JP4473750B2 - 最適な掃気を行うためのピストン溝 - Google Patents

Description

本発明は、エンジン（内燃機関）に関し、詳しくは内燃機関のピストン溝に関する。

小型２サイクルエンジンは、他の競合技術に対して性能面の利点があるため、手持ちで操作する屋外用装置の分野で広く受け入れられている。これらのエンジンの主たる問題点は、大量の炭化水素を排出する可能性を有することである。従来の２サイクルエンジンにおいては排気ガスを排出するために、外から入って来る燃料混合物（燃料及び空気）を使用する。層状掃気方式においては、排気ガスを排出するために、外気を吹き込む手法が用いられる。その結果として、排出ガスが少なくなり燃料消費量も低くなる。

層状掃気式の２サイクル内燃機関においては、燃焼開始後で且つ燃料混合物がエンジンクランクケース室から送達される前に給気がエンジンの燃焼室に導入される。この給気によって、燃焼室からの燃焼ガスの排出が行いやすくなり、又この給気によって、次に送達される燃料混合物の燃焼を促進するための空気が或る程度供給される。

本発明のいくつかの態様について基本的理解を得るために、本発明の概要を以下に述べる。この概要は、本発明を広範囲にわたって概観するものではない。本発明の重要な要素を特定することを意図するものではなく、本発明の範囲を詳細に述べることを意図するものでもない。唯一の目的は、以下の詳述に先立ち、簡単な形で本発明の概念のいくつかを提示することにある。

本発明の一態様により、内燃機関が提供される。この内燃機関は、シリンダブロック；このシリンダブロックに内蔵され内部で垂直に摺動可能なピストン；及びこのピストン上に位置するピストン溝；からなる。このピストン溝は、上向きの角度を持たせた頂部縁壁を有する。

本発明の別の態様により、内燃機関用のピストンが提供される。このピストンは、ほぼ円筒形のピストン本体；及びピストン本体の周囲の一部に沿って延びる掃気溝（ピストン溝）であって、この掃気溝の上部壁（頂部縁壁）が半径方向に沿って外側に上向きの角度を持たせるように形成されている掃気溝；とからなる。

本発明のさらに別の態様により、シリンダブロック；このシリンダブロックに内蔵されて内部で垂直に摺動可能なピストン；及びこの内燃機関の掃気溝を浄化（ガス排出）するために角度を持たせた溝手段；とからなる内燃機関が提供される。

上記目的及び関連する目的を達成するために、本発明はまた、以下に詳述し、特許請求の範囲において指摘する特徴を有する。以下の記述及び添付図面により、本発明の特定の例示的態様を詳細に説明する。しかし、これらの態様は、本発明の原理が適用される種々の態様のほんの数例を提示するに過ぎず、本発明はそのような態様の全てとその相当物を包含するものである。本発明の他の目的、利点及び新規特徴については、添付図面を参照して後述する説明から明らかになろう。

本発明は、搬送路又は掃気路の浄化を改善するために用いられるピストン溝に関する。以下の本発明の説明で参照する図面では、類似要素には類似の符号を用いている。これら複数の図面は、図面間及び一図面の内で縮尺が一致しない場合があること、特に構成要素の大きさは、見易さを優先して適宜描かれている場合があることを注記したい。以下の開示においては、本発明の十分な理解が得られるように説明そのものを目的として多数の特定事例を詳述している。しかし、本発明がこれら特定の詳細事例を用いなくても実施できることは明らかである。別の場合には、本発明の開示を容易にするために、周知の構造及び装置がブロック形式で示される。

まず図１に、本発明の一態様による層状掃気式２サイクルエンジン１０を示す。特に、図１はクランク軸の軸心とシリンダの軸心とを通る横断面を示す。ピストン１２が、エンジン１０のシリンダブロック１４に内蔵されており、内部で垂直に摺動可能である。ピストン１２は、ピストン溝１６を有し、その縁壁１８の一部は、ピストン１２の内部に位置するリストピン開口部１９に向けて角度、テーパ、又は何らかの傾斜を有する。例えば、この縁壁１８の角度を徐々に増加させてもよく、リストピン開口部１９の中心線に平行な軸線に対して約１０度から約６０度としてよい。この縁壁１８に角度を持たせることによって掃気路４４からの燃料混合物の排出が容易になり、よって後述するようにエンジン１０からの排気ガス放出が改善される。しかし、他の空気流動力学により排気ガス排出の促進を補助してもよい。

クランクケース２０がシリンダブロック１４の下側の部分に結合されており、クランクチャンバ２２がクランクケース２０内に形成されている。ピストン１２とシリンダブロック１４とがシリンダ室又は燃焼室２６を形成し、ここへ燃料混合物が供給されて点火される。シリンダブロック１４の側壁には排気ポート（図示しない）が設けられる。この排気ポートは、燃焼後に燃焼ガスを排気するための排気路（図示しない）と、燃焼室２６に燃料混合物を供給するための掃気ポート２８とに接続される。排気ポートは、排気管（図示しない）を介して消音器（図示しない）に結合され、燃焼ガスは消音器から排気ガスとして大気中に排出される。

リストピン３０は、リストピン３０によってピストン１２が連接棒３２に軸回転可能に結合されるように、リストピン開口部１９を貫通している。連接棒３２は、クランクピン（図示しない）によってクランク軸３４に軸回転可能に接続されており、ピストン１２の移動とクランク軸３４の回転とにつれて連接棒３２の角度が変わり得るように両端において回転することができる。連接棒３２は、連接棒軸受を包囲する大端部３６と、リストピン３０を包囲する小端部３８とを有する。リストピン３０は、ピストン１２を横方向に貫通して延び、リストピンボス４０によってピストン１２に固定される。リストピン３０の軸受は、ピストン１２内、連接棒３２内、又はその両方にあってよい。クランク軸３４は、軸受４１を介してクランクケース２２内で回転支持される。クランク軸３４は、動力工具の一部（例えば、トリマヘッド駆動軸、チェーンソー駆動軸）に回転力を伝達するように作動することができる。

エンジン１０の運転中に、ピストン１２が下死点位置から上昇し始めるとき、クランクチャンバ２２の容積が増大する。ピストンの上昇中、ピストン１２は排気ポートと掃気ポート２８とを閉鎖する。その結果、クランクケース２０と掃気路４４の内部圧力が減少し、クランクチャンバ２２内に燃料空気混合物が引き込まれ、また空気路４６（図３）から空気がピストン溝１６を通して掃気路４４内に引き込まれ、それからクランクチャンバ２２内に引き込まれる。ピストン１２が上死点位置に近づくと、前行程で燃焼室２６に供給された燃料空気混合物が点火し、そしてピストン１２が下降し始めると、クランクケース２０内部の圧力が上昇する。一方、排気ポートと掃気ポート２８とを開くことによって、燃焼室２６内の燃焼ガスが排気路に排出される。ほぼ同時に、掃気路４４内の空気が燃焼室２６内に噴入し、残留燃焼ガスを排出する。クランクチャンバ２２内に吸引された燃料空気混合物は、上記空気に続いて掃気路４４を介して燃焼室２６内に供給される。それからピストン１２が下死点位置に到達する。

次に図２及び図３は、ピストン縁壁部１８を掃気ポート２８との関連で表す拡大図で、ピストン１２が第１の位置にある場合と第２の位置にある場合とをそれぞれ示す。特に、図２及び図３は、シリンダブロック１４内でピストン１２が上昇する際の、ピストン溝１６と掃気路４４との間の空気流のパターンを示す。図２において、第１のピストン位置では、掃気ポート２８がまずピストン溝１６に開口する。ピストン溝１６が最初に開口すると、空気がピストン溝１６から掃気ポート２８に入り、燃料混合物が掃気路４４からクランクチャンバ２２へ強制的に戻される。ピストン溝１６の傾斜させた縁壁部１８によってピストン溝１６と掃気ポート２８との間の開通時間が増加し、且つリストピンボス４０の支持も可能である。

図３は、ピストン１２が垂直移動行程においてさらに上部に位置する場合を示す。この実施例に示すように、ピストン１２が掃気路４４を開口し始めるときに、ピストン１２内の、角度を持たせた縁壁部１８は、掃気路４４の頂部４８に向いている。したがって、ピストン溝１６からの空気は、掃気路４４を下降する前に頂部４８へ向けて流れる。空気流を頂部４８に向けることにより、掃気路４４を介して残留燃料混合物を強制的に下降させ、さらにクランクチャンバ２２へと戻すことが容易になる。掃気路４４でのガス排出が効果的であればあるほど、未燃焼生排気が少なくなる。

図４に、シリンダブロック１４を取り除いた状態のピストン１２の側面図を示す。ピストン１２は、ほぼ円筒形のピストン本体を有し、ピストン溝１６がピストン本体の円周の一部に添って延びる。具体的には、ピストン溝１６は、縁壁１８が外向き半径方向に上向きに傾斜するように、ピストン本体の円周の一部に沿って半径方向内向きに延びる。なお、ピストン溝１６は、掃気ポート２８の開口部において縁壁１８がリストピン開口部１９に向かって傾斜するのに適した任意の形状とすることができる。傾斜する縁壁１８をピストン溝１６に存在させることにより、リストピン開口部１９の中心線に平行な頂部壁を有するピストン溝に比べて掃気路４４のガス排出を増大させることが容易になる。

以上の説明は、本発明の例示実施例に関するものである。本発明を記述する目的で、考え得るすべての構成要素又は方法について述べることはもちろん不可能であるが、この技術分野の当業者であれば、本発明について更なる組み合わせ及び置き換えが可能であることを理解し得よう。したがって本発明は、本発明の特許請求の精神及び範囲に合致するこのような改変、変更、及び変形を包含する。

本発明の一態様による層状掃気式２サイクルエンジンの断面図である。 本発明の一態様による層状掃気式２サイクルエンジンの掃気ダクト（掃気路）に対して角度を持たせた壁面を示し、ピストンが第１の位置にある場合を示す。 本発明の一態様による層状掃気式２サイクルエンジンの掃気ダクト（掃気路）に対して角度を持たせた壁面を示し、ピストンが第２の位置にある場合を示す。 本発明の一態様による層状掃気式２サイクルエンジンのピストンを示す。

符号の説明

１０ 層状掃気式２サイクルエンジン
１２ ピストン
１４ シリンダブロック
１６ ピストン溝
１８ 縁壁
１９ リストピン開口部
２０ クランクケース
２２ クランクチャンバ
２６ シリンダ室（燃焼室）
２８ 掃気ポート
３０ リストピン
３２ 連接棒
３４ クランク軸
３６ 大端部
３８ 小端部
４０ リストピンボス
４１ 軸受
４４ 掃気路
４６ 空気路
４８ 頂部

Claims (7)

1. シリンダブロック；
   該シリンダブロックに内蔵されその内部で垂直に摺動可能なピストン；
   該ピストンを貫通して延びるリストピン開口部；及び
   該ピストン上に位置するピストン溝；
   からなり、該ピストン溝は頂部縁壁を有し、該ピストン溝が最初に開口すると、空気が該頂部縁壁により掃気路の上隅に向けられるように、該頂部縁壁の一部は、該頂部縁壁と該ピストンの外側の側壁との間で形成される交点まで該リストンピン開口部に向かって傾斜していることを特徴とする内燃機関。
2. ピストン溝が該ピストンの外周の一部に亘って内側に延び、該ピストン溝の頂部縁壁が半径方向に沿って外側上向きに傾斜するような形状を有する、請求項１に記載の内燃機関。
3. 頂縁壁部の傾斜により、該ピストン溝と掃気ポートとの間の開通時間が増加する、請求項１に記載の内燃機関。
4. 頂部縁壁が、該掃気路の上隅に向かって傾斜している、請求項１に記載の内燃機関。
5. 内燃機関用のピストンであって、
   ほぼ円筒形のピストン本体； 及び
   ピストン本体の外周の一部に亘って延び、ピストン溝が最初に開口すると、空気が縁壁により掃気路の上隅に向けられるように、該縁壁の一部が、該縁壁と該ピストンの外側の側壁との間で形成される交点まで該ピストン内に位置するピストンピン開口部へ向かって傾斜するような形状を有しているピストン溝；
   からなるピストン。
6. ピストン溝の縁壁がテーパ形状を有する、請求項５に記載のピストン。
7. ピストン溝の該縁壁が、リストピン開口部の中心線に平行な軸線に対して約１０度から約６０度傾斜している、請求項５に記載のピストン。

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