンスで現像を行った。また、図16(a)〜図18(i)に工程図を示す。図15は、本発明の第5の実施形態に係わる現像方法を示すフローチャートである。図16〜図18は、本発明の第5の実施形態に係わる現像工程を示す工程図である。
本実施形態の現像方法を図15のフローチャート,図16〜図18の工程図を参照しつつ順に説明する。
(被処理基板の搬入及び保持:ステップS501)
被処理基板100を現像ユニットへ搬送して、固定台101にて保持した(図16(a))。
(前処理工程:ステップS502)
次いで、洗浄液供給ノズル121から酸化性液体であるオゾン水を吐出させることで被処理基板上にオゾン水561の液膜を形成した(図16(b))。オゾン水561は、酸化性ガス発生器541でオゾンを生成し、純水を酸化性ガス溶解膜542に通すことで生成した。その後、被処理基板100を回転させてオゾン水561を振り切り、被処理基板100表面を乾燥させる(図16(c))。
(現像液膜形成工程:ステップS503)
次いで、現像液供給ノズル511を被処理基板100の一方の端から他方の端へ走査させながらカーテン状に現像液を吐出させることで、被処理基板100上に現像液膜562を形成した(図17(d))。
(薬液供給工程:ステップS504)
次いで、薬液供給ノズル512を被処理基板の一方の端から他方の端へ走査させながらカーテン状に酸化性液体であるオゾン水を吐出させることで現像液膜562の上にオゾン水膜を563形成する(図17(e))。
(攪拌工程:ステップS505)
被処理基板100上に形成された現像液膜562とオゾン水膜563とを十分混ぜ、かつ現像液562中の反応生成物による現像液の濃度むらをなくすため、被処理基板上の整流板104を降下させた後、整流板104を回転させて被処理基板100表面に気流を形成して、その気流により現像液膜とオゾン水膜563とを攪拌する(図17(f))。
(洗浄工程:ステップS506)
所望のパターンが得られる時間が経過した後、被処理基板100を回転させながら洗浄液供給ノズル121より還元性液体である水素水を被処理基板100上へ吐出して、現像を停止させ、現像液及び反応生成物等を洗い流す(図18(g))。
(乾燥工程:ステップS507)
洗浄後、回転機構102により被処理基板100を高速回転させ(図18(h))、乾燥させる(図18(i))。
(被処理基板搬出:ステップS508)
これにより現像工程を終了し、被処理基板100を回収する。
なお、現像液膜やオゾン水膜の形成方法は、直線状現像液供給ノズルを基板の一方の端から他方の端へ走査させ液膜を形成する方法に限らず、例えば直線状ノズルを基板上で基板と相対的に回転しながら薬液を吐出することで、液膜を形成する方法や、基板全面に一様にスプレーノズルから薬液を吹き付けることで液膜を形成する方法など、基板上に均一に液膜を形成できる方法であれば方法に限定されない。また、形成された液膜の攪拌方法は、基板上の整流板を回転させることで気流を発生させて行ったが、例えば基板自体を回転させる方法や、外部からの振動子により液体に振動を与える方法等、現像液を基板全面で流動させる作用があるならばどのような方法でもよい。
前処理工程、薬液供給工程で酸化性液体として、オゾン気体分子を溶解膜に通し、純水に溶解させたオゾン水を用いたが、同様の効果があれば溶解させる気体分子はオゾンに限らず、酸素、一酸化炭素、過酸化水素などの酸化性ガスでもかまわない。
また、洗浄工程で還元性液体として水素気体分子を溶解膜に通し、純水に溶解させた水素水を用いたが、同様の効果があれば溶解させる気体分子は水素に限らず、H2S、HNO3、及びH2SO3などの還元性ガスでもかまわない。また、還元性液体を供給したのち、洗浄効果を高めるため、純水を供給して洗浄を行っても良い。また、還元性液体を供給する前に、洗浄効果を高めるため、オゾン水などの酸化性液体を供給しても良い。洗浄液として、還元性液体、酸化性液体、純水の組合せは、洗浄効果が高められれば、適時選ぶことが可能である。
本実施形態における、酸化性液体による前処理、酸化性液体を含んだ現像液による作用について、以下に説明する。
(1)前処理工程における酸化性液体の作用:レジスト表面の酸化改質
現像中、感光性レジストの露光部表面の分子と現像液中のアルカリイオンとの間には強い親和力が働くが、一方で感光性レジストの非露光部表面の分子と現像液中のアルカリイオンとの間には、互いに接近することで自由エネルギーが高い状態となるため、斥力が働く。このため、被処理レジスト膜上で露光部と非露光部の面積比が異なる領域では、アルカリイオンのレジスト表面から受ける親和力は大きく異なる。この結果、アルカリイオンがレジスト表面へ到達する量が、露光部と非露光部の面積比により変化し、現像の進行度も変化する。つまり、現像速度が被処理レジスト面上の場所で異なる。このため、現像後のレジストパターン寸法の面内での均一性が悪化する。前処理として用いたオゾン水中のオゾン分子は、レジスト表面に接触すると、レジスト表面を酸化することが知られている。露光部・非露光部のレジスト表面はオゾン分子による酸化のため、カルボン酸が生成される。生成されたカルボン酸はアルカリイオンとの間に比較的強い親和力を有しているため、露光部、非露光部の親和力の違いを緩和し、局所的に現像中に発生する現像速度の違いを低減し、現像後の面内均一性を向上させる。
また、現像工程で、レジスト反応生成物のレジスト表面への付着による欠陥が発生することが問題となっているが、これは、レジスト表面と凝集した反応生成物のパーティクル表面との間に、分子間相互作用による親和力が働くためである。オゾン分子は、レジスト表面を酸化し、カルボン酸を生成し、レジスト表面と反応生成物パーティクルの表面での分子間相互作用による親和力を変化させることができ、現像後に欠陥になりうる反応生成物パーティクルのレジスト表面への付着を抑制する。このため、酸化性を有するオゾン水で前処理を行うことで、現像工程で発生する現像後レジストパターンに付着する有機物欠陥の発生を大幅に抑制することができる。
(2−1)酸化性液体を含んだ現像液の第一の作用:反応生成物の酸化分解
露光され、熱処理されたポジ型感光性レジストは、現像時、露光部が溶解され、非露光部はほとんど溶解されない。現像工程において、感光性レジストの露光部が現像液に触れると、溶解が始まると同時に中和反応による反応生成物が生じる。この反応生成物は液中へ拡散するが、一部はレジストパターンの間から拡散せずに、レジスト樹脂と弱い結合をし、留まる。このパターン間に留まった反応生成物は、凝集し、有機パーティクルとなる。露光部の面積が多く、パターン寸法が微細な領域では、これら有機パーティクルが多く存在し、その付近での現像液中のアルカリイオンの濃度を低下させる。その結果、その付近で局所的にレジストパターンの現像速度が遅くなり、現像後のレジストパターンの寸法均一性を悪化させる。また、これらの有機パーティクルは、レジスト表面に付着し、凝集すると、現像後のレジストパターン上に、欠陥として残る可能性がある。
現像液と酸化性液体を基板上で混合することによって、オゾン分子は酸素分子となる。現像中、現像液中の酸素分子が、現像により生じた反応生成物に衝突し、ある確率で反応生成物を酸化し、分解すると考えられる。分解された反応生成物は、低分子となり、その質量が十分小さくなることから液中への拡散も容易になる。十分な濃度の酸素分子が現像液中に存在していれば、反応生成物が酸化され分解される割合も高くなり、反応生成物の現像液中への拡散は、促進され、レジストパターン間やレジスト表面付近に停滞する有機パーティクルの量が低減される。また、現像液中のアルカリイオンが反応面に容易に拡散することも期待できる。この効果が大きい場合、現像工程での攪拌を行わなくてよい。もちろん、攪拌により拡散が促進されるのは言うまでもない。この結果、局所的な現像液のアルカリイオン濃度の低下が抑制され、被処理基板面内での現像速度むらの発生を抑えることができる。また有機パーティクルを酸化分解し、液中へ拡散させることから、現像後にレジストパターン上に残る有機物付着欠陥の発生する確率を著しく低減することができる。
(2−2)酸化性液体を含んだ現像液の第二の作用:現像液の濃度低下に伴う溶解コントラスト増大
基板上に現像液を供給し、酸化性液体を供給し、攪拌を行うことで、次のような作用がある。最初に濃度の高い現像液を供給することによって、大部分の露光領域が現像される。しかし、この際に大量のアルカリが消費され、場所によるアルカリ濃度の差が生じる。その結果、場所によって現像速度が変化し、寸法ばらつきが生じる。その後攪拌によりアルカリ濃度を回復させても、濃度が全体として高くなるため、攪拌前に現像が進んでいる場所、進んでいない場所にかかわらず、さらに現像が促進され、結果として、最初の寸法差を残したまま現像が進んでしまう。しかし、現像液供給後、酸化性液体を供給し、攪拌することによって、アルカリ濃度が全体として低下した状態で濃度が均一になるため、光学像が弱いところまで現像が進んでいるところでは、現像が促進されず、逆に、まだ光学像が比較的強いところまでしか現像が進んでいないところでは、現像が進むというように、溶解コントラストが増大される。その結果、最初の濃度ばらつきに起因するような寸法ばらつきが大きく低減される。
(2−3)酸化性液体を含んだ現像液の第三の作用:反応生成物の凝集の抑制
現像中、生成された反応生成物は現像液中で凝集し、次第にそのサイズを大きくしている。酸化性液体を含んだ現像液の第一の作用で、生成された反応生成物は現像液中の酸素により酸化され、分解されることを述べたが、溶け出す反応生成物の量、さらには各々の反応生成物の含む分子数は液中の酸素分子量に比べ多いため、すべてを酸化、分解することはできない。分解されずに残った反応生成物は、液中で凝集の核になりうる。液中に凝集の核となる分子があると、それを中心に液中の反応生成物は凝集を始める。この時の凝集は、特に現像液中という環境下において、反応生成物のどうしの親和力が比較的強いことから起こる。すなわち、反応生成物の表面を構成する分子は、周囲に存在する他の反応生成物の表面分子との間に直接相互作用を及ぼし合うのではなく、現像液中のイオン、分子を介して、状態をより安定化させるために、間接的に引き付け合うと考えられる。現像液中に酸素分子を含ませることで、反応生成物と現像液との界面におけるエネルギーを下げることができる。このため、反応生成物どうしに働く親和力が見かけ上、弱まる方向へ変化する。凝集の核になりうる分子が液中に存在していても、それが実際に核となって凝集を始める確率は、酸素を液中に含んでいないものに比べ、十分低くなっている。このため、酸素を含んだ現像液中では、反応生成物による凝集の発生確率が低減され、また凝集の始まった反応生成物も、凝集を引き起こす親和力が弱まるためその成長速度が緩慢になる。したがって、反応性生成物の凝集が抑制される。
また、上記の露光部非露光部の現像液に対する親和力の差を緩和し、更に反応生成物の液中への拡散を促進する作用から、現像中の攪拌工程において、僅かな揺動力を与えるだけで効率的に攪拌を行うことができる。
還元性液体による洗浄の作用:反応生成物のレジスト表面への再付着防止
現像反応によって生じた反応生成物は現像液中の酸素分子で分解され、現像液中に拡散されても、洗浄工程で、反応生成物間とレジスト表面で働く相互作用により、反応性生物がレジスト上に欠陥として再付着する場合がある。
水素分子を純水に溶解させた洗浄液を用いることで、水素分子は反応生成物、またはレジストの表面状態を改質させる効果がある。これにより反応生成物とレジスト表面の間に働く分子間相互作用の程度を弱めさせることができる。すなわち、レジスト表面に再付着する反応生成物量が減少され、反応生成物のレジスト表面への再付着が原因となる欠陥の量が大幅に抑制される。
実際に発明者らが、酸化性液体による前処理、酸化性液体を含んだ現像液を用いた事による効果を確かめるために行った実験の結果について以下に説明する。
実験は上記の手順に従って行った。発明の効果を確認するため、ステップS502、S504、S505、S506を変えてサンプルを作製して、3σ及び欠陥数の計測を行った。実験の結果を(表5)に示す。
寸法均一性では、単純に現像液膜を形成し、洗浄した場合に、均一性を示す3σの値(パターンは130nm孤立残しパターン)が9.2nm(リファレンス)であったのに対し、オゾン水前処理を行うことで8.5nm(プロセス2)、現像中にオゾン水を供給し攪拌を行うことで7.5nm(プロセス3)に向上し、これらを組み合わせることで4.1nm(プロセス4)、4.2nm(プロセス5)に向上した。また、現像後のこれらサンプルの有機物付着欠陥数を計測したところ、単純に現像液膜を形成し、洗浄した場合に基板全面で245個の欠陥が計測されたが、オゾン水前処理を行うことで130個(プロセス2)、現像中にオゾン水を供給し攪拌を行うことで50個(プロセス3)に低減され、これらを組み合わせることで25個(プロセス4)、さらに水素水で洗浄することにより14個(プロセス5)に低減された。これらの結果から、本発明の効果が確かめられた。
(第6の実施形態)
本実施形態で用いた現像ユニット及び溶液供給系の構成は、それぞれ第5の実施形態で示したものと同様なので説明を省略する。
被処理基板上に反射防止膜、化学増幅型レジストを塗布し、KrFエキシマレーザを用い、露光用レチクルを介し所望のパターンを縮小投影露光する。該基板を熱処理し、図19のフローチャートに示すシーケンスで現像を行った。また、図16(a)〜図18(i)に工程図を示す。図19は、本発明の第6の実施形態に係わる現像方法を示すフローチャートである。図20〜図22は、本発明の第6の実施形態に係わる現像工程を示す工程図である。
本実施形態の現像方法を図19のフローチャート,図20〜図22の工程図を参照しつつ順に説明する。
(被処理基板の搬入及び保持:ステップS601)
被処理基板100を現像ユニットへ搬送して、固定台101にて保持する(図20(a))。
(水素水処理(前処理)工程:ステップS602)
次いで、洗浄液供給ノズル121から還元性液体である水素水を吐出させることで被処理基板上に水素水661の液膜を形成した(図20(b))。水素水661は、還元性ガス発生器551で水素を生成し、純水を還元性ガス溶解膜552に通すことで生成した。その後、被処理基板100を回転させて水素水661を振り切り、被処理基板100表面を乾燥させた(図20(c))。
(現像液膜形成工程:ステップS603)
次いで、現像液供給ノズル511を被処理基板100の一方の端から他方の端へ走査させながらカーテン状に現像液を吐出させることで、被処理基板100上に現像液膜662を形成する(図21(d))。
(水素水供給工程:ステップS604)
次いで、薬液供給ノズル512を被処理基板の一方の端から他方の端へ走査させながらカーテン状に還元性液体である水素水を吐出させることで現像液膜662の上に水素水膜を663形成する(図21(e))。
(攪拌工程:ステップS605)
被処理基板100上に形成された現像液膜662と水素水膜663とを十分混ぜ、かつ現像液662中の反応生成物による現像液の濃度むらをなくすため、被処理基板上の整流板104を降下させた後、整流板104を回転させて被処理基板100表面に気流を形成して、その気流により現像液膜と水素水膜663とを攪拌し、混合溶液664を形成する(図21(f))。
(洗浄工程:ステップS606)
所望のパターンが得られる時間が経過した後、被処理基板100を回転させながら洗浄液供給ノズル121より還元性液体である水素水を被処理基板100上へ吐出して、現像を停止させ、現像液及び反応生成物等を洗い流す(図22(g))。
(乾燥工程:ステップS607)
洗浄後、回転機構102により被処理基板100を高速回転させ(図22(h))、乾燥させる(図22(i))。
(被処理基板搬出:ステップS608)
これにより現像工程を終了し、被処理基板100を回収する。
なお、現像液膜や水素水膜の形成方法は、直線状現像液供給ノズルを基板の一方の端から他方の端へ走査させ液膜を形成する方法に限らず、例えば直線状ノズルを基板上で基板と相対的に回転しながら薬液を吐出することで、液膜を形成する方法や、基板全面に一様にスプレーノズルから薬液を吹き付けることで液膜を形成する方法など、基板上に均一に液膜を形成できる方法であれば方法に限定されない。また、形成された液膜の攪拌方法は、基板上の整流板を回転させることで気流を発生させて行ったが、例えば基板自体を回転させる方法や、外部からの振動子により液体に振動を与える方法等、現像液を基板全面で流動させる作用があるならばどのような方法でもよい。
前処理工程、薬液供給工程で還元性液体として、水素気体分子を溶解膜に通し、純水に溶解させた水素水を用いたが、同様の効果があれば溶解させる気体分子は水素に限らず、H2S、HNO3、及びH2SO3などの還元性ガスでもよい。また、前処理工程の薬液としては、第1の実施形態で示したように、オゾン水などの酸化性液体でもよい。
また、洗浄工程で酸化性液体としてオゾン気体分子を溶解膜に通し、純水に溶解させたオゾン水を用いたが、同様の効果があれば溶解させる気体分子はオゾンに限らず、酸素、一酸化炭素、過酸化水素などの酸化性ガスでもかまわない。洗浄工程で還元性液体として水素気体分子を溶解膜に通し、純水に溶解させた水素水を用いたが、同様の効果があれば溶解させる気体分子は水素に限らず、H2S、HNO3、及びH2SO3などの還元性ガスでもかまわない。また、還元性液体を供給したのち、洗浄効果を高めるため、純水を供給して洗浄を行っても良い。洗浄液として、還元性液体、酸化性液体、純水の組合せは、洗浄効果が高められれば、適時選ぶことが可能である。
本実施形態における、還元性液体による前処理、還元性液体を含んだ現像液、及び酸化性液体による洗浄の作用について、以下に説明する。
(1)前処理工程における還元性液体の作用:レジスト表面の改質
露光され、熱処理されたポジ型感光性レジストは現像中、レジストの露光部表面の分子と現像液中のアルカリイオンとの間に働く親和力とレジストの非露光部表面の分子と現像液中のアルカリイオンとの間に働く親和力の強さが異なる。この為に、被処理レジスト膜上で露光部と非露光部の面積比が異なる領域では、アルカリイオンがレジスト表面から受ける親和力は大きく異なる。この結果、レジスト表面に流れ込むアルカリイオンの量は、露光部と非露光部の面積比により変化する為に、現像の進行速度が変化する。即ち、現像速度が被処理レジスト面上の場所で異なる。このため、現像後のレジストパターン寸法の均一性が悪化する。
水素分子はレジスト表面に接触すると、レジスト表面を還元する作用を有する。これにより、露光部表面と非露光部表面の現像液に対する親和力の差を緩和することで、局所的に現像中に発生する現像速度の違いを低減し、現像後の寸法均一性を向上させる。
(2−1)還元性液体を含んだ現像液の第一の作用:反応生成物の現像液中への拡散の促進
ポジ型レジストは現像工程において露光部は現像液に溶解されるのに対し、非露光部はほとんど溶解されない特性を有する。これは感光性レジストの露光部では現像液との中和反応によって生じる反応生成物が現像液中に溶解する為である。しかし、被処理レジスト上で露光部と非露光部の占める面積比が異なる場合は反応生成物の生成量は大きく異なる。例えば、孤立パターンの場合には周囲に広く露光部が存在する為にL/Sパターンに比べ、反応生成物の量は著しく多い。生成した反応生成物はパターン間に留まりやすく、現像液中に拡散されにくい為に、孤立パターン周辺の現像液のアルカリ濃度がL/Sパターンのアルカリ濃度に比べ低くなる。その為、所望のパターン寸法を形成するのに必要とされる時間がパターンによって異なる。即ち、パターンの違いによって現像に必要とされる時間が異なることで、現像後のレジストパターン寸法の疎密寸法差が大きくなることが問題となっている。この疎密差を現像途中に攪拌のみによって反応生成物を完全に除去し、寸法差を改善することは困難である。
現像液中に含まれる水素分子が中和反応によって生じた反応生成物と還元反応することによって、反応生成物の表面電位が変化する。これにより、反応生成物間に斥力が生じ、互いの凝集が妨げられることで、反応生成物は現像液中に速やかに拡散され、現像が進行する。即ち、水素分子によって反応生成物の表面電位を変化させることで、現像液のアルカリ濃度差によって生じる疎密寸法差を大幅に低減できる。もちろん、攪拌を加えることで、反応性生物の拡散が促進されることは言うまでもない。
(2−2)還元性液体を含んだ現像液の第二の作用:現像液の濃度低下に伴う溶解コントラスト増大
基板上に現像液を供給し、還元性液体を供給し、攪拌を行うことで、次のような作用がある。最初に濃度の高い現像液を供給することによって、大部分の露光領域が現像される。しかし、この際に大量のアルカリが消費され、場所によるアルカリ濃度の差が生じる。その結果、場所によって現像速度が変化し、寸法ばらつきが生じる。その後攪拌によりアルカリ濃度を回復させても、濃度が全体として高くなるため、攪拌前に現像が進んでいる場所、進んでいない場所にかかわらず、さらに現像が促進され、結果として、最初の寸法差を残したまま現像が進んでしまう。しかし、現像液供給後、還元性液体を供給し、攪拌することによって、アルカリ濃度が全体として低下した状態で濃度が均一になるため、光学像が弱いところまで現像が進んでいるところでは、現像が促進されず、逆に、まだ光学像が比較的強いところまでしか現像が進んでいないところでは、現像が進むというように、溶解コントラストが増大される。その結果、最初の濃度ばらつきに起因するような寸法ばらつきが大きく低減される。
(2−3)還元性液体を含んだ現像液の第三の作用:反応生成物の凝集の緩和
現像反応によって生じた反応生成物は1度現像液中に拡散されても、その後、液中で反応生成物間で働く相互作用により凝集する可能性がある。その為、凝集した反応生成物がレジスト上に再付着することで欠陥になることが問題となっている。
現像液中に水素分子を含有させることで、水素分子は反応生成物、またはレジストの表面状態を改質させる効果がある。これにより反応生成物間に働く分子間相互作用の程度を弱めさせることができ、現像液中の水素分子が反応生成物の凝集を抑制することが可能になる。すなわち、レジスト表面に再付着する反応生成物量が減少され、凝集した反応生成物のレジスト表面への再付着が原因となる欠陥の量が大幅に抑制される。
(3)酸化性液体による洗浄の作用:付着した有機パーティクルの酸化分解
露光され、熱処理されたポジ型感光性レジストは、現像時、露光部が溶解され、非露光部はほとんど溶解されない。現像工程において、感光性レジストの露光部が現像液に触れ、溶解が始まると同時に中和反応による反応生成物が生じる。この反応生成物は液中へ拡散するが、一部はレジストパターンの間から拡散せずに、レジスト樹脂と弱い結合をし、留まる。このパターン間に留まった反応生成物は、凝集し、有機パーティクルとなる。これらの有機パーティクルは、レジスト表面に付着し、凝集すると、現像後のレジストパターン上に、欠陥として残る可能性がある。
洗浄液として、酸化性液体を用いることにより、有機パーティクルを酸化分解し、液中へ拡散させることから、現像後にレジストパターン上に残る有機物付着欠陥の発生する確率を著しく低減することができる。
還元性液体による洗浄の作用:反応生成物のレジスト表面への再付着防止現像反応によって生じた反応生成物は現像液中の酸素分子で分解され、現像液中に拡散されても、洗浄工程で、反応生成物間とレジスト表面で働く相互作用により、反応性生物がレジスト上に欠陥として再付着する場合がある。
水素分子を純水に溶解させた洗浄液を用いることで、水素分子は反応生成物、またはレジストの表面状態を改質させる効果がある。これにより反応生成物とレジスト表面の間に働く分子間相互作用の程度を弱めさせることができる。すなわち、レジスト表面に再付着する反応生成物量が減少され、反応生成物のレジスト表面への再付着が原因となる欠陥の量が大幅に抑制される。
実際に発明者らが、還元性液体による前処理、還元性液体を含んだ現像液を用いた現像、酸化性液体による洗浄を行った事による効果を確かめるために行った実験の結果について以下に説明する。
実験は上記の、手順に従って行った。発明の効果を確認するため、ステップS602、S604、S605、S606を変えてサンプルを作製し、それぞれの3σ及び欠陥数を計測した。実験の結果を(表6)に示す。
寸法均一性(3σ)現像液膜を形成し、洗浄した場合に、均一性を示す3σの値(パターンは130nm孤立残しパターン)が9.2nm(リファレンス)であったのに対し、水素水前処理を行うことで8.4nm(プロセス2)、現像中に水素水を供給し攪拌を行うことで6.5nm(プロセス3)に向上し、これらを組み合わせることで4.1nm(プロセス4)、4.0nm(プロセス5)に向上した。また、現像後のこれらサンプルの有機物付着欠陥数を計測したところ、単純に現像液膜を形成し、洗浄した場合に基板全面で245個の欠陥が計測されたが、水素水前処理を行うことで150個(プロセス2)、現像中に水素水を供給し攪拌を行うことで45個(プロセス3)に低減され、これらを組み合わせることで40個(プロセス4)、さらにオゾン水と水素水で洗浄することにより10個(プロセス5)に低減された。これらの結果から、本実施形態における効果が確かめられた。
(第7の実施形態)
図23は、本発明の第7の実施形態に係る薬液処理方法の処理手順を示すフローチャートである。また、図24〜図27は、本発明の第7の実施形態に係わる薬液処理方法を示す工程図である。
(被処理基板の搬入及び保持:ステップS701)
表面に塗布された反射防止膜、化学増幅型レジストに、KrFエキシマレーザを用い、露光用レチクルを介し所望のパターンが縮小投影露光した後、加熱処理(PEB)された被処理基板700は、図示されない搬送ロボットにより現像ユニットに搬送され、吸引により固定台701に保持される(図24)。
(現像液膜形成工程:ステップS702)
次いで、図25(a)、(b)に示すように、直線状の現像液供給ノズル711を被処理基板700の一方の端から他方の端へ走査させながら、現像液供給ノズル711の供給口カーテン状に現像液を吐出させることで、被処理基板700上に現像液膜762を形成する。なお、図25(a)は本発明の第7の実施形態に係わる薬液処理方法の一部を示す断面図、図25(b)は図25(a)の平面図である。本実施形態の現像液供給ノズル711は、走査方向に対して垂直な方向(図面奥行き方向)の供給量分布が一定に保たれているものである。
ここで、本発明の第7の実施形態に係わる被処理基板に形成される薬液膜厚と現像液供給ノズル711−被処理基板700間のギャップとの関係について、図28を用いて説明する。
先ず、液膜を形成する際、形成される液膜厚に比べ、現像液供給ノズル711−被処理基板700間のギャップが大きい場合(d<<H)、図28(a)に示すように、現像液供給ノズル711から吐出される現像液は現像液供給ノズル711によって上方に引っ張られる為、液供給時の現像液731の膜厚は定常状態に比べ厚くなり、高低差ができている。従って、被処理基板700の終端で現像液の供給を止めた時には、その反動から現像液膜731の膜厚が薄い方向への現像液の流れが生じる。この現像液の流動は現像後のパタン寸法にバラツキを生じさせる可能性がある。
一方、形成される薬液膜厚に比べ、ノズル−被処理基板間のギャップが極端に小さい場合(d>>H)、図28(b)に示すように、現像液供給ノズル711から吐出される現像液は現像液供給ノズル711から押し出されており、現像液供給時の現像液731の膜厚は定常状態に比べ薄くなり、高低差ができている。従って、被処理基板700終端で薬液の供給を止めた時には、液膜厚が薄い方向への薬液の流れが生じる。このようにして、現像液供給ノズル711−被処理基板700間のギャップと現像液膜731の膜厚との高低差に依存した現像液の流れによる寸法ばらつきが生じる可能性がある。
そこで、この現像液供給ノズル711−被処理基板700間のギャップと現像液膜731の膜厚によって生じる液流れに伴う寸法変動をなくす為に、図28(c)に示すように現像液供給ノズル711−被処理基板700間のギャップを現像液膜731の膜厚と同程度になるように設定し、現像液の供給を行う。これにより、現像液供給ノズル711を走査させて現像液の供給を行うことで生じる液の流れをなくすことが出来る。即ち、現像液供給ノズル711を走査させることによる現像液の流れを抑制させ、走査方向に依存した面内の寸法ばらつきやチップ内での寸法ばらつきを大きく低減させることが可能となる。
現像液供給ノズル711から現像液を供給しつつ、現像液供給ノズル711を被処理基板700の一端から他端まで走査させることで現像液膜を形成させる際には、その現像液膜762の膜厚は現像液供給ノズル711の走査速度と現像液供給ノズル711からの現像液の供給速度との相対速度で決まる。
具体的には、現像液供給ノズル711の供給口の長さをL(mm)、ノズル走査速度V(mm/sec)、薬液供給速度Q(μl/sec)、形成される液膜厚をd(mm)、前記ギャップをH(mm)と定義した時、以下の関係式(1)及び(2)を満たすように、ノズル走査速度V(mm/sec)、薬液供給速度Q(μl/sec)、ギャップH(mm)の中の少なくとも1つを制御する。
d≒H…(1)
d=Q/(V×L)…(2)
(ステップS703:洗浄工程)
液膜形成後、所定時間経過した後に図26に示すように、被処理基板700の上方に配置されたリンスノズル721からリンス液(例えば純水)732を供給し、回転機構702により被処理基板700を回転させながら被処理基板700を洗浄する。
(ステップS704:乾燥工程)
さらに、図27に示すように、被処理基板700を高速回転させることでリンス液を振り払い、被処理基板700を乾燥させる。
(ステップS705:被処理基板搬出)
そして、乾燥が終了した被処理基板700を図示されない搬送ロボットにより現像ユニットの外部に搬出する。
次に、実際の実験結果をもとに説明する。図29に現像液供給ノズル711−被処理基板700間のギャップを変えた時のチップ内での孤立線の寸法均一性を示す。実験条件は現像液供給ノズル711の走査速度V=50mm/sec、薬液供給速度Q=20ml/sec、現像液供給ノズル711の供給口の長さL=200mmとすると、式(2)より形成される現像液膜の膜厚はd=2.0mmであるが、この膜厚にほぼ等しいギャップを与えることで液の流れがなくなり、被処理基板面内での寸法均一性が向上することがわかる。
なお、上記実施形態では、現像液の液膜形成工程を用いて説明したが、本実施形態に技術は、反射防止材を含む薬液、感光性材料を含む溶液、低誘電体材料を含む溶液、強誘電体材料を含む溶液、電極材料を含む溶液、パターン転写材料を含む溶液、ドーナツ状記憶媒体に用いられる磁性体材料を含む溶液、ドーナツ状記憶媒体に用いられる光吸収反応材料を含む溶液等の薬液の膜形成に用いることができる。
(第8の実施形態)
本実施形態では、第7の実施形態で示した制御に加えて、さらなる制御を加えて均一な液膜を形成する方法について説明する。現像液の形成方法は、第7の実施形態と同様なので、その説明を省略する。現像液の供給工程における制御ついてのみ説明する。
第7の実施形態と同様、現像液供給ノズル711から現像液を供給し、現像液供給ノズル711を被処理基板700の一端から他端まで走査させることで現像液膜を形成させる際、現像液膜の膜厚は現像液供給ノズル711の走査速度と、現像液供給ノズル711からの現像液の供給速度と比で決まる。具体的には、現像液供給ノズル711の供給口の長さをL(mm)、ノズル走査速度V(mm/sec)、薬液供給速度Q(μl/sec)、形成される液膜厚をd(mm)、前記ギャップをH(mm)と定義した時、形成される液膜厚d(mm)は近似的に以下の式で記述される。
d≒H…(1)
d=Q/(V×L)…(2)
ここで、このノズル走査速度V(mm/sec)、薬液供給速度Q(μl/sec)を制御する方法について述べる。
被処理基板700が円形状のウェハの場合、薬液供給ノズル711から同一薬液供給速度、かつ同一供給量で薬液膜を形成しても被処理基板は円形をしている為に、薬液の実質的供給量は被処理基板の場所ごとに異なる。例えば、図30(a)に示すように、現像液供給ノズル711が供給開始端から被処理基板700中央まで通過する間、被処理基板上への現像液供給ノズル711から現像液が供給されている部分の被処理基板700の長さ(以下、現像液供給長さと記)が徐々に増加していく。従って、図30(b)に示すように、現像液供給ノズル711から現像液831と被処理基板700との相互作用によって、被処理基板700周外に向かって現像液831が流れる力が働き、形成される現像液膜832の膜厚は薄くなる。
また、図31(a)に示すように、現像液供給ノズル711が被処理基板700中央から薬液供給開始端までを通過する間、現像液供給ノズル711の走査に伴い現像液供給長さが徐々に減少する。従って、図31(b)に示すように、現像液供給ノズル711から被処理基板700周外に供給される現像液831が被処理基板700面内に引き付けられる力が働き、形成される現像液膜の膜厚が厚くなる。これにより、被処理基板700の終端で薬液の供給を止めた際には、液膜厚の薄い方に向かって薬液の流れが生じ、被処理基板面内で現像液の流れに依存した寸法ばらつきが現像液膜832に生じる。
このような薬液と被処理基板との相互作用によって生じる液膜厚の変化をなくす為に、例えば、下記に表されるような近似式(3),(4)で薬液供給速度Q(μl/sec)、あるいはノズル走査速度V(mm/sec)を補正する。
Q=Q0{1+α×(dl/l)}…(3)
V=V0{1−α’×(dl/l)}…(4)
ここで、ウェハ中央での薬液供給速度Q0(μl/sec)、ノズル走査速度V0(mm/sec)、ギャップH(mm)を式(1)及び式(2)を満たすように設定した上で、被処理基板上にあるノズルの位置に応じて薬液供給速度Q(μl/sec)、あるいはノズル走査速度V(mm/sec)を制御する。具体的には、現像液供給ノズル711の供給口の長さL(mm)、ウェハ半径をr(mm)、ノズル走査速度をV(mm/sec)、形成される液膜厚をd(mm)、ウェハ中央からの走査ノズル位置をx(mm)(−r≦x≦r)、ノズルが基板上を通過する単位距離(dx)だけ移動した時の、前記薬液が供給されている部分の被処理基板の長さl(mm)の変化量(dl/l)、α及びα’をそれぞれ薬液供給速度、及びノズル走査速度の制御因子とする。
このように近似的に式(3)及び式(4)によって薬液供給速度Q(μl/sec)、ノズル走査速度V(mm/sec)を補正することによって、液膜厚dをほぼ一定に保つことができる。
具体的には図32に示すように、薬液供給速度Q(μl/sec)を制御する。これにより一様な薬液供給速度でノズルの一端から他端まで走査する薬液供給方法によって生じた薬液膜厚の変動をなくし、それに伴う液の流れを抑制することができる。即ち、薬液の流れが抑制されることで、被処理基板面内の寸法均一性、並びにチップ内の寸法均一性が向上する。同様の効果が図33に示すようにノズル走査速度V(mm/sec)を制御することでも得られる。
次に、実際に行った実験結果(表7)をもとに説明する。
ノズル走査速度V=50mm/sec、薬液供給速度Qのウェハ中央での薬液供給速度Q0=20ml/sec、L=200mmとし、式(3)の関係を満たすように薬液供給速度を制御しながら薬液供給を行った。実験の結果、ノズルの走査地点に応じて薬液供給速度を制御することで、ウェハ面内での寸法均一性が向上する。
なお、上記実施形態では、現像液の液膜形成工程を用いて説明したが、本実施形態に技術は、反射防止材を含む薬液、感光性材料を含む溶液、低誘電体材料を含む溶液、強誘電体材料を含む溶液、電極材料を含む溶液、パターン転写材料を含む溶液、ドーナツ状記憶媒体に用いられる磁性体材料を含む溶液、ドーナツ状記憶媒体に用いられる光吸収反応材料を含む溶液などの薬液の膜の形成に用いることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することが可能である。