JP4465705B2 - ガラス組成物およびガラス繊維 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はガラス繊維に使用されるガラス組成物およびガラス繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ZrO2又はTiO2は、ガラス繊維に使用されるガラスの耐アルカリ性、耐酸性又はガラスの機械的強度を向上させる成分であることが知られている。しかしながら、ZrO2又はTiO2を多量に含むと、ガラスの失透温度が高くなり、200〜800個の小孔を底に開けたブッシングと呼ばれる白金製のポットを用いて紡糸する際に、ブッシングの底に失透物が析出し、ブッシングからのガラスフィラメントの引き出しが妨げられ、糸切れが発生しやすくなる。
【0003】
また、一般にガラス繊維を工業的に大量生産するには、繊維化に適正な温度、いわゆる紡糸温度(融液粘度が103ポイズとなる温度)で紡糸する必要がある。すなわち、融液粘度で102.5ポイズとなる温度、いわゆるガラス繊維化可能温度を超える温度ではガラスフィラメントが切れて紡糸することはできない。また、紡糸温度よりも低い温度では、ガラスの粘度が高くなりすぎてブッシングからガラスフィラメントを引き出しにくくなる。
【0004】
しかし、たとえ紡糸温度であっても、ブッシングの底に失透物が析出すると、ブッシングからのガラスフィラメントの引き出しが妨げられ、糸切れが発生しやすくなる。
【0005】
したがって、ZrO2又はTiO2を多量に含むガラス繊維を、失透物が析出することなく、工業的に大量生産するためには、ガラスの失透温度(TY)が紡糸温度(TX)を越えず、かつ、その差(TX−TY)が少なくとも70℃以上となる特性を有するようにガラスの失透温度を下げることが必要となる。
【0006】
ZrO2又はTiO2を多く含有しながら、ガラスの失透温度を低下させ、紡糸温度と失透温度との差が70℃以上となるガラス組成物として、ガラスの失透性を抑制する成分であるアルカリ金属酸化物を含有させたガラス組成物(例えば、特許文献1参照)や、Nb25、La23等を含有させたガラス組成物が開示されている(例えば、特許文献2〜4参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−85767号公報
【特許文献2】
特開平10−120438号公報
【特許文献3】
特公平8−25771号公報
【特許文献4】
特許第2617632号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年北米の寒冷地方を中心に橋などの大型コンクリート構造物の老朽化が進んでおり、問題となっている。すなわち、寒冷地方では、橋に雪、雨等が降って、橋が凍結すると、融雪剤を多量に使用して、雪や氷を溶かすため、橋のコンクリート補強材として使用されている鉄筋が、融雪剤中の塩化物イオンによりさびつき、補強材としての強度が低下し、コンクリートが急激に老朽化している。
【0009】
また、日本においてもトンネル等のコンクリート壁に亀裂が入り、鉄筋がさびて、コンクリートの破片がはがれ落ちるなど、大事故の原因となる虞があることが指摘されている。
【0010】
このため、土木建築業界では、さびつきによるコンクリートの急激な老朽化を促進させる鉄筋の代替材が注目されており、例えば、ガラス繊維や、ガラス繊維を樹脂で固めたFRPロッド等がその代替材として検討されている。これらの用途に用いられるガラス繊維は、強いアルカリ性を示すコンクリートに埋没されるため、耐アルカリ性を有し、大型のコンクリート構造物を支えるための機械的強度が必要となる。
【0011】
特許文献1に開示されたガラス組成物は、耐アルカリ性及びガラスの機械的強度を維持するために、ZrO2とTiO2を多量に含有し、また紡糸時の失透を抑制するために、アルカリ金属酸化物を多量に含有している。しかし、このガラス組成物は、アルカリ金属酸化物を多量に含有するため、ガラスからアルカリ金属イオンが溶出しやすく、ガラスの構造が徐々に破壊され、ガラス繊維が強度劣化を起こすことが指摘されている。また、FRPロッドの補強材として用いる場合には、ガラスから溶出したアルカリ金属イオンによりガラス繊維とマトリックス樹脂との接着が阻害され、FRPロッドの機械的強度が低下するという問題も有している。
【0012】
また、特許文献2〜4に開示されたガラス組成物は、耐アルカリ性を向上させるために、ZrO2及びTiO2を多量に含有し、また紡糸時の失透を抑制するために、Nb25やLa23を含有する。しかし、Nb25やLa23は、非常に高価な成分であり、また、SiO2等からなるガラス骨格構造を大きく歪ませるため、ガラスの弾性率は向上するものの、ガラスが脆くなり引張強度が著しく低下する。そのため、Nb25やLa23を含有するガラス組成物からなるガラス繊維は、材料単価が高くなり、また、大きい応力の加わる大型コンクリート構造物の補強材としては、好適でない。
【0013】
本発明の目的は、耐アルカリ性及び耐酸性に優れ、紡糸時の失透を抑制でき、アルカリ金属イオンが溶出しにくく、樹脂との接着性が良好でガラス繊維強化樹脂の補強材として好適なガラス組成物及びガラス繊維を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、TiO2、ZrO2、CaO、BaO、Al23、SiO2を必須成分とし、BaO/CaOの比率を適正にし、アルカリ金属酸化物を2モル%以下に抑えることによって、耐アルカリ性及び耐酸性に優れ、紡糸時の失透を抑制でき、アルカリ金属イオンが溶出しにくく、樹脂との接着性が良好でガラス繊維強化樹脂の補強材として好適なガラス組成物及びガラス繊維が得られることを見出し、本発明として提案するものである。
【0015】
すなわち本発明のガラス組成物は、モル%で、SiO 50〜60%、Al 0.1〜10%、MgO+CaO+SrO+BaO 20〜45%、TiO 0.5〜20%、ZrO 0.1〜10%、LiO+NaO+KO 0〜1.8%、BaO/CaOがモル比で0.75〜1.45、SrO/CaOがモル比で0.3〜2.0の組成を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明のガラス繊維は、モル%で、SiO 50〜60%、Al 0.1〜10%、MgO+CaO+SrO+BaO 20〜45%、TiO 0.5〜20%、ZrO 0.1〜10%、LiO+NaO+KO 0〜1.8%、BaO/CaOがモル比で0.75〜1.45、SrO/CaOがモル比で0.3〜2.0の組成を有するガラス組成物からなることを特徴とする。
【0017】
また、本発明のガラスクロスは、モル%で、SiO 50〜60%、Al 0.1〜10%、MgO+CaO+SrO+BaO 20〜45%、TiO 0.5〜20%、ZrO 0.1〜10%、LiO+NaO+KO 0〜1.8%、BaO/CaOがモル比で0.75〜1.45、SrO/CaOがモル比で0.3〜2.0の組成を有するガラス組成物からなるガラス繊維を用いてなることを特徴とする。
【0018】
また、本発明のセメント系材料の補修材は、モル%で、SiO 50〜60%、Al 0.1〜10%、MgO+CaO+SrO+BaO 20〜45%、TiO 0.5〜20%、ZrO 0.1〜10%、LiO+NaO+KO 0〜1.8%、BaO/CaOがモル比で0.75〜1.45、SrO/CaOがモル比で0.3〜2.0の組成を有するガラス組成物からなるガラス繊維のガラスクロスを補強材として用いてなることを特徴とする。
【0019】
また、本発明のガラス繊維強化樹脂管は、モル%で、SiO 50〜60%、Al 0.1〜10%、MgO+CaO+SrO+BaO 20〜45%、TiO 0.5〜20%、ZrO 0.1〜10%、LiO+NaO+KO 0〜1.8%、BaO/CaOがモル比で0.75〜1.45、SrO/CaOがモル比で0.3〜2.0の組成を有するガラス組成物からなるガラス繊維を補強材として用いてなることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の下水管は、モル%で、SiO 50〜60%、Al 0.1〜10%、MgO+CaO+SrO+BaO 20〜45%、TiO 0.5〜20%、ZrO 0.1〜10%、LiO+NaO+KO 0〜1.8%、BaO/CaOがモル比で0.75〜1.45、SrO/CaOがモル比で0.3〜2.0の組成を有するガラス組成物からなるガラス繊維を補強材として用いてなることを特徴とする。
【0021】
また、本発明のシートモールディングコンパウンドは、モル%で、SiO 50〜60%、Al 0.1〜10%、MgO+CaO+SrO+BaO 20〜45%、TiO 0.5〜20%、ZrO 0.1〜10%、LiO+NaO+KO 0〜1.8%、BaO/CaOがモル比で0.75〜1.45、SrO/CaOがモル比で0.3〜2.0の組成を有するガラス組成物からなるガラス繊維を補強材として用いてなることを特徴とする。
【0022】
また、本発明のバルクモールディングコンパウンドは、モル%で、SiO 50〜60%、Al 0.1〜10%、MgO+CaO+SrO+BaO 20〜45%、TiO 0.5〜20%、ZrO 0.1〜10%、LiO+NaO+KO 0〜1.8%、BaO/CaOがモル比で0.75〜1.45、SrO/CaOがモル比で0.3〜2.0の組成を有するガラス組成物からなるガラス繊維を補強材として用いてなることを特徴とする。
【0023】
また、本発明のガラス繊維強化熱可塑性樹脂は、モル%で、SiO 50〜60%、Al 0.1〜10%、MgO+CaO+SrO+BaO 20〜45%、TiO 0.5〜20%、ZrO 0.1〜10%、LiO+NaO+KO 0〜1.8%、BaO/CaOがモル比で0.75〜1.45、SrO/CaOがモル比で0.3〜2.0の組成を有するガラス組成物からなるガラス繊維を補強材として用いてなることを特徴とする。
【0024】
【作用】
本発明のガラス組成物は、モル%で、SiO 50〜60%、Al 0.1〜10%、MgO+CaO+SrO+BaO 20〜45%、TiO 0.5〜20%、ZrO 0.1〜10%、LiO+NaO+KO 0〜1.8%、BaO/CaOがモル比で0.75〜1.45、SrO/CaOがモル比で0.3〜2.0の組成を有するため、耐アルカリ性及び耐酸性に優れ、紡糸時の失透を抑制でき、アルカリ金属イオンが溶出しにくく、樹脂との接着性が良好でガラス繊維強化樹脂の補強材として好適である。すなわち、TiO2とZrO2を含有するため、耐アルカリ性及び耐酸性に優れるとともに、CaOに対するBaOのモル比が適切であるため、アルカリ金属酸化物やNb25やLa23を含有させなくても、紡糸時の失透を抑制でき、失透温度が紡糸温度を超えず、その差が70℃以上となって、ガラスの繊維化が容易となり、工業的に大量生産が可能となる。また、アルカリ金属酸化物を実質的に含有しないあるいは含有しても1.8モル%以下であるため、アルカリ金属イオンがほとんど溶出しない。
【0025】
次に本発明のガラス組成物の各成分について、上記のように限定した理由を説明する。
【0026】
SiO2はガラスの骨格構造を形成する成分であり、その含有量は50〜60モル%である。50モル%よりも少ないと、ガラスの機械的強度が著しく低下し、60モル%よりも多いと、失透しやすくなりガラス繊維化が困難となるため好ましくない。
【0027】
Al23はガラスを安定化させて失透を抑制する成分であり、その含有量は、0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜7.5モル%である。0.1モル%よりも少ないと、失透しやすくなり、10モル%よりも多いと、耐アルカリ性が悪化するため好ましくない。
【0028】
MgO、CaO、SrO又はBaOのアルカリ土類酸化物は、溶融性を向上させ、また、ガラスの粘度を下げ、ガラスの繊維化を容易にする成分である。MgO、CaO、SrO及びBaOの合量は、20〜45%、好ましくは23〜40%である。これらの合量が20%よりも少ないと、溶融性が悪くなり、またガラスの粘度が高くなって、ガラスの溶融が困難になる。45%よりも多いと、失透温度が高くなり、ガラスの繊維化が困難になるため好ましくない。
【0029】
また、MgOの含有量は、0〜15%、好ましくは0〜11%、CaOが1〜15%、好ましくは4〜12.5%、SrOが0〜15%、好ましくは5.5〜11.5%、BaOが1〜15%、好ましくは5.5〜12%である。MgO、CaO、SrO又はBaOの各含有量が15%よりも多いと、失透温度が高くなり、ガラスの繊維化が困難になるため好ましくない。また、CaO、BaOの各含有量が1%よりも少ないと、溶融性が悪くなり、またガラスの粘度が高くなり、ガラスの繊維化が困難になるため好ましくない。
【0030】
TiO2は、耐アルカリ性及びガラスの機械的強度を向上させる成分である。この含有量は、0.5〜20%、好ましくは6.5〜13%である。TiO2の含有量が、0.5%よりも少ないと、ガラスの耐アルカリ性や機械的強度が得られず、20%よりも多いと、失透温度が高くなり、ガラスの繊維化が困難になるため好ましくない。
【0031】
ZrO2は、耐アルカリ性、耐酸性及びガラスの機械的強度を向上させる成分である。この含有量は0.1〜10%、好ましくは0.5〜6.5%である。ZrO2の含有量が、0.1%よりも少ないと、ガラスの耐アルカリ性、耐酸性及び機械的強度が得られず、10%よりも多いと、失透温度が高くなり、ガラスの繊維化が困難になるため好ましくない。
【0032】
Li2O、Na2O又はK2Oのアルカリ金属酸化物は、ガラスの溶融性を向上する成分であるとともに、ガラスの粘度を調整する成分であるが、これらの合量は0〜1.8%、好ましくは0〜1%である。これらの合量が1.8%を超えると、ガラスからのアルカリ金属イオンの溶出が多くなるため好ましくない。
【0033】
また、本発明のガラス組成物は、Nb25及びLa23の合量が0〜1%であり、好ましくはNb25及びLa23を実質的に含有しない方が良い。これらの合量が1%を超えると、ガラスの製造コストが高くなり、またガラスが脆くなって、引張強度が低下するため好ましくない。
【0034】
CaOに対するBaOの割合、BaO/CaOは、モル比で0.75〜1.45である。BaO/CaOがモル比で0.75よりも小さくても、もしくは1.45よりも大きくても、ガラスの失透温度が高くなり、ガラスの繊維化が困難になるため好ましくない。
【0035】
CaOに対するSrOの割合、SrO/CaOは、モル比で0.3〜2.0、好ましくは0.55〜2.0である。SrO/CaOがモル比で0.3よりも小さくても、もしくは2.0よりも大きくても、ガラスの失透温度が高くなり、ガラスの繊維化が困難になるため好ましくない。
【0036】
CaOに対するMgOの割合、MgO/CaOは、モル比で0〜2.0、好ましくは0.3〜1.6である。SrO/CaOがモル比で2.0よりも大きいと、ガラスの失透温度が高くなり、ガラスの繊維化が困難になるため好ましくない。
【0037】
23は、SiO2と同様に、ガラスの骨格構造を形成する成分であり、ガラスの粘度を低くしてガラスの溶融温度を下げ溶融性を向上させる。その含有量は、0〜10%であり、10%よりも多いと、失透しやすくなり、ガラスの繊維化が困難となるため好ましくない。
【0038】
本発明のガラス組成物は、上記した以外の成分に加え、As23、SnO2、ZnO、Sb23、F2、P25等を適宜添加できる。
【0039】
また、Fe23は、0.5%までであれば含有していても構わない。
【0040】
本発明のガラス繊維は、上記したガラス組成物からなるため、ガラス繊維強化樹脂、具体的には鉄筋代替用途等に用いられるFRPロッド、コンクリート構造物等の補修に用いられる補強材、下水管等に用いられるガラス繊維強化樹脂管等の補強材、シートモールディングコンパウンド(SMC)に用いられる補強材、バルクモールディングコンパウンド(BMC)に用いられる補強材、ガラス繊維熱可塑性樹脂の補強材として用いても、アルカリ金属イオンによってガラス繊維とマトリックス樹脂との接着が阻害されにくいため、ガラス繊維強化樹脂の初期の機械的強度が低下しにくく、酸性又はアルカリ性の環境下に長時間曝されても、機械的強度が劣化しにくくなる。
【0041】
また本発明のガラス繊維は、下水管等に用いられるガラス繊維強化樹脂管の補強材として用いる場合には、表面に、シランカップリング剤及び、エポキシ樹脂又はポリエステル樹脂を含む集束剤を塗布してなることが好ましい。
【0042】
また本発明のガラス繊維は、下水管等の補修材であるシートモールディングコンパウンドの補強材として用いられる場合には、表面に、シランカップリング剤、酢酸ビニル樹脂及びカチオン柔軟剤を含む集束剤を塗布してなることが好ましい。また、ガラス繊維強化樹脂管の補強材又はシートモールディングコンパウンドの補強材として用いられるガラス繊維のシランカップリング剤としては特に限定はないが、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が好適である。
【0043】
また本発明のガラス繊維は、台所用品、サニタリー製品、自動車用部品、電機電子部品等に使用されるバルクモールディングコンパウンドの補強材又はガラス繊維強化熱可塑性樹脂の補強材として用いられる場合には、表面にメタクリルシラン、エポキシシラン、ウレイドシラン、アミノシラン、ビニルシラン、スチリルシラン、アクリロキシシラン、クロロプロピルシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン及びイソシアネートシランの群から選択された少なくとも一種のシランカップリング剤を含む集束剤が塗布されてなると、これらのシランカップリング剤はガラス繊維の表面と接着しやすく、末端に樹脂と親和性の高い官能基が導入されるため、ガラス繊維の表面や集束剤中に含有する結束剤とも強固に結合し、ガラス繊維とマトリックス樹脂との接着性に優れ、アルカリ性成分や酸性成分がガラス繊維とマトリックス樹脂との界面に浸透しにくい。また、表面にエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、イソシアネート樹脂、アクリル樹脂、変性ポリプロピレン樹脂、酢酸ビニル樹脂及びポリエステル樹脂の群から選択された少なくとも一種の結束剤を含む集束剤が塗布されてなることが好ましい。これらの結束剤はマトリックス樹脂との接着性に優れるため、アルカリ性成分や酸性成分がガラス繊維とマトリックス樹脂との界面に浸透しにくい。
【0044】
また本発明のガラス繊維に対する集束剤の付着量は、0.1〜2.0質量%であると好ましく、0.1質量%よりも少ないとガラス繊維とマトリックス樹脂との接着性が乏しくなり、機械的強度が向上する効果が小さく、またガラス繊維強化樹脂、具体的には鉄筋代替用途等に用いられるFRPロッド、コンクリート構造物等の補修材、下水管等のガラス繊維強化樹脂管、シートモールディングコンパウンド(SMC)、バルクモールディングコンパウンド(BMC)、ガラス繊維熱可塑性樹脂がアルカリ性溶液や酸性溶液に曝された場合に、アルカリ性溶液や酸性溶液が浸透するのを抑制する効果が小さくなる。さらにガラスモノフィラメントの保護効果が小さくなるため、ガラスクロス、ガラス繊維強化樹脂管、シートモールディングコンパウンド、バルクモールディングコンパウンド、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂を製造する際に、ガラスモノフィラメント破断によるトラブルが発生しやすい。また、2.0質量%より多くても、上記した効果が向上せず、経済性や省資源の観点から好ましくないからである。
【0045】
本発明で使用する集束剤には、シランカップリング剤や結束剤の他に、動植物油、パラフィンワックス、潤滑剤、帯電防止剤等を必要に応じて添加してもよい。
【0046】
本発明のガラスクロスは、上記したガラス繊維を用いてなるため、耐アルカリ性及び耐酸性に優れ、アルカリ金属イオンが溶出しにくく、樹脂との接着性が良好でセメント系材料の補修材における補強材として好適である。
【0047】
本発明のセメント系材料の補修材は、上記したガラスクロスを補強材として用いてなるため、初期の機械的強度が低下しにくく、アルカリ性の環境下、すなわちセメント中のアルカリ成分に長時間曝されても、機械的強度が劣化しにくくなる。尚、セメント系材料とは、コンクリートやモルタルを指し、補修材とは、コンクリート又はモルタルのひび割れを補修するために、樹脂モルタルやエポキシ樹脂、アクリル樹脂等のマトリックス材中にガラスクロスを含浸させたものである。
【0048】
本発明のガラス繊維強化樹脂管は、上記したガラス繊維を補強材として用いてなるため、初期の機械的強度が低下しにくく、酸性又はアルカリ性の環境下に長時間曝されても、機械的強度が劣化しにくくなる。
【0049】
また、ガラス繊維強化樹脂管の代表例としては、下水管がある。下水管は、下水中の有機物が溶存酸素を消費して分解されることによって生成された硫化水素が空気中の好気性硫黄酸化細菌によって硫酸化し、下水が酸性化するため、高い耐酸性が要求されている。本発明の下水管は、上記したガラス繊維を補強材として用いてなるため、下水が酸性化しても腐食が進行しにくく、下水管が割れて漏水する虞がなく耐久性が高い。また、初期の機械的強度も高く、耐アルカリ性に優れる。
【0050】
また本発明のガラス繊維強化樹脂管において用いられるマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂のいずれを用いても構わない。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等が使用でき、熱可塑性樹脂としてはポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスルホン樹脂等が使用できる。
【0051】
また、ガラス繊維強化樹脂管のガラス繊維の含有率は、50〜80質量%であると好ましい。
【0052】
また、本発明のガラス繊維強化樹脂管は、ガラス繊維からなる複数本のガラスロービングを1本に集束したガラスロービングの束を樹脂槽に浸漬して樹脂を含浸させ、回転マンドレルに巻きつけて熱硬化させる、いわゆるフィラメントワインディング法や、パイプ状の型を回転させ、その内部に注ぎ込んだ、チョップドストランド、マット、クロス等の形状をしたガラス繊維とマトリックス樹脂とを遠心力によってパイプ状の型内面に付着させ熱硬化させる、いわゆる遠心法によって作製することができる。
【0053】
また、本発明のシートモールディングコンパウンドは、上記したガラス繊維を補強材として用いてなるため、初期の機械的強度が低下しにくく、酸性又はアルカリ性の環境下に長時間曝されても、機械的強度が劣化しにくくなる。特に下水管の補修材(管ライニング材)として用いられる場合には、下水中の有機物が溶存酸素を消費して分解されることによって生成された硫化水素が空気中の好気性硫黄酸化細菌によって硫酸化し下水が酸性化しても腐食されにくく、補修面が割れて漏水する虞がない。
【0054】
また、本発明のシートモールディングコンパウンドのマトリックス樹脂は、特に限定はないが、耐酸性の高い不飽和ポリエステル樹脂であると好ましく、収縮低減剤、無機充填材、硬化剤等を含む。
【0055】
また、本発明のシートモールディングコンパウンドのガラス繊維の含有量は、20〜70質量%であると好ましい。
【0056】
本発明のバルクモールディングコンパウンドは、上記したガラス繊維を補強材として用いてなるため、初期の機械的強度が低下しにくく、酸性又はアルカリ性の環境下に長時間曝されても、機械的強度が劣化しにくい。そのため、台所用品、サニタリー製品、自動車用部品、電機電子部品等の用途に好適である。
【0057】
マトリックス樹脂としては、酸、アルカリに対する耐腐食性が高い不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂が好ましい。
【0058】
本発明のガラス繊維強化熱可塑性樹脂は、上記したガラス繊維を補強材として用いてなるため、初期の機械的強度が低下しにくく、酸性又はアルカリ性の環境下に長時間曝されても、機械的強度が劣化しにくい。そのため、台所用品、サニタリー製品、自動車用部品、電機電子部品等の用途に好適である。
【0059】
マトリックス樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアリーレンサルファイド樹脂、液晶ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂が使用できる。特に、ポリプロピレン樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、又はポリアリーレンサルファイド樹脂であると、耐酸性及び耐アルカリ性に優れ好ましい。
【0060】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。
【0061】
表1〜3は本発明のガラス繊維の実施例A〜Pを、表4はガラス繊維の比較例Q〜Vを示す。また表5、6は、本発明のセメント系材料の補修材の実施例1〜9を、表7はセメント系材料の補修材の比較例1〜4を示す。また表8、9は本発明のガラス繊維強化樹脂管の実施例10〜18を、表10はガラス繊維強化樹脂管の比較例5〜8を示す。また表11、12は本発明のシートモールディングコンパウンドの実施例19〜27を、表13はシートモールディングコンパウンドの比較例9〜12を示す。また表14、15は本発明のガラス繊維強化熱可塑性樹脂の実施例28〜37を、表16はガラス繊維強化熱可塑性樹脂の比較例13〜16を示す。
【0062】
【表1】
Figure 0004465705
【0063】
【表2】
Figure 0004465705
【0064】
【表3】
Figure 0004465705
【0065】
【表4】
Figure 0004465705
【0066】
表1〜4の実施例A〜P及び比較例Q〜Vのガラス繊維は、以下のようにして作製した。
【0067】
まず表中のガラス組成となるように秤量し調合したガラス原料バッチを白金製坩堝に入れ、電気炉を用いて1500℃で約4時間溶融した。尚、均質なガラスを得るために、ガラス溶融の途中で攪拌棒を用いてガラス融液を攪拌した。その後、ガラス融液をカーボン治具に流し込むことによってガラス成形体を得た。
【0068】
次いで、上記のガラス成形体をガラス繊維製造炉に投入後、紡糸温度で紡糸して繊維径13μmのガラスフィラメントを800本集束してガラスストランド(ガラス繊維)を作製した。
【0069】
【表5】
Figure 0004465705
【0070】
【表6】
Figure 0004465705
【0071】
【表7】
Figure 0004465705
【0072】
表5〜7の実施例1〜9及び比較例1〜4のガラス繊維強化樹脂板は、以下のようにして作製した。
【0073】
表面に澱粉、潤滑剤、界面滑性剤、カチオン柔軟剤及び防腐剤を含有する集束剤を、アプリケーターを用いてその付着量が1.0質量%となるように塗布した繊維径13μmのガラスフィラメントを400本集束したガラスストランドを、紙管に巻き取ってケーキを作製した。ケーキの外層からガラスストランドを解舒し、0.7Zの撚りを掛けながら風乾したガラスヤーンをボビンに巻取った。次に、ボビンの外層から解舒したガラスヤーンを用いて、エアージェット織機で平織りし、経糸と径糸が同密度の230g/m2のガラスクロスを作製した。このガラスクロスを350〜400℃でヒートクリーニングし、有機シラン溶液に浸漬し、120℃で数分間乾燥し、有機シランが1質量%程度塗布されたガラスクロスを得た。最後に、このガラスクロスをビニルエステル樹脂(昭和高分子製RIPOXY R802)に含浸させ、ガラス繊維の含有量が15体積%となるように調整し、JIS K 7054に記載の形状と寸法を有する実施例1〜9及び比較例1〜4のガラス繊維強化樹脂板を得た。尚このガラス繊維強化樹脂板は、セメント系材料の補修材としての性能を確かめるために調整されたものである。
【0074】
【表8】
Figure 0004465705
【0075】
【表9】
Figure 0004465705
【0076】
【表10】
Figure 0004465705
【0077】
表8〜10の実施例10〜18及び比較例5〜8のガラス繊維強化樹脂管は、以下のようにして作製した。
【0078】
表面にメタクリルシラン及びエポキシ樹脂を含有する集束剤を、アプリケーターを用いてその付着量が0.5質量%となるように塗布した繊維径13μmのガラスフィラメントを800本集束したガラスストランドを、紙管に巻き取ってケーキを作製した。ケーキの外層から解舒した8本のガラスストランドを束ねてガラスロービングを作製した。このガラスロービングを、ビニルエステル樹脂(昭和高分子製RIPOXY R802)を用いてフィラメントワインディング成形法により、ガラス繊維の含有量が45体積%となるように調整し、内径が80mm、肉厚が3mmの実施例10〜18及び比較例5〜8のガラス繊維強化樹脂管を得た。
【0079】
【表11】
Figure 0004465705
【0080】
【表12】
Figure 0004465705
【0081】
【表13】
Figure 0004465705
【0082】
表11〜13の実施例19〜27及び比較例9〜12のSMC板は、以下のようにして作製した。
【0083】
表面にメタクリルシラン及び酢酸ビニル樹脂を含有する集束剤を、アプリケーターを用いてその付着量が1.0質量%となるように塗布した繊維径13μmのガラスフィラメントを200本集束したガラスストランドを、紙管に巻き取ってケーキを作製した。ケーキの外層から解舒したガラスストランドを複数本束ねて4000texのガラスロービングを作製した。このガラスロービングを、カットスピード50m/分で1インチの長さに切断したガラスチョップドストランドを、ガラス繊維の含有量が16体積%となるように、75質量部の不飽和ポリエステル樹脂、25質量部の収縮低減剤、60質量部の炭酸カルシウム、60質量部の水酸化アルミニウム、5質量部の顔料、1質量部の硬化剤及び0.03質量部の重合禁止剤からなるシートモールディング用樹脂組成物に常法により含浸させた後、40℃で10時間熟成させ、140℃、9MPaの圧力で4分間プレス成型し、切断加工することによって、厚さが3mm、幅が25mm、長さが80mmの実施例19〜27及び比較例9〜12のSMC板を得た。
【0084】
【表14】
Figure 0004465705
【0085】
【表15】
Figure 0004465705
【0086】
【表16】
Figure 0004465705
【0087】
表14〜16の実施例28〜36及び比較例13〜16のBMC板は、以下のようにして作製した。
【0088】
表面に、アミノシラン及び酢酸ビニル樹脂を含有する集束剤を、アプリケーターを用いて、その付着量が0.5質量%になるように塗布し、繊維径10μmのガラスフィラメントを800本集束したガラスストランドを、紙管に巻き取ってケーキを作製した。このケーキからガラスストランドを解舒しながら、6mmの長さに切断し、乾燥することによってガラスチョップドストランドを得た。さらにこのガラスチョップドストランドを、ガラス繊維の含有量が10体積%となるように、65質量部の不飽和ポリエステル樹脂、34質量部の収縮低減剤、250質量部の炭酸カルシウム、5質量部の顔料、1.5質量部の硬化剤及び0.08質量部の重合禁止剤からなるバルクモールディング用樹脂組成物と、ニーダーを用いて混練、熟生後、射出成型により、実施例28〜36及び比較例13〜16のBMC板を得た。
【0089】
【表17】
Figure 0004465705
【0090】
【表18】
Figure 0004465705
【0091】
【表19】
Figure 0004465705
【0092】
表17〜19の実施例37〜46及び比較例17〜20のFRTP板は、以下のようにして作製した。
【0093】
表面に、表17〜19に示す集束剤を、アプリケーターを用いて表中の付着量になるように塗布し、繊維径13μmのガラスフィラメントを800本集束したガラスストランドを、紙管に巻き取ってケーキを作製した。このケーキからガラスストランドを解舒しながら、3mmの長さに切断し、乾燥することによってガラスチョップドストランドを得た。さらにこのガラスチョップドストランドと表に示すマトリックス樹脂とを、押出機を用いて混練し、ペレタイザーを用いてペレット化した後、このペレットを射出成形することによって、実施例37〜46及び比較例17〜20のFRTP板を作製した。尚、FRTP板中のガラス繊維の含有量は、実施例37〜41及び比較例17、18では13体積%であり、実施例42〜46及び比較例19、20では26体積%であった。また、混練及び射出成形の温度は、実施例37〜41及び比較例17、18においては、共に250℃であり、実施例42〜46及び比較例19、20においては、共に320℃であった。
【0094】
表1〜3から明らかなように、実施例A〜Pのガラス繊維は、多量のZrO2やTiO2を含有するにもかかわらず、CaOに対するBaOのモル比、BaO/CaOが適切であるため、アルカリ金属酸化物やNb25やLa23をほとんど含有させなくても、紡糸時の失透を抑制でき、失透温度(TY)が紡糸温度(TX)を超えず、その差(TX−TY)が70℃以上となった。また、ZrO2やTiO2を多く含有しているため耐アルカリ性や耐酸性に優れ、Nb25やLa23を含有しないため、引張強度が高かった。また、アルカリ金属酸化物が2%以下であるため、アルカリ溶出が少なかった。そのため、実施例1〜9のガラス繊維樹脂板、実施例10〜18のガラス繊維樹脂管、実施例19〜27のSMC板、実施例28〜36のBMC板及び実施例37〜46のFRTP板は、初期の機械的強度が高く、耐アルカリ性溶液及び耐酸性溶液に長期間浸漬した後の機械的強度の低下が抑制されていた。
【0095】
それに対し、比較例Qのガラス繊維は、アルカリ金属酸化物を7%も含有しているため、紡糸温度と失透温度の差は大きいものの、ガラスからのアルカリ溶出量が多かった。そのため、比較例1のガラス繊維樹脂板、比較例5のガラス繊維樹脂管、比較例9のSMC板及び比較例13のBMC板は、初期の機械的強度が低かった。また、比較例Rのガラス繊維は、Nb25やLa23を含有しているため、紡糸温度と失透温度の差は大きいものの、ガラスの引張強度が低かった。そのため、比較例2のガラス繊維樹脂板、比較例6のガラス繊維樹脂管、比較例10のSMC板及び比較例14のBMC板は、初期の機械的強度が低かった。比較例Sのガラス繊維は、BaO/CaOがモル比で0.75よりも小さく、また比較例Tのガラス繊維は、BaO/CaOが1.45よりも大きいため、失透温度が紡糸温度よりも高かく、紡糸できなかった。比較例Uのガラス繊維は、ZrO2を含有していないため、耐アルカリ性及び耐酸性が悪かった。そのため、比較例3のガラス繊維樹脂板、比較例7のガラス繊維樹脂管、比較例11のSMC板、比較例15のBMC板及び比較例17、19のFRTP板は、耐アルカリ性溶液及び耐酸性溶液に長期間浸漬した後の機械的強度が著しく低下していた。比較例Vのガラス繊維は、アルカリ金属酸化物を18.4%も含有しているため、ガラスからのアルカリ溶出量が多かった。そのため、比較例4のガラス繊維樹脂板、比較例8のガラス繊維樹脂管、比較例12のSMC板、比較例16のBMC板及び比較例18、20のFRTP板は、初期の機械的強度が低く、耐アルカリ性溶液及び耐酸性溶液に長期間浸漬した後の機械的強度も著しく低下していた。
【0096】
尚、表中の各特性は、次のようにして求めた。
【0097】
紡糸温度(融液粘度が103ポイズとなる温度)は、各ガラス成形体の一部を切り出して再度白金坩堝内で加熱溶融し、白金球引き上げ法により測定した。
【0098】
失透温度は、各ガラス成形体の一部を切り出して粉砕し、297〜500μmの粒度にしたガラス粉末を充填した白金製の容器を温度勾配炉に入れ、16時間保持する。その後、これを取り出し、顕微鏡により析出結晶を観察し、結晶が析出した最高温度である失透温度を測定した。
【0099】
耐アルカリ性及び耐酸性は、各ガラス成形体の一部を切り出して粉砕し、297〜500μmの粒度にしたガラス粉末を、耐アルカリ性の場合は10質量%のNaOH水溶液100ml中に浸漬し、耐酸性の場合は10質量%のHCl水溶液100ml中に浸漬し、80℃で16時間振とうした際の質量減少率(質量%)によって評価した。
【0100】
アルカリ溶出量は、JIS R 3502に基づいて測定した。
【0101】
ガラス繊維の引張強度は、上記したガラスストランドを用い、JIS R 3420に基づいて測定した。
【0102】
また、ガラス繊維強化樹脂板の常態での引張強度、1Nの水酸化ナトリウム水溶液に40℃で30日間浸漬した後の引張強度及び、5質量%の硫酸水溶液に40℃で30日間浸漬した後の引張強度は、JIS K 7054に基づき、またガラス繊維強化樹脂管の常態での管体強度、1Nの水酸化ナトリウム水溶液に40℃で30日間浸漬した後の管体強度及び、5質量%の硫酸水溶液に40℃で30日間浸漬した後の管体強度は、JIS K 6911に基づき、また、SMC板の常態での曲げ強度、1Nの水酸化ナトリウム水溶液に40℃で30日間浸漬した後の曲げ強度及び、10質量%の硫酸水溶液に60℃で1000時間浸漬した後の曲げ強度は、JIS K 7055に基づき、また、BMC板の常態での曲げ強度、25質量%水酸化ナトリウム水溶液に25℃で30日間浸漬した後の曲げ強度及び、80質量%の硫酸水溶液に25℃で100日間浸漬した後の曲げ強度は、JIS K 6911に基づき、また、FRTP板の常態での引張強度、10質量%の水酸化ナトリウム水溶液に80℃で500時間又は1000時間浸漬した後の引張強度及び、10質量%の硫酸水溶液に80℃で500時間又は1000時間浸漬した後の引張強度は、ASTM D 638に基づきインストロン万能試験機4204を用いて測定した。尚、ガラス繊維強化樹脂板は、強度測定装置に固定するためのつかみ部と、アルカリ性溶液又は酸性溶液に浸漬する平行部分を有する。またガラス繊維強化樹脂板、ガラス繊維強化樹脂管、SMC板、BMC板及びFRTP板は、アルカリ性溶液又は酸性溶液に浸漬した後、これらの溶液から取り出し蒸留水で洗浄後、1日間デシケータ中で乾燥させた後に強度試験に供した。
【0103】
【発明の効果】
本発明のガラス組成物は、耐アルカリ性及び耐酸性に優れ、紡糸時の失透を抑制でき、アルカリ金属イオンが溶出せず、ガラスの機械的強度が高い。
【0104】
また、本発明のガラス繊維は、ガラス繊維強化樹脂の補強材として用いても、アルカリ金属イオンによってガラス繊維とマトリックス樹脂との接着が阻害されにくいため、ガラス繊維強化樹脂の初期の機械的強度が低下しにくく、酸性又はアルカリ性の環境下に長時間曝されても、機械的強度が劣化しにくくなる。
【0105】
また本発明のガラスクロスは、耐アルカリ性及び耐酸性に優れ、アルカリ金属イオンが溶出しにくく、樹脂との接着性が良好でセメント系材料の補修材における補強材として好適である。
【0106】
また本発明のセメント系材料の補修材は、初期の機械的強度が低下しにくく、アルカリ性の環境下、すなわちセメント中のアルカリ成分に長時間曝されても、機械的強度が劣化しにくくなる。
【0107】
また本発明のガラス繊維強化樹脂管は、初期の機械的強度が低下しにくく、酸性又はアルカリ性の環境下に長時間曝されても、機械的強度が劣化しにくくなる。
【0108】
また、本発明の下水管は、下水が酸性化しても腐食が進行しにくく、下水管が割れて漏水する虞がなく耐久性が高い。また、初期の機械的強度も高く、耐アルカリ性に優れる。
【0109】
また、本発明のシートモールディングコンパウンドは、初期の機械的強度が低下しにくく、酸性又はアルカリ性の環境下に長時間曝されても、機械的強度が劣化しにくくなる。
【0110】
本発明のバルクモールディングコンパウンドは、初期の機械的強度が低下しにくく、酸性又はアルカリ性の環境下に長時間曝されても、機械的強度が劣化しにくい。そのため、台所用品、サニタリー製品、自動車用部品、電機電子部品等の用途に好適である。
【0111】
本発明のガラス繊維強化熱可塑性樹脂は、初期の機械的強度が低下しにくく、酸性又はアルカリ性の環境下に長時間曝されても、機械的強度が劣化しにくい。そのため、台所用品、サニタリー製品、自動車用部品、電機電子部品等の用途に好適である。

Claims (15)

  1. モル%で、SiO 50〜60%、Al 0.1〜10%、MgO+CaO+SrO+BaO 20〜45%、TiO 0.5〜20%、ZrO 0.1〜10%、LiO+NaO+KO 0〜1.8%、BaO/CaOがモル比で0.75〜1.45、SrO/CaOがモル比で0.3〜2.0の組成を有するガラス組成物。
  2. モル%で、MgOを0〜15%、CaOを1〜15%、SrOを0〜15%、BaOを1〜15%含有する請求項1に記載のガラス組成物。
  3. モル%で、NbとLaの合量が0〜1%である請求項1又は2に記載のガラス組成物。
  4. MgO/CaOがモル比で0〜2.0である請求項1〜のいずれかに記載のガラス組成物。
  5. ガラス繊維用であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のガラス組成物
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のガラス組成物からなるガラス繊維。
  7. ガラス繊維強化樹脂の補強材として用いてなる請求項6に記載のガラス繊維。
  8. ガラス繊維強化熱可塑性樹脂の補強材として用いてなる請求項6に記載のガラス繊維。
  9. 請求項6又は7に記載のガラス繊維を用いてなるガラスクロス。
  10. 請求項9に記載のガラスクロスを補強材として用いてなるセメント系材料の補修材。
  11. 請求項6又は7に記載のガラス繊維を補強材として用いてなるガラス繊維強化樹脂管。
  12. 請求項6又は7に記載のガラス繊維を補強材として用いてなる下水管。
  13. 請求項6又は7に記載のガラス繊維を補強材として用いてなるシートモールディングコンパウンド。
  14. 請求項6又は7に記載のガラス繊維を補強材として用いてなるバルクモールディングコンパウンド。
  15. 請求項6〜8のいずれかに記載のガラス繊維を補強材として用いてなるガラス繊維強化熱可塑性樹脂。
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