以下、本発明に係わる成形装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係わる成形装置の一実施形態を正面側から見た断面図であり、図2は、図1に示す成形装置を側面側から見た断面図であり、図3は、図1に示す成形装置のカム部分を上面側から見た断面図である。各図において、本実施形態の成形装置1は、磁性体粉末や誘電体粉末等の材料粉末を所定の形状(例えば直方体形状)に圧縮成形するカムプレス装置である。成形装置1は、枠体2と、この枠体2の上部に取り付けられたダイセット(下ラム)3と、ダイセット3の上方に配置された上ラム4とを備えている。
ダイセット3は、図4に示すように、枠体2に固定された固定プレート5を有し、この固定プレート5には、上下方向に延びる2本のロッド6が摺動自在に貫通されている。各ロッド6の上端には基台7が固定され、各ロッド6の下端には連結プレート8が固定されている。基台7上には、ダイ9が載置されている。ダイ9には、上下方向に貫通し材料粉末が充填される複数(ここでは5つ)のキャビティ10が形成されている。ダイ9上には、フィーダ11が前後方向(図4の紙面表裏方向)に移動自在に設けられている。フィーダ11は、各キャビティ10に材料粉末を供給するフィーダカップ11aを有している。固定プレート5上には突起部12が設けられ、この突起部12の上部には、ダイ9の下側から各キャビティ10に挿入される複数(ここでは5つ)の下パンチ13が固定されている。
基台7上には、上下方向に延びる2本のロッド14がダイ9を挟むように立設されている。これらのロッド14は、上ラム4の一部を構成する昇降体15を摺動自在に貫通している。昇降体15には、ダイ9の上側から各キャビティ10に挿入される複数(ここでは5つ)の上パンチ16が設けられている。各上パンチ16は、対向する下パンチ13と協働して、キャビティ10に充填された材料粉末を圧縮するものである。
図1〜図3に戻り、昇降体15の上方にはラム本体4aが配置されている。このラム本体4aには、加圧用エアーシリンダ17が設けられている。ラム本体4aは、上下方向に延びる2本のロッド18を介して、枠体2の下部に配置されたフレーム体19と連結されている。
ダイセット3の連結プレート8には、連結部材20を介してフレーム体21が連結されている。フレーム体21には、各ロッド18が摺動自在に貫通されている。フレーム体21の下部には、ナット部22が固定されている。このナット部22には、調整用ネジ23がねじ込まれている。調整用ネジ23の下端には、当接部材24が固定されている。当接部材24の最上部には、当て板25が設けられている(図5参照)。また、当接部材24の上方には、当て板25と係合する2つのストッパ26が調整用ネジ23を挟むように配置されている。当接部材24及び各ストッパ26は、ダイ9の上方移動を規制するものである。
当接部材24の高さ位置は、枠体2の前端部に設けられた調整用ハンドル27と調整機構28とによって調整可能となっている。調整機構28は、図5に示すように、調整用ハンドル27に連結された調整軸29を有し、この調整軸29の先端にはウォームギア30が取り付けられている。ウォームギア30は、中間歯車31を介して、当接部材24に取り付けられた平歯車32と噛み合っている。
調整用ハンドル27を回すと、調整軸29、ウォームギア30、中間歯車31及び平歯車32を介して当接部材24が回転し、これに伴って調整用ネジ23がナット部22に対してねじ回されながら上下動するため、当接部材24の高さ位置が変化する。このように当接部材24の高さ位置を変えることで、当接部材24とストッパ26との距離が変わるので、当て板部25がストッパ26に当たるまでの移動量が変わることとなる。なお、当接部材24の下方には、ストッパ26までの当接部材24の移動量をモニタするためのスケール33が設けられている。
また、成形装置1は、ダイ9を上下方向に移動させるためのダイ駆動系34と、上ラム4を上下方向に移動させるための上ラム駆動系35と、フィーダ11をダイ9のキャビティ10に対して前後方向(横方向)に移動させるためのフィーダ駆動系36と、各ストッパ26を上下方向に移動させるためのストッパ駆動系37とを更に備えている。
ダイ駆動系34は、図6にも示されるように、ダイ駆動用カム38と、レバー39とを有している。レバー39は、枠体2に設けられた軸部40に軸支されている。レバー39の基端には、ダイ駆動用カム38と直接接触するカムフォロア41が設けられている。レバー39の先端部は、フレーム体21に対して相対的に回動可能に連結されている。また、フレーム体21と枠体2との間には、ダイ駆動用カム38の回転時にカムフォロア41がダイ駆動用カム38から離れることを防ぐための2本のエアーシリンダ42が設けられている。
上ラム駆動系35は、図7及び図8にも示されるように、上ラム駆動用カム43と、レバー44とを有している。レバー44は、枠体2に設けられた軸部45に軸支されている。レバー44の基端には、上ラム駆動用カム43と直接接触するカムフォロア46が設けられている。レバー44の先端部は、フレーム体19に対して相対的に回動可能に連結されている。また、フレーム体19と枠体2との間には、上ラム駆動用カム43の回転時にカムフォロア46が上ラム駆動用カム43から離れることを防ぐための4本のエアーシリンダ47が設けられている。
また、上ラム4のラム本体4aには、加圧用エアーシリンダ17(前述)が取り付けられている。加圧用エアーシリンダ17のピストンロッド17aは、連結部材62を介して昇降体15に固定されている(図1参照)。これにより、ピストンロッド17aは、連結部材62及び昇降体15を介して各上パンチ16と連結されている事になる。加圧用エアーシリンダ17は、空気圧源及びエアーバルブを有するシリンダ駆動部63によって駆動される。シリンダ駆動部61は、上パンチ16及び下パンチ13による圧縮及び加圧ホールド動作(後述)の完了後に、加圧用エアーシリンダ17を駆動するように制御する。なお、加圧用エアーシリンダ17としてロック機能付きのエアーシリンダを用い、駆動時のみロック機能を解除するようにしても良い。
フィーダ駆動系36は、図9にも示されるように、フィーダ駆動用カム48と、レバー49とを有している。レバー49は、枠体2に設けられた軸部50に軸支されている。レバー49の基端には、フィーダ駆動用カム48と直接接触するカムフォロア51が設けられている。レバー49の先端部は、フィーダ11と連結されたリンク52に連結されている。また、レバー49と枠体2との間には、フィーダ駆動用カム48の回転時にカムフォロア51がフィーダ駆動用カム48から離れることを防ぐためのエアーシリンダ53が設けられている。
ストッパ駆動系37は、図10にも示されるように、ダイ規制用カム54と、レバー55とを有している。レバー55は、枠体2に設けられた軸部56に軸支されている。レバー55の基端には、ダイ規制用カム54と直接接触するカムフォロア57が設けられている。レバー55の先端部は、各ストッパ26に連結されている。また、レバー55と枠体2との間には、ダイ規制用カム54の回転時にカムフォロア57がダイ規制用カム54から離れることを防ぐためのエアーシリンダ58が設けられている。
ダイ駆動用カム38、上ラム駆動用カム43、フィーダ駆動用カム48及びダイ規制用カム54は、枠体2の下部に配置された主軸59に連結されている。主軸59は、駆動モータ60によって回転駆動される。駆動モータ60により主軸59を回転させると、それらのカム38,43,48,54は同期して回転するようになる。なお、カム38,43,48,54は、例えば板カムや割りカムで構成されている。
主軸59の回転によってダイ駆動用カム38が回転すると、レバー39が揺動し、各エアーシリンダ42を伸縮動作させた状態でフレーム体21が上下動するため、フレーム体21に連結部材20を介して連結された各ロッド6が上下動し、これに伴ってダイ9が下パンチ13に対して上下動する。主軸59の回転によって上ラム駆動用カム43が回転すると、レバー44が揺動し、各エアーシリンダ47を伸縮動作させた状態でフレーム体19が上下動するため、フレーム体19に連結された各ロッド18を介して上ラム4が上下動し、これに伴って上パンチ16が上下動する。主軸59の回転によってフィーダ駆動用カム48が回転すると、エアーシリンダ53を伸縮動作させた状態でレバー49が揺動し、リンク52を介してフィーダ11がダイ9上を前後方向に移動する。主軸59の回転によってダイ規制用カム54が回転すると、エアーシリンダ58を伸縮動作させた状態でレバー55が揺動し、各ストッパ26が上下動する。
ダイ駆動用カム38、上ラム駆動用カム43、フィーダ駆動用カム48及びダイ規制用カム54の形状は、図11に示すようなカム曲線図(カムの動きを示す図)に応じたものとなっている。図11において、ダイ駆動用カム38は、実線のカム曲線Rに応じた形状を有し、上ラム駆動用カム43は、1点鎖線のカム曲線Sに応じた形状を有し、フィーダ駆動用カム48は、粗破線のカム曲線Tに応じた形状を有し、ダイ規制用カム54は、密破線のカム曲線Uに応じた形状を有している。また、図11の横軸は、基準位置(0度)からの回転角度を示し、図11の縦軸は、カム38,43,54の高さ位置及びカム48の前後位置を示している。なお、カム38,43,54のカム曲線のスケールは、カム48のカム曲線のスケールと異なっている。
具体的には、ダイ駆動用カム38は、基準位置から約10度の領域でダイ9を初期高さ位置に停止させ、約10〜20度の領域でダイ9を初期高さ位置から微少に上昇させ、約20〜55度の領域でダイ9を停止させ、約55〜90度の領域でダイ9を上昇させ、約90〜110度の領域でダイ9を停止させ、約110〜125度の領域でダイ9を少し下降させ、約125〜190度の領域でダイ9を停止させ、約190〜220度の領域でダイ9を少し下降させ、約220〜295度の領域でダイ9を停止させ、約295〜330度の領域でダイ9を初期高さ位置まで下降させ、約330度から基準位置の領域でダイ9を停止させるような形状を有している。
上ラム駆動用カム43は、基準位置から45度の領域で上パンチ16を初期高さ位置から十分に上昇させ、約45〜115度の領域で上パンチ16を停止させ、約115〜190度の領域で上パンチ16を十分に下降させ、190度前後の領域で上パンチ16を停止させ、約190〜225度の領域で上パンチ16を更に下降させ、約225〜275度の領域で上パンチ16を停止させ、約275〜295度の領域で上パンチ16を少し上昇させ、約295〜330度の領域で上パンチ16を停止させ、約330度から基準位置の領域まで上パンチ16を初期高さ位置まで上昇させるような形状を有している。
フィーダ駆動用カム48は、基準位置から約15度の領域でフィーダ11を初期位置から前進させ、約15〜25度の領域でフィーダ11を停止させ、約25〜60度の領域でフィーダ11を更に前進させ、約60〜105度の領域でフィーダ11の微少な前進・後退を繰り返し行い、約105〜165度の領域でフィーダ11を十分に後退させ、約165〜345度の領域でフィーダ11を停止させ、約345度から基準位置の領域でフィーダ11を初期位置まで前進させるような形状を有している。
ダイ規制用カム54は、基準位置から90度の領域でストッパ26を初期高さ位置に停止させ、約90〜115度の領域でストッパ26を下降させ、約115〜155度の領域でストッパ26を停止させ、約155〜180度の領域でストッパ26を初期高さ位置まで上昇させ、約180度から基準位置の領域でストッパ26を停止させるような形状を有している。
なお、図6〜図10では、カム38,43,48,54の形状を簡略化して円形としているが、カム38,43,48,54の実際の形状は、曲線部分及び直線部分を含む特殊形状であることは言うまでも無い。
次に、以上のように構成した成形装置1を用いて成形を行う手順を図12〜図16により説明する。なお、図16は、図11に示すカム曲線図において、ダイ9の実際の動作を2点鎖線Wで示したものである。
ここで、主軸59(カム38,43,48,54)を基準位置から約100度回転させた時点で当接部材24の当て板部25がストッパ26に突き当たるように、当接部材24の高さ位置が調整用ハンドル27によって予め調整されている(図11及び図16参照)。そして、カム38,43,48,54が1回転する1サイクル毎に、成形体が作られる。なお、成形体の生産効率を上げるために、主軸59(カム38,43,48,54)の回転速度は例えば80rpm程度と十分高く設定されている。
カム38,43,48,54が基準位置にある状態では、図12(A)に示すように、ダイ9、上パンチ16、フィーダ11及びストッパ26は、前サイクルで得られた成形体61をダイ9から抜き出した状態の初期設定位置にある。つまり、ダイ9は、キャビティ10に嵌入された下パンチ13をダイ9の上面から僅かに突き出すような高さ位置にある。上パンチ16は、ダイ9から所定量離れた高さ位置にある。フィーダ11は、ダイ9上においてキャビティ10から所定量後退した位置にある。そして、下パンチ13上には、前サイクルで作製された成形体61が載置されている。
その初期状態からカム38,43,48,54を所定方向に回し始めると、図12(B)に示すように、フィーダ11がダイ9上を前進し、キャビティ10の手前で一時停止すると共に、ダイ9が若干上昇して、下パンチ13の上端が僅かにキャビティ10内に引っ込むようになる(図16のA参照)。これにより、フィーダ11が成形体61や下パンチ13の上端部に接触することが無いため、成形体61や下パンチ13の損傷を防止することができる。また、成形体61がキャビティ10から抜き出されると、成形体61はスプリングバック現象によって膨らむので、下パンチ13の上端部がキャビティ10内に引っ込んでも、下パンチ13の動作に追従して成形体61がキャビティ10内に入り込むことは無く、成形体61はキャビティ10を覆うようにダイ9上に載置された状態となる。
そして、カム38,43,48,54を更に回すと、図12(C)に示すように、フィーダ11がダイ9上を前進して、前サイクルで作製された成形体61を押すようになる。このとき、下パンチ13はダイ9の上面から突き出ていないので、フィーダ11が下パンチ13に引っ掛かることが無い。また、上記のようにフィーダ11が成形体61に触れる直前で一旦停止することにより、フィーダ11が前進を再開してから成形体61に接触するときに、フィーダ11の速度が十分抑えられるようになるため、フィーダ11が成形体61に過度な衝撃を与えることも無い。このため、成形体61がフィーダ11にスムーズに押されるので、成形体61の損傷等を防ぐことができる。
カム38,43,48,54を同方向に更に回すと、図12(D)に示すように、フィーダ11がダイ9上を更に前進することで、成形体61がキャビティ10から押し出される。そして、フィーダ11は、キャビティ10を覆う位置で停止する(図16のB参照)。このようにキャビティ10は成形体61及びフィーダ11により切れ目なく覆われることになるので、キャビティ10内に空気が入り込むことは殆ど無い。
カム38,43,48,54を同方向に更に回すと、図13(A)に示すように、ダイ9が所定の高さ位置まで上昇すると共に、フィーダ11からキャビティ10内に材料粉末Jが吸い込まれて充填される(図16のB参照)。このとき、フィーダ11が停止状態となっているので、材料粉末Jがキャビティ10内に真下方向に向けて供給される。また、これに加えて、フィーダ11のシェーク動作、つまりフィーダ11の微小な前進及び後退動作が連続的に行われる(図16のC参照)。従って、材料粉末Jをキャビティ10内に効率的に且つ均等に充填することができる。
カム38,43,48,54を同方向に更に回すと、ストッパ26が下降する。このとき、ダイ9は停止しているので、当接部材24にストッパ26が突き当たるようになる。このため、ダイ9は、ダイ駆動用カム38の動きに従った動作から、ダイ規制用カム54の動きに従った動作に切り換わる。従って、図13(B)に示すように、当接部材24がストッパ26に当たったままの状態で、ストッパ26の下降に従ってダイ9が下降する。これにより、粉末充填Jのオーバーフィル動作が実施されることとなる(図16のD参照)。
オーバーフィル動作とは、キャビティ10の粉末充填深さを予め大きくとった状態で材料粉末Jを充填した後、キャビティ10の粉末充填深さが少し小さくなるようにダイ9を下降させて、余分な材料粉末Jをフィーダ11に押し戻す充填動作である。なお、オーバーフィル量は、その時のダイ9の下降量X(図16参照)に相当する。このようなオーバーフィル動作を実行することにより、材料粉末Jがキャビティ10に充填される時の空隙が抑制され、材料粉末Jをキャビティ10内に密に充填することが可能となる。
カム38,43,48,54を同方向に更に回すと、図13(C)に示すように、フィーダ11がキャビティ10から離れるように後退することで、材料粉末Jの擦り切り動作が行われる。また、上ラム4の下降によって、上パンチ16が下降し始める。
そして、所定時間経過するとストッパ26が上昇し始めるので、図13(D)に示すように、当接部材24がストッパ26に当たったままの状態で、ダイ9が上昇するようになる。このとき、ストッパ26が所定量上昇すると当接部材24から離れるように、ダイ規制用カム54が形成されている。このため、ダイ9は、ダイ規制用カム54の動きに従った動作から、再びダイ駆動用カム38の動きに従った動作に戻り、停止状態となる。これにより、粉末充填Jのアンダーフィル動作が実施されることとなる(図16のD参照)。
アンダーフィル動作とは、キャビティ10への材料粉末Jの充填が終了した後、ダイ9を上昇させて、ダイ9の上面より材料粉末Jを沈める充填動作である。なお、アンダーフィル量は、その時のダイ9の上昇量Y(図16参照)に相当する。このようなアンダーフィル動作を実行することにより、材料粉末Jがキャビティ10から溢れ出ることを抑制できる。
このようにオーバーフィル動作及びアンダーフィル動作の実行時には、当接部材24がストッパ26に当たることで、ダイ9をダイ規制用カム54の動きに従って強制的に下降・停止・上昇させるようにする。このようにダイ駆動用カム38とダイ規制用カム54との組み合わせによりダイ9を上下動させるので、主軸59を高速で回転させても、ダイ9のオーバーシュートが生じることは殆ど無く、ダイ9は予め設定した動きに従って動作するようになる。
このとき、調整用ハンドル27により当接部材24の高さ位置を変えると、ダイ駆動用カム38の動きを示すカム曲線Rに対してダイ規制用カム54の動きを示すカム曲線Uが、カム曲線図(図11及び図16参照)上において上下方向にずれることになる。このため、当接部材24がストッパ26に当たるまでの変位量、言い換えると当接部材24がストッパ26に当たるタイミングが変わる。また、カム曲線Uの形状自体は変わらないので、当該タイミングが変わることにより、当接部材24がストッパ26に当たってからの変位量が変わることになる。従って、その時のオーバーフィル量(図16のX参照)及びアンダーフィル量(図16のY参照)が変わり、結果的にキャビティ10への材料粉末Jの充填量が変わることになる。
カム38,43,48,54を同方向に更に回すと、図14(A)に示すように、上パンチ16がキャビティ10に入り込み、材料粉末Jの擦り切り面と上パンチ16の下端面とが一致した状態で、上パンチ16が一時停止する(図16のE参照)。このとき、上記のアンダーフィル動作によってキャビティ10の上部には空間が形成されている(図13(D)参照)ため、上パンチ16がキャビティ10に入り易くなる。
カム38,43,48,54を同方向に更に回すと、図14(B)に示すように、ダイ9が下降すると同時に、上ラム4の下降により上パンチ16が下降することで、上パンチ16及び下パンチ13による材料粉末Jの圧縮(上下同時加圧)が行われる(図16のF参照)。このとき、上パンチ16の下降速度をダイ9の下降速度よりも速くするのが望ましい。
カム38,43,48,54を同方向に更に回すと、図14(C)に示すように、ダイ9及び上パンチ16が何れも所定時間だけ停止し、上パンチ16及び下パンチ13による材料粉末Jの加圧状態が保持(加圧ホールド)される(図16のG参照)。このとき、シリンダ駆動部63による加圧用エアーシリンダ17の供給圧が上パンチ16及び下パンチ13による成形圧縮圧力よりも小さくなっている事から、加圧用エアーシリンダ17のピストンロッド17aは最も縮んだ状態となっている。なお、加圧ホールド時間としては、圧縮された材料粉末Jから得られる成形体の形状や寸法等が安定するような時間であるのが望ましい。
カム38,43,48,54を同方向に更に回すと、図14(D)に示すように、上パンチ16による材料粉末(成形体)Jの押さえ付けから、加圧用エアーシリンダ17による成形体Jの押さえ付けに切り換わる。具体的には、上ラム駆動用カム38によって上ラム4が少し上昇する(図16のH参照)。しかし、加圧用エアーシリンダ17は、上パンチ16を成形体Jに対して所定圧で押し付けるようにシリンダ駆動部63によって駆動される。つまり、上ラム4の上昇に伴って加圧用エアーシリンダ17のピストンロッド17aが伸びるようになり、結果的に上パンチ16の高さ位置は変わらない状態となる。このように加圧用エアーシリンダ17により成形体Jを押さえ付けることで、材料粉末Jの圧縮時に受けた歪みに起因した成形体Jの損傷等を防止することが可能となる。
カム38,43,48,54を同方向に更に回すと、図15(A)に示すように、上記の加圧用エアーシリンダ17による成形体Jの加圧状態を継続したまま、上ラム4の上昇動作が停止する。そして、カム38,43,48,54を同方向に更に回すと、図15(B)、(C)に示すように、加圧用エアーシリンダ17による成形体Jの加圧状態を更に継続したまま、ホールドダウン動作が行われる。つまり、ダイ9が上記の初期設定位置まで下降することで、成形体Jがダイ9から抜き出される(図16のH参照)。このとき、加圧用エアーシリンダ17により成形体Jに加える圧力(ホールド圧力)としては、成形体Jの圧縮圧力よりも小さな圧力とする。
カム38,43,48,54を同方向に更に回すと、図15(D)に示すように、上ラム4の上昇によって上パンチ16が上昇して成形体Jから離れるようになる。以上により、1サイクルの成形動作が完了する。
ところで、上ラム4を上昇させると同時に加圧用エアーシリンダ17により上パンチ16を成形体Jに対して加圧しながら、ホールドダウン動作を行う場合には、加圧用エアーシリンダ17のピストンロッド17aの伸長(変位)による圧力変動が生じるため、ホールド圧力が不安定になることがある。この場合には、得られる成形体Jの寸法や形状等がばらつく可能性がある。
これに対し本実施形態では、上ラム4の上昇動作を停止させると共に加圧用エアーシリンダ17により上パンチ16を成形体Jに対して加圧した状態で、ホールドダウン動作を実施することにより、加圧用エアーシリンダ17のピストンロッド17aの伸長(変位)による圧力変動が抑えられるため、ホールド圧力が安定化し、優れた成形性を確保することができる。これにより、特に複雑な機構を設けたり煩雑な電気的制御を行わなくても、成形体Jの損傷等を防止しつつ、ホールド圧力を一定に保ったまま、成形体Jをダイ9のキャビティ10から確実に抜き出すことができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、ダイ駆動用カム38、上ラム駆動用カム43、フィーダ駆動用カム48及びダイ規制用カム54を主軸59に固定し、この主軸59を駆動モータ60で回転駆動させる構成としたが、ダイ駆動用カム38、上ラム駆動用カム43、フィーダ駆動用カム48及びダイ規制用カム54をそれぞれ異なる駆動モータで回転させても良い。この場合には、これらのカム38,43,48,54が同期して回転するように各駆動モータを制御する必要がある。
また、上記実施形態の成形装置1では、ダイ9にキャビティ10が複数形成され、これに対応して上パンチ16及び下パンチ13が複数ずつ設けられているが、本発明は、上パンチ16及び下パンチ13がそれぞれ1つしかない成形装置にも適用可能であることは言うまでもない。
1…成形装置、4…上ラム、4a…ラム本体(支持部)、9…ダイ、10…キャビティ、11…フィーダ、13…下パンチ、16…上パンチ、17…加圧用エアーシリンダ、17a…ピストンロッド、34…ダイ駆動系(第1カム駆動系)、35…上ラム駆動系(第2カム駆動系)、36…フィーダ駆動系(第3カム駆動系)、38…ダイ駆動用カム(第1カム)、43…上ラム駆動用カム(第2カム)、48…フィーダ駆動用カム(第3カム)、59…主軸(駆動同期手段)、60…駆動モータ(駆動同期手段)、63…シリンダ駆動部(駆動手段)、J…材料粉末。