JP2001116708A - 結像型光電子放出顕微鏡 - Google Patents

結像型光電子放出顕微鏡

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JP2001116708A
JP2001116708A JP30101799A JP30101799A JP2001116708A JP 2001116708 A JP2001116708 A JP 2001116708A JP 30101799 A JP30101799 A JP 30101799A JP 30101799 A JP30101799 A JP 30101799A JP 2001116708 A JP2001116708 A JP 2001116708A
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photoelectrons
sample
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electrode
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JP30101799A
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Mitsuru Otsuka
満 大塚
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Abstract

(57)【要約】 【課題】時間および空間分解能のいずれも良好で放電の
発生しない光電子放出顕微鏡を提供すること。 【解決手段】試料8および電子レンズ系10の間に、所
定の運動エネルギーおよび放出角度を有する光電子を選
別および集束できるフィルター1を配置する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電子顕微鏡に係わ
り、特に試料に紫外線などの励起光を照射し、この照射
により発生した光電子を用いて表面の拡大像を形成する
光電子放出顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】光電子放出顕微鏡とは紫外線やX線など
の励起光を試料に照射し、この照射によって試料から発
生する光電子により試料表面の拡大像を形成する顕微鏡
で、表面における化学状態の違いを像のコントラストと
して識別できるという利点を有する。光電子放出顕微鏡
は結像型と走査型の2種類に大別されるが、本発明は結
像型に関する。従来の結像型光電子放出顕微鏡として
は、例えば米国特許第5266809号明細書に開示さ
れているように、試料表面の全域から発生した光電子
を、試料および対物レンズ間に生成した一様電界により
一定の加速電圧まで加速した後この加速された光電子を
用いて、複数の電子レンズより構成される電子レンズ系
により試料表面全域の拡大像を構成し、蛍光スクリーン
などに結像する。これに対し、走査型光電子放出顕微鏡
では、試料表面の微小領域からの光電子の情報を試料表
面を走査しながら収集し、拡大像を構成する。これらの
動作原理の違いにより走査型光電子放出顕微鏡と比べ、
結像型光電子放出顕微鏡は観察の時間分解能が高く、触
媒現象や表面拡散現象などをリアルタイムで観察できる
という利点を有する。また、2次元表示型球面鏡分析器
として、光電子を反射するフィルターが日本物理学会誌
49巻447頁(1994年)に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
結像型光電子放出顕微鏡には以下に述べる二つの課題が
存在する。まず第一に、結像型光電子放出顕微鏡は時間
分解能は高いものの空間分解能に劣る。これは光電子放
出顕微鏡の作動原理自身に由来する。すなわち電子顕微
鏡の理論と応用I(電子顕微鏡学会編、丸善、1963
年)の第60頁から第61頁に記載されているように、
試料および対物レンズ間の距離をaとすると、光電子放
射顕微鏡の空間分解能は試料表面から対物レンズと反対
側−a付近の距離に形成される錯円(disc of
confusionまたはconfusion cir
cle)の直径d=4δE/eFに規定される。なお、
δEは放出される光電子のエネルギー分布、Fは試料お
よび対物レンズ間の電界、eは電子の電荷を表す。
【0004】第二の課題として従来の結像型光電子放出
顕微鏡では、試料および対物レンズ間に高電圧が印加さ
れているため、試料および対物レンズ間で放電が発生し
やすく、試料が損傷を受ける場合がある。
【0005】ここで錯円の直径d=4δE/eFを小さ
くして、光電子放出顕微鏡の空間分解能を向上する1つ
の方法は電界Fを大きくすることであるが、電界Fを大
きくすると、試料および対物レンズ間で放電がさらに発
生しやすくなり試料が損傷を受ける可能性がさらに高く
なるため、電界Fを無制限に大きくすることはできな
い。
【0006】錯円の直径を小さくするもう1つの方法は
放出された光電子のエネルギー分布δEを小さくするこ
とである。ただしδEは放出された光電子のエネルギー
分布の幅そのものを表しているわけではなく、放出され
た光電子の強度分布が高いエネルギー値を代表的に表し
たものであることに注意する必要がある。たとえば放出
された光電子の運動エネルギーが0からE0まで分布し
ているとすると、δEの値は殆どE0であるが、たとえ
放出電子のエネルギーが単色化されている(E=E0
としても、やはりδEの値は殆どE0と解釈すべきであ
り、単色化によって空間分解能の向上はあまり望めな
い。なぜなら、同じ運動エネルギーE0を持つ電子で
も、試料表面から放出される角度の違いによって錯円の
直径が広がってしまうからである。このことは、試料表
面の仕事関数に比べて過剰に大きなエネルギーの励起光
を用いると、必然的に空間分解能が低下することを意味
している。
【0007】したがって光電子放出顕微鏡の空間分解能
を向上するには、放出された光電子の運動エネルギーだ
けでなく表面からの放出角度も選別された光電子を用い
る必要がある。そこで放出された光電子の運動エネルギ
ーおよび放出角度を選別することのできるフィルターを
対物レンズと試料の間に設置すれば、δEを小さくする
ことができるためる空間分解能を向上することが可能
で、さらに対物レンズと試料が分離されるため、試料に
高電圧を印加する必要はなく、試料付近の放電を抑制で
きる。
【0008】本発明においては、時間および空間分解能
のいずれも良好で放電の発生しない光電子放出顕微鏡を
得るため、時間分解能の優れる結像型光電子放出顕微鏡
において、光電子の運動エネルギーおよび放出角度を選
別することのできるフィルターを対物レンズと試料の間
に設置し、結像型光電子放出顕微鏡の空間分解能を向上
し放電を抑制して、化学状態の違いを識別できるという
光電子放出顕微鏡の利点を最大限に活用しようとするも
のである。
【0009】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明によれ
ば、試料に励起光を照射し光電子を放出させるためのラ
ンプと、放出された光電子の中から所定の運動エネルギ
ーおよび放出角度を有する光電子を選別し所定の位置に
集束するフィルターと、集束された光電子から拡大像を
結像する電子レンズ系とを含んでなることを特徴とする
結像型光電子放出顕微鏡が提供される。
【0010】ここで電子レンズ系とは対物レンズを含
み、従来の結像型光電子放出顕微鏡の鏡筒に含まれるも
のである。本発明においては試料および従来の結像型光
電子放出顕微鏡で使用されている電子レンズ系の間に、
所定の運動エネルギーおよび放出角度を有する光電子を
選別し集束できるフィルターを設置し、選別され集束さ
れた光電子を試料から放出された光電子として電子レン
ズ系により拡大像を形成する。このためδEを非常に小
さくすることができ、空間分解能は向上する。また対物
レンズを含む電子レンズ系と試料はフィルターにより分
離されるため、試料に高電圧を印加する必要はなく、試
料付近の放電は抑制される。
【0011】また本発明によれば、試料に励起光を照射
し光電子を放出させるためのランプと、放出された光電
子の中から所定の運動エネルギーおよび放出角度を有す
る光電子を選別し所定の位置に集束するフィルターを2
基以上該光電子の進行経路に沿って直列に接続すること
により構成されるフィルター系と、集束された光電子か
ら拡大像を結像する電子レンズ系とを含んでなることを
特徴とする結像型光電子放出顕微鏡が提供される。
【0012】すなわち、フィルターの代わりに、フィル
ターを2基以上光電子の進行経路に沿って直列に接続す
ることにより構成されるフィルター系が使用される。複
数のフィルターを有するフィルター系を用いて光電子の
選別および集束を繰り返すことにより、より一層狭い範
囲の運動エネルギーおよび放出角度を有する光電子を選
別することができ、より一層の高空間分解能化が実現で
きる。
【0013】また分解能向上および試料付近の放電抑制
以外に、本発明の効果として以下が挙げられる。まず第
1に本発明によれば、運動エネルギーと放出角度を様々
に選択することにより、仕事関数の分布や放出強度の角
度分布を定量的に把握することができるので、本発明で
開示される結像型光電子放出顕微鏡は観察装置としてだ
けでなく、表面の分析装置としても有効である。
【0014】第2として、試料付近に高電界を形成する
必要がないことから放電による試料の損傷が抑制されて
おり、このため試料室へのガス導入を伴う実験が可能と
なる。
【0015】第3に試料室にガスを導入する場合、結像
型光電子放射電子顕微鏡の電子レンズ系を含む鏡筒はフ
ィルターによって試料と分離されているので、差動排気
によって電子レンズ系を含む鏡筒付近を常に超高真空に
保持できる。したがって、たとえ鏡筒に高電圧を印加し
てもこの付近における放電も抑制される。
【0016】第4はランプに関する。通常の光電子放出
顕微鏡においては、空間分解能の低下を防ぐために試料
表面の仕事関数よりわずかに大きいエネルギーの励起光
を選択する必要がある。このため仕事関数が5eV以下
の試料に対しては水銀ランプを用い、5eV以上の試料
に対しては重水素ランプを用いるというように、試料に
応じてランプを切り替える必要があった。しかしながら
本発明においては、放出角度を選別することによって空
間分解能の低下を防ぐので、励起光のエネルギーは仕事
関数を超えていればよい。したがって本発明では励起光
源の選択の幅が広がり、全体としての諸性能が向上でき
低価格化が実現できる。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明においては、放出された光
電子の中から所定の運動エネルギーおよび放出角度を有
する光電子を選別し集束するフィルターとして、以下の
2例を挙げることができる。これらのフィルターを採用
することにより、本発明に開示される結像型光電子放出
顕微鏡の諸機能はさらに好ましいものとなるが、本発明
はこれらに限定されない。
【0018】まず第1例のフィルターはコイルを含んで
なり、前記試料の設置面に対して垂直方向または前記電
子レンズ系の光軸に対して平行方向となるよう該コイル
の内側に一様に形成された磁場を用いて、前記光電子を
選別および集束することを特徴とする。
【0019】また第2例のフィルターは光電子が導入さ
れる第1アパーチャーと、前記選別された光電子が集束
される第2アパーチャーと、球面状または球面の一部の
曲面状の第1電極と、球面状または球面の一部の曲面状
でグリッド構造の第2電極とを含んでなり、該第2電極
は該第1電極の内側で同心となるよう配置され、該第2
電極の径は該第1電極の径の半分で、該第1および該第
2アパーチャーは該第2電極の内側に配置され、該第1
および該第2電極の内側にそれぞれ一様に形成された静
電場を用いて、前記光電子を選別および集束することを
特徴とする。
【0020】ここで球面の一部の曲面とは点Oを頂点と
する錐がOを中心とする球面上に切り取る曲面のことを
いい、例えば半球の曲面などを例として挙げることがで
きる。また電極の径とは電極が球面状の場合は、その球
の直径をいい、電極が球面の一部の曲面状の場合は上記
点Oを中心とする球の直径をいう。さらに第1および第
2電極が同心となるよう配置されるとは、第1および第
2電極に対応する球の中心またはそれぞれに対応する上
記点Oが同位置にあることを意味する。
【0021】第1例においては、試料の設置面に対して
垂直方向または前記電子レンズ系の光軸に対して平行方
向に一様な磁場を形成し、この磁場の作用により特定の
運動エネルギーと放出角度をもつ光電子だけを特定の位
置に集束させるものである。試料の設置面に対して垂直
方向に一様な電場F0と一様な磁場B0が存在するときの
電子の運動を考えると、設置面に対して垂直方向の1次
元に投影した軌道は加速度−eF0/mの等加速度運動
を行い、設置面に対して平行方向の2次元面に投影した
軌道は周期T=2πm/eB0の等速円運動を行う(m
は電子の質量)。従って、設置面内に投影した電子軌道
は、放出された光電子の初期運動エネルギーや放出角度
に依存せずに時間tn=nT(nは正の整数)におい
て、厳密に元の放出点位置に戻る。一方、時間tnにお
いて到達する垂直方向の距離は初速度の垂直成分に依存
する。
【0022】以上の考察より、試料の設置面から一定の
距離離れた平面上に集束する光電子は、特定の運動エネ
ルギーと放出角度をもつ光電子だけであり、それ以外の
電子はこの平面上で適当に分散した分布をもつ。ここで
放出角度とは電子の放出方向と表面法線方向(あるいは
設置面)とがなす角度として定義され、一定の放出角度
であっても面内360°の任意性がある。なお、集束し
た電子の分布を像と見なすと、電場F0および磁場B0
空間的に一様である限り、この像は厳密に試料表面と同
一形状であり歪みは全くない。
【0023】第2例におけるフィルターを図1の1に例
示した。このフィルターでは電極が二つの同心球の半球
から構成されており、これらの電極が生成する電場によ
って試料表面から放出された光電子を反射する。印加す
る電場を適当な条件とすることにより、特定の運動エネ
ルギーおよび放出角度をもつ光電子だけを特定の位置に
集束する。ここで特定の位置とは光電子が入射される位
置に対して、同心球の中心を対称中心とする点対称の位
置である。
【0024】本発明における結像型光電子放出顕微鏡
は、試料に励起光を照射し光電子を放出させるためのラ
ンプと、上記第1例および第2例のフィルターをそれぞ
れ1基以上該光電子の進行経路に沿って直列に接続する
ことにより構成されるフィルター系と、該フィルター系
により選別および集束された光電子から拡大像を結像す
る電子レンズ系とを含むことができる。
【0025】また本発明における結像型光電子放出顕微
鏡は、試料に励起光を照射し光電子を放出させるための
ランプと、上記第1例または第2例のフィルターのいず
れか一方のみを2基以上該光電子の進行経路に沿って直
列に接続することにより構成されるフィルター系と、該
フィルター系により選別および集束された光電子から拡
大像を結像する電子レンズ系とを含むことができる。
【0026】さらに本発明における結像型光電子放出顕
微鏡は、試料に励起光を照射し光電子を放出させるため
のランプと、該光電子の進行経路に沿って上記第1例お
よび第2例のフィルターをこの順に接続することにより
構成されるフィルター系と、該フィルター系により選別
および集束された光電子から拡大像を結像する電子レン
ズ系とを含むことができる。
【0027】ここに記載したようなフィルター系を採用
することにより単一のフィルターでは実現不可能な性能
を実現できるようになり、所望とする結像型光電子放出
顕微鏡の要求性能や製造コストをより一層実現できるよ
うになる。ただし本発明はこれらに限定されない。フィ
ルター系を使用する場合、試料表面から放出された光電
子を最初のフィルターによって選別および集束し、この
集束面を新たな試料表面と見なして次のフィルターを用
いて選別および集束することにより、特定の運動エネル
ギーと放出角度をもつ電子だけを、さらに厳密に選別す
ることができる。またフィルターを3基以上接続した場
合も、同様の選別および集束が繰り返される。
【0028】なお充分な空間分解能と良好な像コントラ
ストを得る上で、第1例のフィルター→第2例のフィル
ター→電子レンズ系の順に光電子が通過するように構成
することが望ましいが、第1および第2例のフィルター
の順序を入れ替えた構成や、第1および/または第2の
例のフィルターを複数回用いる構成、例えば、第1例の
フィルター→第2例のフィルター→第1例のフィルター
→電子レンズ系などの構成も本発明に含まれる。
【0029】本発明で用いられる電子レンズ系として
は、例えば米国特許第5266809号明細書において
開示されているように、光電子が集束される面および対
物レンズ間に生成した一様な電界により光電子を一定の
加速電圧まで加速した後、複数の電子レンズによって蛍
光スクリーンなどに拡大像を結像する。試料表面から放
出された光電子を例えば第1例のフィルターによって選
別および集束後、さらに第2例のフィルターによって選
別し、選別された光電子を第2アパーチャー上に集束す
る。第2アパーチャー上に集束された光電子を試料表面
と見なし拡大像を結像すれば、特定の運動エネルギーお
よび放出角度をもつ光電子だけを用いて試料表面の拡大
像を形成したこととなる。この結果、前記した錯円の直
径を格段に小さくする(原理的にはゼロにする)ことが
可能となり、空間分解能の向上が達成される。
【0030】
【実施例】図1に本発明で開示される結像型光電子放出
顕微鏡の例として、2種類のフィルターが電子の進行経
路に沿って接続されている場合を示すが、本発明はこれ
に限定されない。1は第2フィルター、2はOを中心と
する半球状の第1電極、3はOを中心とする半球状でグ
リッド構造の第2電極であり、第1電極2の1/2の径
を有する。4は電場補正用の複数のガードリングを示し
ており、第1および第2電極間の端の電場が球対称から
ずれることを防ぐために用いられる。5および6は中心
Oに対して対称に配置されたアパーチャーを示してお
り、孔の径は最低観察倍率における観察領域程度に設定
すればよいが、ここではいずれもφ500μmとした。
7は紫外線を導入するためのポート、8は試料、9は試
料8の設置面に対して垂直方向に一様な磁場を生成する
ためのコイルを模式的に示しており、第1フィルターを
構成している。10は電子レンズ系を示している。ま
た、11は最終的に表面の拡大像が形成される蛍光スク
リーンである。矢印の付された直線および曲線は電子の
進行経路を示している。12は真空容器(不図示)の壁
の一部を示しており、第1および第2フィルターならび
に電子レンズ系はドライポンプで構成された差動排気シ
ステムによって超高真空に保持されている。また試料8
周辺には種々のガスが導入できるようになっている(不
図示)。
【0031】試料8は第1アパーチャー6に対して負お
よび正に可変の電位を印加することができるようになっ
ており、この値が負のときは試料から放出された電子は
加速されるが、正のときは減速されるので第1アパーチ
ャー6はハイパスフィルターとして作用する。またコイ
ル9によって試料垂直方向に磁場を形成できるようにな
っているので、領域Aにおける電子は試料表面垂直方向
に等加速(減速)度運動、試料表面平行方向に等速円運
動を行う。アパーチャー5および6ならびに第2電極3
は等電位に設定され、従って領域B内で電子は等速直線
運動を行う。第1電極2は第2電極3に対して負の電位
をもっており、領域C内で電子は第1電極2に対して反
射するような曲線軌道をとる。電子レンズ系10は第2
アパーチャー5に対して正の高電圧(数kVから数10
kV程度)が印加されており、領域Dにおいて電子は放
物線軌道をとる。
【0032】ポート7から重水素ランプによる紫外線を
導入し、第2電極3および第1アパーチャー6を通して
試料8に照射する。この照射により試料8から光電子が
放出され、試料表面垂直方向の電場および磁場により垂
直方向に等加速(減速)運動、面内に等速円運動を行
う。このとき電場および磁場の値を適当に設定すること
により、放出された光電子の中で特定の運動エネルギー
と放出角度をもつ成分だけを第1アパーチャー6面内に
集束する。また、試料8表面に異なる仕事関数をもつ領
域が分布している場合、ハイパスフィルターとしての減
速電場を適当に選ぶことにより、第1アパーチャー6面
上で像のコントラストが高くなる条件を見つけることが
できる。第1アパーチャー6面上に集束した電子の運動
エネルギーをEとすると、第2電極3に対する第1電極
2の電位を−Eに設定すれば、同一の運動エネルギーを
もつ電子だけが選択されて第2アパーチャー5面上に集
束される。したがって、第1アパーチャー6面上に比べ
てさらにコントラストが向上した強度分布を第2アパー
チャー5面上に形成することができる。第2アパーチャ
ー5面を試料表面と見なして、電子レンズ系10を用い
て適当な加速電圧条件のもとで、蛍光スクリーン11上
に拡大像を形成する。その結果、低加速から高加速の広
い加速電圧条件にわたって大幅な分解能向上が達成され
る。
【0033】分解能の向上が達成される理由は、第2ア
パーチャー5面上は特定の運動エネルギーと放出角度を
もつ電子だけが集束されるので、原理的に錯円の式中の
δEがゼロになるためである。実際には電場および磁場
の分布が理想的条件からずれることからδEを完全にゼ
ロにすることはできないが、従来の光電子放出顕微鏡の
δEと比べ格段に小さくすることができ、空間分解能が
向上する。さらに試料8は対物レンズを含む電子レンズ
系10から分離されているため、試料付近に高電圧を印
加する必要はなく、したがって試料付近の放電が抑制さ
れ試料が損傷を受けることはない。
【0034】
【発明の効果】本発明における結像型光電子放出顕微鏡
においては、試料および対物レンズを含む電子レンズ系
の間に、特定の運動エネルギーおよび放出角度を有する
光電子を選別および集束できるフィルターが配置されて
いるため、結像型光電子放出顕微鏡の空間分解能が向上
され、試料付近での放電が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光電子放出顕微鏡の構成例を示す図で
ある。
【符号の説明】
1 第2フィルター 2 第1電極 3 第2電極 4 ガードリング 5 第2アパーチャー 6 第1アパーチャー 7 ポート 8 試料 9 第1フィルターを構成するコイル 10 電子レンズ系 11 蛍光スクリーン 12 真空容器の壁

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 試料に励起光を照射し光電子を放出させ
    るためのランプと、放出された光電子の中から所定の運
    動エネルギーおよび放出角度を有する光電子を選別し所
    定の位置に集束するフィルターと、集束された光電子か
    ら拡大像を結像する電子レンズ系とを含んでなることを
    特徴とする結像型光電子放出顕微鏡。
  2. 【請求項2】 前記フィルターはコイルを含んでなり、
    前記試料の設置面に対して垂直方向または前記電子レン
    ズ系の光軸に対して平行方向となるよう該コイルの内側
    に一様に形成された磁場を用いて、前記光電子を選別お
    よび集束することを特徴とする請求項1記載の結像型光
    電子放出顕微鏡。
  3. 【請求項3】 前記フィルターは光電子が導入される第
    1アパーチャーと、前記選別された光電子が集束される
    第2アパーチャーと、球面状または球面の一部の曲面状
    の第1電極と、球面状または球面の一部の曲面状でグリ
    ッド構造の第2電極とを含んでなり、該第2電極は該第
    1電極の内側で同心となるよう配置され、該第2電極の
    径は該第1電極の径の半分で、該第1および該第2アパ
    ーチャーは該第2電極の内側に配置され、該第1および
    該第2電極の内側にそれぞれ一様に形成された静電場を
    用いて、前記光電子を選別および集束することを特徴と
    する請求項1記載の結像型光電子放出顕微鏡。
  4. 【請求項4】 試料に励起光を照射し光電子を放出させ
    るためのランプと、放出された光電子の中から所定の運
    動エネルギーおよび放出角度を有する光電子を選別し所
    定の位置に集束するフィルターを2基以上該光電子の進
    行経路に沿って直列に接続することにより構成されるフ
    ィルター系と、集束された光電子から拡大像を結像する
    電子レンズ系とを含んでなることを特徴とする結像型光
    電子放出顕微鏡。
  5. 【請求項5】 試料に励起光を照射し光電子を放出させ
    るためのランプと、請求項2および3記載のフィルター
    をそれぞれ1基以上該光電子の進行経路に沿って直列に
    接続することにより構成されるフィルター系と、該フィ
    ルター系により選別および集束された光電子から拡大像
    を結像する電子レンズ系とを含んでなることを特徴とす
    る結像型光電子放出顕微鏡。
  6. 【請求項6】 試料に励起光を照射し光電子を放出させ
    るためのランプと、請求項2または3記載のフィルター
    のいずれか一方のみを2基以上該光電子の進行経路に沿
    って直列に接続することにより構成されるフィルター系
    と、該フィルター系により選別および集束された光電子
    から拡大像を結像する電子レンズ系とを含んでなること
    を特徴とする結像型光電子放出顕微鏡。
  7. 【請求項7】 試料に励起光を照射し光電子を放出させ
    るためのランプと、該光電子の進行経路に沿って請求項
    2および3記載のフィルターをこの順に接続することに
    より構成されるフィルター系と、該フィルター系により
    選別および集束された光電子から拡大像を結像する電子
    レンズ系とを含んでなることを特徴とする結像型光電子
    放出顕微鏡。
JP30101799A 1999-10-22 1999-10-22 結像型光電子放出顕微鏡 Pending JP2001116708A (ja)

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