JP4475613B2 - 放射電子顕微鏡 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子顕微鏡に関し、特に、試料から放出された電子に基づいて試料表面の拡大像を得る放射電子顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
放射電子顕微鏡の一つに、光電子放出効果を利用して試料表面の拡大像を得る光電子放出顕微鏡装置がある。光電子放出顕微鏡装置は、紫外線やX線等の励起光を試料に照射し、その照射によって試料から放出される光電子に基づいて試料表面の拡大像を得る装置であり、試料表面における化学結合状態の違いを像コントラストとして識別することができるという大きな特徴を有する。この光電子放出顕微鏡装置は、構成の違いから結合型と走査型の2種類に大別されるが、ここでは、結合型の光電子放出顕微鏡装置について説明する。
【0003】
結合型の光電子放出顕微鏡装置の一例として、米国特許第5,266,809号明細書に記載されているような装置がある。この光電子放出顕微鏡装置は、図2に示すように、試料20に励起光を照射する光源21と、電子像形成部を構成する対物レンズ22、静電レンズ23a、23b、管状レンズ24、チャンネルプレート形イメージ管25とから構成されている。このチャンネルプレート形イメージ管25には、一般に知られている蛍光板等のスクリーンを用いることができる。
【0004】
光源21から試料20の表面に励起光が照射されると、試料20の表面から光電子が放出される。試料20の表面から放出された光電子は、試料20と対物レンズ22の間に生成された一様な電界により加速された後、複数の電子レンズ(23a、23b、24)を経てチャンネルプレート形イメージ管25上に投影される。結果、チャンネルプレート形イメージ管25に試料20の表面の拡大画像が形成される。
【0005】
上記の光電子放出顕微鏡装置は、観察の時間分解能が高いという特徴を有することから、主に触媒現象や表面拡散現象をリアルタイムに観察する手段として用いられている。例えば、文献H.H.Rotermund: Surface Science Report 29 (1997) 256では、Pt上におけるCOとO2の触媒現象をPEEM(光電子放出顕微鏡装置)を用いてその場観察することにより、この触媒現象における反応拡散過程の詳細を明らかにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の放射電子顕微鏡は、試料表面から放出された電子を対物レンズを用いて集束するように構成されているため、対物レンズによって生じる錯乱円(disc of confusionまたはconfusion circle)が顕微鏡の空間分解能に大きく影響する。具体的に説明すると、放射電子顕微鏡の空間分解能は、試料表面が対物レンズからaだけ離れた位置にあるとき、対物レンズからその反対側の−a付近に生じる錯乱円の直径d=4δE/eFによって制限される(電子顕微鏡の理論と応用I、電子顕微鏡学会編、丸善)。ここで、δEは放出電子のエネルギー分布、Fは試料−対物レンズ間に生成される電界、eは電子の電荷を表わす。このため、従来の放射電子顕微鏡は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡に比べて空間分解能がかなり劣るという欠点を有する。
【0007】
また、従来の放射電子顕微鏡は、試料−対物レンズ間に高電圧が印加される構成のため、放電によって試料が損傷し易いという欠点も有する。
【0008】
本発明の目的は、上記欠点を解決し、高い空間分解能で良質な電子像を得られる放射電子顕微鏡を提供することにある。
【0009】
本発明のさらなる目的は、放電による試料の損傷を防止することができる放射電子顕微鏡を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の一態様による放射電子顕微鏡は、試料の表面から放出された特定の運動エネルギーを持つ電子を集束する球面鏡と、前記球面鏡によって集束される電子の試料表面における放出角度を制限するアパーチャーと、前記球面鏡の集束点を前記試料表面における電子の放出点として、その電子像を投影して試料表面の拡大像を得る電子像形成手段と、を少なくとも有し、前記球面鏡は、2つの半球状電極により生成される電場により形成され、前記アパーチャーは、その中心と前記球面鏡の集束点とを結ぶ線上の方向に移動可能に構成されていることを特徴とする。
本発明の別の態様による放射電子顕微鏡は、試料の表面から放出された特定の運動エネルギーを持つ電子を集束する球面鏡と、前記球面鏡によって集束される電子の試料表面における放出角度を制限するアパーチャーと、前記球面鏡の集束点を前記試料表面における電子の放出点として、その電子像を投影して試料表面の拡大像を得る電子像形成手段と、を少なくとも有し、前記球面鏡は、2つの半球状電極により生成される電場により形成され、前記アパーチャーが、所定の大きさのリング状の開口であることを特徴とする。
本発明の他の態様による放射電子顕微鏡は、試料の表面から放出された特定の運動エネルギーを持つ電子を集束する球面鏡と、前記球面鏡によって集束される電子の試料表面における放出角度を制限するアパーチャーと、前記球面鏡の集束点を前記試料表面における電子の放出点として、その電子像を投影して試料表面の拡大像を得る電子像形成手段と、を少なくとも有し、前記球面鏡は、2つの半球状電極により生成される電場により形成され、前記球面鏡の集束点に配置された所定の大きさのアパーチャーをさらに有することを特徴とする。
【0011】
(作用)
錯乱円の直径(d=4δE/eF)を小さくすることで、放射電子顕微鏡の空間分解能を高くすることができる。錯乱円の直径を小さくする一つの方法は、電界Fを大きくすることであるが、試料−対物レンズ間に形成される電界の大きさには制限があるため、電界Fを無制限に大きくすることはできない。そのため、この方法では、放射電子顕微鏡の空間分解能を十分に高くすることはできない。錯乱円の直径を小さくするもう一つの方法は、放出電子のエネルギー分布δEを小さくすることである。ただし、この場合は、δEが放出電子のエネルギー分布の幅そのものを表わすものではく、放出電子の強度分布が高いエネルギー値を代表的に表わしたものであるから、以下のようなことを考慮する必要がある。
【0012】
放出電子の初期運動エネルギーが0からE0まで分布している場合、放出電子のエネルギー分布は
【0013】
【数1】
Figure 0004475613
であり、たとえ放出電子のエネルギーが単色化されている(E=E0)としても、やはり
【0014】
【数2】
Figure 0004475613
と解釈すべきであり、その場合、単色化による空間分解能の向上は殆ど望めない。その理由は、同じ運動エネルギーE0を持つ電子でも、試料表面から放出される角度の違いによって錯乱円が広がってしまうためである。このことは、試料表面の仕事関数(エネルギー障壁の高さ)に比べて過剰に大きなエネルギーの励起光を用いると、必然的に空間分解能が低下することを意味する。よって、放出電子のエネルギー分布δEを小さくするには、電子像形成に寄与する電子として、運動エネルギーだけでなく、試料表面からの電子の放出角度も考慮して選別する必要がある。
【0015】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、球面鏡によって試料の表面から放出された電子のうち特定の運動エネルギーを持つ電子のみが集束されるとともに、その球面鏡によって集束される電子の試料表面における放出角度がアパーチャーによって制限され、その球面鏡の集束点を試料表面における電子の放出点として、その電子像が投影されるようになっている。この構成によれば、特定の運動エネルギーおよび電子の放出角度を持つ電子のみが電子像形成に寄与することになるので、放出電子のエネルギー分布δEを小さくすることができる。また、球面鏡の集束点を試料表面における電子の放出点としてその電子像が投影されるため、その投影系を構成する対物レンズなどの複数の電子レンズ部に高電圧が印加されても、従来のように放電によって試料が損傷することはない。
【0016】
なお、特定の運動エネルギーと放出角度を持つ光電子だけを特定の位置に集束する構成については、特開平7-110311号公報および特開平7-318521号公報に記載されているが、これら公報に記載のものは、表面分析あるいは電子分光を目的とするものであり、電子顕微鏡としての作用を有していない。本発明では、そのような構成を電子顕微鏡に適用するとともに、その集束点を試料表面における電子の放出点として電子像が投影されるようになっている。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の放射電子顕微鏡は、通常の電子顕微鏡の構成(電子像形成部)に加えて、前述の放出電子のエネルギー分布δEを小さくするための手段として、試料の表面から放出された電子を反射して特定の運動エネルギーを持つ電子のみを集束する球面鏡(凹面鏡、半球面鏡を含む)と、その球面鏡によって集束される電子の試料表面における放出角度を制限するためのアパーチャーとを備える。
【0018】
球面鏡は、例えば球の中心が同一の2つの半球状電極から構成される。このような電極構造を採用するものとしては、例えば試料表面から放出される電子のエネルギー分析を行う2次元表示型球面鏡分析器(大門寛、日本物理学会誌、49巻、447頁)などがあり、本形態ではその装置構成を適用している。これら電極により生成される電場によって、試料表面から放出された電子が反射され、特定の運動エネルギーを持つ電子だけが特定の位置に集束される。その集束点は、試料表面における電子の放出点に対して、球面鏡の球の中心を対称中心とする点対称の位置関係になっており、また、その集束角度は、試料表面における電子の放出角度と一致している。よって、この球面鏡の集束点は、試料表面における電子の放出点とみなすことができる。
【0019】
アパーチャーは、所定の大きさのリング状の開口であり、観察あるいは検出に寄与する電子の放出角度を制限するものである。球面鏡によって反射された電子のうち特定の放出角度で放出された電子のみがこのアパーチャーを通過して集束される。このアパーチャーにより制限される電子の放出角度は、球面鏡の集束点からアパーチャーまでの距離を変えることにより任意に設定することができる。
【0020】
電子像形成部は、例えば前述した米国特許第5,266,809号明細書等の公報に記載の電子顕微鏡の装置構成と同様のものである。この電子像形成部では、上記球面鏡の集束点を試料表面における電子の放出点としてその電子像が蛍光スクリーン上に投影される。これにより、蛍光スクリーン上に試料表面の拡大像が形成される。
【0021】
以下、本発明の放射電子顕微鏡の具体的な構成について図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施例である光電子放出顕微鏡の概略構成図である。この光電子放出顕微鏡は、試料6の表面から特定の放出角度で放出された特定の運動エネルギーを持つ光電子のみを特定の位置に集束する球面鏡電子選別器1と、この球面鏡電子選別器1の集束点を試料6の表面における光電子の放出点としてその光電子像を蛍光スクリーン10へ投影する鏡筒9とからなる。
【0023】
球面鏡電子選別器1は、半球電極2、半球グリッド電極3、ガードリング4、アパーチャー5,8からなる。半球電極2と半球グリッド電極3は同一の球中心Oを持ち、半球グリッド電極3は半球電極2の1/2の径を有する。半球電極2の一部には、励起光としての紫外線を導入するための紫外線導入ポート7が設けられており、この紫外線導入ポート7から導入される紫外線によって試料6の表面が照射される。これら半球電極2、3間において生成される電場によって球面鏡が形成され、この球面鏡により、試料6の表面から放出された光電子が反射され、特定の運動エネルギーを持つ光電子のみが特定の位置に集束される。この球面鏡の集束点と試料6の表面における電子の放出点とは、球中心6を対称中心として点対称の位置関係になっており、また、球面鏡の集束角度θ1は、試料6の表面における電子の放出角度θ2と一致している。
【0024】
アパーチャー8は、所定の大きさのリング状の開口であり、上記球面鏡によって集束される光電子の試料表面からの放出角度を制限する。このアパーチャー8は、そのリング状の開口の中心と上記球面鏡の集束点とを結んだ線上方向に移動可能に構成されており、球面鏡の集束点からの距離を制御することによって、必要な電子の放出角度を任意に設定することができる。図1に模式的に示した電子軌道から分かるように、この移動操作はアパーチャーサイズを連続的に変えることと実質的に同等の作用を持つ。すなわち、アパーチャー8を移動操作することにより光電子の放出角度の制限範囲を連続的に変えることができる。
【0025】
アパーチャー8をリング状の開口とする理由は次のとおりである。試料表面上において表面の法線方向を極軸(z軸)とする極座標(r,θ,φ)を考える。ここで、rは動系方向の長さ、θは極角、φは方位角を表わす。アパーチャーにリング状の開口を設けた場合、その開口を通過できる電子はz軸からの角度がθとθ+Δθの範囲に放出される電子であり、その全立体角は2π(cosθ−cos(θ+Δθ))となる。ここで、θおよびΔθはリング径およびリング幅によってそれぞれ決まる値である。θ=0の特別な場合は、2π(1−cosΔθ)となり、アパーチャーの中心に孔があることを示す。この値はθ>0の場合に比べて小さい値になっている。その理由は、電子の放出方向を方位角φについて360°積分した結果が、中心に孔がある場合よりもリング状の開口を用いる方が大きくなるためである。このように、中心に孔をもつアパーチャーよりもリング状の開口を持つアパーチャーの方が電子像に関する信号量は多くなることから、アパーチャー8をリング状の開口とすることで、より信号量の多い電子像を提供することができる。
【0026】
アパーチャー5は、有効観察領域を制限するためのもので、半球電極2、3からなる球面鏡の集束点に配置される。このアパーチャー5の開口の大きさは、最低観察倍率において、必要とされる観察領域が得られるように設定されるが、ここではφ500μmとしてある。
【0027】
ガードリング4は、半球電極2と半球グリッド電極3の両半球電極間に形成される電場の補正を行うものである。このガードリング4により、半球電極2と半球グリッド電極3の間の端の電場が球対称からずれることを防止する。
【0028】
鏡筒9は、対物レンズ、投射レンズなどの複数の電子レンズからなり、球面鏡電子選別器1によって結像された光電子像を蛍光スクリーン10へ投影する。これら鏡筒9および蛍光スクリーン10によって構成される電子像形成部は、前述した米国特許第5,266,809号明細書等の公報に開示されている電子顕微鏡の装置構成と同様のものである。
【0029】
なお、球面鏡電子選別部1の内部と鏡筒9および試料の周辺とは、超高真空に保持する必要があるため、図1の例では、真空容器11(図1では、容器の一部が示されている。)が設けられている。この真空容器11は、ドライポンプで構成された差動排気システムによって超高真空に保持されようになっている。また、この真空容器11は、試料周辺に種々のガスが導入できるようにもなっている。
【0030】
上述のように構成された光電子放射顕微鏡では、試料6の表面から放出される光電子は以下のような軌道をとる。
【0031】
アパーチャー5および半球グリッド電極3は等電位に設定される。このため、領域A内では、光電子は等速直線運動を行う。半球電極2は半球グリッド電極3に対して負の電位を持つように設定される。このため、領域B内では、光電子は半球電極2によって反射されるような曲線軌道をとる。鏡筒9はアパーチャー5に対して正の高電圧(数kVから数十kV程度)が印加される。このため、領域Cでは、光電子は放物線軌道をとる。
【0032】
次に、この光電子顕微鏡の動作について具体的に説明する。以下の動作説明では、励起用の紫外線源として重水素ランプを用いている。
【0033】
試料6が球面鏡電子選別部1の内部の所定の位置にセットされる。重水素ランプからの紫外線は、紫外線ポート7から球面鏡電子選別部1の内部へ導入され、半球グリッド電極3を通して試料6に照射される。この紫外線照射により、試料6の表面から光電子が放出される。
【0034】
球面鏡電子選別部1では、試料6の表面から放射された光電子のうち特定の運動エネルギーを持つ光電子のみが半球電極2および半球グリッド電極3からなる球面鏡によってアパーチャー5近傍に集束される。例えば、半球電極2の電位が−Eに設定されている場合は、運動エネルギーEを持つ電子だけが球面鏡によって選択されて集束される。さらに、その球面鏡によって集束される光電子の試料表面からの放出角度がアパーチャー8によって制限される。この結果、球面鏡電子選別部1の集束点には、試料6の表面から特定の放出角度で放出された特定の運動エネルギーを持つ光電子のみが集束される。
【0035】
アパーチャー5を通過した光電子は、鏡筒9内の対物レンズ部において、一様な電界により加速された後、複数の静電レンズを経て蛍光スクリーン10上に結像される。その結果、蛍光スクリーン10上には、試料6の表面の拡大像(試料6の表面における化学結合状態の違いを像コントラストとして表わしたもの)が表示される。
【0036】
以上説明したように、本実施例の光電子放射顕微鏡では、特定の運動エネルギーを持ち、かつ、特定の放出角度を持つ光電子だけがアパーチャー5面上に結像されるので、原理的に錯乱円のサイズを小さくすることができる。よって、鏡筒9および蛍光スクリーンからなる電子顕微鏡部の空間分解能を、低加速から高加速にわたる広い加速電圧条件にわたって大きくすることができる。
【0037】
また、本実施例の光電子放射顕微鏡は、空間分解能を大きくとることができる他に、以下のような特徴も有している。
【0038】
試料6から放出された光電子が直接、鏡筒9を介して蛍光スクリーン10に投影される、球面鏡電子選別部1のような構成を持たない通常の電子顕微鏡においては、空間分解能の低下を防ぐために、試料表面の仕事関数(エネルギー障壁の高さ)よりわずかに大きなエネルギーを持つ励起光を用いる必要がある。例えば、仕事関数が5eV以下の試料に対しては水銀ランプを用い、仕事関数が5eV以上の試料に対しては重水素ランプを用いる。これに対して、本実施例のように、電子像形成に寄与する光電子として、運動エネルギーだけでなく、光電子の放出角度をも考慮して光電子の選別が行われるものにおいては、励起光のエネルギーは仕事関数を超えていれば良く、例えば軟X線を励起光として用いても空間分解能が低下することはない。
【0039】
なお、電子像形成に寄与する電子の放出角度を制限する構成としては、アパーチャーを対物レンズなどの後焦点面に配置することも考えられるが、この場合には、電子がすでに高電圧状態で加速された状態にあるために、必要な電子の放出角度を設定するのにアパーチャーのサイズを非常に小さなもの(例えば、数μmの孔径)にする必要があり、また、制限される電子の放出角度が加速電圧の変化に応じて変化するという不具合も生じる。これに対して、本実施例の光電子放射顕微鏡では、放射電子顕微鏡(鏡筒9)の加速電圧とは独立に電子の放出角度を制限するように構成されていることから、そのような不具合を生じることがなく、また、アパーチャーのサイズも桁違いに大きなものを用いることができる。この比較から分かるように、本実施例の光電子放射顕微鏡は、加工精度やコストの面からも有利なものになっている。
【0040】
以上説明した実施例は、光電子放出に適用した例であったが、この他、周知の電子放出にも適用することができる。例えば二次電子放出に適用することもできる。この場合は、試料表面から放出された二次電子に基づいて電子像が形成される。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、運動エネルギーおよび電子の放出角度を考慮して電子像形成に寄与する電子を選別するように構成されているので、放出電子のエネルギー分布δEを小さくして錯乱円の広がりを抑えることができ、空間分解能の向上を図ることができる。
【0042】
加えて、低加速電圧から高加速電圧まで広い範囲にわたって高い空間分解能を得ることができるので、従来のものよりも良質な像観察を行うことができる。
【0043】
また、放電による試料の損傷を防ぐことができるので、例えば半導体装置などの製造工程における歩留まりの向上を図ることができる。
【0044】
さらに、種々の励起光源を使用することができるとともに、電子の放出角度の制限を自由に選択することができるので、仕事関数の分布や電子の放出強度の角度分布を定量的に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の光電子放出顕微鏡の概略構成図である。
【図2】米国特許第5,266,809号明細書に記載された光電子放出顕微鏡の概略構成図である。
【符号の説明】
1 球面鏡電子選別部
2 半球電極
3 半球グリッド電極
4 ガードリング
5,8 アパーチャー
6 試料
7 紫外線導入ポート
9 鏡筒
10 蛍光スクリーン
11 真空容器

Claims (8)

  1. 試料の表面から放出された特定の運動エネルギーを持つ電子を集束する球面鏡と、
    前記球面鏡によって集束される電子の試料表面における放出角度を制限するアパーチャーと、
    前記球面鏡の集束点を前記試料表面における電子の放出点として、その電子像を投影して試料表面の拡大像を得る電子像形成手段と、を少なくとも有し、
    前記球面鏡は、2つの半球状電極により生成される電場により形成され、
    前記アパーチャーは、その中心と前記球面鏡の集束点とを結ぶ線上の方向に移動可能に構成されていることを特徴とする放射電子顕微鏡。
  2. 試料の表面から放出された特定の運動エネルギーを持つ電子を集束する球面鏡と、
    前記球面鏡によって集束される電子の試料表面における放出角度を制限するアパーチャーと、
    前記球面鏡の集束点を前記試料表面における電子の放出点として、その電子像を投影して試料表面の拡大像を得る電子像形成手段と、を少なくとも有し、
    前記球面鏡は、2つの半球状電極により生成される電場により形成され、
    前記アパーチャーが、所定の大きさのリング状の開口であることを特徴とする放射電子顕微鏡。
  3. 試料の表面から放出された特定の運動エネルギーを持つ電子を集束する球面鏡と、
    前記球面鏡によって集束される電子の試料表面における放出角度を制限するアパーチャーと、
    前記球面鏡の集束点を前記試料表面における電子の放出点として、その電子像を投影して試料表面の拡大像を得る電子像形成手段と、を少なくとも有し、
    前記球面鏡は、2つの半球状電極により生成される電場により形成され、
    前記球面鏡の集束点に配置された所定の大きさのアパーチャーをさらに有することを特徴とする放射電子顕微鏡。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の放射電子顕微鏡において、
    試料に励起光を照射する照射手段をさらに有し、
    前記球面鏡が、前記励起光の照射により試料から放出される光電子を反射して集束するように構成されていることを特徴とする放射電子顕微鏡。
  5. 請求項1から3のいずれか1項に記載の放射電子顕微鏡において、
    前記球面鏡は、同一の球心を有する第1および第2の半球状電極からなることを特徴とする放射電子顕微鏡。
  6. 請求項に記載の放射電子顕微鏡において、
    前記第1の半球状電極は、前記第2の半球状電極の2倍の径を有することを特徴とする放射電子顕微鏡。
  7. 請求項に記載の放射電子顕微鏡において、
    前記第2の半球状電極がグリッド構造の電極であることを特徴とする放射電子顕微鏡。
  8. 請求項1から3のいずれか1項に記載の放射電子顕微鏡において、
    前記球面鏡の集束角度と試料表面における電子の放出角度が一致するように構成されていることを特徴とする放射電子顕微鏡。
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