JP4469573B2 - 糖質吸収阻害剤及び高血糖防止食品 - Google Patents
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Description
その後、この吸収されたグルコースにより、一時的に血糖値が上昇し、過血糖症状が起こる。通常は、速やかなインスリン分泌と正常なインスリンに対する応答により、元の血糖値へと回復する。
このような合併症を予防、改善するためには、血糖コントロールを厳格に行うこと、及び食後の過血糖を抑えること、また、過剰なインスリン分泌を抑え膵臓への負担をなくすこと、が重要であると考えられている。実際、二糖類分解酵素阻害剤が薬剤として最近開発され、糖尿病に対する有用性が認識されてきている。
言い換えると、糖尿病の発症、肥満は、このようなインスリン感受性の低下が原因とも考えられ、糖尿病発症以前もしくは早期から、このような食後過血糖、インスリン過剰分泌を抑えることが非常に重要である。
しかしながら、現在、日々食品としても摂取可能で、安全にこれらを予防、改善するようなものはほとんどない。
即ち、高い糖質吸収阻害活性を有し、しかも日々食品として摂取しても人体に安全で副作用がないものがほとんどなく、実用の段階までに至っていないのが実情である。
請求項2に係る本発明は、マナユパ抽出物を有効成分とする高血糖治療剤を提供するものである。
請求項3に係る本発明は、マナユパ抽出物を有効成分とする糖尿病、肥満或いは高脂血症治療剤を提供するものである。
それ故、マナユパ抽出物を有効成分とする、本発明の糖質吸収阻害剤は、糖尿病の他、肥満や高脂血症などの生活習慣病に対して、予防及び改善(治療)効果を示すものと考えられる。
本発明の糖質吸収阻害剤は、食用にもされた素材であるため、安全であり、日々摂取して利用するために非常に優れている。また、熱水処理により強い活性を有しているので、さまざまな食品や加工食品や医薬品等に添加して利用可能である。
マナユパの学名は、Desmodium abscendens であり、和名では「ノハラハギ」と呼ばれる。マメ科ヌスビトハギ属に属し、熱帯、温帯と世界に多く分布する植物である。
抽出は、水(冷水、温水、熱水を含む)の他、メタノール,エタノール等の有機溶媒を用いて行うことができる。特に熱水抽出やメタノール或いはエタノールによる抽出が好ましい。
マナユパとしては、茎,葉,根があるが、茎,葉が好ましく、その乾燥粉末を用いることもできる。
本発明の糖質吸収阻害剤の使用量については、特に制限されることはないが、通常は一日当たりのマナユパ抽出物の使用量として0.01〜5g、好ましくは0.05〜1g程度が摂取されるように、1日1回ないし数回に分けて用いると良い。
本発明の高血糖防止食品としては、マナユパ抽出物を含有するものであればよく、マナユパ抽出物そのものであってもよいし、或いはマナユパ抽出物の他にさらに一般に用いられている食品素材を含有するものであってもよい。
このような本発明の高血糖防止食品は、いわゆる機能性食品として用いることができ、本発明の糖質吸収阻害剤と同様に、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤などの各種形態とすることができ、また、これらの形態に適当な賦形剤(例えば、デキストラン、オリゴ糖、乳糖など)等を加えることもでき、さらに、栄養補助剤を添加して用いることもできる。
本発明の高血糖防止食品には、糖質吸収阻害作用に基づく血糖降下作用が示される。
本発明の食品としては、本発明の高血糖防止食品と同様に、マナユパ抽出物を含有するものであればよく、マナユパ抽出物そのものであってもよいし、或いはマナユパ抽出物の他にさらに一般に用いられている食品素材を含有するものであってもよい。さらに、本発明の高血糖防止食品と同様に、各種形態とすることができ、また、賦形剤等や栄養補助剤を添加して用いることもできる。
本発明の糖尿病、肥満或いは高脂血症を予防、改善する食品には、マナユパ抽出物に示される糖質吸収阻害作用に基づく血糖降下作用やコレステロール低下作用等が認められ、糖尿病、肥満或いは高脂血症の予防、改善に有効である。
マナユパ乾燥葉1kgにメタノール8,000 mlを加え、3時間還流後、メタノールエキスを濃縮乾固し、抽出物を水、ブタノール液液分配を行った。ブタノール画分はさらにエーテル可溶物と不溶物とに分けた。それぞれ、エーテル不溶物(エーテル不溶画分)69g、エーテル可溶物(エーテル可溶画分)51g、水溶性画分21gを得た。
マナユパ茎葉1kgに水10,000mlを加え、30分間沸騰浴中で抽出した。ロータリエバポレーターで減圧下濃縮し、凍結乾燥後、熱水抽出物112gを得た。
マナユパ茎葉1kgにエタノール10,000mlを加え、時々撹拌しながら、室温で3日間保存し、エタノール抽出エキスを得た。この操作を3回繰り返し、濾液を集めて減圧濃縮し、エタノールエキス末26gを得た。
(1)α−アミラーゼ阻害試験
製造例1で得られたマナユパ抽出物を用いてα−アミラーゼ阻害試験を行った。試験方法は下記の通りである。
α-アミラーゼは、豚膵液由来のα−アミラーゼ(SIGMA社)をリン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)で希釈して用いた。α−アミラーゼ活性は市販アミラーゼテストワコー(和光純薬工業(株)製)を用いて測定した。リン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)で溶解した被験溶液25μlにα−アミラーゼ25μlを加え、37℃にて5分間プレインキュベートした後、50mg/dlになるように加熱溶解した溶性デンプン溶液200μlを加え、37℃にて10分間反応させた。0.01Nのヨウ素溶液250μlを加えて反応停止させ、水1mlを加えてヨウ素デンプン反応により得られた呈色を660nmの吸光度計で測定した。被験物の阻害率については、以下のようにして算出した。
[数式I]
・コントロールのアミラーゼ活性;(A−B)/A×100・・・・・I
ここでA、Bは次の通りである。
A:被験物、酵素の代わりに緩衝液を加えた時の吸光度
B:被験物の代わりに緩衝液を加え、酵素反応させた時の吸光度
[数式II]
・被験物のアミラーゼ活性;(C−D)/A×100・・・・・II
ここでC、Dは次の通りである。
C:酵素の代わりに緩衝液を加えた時の吸光度
D:酵素、被験物を加えた時の吸光度
[数式III]
・被験物のアミラーゼ阻害活性率(%);(I−II)/I×100
そこでさらに、強いα−アミラーゼ阻害作用が示されたエーテル不溶画分について、濃度依存性を検討した。その結果、図1に示すように、被験物濃度0.05mg/mlの低濃度においても80%の強いα−アミラーゼ阻害作用が示された。
同様の被験物を用いて、以下のようにしてα−グルコシダーゼ阻害試験を行った。
酵素はラット小腸アセトン粉末を0.1Mリン酸緩衝液でホモジナイズした後、遠心分離により得られた沈殿物を1%Triton-X100に溶解し、遠心分離後、上清を透析して、粗酵素として用いた。マルトース又はシュークロース(14mM)を基質とし、粗酵素液を添加し、15分間反応後、遊離するグルコースをグルコースオキシダーゼ法により定量した。
阻害率は、被験物無添加の場合の活性を100とし、被験物添加時の活性を100から差し引いた分を阻害率(%)として示した。
実施例1において強いα−アミラーゼ阻害作用の示されたエーテル不溶画分(製造例1で得られたマナユパ抽出物のうちのエーテル不溶画分)を用い、以下のようにしてラットへの糖質吸収阻害試験(デンプン負荷試験)を行った。
6週齢SD系雄性ラットを用い、生理食塩水に溶解した被験物500mg/kgをゾンデにより経口投与した直後、糖質溶液を投与した。投与時を0分として、それぞれ30、60、120分後に尾静脈より採血し、グルコース濃度をグルコースオキシダーゼ法により求めた。
溶性デンプンを2g/kgとなるようラットに対して経口投与し、経時的に血糖値の変化を測定した。被験物投与群においては、製造例1で得られたマナユパ抽出物のうちのエーテル不溶画分500mg/kgを直前に経口投与した。
その結果、溶性デンプン投与30分後において、マナユパ抽出物(エーテル不溶画分)投与群においては、マナユパ抽出物(エーテル不溶画分)無投与群である対照群(コントロール)に対して血糖上昇を有意に抑制した。また、上昇カーブの遅延により、マナユパ抽出物(エーテル不溶画分)投与群においては、図2に示すように、60分後においては有意に高い値を示した。
実施例2のデンプン負荷試験においてマナユパ抽出物は有意に血糖上昇を抑制することが示された。
そこで、他の糖類について効果があるかどうかを検討するため、マルトース2g/kgの経口糖負荷試験を行った。
その結果、製造例1で得られたマナユパ抽出物のうちのエーテル不溶画分500mg/kgの投与により、実施例2のデンプン負荷試験と同様に、マナユパ抽出物は、図3に示すように、マナユパ抽出物(エーテル不溶画分)無投与群である対照群(コントロール)に対して投与30分後の血糖上昇を有意に抑制した。
シュークロース負荷試験を(2g/kg)を、製造例1で得られたマナユパ抽出物のうちのエーテル不溶画分を用いて行った。
その結果、図4に示すように、マナユパ抽出物(エーテル不溶画分)無投与群である対照群(コントロール)では投与30分後に血糖上昇のピークが得られたが、マナユパ抽出物(エーテル不溶画分)投与群では30分後において、対照群(コントロール)に比べ有意に抑制し、60分後に血糖上昇のピークを示した。
即ち、マナユパ抽出物(エーテル不溶画分)の投与により、急激な血糖上昇が遅延され、緩やかな上昇になっていることが示された。
グルコース負荷試験(2g/kg)を、製造例1で得られたマナユパ抽出物のうちのエーテル不溶画分を用いて行った。
その結果、図5に示すように、マナユパ抽出物(エーテル不溶画分)500mg/kg投与の場合、30分後、60分後で対照群(コントロール)に比べ顕著な血糖上昇抑制作用を示した。
なお、マナユパ抽出物(エーテル不溶画分)を300mg/kgの濃度で投与した場合においても、対照群(コントロール)に対して30分後と60分後において有意な低下が示された。
製造例2で得られたマナユパ熱水抽出物と製造例3で得られたマナユパアルコール抽出物(各々 500mg/kg)とをそれぞれ用いて、グルコース負荷試験を行った。結果を図6に示した。
その結果、グルコース負荷60分後において、マナユパ熱水抽出物投与群とアルコール抽出物投与群のいずれにおいても、対照群(コントロール)に比べて有意に低い血糖値が示された。
一方、小腸由来粗酵素を用いてマルターゼ阻害作用やスクラーゼ阻害作用について検討した結果では、マナユパ抽出物は阻害作用は示さなかった。
従って、マナユパ抽出物は、α−アミラーゼ阻害作用と共にグルコースそのものの吸収阻害作用もあると推定した。
製造例1で得られたマナユパ抽出物のうちのエーテル不溶画分を用いて、自然発症糖尿病 Yellow KK マウスに連続摂取(連続投与)試験を行い、その間の体重変化、血糖値の変化、血中脂質(総コレステロール値、トリグリセライド、遊離脂肪酸)の変化、血中インスリン値の変化を調べた。
この試験においては、製造例1で得られたマナユパ抽出物のうちのエーテル不溶画分を餌に1%濃度で添加して6週間自由摂取とした。
その結果、マナユパ抽出物(エーテル不溶画分)の連続投与により、対照群(コントロール)に比べて体重増加が有意に抑制された。
また、この試験中の血糖値の変化を図8に示した。
その結果、血糖値は、投与開始2週間後に対照群(コントロール)に対して有意に低下し、その後も血糖降下作用が継続した。
次に、この試験中の血中脂質の変化について、総コレステロール値の変化を図9に、トリグリセライド値の変化を図10に、遊離脂肪酸の変化を図11にそれぞれ示した。
その結果、試験開始5週間後及び6週間後にマナユパ抽出物の連続投与による有意な血中コレステロール低下作用が示された。トリグリセライド値と遊離脂肪酸については有意な変化はなかった。
さらに、この試験中の血中インスリン値の変化について図12に示した。
その結果、血中インスリン値については6週間後に有意な低下が示された。
試験終了時、インスリン負荷試験を行った。
一晩絶食後、0.5U/kgになるように調製したインスリン溶液を0.5ml/50g体重となるよう背側に皮下注射した。投与前と投与30分、60分、120分後にそれぞれ尾静脈より採血し、血糖値の変化を測定した。その結果、図13に示すように、マナユパ抽出物の連続投与群においては、インスリン負荷30分後に、対照群(コントロール)に比べ血糖値の減少の割合が有意に大きく、120後までその傾向が続いた。
4週齢ddy雄性マウスを用いて正常マウスへの連続投与試験を行った。マウスは対照群(コントロール)とマナユパ抽出物投与群とに分け、マナユパ抽出物投与群には、製造例1で得られたマナユパ抽出物のうちのエーテル不溶画分を餌(CE2)に1%濃度で混合した。体重は毎日測定し、毎週血糖値の測定を行った。6週間の連続投与終了後、血中インスリン値、血中脂質の測定を行った。
その結果、体重、血糖値に及ぼすマナユパ抽出物連続投与の影響は認められなかった。また、血中インスリン値、血中トリグリセライド、血中コレステロール、遊離脂肪酸に対して、いずれもマナユパ抽出物連続投与の影響はなかった。
従って、本発明の糖質吸収阻害剤は、正常マウスについては長期間摂取しても、血糖値、血中脂質に及ぼす影響はなく、糖尿病モデルにのみ効果が発揮され、健常人が摂取した場合についても安全性が示された。
従って、本発明は、広く食品産業分野において利用することができる。
Claims (3)
- マナユパ抽出物を有効成分とする糖質吸収阻害剤。
- マナユパ抽出物を有効成分とする高血糖治療剤。
- マナユパ抽出物を有効成分とする糖尿病、肥満或いは高脂血症治療剤。
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