JP4474805B2 - コイル捻り整形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用交流発電機のステータコイル等を構成するU字状のコイルを捻り整形するコイル捻り整形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用交流発電機の中には、U字状コイルの端部同士を接合することにより構成されたステータコイルを使用しているものがある。例えば、ステータコアの各スロットに4本の導体が挿入される場合には、大小2種類のU字状コイルのそれぞれについて、ターン部を挟んだ各直線部を互いに反対方向に変位させる捻り整形を行った後に各スロットに挿入する。その後、直線部先端の端部同士を溶接等によって接合することにより、規則正しく導体が配列されたコイルエンドが形成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術では、引出線を引き出す箇所や電気角が異なるコイル端部同士を接合する場合等においては、一部のU字状コイルについて他のU字状コイルと異なる捻り角度および異なる接続状態となる場合があり、このような一部のU字状コイルについては他の多くのU字状コイルに対して捻り整形を行った後に特別な作業工程が必要になり、工程の複雑化を招くという問題があった。
【0004】
図17および図18は、部分的に捻り角度および接合状態が異なるステータコイルの組み付け作業の概要を示す図である。まず、図17に示すように、ステータコア100に2本の異形コイル110、112を別々に挿入して組み付けた後、それぞれを所定位置で切断し、端部同士が接触するように曲げ整形する。次に、図18に示すように、切断した異形コイル110、112の端部110a、112a同士を溶接等により接合する。このように、一部のU字状コイルについて後工程において切断、曲げ整形、接合の各作業が必要になるため、その分工程数が増加してしまう。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、工程の簡略化が可能なコイル捻り整形方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明のコイル捻り整形方法は、ステータコアのスロットに挿入するコイルを捻り整形によって製造するために、複数本の第1のU字状コイルを予備捻り治具に挿入して予備捻り整形を行い、次に、この予備捻り整形が行われた複数本の第1のU字状コイルと、予備捻り整形がされていない複数本の第2のU字状コイルとを本捻り治具に挿入して本捻り整形を行っている。このように、一部のU字状コイルについて予備捻り整形を行った後に、それ以外の多くのU字状コイルとともに本捻り整形を行うことにより、捻り角度や接続状態が異なる複数のU字状コイルが混在している場合であっても同時に捻り整形を行うことができ、その後に特定のU字状コイルに対して個別に切断、曲げ整形、接合等の工程を追加する必要がないため、工程の簡略化が可能になる。
【0007】
また、複数本の第1のU字状コイルには、少なくとも第3、第4、第5および第6のU字状コイルが含まれており、上述した予備捻り整形によって、以下に示す第1〜第5のステップにおいて所定の整形を行った後のこれら第3〜第6のU字状コイルを同時に本捻り治具に挿入することが望ましい。
【0008】
第1のステップ:第3、第4および第5のU字状コイルを予備捻り治具に挿入する。
第2のステップ:第3、第4および第5のU字状コイルの少なくとも1本のターン部側の首部を曲げる。
【0009】
第3のステップ:首部の曲げ作業に用いられた作業空間と重なるよう第6のU字状コイルを予備捻り治具に挿入する。
第4のステップ:予備捻り治具を構成する複数の捻りリングを相対的に移動させることにより、第3、第4、第5および第6のU字状コイルに対して同時に捻り整形を行う。
【0010】
第5のステップ:捻り整形後の前記第3、第4、第5および第6のU字状コイルを前記予備捻り治具から取り出す。
このように、複雑な予備捻り整形を行った後の複数本のU字状コイルを同時に本捻り治具に挿入することにより、これらのU字状コイル間あるいは予備捻り整形がされていない他のU字状コイルとの間での干渉を防止することができる。これにより、捻り整形のためのU字状コイルの提供からステータコアに対する組み付けまでの各工程の自動化が容易となる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した一実施形態のコイル捻り整形装置を用いたコイル捻り整形方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態のコイル捻り整形工程は、予備捻り整形工程と本捻り整形工程とからなっており、予備捻り整形工程が予備捻り整形治具を用いて、本捻り整形工程が本捻り整形治具を用いて行われる。また、これらの予備捻り整形治具および本捻り整形治具は、例えばU字状のコイルであるセグメントを用いて形成されるステータコイルを有する車両用交流発電機を製造するために用いられる。
【0012】
図1は、本実施形態の予備捻り整形治具の部分的な平面図である。また、図2は図1のII−II線断面図である。これらの図に示すように、本実施形態の予備捻り整形治具は、4つの捻りリング10、12、14、16と、内枠18および外枠20と、4つの位置調整治具22、24、26、28とを含んで構成されている。
【0013】
4つの捻りリング10〜16のそれぞれは、同心状に配置された円環形状を有しており、整形の対象となるU字状コイルが挿入される位置に所定の挿入孔が形成されている。具体的には、捻りリング10は、最も内周側に配置されており、互いに周方向に1スロット分離れた位置に2箇所の挿入孔10a、10bが形成されている。捻りリング12は、内周側から2番目に配置されており、互いに周方向に1スロット分離れた位置に2箇所の挿入孔12a、12bが形成されている。捻りリング14は、内周側から3番目に配置されており、互いに周方向に1スロット分離れた位置に2箇所の挿入孔14a、14bが形成されている。捻りリング16は、最も外側に配置されており、互いに周方向に1スロット分離れた2箇所に挿入孔16a、16bが形成されている。これら4つの捻りリング10〜16の中で2つの捻りリング10、14は、周方向に揺動可能に支持されている。この揺動動作によって予備捻り整形が実施される。
【0014】
内枠18は、最も内周側に配置された捻りリング10を保持する治具である。また、外枠20は、最も外周側に配置された捻りリング16を保持する治具である。これらの内枠18と外枠20の間には、捻りリング10〜16に形成された各挿入孔に挿入されたU字状コイルの反ターン部側の直線部が収容される空間が形成されており、この空間には、これらの直線部の先端位置を調整するために用いられる4つの位置調整治具22、24、26、28が径方向に沿って配置されている。図2に示した例では、4つの位置調整治具22〜28の端面位置が全て同じに設定されているが、U字状コイルの形状や組合せ方によってはこれらの端面位置が不揃いであってもよい。
【0015】
図3は、本実施形態の本捻り整形治具の部分的な平面図である。また、図4は図3のIV−IV線断面図である。これらの図に示すように、本実施形態の本捻り整形治具は、2つの捻りリング30、32と、内枠34および外枠36と、4つの位置調整治具40、42、44、46とを含んで構成されている。
【0016】
2つの捻りリング30、32のそれぞれは、同心状に配置された円環形状を有しており、整形の対象となるU字状コイルが挿入される位置に所定の挿入孔が形成されている。具体的には、捻りリング30は、内周側に配置されており、周方向に沿ってスロット間隔で複数の挿入孔30aが形成されている。また、捻りリング32は、外周側に配置されており、周方向に沿ってスロット間隔で複数の挿入孔32aが形成されている。本実施形態では、2種類(部分的に3種類)のU字状コイルの直線部を2本一組で挿入孔30a、32aに挿入した後に、捻りリング30と捻りリング32を互いに反対方向に揺動させることにより、本捻り整形が実施される。
【0017】
内枠34は、内周側の捻りリング30を保持する治具である。また、外枠36は、外周側の捻りリング32を保持する治具である。これらの内枠34と外枠36の間には、捻りリング30、32に形成された各挿入孔に挿入されたU字状コイルの反ターン部側の直線部が収容される空間が形成されており、この空間には、これらの直線部の先端位置を調整するために用いられる4つの位置調整治具40、42、44、46が径方向に沿って配置されている。図4に示した例では、4つの位置調整治具40〜46の端面位置が全て同じに設定されているが、U字状コイルの形状や組合せ方によってはこれらの端面位置が不揃いであってもよい。
【0018】
図5は、本実施形態の予備捻り整形工程の手順を示す流れ図である。また、図6〜図13は、予備捻り整形の各工程を示す図である。図6、図8、図10、図12には各工程における予備捻り治具の平面図が、図7、図9、図11、図13には予備捻り治具に挿入された各U字状コイルの形状を示す側面図が示されている。なお、図7、図9、図11、図13では、予備捻り治具に挿入されたU字状コイルのみに着目してこれらの形状が示されている。
【0019】
(工程1)
予備捻り整形治具の捻りリング10、14の各挿入孔10a、14aにU字状コイル60を、捻りリング12、14の各挿入孔12a、14bにU字状コイル62を、捻りリング12、16の各挿入孔12b、16bにU字状コイル64をそれぞれ反ターン部側(直線部の先端側)から挿入する(ステップ10、図6、図7)。
【0020】
(工程2)
2本のU字状コイル60、62の間に、上方(ターン部側)から首曲げパンチ50を下降させ、これらのU字状コイル60、62の首部を曲げる(ステップ11、図8、図9)。ここで、首部とは、U字状コイル60、62のターン部側であって、捻りリング10〜14から突出した部分をいう。
【0021】
(工程3)
捻りリング10、16の各挿入孔10b、16aに、長尺のU字状コイル66を挿入する(ステップ12、図10、図11)。なお、このU字状コイル66は、U字状コイル60、62の首部の曲げ作業に用いられた空間と重なるように挿入されている。
【0022】
(工程4)
捻りリング12、16に対して捻りリング10、14を1スロット分だけ反時計方向に移動させることにより、4本のU字状コイル60、62、64、66に対して捻り整形を行う(ステップ13、図12、図13)。この捻り整形は、長尺のU字状コイル66の必要箇所以外の変形を防止するために、他の3本のU字状コイル60〜64から突出するU字状コイル66をガイド52によって固定して行われる。その後、捻り整形された4本のU字状コイル60〜66が予備捻り整形治具から取り出される(ステップ14)。
【0023】
図14は、上述した予備捻り整形工程の次に実施される本捻り整形工程の手順を示す流れ図である。また、図15は、本捻り整形の主要工程を示す図である。
(工程1)
本捻り整形治具の捻りリング30、32の各挿入孔30a、32aに、予備捻り整形がなされていない組み合わされたU字状コイル68、70をそれぞれ反ターン部から挿入する(ステップ20、図15)。
【0024】
図16は、予備捻り整形がなされていない組み合わされたU字状コイル68、70の斜視図である。図16に示すように、本実施形態においては、一方のU字状コイル70を他方のU字状コイル68が内包するようにこれら2本のU字状コイル68、70が組み合わされ、捻りリング30、32の各挿入孔30a、32aに挿入される。
【0025】
(工程2)
次に、予備捻り整形がなされて組み合わされて、4本が一組となったU字状コイル60、62、64、66を、捻りリング30、32の特定の挿入孔30a、32aに反ターン部側から挿入する(ステップ21、図15)。
【0026】
(工程3)
捻りリング30、32を互いに反対方向に3スロット分だけ(1磁極ピッチが6スロットの場合)回転させることにより、捻りリング30、32の各捻り孔30a、32aに挿入された全てのU字状コイル60〜70に対して捻り整形を行う(ステップ22)。その後、捻り整形されたU字状コイルが取り出される(ステップ23)。このようにして本捻り整形が完了したU字状コイルは、ステータコイルを形成する複数スロット分(例えば96スロット分)が同時にステータコアの各スロットに挿入される。
【0027】
このように、一部のU字状コイル60〜66について予備捻り整形を行った後に、それ以外のU字状コイル68、70とともに本捻り整形を行うことにより、捻り角度や接続状態が異なる複数のU字状コイル60〜70が混在している場合であっても同時に捻り整形を行うことができ、その後に特定のU字状コイルに対して個別に切断、曲げ整形、接合等の工程を追加する必要がないため、工程の簡略化が可能になる。
【0028】
特に、複雑な予備捻り整形を行った後のU字状コイル60〜66を同時に本捻り治具に挿入することにより、これらのU字状コイル60〜66の間あるいは予備捻り整形がされていない他のU字状コイル68、70との間での干渉を防止することができる。これにより、捻り整形のためのU字状コイル60〜70の提供からステータコアに対する組み付けまでの各工程の自動化が容易となる。
【0029】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。上述した実施形態では、2スロットに対応する4本のU字状コイル60〜66を対象に予備捻り整形を行ったが、1スロット内に収容するU字状コイルの数や捻り角度が変更される範囲等によっては、4本以外の数のU字状コイルを予備捻り整形の対象とするようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態の予備捻り整形治具の部分的な平面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】本実施形態の本捻り整形治具の部分的な平面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】本実施形態の予備捻り整形工程の手順を示す流れ図である。
【図6】予備捻り整形の各工程を示す図である。
【図7】予備捻り整形の各工程を示す図である。
【図8】予備捻り整形の各工程を示す図である。
【図9】予備捻り整形の各工程を示す図である。
【図10】予備捻り整形の各工程を示す図である。
【図11】予備捻り整形の各工程を示す図である。
【図12】予備捻り整形の各工程を示す図である。
【図13】予備捻り整形の各工程を示す図である。
【図14】予備捻り整形工程の次に実施される本捻り整形工程の手順を示す流れ図である。
【図15】本捻り整形の主要工程を示す図である。
【図16】予備捻り整形がなされていない組み合わされたU字状コイルの斜視図である。
【図17】部分的に捻り角度および接合状態が異なるコイルの組み付け作業の概要を示す図である。
【図18】部分的に捻り角度および接続状態が異なるコイルの組み付け作業の概要を示す図である。
【符号の説明】
10、12、14、16、30、32 捻りリング
18、34 内枠
20、36 外枠
50 首曲げパンチ
52 ガイド
60、62、64、66、68、70 U字状コイル
Claims (2)
- ステータコアのスロットに挿入するコイルを捻り整形によって製造するコイル捻り整形方法において、
複数本の第1のU字状コイルを予備捻り治具に挿入して予備捻り整形を行い、次に、この予備捻り整形が行われた複数本の前記第1のU字状コイルと、予備捻り整形がされていない複数本の第2のU字状コイルとを本捻り治具に挿入して本捻り整形を行うことにより、前記第1および第2のU字状コイルを整形することを特徴とするコイル捻り整形方法。 - 請求項1において、
複数本の前記第1のU字状コイルには、少なくとも第3、第4、第5および第6のU字状コイルが含まれており、
前記予備捻り整形は、
前記第3、第4および第5のU字状コイルを前記予備捻り治具に挿入する第1のステップと、
前記第3、第4および第5のU字状コイルの少なくとも1本のターン部側の首部を曲げる第2のステップと、
前記首部の曲げ作業に用いられた作業空間と重なるよう前記第6のU字状コイルを前記予備捻り治具に挿入する第3のステップと、
前記予備捻り治具を構成する複数の捻りリングを相対的に移動させることにより、前記第3、第4、第5および第6のU字状コイルに対して同時に捻り整形を行う第4のステップと、
捻り整形後の前記第3、第4、第5および第6のU字状コイルを前記予備捻り治具から取り出す第5のステップと、
を有し、前記第5のステップにおいて取り出された前記第3、第4、第5および第6のU字状コイルを同時に前記本捻り治具に挿入することを特徴とするコイル捻り整形方法。
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