JP4469206B2 - 乾燥納豆食品およびその製造方法 - Google Patents
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Description
納豆本体部2は、納豆の原料である大豆の凍結乾燥物からなり、大豆は極大粒または大粒の大豆を使用する。ここで、「極大粒」または「大粒」は大豆粒の大きさを示している。そして、「極大粒」は、所定数の大豆を8.3mm以上のふるい目でふるった際に、70%以上の大豆がふるいの上に残る大きさである。そして、「大粒」は7.3mm以上8.3mm未満のふるい目でふるった際に、70%以上の大豆がふるいの上に残る大きさである。また、大豆の品種は、「つるの子」、「オオツル」が好ましいが、極大粒または大粒であれば、産地は国内産または外国産(中国産または米国産等)のいずれでもよく、大豆の種類についても黄大豆、白大豆、黒大豆、または緑大豆いずれでもよく特に限定されない。また、発芽大豆を使用してもよい。また、極大粒または大粒の大豆を使用することにより、大豆粒同士間の隙間が大きくなり、大豆の発酵が促進され、発酵によって産出される発酵生成物の結着力(大豆粒同士を結着させる力)が小さくなる。
被覆部3は、納豆菌の発酵によって産出された発酵生成物の凍結乾燥物を含み、発酵生成物とは、PGA(ポリグルタミン酸)、ビタミンK2、各種酵素等である。また、各種酵素とは、心筋梗塞や脳梗塞の起因となる血栓を溶解するナットウキナーゼ、蛋白質をアミノ酸に分解するプロテアーゼ、デンプン質をブドウ糖に変えるアミラーゼ、脂肪をグリセリンと脂肪酸に分解するリパーゼ、繊維質を糖質に分解するセルラーゼ、その他ウレアーゼ、パーオキシターゼ、カタラーゼ、ペクチナーゼ等である。
(着味部)
着味部4は着味剤を含み、着味剤としては既製の菓子製法に使用されるものが挙げられる。例えば、メイプルシロップ、キシリトール、糖水溶液等の甘味剤、または、アルコール(ポリフェノールを多く含む赤ワイン、ラム酒等)が着味剤として好ましい。その他、ニンニクパウダー、カスピ海ヨーグルト、黒豆ココア、豆乳パウダー、青汁、ケール末、きな粉、茶類(抹茶、紅茶、中国茶)、海藻類、果実パウダー等を使用してもよい。また、着味剤としてアルコールを使用することによって、アルコールが発酵生成物(粘質物)の粘性の発生をおさえる。また、着味部4は、後記する乾燥納豆食品の製造工程でわずかではあるが産出する、乾燥納豆食品1の破損物(納豆粒原形が維持されていないもの)、および被覆部3の壊砕物、またはその両者を粉体化したものを、着味剤と共に含んでもよい。
極大粒または大粒の大豆を従来公知の方法で蒸煮する。例えば、大豆を一晩水に浸漬して、大豆を充分ふやかす。次に、大豆を約5〜6時間ぐらい柔らかくなるまで煮熟する。このとき、圧力鍋等を使用すれば煮熟時間を20分程度に短縮が可能である。次に、7分程度蒸らす。また、浸漬時間、煮熟時間、蒸らし時間は、使用する大豆の乾燥の度合い、または、使用する大豆の種類によって変動し、前記の時間に限定されない。
図3(a)、図4(a)〜(c)に示すように、前記第1工程S1で納豆菌が接種された大豆(大豆粒2a)を、仕込みトレー10内に敷いたシート12上に1段ないし3段に整列させる。好ましくは、1段に整列させる。これにより、大豆粒2a同士の接触する部分が極端に少なくなり、大豆粒2a同士間の隙間2bが大きくなる。例えば、大豆の充填密度で言えば、大豆を整列させない従来の充填密度が約24kg/m2であるのに対し、本発明では約15〜16kg/m2となる。また、従来の中粒の大豆を使用した場合の数三分の一になる。3段を超える段数で整列させると、大豆粒2a同士間の隙間2bが小さくなり、後記第3工程S3において、発酵に必要な温度の伝達、酸素の供給、二酸化炭素の排出が悪くなる。
前記第2工程S2で整列した大豆を発酵させて納豆を作製する。また、発酵温度は、通常40℃程度であるが、納豆菌を失活させなければ特に限定されない。また、前記第2工程に記載されたように大豆を整列させ、シート12で大豆を包み込み(図3(a)参照)、仕込みトレー10内(シート12上)で発酵を行うことにより、発酵に必要な温度の伝達、酸素の供給および二酸化炭素の排出がスムーズになり、発酵が促進されると同時に均等に発酵が進む。その結果、従来20時間程度であった発酵時間を、15〜16時間に短縮することが可能となる。さらに、前記第2工程に記載された大豆の整列で発酵を行うことにより、図5に示すように、納豆粒1bのほぼ全面が発酵生成物3aで覆われることとなるが、納豆粒1b同士間の隙間が大きく、隙間を埋める発酵生成物3aに空白部2cを有することにより、納豆粒1b同士の結着力(発酵生成物3aの結着力)が小さくなる。
前記第3工程S3の発酵終了後、図3(b)に示すように、仕込みトレー10(図3(a)参照)に充填されたシート12を、シート12内の納豆1aが動かないように、シート12の包み単位で、乾燥トレー11内に5段ないし6段に積み重ね、乾燥トレー11を凍結乾燥機内に載置する。次いで、従来公知の凍結乾燥条件で乾燥し、乾燥納豆を作製する。例えば、凍結乾燥機の圧力は13.3〜333.2Pa(0.1〜2.5Torr)、コールドトラップ温度は−30℃以下、乾燥時間は10時間以上好ましくは24時間程度である。また、この凍結乾燥により、大豆の凍結乾燥物からなる納豆本体部2の表面が、凍結乾燥された発酵生成物を含む被覆部3で被覆された乾燥納豆1が得られ(図1参照)、従来のように乾燥納豆が凍結乾燥された発酵生成物でプレート状に固まることがない。そして、適当な包装袋に集積されて乾燥納豆食品とする。さらに、凍結乾燥機の熱的負荷を軽減するため、凍結乾燥の前に予備凍結を行うことが好ましい。この予備凍結を行うことにより、凍結乾燥前に納豆が一粒ずつに壊砕し、最終製品である乾燥納豆食品の型状保持に有利である。また、予備凍結の温度は、例えば、−40〜−10℃に設定すればよい。また、わずかではあるが発生する乾燥納豆1の破損物、凍結乾燥された発酵生成物(被覆部3)の破損物(粉末)も、後記第5工程において、着味剤と混合して使用し、着味剤と共に被覆部3の表面に付着させてもよい。
前記第4工程S4で作製された乾燥納豆を、従来公知のシフター等で離型する。ここでは、乾燥納豆がプレート状に固まっていないため、乾燥納豆を一粒ずつに離型することが容易となる。その結果、最終製品である乾燥納豆食品に破損がなくなる。また、シフターのメッシュサイズは、乾燥納豆粒の大きさにより設定され、本発明においては2.5メッシュを使用することが好ましい。しかしながら、乾燥納豆粒が離型できればメッシュサイズを適宜変更してもよい。
前記第4工程S4または乾燥納豆の離型において、一粒ずつに離型された乾燥納豆に着味剤を以下に方法で被覆する。
後記の着味剤の被覆に先立って、回転容器の中で流動させながら均一に、離型された乾燥納豆の表面に液体をスプレーする。ここで、液体は、着味剤を乾燥納豆の表面に均一に被覆させるためのもので、水、アルコール水溶液(赤ワイン、ラム酒等)、糖水溶液が好ましい。また、より好ましくは、アルコールである。アルコールは蒸散しやすいため、凍結乾燥された発酵生成物が水分を吸収することがなく、乾燥納豆表面が粘つくことがない。その結果、後記着味剤を被覆しやすくなる。また、アルコール水溶液におけるアルコール濃度は1〜20質量%で、喫食者の生体に害のないエチルアルコールが好ましい。また、糖水溶液における糖濃度は1〜20質量%で、甘味剤として使用されているメイプルシロップ、キシリトールが好ましい。
前記(着味部)の欄で記載した着味剤を従来公知の方法で粉末化し、液体スプレーによって湿潤した乾燥納豆の表面に、回転流動させながら、着味剤を付着させる。付着方法は、粉末化した着味剤を乾燥納豆表面にふりかける方法、または粉末化した着味剤の上で乾燥納豆をころがす方法が好ましい。次いで、前記予備凍結(第4工程S4参照)、凍結乾燥(第4工程S4参照)および離型(乾燥納豆の離型参照)と同様な作業を行い、粉末化した着味剤で乾燥納豆の表面を被覆する。着味剤の被覆率は、乾燥納豆の表面の少なくとも50%を被覆することが好ましく、50%未満では納豆独特な特異味が気になり、喫食者の嗜好に対応できない。
(実施例)
(A)大豆の蒸煮、納豆菌の接種
大豆(品種「つるの子」)を水に一晩浸漬し、圧力鍋で20分煮熟し、7分蒸らした。次いで、蒸らした大豆粒に納豆菌を均一に接種した(まぶした)。
(B)大豆の整列
納豆菌を接種した大豆をポリエチレン製のパンチングシートの上に2段に整列させた。
(C)大豆の発酵
整列した大豆を40℃×15時間発酵させ、1000kgの納豆を得た。
(D)納豆の凍結乾燥
納豆を−30℃で2時間予備凍結し、圧力66.5Pa(0.5Torr)、コールドトラップ温度−40℃で24時間凍結乾燥し、370kgの乾燥納豆を得た。
(E)乾燥納豆の離型
乾燥した納豆を2.5メッシュのシフターで離型し、破損により原形を維持していないものを除き、340kgの乾燥納豆食品を得た。
実施例の(A)〜(C)と同様な作業を行い、1000kgの納豆を得た。次いで、納豆を80℃の熱水に30秒浸漬し、発酵生成物を除去し、納豆を分粒した。次いで、分粒された納豆を実施例の(D)と同様に凍結乾燥し310kgの乾燥納豆食品を得た。なお、(D)の段階で乾燥した納豆が一粒ごとに離型されているため、(E)の作業は行わなかった。
(実施例)
原料コスト((E)の乾燥納豆食品における原料コスト)
(1000kg×400円/kg(原料大豆のコスト))÷340kg≒1180円/kg
凍結乾燥コスト
200000円/370kg≒540円/kg
製造コスト
1180+540=1720円/kg
原料コスト((D)の乾燥納豆食品における原料コスト)
(1000kg×400円/kg)÷310kg≒1300円/kg
発酵生成物(粘性物質)除去コスト
前記の背景技術で記載したように、250円/kg
凍結乾燥コスト
200000円/310kg≒645円/kg
製造コスト
1300+250+645=2195円/kg
前記(1)で作製した実施例の乾燥納豆食品を2ケ月間喫食する感応試験を11人で行った。その結果を表1に示す。
1a 納豆
1b 納豆粒
2 納豆本体部
2a 大豆粒
2b 隙間
2c 空白部
3 被覆部
3a 発酵生成物
4 着味部
10 仕込みトレー
11 乾燥トレー
12 シート(パンチングシート)
12a 穴
S1 第1工程
S2 第2工程
S3 第3工程
S4 第4工程
S5 第5工程
Claims (3)
- 極大粒または大粒の大豆に納豆菌を接種して発酵させることによって得られた納豆を凍結乾燥した乾燥納豆食品であって、
前記大豆の凍結乾燥物からなる納豆本体部と、
この納豆本体部の表面を被覆し、凍結乾燥された発酵生成物を含む被覆部とを有し、
前記被覆部が、前記納豆本体部の表面の少なくとも50%を被覆し、
前記被覆部の表面をさらに被覆する着味剤を含む着味部とを有し、前記着味剤が被覆するときにアルコールを含むことを特徴とする乾燥納豆食品。 - 極大粒または大粒の大豆を蒸煮し、蒸煮された大豆に納豆菌を接種する第1工程と、
納豆菌を接種した前記大豆をシート上に1段ないし3段のいずれかの段数に整列させる第2工程と、
整列した前記大豆を発酵させて納豆を作製する第3工程と、
前記納豆を凍結乾燥して乾燥納豆を作製する第4工程と、
前記乾燥納豆の表面に着味剤を被覆する第5工程とを備え、前記第5工程の被覆に先立ってアルコールスプレーを行うことを特徴とする乾燥納豆食品の製造方法。 - 極大粒または大粒の大豆を蒸煮し、蒸煮された大豆に納豆菌を接種する第1工程と、
納豆菌を接種した前記大豆をシート上に1段ないし3段のいずれかの段数に整列させる第2工程と、
整列した前記大豆を発酵させて納豆を作製する第3工程と、
前記納豆を凍結乾燥して乾燥納豆を作製する第4工程と、
前記乾燥納豆の表面に着味剤を被覆する第5工程とを備え、前記第5工程の被覆がアルコールスプレーを含むことを特徴とする乾燥納豆食品の製造方法。
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