JP4475652B2 - 累進屈折力レンズの製造方法 - Google Patents
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一般的に累進屈折力レンズは屈折力のそれぞれ異なる2つの屈折領域と、それら両領域の間で屈折力(度数)が累進的に変わる累進領域とを備えた非球面レンズとされており、境目がなく1枚のレンズで遠くのものから近くのものまで見ることができるものである。ここに2つの領域とはレンズの上方位置に設定された遠用部領域と、レンズの下方位置に設定された近用部領域の2つの領域のことである。遠用部領域と近用部領域との移行帯である累進領域は滑らかかつ連続的に連結されている。
遠用部領域は主として遠距離の物体を目視するための領域であり、近用部領域は主として近距離の物体を目視するための領域であり、累進領域は主として中距離の物体を目視するための領域である。もっとも累進屈折力レンズは屈折力が連続的に変化しているためこれら領域が明確に区画されているわけではない。
また、レンズのほぼ中央を通り、遠用部領域、累進領域及び近用部領域を貫く主注視線が存在する。主注視線はもっとも自然に視線が通過する位置であるため、この主注視線付近がもっともレンズ収差がよく補正された領域となる。
もっとも、従来では累進屈折力レンズの設計データとしては他のデータに比べてインセットはそれほど重視はされず、遠用度数や加入度数が異なる累進屈折力レンズであってもインセットだけは共通したインセット量に設計されたレンズが製造されることが多かった。これはインセット量の違いがそれほど実際の装用に大きな影響を与えるものではないと考えられていたからである。しかしながら、最適なインセット量が設定された眼鏡と比較すれば本来装用感は劣るものであり、老視の進行によって眼鏡を変えた際にインセット量が変わらなければ装用者に違和感を与えその新しい眼鏡に順応することを強いることとなって好ましくない。
そのため例えば特許文献1に示すように、装用者の瞳孔間距離等の個別装用データに基づいてインセット量を設定する技術が開示されている。
そのため、低コストで装用者に応じた好適なインセット量が設定された累進屈折力レンズが求められていた。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その第1の目的は、累進屈折力レンズの製造方法において遠用アイポイントと近用アイポイントとの位置関係についてベースカーブデータに基づいて決定することでオーダーメイドに近い好適な累進屈折面の設定を可能とすることであり、第2の目的はそのような累進屈折面が設定されたレンズ前駆体を製造し、同じベースカーブのレンズ前駆体をグループ化してストックしておくことで製造コストを削減できるようにしたことである。
(a) インセット量(Ci,Aj)<インセット量(Ci+1,Aj )
(b) インセット量(Ci,Aj)<インセット量(Ci ,Aj+1)
(C:ベースカーブ、A:加入度、i:自然数であってベースカーブの浅い方からの順序を示す、j:自然数であって加入度の小さい方からの順序を示す)
また請求項3の発明では請求項1又は2の発明の構成に加え、同一のベースカーブデータに基づいて形成された前記累進屈折面を有する前記レンズ前駆体同士のインセット量は同一であることをその要旨とする。
また請求項5の発明では請求項1〜4のいずれかに記載の発明の構成に加え、すべての前記レンズ前駆体において、累進帯長は同一であることをその要旨とする。
累進屈折力レンズにおいては基本的にベースカーブデータと、加入度データによって所定の累進帯長の累進屈折面を形成することが可能である。そこでベースカーブと加入度の組み合わせによって所定の累進帯長の累進屈折面を備えたレンズ前駆体を前もって複数種類ストックする。例えば5種類の異なるベースカーブを用意し、加入度を11パターン用意するとこれらの組み合わせによる累進屈折面のパターンは55種類となる。更にレンズは左右で一対なので110種類となる。つまり、110種類に区分けしたレンズ前駆体を前もって用意する。
ここに、ベースカーブとは累進屈折面を構築するための基本となる曲面であって、遠用部領域の形状に近似的に一致する球面をいうものとする。あるベースカーブによって遠用部領域が決まれば加入度と累進帯長によって累進屈折面の特性がほぼ定まる。一般にベースカーブは遠用度数がプラスであるほど深いカーブに形成され、遠用度数がマイナスであるほど浅いカーブに形成される。
ここに、加入度とは遠用度数と近用度数との差であって装用者固有の遠用度数や好みによって選択される条件である。加入度は最大範囲で0.5〜4.0ディオプタ(D)、一般にはそれよりやや狭い範囲において0.25ディオプタ(D)刻みに設定される。例えば、1.0〜3.5ディオプタ(D)を0.25ディオプタ(D)刻みに設定した場合では全11種類の加入度のレンズが想定できる。
ここに累進帯長とは遠用アイポイントから近用アイポイントまでの垂直方向の長さをいう。累進帯長とは累進領域の垂直方向の長さであり、遠用度数がプラスのレンズであるほど長く、遠用度数がマイナスのレンズであるほど短く設定される。累進帯長は遠用アイポイントと近用アイポイント間の垂直方向の距離で定義される。
所定の長さをインセットとした場合のメリットについて説明する。上記のようにベースカーブは複数種類用意されており、遠用度数によって当該遠用度数の対応するベースカーブが決定されるようになっている。つまり、ベースカーブと遠用度数には一定の相関関係があるものである。そのため、ベースカーブ毎に所定のインセット量を設定することでインセットに関しオーダーメイドに近い極めて好適なレンズ前駆体を用意できる。
インセットはわずかな遠用度数の違いで細かに設定しなければならないほどの微妙なパラメータではないものの、遠視から近視にかけての遠用度数の遷移全体の中では装用者の遠用度数に応じて調整することが好ましい。そのため、このようにベースカーブに基づいてインセットを設定することにより不必要な細かな設定をしなくともよくなる。そして、それにも関わらす理想的なインセット量に近いインセットを設定することが可能となっている。
(a) インセット量(Ci,Aj)≦インセット量(Ci+1,Aj )
(b) インセット量(Ci,Aj)≦インセット量(Ci ,Aj+1)
(C:ベースカーブ、A:加入度、i:自然数であってベースカーブの浅い方からの順序を示す、j:自然数であって加入度の小さい方からの順序を示す)
この関数式は次のような内容を示している。
例えば、ベースカーブがカーブの浅い順(つまり曲率半径の大きな順)にC1〜C5の5種類が用意されているとする。また、加入度については例えば、1.0〜3.5ディオプタ(D)を0.25ディオプタ(D)刻みに設定した全11種類が用意されているとする。
この場合に(a)式については例えばベースカーブC1でかつ2.0ディオプタ(D)の加入度で累進屈折面を設定したレンズ前駆体P1のインセット量は、同じ加入度でベースカーブC2の累進屈折面を設定したレンズ前駆体P2のインセット量よりも同じか小さく設定される。つまり、加入度が同じレンズ前駆体であればベースカーブの深い方のインセット量が常に大きいか等しいような傾向に設定する。
また、(b)式については逆に同じベースカーブのレンズ前駆体であれば加入度の大きい方のインセット量が常に大きいか等しいような傾向に設定する。これらはレンズの屈折力の違いがインセット量に影響があることを考慮したものであり、このような傾向を与えることで更にオーダーメイドに近い極めて好適なレンズ前駆体を用意できる。
累進帯長は以下のような理由で調整するメリットがある。すなわち遠用度数がマイナスであるレンズ装用者は近視である。近視の人は、もともと近くを見ることは得意としている。眼鏡が無い状態でもすぐ近くの物ならば見ることができるためである。そこで、眼鏡を装用した状態でも近用が見やすいほうが好まれる。
一方、遠用度数がプラスであるレンズ装用者は遠視である。遠視の人は、もともと遠くを見ることを得意としているが、裸眼では近くを見にくい。したがって、累進帯長が長いレンズを装用して近用視の際に眼回旋の負担が大きくてもある程度我慢できる。また、プラス度数のレンズは物が拡大されて見えるので、一般に遠視の人は累進屈折力レンズに慣れにくいケースが近視の人に比べて多い。
これらの点から、マイナス度数のレンズでは累進帯長を短くして近用部領域を縦方向に広げ、眼を下方に向けて回旋する量が少なくても近くを見やすくするような特性とする。また、プラス度数のレンズでは累進帯長を長くして、遠用部から近用部にかけての加入の加わり方を緩やかにしている。
マイナス度数とプラス度数のレンズではこのような累進帯長の特性を有するが、累進帯長とベースカーブに関係についてはインセット量と同様ベースカーブが深いほど累進帯長が長い方が好ましい。つまり、図4に示すようにプラス度数のレンズは、近用部においてアッププリズムが作用し、一方マイナス度数のレンズは、図5に示すように近用部においてダウンプリズムが作用する。出願人はこのようなプリズム作用を補償してマイナス度数のレンズおいてもプラス度数のレンズにおいてもほぼ同等の下方視界を近用部領域に収めるためにベースカーブが深いものほど累進帯長を長く設定することで好ましい結果が得られることをシミュレーションにおいて確認した。
つまりベースカーブと理想的に設定される累進帯長にはプラス度数とマイナス度数のレンズの違いに関わらず一定の相関関係があることを解明した。そのため、ベースカーブ毎に所定の累進帯長を設定することで累進帯長に関しオーダーメイドに近い極めて好適なレンズ前駆体を用意できる。
このような点から累進帯長は以下の関数式に従って設定されていることが好ましい。
累進帯長(Ci,Aj)≦累進帯長(Ci+1,Aj )
(C:ベースカーブ、A:加入度、i:自然数であってベースカーブの浅い方からの順序を示す、j:自然数であって加入度の小さい方からの順序を示す)
つまり同じ加入度のレンズ前駆体であれば常にベースカーブの深い方が累進帯長が長くなるように設定する。このような傾向を与えることで累進帯長に関し更にオーダーメイドに近い極めて好適なレンズ前駆体を用意できる。
このとき、同一のベースカーブデータに基づいて形成された累進屈折面を有するレンズ前駆体同士の累進帯長は同一(つまり1つ)であることが好ましいが、より最適な累進帯長とするために同一のベースカーブにおいて更に複数の累進帯長を設定してサブグループ化するようにしても構わない。また、すべての前記レンズ前駆体において、累進帯長が同一であってもよい。製品の均一化を図ることでコストの削減となるからである。
このようなレンズ前駆体はプラスチックレンズではモールド成形によって成形するのが一般的であるが、ガラスブロックやプラスチックブロックからの切削・研削加工によって得ることも可能である。累進屈折面は外面側でも内面側でも構わない。
図1に示すように、本実施の形態の累進屈折力レンズの製造工程は第1の加工工程とそれに続く第2の加工工程からなる2つの工程から成り立っている。第1の加工工程では主としてレンズ外面に所定の累進屈折面を形成することが目的であり、第2の加工工程では主としてレンズ内面に所定の遠用度数を形成することが目的である。
第1の加工工程では図2に示すようないわゆる「セミフィニッシュ」と呼ばれる十分な厚みを有するレンズ前駆体としての円形のレンズ用ブロック10を製造する。本実施の形態ではレンズ用ブロック10は累進屈折面が外面に形成される外面累進屈折力レンズとされる。
レンズ用ブロック10は図3に示すように上下に分割されたモールド11,12中に調整された液状の熱硬化性プラスチック樹脂Rを充填し、モールド11,12を加熱炉にて加熱し、固化させて得られる。本実施の形態1では上モールド11のキャビティ内上面部13はレンズ外面の球面に対応した凹形状とされている。下モールド12のキャビティ内下面部14はレンズ内面に対応した凸形状の球面とされている。
本実施の形態では5種類のベースカーブと、全11種類の加入度のレンズの組み合わせに対応した全55種類のモールド11,12が用意される。
レンズ用ブロック10はベースカーブと加入度に基づいてグループ化され、各グループ毎にストックされることとなる。まず、ベースカーブの共通するレンズ用ブロック10毎にまとめ大きく5区分に分類し、各区分において加入度の違いでサブグループ化する。これらのグループ化は更に左右のレンズの違いで大きく2つに分けることも可能である。
上記第1の加工工程において得られたベースカーブのそれぞれ異なるレンズ用ブロック10からユーザーに好適のベースカーブのレンズ用ブロック10を選ぶ。遠用度数が属する帯域とベースカーブとは対応しているため、基本的に遠用度数が属する帯域に対応するベースカーブのレンズ用ブロック10を選択することとなる。但し、左右のレンズで遠用度数が異なる帯域に含まれることとなった場合は、いずれか一方のベースカーブを採用して使用することもできる。
本実施の形態ではこの段階で図示しない研削装置を使用してレンズ用ブロック10の内面に装用者固有の遠用度数の研削加工を施す。レンズ用ブロック10に遠用度数の加工を施した段階で累進屈折力レンズ20(以下、単にレンズ20とする)が得られる。図3はいわゆる丸レンズと呼称されるフレーム入れ前のものであって、この丸レンズをユーザーの所望のフレーム形状に切削加工してレンズは完成する。上記第2の加工工程にこのフレーム形状に切削加工することを含めることも可能である。
上記のようにレンズ用ブロック10は5種類のベースカーブと全11種類の加入度の組み合わせによって全55種類のレンズ用ブロック10が用意されることとなる。表1に基づいてその一例として加入度2.00ディオプタ(D)のレンズ20(レンズ屈折率1.60、累進帯長13mm)におけるベースカーブとインセット量の関係について説明する。
表1ではこの加入度帯域において5種類のベースカーブが設定されている。各ベースカーブにはカーブの浅い方(カーブの曲率半径の大きい方)から順に1.9mm、2.1mm、2.3mm、2.5mm、2.7mmのインセット量のインセットが設定されている。
遠用度数とベースカーブは対応関係にあり、−10.00〜−4.25ディオプタ(D)の範囲の遠用度数についてはすべて1.9mmのインセット量とされ、−4.00〜−1.25ディオプタ(D)の範囲の遠用度数についてはすべて2.1mmのインセット量とされ、−1.00〜+1.50ディオプタ(D)の範囲の遠用度数についてはすべて2.3mmのインセット量とされ、+1.75〜+3.50ディオプタ(D)の範囲の遠用度数についてはすべて2.5mmのインセット量とされ、+3.75〜+6.0ディオプタ(D)の範囲の遠用度数についてはすべて2.7mmのインセット量とされている。
尚、表1はベースカーブの違いにより固有のインセット量が設定される旨を表で示したものであり、実際のグループ化においてはレンズ用ブロック10はベースカーブ毎に区分され、各区分において更に加入度の違いでサブグループ化されるものである。
このようにベースカーブが深くなるにつれてインセット量も大きくなる傾向はすべての加入度について同様である。
表2は一例としてベースカーブの曲率半径が435.833mmの場合における加入度の違いによるインセットの変化を説明したものである。つまり、遠用度数−10.00〜−4.25ディオプタ(D)の帯域に対応するベースカーブ(曲率半径が435.833mm)の条件においては加入度の違いにより表2のようなインセット量が与えられている。この表2から分かるようにインセット量は加入度が大きくなるにつれて大きくなるような相関関係が与えられている。このように加入度が大きくなるにつれてインセット量も大きくなる傾向はすべての遠用度数について同様である。
表3でもこの加入度帯域において5種類のベースカーブが設定されている。各ベースカーブにはカーブの浅い方(カーブの曲率半径の大きい方)から順に13.0mm、13.5mm、14.0mm、14.5mm、15.0mmの累進帯長が設定されている。
遠用度数とベースカーブは対応関係にあり、−10.00〜−4.25ディオプタ(D)の範囲の遠用度数についてはすべて13.0mmの累進帯長とされ、−4.00〜−1.25ディオプタ(D)の範囲の遠用度数についてはすべて13.5mmの累進帯長とされ、−1.00〜+1.50ディオプタ(D)の範囲の遠用度数についてはすべて14.0mmの累進帯長とされ、+1.75〜+3.50ディオプタ(D)の範囲の遠用度数についてはすべて14.5mmの累進帯長とされ、+3.75〜+6.0ディオプタ(D)の範囲の遠用度数についてはすべて15.0mmの累進帯長とされている。
このようにベースカーブが深くなるにつれて累進帯長も長くなる傾向はすべての加入度について同様である。
(1)同じベースカーブを適用して累進屈折面Pを形成する場合では同一のインセット量及び累進帯長が設定されることとなる。従って、個々のレンズ毎に固有のインセット量や累進帯長を計算する必要がなく、前もって用意されたレンズ用ブロック10からベースカーブと加入度の一致するレンズ用ブロック10を選択するだけで好適なインセット量及び累進帯長のレンズ20を提供することが可能となり、結果として低コスト化に寄与する。
(2)ベースカーブの違いによってグループ化しておき、遠用度数と対応するベースカーブのレンズ用ブロック10を選択するだけで好適なインセット量及び累進帯長のレンズ20を提供することが可能となるため、作業能率が向上し、結果として低コスト化に寄与する。
(3)例えば装用者の理想的なインセット量や累進帯長を求めるために更にベースカーブ毎に複数のインセット量や累進帯長を用意すると非常に多くの種類をストックしなければならなくなる。ところが、上記のような設定では前もって用意するレンズ用ブロック10をそれほど多くせずにすむため管理も面倒ではなく、各種類毎に複数のレンズ用ブロック10を用意したとしてもストックスペースがそれほど必要となるわけではないため保存コストも安価となる。
(4)同じベースカーブであっても加入度が大きくなるにつれてインセット量も微妙に大きくするようにしているため、加入度に応じたより好適なインセット量のレンズ20を提供することが可能となる。
(5)レンズ用ブロック10の内面加工は単に遠用度数や乱視矯正面を出すためだけの研削となるので精密な加工の可能なCAM(computer aided manufacturing)装置を用いる必要はない。そのため、作業スピードがアップし、更に加工コストを安価に抑制することが可能となる。
・上記実施の形態ではレンズ外面に所定の累進屈折面を形成する外面累進屈折力レンズに適用した例を挙げたが、内面累進屈折力レンズに適用することも可能である。
・上記実施の形態ではベースカーブとして5種類が用意されていたが、これは一例であって変更は自由である。加入度についても同様である。
・上記実施の形態における表1及び表3では遠用度数の各帯域の数値間隔は均等ではなく、収差の大きくなるプラス側(遠視側)の間隔が短く設定されていた。この間隔はレンズの条件によって設定変更可能である。
・上記実施の形態では第2の工程で研削装置を使用したが、より精密な加工の可能なCAM装置を使用することも可能である。
その他本発明の趣旨を逸脱しない態様で実施することは自由である。
Claims (5)
- レンズ上方に配置された比較的遠方を見るための第1の領域と、同第1の領域よりも下方に配置され同第1の領域よりも大きな屈折力を有する第2の領域と、これら領域の間に配置され屈折力が累進的に変化する累進帯を備え、同第1の領域の遠用アイポイントから同第2の領域の近用アイポイントへと視線を移動させる際に視線が通過する主注視線が設定されるような累進屈折面をレンズの物体側あるいは眼球側のいずれかに形成した累進屈折力レンズの製造方法であって、
複数のベースカーブデータから選択された1つのベースカーブデータ及び複数の加入度データから選択された1つの加入度データに基づいて所定の累進帯長の前記累進屈折面が形成された複数のレンズ前駆体を前もって用意するとともに、用意された複数の同レンズ前駆体の同累進屈折面には前記遠用アイポイントと前記近用アイポイントとの水平方向の離間距離となる所定の長さのインセットをベースカーブデータに基づいて選択されたベースカーブデータ毎にそれぞれ異なる長さとなるように設定し、
その設定したインセットの長さが共通する同レンズ前駆体同士をベースカーブ毎に1グループとして、複数の同レンズ前駆体を複数のグループに区分けし、所定の加入度における当該装用者に処方された度数に対応したベースカーブの同レンズ前駆体を所定のグループから選択し、選択した同レンズ前駆体の同累進屈折面が形成された面とは反対側の面に当該装用者の処方度数に応じた加工を施すようにしたことを特徴とする累進屈折力レンズの製造方法。 - 前記所定の長さのインセット量は以下の(a)又は(b)の関数式に従って設定されていることを特徴とする請求項1に記載の累進屈折力レンズの製造方法。
(a) インセット量(Ci,Aj)<インセット量(Ci+1,Aj )
(b) インセット量(Ci,Aj)<インセット量(Ci ,Aj+1)
(C:ベースカーブ、A:加入度、i:自然数であってベースカーブの浅い方からの順序を示す、j:自然数であって加入度の小さい方からの順序を示す) - 同一のベースカーブデータに基づいて形成された前記累進屈折面を有する前記レンズ前駆体同士のインセット量は同一であることを特徴とする請求項1又は2に記載の累進屈折力レンズの製造方法。
- 同一のベースカーブデータに基づいて形成された前記累進屈折面を有する前記レンズ前駆体同士の累進帯長は同一であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の累進屈折力レンズの製造方法。
- すべての前記レンズ前駆体において、累進帯長は同一であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の累進屈折力レンズの製造方法。
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