JP4470009B2 - 熱硬化型水性塗料組成物及び複層塗膜形成方法 - Google Patents

熱硬化型水性塗料組成物及び複層塗膜形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱硬化型水性塗料組成物及び複層塗膜形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
塗装は、被塗物に対する美観の付与に加えて、被塗物の保護を目的として行われるものである。この被塗物の保護を目的とした塗装として、下塗り塗膜及び上塗り塗膜、又は下塗り塗膜、中塗り塗膜及び上塗り塗膜からなる複層塗膜により被覆されることが多い。
【0003】
例えば、自動車車体の外板部には、上記複層塗膜が形成されていることが多いが、この車体外板部の場合には、走行中に巻き上げられた、路面上の小石、砂利、凍結防止剤、氷塊などが衝突して、外板部上の複層塗膜にキズをつけ、その複層塗膜を局所的に破損・脱落せしめて、外観を損なったり、金属素地面が露出して、発錆、腐食するという欠陥が生じることがあり、それを防止する塗膜性能としての耐チッピング性が強く求められる。この耐チッピング性の向上のためには、中塗り塗料等で形成される中間層の塗膜性能が重要となるが、中塗り塗料として一般に用いられている水酸基含有ポリエステル樹脂/メラミン樹脂系の熱硬化型塗料は、そのままでは、耐チッピング性が不十分であった。
【0004】
また、近年の環境保全、省資源等の観点から、有機溶剤系塗料から水性塗料への変換が進展していることからすれば、水性塗料において耐チッピング性を改良することがより望ましい。
【0005】
水性塗料における耐チッピング性を改良する方法として、水性塗料に合成ゴムラテックスを配合する方法が公知である(特許文献1及び特許文献2参照)。しかしながら、合成ゴム粒子による耐チッピング性の向上のためには、その粒子径が大きいことが好ましいのに反して、一般的な合成ゴム粒子はその平均粒子径が、通常50〜200nm程度と小さいため、これを用いて耐チッピング性を向上させるのに必要な量を添加すると、その表面積の増大のために塗料の粘度が上がってしまい、塗膜の仕上り性を著しく低下させてしまうという問題がある。
【0006】
平均粒子径100〜500nmの共役ジエン系重合体粒子を含有する耐チッピング塗料も開示されている(特許文献3参照)。しかし、この塗料で使用する共役ジエン系重合体粒子の内、300nm以上の平均粒子径のものは、製造工数が多いため、コストが高くなるという問題があった。
【0007】
また、脂肪族共役ジエン単量体を特殊な方法で乳化重合して平均粒子径300nm以上程度の合成ゴムラテックス粒子を製造する方法が提案されている(特許文献4参照)。しかしながら、この方法によって、このような大きな粒子径のものを得る場合には、製造時間が長くなり、製造コストが高くなってしまうため実用的ではない。
【0008】
一方、自動車のバンパーやドアサイドモール等にはポリプロピレン等の熱可塑性樹脂が使用されている。この様なプラスチック被塗物には、通常、その耐久性及び美粧性の向上のために下塗り塗料及び上塗り塗料が塗装されることが多い。
【0009】
上記プラスチック被塗物に塗装される下塗り塗料は、被塗物と上塗り塗膜の両方の面との付着性に優れる必要があることから、従来から、塩素化ポリプロピレン樹脂系水性下塗り塗料が一般に使用されている。近年、このハロゲン系原料を用いた塗料は、廃棄時に燃やされた場合にダイオキシンの発生が懸念されるため、非ハロゲン系の水性塗料が求められるようになってきている。しかし、塩素化ポリプロピレン樹脂を用いずに、被塗物と上塗り塗膜との両方の面との付着性に優れた水性塗料を得ることは困難であった。
【0010】
【特許文献1】
特開2000−230141号公報
【0011】
【特許文献2】
特開平7−3188号公報
【0012】
【特許文献3】
特開平8−269369号公報
【0013】
【特許文献4】
特開平8−27227号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐チッピング性、各種被塗物や隣接塗膜との付着性等に優れた塗膜を形成することのできる熱硬化型水性塗料組成物及び該水性塗料組成物を用いた複層塗膜形成方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を達成するため鋭意研究を行った結果、熱硬化型水性塗料組成物に、天然ゴムラテックスを含有せしめることにより、耐チッピング性や各種被塗物や隣接塗膜との付着性が著しく向上すること、天然ゴムラテックスは一般にゴム粒子の粒子径が合成ゴムラテックスに比較して大きく、引張り強さ、伸び、反発弾性、耐摩耗性、耐屈曲亀裂性等の物性が総合的に優れており、合成ゴムラテックスに比して少量の添加量で耐チッピング性を向上させ得るので、上塗り塗膜の仕上り性を低下させないこと等を見出した。
【0016】
本発明者は、上記の如き新規な諸知見に基づいて、更に種々検討を重ねて、本発明を完成するに至った。
【0017】
本発明は、以下の熱硬化型水性塗料組成物及び複層塗膜形成方法に係るものである。
【0018】
1.(A)架橋官能基含有水性樹脂、
(B)架橋剤、及び
(C)天然ゴムラテックス
を含有することを特徴とする熱硬化型水性塗料組成物。
【0019】
2.天然ゴムラテックス(C)が、未変性天然ゴムラテックス粒子にビニル系モノマーをグラフト共重合せしめてなる変性天然ゴムラテックスである上記項1に記載の熱硬化型水性塗料組成物。
【0020】
3.天然ゴムラテックス(C)が、未変性天然ゴムラテックス粒子に含有される不飽和基を酸化反応によりエポキシ化してなる変性天然ゴムラテックスである上記項1に記載の熱硬化型水性塗料組成物。
【0021】
4.天然ゴムラテックス(C)が、粒子内部に架橋構造を有するものである上記項1〜3のいずれか一項に記載の熱硬化型水性塗料組成物。
【0022】
5.天然ゴムラテックス(C)の蛋白質の含有量が、ゴムラテックス粒子中の窒素原子含有量として0.1重量%以下である上記項1〜4のいずれか一項に記載の熱硬化型水性塗料組成物。
【0023】
6.天然ゴムラテックス(C)中の分散ゴムラテックス粒子の平均粒子径が300nm以上のものである上記項1〜5のいずれか一項に記載の熱硬化型水性塗料組成物。
【0024】
7.天然ゴムラテックス(C)の含有量が、架橋性官能基含有水性樹脂(A)と架橋剤(B)との合計固形分100重量部に対して、固形分として1〜5,000重量部の範囲内である上記項1〜6のいずれか一項に記載の熱硬化型水性塗料組成物。
【0025】
8.被塗物に、下塗り塗料、中塗り塗料及び上塗り塗料を塗装して複層塗膜を形成するにあたり、中塗り塗料として上記項1〜7のいずれか一項に記載の熱硬化型水性塗料組成物を使用することを特徴とする複層塗膜形成方法。
【0026】
9.上記項8の複層塗膜形成方法により、被塗物に複層塗膜が形成されてなる塗装物品。
【0027】
10.被塗物に、下塗り塗料、中塗り塗料及び上塗り塗料を塗装して複層塗膜を形成するにあたり、下塗り塗膜と中塗り塗膜との間及び/又は中塗り塗膜と上塗り塗膜との間に、上記項1〜7のいずれか一項に記載の熱硬化型水性塗料組成物を用いて耐チッピングプライマー層を形成することを特徴とする複層塗膜形成方法。
【0028】
11.上記項10の複層塗膜形成方法により、被塗物に複層塗膜が形成されてなる塗装物品。
【0029】
12.被塗物に、下塗り塗料及び上塗り塗料を塗装して複層塗膜を形成するにあたり、下塗り塗料として上記項1〜7のいずれか一項に記載の熱硬化型水性塗料組成物を用いてなることを特徴とする複層塗膜形成方法。
【0030】
13.被塗物が、プラスチック被塗物である上記項12に記載の複層塗膜形成方法。
【0031】
14.上記項12又は13の複層塗膜形成方法により、被塗物に複層塗膜が形成されてなる塗装物品。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0033】
熱硬化性水性塗料組成物
本発明の熱硬化型水性塗料組成物は、架橋官能基含有水性樹脂(A)、架橋剤(B)及び変性又は未変性の天然ゴムラテックス(C)を含有してなるものである。以下、本発明組成物の構成成分について説明する。
【0034】
架橋官能基含有水性樹脂(A)
(A)成分である架橋官能基含有水性樹脂は、塗料の基体樹脂を構成する成分であって、熱により架橋剤(B)と架橋反応する官能基を有する水性樹脂である。該官能基としては、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基等を挙げることができる。また、当該樹脂は、水性化を容易にするために、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等の酸基を含有していることが好ましい。酸基としては、カルボキシル基がより好ましい。
【0035】
好ましい架橋反応性水性樹脂(A)としては、例えば、水酸基含有樹脂、カルボキシル基含有樹脂、水酸基及びカルボキシル基含有樹脂等を挙げることができる。これらの内、より好ましいものは、水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂、水酸基及びカルボキシル含有アクリル樹脂等の水酸基及びカルボキシル基含有樹脂である。
【0036】
上記水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂は、例えば多塩基酸と、多価アルコールとをエステル化反応又はエステル交換反応により製造したものが使用できる。更に、多塩基酸及び多価アルコールに、必要に応じて、一塩基酸を併用することができる。
【0037】
上記多塩基酸としては、例えば、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)トリメリット酸、(無水)コハク酸、セバチン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、シクロヘキシルジカルボン酸、アジピン酸などの1分子中に2〜4個のカルボキシル基又はカルボン酸メチルエステル基を有する化合物を挙げることができる。また、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリシクロデカンジメタノール、シクロヘキシルジメチロール等の1分子中に2〜6個の水酸基を有するアルコールを挙げることができる。また、一塩基酸としては、例えば、大豆油、サフラワー油、ヤシ油、ヒマシ油、安息香酸等を挙げることができる。
【0038】
上記水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂は、数平均分子量が約1,000〜100,000、好ましくは約2,000〜20,000、酸価が約10〜200mgKOH/g、好ましくは約15〜90mgKOH/g、水酸基価が約10〜200mgKOH/g、好ましくは約20〜150mgKOH/gであるのが、好ましい。数平均分子量が約1,000未満になると、塗膜の機械的性質が低下し、一方数平均分子量が約100,000を越えると塗装作業性、仕上り性(塗膜平滑性、外観等)などが低下するので好ましくない。酸価が約10mgKOH/g未満になると水分散性が悪くなり、一方酸価が約200mgKOH/gを越えると塗料貯蔵安定性が低下するので好ましくない。また、水酸基価が約10mgKOH/g未満になると塗膜の物理化学的性質が低下し、一方、水酸基価が約200mgKOH/gを越えると、塗膜の耐水性などが低下するので好ましくない。
【0039】
また、水酸基及びカルボキシル基含有アクリル樹脂は、水酸基含有重合性不飽和モノマー、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを単量体成分とする共重合体樹脂である。
【0040】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸またはメタクリル酸の炭素数2〜8のヒドロキシアルキルエステル、それらのε−カプロラクトン変性物等が挙げられるが、特に2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレートのε−カプロラクトン変性物が好ましい。
【0041】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などを挙げることができる。
【0042】
その他の重合性不飽和モノマーとしては、求められる性能に応じて適宜選択して使用することができ、芳香族系ビニルモノマー、アクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜18のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル、N−置換アクリルアミド系又はN−置換メタクリルアミド系モノマーなどを挙げることができる。
【0043】
この水酸基及びカルボキシル基含有アクリル樹脂の分子量は、特に制限されるものではないが、通常、数平均分子量1,000〜100,000、好ましくは約2,000〜20,000、酸価が約10〜400mgKOH/g、好ましくは約15〜90mgKOH/g、水酸基価が約10〜200mgKOH/g、好ましくは約20〜150mgKOH/gであるのが、好適である。数平均分子量が約1,000未満になると、塗膜の機械的性質が低下し、一方数平均分子量が約100,000を越えると塗装作業性、仕上り性(塗膜平滑性、外観等)などが低下するので好ましくない。酸価が約10mgKOH/g未満になると水分散性が悪くなり、一方酸価が約400mgKOH/gを越えると塗料貯蔵安定性が低下するので好ましくない。また、水酸基価が約10mgKOH/g未満になると塗膜の物理化学的性質が低下し、一方、水酸基価が約200mgKOH/gを越えると、塗膜の耐水性などが低下するので好ましくない。
【0044】
また、水酸基及びカルボキシル基含有アクリル樹脂の架橋官能基含有水性樹脂にダイアセトンアクリルアミド等のモノマーを用いて、架橋反応性の高いカルボニル基を導入して、用いてもよい。
【0045】
また、架橋官能基含有樹脂として、ポリカルボン酸樹脂を使用することもできる。ポリカルボン酸樹脂としては、例えば、スチレンと無水マレイン酸との共重合体、ポリグルタミン酸等を使用できる。
【0046】
架橋剤(B)
本発明の熱硬化型水性塗料組成物の(B)成分である架橋剤は、熱により、架橋官能基含有水性樹脂(A)と反応して架橋するものであり、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、ポリエポキシド、ヒドラジド化合物などが挙げられる。
【0047】
上記アミノ樹脂は、架橋官能基含有水性樹脂(A)と反応して三次元に架橋硬化した塗膜を形成するものであり、具体的には例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、及びこれらのメチロール化物、アルキルエーテル化物などが包含される。該アミノ樹脂の中でもメラミンホルムアルデヒド樹脂を用いるのが硬化性の観点から好ましい。
【0048】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネートなどの芳香族、脂環族、脂肪族のポリイソシアネート化合物;脂肪族のイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物やビュウレット型ポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物をポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレン等で部分変性したものなどを挙げることができる。本発明の塗料組成物の貯蔵安定性の点からは、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤で封鎖した化合物が好適に使用できる。
【0049】
ブロックポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤で封鎖した化合物であり、これを用いる場合には、塗料組成物の貯蔵安定性を向上させることができるという利点が得られる。
【0050】
上記ブロック剤はポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に付加してブロックするものであり、生成するブロックイソシアネート化合物は、常温において安定で、かつ通常約100〜約200℃の範囲内の温度に加熱した際にブロック剤を解離して遊離のイソシアネート基を再生しうるものであることが重要である。
【0051】
上記ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾールなどのフェノール系ブロック剤;ε−カプロラクタム、γ−バレロラクタムなどのラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ラウリルアルコール、ジアセトンアルコールなどの脂肪族アルコール系ブロック剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系ブロック剤;ベンジルアルコール等の芳香族アルコール系ブロック剤;グリコール酸メチル、グリコール酸エチルなどのグリコール酸エステル系ブロック剤;乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどの乳酸エステル系ブロック剤;アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系ブロック剤;マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系ブロック剤;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系ブロック剤;アセトアニリド、アセトアニシジド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系ブロック剤;フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系ブロック剤;ピラゾール及びその誘導体、ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミンなどのアミン系ブロック剤;イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系ブロック剤;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、ジフェニル尿素、メチロール尿素などの尿素系ブロック剤;N−フェニルカルバミン酸フェニルなどのカルバミン酸エステル系ブロック剤;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのイミン系ブロック剤;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどの亜硫酸塩系ブロック剤などが挙げられる。ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とブロック剤との反応は既知の方法で行なうことができる。
【0052】
また、上記以外のポリイソシアネートとして水分散性ポリイソシアネート化合物(例えば、大日本インキ化学工業社製の商品名「バーノックDNW−5000」など)も好適に用いることができる。
【0053】
ポリエポキシドとしては、脂環式エポキシ樹脂を塗料組成物の貯蔵安定性の観点から好適に用いることができる。市販品としては、例えば、「EHPE−3150」、「EHPE−3100」、「EHPE−1150」(以上、ダイセル化学工業社製、商品名)などが挙げられる。上記以外の脂環式エポキシ基を含有する樹脂としては、例えばビニル−3,4−エポキシシクロヘキシルや3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどの脂環式エポキシ基含有モノマーをラジカル重合反応させることによって製造したものなどが挙げられる。
【0054】
架橋官能基含有水性樹脂(A)又は天然ゴムラテックス(C)に、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のモノマーを用いて、架橋反応性の高いカルボニル基を導入している場合には、これに対する架橋剤(B)として、アジピン酸ヒドラジドなどのヒドラジド化合物を好適に用いられる。
【0055】
また、架橋剤(B)は、水酸基及びカルボキシル基含有樹脂等の架橋官能基含有樹脂には、部分ブロックイソシアネート化合物を反応させることにより、ブロックイソシアネート基を導入して、使用するしてもよい。
【0056】
架橋官能基含有水性樹脂(A)と架橋剤(B)との好ましい組合せとして、自動車中塗り用塗料等に用いられる従来公知の組み合わせのものを用いることができ、例えば水酸基含有樹脂とアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物及びブロックポリイソシアネート化合物等の架橋剤との組み合わせや、カルボキシル基含有樹脂とエポキシ基含有架橋剤との組み合わせなどを挙げることができる。
【0057】
特に、水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂、水酸基及びカルボキシル基含有アクリル樹脂、これらの樹脂のカルボキシル基にエポキシ化合物を反応させた変性物、これらの樹脂の水酸基に酸無水物又はイソシアネート化合物を反応させた変性物等から選ばれる少なくとも1種の樹脂とアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物等の架橋剤との組み合わせ、並びにポリカルボン酸樹脂とポリエポキシド架橋剤との組み合わせが、被塗物や上塗り塗膜との付着性等に優れていることから好ましい。
【0058】
架橋官能基含有水性樹脂(A)と架橋剤(B)との配合比率は、両成分に含まれる架橋反応性官能基の量や両成分の分子量に応じて、適宜決定されるが、好ましくは、(A)/(B)の重量比で、99/1〜10/90、より好ましくは95/5〜20/80の範囲が適している。
【0059】
天然ゴムラテックス(C)
本発明の熱硬化型水性塗料組成物の(C)成分である天然ゴムラテックスは、得られる塗膜に弾力性を付与し、耐チッピング性を著しく向上させるものである。天然ゴムラテックスとしては、未変性及び変性ラテックスを、いずれも使用できる。
【0060】
また、天然ゴムラテックスは、一般に、分散しているゴム粒子の粒子径が合成ゴムラテックスに比較して大きく、引張り強さ、伸び、反発弾性、耐摩耗性、耐屈曲亀裂性等の物性が総合的に優れており、合成ゴムラテックスに比して、より少量の添加量で耐チッピング性を向上させることができるので、上塗り塗膜の仕上り性(塗膜平滑性、外観等)を低下させないという利点も得られる。
【0061】
未変性の天然ゴムラテックスは、ヘベア樹の樹皮の乳管中で生成する乳液を樹皮の切付により採取し、濃縮し、保存剤としてアンモニアを加えたものであり、少量の蛋白質、脂肪酸、糖分等を含み、そのゴムラテックス粒子はcis−1,4−ポリイソプレンを主成分として含有し、分子量が数千〜数百万程度の広い分布を有するものであり、工業的にはゴム粒子分が60重量%程度でアンモニアを0.6重量%程度含む状態で入手できる。
【0062】
また、天然ゴムラテックスのゴムラテックス粒子は、その粒子径が数nm〜数千nm程度の広い分布を持っており、粒子形状は通常球状である。工業的に入手可能な天然ゴムラテックスにおける平均粒子径は、通常300〜2,000nm程度の範囲である。
【0063】
本発明の水性塗料組成物は、上記天然ゴムラテックスを、そのままで又は種々の変性を施して、架橋反応性水性樹脂(A)及び架橋剤(B)とともに混合して使用することが可能である。
【0064】
変性天然ゴムラテックスとしては、未変性天然ゴムラテックスを公知の方法により変性したものを使用することができる。例えば、未変性天然ゴムラテックス粒子にビニル系モノマーをグラフト共重合せしめたもの、ゴムラテックス粒子に含有される不飽和基を酸化反応によりエポキシ化したもの等を使用することができる。これらの内、塗料の貯蔵安定性や塗膜性能の調節の容易さの点から、未変性天然ゴムラテックス粒子にビニル系モノマーをグラフト共重合せしめたものを用いることが好ましい。
【0065】
また、変性あるいは未変性の天然ゴムラテックスは加硫やラジカル発生剤等を用いた公知の方法で架橋構造を持たせることも可能である。架橋構造を持ったラテックス粒子は機械的強度が増大し、0℃以下の低温ではゴムの結晶化が抑制され、耐チッピング性能が向上するために、好適に使用できる。
【0066】
天然ゴムラテックス粒子の架橋は、未変性天然ゴムラテックス粒子にビニル系モノマーをグラフト共重合せしめた場合において、同時に起こることが、例えば、第13回エラストマー討論会講演会要旨集154〜157ページ(平成12年12月7日〜8日、日本ゴム協会主催)に記載されており、これにより得られた変性及び架橋された天然ゴムラテックスを使用してもよい。
【0067】
天然ゴムラテックスはゴム粒子表面に少量の蛋白質を有しており、特開平09−025468号公報には、脱蛋白処理した天然ゴムラテックス粒子にさらにビニル系モノマーを、重合開始剤を用いてグラフト重合することによりモノマーのグラフト効率(重合したモノマーの内、天然ゴムにグラフトしたモノマーの重量分率)を増大させることが記載されており、この方法により、脱蛋白及び変性した天然ゴムラテックスを用いてもよい。この方法において、脱蛋白処理工程は、グラフト共重合の前に行なってもよいし、グラフト共重合の後に行なってもよい。
【0068】
また、本発明の組成物においては、グラフト共重合に授からないビニルモノマーから生じたポリマーの量が多いと塗膜の付着性の低下等の懸念があり、それを解消するために脱蛋白処理することが好ましい。
【0069】
また、蛋白質に由来する加熱時の塗膜の黄変などを低減することが可能である点からも、脱蛋白処理することが好ましい。従って、この黄変抑制の目的のために、グラフト共重合することなく、脱蛋白のみを行ってもよい。
【0070】
なお、上記した脱蛋白の処理工程の実施は本発明の塗料または塗膜に要求される性能と製造コストのバランスを勘案して決定されるものであり、その実施を必須とするものではない。
【0071】
脱蛋白処理の方法については特に限定はなく、例えば天然ゴムラテックスに蛋白質分解性の酵素やバクテリアを添加して蛋白質を分解する方法、界面活性剤を添加して繰返し洗浄する方法、それらを併用する方法、あるいは天然ゴムラテックスに尿素と界面活性剤を添加して繰り返し洗浄するなどの適宜な方法で行うことができる。また、処理対象の天然ゴムラテックスについても、フィールドラテックスや、それをアンモニア処理や濃度調整したもの等の工業用ラテックスなどの適宜なものを用いうる。また、脱タンパク処理の際に用いる界面活性剤はカチオン系やアニオン系、ノニオン系や両性イオン系などの公知のものを用いることができる。
【0072】
脱蛋白処理する場合、蛋白質の含有量としては、ゴムラテックス粒子中の窒素原子含有量として0.1重量%以下にすることが上記したグラフト効率を上げたり、塗膜の加熱時の黄変を防ぐ上で好ましい。
【0073】
未変性天然ゴムラテックス粒子にビニル系モノマーがグラフト共重合したものは、天然ゴムラテックス中で、必要に応じて重合開始剤を用いて、ビニル系モノマーのグラフト共重合を行なう公知の方法で得ることができる。
【0074】
例えば、特開平1−217005号公報に記載された、ブタジエン系ゴム状重合体ラテックスに、レドックス系重合開始剤存在下ビニル系モノマーをグラフト共重合させた後、酸化防止剤、アルカリ土類金属を加えてグラフト共重合させたラテックスを凝固させ、洗浄する方法において、合成ゴムラテックスの代わりに未変性天然ゴムラテックスを用いて行なってもよい。
【0075】
また、ポリマーダイジェスト51(7)、p81〜99(1999)に記載された、同時照射法、前照射法・モノマー溶液浸漬法等の放射線グラフト共重合法において、グラフト共重合すべきポリマーとして未変性天然ゴムラテックスを用いて行なってもよい。
【0076】
また、脱蛋白処理後、グラフト共重合する場合は、前記の通り、特開平09−025468号公報に記載された方法に準じて行なうことができる。
【0077】
天然ゴムラテックス粒子に、グラフト共重合せしめるために用いるビニル系モノマーとしては、いずれのビニル系モノマーもグラフト重合することができるが、グラフト共重合による変性の目的に応じて適宜選択使用される。
【0078】
ビニル系モノマーの具体例としては、以下のモノマーを、例示することができる。
【0079】
カルボキシル基含有または無水物基含有モノマー:アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、5−カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸無水物、マレイン酸無水物等、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸等。
【0080】
炭素数1〜24のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート:メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等。
【0081】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート:2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート。
【0082】
エポキシ基含有(メタ)アクリレート:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等。
【0083】
アミノアルキル(メタ)アクリレート:N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等。
【0084】
(メタ)アクリルアミド又はその誘導体:(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドメチルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミドブチルエーテル、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等。
【0085】
オキセタン環含有(メタ)アクリレート:3−エチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−ブチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタンなど。
【0086】
アルコキシシリル基含有(メタ)アクリレート:γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシランなど。
【0087】
ジメチルポリシロキサン含有(メタ)アクリレート:「サイラプレンFM−0711」(商品名、チッソ(株)製)など。
【0088】
含フッ素(メタ)アクリレート:トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートなど。
【0089】
リン酸基含有(メタ)アクリレート:「カヤマーPM−1」、「カヤマーPM−2」(以上、商品名、いずれも日本化薬社製のリン酸基含有(メタ)アクリレート)、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェートなど。
【0090】
リン酸基含有不飽和モノマー:「AR−200」(大八化学社製のリン酸基含有アクリレート)など。
【0091】
スルホン酸基含有(メタ)アクリレート:2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホニックアシッド、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホニックアシッド・ナトリウム塩、4−スルホブチル(メタ)アクリレート・ナトリウム塩など。
【0092】
ニトリル基含有モノマー:(メタ)アクリロニトリルなど。
【0093】
スチレン系モノマー:スチレン;及びスチレンにおける芳香環に任意の置換基の付いた化合物、例えば、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロルスチレン、クロロメチルスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、p−tert−ブチルスチレン、スチレンスルホン酸塩等。
【0094】
1分子に2個以上のビニル基を含有するモノマー:ジビニルベンゼン、テトラアリルオキシエタン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等。
【0095】
その他のビニル系モノマー:酢酸ビニル、イソプロピルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、N−ビニルピロリドン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなど。
【0096】
上記ビニル系モノマーは、1種を使用してもよいし、2種以上を適宜組合せて使用してもよい。
【0097】
ビニル系モノマーとして、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基などの官能基を有するモノマーを使用することにより、グラフト共重合したものはこれらの官能基と反応性を有する基を持つ架橋剤(B)と反応することができることになり、硬化性の向上に寄与することができる。
【0098】
例えば、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のモノマーを用いて、ラテックス粒子に架橋反応性の高いカルボニル基を導入している場合には、これに対する架橋剤(B)であるアジピン酸ヒドラジドなどのヒドラジド化合物を用いることにより、硬化性が好適に向上する。
【0099】
耐チッピング性、被塗物や隣接塗膜との付着性などの塗膜性能の向上の観点から、グラフト共重合するビニル系モノマーから生じたホモポリマーとしてのガラス転移温度は、好ましくは−80℃から200℃、さらに好ましくは−60℃から170℃である。
【0100】
グラフト共重合させるビニル系モノマーの添加量については、特に限定はなく、適宜に決定することができる。一般には、グラフト重合の反応性や改質効果などの点より、天然ゴムラテックス粒子固形分100重量部あたり0.1〜100重量部程度、好ましくは0.5〜50重量部程度のビニル系モノマーが用いられる。
【0101】
天然ゴムラテックス中でラジカル重合開始剤を用いてビニル系モノマーのグラフト共重合を行なうには、例えば天然ゴムラテックスに乳化剤を加えてからビニル系モノマーを加える方式や、ビニル系モノマーを乳化剤にて水と一緒に乳化してから加える方式などの適宜な方式を採ることができる。その際にラジカル重合開始剤はモノマーといっしょに混合して加えるか、モノマーを加える前あるいはモノマーを加えた後に添加してグラフト共重合を行なうことができる。
【0102】
重合反応は、窒素置換下に攪拌しながら10〜80℃程度の温度で1〜100時間程度行なうことが好ましい。用いる乳化剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性イオン系の各種乳化剤やアミノ基含有乳化剤、反応性乳化剤の1種又は2種以上を有効成分とするものが用いられる。
【0103】
上記アニオン系乳化剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルリン酸塩、コハク酸モノアルキルナトリウム塩、スルホコハク酸ジアルキルナトリウム塩などが挙げられる。
【0104】
カチオン系乳化剤としては、例えば第4級アンモニウム塩を含有するもの、具体的には例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドなど)などが挙げられる。
【0105】
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレン誘導体類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類、アルキルアルカノールアミド類などが挙げられ、具体的には例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェノルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0106】
両性イオン系乳化剤としては、例えば、ジメチルアルキルベタイン類、ジメチルアルキルラウリルベタイン類、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルグリシン、アミノ酸類などが挙げられる。また、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩のようなアニオン−ノニオン性乳化剤なども使用可能である。
【0107】
アミノ基含有界乳化剤の具体例としては、(モノ、ジ、トリ)アルキルアミンやそのアルキレンオキシド付加物の酸塩又は四級アンモニウム塩などがあげられる。
【0108】
反応性乳化剤の具体例としては、ポリオキシアルキレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル塩等のアニオン系乳化剤、ポリオキシアルキレン(メタ)アクリル酸エステル等のノニオン系乳化剤、ジメチルアルキルアリロキシヒドロキシプロピルアンモニウムクロライド等のカチオン系乳化剤などがあげられる。
【0109】
上記乳化剤の使用量は、天然ゴムラテックス粒子の固形分100重量部に対して、0.05〜10重量部程度の範囲で用いることが好ましい。
【0110】
グラフト重合に用いることのできるラジカル重合開始剤については、特に限定はなく種々のビニル重合用の開始剤を用いることができる。一般に用いられる重合開始剤の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ジヒドロクロライド等の如きアゾ系化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の如き過硫酸塩;ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド等の如き過酸化物;過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組合せ、過酸化物とアミンの組合せ等の如きレドックス系開始剤などが挙げられる。
【0111】
ラジカル重合開始剤の添加量は、グラフト重合の進行性やゴム架橋の抑制性などの点より適宜決定されるが、ビニル系モノマーに対し0.001〜5重量%程度が好ましい。
【0112】
未変性天然ゴムラテックスを、未変性天然ゴムラテックス粒子に含有される不飽和基を酸化反応によりエポキシ化して変性したものは、例えば、ゴムラテックス粒子に、有機過酸を反応させることにより、調製することができる。
【0113】
有機過酸としては、例えば過安息香酸、過酢酸、過ギ酸、過フタル酸、過プロピオン酸、トリフルオロ過酢酸、過酪酸等があげられる。これらの有機過酸はラテックスに直接添加して、反応させればよい。
【0114】
有機過酸の添加量は、通常、天然ゴムラテックス粒子固形分100重量部に対して10〜100重量部程度、好ましくは20〜70重量部程度である。有機過酸の添加量がこの範囲を超える場合は副反応などにより物性の低下が大きくなり、逆にこの範囲を下回る場合は改質効果が小さくなり、いずれも好ましくない。
【0115】
ラテックスにこれらの有機過酸またはその原料成分を加えるに先立って、ラテックスには、ノニオン系などの乳化剤を加え、かつラテックスのpHを中性付近である約5〜7に保って安定化しておくのが好ましい。エポキシ化反応は、通常、温度30〜60℃程度で3〜10時間程度反応させることによって行われる。
【0116】
使用する天然ゴムラテックスとしては、脱蛋白したものを使用するのが、エポキシ化率を高くする点から、好ましい。
【0117】
本発明水性塗料組成物において、変性又は未変性の天然ゴムラテックス(C)の含有量は、架橋官能基含有水性樹脂(A)と架橋剤(B)との合計固形分100重量部に基づいて、固形分として1〜5,000重量部程度、好ましくは2〜1,000重量部程度、より好ましくは5〜500重量部程度の範囲内であることが好適である。天然ゴムラテックス(C)の含有量が1重量部未満であると耐チッピング性向上の効果がほとんど見られず、また、含有量が5,000重量部を超えると塗膜の耐候性や表面硬度が低下するために好ましくない。
【0118】
本発明の水性塗料組成物においては、架橋反応の形態に応じて、必要であれば、金属錯体類、有機金属類、金属塩類、有機または無機のプロトン酸類、塩基類等の硬化触媒を適宜使用できる。
【0119】
本発明の水性塗料組成物においては、前記の水酸基及び酸基を含有するポリエステル樹脂又はアクリル樹脂等の水性樹脂(A)中の酸基を中和し塩を形成することにより水性化を可能とするための中和剤を使用することができる。中和剤としては、具体的には、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。該中和剤は、樹脂中の酸基に対して、通常、約0.2〜1.5当量配合するのが良い。
【0120】
本発明の水性塗料組成物においては、従来から公知の顔料、例えば着色顔料(例えばチタン白、カーボンブラックなど)、体質顔料(例えば硫酸バリウム、炭酸カルシウムなど)などを使用できる。
【0121】
本発明の水性塗料組成物には、上記以外に、有機溶剤、沈降防止剤、消泡剤などを必要に応じて配合できる。
【0122】
本発明熱硬化性水性塗料組成物は、必須成分である(A)架橋官能基含有水性樹脂、(B)架橋剤及び(C)天然ゴムラテックスと、必要に応じて任意成分とを含有し、水又は水及び有機溶剤を媒体とする液状塗料であり、その固形分含量は、通常、20〜80重量%程度であるのが、好ましい。
【0123】
本発明の熱硬化型水性塗料組成物は、各種鋼板、アルミニウム板等の金属被塗物、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ABS樹脂等のプラスチックの各種成形体等の各種被塗物に、エアスプレー、エアレススプレー、静電スプレー等の塗装法により、硬化膜厚で5〜100μm程度の膜厚となるように、塗装後、加熱硬化することにより、好適に、耐チッピング性等の耐衝撃性、被塗物や隣接塗膜との付着性等に優れた塗膜を、好適に形成することができる。
【0124】
上記加熱硬化時の温度及び時間は、塗料組成物に用いた架橋剤(B)の種類にによって異なるが、アミノ樹脂又はブロックポリイソシアネート化合物を架橋剤として使用した場合には、通常、約60℃〜200℃、好ましくは約80℃〜160℃の温度範囲で、約10分間〜60分間、好ましくは約20分間〜50分間の時間範囲が適している。また、ポリイソシアネート化合物を架橋剤として使用した場合には、約10〜150℃、好ましくは約30〜80℃の温度範囲で、約10分〜24時間、好ましくは約20分〜10時間の時間範囲が適している。
【0125】
複層塗膜形成方法
本発明の好ましい複層塗膜形成方法としては、以下の態様I、II及びIIIが挙げられる。
【0126】
(1)態様Iは、被塗物に、下塗り塗料、中塗り塗料及び上塗り塗料を塗装して複層塗膜を形成するにあたり、中塗り塗料として本発明の熱硬化型水性塗料組成物を使用することを特徴とする複層塗膜形成方法である。
【0127】
この態様Iの複層塗膜形成方法によれば、耐チッピング性に優れる塗膜を形成でき且つ隣接塗膜との付着性に優れた中塗り塗膜を用いていることにより、耐チッピング性に優れた複層塗膜を好適に形成することができる。
【0128】
(2)態様IIは、被塗物に、下塗り塗料、中塗り塗料及び上塗り塗料を塗装して複層塗膜を形成するにあたり、下塗り塗膜と中塗り塗膜との間及び/又は中塗り塗膜と上塗り塗膜との間に、本発明の熱硬化型水性塗料組成物を用いて耐チッピングプライマー層を形成することを特徴とする複層塗膜形成方法である。
【0129】
この態様IIは、本発明塗料組成物を、通常の中塗り塗料としてではなく、下塗り塗膜、中塗り塗膜及び上塗り塗膜からなる三層塗膜の中間層の耐チッピングプライマー層として使用するものであり、これによっても、耐チッピング性に優れた複層塗膜を好適に形成することができる。
【0130】
(3)態様IIIは、被塗物に、下塗り塗料及び上塗り塗料を塗装して複層塗膜を形成するにあたり、下塗り塗料として本発明の熱硬化型水性塗料組成物を用いてなることを特徴とする複層塗膜形成方法である。
【0131】
この態様IIIの複層塗膜形成方法は、特にプラスチック被塗物の場合に好適に適用でき、この態様によれば、耐チッピング性に優れる塗膜を形成でき且つ被塗物及び隣接塗膜との付着性に優れた下塗り塗膜を用いていることにより、耐チッピング性に優れた複層塗膜を好適に形成することができる。
【0132】
上記本発明の各複層塗膜形成方法によって、被塗物に、耐チッピング性に優れた塗装物品を、好適に収得することができる。
【0133】
上記態様Iの複層塗膜形成方法は、具体的には、自動車車体鋼板に、カチオン電着塗料などの下塗り塗料を塗装し、その塗膜を加熱硬化させ又は硬化させずに、その塗面に本発明塗料組成物を塗装し、その塗膜を加熱硬化させ又は硬化させずに、その塗面に上塗り塗料を塗装し、加熱して、これらの塗膜を硬化させることによって行われる。上塗り塗料としては、ソリッドカラー塗料、メタリック塗料、光干渉色塗料及びクリヤ塗料などが使用でき、これらから選ばれた1種又は2種以上を用いて、単層又は2層以上の複層上塗り塗膜を形成することができる。これらのカチオン電着塗料及び上塗り塗料としては、それ自体既知の水性又は有機溶剤型の各種塗料が使用できる。
【0134】
上記態様IIの複層塗膜形成方法は、上記態様Iの複層塗膜形成方法において、中塗り塗料として、それ自体既知のものを使用し、下塗り塗膜と中塗り塗膜との間及び/又は中塗り塗膜と上塗り塗膜との間に、本発明の水性塗料組成物を塗装し、加熱硬化させ又は加熱硬化させることなく、更にその上層塗膜を形成することにより、耐チッピングプライマー層を形成するものである。
【0135】
上記態様IIIの複層塗膜形成方法は、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂から成るプラスチック被塗物、例えばバンパーやドアサイドモール等の自動車部品等の形状に成型加工されているものに対して、本発明塗料組成物を下塗り塗料として塗装後、加熱硬化させ又は加熱硬化させることなく、その塗面に上塗り塗料を塗装し、加熱して、これらの塗膜を硬化させることによって行われる。上塗り塗料としては、上記態様Iにおける上塗り塗料と同様のものを使用することができる。
【0136】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより一層具体的に説明する。各例における部及び%はいずれも重量を基準にしており、又塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づくものである。
【0137】
.試料の調製
(1) (A)成分
(A−1):ネオペンチルグリコール284部、トリメチロールプロパン451部、ブチルエチルプロパンジオール640部、イソフタル酸415部、アジピン酸438部及びヘキサヒドロ無水フタル酸462部を反応容器に入れ、220℃で5時間反応させた後、無水トリメリット酸96部を添加し、160℃で1時間反応させて、水酸基価130mgKOH/g、酸価25mgKOH/g、数平均分子量1,800のポリエステル樹脂を得た。得られた樹脂をジメチルエタノールアミンで中和してから水に混合して固形分50%の水分散液とした。
【0138】
(A−2):ネオペンチルグリコール348部、トリメチロールプロパン150部、アジピン酸128部及び無水フタル酸435部を反応容器に入れ、220℃で5時間反応させた後、無水トリメリット酸28部を添加し、160℃で1時間反応させた。さらに、この反応物にε−カプロラクトン88部及びドデシルベンゼンスルフォン酸1部を加え、150℃で3時間反応させて、数平均分子量約1,900、酸価25mgKOH/g、水酸基価110mgKOH/gのポリエステル樹脂を得た。得られた樹脂をジメチルエタノールアミンで中和してから水に混合して固形分50%の水分散液とした。
【0139】
(2) (B)成分
(B−1):「タケネートWB−720」(武田薬品工業社製、商品名、脂肪族系3官能型ブロックポリイソシアネート化合物:ヘキサメチレンジイソシアネートの平均3量体のイソシアネート基をブロック化したもの)。
【0140】
(B−2):「サイメル325」(三井サイテック社製、商品名、イミノ基含有メラミン樹脂)。
【0141】
(3) (C)成分
(C−1):「EXCELTEX HA」(台湾EXCEL TEX ENTERPRISE社製、商品名、天然ゴムラテックス、固形分60%、マレーシア産、アンモニア含有量0.6%、平均粒子径400nm(「COULTER N4型」サブミクロン粒子分析装置により測定))に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムをゴム固形分に対して1%添加し、脱イオン水を加えて固形分30%に調整し、天然ゴムラテックスを得た。
【0142】
(C−2):(C−1)の30%天然ゴムラテックスを333.3部フラスコに入れ、攪拌下、窒素を吹き込みながら、30℃に加温した。そこへt−ブチルヒドロパーオキシド4部とテトラエチルペンタミン6部を添加し、メチルメタクリレート30部を30分で均等に滴下した。モノマー滴下が終了して1時間後にt−ブチルヒドロパーオキシド2部とテトラエチルペンタミン3部をさらに添加して2時間攪拌後、脱イオン水をゆっくり添加して、固形分30%のグラフト化天然ゴムラテックスを得た。このラテックス粒子の平均粒子径は、430nmであった。
【0143】
(C−3):(C−2)におけるメチルメタクリレート30部の替わりに、メチルメタクリレート20部及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部の混合物に変更した以外は(C−2)と同様の方法により合成し、固形分30%のグラフト化天然ゴムラテックスを得た。このラテックス粒子の平均粒子径は、440nmであった。
【0144】
(C−4):(C−2)におけるメチルメタクリレート30部の替わりに、メチルメタクリレート20部及びN−メチロールアクリルアミドブチルエーテル10部の混合物に変更した以外は(C−2)と同様の方法により合成し、固形分30%のグラフト化天然ゴムラテックスを得た。このラテックス粒子の平均粒子径は、450nmであった。
【0145】
(C−5):(C−2)におけるメチルメタクリレート30部の替わりに、メチルメタクリレート27部及びメタクリル酸3部の混合物に変更した以外は(C−2)と同様の方法により合成し、固形分30%のグラフト化天然ゴムラテックスを得た。このラテックス粒子の平均粒子径は、450nmであった。
【0146】
(C−6):(C−1)の30%天然ゴムラテックス333.3部に、タンパク質分解酵素(「アルカラーゼ2.0T」、商品名、デンマーク国ノボノルディスクファーマ社製)0.1部を添加して、30℃で24時間攪拌した。このものを遠心分離装置を用いて9,000rpmで処理して、クリーム状の上層を単離し、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部及び脱イオン水を加えて、固形分30%になる様に調整し、再度同様の遠心分離操作を2回行い、固形分30%の脱蛋白化した天然ゴムラテックスを得た。蛋白質の含有量としては、ゴムラテックス粒子中の窒素原子含有量として0.02%(ケルダール法により測定)であった。このラテックス粒子の平均粒子径は、400nmであった。
【0147】
(C−7):(C−6)の脱蛋白化天然ゴムラテックス333.3部をフラスコに入れ、攪拌下、窒素を吹き込みながら、30℃に加温した。そこへt−ブチルヒドロパーオキシド4部及びテトラエチルペンタミン6部を添加し、さらに、メチルメタクリレート30部を30分間で均等に滴下した。モノマー滴下が終了して1時間後にt−ブチルヒドロパーオキシド2部及びテトラエチルペンタミン3部をさらに添加して2時間攪拌後、脱イオン水をゆっくり添加して、固形分30%のグラフト化天然ゴムラテックスを得た。このラテックス粒子の平均粒子径は、440nmであった。
【0148】
(C−8)「EXCELTEX HA」166.6部にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、20%の水酸化カリウム1.5部、30%硫黄分散体1.7部及びジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム0.3部を加えて、室温で15分間ゆっくり攪拌後、40℃で4時間攪拌した。これに固形分が40%になるように「ノラックPBK」(大内新興化学工業社製、商品名、フェノール系老化防止剤)を水希釈した分散体1.9部を添加して固形分が30%になるように脱イオン水にて調整して、前加硫天然ゴムラテックスを得た。このラテックス粒子の平均粒子径は、410nmであった。
【0149】
(C−9):(C−8)の前加硫天然ゴムラテックス333.3部をフラスコに入れ、攪拌下、窒素を吹き込みながら、30℃に加温した。そこへt−ブチルヒドロパーオキシド6部及びテトラエチルペンタミン9部を添加し、さらに、メチルメタクリレート30部を30分間で均等に滴下した。モノマー滴下が終了して1時間後にt−ブチルヒドロパーオキシド4部及びテトラエチルペンタミン6部をさらに添加して2時間攪拌後、脱イオン水をゆっくり添加して、固形分30%のグラフト化加硫天然ゴムラテックスを得た。このラテックス粒子の平均粒子径は、440nmであった。
【0150】
2.熱硬化型水性塗料組成物の作成
実施例1〜12及び比較例1〜3
上記の試料を用い、下記表1に示す配合量に従って配合し、脱イオン水で固形分が50%になるように調整して各熱硬化型水性塗料組成物を得た。
【0151】
【表1】
Figure 0004470009
【0152】
表1に示す配合量は、全て固形分重量部で示した。
【0153】
表1における各注(*1)〜(*3)の原料は、下記の内容のものである。
【0154】
(*1)「Nipol LX111A2」:日本ゼオン社製、商品名、ポリブタジエン系合成ゴムラテックス、固形分54%。このラテックス粒子の平均粒子径は、300nmであった。
【0155】
(*2)「JR806」:テイカ社製、商品名、チタン白顔料。
【0156】
(*3)「カーボンブラックMA100」:三菱化学社製、商品名、カーボンブラック顔料。
【0157】
3.試験塗板の作成及び性能試験
試験塗板A:表面をりん酸亜鉛で化成処理した鋼板に、カチオン電着塗料(「エレクロンGT10」、関西ペイント社製、商品名、エポキシ樹脂系)を膜厚が20μmになるようにスプレー塗装し、170℃で30分間加熱して塗膜を硬化させてから、その塗面に上記実施例及び比較例に示す各熱硬化型水性塗料組成物を膜厚が30μmになるようにスプレー塗装し、150℃で30分間加熱し、ついでその塗面にメタリック塗料(「マジクロンTB515」、関西ペイント社製、商品名、ポリエステル・メラミン樹脂系)を膜厚が15μmになるようにスプレー塗装し、室温で3分間放置してから、その未硬化塗面にクリヤ塗料(「マジクロンTC71」、関西ペイント社製、商品名、アクリル・メラミン樹脂系)を膜厚が35μmになるように塗装し、140℃で30分間加熱してこの両塗膜を一緒に硬化せしめて複層塗膜を有する各試験塗板Aを得た。
【0158】
試験塗板B:ポリプロピレン製の板上に上記実施例および比較例に示す各熱硬化型水性塗料組成物を膜厚が30μmになるようにスプレー塗装し、130℃で30分間加熱し、ついでその塗面にメタリック塗料(「マジクロンTB515」、関西ペイント社製、商品名、ポリエステル・メラミン樹脂系)を膜厚が15μmになるようにスプレー塗装し、室温で3分間放置してから、その未硬化塗面にクリヤ塗料(「マジクロンTC71」、関西ペイント社製、商品名、アクリル・メラミン樹脂系)を膜厚が35μmになるように塗装し、140℃で30分間加熱してこの両塗膜を一緒に硬化せしめて複層塗膜を有する各試験塗板Bを得た。
【0159】
得られた各試験塗板A又はBについて下記試験方法に従って試験を行い、塗膜性能を評価した。
【0160】
試験方法
耐チッピング性:米国Q−PANEL社製、「Q−G−Rグラベロメータ」(チッピング試験装置)の試片保持台に試験塗板Aを設置し、−20℃において、3kg/cm2の圧縮空気により粒度7号の花崗岩砕石50gを塗面に90度の角度で吹き付け、これによる塗膜のキズの発生程度などを目視で観察し下記基準で評価した。
【0161】
○:キズの大きさは小さく、中塗り塗膜(本発明組成物又は比較組成物の塗膜)が露出している程度、△:キズの大きさは小さいが、素地の鋼板が露出している、×:キズの大きさはかなり大きく、素地の鋼板も大きく露出している。
【0162】
ゴバン目付着試験1:上記試験塗板Aの塗面にカッターで素地に達するように切り込みを入れ、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作り、その塗面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてテープを急激に剥離したあとの残存するゴバン目の個数と層間での剥離状態を調べ下記基準で評価した。
【0163】
○:100個残存しており、層間で剥離が見られない;○△:100個残存しているが、層間での剥離が認められる;△:99〜95個残存している;×:塗膜の残存は94個以下。
【0164】
ゴバン目付着試験2:上記試験塗板Bの塗面にカッターで素地に達するように切り込みを入れ、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作り、その塗面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてテープを急激に剥離したあとの残存するゴバン目の個数と層間での剥離状態を調べ下記基準で評価した。
【0165】
○:100個残存しており、層間で剥離が見られない;○△:100個残存しているが、層間での剥離が認められる;△:99〜95個残存している;×:塗膜の残存は94個以下。
【0166】
上記各試験方法により得られた塗膜性能の評価結果を表2に示した。
【0167】
【表2】
Figure 0004470009
【0168】
【発明の効果】
本発明の熱硬化性水性塗料組成物によれば、(A)架橋反応性水性樹脂、(B)架橋剤及び(C)天然ゴムラテックスを含有することに基づいて、耐チッピング性、各種被塗物や隣接塗膜との付着性等に優れた塗膜を形成することができるという顕著な効果が奏される。
【0169】
本発明の熱硬化型水性塗料組成物は、特に、天然ゴムラテックスを使用することにより、従来から用いられてきた合成ゴムラテックス含有熱硬化型水性塗料組成物に比較して、得られる塗膜の耐チッピング性及び各種被塗物や隣接塗膜との付着性が著しく向上しており、自動車車体鋼板等の金属被塗物、自動車用バンパーなどのプラスチック被塗物へ複層塗膜を形成する場合に当たって、中塗り塗料用、耐ピッチングプライマー層用、下塗り塗料用などとして有用なものである。

Claims (14)

  1. (A)下記より選択される少なくとも1つの架橋官能基含有水性樹脂:
    (1)数平均分子量が1,000〜100,000、酸価が10〜200mgKOH/g、及び水酸基価が10〜200mgKOH/gである水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂、並びに
    (2)数平均分子量が1,000〜100,000、酸価が10〜400mgKOH/g、及び水酸基価が10〜200mgKOH/gである水酸基及びカルボキシル基含有アクリル樹脂、
    (B)前記架橋官能基含有水性樹脂(A)と反応して架橋するものである、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、プロックポリイソシアネート化合物、ポリエポキシド、及びヒドラジド化合物からなる群から選択される少なくとも1つの架橋剤、並びに
    (C)未変性又は変性の天然ゴムラテックス
    を含有することを特徴とする熱硬化型水性塗料組成物であって、
    前記天然ゴムラテックス(C)の含有量が、前記架橋性官能基含有水性樹脂(A)と前記架橋剤(B)との合計固形分100重量部に対して、固形分として1〜5,000重量部の範囲内である熱硬化型水性塗料組成物。
  2. 前記天然ゴムラテックス(C)が、未変性天然ゴムラテックス粒子にビニル系モノマーをグラフト共重合せしめてなる変性天然ゴムラテックスである請求項1に記載の熱硬化型水性塗料組成物。
  3. 前記天然ゴムラテックス(C)が、未変性天然ゴムラテックス粒子に含有される不飽和基を酸化反応によりエポキシ化してなる変性天然ゴムラテックスである請求項1に記載の熱硬化型水性塗料組成物。
  4. 前記天然ゴムラテックス(C)が、粒子内部に架橋構造を有するものである請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱硬化型水性塗料組成物。
  5. 前記天然ゴムラテックス(C)の蛋白質の含有量が、ゴムラテックス粒子中の窒素原子含有量として0.1重量%以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱硬化型水性塗料組成物。
  6. 前記天然ゴムラテックス(C)中の分散ゴムラテックス粒子の平均粒子径が300nm以上のものである請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱硬化型水性塗料組成物。
  7. 前記天然ゴムラテックス(C)の含有量が、前記架橋性官能基含有水性樹脂(A)と前記架橋剤(B)との合計固形分100重量部に対して、固形分として5〜500重量部の範囲内である請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱硬化型水性塗料組成物。
  8. 被塗物に、下塗り塗料、中塗り塗料及び上塗り塗料を塗装して複層塗膜を形成するにあたり、中塗り塗料として請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱硬化型水性塗料組成物を使用することを特徴とする複層塗膜形成方法。
  9. 請求項8の複層塗膜形成方法により、被塗物に複層塗膜が形成されてなる塗装物品。
  10. 被塗物に、下塗り塗料、中塗り塗料及び上塗り塗料を塗装して複層塗膜を形成するにあたり、下塗り塗膜と中塗り塗膜との間及び/又は中塗り塗膜と上塗り塗膜との間に、請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱硬化型水性塗料組成物を用いて耐チッピングプライマー層を形成することを特徴とする複層塗膜形成方法。
  11. 請求項10の複層塗膜形成方法により、被塗物に複層塗膜が形成されてなる塗装物品。
  12. 被塗物に、下塗り塗料及び上塗り塗料を塗装して複層塗膜を形成するにあたり、下塗り塗料として請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱硬化型水性塗料組成物を用いてなることを特徴とする複層塗膜形成方法。
  13. 被塗物が、プラスチック被塗物である請求項12に記載の複層塗膜形成方法。
  14. 請求項12又は13の複層塗膜形成方法により、被塗物に複層塗膜が形成されてなる塗装物品。
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