JP4466942B2 - 熱処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板に加熱を伴う処理を行う熱処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体基板等(以下、単に「基板」という。)の製造の様々な段階において基板に対する熱処理が行われており、熱処理方法の1つとして急速加熱工程(Rapid Thermal Process、以下、「RTP」という。)が利用されている。RTPでは、処理室内の基板をハロゲンランプ等で加熱して短時間で所定の温度まで昇温することにより、酸化膜等の絶縁膜の薄膜化、イオン注入法により添加した不純物の活性化工程における不純物の再拡散抑制等、従来の電気炉による長時間の熱処理では困難であった処理を実現することができる。近年、基板の加熱源としてフラッシュランプを用いて、さらに短時間で基板を加熱する技術も提案されている。
【0003】
ところで、RTPに限らず、基板に熱処理を行う熱処理装置では、基板の表面に不要な粒子が付着して品質を劣化させることがないように熱処理室内を清浄に保つ必要があり、不要な粒子(パーティクル)等により熱処理室内が汚染されるのを防止するために様々な技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、基板を支持するサセプタのエッジ部と予備加熱リングのエッジ部とが相補型階段形状を有することよりサセプタ裏面への不要物の蒸着を防止して、不要物が剥離した際のパーティクルの発生を抑制する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、基板を加熱する発熱板と、熱反射板カバーとを気密に溶接することにより、発熱板の裏面等における不要物の蒸着を防止する技術が開示されている。
【0006】
さらに、特許文献3の気相成長装置では、サセプタとリングのそれぞれのエッジ部から垂下されるスカート部を近接対面させて配置することにより、サセプタの破損を防止しつつサセプタ裏面や熱処理室内の壁面への不要物の蒸着を抑制する技術が開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平7−78863号公報
【特許文献2】
特開平10−326788号公報
【特許文献3】
特開2000−12470号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、熱処理室内の汚染原因は、上述のような蒸着した不要物が剥離する際に発生するパーティクル以外にも、処理中に割れた基板の破片等がある。特に、フラッシュランプを用いて行う熱処理においては、極めて短時間に基板の表面温度を上昇させるために、表面の急速な熱膨張により基板が粉々に割れることがある。
【0009】
従来の装置では、割れた基板の破片は熱処理室内の広い範囲に飛散し、複雑な構造の間隙等にも入り込むため、汚染原因を除去して装置を復旧するには熱処理室を開放して内部を清掃する必要があり、多大な時間と労力を要してしまう。このような破片の飛散を、基板を保持するサセプタ近辺にて抑制する一手法としてサセプタを大きくすることが考えられるが、この手法は熱処理装置全体の大型化に直結するため現実的ではない。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、熱処理室内で基板が割れた場合であっても、簡単な構造で基板の破片の飛散を抑制することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、基板に加熱を伴う処理を行う熱処理装置であって、基板を処理する空間を形成するチャンバ本体と、前記チャンバ本体内において基板を保持する保持部と、前記保持部に保持される基板に光を照射して前記基板を加熱するフラッシュランプを有する光照射部と、前記チャンバ本体に対して着脱自在とされるとともに前記保持部の外周を囲むライナと、前記保持部の外周に配置されて前記ライナとともに前記チャンバ本体内にラビリンス構造を形成する環状部とを備え、前記ライナが、前記チャンバ本体の底部の内壁面を覆うライナ底部と、前記チャンバ本体の側部の内壁面を覆うとともに前記ライナ底部と分離可能とされるライナ側部とを備える。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の熱処理装置であって、前記保持部を前記チャンバ本体の底面に対して昇降する昇降機構をさらに備え、前記環状部が前記保持部と共に昇降し、前記環状部が前記底面に対して上昇した状態において前記ラビリンス構造が形成される。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の熱処理装置であって、前記保持部が前記基板を加熱し、前記環状部が、前記保持部から放射される熱エネルギーを前記保持部の外周にて反射するリフレクタ円筒部を備える。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の熱処理装置であって、前記リフレクタ円筒部が分離可能に載置され、前記保持部の基板を保持する側の面とは反対側の面を覆うとともに前記保持部から放射される熱エネルギーを反射するリフレクタ底部をさらに備え、前記ライナが、前記ライナ側部の前記ライナ底部とは反対側のエッジから前記チャンバ本体内へと広がるとともに前記ライナ側部と分離可能とされるライナリング部と、前記ライナリング部の内側のエッジから前記ライナ底部へと広がるライナ円筒部とをさらに備え、前記リフレクタ円筒部が、前記ライナ円筒部の外周を囲むとともに前記ライナリング部から所定の間隙を隔てて配置され、前記リフレクタ底部が、前記ライナ円筒部の前記ライナリング部とは反対側の端部から所定の間隙を隔てて配置されることにより、前記ラビリンス構造が形成される。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る熱処理装置1の構成を示す図であり、熱処理装置1は半導体基板9(以下、「基板9」という。)に光を照射して加熱を伴う処理を行う装置である。
【0023】
熱処理装置1は、略円筒状の内壁を有するチャンバ側部63、チャンバ側部63の下部を覆うチャンバ底部62、および、チャンバ側部63の上部を覆う透光板61を備え、これらにより基板9を熱処理する空間(以下、「チャンバ」という。)65を形成するチャンバ本体6が構成される。
【0024】
また、熱処理装置1は、チャンバ本体6内において基板9を保持しつつ基板9を加熱するサセプタ7、サセプタ7から放射される熱エネルギーを反射するヒータリフレクタ30、サセプタ7をチャンバ本体6の底面であるチャンバ底部62に対して昇降するサセプタ昇降機構4、サセプタ7の外周に配置されるライナ20、サセプタ7に保持される基板9に光を照射して基板9を加熱する光照射部5、および、これらの構成を制御して熱処理を行う制御部8を備える。
【0025】
透光板61は、例えば、石英等の赤外線透過性を有する材料により形成され、光照射部5からの光を透過してチャンバ65に導くチャンバ窓として機能する。
【0026】
チャンバ底部62およびチャンバ側部63は、例えば、ステンレススチール等の強度と耐熱性に優れた金属材料にて形成されており、チャンバ底部62には、サセプタ7を貫通して基板9をその下面(光照射部5からの光が照射される側とは反対側の面)から支持するための複数の支持ピン70が立設されている。
【0027】
チャンバ側部63は、基板9の搬入および搬出を行うための開口部66を有し、開口部66は、軸67を中心に回動するゲートバルブ68により開閉可能とされる。チャンバ側部63の開口部66と反対側の部位にはチャンバ65に処理ガス(例えば、窒素(N2)ガス)を導入する導入路78が設けられ、開閉弁80を介して図示省略の供給装置に接続される。また、開口部66にはチャンバ内の気体を排出する排出路79が形成され、開閉弁81を介して図示省略の排気装置に接続される。
【0028】
サセプタ7は、基板9を予備加熱(いわゆる、アシスト加熱)する加熱プレート74、および、加熱プレート74の上面(サセプタ7が基板9を保持する側の面)に設置される熱拡散板73を有し、熱拡散板73の上面には、基板9の位置ずれを防止するピン75が設けられる。また、加熱プレート74の下面側には、サセプタ7を支持する筒状体41が設けられる。
【0029】
加熱プレート74は、窒化アルミニウムにより形成され、その内部に図示省略のヒータと、そのヒータを制御するためのセンサとを有する。熱拡散板73は、不純物の少ないサファイア(Al2O3:酸化アルミニウム)や石英等により形成され、加熱プレート74から放射される熱エネルギーを拡散する。
【0030】
ヒータリフレクタ30は、石英により形成され、サセプタ7および筒状体41の周囲に配置される。図2はヒータリフレクタ30を示す斜視図である。ヒータリフレクタ30は、図1に示すサセプタ7の外周を囲む環状のリフレクタ円筒部31、サセプタ7の基板9を保持する側の面とは反対側の面を覆うリフレクタ底部32、および、筒状体41を囲むリフレクタ下部33を有し、リフレクタ底部32上にはリフレクタ円筒部31が分離可能に載置される。ここで、サセプタ7の外周とは、サセプタ7の基板9を保持する側の面のエッジから、反対側の面のエッジへと伸びる面(すなわち、略円板状のサセプタ7の側面)の周囲、さらに換言すれば、サセプタ7に保持される基板9の径方向外側を指す。
【0031】
リフレクタ底部32には、複数の支持ピン70がそれぞれ貫通する貫通孔34が形成される。また、ヒータリフレクタ30の表面全体は、ブラスト処理により粗面化加工が施されて梨地模様を呈し、加熱プレート74からの熱エネルギーが熱拡散板73以外に伝導することを抑制する。
【0032】
図1に示すように、サセプタ昇降機構4は、移動板42、ガイド部材43、固定板44、ボールネジ45、連結部材46および47、ナット48並びにモータ40を有する。移動板42は、筒状体41を介してサセプタ7に、連結部材46および47を介してナット48に連結され、チャンバ底部62に上端が固定されたガイド部材43により案内されて昇降可能とされる。モータ40は、ガイド部材43の下端部に取り付けられる固定板44の中央部に設置され、ボールネジ45が接続される。サセプタ昇降機構4によりサセプタ7が昇降する際には、制御部8の制御によりモータ40がボールネジ45を回転し、ナット48に連結される移動板42がガイド部材43に沿って移動し、それに伴いサセプタ7が図1中のZ方向に滑らかに移動する。
【0033】
また、移動板42にはヒータリフレクタ30の下端(すなわち、リフレクタ下部33のリフレクタ底部32と反対側の端)が固定され、サセプタ7が昇降する際には、ヒータリフレクタ30もサセプタ7と共に昇降する。
【0034】
移動板42とチャンバ底部62との間には、筒状体41およびリフレクタ下部33の周囲を囲む伸縮自在の蛇腹77が設けられる。蛇腹77の一方の端はチャンバ底部62に、他方の端は移動板42に接続され、チャンバ65を気密状態に保つ。サセプタ昇降機構4によりサセプタ7およびヒータリフレクタ30がチャンバ底部62に対して上昇する際には蛇腹77は収縮され、下降する際には蛇腹77が伸張される。
【0035】
ライナ20は、例えば、石英により形成され、チャンバ65内においてサセプタ7の外周を囲むように、チャンバ底部62およびチャンバ側部63に沿ってチャンバ本体6に対して着脱自在に取り付けられる。
【0036】
図3は、ライナ20を示す斜視図である。ライナ20は、図1に示すチャンバ底部62の内壁面を覆うライナ底部24と、チャンバ側部63の内壁面を覆うライナ側部25と、ライナ側部25の上端(ライナ底部24とは反対側のエッジ)からチャンバ65の内側へと広がるライナリング部26、および、ライナリング部26の内側のエッジからライナ底部24へと広がるライナ円筒部27を一体的に有する環状の部材とから構成される。なお、図3では、ライナ底部24を下段に、ライナ側部25、ライナリング部26およびライナ円筒部27を上段に示している。
【0037】
ライナ20では、ライナ側部25はライナ底部24と、ライナリング部26はライナ側部25と分離可能とされるため、ライナ20をチャンバ本体6に容易に着脱することができる。
【0038】
ライナ底部24には、筒状体41およびリフレクタ下部33が挿入される貫通孔21、並びに、支持ピン70が挿入される貫通孔22が形成され、貫通孔21および22の周縁部には、チャンバ65の内側へと若干突出する円環状の突出部28が設けられる。なお、貫通孔22が形成される位置は、図2に示すリフレクタ底部32に形成される貫通孔34の位置と対応する。
【0039】
ライナ側部25には、ライナ20をチャンバ本体6に取り付ける際に開口部66とチャンバ65とを連通させる開口23、および、導入路78から排出路79へと流れる処理ガスが通過するための流路(図示省略)が形成される。また、ライナ20の外側の表面(すなわち、チャンバ底部62およびチャンバ側部63に対向する面)は、ブラスト処理により粗面化加工が施されて梨地模様を呈する。
【0040】
図1に示す光照射部5は、複数(本実施の形態においては25本)のキセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」という。)69、および、リフレクタ71を有する。複数のフラッシュランプ69は、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向がサセプタ7に保持される基板9の主面に沿って互いに平行に平面状に配列されている。リフレクタ71は、複数のフラッシュランプ69の上方にそれら全体を覆うように設けられ、その表面はブラスト処理により粗面化加工が施されて梨地模様を呈する。また、光照射部5と透光板61との間には、赤外線を透過する石英ガラスの表面に光拡散加工を施した光拡散板72が設けられる。
【0041】
図4および図5は、基板9を熱処理する際の熱処理装置1の動作の流れを示す図である。本実施の形態では、基板9はイオン注入法により不純物が添加された半導体基板であり、熱処理装置1による熱処理により添加された不純物の活性化が行われる。
【0042】
熱処理装置1により基板9が熱処理される際には、まず、サセプタ7が図1に示すようにチャンバ底部62に近接した位置に配置される。以下、図1におけるサセプタ7およびヒータリフレクタ30のチャンバ65内における位置を「受渡位置」という。サセプタ7およびヒータリフレクタ30が受渡位置にあるとき、支持ピン70の先端は、サセプタ7およびヒータリフレクタ30を貫通してサセプタ7の上方に位置する。次に、開口部66が開放され、制御部8により制御される搬送ロボット(図示省略)により開口部66を介して基板9がチャンバ65内に搬入され(ステップS11)、複数の支持ピン70上に載置される。
【0043】
その後、ゲートバルブ68により開口部66が閉鎖され(ステップS12)、開閉弁80および81が開かれてチャンバ65内に常温の窒素ガスが導入される(ステップS13)。サセプタ昇降機構4によりサセプタ7およびヒータリフレクタ30は、図6に示すように透光板61に近接した位置まで上昇し(ステップS14)、サセプタ7の周囲にラビリンス構造60が形成される。このとき、基板9は支持ピン70からサセプタ7へと渡され、サセプタ7に保持される。そして、サセプタ7およびヒータリフレクタ30がチャンバ底部62に対して上昇した状態において熱処理が行われる。以下、図6に示すサセプタ7およびヒータリフレクタ30のチャンバ65内における位置を「処理位置」という。なお、サセプタ7と透光板61との間の距離は、サセプタ昇降機構4のモータ40の回転量を制御することにより任意に調整することが可能である。
【0044】
サセプタ7は、加熱プレート74に内蔵されたヒータにより予め所定の温度に加熱されており、基板9はサセプタ7(正確には、熱拡散板73)と接触することにより予備加熱され(ステップS15)、基板9の温度が次第に上昇する。このとき、熱拡散板73により加熱プレート74からの熱エネルギーが拡散されるため、基板9は均一に予備加熱される。また、サセプタ7から放射される熱線等の熱エネルギーは、サセプタ7の外周にてリフレクタ円筒部31により、サセプタ7の底面側にてリフレクタ底部32により反射されて周囲への熱伝導が抑制されるため、サセプタ7からの熱エネルギーを効率的に基板9の予備加熱に利用することができる。
【0045】
基板9の表面温度は加熱プレート74内の温度センサにより間接的に継続して計測され(ステップS16)、計測された温度が設定された予備加熱温度(以下、「設定温度」という。)に到達したか否かが判断される(ステップS17)。設定温度は、基板9に添加された不純物が熱により拡散する恐れのない、200℃ないし600℃程度、好ましくは350℃ないし550℃程度とされる。
【0046】
基板9の表面温度が設定温度よりも低い場合には、ステップS15に戻って予備加熱が継続され、基板9の表面温度の計測および確認(ステップS15,S16)が、基板9の表面温度が設定温度以上になるまで繰り返される(ステップS17)。表面温度が設定温度以上になると、制御部8の制御により光照射部5から基板9へ向けてフラッシュ光が照射される(ステップS18)。このとき、光照射部5のフラッシュランプ69から放射される光の一部は光拡散板72および透光板61を透過して直接チャンバ65内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ71により反射されてから光拡散板72および透光板61を透過してチャンバ65内へと向かい、これらの光の照射により基板9の加熱(以下、予備加熱と区別するため、基板9の表面温度を処理温度まで上昇させる加熱を「主加熱」という。)が行われる。このように、主加熱が光の照射により行われることによって、基板9の表面温度を短時間で昇降することができる。
【0047】
光照射部5、すなわち、フラッシュランプ69から照射される光は、予め蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリ秒ないし10ミリ秒程度の極めて短く強い閃光であり、フラッシュランプ69からの光により主加熱される基板9の表面温度は、瞬間的に1000℃ないし1100℃程度の処理温度まで上昇し、基板9に添加された不純物が活性化される。このとき、基板9の表面温度が極めて短い時間で処理温度まで上昇して急速に下降するため、基板9に添加された不純物の熱による拡散(この拡散現象を、基板9中の不純物のプロファイルがなまる、ともいう。)を抑制しつつ不純物の活性化を行うことができる。
【0048】
また、主加熱の前に加熱プレート74により基板9を予備加熱しておくことにより、フラッシュランプ69からの光の照射によって基板9の表面温度を処理温度まで速やかに上昇させることができる。
【0049】
なお、主加熱の際にフラッシュランプ69からの光がライナ20に入射することがあっても、ブラスト処理により粗面化されたライナ20の外面(チャンバ本体6に対向する面)により光がある程度遮られるため、チャンバ本体6の内側の表面が光に曝されて変質、あるいは、劣化する現象を抑制することができる。
【0050】
主加熱の終了後、サセプタ昇降機構4によりサセプタ7およびヒータリフレクタ30が再び図1に示す受渡位置まで下降し(ステップS19)、基板9がサセプタ7から支持ピン70へと渡される。続いて、開閉弁80および81が閉じられて窒素ガスの導入が停止され(ステップS20)、ゲートバルブ68により閉鎖されていた開口部66が開放される(ステップS21)。支持ピン70上に載置された基板9は搬送ロボットにより搬出され(ステップS22)、熱処理装置1による一連の熱処理動作が完了する。
【0051】
ところで、フラッシュランプを用いて行う熱処理においては、フラッシュランプからの光の照射により極めて短時間に基板の表面温度を上昇させるため、光が照射された側の表面の急速な熱膨張により基板が粉々に割れて飛散することがある。
【0052】
熱処理装置1では、図6に示すようにサセプタ7およびヒータリフレクタ30がチャンバ底部62に対して上昇した状態、すなわち、サセプタ7およびヒータリフレクタ30が処理位置に配置された状態において、ライナ20がヒータリフレクタ30とともに、チャンバ本体6内のサセプタ7および基板9の周囲にラビリンス構造60を形成するため、熱処理中に基板9が割れることがあっても、基板9の破片の飛散は、ラビリンス構造60、リフレクタ底部32および透光板61により囲まれる空間(以下、「処理空間」という。)651内で抑えられ、その外側には破片はほとんど飛散しない。
【0053】
ラビリンス構造60は具体的には、サセプタ7の外周に配置されるライナ円筒部27、ライナ円筒部27のサセプタ7に保持される基板9側の端部から外側に広がるライナリング部26、ライナ円筒部27の外周を囲むリフレクタ円筒部31、および、リフレクタ円筒部31のライナリング部26とは反対側の端部から内側に広がるリフレクタ底部32により形成される。リフレクタ円筒部31はライナリング部26から所定の間隙を隔てて配置され、リフレクタ底部32はライナ円筒部27のライナリング部26とは反対側の端部から所定の間隙を隔てて配置される。
【0054】
このように、熱処理装置1では、ライナ20とヒータリフレクタ30とによりサセプタ7の外周にてラビリンス構造60が形成されるため、基板9の被処理面側の処理空間651がチャンバ65内の他の空間から分離され、チャンバ65内で基板9が割れることがあっても、簡単な構造で基板の破片の飛散を抑制することができる。その結果、サセプタ7をチャンバ本体6から取り出すことなく、サセプタ7の近傍の清掃のみで熱処理装置1を復旧することができ、熱処理工程のダウンタイムを低減し、熱処理装置1の稼働率を向上することができる。
【0055】
また、リフレクタ円筒部31とリフレクタ底部32とが分離可能とされるため、ヒータリフレクタ30のコーナ部(すなわち、リフレクタ円筒部31とリフレクタ底部32との接触部近傍)を容易に清掃することができる。
【0056】
さらに、ライナ20がチャンバ本体6に対して着脱可能とされるため、処理空間651の外側まで基板9の破片が飛散するような破損が発生した場合、あるいは、軽度の破損が繰り返された場合であっても、ライナ20を取り外して容易に清掃することができる。また、ライナ底部24に図3に示す突出部28が設けられているため、ライナ20を取り外さずに清掃しても貫通孔21または22から破片が落下することを防止できる。なお、このようなライナ20の清掃をより容易にするために、ライナ20の内側の表面(既述のブラスト処理が施された表面以外の表面)は平滑にされることが好ましい。
【0057】
熱処理装置1では、チャンバ65内における窒素ガスの流れや、チャンバ本体6の熱分布の不均一等の影響により基板9の温度分布がばらつく(具体的には、導入路78および開口部66の側で低温となり、その他の部分で高温となる)ことがあるが、ラビリンス構造60により処理空間651における窒素ガスの流れが抑制される(整流されると捉えることもできる。)ことにより、基板9の温度分布のばらつきを抑制することができる。
【0058】
また、熱処理装置1では、図6に示すようにヒータリフレクタ30がサセプタ7とともに上昇し、ヒータリフレクタ30がチャンバ底部62から上昇した状態において、チャンバ65内にラビリンス構造60が形成されるため、熱処理装置1の構造を簡素化することができる。
【0059】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0060】
例えば、光照射部5では、フラッシュランプ69の数、配列または形状は上記実施の形態に示したものに限定されず、熱処理される基板9の大きさ等の諸条件に合わせて適宜変更が可能である。また、キセノンフラッシュランプに代えて、クリプトンフラッシュランプが用いられてもよい。さらには、予備加熱が省かれてもよい。
【0061】
ヒータリフレクタ30では、リフレクタ円筒部31とリフレクタ底部32とは一体的に形成されてもよい。また、サセプタ7から下方へと放射される熱エネルギーが許容範囲内である、または、サセプタ7の下面が別部材で覆われている等の場合は、リフレクタ底部32は省略されてもよい。リフレクタ底部32が省略される場合であっても、基板9の大きな破片をラビリンス構造60およびサセプタ7により処理空間651内部に留めることができ、清掃を容易に行うことができる。なお、比較的小さな破片がサセプタ7とライナ円筒部27との間隙から処理空間651の外側のチャンバ65内に飛散したとしても、ライナ底部24等を清掃することにより容易に熱処理装置1を復旧することができる。
【0062】
ラビリンス構造60は、必ずしもライナ20とヒータリフレクタ30とにより形成される必要はなく、例えば、ヒータリフレクタ30に代えてヒータリフレクタ30を保護する保護部材等の他の環状の部材が利用されてもよい。
【0063】
熱処理装置1では、基板9に対して、不純物の活性化処理以外にも、酸化、アニール、CVD等の様々な加熱を伴う処理が行われてよい。また、熱処理装置1は、半導体基板のみならず、液晶表示装置やプラズマ表示装置等のフラットパネル表示装置用のガラス基板に対する熱処理にも利用することができる。
【0064】
【発明の効果】
本発明では、チャンバ本体内で基板が割れた場合であっても、簡単な構造で基板の破片の飛散を抑制することができる。また、ライナを容易に清掃することができる。
【0066】
請求項2の発明では、熱処理装置の構造を簡素化することができる。
請求項4の発明では、筒部と底部との接触部近傍を容易に清掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一の実施の形態に係る熱処理装置の構成を示す図である。
【図2】ヒータリフレクタを示す斜視図である。
【図3】ライナを示す斜視図である。
【図4】熱処理装置の動作の流れを示す図である。
【図5】熱処理装置の動作の流れを示す図である。
【図6】熱処理装置の構成を示す他の図である。
【符号の説明】
1 熱処理装置
4 サセプタ昇降機構
5 光照射部
6 チャンバ本体
7 サセプタ
9 基板
20 ライナ
26 ライナリング部
27 ライナ円筒部
30 ヒータリフレクタ
31 リフレクタ円筒部
32 リフレクタ底部
60 ラビリンス構造
62 チャンバ底部
65 チャンバ
69 フラッシュランプ
S11〜S22 ステップ
Claims (4)
- 基板に加熱を伴う処理を行う熱処理装置であって、
基板を処理する空間を形成するチャンバ本体と、
前記チャンバ本体内において基板を保持する保持部と、
前記保持部に保持される基板に光を照射して前記基板を加熱するフラッシュランプを有する光照射部と、
前記チャンバ本体に対して着脱自在とされるとともに前記保持部の外周を囲むライナと、
前記保持部の外周に配置されて前記ライナとともに前記チャンバ本体内にラビリンス構造を形成する環状部と、
を備え、
前記ライナが、
前記チャンバ本体の底部の内壁面を覆うライナ底部と、
前記チャンバ本体の側部の内壁面を覆うとともに前記ライナ底部と分離可能とされるライナ側部と、
を備えることを特徴とする熱処理装置。 - 請求項1に記載の熱処理装置であって、
前記保持部を前記チャンバ本体の底面に対して昇降する昇降機構をさらに備え、
前記環状部が前記保持部と共に昇降し、前記環状部が前記底面に対して上昇した状態において前記ラビリンス構造が形成されることを特徴とする熱処理装置。 - 請求項1または2に記載の熱処理装置であって、
前記保持部が前記基板を加熱し、
前記環状部が、前記保持部から放射される熱エネルギーを前記保持部の外周にて反射するリフレクタ円筒部を備えることを特徴とする熱処理装置。 - 請求項3に記載の熱処理装置であって、
前記リフレクタ円筒部が分離可能に載置され、前記保持部の基板を保持する側の面とは反対側の面を覆うとともに前記保持部から放射される熱エネルギーを反射するリフレクタ底部をさらに備え、
前記ライナが、
前記ライナ側部の前記ライナ底部とは反対側のエッジから前記チャンバ本体内へと広がるとともに前記ライナ側部と分離可能とされるライナリング部と、
前記ライナリング部の内側のエッジから前記ライナ底部へと広がるライナ円筒部と、
をさらに備え、
前記リフレクタ円筒部が、前記ライナ円筒部の外周を囲むとともに前記ライナリング部から所定の間隙を隔てて配置され、前記リフレクタ底部が、前記ライナ円筒部の前記ライナリング部とは反対側の端部から所定の間隙を隔てて配置されることにより、前記ラビリンス構造が形成されることを特徴とする熱処理装置。
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