本発明は、電子写真装置に関し、詳しくは、複数の電子写真感光体を備え、該複数の電子写真感光体のそれぞれに形成された各色のトナー像を中間転写体上に順次重ね合わせて合成トナー像(カラートナー像)を形成し、これを紙などの転写材に一括に転写するタンデム型中間転写方式のカラー電子写真装置に関する。
従来、画像形成装置には、電子写真方式、熱転写方式、インクジェット方式など様々な方式が採用されている。これらのうち、電子写真方式を採用した画像形成装置(電子写真装置)は、他の方式を採用した画像形成装置と比較して、高速、高画質、静粛性の点で優位性を有している。
また、モノクロームの電子写真装置だけではなく、多色(カラー)の電子写真装置(カラー電子写真装置)も、近年普及してきている。
そして、近年の画像情報のデジタル化にともなって、電子写真装置の露光手段の光源は、従来の白色光に代わって、半導体レーザー(以下、レーザーと称する)が採用されるようになってきている。レーザーによる露光(画像露光)は、光源が少ないために光源のバラツキによる濃度ムラが少なく、また、パルス幅変調により容易に1画素を多値化することが可能であり、高階調再現が容易であるので、カラー電子写真装置の高画質化に有利である。
また、カラー電子写真装置には様々な方式があるが、その中でも、各色のトナー像を中間転写体(中間転写ベルトなど)上に順次重ね合わせて合成トナー像(カラートナー像)を形成し、これを紙などの転写材に一括に転写する中間転写方式は、転写材として厚紙や封筒やラベル紙などの特殊な転写紙を用いた際の画質や信頼性が高いという点で、直接転写材上に各色のトナー像を順次重ね合わせる方式よりも優れている。
また、中間転写方式の中でも、各色のトナー像の形成を各色用の電子写真感光体それぞれに担わせる、いわゆるタンデム型中間転写方式は、高速化という観点からより優れている。
特開2001−125338号公報(特許文献1)には、各電子写真感光体から中間転写体に一次転写する際、中間転写体や一次転写手段(一次転写ローラーなど)の抵抗変動(環境変動、抵抗ムラ)が生じた場合でも、常に安定した一次転写性能を得るために、中間転写体や一次転写手段の抵抗変動に応じて一次転写バイアスを補正し、常に安定して最適な一次転写バイアスを一次転写手段に印加するATVC(Active Transfer Voltage Control)が開示されている。
ATVCとは、画像形成前の電子写真感光体の前回転などにおいて、電子写真感光体の表面の非画像形成部に対して、あらかじめ設定された値で一次転写手段を定電流制御して、このときの発生電圧値の変動により一次転写手段の抵抗変動を検知し、画像形成時には先の発生電圧値を演算処理した結果で定電圧制御を行うものである。そうすることにより、一次転写手段から電子写真感光体へ流れる過電流を防止し、電子写真感光体のメモリーをなくすとともに、画像形成時には適切な一次転写バイアスが印加できるようになるため、常に安定した一次転写性能を得ることができる。つまり、中間転写体や一次転写手段の抵抗変動によることなく、常に目的の転写効率になるよう一次転写の定電流制御が可能となるのである。
また、電子写真感光体に接触配置された接触帯電部材によって電子写真感光体の表面を帯電する接触帯電方式には、大別すると2種類の方式がある。1つは、所望の帯電電位Vdを得るため、接触帯電部材にVd+Vth(帯電開始電圧)の直流電圧のみを印加するDC接触帯電方式であり、もう1つは、所望の帯電電位Vdを得るために、接触帯電部材にVdの直流電圧に2×Vth以上の交流電圧を重畳した電圧を印加するAC/DC接触帯電方式である。
AC/DC接触帯電方式は、交流電圧のならし効果によって、電子写真感光体の帯電電位が交流電圧のピークの中央である電位Vdに収束し、帯電が環境などの外的状況に影響されることがないという利点がある(特開昭63−149669号公報:特許文献2参照)。
しかしながら、AC/DC接触帯電方式は、帯電開始電圧Vthの2倍以上のピーク間電圧の交流電圧を重畳させるため、直流電源とは別に交流電源が必要となり、電子写真装置自体のコストアップを招くという問題点がある。さらには、交流電流を多量に消費することにより、電子写真感光体や接触帯電部材の耐久性が低下するという問題点がある。
これらAC/DC接触帯電方式の問題点は、DC接触帯電方式により解決することができ、電子写真感光体に関してはその耐久性が大幅に向上し、電子写真感光体の表面層の削れ量を大幅に減少させることができる。
しかし、DC接触帯電方式の場合、感光層が厚膜になるにつれて帯電安定性が低下し、電子写真感光体の表面(周面)の移動方向に対して直角な方向に、長さ2〜200mm、幅0.5mm以下程度のスジ状の帯電ムラを生じてしまい、白スジまたは黒スジという画像欠陥が発生する。電子写真感光体の感光層が電荷発生層および電荷輸送層を積層した積層型感光層である場合、感光層の膜厚の多くを占める電荷輸送層の膜厚が18μmを超えたときに、上記の問題はより顕著に発生する(特開2001−312082号公報:特許文献3参照)。
また、DC接触帯電方式は、AC/DC接触帯電方式と比較して、電子写真感光体の表面の帯電電位の凹凸を交流電圧でならすことができないので、電子写真感光体の表面に電位ムラが存在する場合、均一な帯電が困難であり、特に、ハーフトーン画像を出力した場合、電位ムラが完全に解消されず、画像ムラが発生する場合がある。
この問題は、一次転写後、帯電に先立って電子写真感光体の表面を除電し(前露光など)、電子写真感光体の電位ムラを解消することで回避可能である。
しかしながら、前露光を行う場合には、先の帯電による帯電電位を十分に減衰させる必要があるため、前露光量は画像露光量の数倍〜20倍程度必要となる。その結果、前露光による電子写真感光体の劣化や電子写真感光体の表面層の削れ量が増大するため、DC接触帯電方式であっても、電子写真感光体の高寿命化のためには、電子写真感光体の感光層の膜厚を厚くしなくてはならない。
また、連続プリント時の暗部電位および明部電位の変動が大きくなるという問題点や、電子写真装置の構成が複雑化し、コストアップになるという問題点がある。特に、タンデム型の場合、複数の電子写真感光体の数だけ前露光が必要になるため、コストアップが顕著となる。
特開2001−125338号公報
特開昭63−149669号公報
特開2001−312082号公報
本発明の目的は、タンデム型中間転写方式を採用し、帯電に先立って電子写真感光体の表面を除電するための除電手段を有さない電子写真装置(カラー電子写真装置)であっても、高画質が得られるよう電子写真感光体の感光層(電荷輸送層)を薄膜化しても長寿命であり、装置構成の複雑化やコストアップを抑えた電子写真装置(カラー電子写真装置)を提供することにある。
本発明は、支持体上に電荷発生層、膜厚が18μm以下の電荷輸送層をこの順に有する電子写真感光体、該電子写真感光体に接触配置され直流電圧のみが印加される接触帯電部材によって該電子写真感光体の表面を帯電するための接触帯電手段、該帯電手段により帯電された該電子写真感光体の表面にレーザー露光光により静電潜像を形成するための露光手段、該露光手段により形成された該電子写真感光体の表面の静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成するための現像手段、および、該現像手段により形成された該電子写真感光体の表面のトナー像を中間転写体に一次転写するための一次転写手段を有し、かつ、該一次転写手段と該帯電手段との間に該帯電手段による帯電に先立って該電子写真感光体の表面を除電するための除電手段を有さない画像形成部を複数有し、かつ、
各画像形成部が有する各電子写真感光体の表面に形成された各トナー像が順次一次転写されることによって表面に形成された合成トナー像を転写材に二次転写するための中間転写体、および、該中間転写体の表面の合成トナー像を転写材に二次転写するための二次転写手段を有し、かつ、
該画像形成部は該中間転写体の移動方向に沿って上流側から下流側に順次配設されている電子写真装置であって、
各画像形成部の各電子写真感光体のうち少なくとも1つの電子写真感光体は、電荷輸送層に2種以上の電荷輸送物質を含有し、かつ、該電荷輸送物質のうち少なくとも1種の電荷輸送物質は酸化電位が0.8〜0.9eVの電荷輸送物質であり、かつ、該酸化電位が0.8〜0.9eVの電荷輸送物質の占める割合は電荷輸送物質全質量に対して50質量%以上である電子写真感光体であることを特徴とする電子写真装置である。
本発明によれば、タンデム型中間転写方式を採用し、帯電に先立って電子写真感光体の表面を除電するための除電手段を有さない電子写真装置(カラー電子写真装置)であっても、高画質が得られるよう電子写真感光体の感光層(電荷輸送層)を薄膜化しても長寿命であり、装置構成の複雑化やコストアップを抑えた電子写真装置(カラー電子写真装置)を提供することができる。
以下に、本発明をより詳細に説明する。
タンデム型中間転写方式のカラー電子写真装置において、上流側の画像形成部でベタ画像を印字し、下流側で全面ハーフトーンを印字する特殊なフルカラー画像パターンを出力すると、上流側のトナー像に対応した白抜け画像が発生することが観察された。例えば、色順がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックである場合において、画像書き出しから電子写真感光体の回転部分に25mm角の正方形のイエローおよびマゼンタのベタ画像(トナー載り量はそれぞれ100%)を重ね、トナー載り量200%のレッドパッチを印字し、レッドパッチ以外のところすべてに1ドットに桂馬パターンで印字したシアンのハーフトーンを印字したテストパターンを、タンデム型中間転写方式のカラー電子写真装置で出力すると、電子写真感光体1周後にレッドのベタパッチに対応した白抜け画像が発生する。
この現象を検討した結果、図2に示すように、上流側の画像形成部で中間転写体(11)の表面にトナー像が形成された場合、それが下流側の画像形成部に来た際に、トナーの層(t)の部分に一次転写電流(AT)が若干しか流れず、トナーの層(t)に対応した電子写真感光体の表面の電位(V1〜V4)が低下せず、下流側の電子写真感光体の表面の電位ムラとなることが原因であるとわかった。
接触帯電部材の帯電性能が低いと、この電位ムラを解消することができないため、均一な帯電ができず、電子写真感光体の表面の電位ムラが出力画像上の白抜けとなる。帯電時に、電子写真感光体の表面の電位ムラ、すなわち電位差(ΔV)が10V以上あると、白抜けがより顕著になる。
このような問題点を解決するためには、中間転写体の表面に上流側のトナーの層が存在するとき、トナーの層の部分に若干しか一次転写電流が流れなくても、電子写真感光体側で転写の影響を受けにくくするよう工夫して、下流側の画像形成部の電子写真感光体の電位差を減少させればよい。
具体的には、上記のとおり、電荷輸送層に2種以上の電荷輸送物質を含有し、かつ、該電荷輸送物質のうち少なくとも1種の電荷輸送物質は酸化電位が0.8〜0.9eVの電荷輸送物質であり、かつ、該酸化電位が0.8〜0.9eVの電荷輸送物質の占める割合は電荷輸送物質全質量に対して50質量%以上である電子写真感光体を有する画像形成部を1つ以上導入すればよい。当然、このような画像形成部は下流側の画像形成部に導入することが好ましい。
全電荷輸送物質のうち50質量%以上を占める電荷輸送物質、つまり主たる電荷輸送物質の酸化電位が上記範囲であれば、転写の影響を強く受けることがない。主たる電荷輸送物質の酸化電位が上記範囲を下回ると、一次転写の影響を強く受けるので、上流側の画像形成部でのトナー層が存在する所と存在しない所での電位差が大きくなり、白抜け画像が発生してしまう。一方、主たる電荷輸送物質の酸化電位が上記範囲を上回ると、電子写真感光体の支持体からの正孔の注入が阻害されて繰り返し電位安定性が低下してしまう。
なお、電荷輸送物質を2種以上用いることは、電荷輸送層中の結晶性を乱雑にし、主たる電荷輸送物質が結晶化することを防止する効果がある。結晶化防止の観点からは、主たる電荷輸送物質は電荷輸送物質全質量に対して50〜95質量%であることが好ましい。
また、各画像形成部の各一次転写手段による一次転写の際の各一次転写電流値を、上流側から下流側に向けて順に高くなるようにATVCを行うことによって、さらなる改善を図ることができる。これは、上流側の画像形成部で中間転写体の表面にトナー像が形成された場合であっても、それが下流側の画像形成部に来た際、トナーの層の部分にも一次転写電流を流すことができるからである。
図1に、本発明の電子写真装置、すなわち、タンデム型中間転写方式のカラー電子写真装置の概略構成の一例を示す。
図1において、1Y、1M、1C、1Kはドラム状の電子写真感光体(第1色〜第4色用電子写真感光体)であり、それぞれ軸2Y、2M、2C、2Kを中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。
回転駆動される第1色用電子写真感光体1Yの周面は、接触帯電部材(帯電ローラー)を有する第1色用接触帯電手段3Yにより、正または負の所定電位に均一に帯電され、次いで、レーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)から出力されるレーザー露光光(画像露光光)4Yを受ける。レーザー露光光4Yは、目的のカラー画像の第1色成分像(例えばイエロー成分像)に対応したレーザー露光光である。こうして第1色用電子写真感光体1Yの周面に、目的のカラー画像の第1色成分像に対応した第1色成分静電潜像(イエロー成分静電潜像)が順次形成されていく。
張架ローラー12および二次転写対向ローラー13によって張架された中間転写体(中間転写ベルト)11は、矢印方向に第1色〜第4色用電子写真感光体1Y、1M、1C、1Kとほぼ同じ周速度(例えば第1色〜第4色用電子写真感光体1Y、1M、1C、1Kの周速度に対して97〜103%)で回転駆動される。
第1色用電子写真感光体1Yの周面に形成された第1色成分静電潜像は、第1色用現像手段5Yのトナーにより現像されて第1色トナー画像(イエロートナー画像)となる。次いで、第1色用電子写真感光体1Yの周面に形成担持されている第1色トナー画像が、第1色用一次転写手段(第1色用一次転写ローラー)6Ypからの一次転写バイアスによって、第1色用電子写真感光体1Yと第1色用一次転写手段6Ypとの間を通過する中間転写体11に順次一次転写されていく。
第1色トナー画像一次転写後の第1色用電子写真感光体1Yの周面は、第1色用クリーニング手段(第1色用クリーニングブレード)7Yによって一次転写残トナーの除去を受けて清浄面化された後、繰り返し第1色トナー画像形成に使用される。
第1色用電子写真感光体1Y、第1色用接触帯電手段3Y、第1色成分像に対応したレーザー露光光4Yを出力する第1色用露光手段、第1色用現像手段5Y、第1色用一次転写手段6Ypをまとめて第1色用画像形成部と称する。
第2色用電子写真感光体1M、第2色用接触帯電手段3M、第2色成分像に対応したレーザー露光光4Mを出力する第2色用露光手段、第2色用現像手段5M、第2色用一次転写手段6Mpを有する第2色用画像形成部、第3色用電子写真感光体1C、第3色用接触帯電手段3C、第3色成分像に対応したレーザー露光光4Cを出力する第3色用露光手段、第3色用現像手段5C、第3色用一次転写手段6Cpを有する第3色用画像形成部、第4色用電子写真感光体1K、第4色用接触帯電手段3K、第4色成分像に対応したレーザー露光光4Kを出力する第4色用露光手段、第4色用現像手段5K、第4色用一次転写手段6Kpを有する第4色用画像形成部の動作は、第1色用画像形成部の動作と同様であり、第1色トナー画像が転写された中間転写体11に、第2色トナー画像(マゼンタトナー画像)、第3色トナー画像(シアントナー画像)、第4色トナー画像(ブラックトナー画像)が順次一次転写されていく。こうして中間転写体11に目的のカラー画像に対応した合成トナー画像が形成される。
第1色〜第4色用接触帯電手段が有する各接触帯電部材には、直流電圧のみが印加される。
また、一次転写の際にATVCを行う場合、最も上流側の第1色用画像形成部における一次転写電流値は4〜10μAであることが好ましく、最も下流側の第4色用画像形成部における一次転写電流値は5〜12μAであることが好ましい(転写ローラー幅260mm、プロセススピード94mm/sの条件)。
一次転写電流値が小さすぎると、高温高湿環境下において、トナーの帯電量が不安定であるがゆえに中間転写体のトナー保持力が十分に確保することが難しくなり、また、電子写真感光体の表面からのトナーの離型性も低下してしまうため、上流側の画像形成部のトナーが、一次転写後、下流側の画像形成部にて電子写真感光体に再転写してしまい、画像の均一性が低下してしまう場合がある。一方、一次転写電流値が大きすぎると、転写メモリーとなって画像不良が発生したり、低温低湿環境下において、中間転写体、一次転写手段(一次転写ローラー)の抵抗が上昇し、転写電圧も高くなるため、突き抜けと呼ばれる部分放電による画像不良が起こったりする場合がある。
このような理由から、低温低湿環境下の場合、一次転写電流値を、常温常湿環境下・高温高湿環境下の場合に比べて小さく設定することが好ましい。
中間転写体11の周面に形成された合成トナー画像は、二次転写手段6sからの二次転写バイアスによって、転写材供給手段(不図示)から中間転写体11と二次転写手段6sとの間(当接部)に中間転写体11の回転と同期して取り出されて給送された転写材(紙など)Pに一括に二次転写される。
合成トナー画像の転写を受けた転写材Pは、中間転写体11の周面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることによりカラー画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
合成トナー画像二次転写後の中間転写体11の周面は、中間転写体用クリーニング手段(中間転写体用クリーニングブレード)7bによって二次転写残トナーの除去を受けて清浄面化された後、繰り返し合成トナー画像形成に使用される。
上述の電子写真感光体、接触帯電手段、現像手段、一次転写手段およびクリーニング手段などの構成要素のうち、複数のものを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。図2では、画像形成部ごとに、電子写真感光体と、接触帯電手段、現像手段およびクリーニング手段とを一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールなどの案内手段(不図示)を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9Y、9M、9C、9Kとしている。
次に、本発明の電子写真装置用の電子写真感光体の構成について説明する。
上述のとおり、本発明の電子写真装置用の電子写真感光体は、支持体上に電荷発生層、膜厚が18μm以下の電荷輸送層をこの順に有する電子写真感光体である。
支持体としては、導電性を有していればよく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレスなどの金属製の支持体を用いることができる。また、アルミニウム、アルミニウム合金、酸化インジウム−酸化スズ合金などを真空蒸着によって被膜形成された層を有する上記金属製支持体やプラスチック製支持体を用いることもできる。また、カーボンブラック、酸化スズ粒子、酸化チタン粒子、銀粒子などの導電性粒子を適当な結着樹脂と共にプラスチックや紙に含浸した支持体や、導電性結着樹脂を有するプラスチックなどを用いることもできる。
支持体上には、レーザー光などの散乱による干渉縞の防止や、支持体の傷の被覆を目的とした導電層を設けてもよい。導電層は、カーボンブラック、金属粒子などの導電性粒子を結着樹脂に分散させて形成することができる。導電層の膜厚は、5〜40μmであることが好ましく、特には10〜30μmであることがより好ましい。
また、支持体または導電層と電荷発生層との間には、バリア機能や接着機能を有する中間層を設けてもよい。中間層は、感光層の接着性改良、塗工性改良、支持体からの電荷注入性改良、感光層の電気的破壊に対する保護などのために形成される。中間層は、カゼイン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、エチレン−アクリル酸コポリマー、ポリアミド、変性ポリアミド、ポリウレタン、ゼラチン、酸化アルミニウムなどの材料を用いて形成することができる。中間層の膜厚は0.05〜5μmであることが好ましく、特には0.3〜1μmであることがより好ましい。
支持体、導電層または中間層上には、電荷発生層が設けられる。
本発明の電子写真装置用の電子写真感光体に用いられる電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ、ジスアゾ、トリスアゾなどのアゾ顔料や、金属フタロシアニン、非金属フタロシアニンなどのフタロシアニン顔料や、インジゴ、チオインジゴなどのインジゴ顔料や、ペリレン酸無水物、ペリレン酸イミドなどのペリレン顔料や、アンスラキノン、ピレンキノンなどの多環キノン顔料や、スクワリリウム色素や、ピリリウム塩およびチアピリリウム塩や、トリフェニルメタン色素や、セレン、セレン−テルル、アモルファスシリコンなどの無機物質や、キナクリドン顔料や、アズレニウム塩顔料や、シアニン染料や、キサンテン色素や、キノンイミン色素や、スチリル色素や、硫化カドミウムや、酸化亜鉛などが挙げられる。
電荷発生層に用いる結着樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂などが挙げられる。これらは単独、混合または共重合体として1種または2種以上用いることができる。
電荷発生層は、電荷発生物質を結着樹脂および溶剤と共に分散して得られる電荷発生層用塗布液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。分散方法としては、ホモジナイザー、超音波、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルなどを用いた方法が挙げられる。電荷発生物質と結着樹脂との割合は、1:0.3〜1:4(質量比)の範囲が好ましい。
電荷発生層用塗布液に用いる溶剤は、使用する結着樹脂や電荷発生物質の溶解性や分散安定性から選択されるが、有機溶剤としてはアルコール、スルホキシド、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族化合物などが挙げられる。
電荷発生層用塗布液を塗布する際には、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法などの塗布方法を用いることができる。
また、電荷発生層の膜厚は5μm以下であることが好ましく、特には0.1〜2μmであることがより好ましい。
また、電荷発生層には、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤などを必要に応じて添加することもできる。
電荷発生層上には、電荷輸送層が設けられる。
電荷輸送層に用いる電荷輸送物質としては、例えば、トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾール化合物、チアゾール化合物、トリアリルメタン化合物などが挙げられるが、上述のとおり、本発明の電子写真装置用の電子写真感光体の電荷輸送層には、2種以上の電荷輸送物質を含有させ、かつ、その2種以上の電荷輸送物質のうち、主たる電荷輸送物質の酸化電位は0.8〜0.9eVでなければならない。
電荷輸送物質の具体例をその酸化電位と併せて以下に示す。
電荷輸送層に用いる結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂、不飽和樹脂などが挙げられる。特には、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂などが好ましい。これらは単独、混合または共重合体として1種または2種以上用いることができる。
電荷輸送層は、電荷輸送物質と結着樹脂を溶剤に溶解して得られる電荷輸送層用塗布液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。電荷輸送物質と結着樹脂との割合は、2:1〜1:2(質量比)の範囲が好ましい。
電荷輸送層用塗布液に用いる溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、クロロベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン原子で置換された炭化水素などが用いられる。
電荷輸送層用塗布液を塗布する際には、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法などの塗布方法を用いることができる。
本発明の電子写真装置用の電子写真感光体の電荷輸送層の膜厚は18μm以下であるが、9μm以上であることが好ましい。
また、電荷輸送層には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤などを必要に応じて添加することもできる。
本発明において、酸化電位の測定は以下のようにして行った。
飽和カロメル電極を参照電極とし、電解液に0.1Nの(n−Bu)4N+ClO4 −アセトニトリル溶液を用い、ポテンシャルスイーパーによって作用電極の電位をスイープし、得られた電流−電位曲線のピーク位置を酸化電位の値とした。
詳しくは、サンプルを、0.1Nの(n−Bu)4N+ClO4 −アセトニトリル溶液に、5〜10mmol%の濃度になるように溶解した。次に、このサンプル溶液に電圧を印加し、低電位から直線的に電圧を変化させたときの電流変化を測定し、電流−電位曲線を得た。この電流−電位曲線における電流値のピークに達した電位値を酸化電位とした。
次に、本発明の電子写真装置用の接触帯電部材の構成について説明する。
接触帯電部材は、50Vの直流電圧が印加された場合に30〜100μAの電流が流れ、200Vの直流電圧が印加された場合に200〜1000μAの電流が流れるものが好ましく、また、その形状はローラー形状が好ましい(いわゆる帯電ローラー)。以下、帯電ローラーを例にとって説明する。
帯電ローラーに流れる電流値を上記範囲に収めると、帯電ローラーの電気抵抗が比較的低い領域になり、放電電位を達成するために必要な電流は大きくなってしまうが、電流を迅速に立ち上げることが可能になり、放電電位を短時間で達成することが可能になる。したがって、ほぼ同じ強度の放電を小刻みに繰り返すことが可能になり、帯電ローラーの帯電能が向上するため、帯電による電子写真感光体の表面の電位差の低減に効果がある。
帯電ローラーに流れる電流値が大きすぎると、帯電による電子写真感光体の表面の電位差の低減という効果は大きいが、帯電ローラーの電気抵抗が低すぎて過剰帯電を起こしやすくなり、リークによる画像欠陥や、過剰放電による白ポチが発生してしまう場合がある。一方、帯電ローラーに流れる電流値が小さすぎると、帯電ローラーの電気抵抗が高すぎて帯電能が低下し、帯電による電子写真感光体の表面の電位差の低減という効果が小さくなってしまう。また、黒スジや黒ポチといった帯電不足の画像欠陥が発生してしまう場合がある。
なお、帯電ローラーは、電子写真感光体と接触しているため、帯電時における帯電ローラーの抵抗は電気的な接触抵抗を含み、なおかつ、帯電ローラーと電子写真感光体との接触面積や、帯電ローラーの変形具合や、帯電ローラーと電子写真感光体との相対的な表面移動速度に依存する。したがって、帯電ローラーに流れる電流値は、帯電ローラーと電極との接触状態を、電子写真装置搭載時の帯電ローラーと電子写真感光体との接触状態と同一にして測定した電流値が、実際の帯電時の状態を反映することになる。
そこで、本発明において、帯電ローラーを流れる電流の値の測定は、図3に示すように、円筒電極110、バイアス電源111、固定抵抗器112、記録器(レコーダー)113などから構成された電流値測定装置を用いて行った。114は測定対象の帯電ローラーである。なお、円筒電極110には、酸化しにくく、変形しにくいSUSを用いた。測定環境は15℃、10%RHとし、外部電源より、50Vおよび200Vの直流電圧を印加し、そのときに流れる電流値を測定した。円筒電極110の形状、円筒電極110の表面移動速度、帯電ローラーの円筒電極110への押圧力は、それぞれ、画像形成に用いる電子写真装置の電子写真装置の形状、電子写真感光体の表面移動速度、帯電ローラーの電子写真感光体への押圧力と同一である。
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。また、実施例中で用いたポリアリレート樹脂は、すべて、テレフタル酸構造とイソフタル酸構造とのモル比(テレフタル酸構造:イソフタル酸構造)が50:50(モル比)のものである。また、実施例1、2および4〜8は参考例である。
(実施例1)
まず、電子写真感光体を以下の手順で作製した。
長さ260.5mm、直径30mmのアルミニウムシリンダーに、以下の条件で湿式ホーニング処理を施したものを支持体とした。
−ホーニング条件−
研磨材砥粒:球状アルミナビーズ平均粒径30μm(商品名:CB−A30S、昭和電工(株)製)
懸濁媒体:水
研磨材砥粒/懸濁媒体=1/10(体積比)
アルミニウムシリンダーの回転数:1.67s−1
エアー吹き付け圧力:0.15MPa
ガンの移動速度:13.3mm/s
ガンノズルとアルミニウムシリンダーとの距離:200mm
研磨材砥粒の吐出角度:45°
研磨液(研磨材砥粒および懸濁媒体)投射回数:1回(片道)
なお、湿式ホーニング処理後、アルミニウムシリンダーを、純水を張った浸漬層に浸漬し20分間静置した。その後、アルミニウムシリンダーを浸漬層から引き上げて、アルミニウムシリンダーが乾燥する前に純水で高圧噴射洗浄し、80℃の温純水に浸漬後、引き上げて自然乾燥させた。
湿式ホーニング処理後の支持体の表面粗さは、最大高さ(Rmax)が2.53μm、10点平均粗さ(Rzjis)が1.51μm、算術平均粗さ(Ra)が0.23μm、平均長さ(RSm)が34μmであった。
次に、支持体上に、共重合ナイロン樹脂(アミランCM8000、東レ(株)製)10部を、メタノール60部/n−ブタノール40部の混合溶媒に溶解して得られた中間層用塗布液を浸漬コーティングし、90℃で10分間乾燥して、膜厚が0.5μmの中間層を形成した。
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°、28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン10部、下記式で示される構造を有するカリックスアレーン化合物0.1部、
ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)5部、および、シクロヘキサノン250部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で1時間分散し、次に、酢酸エチル250部を加えて電荷発生層用塗布液を調製した。
この電荷発生層用塗布液を、中間層上に浸漬コーティングし、100℃で10分間乾燥して、膜厚が0.16μmの電荷発生層を形成した。
次に、上記電荷輸送物質(2)15部、上記電荷輸送物質(3)25部、および、下記式で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート樹脂(重量平均分子量:120000)50部
を、モノクロルベンゼン400部に溶解して、電荷輸送層用塗布液を調製した。
この電荷輸送層用塗布液を、電荷発生層上に浸漬コーティングし、120℃で1時間熱風乾燥して、膜厚が15μmの電荷輸送層を形成した。
このようにして、電荷輸送層が表面層である電子写真感光体を作製した。
次に、帯電ローラーを以下の手順で作製した。
まず、弾性層を以下の方法で形成した。
エピクロルヒドリンゴム三元共重合体(エピクロルヒドリン:エチレンオキサイド:アリルグリシジルエーテル=40mol%:56mol%:4mol%)100部、軽質炭酸カルシウム30部、脂肪族ポリエステル系可塑剤5部、ステアリン酸亜鉛1部、老化防止剤MB(2−メルカプトベンズイミダゾール)0.5部、酸化亜鉛5部、下記式で示される構造を有する四級アンモニウム塩2部、
および、カーボンブラック(表面未処理品、平均粒径:0.2μm、体積抵抗率0.1Ω・cm)5部を、50℃に調節した密閉型ミキサーにて10分間混練し、原料コンパウンドを調製した。
この原料コンパウンドに、原料ゴムのエピクロルヒドリンゴム100部に対して、加硫剤としての硫黄1部、加硫促進剤としてのDM(ジベンゾチアジルスルフィド)1部、TS(テトラメチルチウラムモノスルフィド)0.5部を加え、20℃に冷却した二本ロール機にて10分間混練した。
得られたコンパウンドを、直径6mmステンレス製の芯金に外径15mmのローラー状になるように押し出し成型機にて成型し、加熱蒸気加硫した後、外径が10mmになるように研磨加工を行い、弾性層を得た。この研磨加工には、幅広研磨方式を採用した。ローラー長は232mmとした。
弾性層の上に表面層を被覆形成した。表面層は、以下に示す表面層用塗布液を浸漬コーティングすることにより形成した。浸漬回数は2回とした。
まず、カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液100部、メチルイソブチルケトン250部、導電性酸化スズ(トリフルオロプロピルトリメトキシシラン処理品、平均粒径:0.05μm、体積抵抗率:103Ω・cm)130部、疎水性シリカ(ジメチルポリシロキサン処理品、平均粒径:0.02μm、体積抵抗率:1016Ω・cm)3部、変性ジメチルシリコーンオイル0.08部、および、架橋PMMA粒子(平均粒径:4.51μm、最大粒径:38.6μm)100部を用いて、ガラス瓶を容器として混合溶液を作製した。
次に、この混合溶液に、平均粒径0.8mmのガラスビーズを充填率80%になるように充填して、ペイントシェーカー分散機を用いて18時間分散した。
次に、この分散溶液に、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とイソホロンジイソシアネート(IPDI)の各ブタノンオキシムブロック体1:1の混合物を、「NCO/OH=1.0」となるように添加して、表面層用塗布液を調製した。
この表面層用塗布液を、弾性層上に2回浸漬コーティングし、風乾させた後、160℃で1時間乾燥した。
このようにして、帯電ローラーを作製した。
作製した帯電ローラーに50Vの直流電圧を印加した場合および200Vの直流電圧を印加した場合に該帯電ローラーを流れる電流値を上述の方法で測定した。具体的には、直径30mm、長さ260.5mmの円筒電極を用い、表面移動速度は94mm/sとし、帯電ローラーの芯金の両端にそれぞれ500gw(合計1000gw)の負荷を与えて帯電ローラーと円筒電極とを当接させ、その当接部の圧力を帯電ローラーの円筒電極110への押圧力とした。測定の結果、50Vの直流電圧を印加した場合の電流値は41μAであり、200Vの直流電圧を印加した場合の電流値は261μAであった。
次に、図1に示される構成のタンデム型中間転写方式のカラー電子写真装置の4つの電子写真感光体をすべて上述の作製した電子写真感光体とし、4つの帯電ローラーをすべて上述の作製した帯電ローラーとした。
このカラー電子写真装置は、電子写真感光体、DC接触帯電方式の接触帯電手段、レーザー露光光を出力する露光手段、現像手段、一次転写手段を有し、かつ、除電手段を有さない画像形成部を4つ(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)有しており、かつ、中間転写体、二次転写手段を有しており、かつ、4つの画像形成部は中間転写体の移動方向に沿って上流側から下流側に順次配設されている(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順)。また、レーザー光量は各画像形成部一律に0.24μJ/cm2であり、プロセススピードは94mm/sである。
一次転写電流のATVCに関して、上流側の画像形成部である第1色(イエロー)用画像形成部および第2色(マゼンタ)用画像形成部については一次転写電流値を6μAとし、下流側の画像形成部である第3色(シアン)用画像形成部および第4色(ブラック)用画像形成部については一次転写電流値を8μAとした。
23.5℃、50%RH環境下で、初期画像および1枚間欠12000枚の通紙耐久を行った後の画像の評価を行った。なお、電位設定は以下のように設定した。
電子写真感光体暗部電位 −450V
電子写真感光体明部電位 −150V
現像バイアス −330V(直流電圧のみ)
画像評価は、具体的には以下のように行った。
フルカラープリントにおいて画像書き出しから電子写真感光体の回転部分に25mm角の正方形のイエローおよびマゼンタのベタ画像(トナー載り量各100%)を重ね、トナー載り量200%のレッドパッチを印字し、レッドパッチ以外のところのすべてに1ドットに桂馬パターンで印字したシアンのハーフトーンのテストチャートを用いて、レッドパッチ部に対応した白抜け欠陥画像の評価した。
また、その他の画像欠陥を調査するため、各色に対応した単色のベタ黒、ベタ白、ハーフトーン画像を出力して、画像評価を総合的に行った。
画像評価は目視で行い、白抜け欠陥画像のレベルで以下のように示した。
ランク1:白抜け欠陥画像は全く見えない。
ランク2:白抜け欠陥画像は殆ど見えない。
ランク3:うっすら白抜け欠陥画像が見える。
ランク4:白抜け欠陥画像が見える。
ランク5:白抜け欠陥画像がはっきり見える。
次に、A4サイズ紙に面積比率4%印字の文字パターンで12000枚の1枚間欠画像出力試験を行い、上記と同じように画像評価を行った。さらに、電子写真感光体の表面の削れ量を測定した。
結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1において、以下の点を変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体および帯電ローラーを作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
4つの電子写真感光体の電荷輸送層に含有させる電荷輸送物質について、上記電荷輸送物質(2)20部および上記電荷輸送物質(3)20部に変更した。
(実施例3)
実施例1において、以下の点を変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体および帯電ローラーを作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
4つの電子写真感光体の電荷輸送層に含有させる電荷輸送物質について、上記電荷輸送物質(2)15部および上記電荷輸送物質(1)25部に変更した。
(実施例4)
実施例1において、以下の点を変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体および帯電ローラーを作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
4つの帯電ローラーの表面層に含有させる導電性酸化スズの使用量を170部に変更した。
(実施例5)
実施例1において、以下の点を変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体および帯電ローラーを作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
評価時の一次転写電流のATVCに関して、第1色(イエロー)用画像形成部については一次転写電流値を4μAとし、第2色(マゼンタ)用画像形成部については一次転写電流値を6μAとし、第3色(シアン)用画像形成部については一次転写電流値を8μAとし、第4色(ブラック)用画像形成部については一次転写電流値を10μAとした。
(実施例6)
実施例1において、以下の点を変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体および帯電ローラーを作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
4つの電子写真感光体の電荷輸送層の膜厚を18μmに変更した。
(実施例7)
実施例1において、以下の点を変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体および帯電ローラーを作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
第3色(シアン)用画像形成部および第4色(ブラック)用画像形成部の電子写真感光体の電荷輸送層に含有させる電荷輸送物質について、上記電荷輸送物質(2)35部および上記電荷輸送物質(3)5部に変更した。
(比較例1)
実施例1において、以下の点を変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体および帯電ローラーを作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
4つの電子写真感光体の電荷輸送層に含有させる電荷輸送物質について、上記電荷輸送物質(2)35部および上記電荷輸送物質(3)5部に変更した。
(比較例2)
実施例1において、以下の点を変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体および帯電ローラーを作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
4つの電子写真感光体の電荷輸送層に含有させる電荷輸送物質について、上記電荷輸送物質(11)35部および上記電荷輸送物質(3)5部に変更した。
(比較例3)
実施例1において、以下の点を変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体および帯電ローラーを作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
4つの電子写真感光体の電荷輸送層の膜厚を30μmに変更した。
(比較例4)
実施例1において、以下の点を変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体および帯電ローラーを作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
4つの電子写真感光体の電荷輸送層に含有させる電荷輸送物質について、上記電荷輸送物質(1)40部のみに変更した。
(参考例1)
実施例1において、以下の点を変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体および帯電ローラーを作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
4つの電子写真感光体の電荷輸送層に含有させる電荷輸送物質について、上記電荷輸送物質(2)35部および上記電荷輸送物質(3)5部に変更し、4つの電子写真感光体の電荷輸送層の膜厚を30μmに変更し、また、評価に用いたカラー電子写真装置の帯電方式をAC/DC接触帯電方式に改造した。
表1に示されるように、本発明によれば、タンデム型中間転写方式を採用し、帯電に先立って電子写真感光体の表面を除電するための除電手段を有さない電子写真装置(カラー電子写真装置)であっても、高画質が得られるよう電子写真感光体の感光層(電荷輸送層)を薄膜化しても長寿命であり、装置構成の複雑化やコストアップを抑えた電子写真装置(カラー電子写真装置)を提供することができる。
本発明のタンデム型中間転写方式のカラー電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
電子写真感光体1周後にレッドのベタパッチに対応した白抜け画像が発生する原因を説明する図である。
帯電ローラーを流れる電流の値の測定を説明する図である。
符号の説明
1Y 電子写真感光体(第1色用電子写真感光体)
1M 電子写真感光体(第2色用電子写真感光体)
1C 電子写真感光体(第3色用電子写真感光体)
1K 電子写真感光体(第4色用電子写真感光体)
2Y 軸
2M 軸
2C 軸
2K 軸
3Y 第1色用接触帯電手段(第1色用接触一次帯電手段)
3M 第2色用接触帯電手段(第2色用接触一次帯電手段)
3C 第3色用接触帯電手段(第3色用接触一次帯電手段)
3K 第4色用接触帯電手段(第4色用接触一次帯電手段)
4Y レーザー露光光(画像露光光)
4M レーザー露光光(画像露光光)
4C レーザー露光光(画像露光光)
4K レーザー露光光(画像露光光)
5Y 第1色用現像手段
5M 第2色用現像手段
5C 第3色用現像手段
5K 第4色用現像手段
6Yp 第1色用一次転写手段(第1色用一次転写ローラー)
6Mp 第2色用一次転写手段(第2色用一次転写ローラー)
6Cp 第3色用一次転写手段(第3色用一次転写ローラー)
6Kp 第4色用一次転写手段(第4色用一次転写ローラー)
6s 二次転写手段
7Y 第1色用クリーニング手段(第1色用クリーニングブレード)
7M 第2色用クリーニング手段(第2色用クリーニングブレード)
7C 第3色用クリーニング手段(第3色用クリーニングブレード)
7K 第4色用クリーニング手段(第4色用クリーニングブレード)
7b 中間転写体用クリーニング手段
8 定着手段
9Y プロセスカートリッジ
9M プロセスカートリッジ
9C プロセスカートリッジ
9K プロセスカートリッジ
11 中間転写体
12 張架ローラー
13 二次転写対向ローラー
P 転写材
V1 電子写真感光体の表面の電位
V2 電子写真感光体の表面の電位
V3 電子写真感光体の表面の電位
V4 電子写真感光体の表面の電位
△V 電子写真感光体の表面の電位差
AT 一次転写電流
t トナーの層
T 転写
C 帯電
E 露光
110 円筒電極
111 バイアス電源
112 固定抵抗器
113 記録器(レコーダー)
114 測定対象の帯電ローラー