JP4465059B2 - 無機質発泡体パネルの成形装置及びそれを用いた無機質発泡体パネルの製造方法 - Google Patents

無機質発泡体パネルの成形装置及びそれを用いた無機質発泡体パネルの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無機質パネルの製造方法に関するものであり、より詳しくは、独立気泡を有する外観の優れた無機発泡体を製造し得るようにした無機質発泡体パネルの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
建築物の外壁や屋根などに用いられる無機質発泡体パネルとしての無機発泡体の製造方法には、従来、特公平6−15428号公報に記載されたようなものがある。
【0003】
上記公報に記載された無機発泡体の製造方法では、要するに、SiO2−Al23系の反応性無機質粉体やアルカリ金属珪酸塩の水溶液を含む硬化性無機質材料に発泡剤を加えてバッチミキサーなどで混合・混練し、得られた混練物を所定の雌型に注入すると共に雌型に雄型を嵌合装着し、型内に混練物を発泡充填させた後、型ごと熱エネルギーを付与し脱水縮重合反応を起こさせて硬化させ、得られた成形体を脱型して乾燥させることにより、最終的に無機発泡体を得るようにしている。
【0004】
このような無機発泡体の製造方法では、原料の混合時や注型時に巻き込んだ空気によって型に対する充填不良が生じるなどにより表面に欠陥のある無機発泡体ができてしまい、製品の外観が損なわれることとなるので、発泡開始後に型内の混練物に振動を与えて、充填不良をなくし、外観を向上させるようにすることが行われている。
【0005】
しかしながら、上記従来の無機発泡体の製造方法には、以下のような問題があった。即ち、充填不良によってできる表面の欠陥を除去するために、従来は、発泡開始後に型内の混練物に振動を与えるようにしているが、このように、発泡開始後に型内の混練物に振動を与えた場合、発泡によって発生した気泡どうしが振動により結合されて、気泡の独立性が損なわれてしまうため、外観の良好な無機発泡体が製造できないという問題が生じていた。
【0006】
そこで、本出願人は、硬化性無機質材料を発泡・硬化させて無機発泡体を製造する工程において、混合した硬化性無機質材料が発泡を開始する以前に硬化性無機質材料に振動を与える際、製造される無機発泡体の面延設方向に沿って振動を与える無機発泡体の製造方法を提案した(特願平10−00981号明細書参照)。
【0007】
このように構成されたものでは、混合された硬化性無機質材料の発泡が開始される以前に硬化性無機質材料に、例えば、板体の場合、板の表面や裏面に略平行な面内の方向で、該板体の厚み方向に略直交する面延設方向に沿って振動が与えられて、発泡によって発生した気泡どうしが、振動により結合されずに独立気泡を維持させながら、無機発泡体の表面を均して、充填不良を解消できる。
【0008】
また、面延設方向に沿って大きな振幅が与えられても、硬化性無機質材料を充填する型枠体に流動する硬化性無機質材料が堰き止められて、流出する虞が少ない。しかも、振動より面延設方向に沿わせて硬化性無機質材料が略均一量に分配されて効率よく表面の均しが完了するので、気泡の結合に必要な時間を与えずに、振動を終了させることができる。これにより、無機発泡体の外表面に露呈する気泡は、独立気泡と略なるため、良好な外観品質を得ることができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この出願に記載された製造方法では、要するに加飾型の凹凸に材料が衝突して干渉するように振動を与えることで、注型時に加飾型と材料との間に閉じこめられた(巻き込まれた)気泡の除去を行わせるというものである。
【0010】
この気泡の除去がなされない場合には、上記気泡によって型に対する充填不良が生じるなど、表面に欠陥のある無機発泡体が出来てしまい、製品の外観が損なわれる。
【0011】
本発明は、上述の実情に鑑み、外観の優れた無機発泡体を製造し得るようにした無機質発泡体パネルの成形装置及びそれを用いた無機質発泡体パネルの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、発泡剤を含んだ硬化性無機質材料を成形型に供給して、該硬化性無機質材料を硬化させて板状の無機質発泡体パネルを形成するための成形装置であって、前記成形型は、前記硬化性無機質材料が上方から内部に注型される加飾型を備え、前記加飾型の内部には、水平方向に凹凸模様が形成された加飾面を有し、前記加飾型の内部に注型された前記硬化性無機質材料の硬化が始まる以前に、前記加飾型の上方を開放した状態で前記成形型を水平方向に加振することにより、前記加飾面の凸部が前記硬化性無機質材料を掻き分けて前記硬化性無機質材料自体に上向きの渦流動を発生させて前記硬化性無機質材料と前記加飾面との間に閉じ込められている気泡を剥離する加振装置を備えたことを特徴とする無機質発泡体パネルの成形装置である。
【0015】
請求項に記載の発明は、前記成形型に高周波微振動を与える高周波微振動発生装置を前記加振装置と併用可能としたことを特徴とする請求項に記載の無機質発泡体パネルの成形装置である。
【0016】
請求項に記載の発明は、前記成形型に温度調整装置を前記加振装置と併用可能とし、当該温度調整装置は、前記硬化性無機質材料の温度を、前記硬化性無機質材料の粘度が低下して前記気泡が球状になるように調節することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無機質発泡体パネルの成形装置である。
【0017】
請求項に記載の発明は、発泡剤を含んだ硬化性無機質材料を成形型に供給して、該成形型内の硬化性無機質材料に上向きの渦流動を発生させ、しかる後、該硬化性無機質材料を硬化させて板状の無機質発泡体パネルに成形することを特徴とする無機質発泡体パネルの製造方法である。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記成形型は、凹凸模様を有する加飾面を重力方向上方に向けて配置された成形型であり、前記渦流動充填された前記硬化性無機質材料の重力方向上方が開放された状態で前記成形型に水平方向の振動を与えることにより発生させることを特徴とする請求項4に記載の無機質発泡体パネルの製造方法である。
【0019】
請求項に記載の発明は、前記渦流動の発生と同時に、前記硬化性無機質材料に高周波微振動を与えることを特徴とする請求項又は請求項に記載の無機質発泡体パネルの製造方法である。
【0020】
請求項に記載の発明は、前記渦流動の発生と同時に、前記硬化性無機質材料の温度を、前記硬化性無機質材料の粘度が低下して前記気泡が球状になるように調節することを特徴とする請求項〜請求項のいずれか1項に記載の無機質発泡体パネルの製造方法である。
【0023】
請求項に記載の発明は、前記成形型は、凹凸模様を有する加飾面を重力方向上方に向けて傾斜配置された成形型であり、前記渦流動前記成形型に供給された前記硬化性無機質材料の重力方向上方が開放された状態で前記成形型に水平方向の振動を与えることにより発生させると共に、前記振動により重力方向に移動した前記硬化性無機質材料を重力方向に逆らって前記加飾面に押し付けながら塗り上げることを特徴とする請求項4に記載の無機質発泡体パネルの製造方法である。
【0024】
【作用】
請求項1又は請求項に記載の発明によれば、成形型の内面は、硬化以前の段階で硬化性無機質材料の流動がおこる。これにより、この流動する硬化性無機質材料と加飾面とが接触することになり、これにより加飾面の気泡は取り除かれ、しかる後硬化反応されて外観の良好な無機質発泡体パネルを製造することができる。
【0025】
さらに請求項又は請求項に記載の発明によれば、この流動は、渦流動であるので、加飾面に取り込まれた気泡の除去が効率的に行える。
【0026】
請求項又は請求項に記載の発明によれば、上方が開口された成形型で加振させることにより、硬化性無機質材料の降伏値をまたぐような繰り返しの力を加えることにより渦流動を発生させることができる。
【0027】
請求項又は請求項に記載の発明によれば、硬化性無機質材料に高周波微振動を与えることにより硬化性無機質材料の粘性を低めることができるので、渦流動と併用することにより、気泡の除去を一層効率的に行うことができる。
【0028】
請求項又は請求項に記載の発明によれば、硬化性無機質材料の温度を調節することにより硬化性無機質材料の粘性を低めることができるので、渦流動と併用することにより、気泡の除去を一層効率的に行うことができる。
【0030】
請求項に記載の発明によれば、型が傾斜されていた状態で加振しても、硬化性無機質材料が加飾面から脱落することがない。また、この塗り上げにより、加振では渦流動が発生しにくい領域の硬化性無機質材料の流動を引き起こすことにより、加飾面の全領域での硬化性無機質材料の流動により、模様の凹凸が少ない場合も含めて良好な外観の無機質発泡体パネルを製造することができる
【0031】
【発明の実施の形態】
本発明の無機質発泡体パネルは、図1に示すように、原料となる硬化性無機質材料をミキサーなどで混合/混練する硬化性無機質材料の調整工程と、凹凸模様の付された加飾型が内部に設置された型枠へミキサーから硬化性無機質材料を充填する注型工程と、型枠へ注型された材料へ加振手段により振動を付与して加飾面の気泡除去を行わせる振動付与工程と、型枠へ上型を取り付けて材料を加熱炉で加熱して硬化させる加熱硬化工程と、硬化された硬化体を脱型する脱型工程と、脱型された硬化体を乾燥炉で乾燥させる乾燥工程の各工程を経て製造される。以下、本発明の実施の形態をこの工程図に従い説明する。
[硬化性無機質材料]
本発明における硬化性無機質材料としては、注型(充填)可能な材料であって、硬化反応を伴い無機質発泡体としての無機質パネル(無機質発泡体パネル)を製造できる材料であれば、特には限定されない。
【0032】
この実施の形態では、得られた無機質発泡体パネルの機械的強度、耐熱性、耐久性、外観などの観点から、SiO及びAlを含有する反応性粉体と、アルカリ金属珪酸塩と、水とを含む硬化性無機質材料を用いた。
[硬化性無機質材料に含まれる各成分例]
SiO及びAlを含有する反応性粉体(A)としては、SiOを10重量%〜90重量%の範囲で、Alを90重量%〜10重量%の範囲で含有するものが好適に使用される。小割合、例えば10重量%程度以下の不純物を含んでいてもよい。
【0033】
このような反応性粉体としては、フライアッシュ、メタカオリン、カオリン、ムライト、コランダム、アルミナ系研磨材を製造する際のダスト、粉砕焼成ボーキサイト等が例示できるが、組成と粒度が適当であればこれらに限定されるものではない。SiO2とAl23とで100重量%となる反応性粉体(A)は、例えば、合成により製造される。
【0034】
このような粉体としては、例えば、(a)粒径が20μm以下の粉体80重量%以上を含有するフライアッシュ、(b)400°C〜1000°Cの範囲の温度で焼成された粒径が20μm以下の粉体80重量%以上含有するフライアッシュ、(c)フライアッシュ又は粘土を溶融し、気体中で噴霧することによって得られた無機質粉体、(d)粘土に0.1kwh/kg〜30kwh/kg程度の機械的エネルギーを作用させることにより得られた無機質粉体、(e)(d)の無機質粉体を更に100°C〜750°Cで加熱することにより得られた無機質粉体、(f)メタカオリンよりなる群より選ばれる1種以上の無機質粉体が挙げられる。
【0035】
アルカリ金属珪酸塩(B)とは、一般式M2 O・nSiO2 (ここでMはK、Na、Liから選択される1種又は2種以上の金属であり、nは正数を示す。)で表される塩である。ここで、好ましいnの値は0.1〜8の範囲であり、さらに好ましくは0.5〜3、特に好ましくは0.5〜2.5の範囲である。nの値が0.1より小さいと得られた成形体の機械的強度が低く、一方、nが8を越えて大きくなると、アルカリ金属珪酸塩水溶液がゲル化を起こしやすく、粘度が急激に上昇するため、無機質粉体との混合が困難になる恐れがある。
【0036】
アルカリ金属珪酸塩(B)はそのまま配合されてもよいが、水に溶解された水溶液で添加されるのが好ましい。ここで、この水溶液濃度は特には限定されないが、薄くなると無機質粉体との反応性が低下し、一方、濃くなると固形分が生じやすくなるので、1重量%以上であることが好ましく、通常1重量%〜70重量%の範囲が用いられる。
【0037】
ここで、アルカリ金属珪酸塩の水溶液を得る方法は、通常の方法がそのまま採用される。例えば、アルカリ金属珪酸塩(B)をそのまま水に溶解してもよい。また、アルカリ金属水酸化物水溶液を別途に調製し、この水溶液に珪砂、珪石粉などのSiO2 成分をnが所定値となるように溶解してもよい。
【0038】
このようなアルカリ金属珪酸塩(B)は、通常、反応性粉体(A)100重量部に対して0.2重量部〜450重量部の範囲で配合される。アルカリ金属珪酸塩(B)の配合量が少ないと反応に必要なアルカリ量が少なすぎるため、硬化が充分に進行されず、一方、この配合量が多くなると硬化剤が多量となるため、得られる発泡体の耐水性が低下する。好ましい配合量は反応性粉体100重量部に対して、10重量部〜350重量部の範囲、さらに好ましくは20重量部〜250重量部の範囲である。
【0039】
この硬化性無機質材料には水が必須成分として配合される。水の配合量は特には制限されないが、通常は、反応性粉体100重量部に対して10重量部〜1500重量部の範囲である。配合される水の量が少ないと充分に硬化が進行されないばかりか、混合も困難となる。一方、水の配合量が必要以上に多くなると成形体の強度が低下しやすくなる。好ましい水の配合量は、反応性粉体100重量部に対して10重量部〜1000重量部の範囲、さらに好ましくは10重量部〜500重量部の範囲である。この水は、独立して添加されてもよいが、上述したアルカリ金属珪酸塩水溶液の形で添加されるのがよい。
【0040】
本発明において無機質発泡体パネル(成形体)は、発泡剤を含んで形成された発泡成形体であってもよい。このような発泡成形体は断熱性等が向上して高付加価値化させたものである。このために、上述の硬化性無機質材料には、発泡剤が必要に応じ発泡助剤と共に添加される。
【0041】
発泡剤としては、均一な発泡を与えるものが好ましいが、特には限定されない。過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過ほう酸ナトリウム等の過酸化物やMg、Ca、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Ga、Sn、Si、フェロシリコン等の金属粉末が例示される。価格、安全性、入手の容易さ、混合のし易さを考慮すると、これらの発泡剤の中で、過酸化水素、アルミニウム粉末が好ましい。これらの発泡剤は、単独でも2種以上混合しても用いられる。
【0042】
発泡剤の配合量は、目的とする発泡体の密度(発泡倍率)によって決定される。充分な発泡成形体を得るためには、この発泡剤は反応性粉体100重量部に対して0.01重量部〜10重量部の範囲で用いることが好ましい。発泡剤の配合量が少なすぎると発泡倍率が低すぎて充分な発泡成形体を得ることができず、一方、発泡剤の配合量が多すぎると発泡ガスが過剰となり破泡する場合が多くなる。
【0043】
過酸化水素を発泡剤として用いるときは、安全性、安定した発泡を考慮すると水溶液として用いるのが好ましい。発泡剤として使用できる過酸化水素水溶液の濃度は、0.5重量%〜35重量%の範囲、好ましくは1重量%〜25重量%の範囲、更に好ましくは5重量%〜15重量%の範囲である。濃度が35重量%を越えて濃くなると、発泡が早く進行されるため、発泡が不安定となる場合があり、場合によっては危険を伴う。また、濃度が0.5重量%未満であると、過酸化水素量に対しての水の量が多くなりすぎて、粘度が低下し、同様に発泡が不安定となる場合がある。
【0044】
金属粉末を用いる場合は、安定した発泡を得るために、粒子径が200μm以下、例えば平均粒子径が1μm〜200μmの範囲にある微粉末を用いることが好ましい。粒子径が200μmを越えると反応性が低下し、1μmを下回ると分散性が低下すると共に反応性が高くなり、破泡が早くなりすぎる場合がある。
【0045】
この発泡剤には、発泡を均一に生じさせるために、必要に応じて発泡助剤が添加されていてもよい。このような発泡助剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩、シリカゲル、ゼオライト、活性炭、アルミナ粉末等の多孔質粉体、酸化剤、還元剤などが例示される。この発泡助剤は、単独で使用されてもよいし、2種類以上併用されてもよい。発泡助剤の量は多くなると硬化性無機質材料の粘度を上昇させて破泡を発生しやすくする場合があるので、通常この発泡助剤の配合量は、反応性粉体100重量部に対して10重量部以下である。
【0046】
本発明に用いる硬化性無機質材料には、本発明の目的、効果を損なわない範囲で必要に応じて無機質充填材、補強繊維、有機質発泡体、無機質発泡体などをさらに添加するようにしてもよい。
【0047】
無機質充填材としては、特に限定されなく、平均粒子径が1mm以下の小さなものが一般に選択され、好ましくは0.01μm以上1mm以下の範囲のものである。平均粒径が1mmを越えると、発泡が不安定となることがあり、また、0.01μmを下回ると、吸着水量の増加によって、材料の粘度が上昇して作業性が悪くなることがある。
【0048】
この無機質充填剤の配合量も特には限定されないが、反応性粉体(A)100重量部に対して700重量部以下であることが好ましく、更に好ましくは10重量部〜500重量部の範囲で配合される。配合量が700重量部を越えると成形品の機械的強度が低下する場合がある。
【0049】
補強繊維の配合により、成形体の機械的強度を向上させたり、また、クラックの発生防止を図ることができる。このような補強繊維としては、例えば、ビニロン、ポリプロピレン、アラミド、アクリル、レーヨンなどの有機繊維、カーボン、ガラス、チタン酸カリウム、アルミナ、鋼、スラグウールなどの無機繊維が挙げられる。
【0050】
この補強繊維の繊維径は、小さくなると混合時に再凝集し、交絡によりファイバーボールが形成されやすくなり、最終的に得られる発泡体の強度はそれ以上改善されない。一方、繊維径が太くなるか又は繊維長が短くなると引張強度向上などの補強効果が小さくなる。また、繊維長が長くなると繊維の分散性及び配向性が低下する。
【0051】
以上の観点から、繊維径は1μm〜500μmの範囲、繊維長は1mm〜15mmの範囲が好ましい。補強繊維の添加量は多くなると繊維の分散性が低下する場合があるので、反応性粉体100重量部に対して、通常、10重量部以下で配合されるのが好ましい。この補強繊維は単独でも混合して用いてもよい。
【0052】
有機質発泡体、無機質発泡体を材料に配合することにより、成形体の軽量化を図ることもできる。この場合の有機質発泡体としては、例えば、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレンなどの合成樹脂発泡体が挙げられる。また、無機質発泡体としては、ガラスバルーン、シラスバルーン、ファライアッシュバルーン、シリカバルーン、パーライト、ヒル石、粒状発泡シリカなどが挙げられる。これらは、単独で用いても、混合して用いてもよい。
【0053】
この発泡体の比重は、特には限定されないが、一般的に比重が小さいと成形体の機械的強度を低下させる場合があるので、比重は0.01以上であるのが好ましい。一方、比重が1を越えて大きくなると軽量化の効果が軽減される。そこで、この比重は、0.01〜1の範囲のものが通常選択され、好ましくは、0.03〜0.7の範囲のものである。
【0054】
この発泡体の添加量も、特には限定されないが、配合量が多い場合には成形品の機械的強度が低下する場合があるので、反応性粉体100重量部に対して通常100重量部以下で配合される。軽量化を目的とした場合の好ましい配合量は、10重量部〜100重量部の範囲、さらに好ましくは、30〜80重量部の範囲である。未反応部分を少なくするの為の塩化カルシウムを1〜100重量部添加してもよい。
[硬化性無機質材料の調製]
以上の各配合成分は、硬化性無機質材料の全体が均一となり、反応が均一となるように適宜の組み合わせで配合することにより、ペースト状の硬化性無機質材料M(以下、材料Mと略称することがある。)とすることができる。混練はオムニミキサーのような通常のミキサーでよい。温度が高いほど硬化速度が速くなるので、通常は、20°C以下の低温で混合され、1時間程度以内の短時間の間に成形に付される。
【0055】
このようにして得られたペースト状材料Mは、常温でも硬化するが、加温させることにより硬化反応が促進される。例えば、50°C〜110°Cの温度範囲では、30分〜8時間程度で硬化され、機械的物性の向上が図れた成形体とされる。50°C〜200°Cの範囲の温度に保持されて硬化させることにより、硬化反応が促進でき、無機質発泡体パネルの機械的物性の向上を図ることができる。
[成形型への注型工程]
用いられるべき成形型の形状などは限定されないが、一例として、図2に示す成形型1が挙げられる。
【0056】
この成形型1は、雌型となる下型2と、成形型の蓋を構成し内面に成形体の裏面模様が賦形された雄型となる上型3とから大略構成されている。この下型2は、底面を構成する型枠4と、この型枠4と上型3との周囲を囲む枠体部(型枠)5と、この下型2の内部に成形体の表面模様が凹凸状に加飾された加飾面6aを備えた加飾型(ゴム型)6とから構成されている。型枠4の両側は枠体部5から突出して係止部4aを構成している。また、加飾面6aの凹凸構造は、本発明に従い、材料に渦流動をもたらすために重要であり、その詳細は後述される。
【0057】
また、この上型3と下型2とはボルト固定などのように適宜の固定装置により固定可能とされており、これにより、内部に発泡性の硬化性無機質材料を注型する場合など、発泡により発生する圧力に耐えて、成形体の形状を保つことが可能とされている。これにより、内部空間には無機質発泡体パネルが成形されるためのキャビティ7(成形空間)が形成されている。このキャビティ7の形状は、無機質発泡体パネルを与える形状であれば何でもよく、例えば、縦、横が数十cm乃至数mで厚みが数cm程度の略平板状成形体を与える形状などである。
【0058】
この成形型1には、硬化性無機質材料を供給する注型口8(不図示)を備えるが、この成形型1では、この注型口8は、上型3が開放されたされた際の開放面(開口)が注型口8とされている。これにより、上型3を取り外した状態で調整工程により調整された材料Mがこのキャビティ7内に注型される。
【0059】
この状態では、場合によっては、材料Mの注型に付随して、加飾型6と材料Mとの間に気泡が閉じこめられる場合がある。この気泡の除去がなされない場合には、この気泡によってキャビティ7への材料Mの充填が不十分となる。
[成形型の振動付与工程]
本発明においては、キャビティ7に充填された材料Mの硬化開始以前に、充填された材料Mに渦流動を起こして、加飾面6aと材料Mとの界面で材料Mに流動を起こさせて、閉じこめられた気泡を除去するものである。このため、この発明では、充填された材料Mに渦流動を与えるための加振装置が用いられる。
【0060】
この渦流動の発生は、この発明で用いられる材料Mのような高粘性材料の特徴である。すなわち、ある一定の力(降伏値)を境にして、それ以上の力が与えられると、高粘性材料は液体のように振る舞い、それ以下の力では固体のように振る舞うという、非ニュートン粘性を示す流体であるという特徴が係わっているためである。それゆえ、この発明において渦流動を起こす条件としては、降伏値をまたぐような繰り返しの力が材料Mに加えられることが一つの重要なポイントとなる。
【0061】
この加振装置としては、渦流動を発生できる装置であれば特には限定されないが、一例として、図3、図4に示す加振装置9が挙げられる。この加振装置9は、水平に保持された振動台10と、その振動台10を加振させる振動装置11とから構成される。この振動装置11は、例えば、偏心モータなどの振動手段であり、ボルトやクランプなどにより振動台10に強固に固定されている。
【0062】
この振動台10の上には、材料Mの注型された成形型1が固定される。この例では、型枠4の両側のはみ出した係止部4aを、ボルトなどの係止部材12により固定している。この係止部材12は、成形型1の加振方向(矢印a方向)両側に一対となって整列された16本のボルトである。このときの加振方向aと成形型1の加飾面6aの凸部6bとは、材料Mの渦流動が最適となる配置で載置される。また、図4に示すように、加振時には上型3は外されて開放面1aされている。
【0063】
このように構成された加振装置9では、成形型1に充填された材料Mを加飾型6(キャビティ7)の平行面内の方向、例えば、加飾型6(キャビティ7)の長手方向や幅方向、に振動を与えることで、加飾型6の凸部6bが材料を加振方向aに掻き分け、キャビティ7内で材料M自体に渦流動が発生する。ここで、この発明における渦流動とは、型の凹凸に沿った材料の横方向(水平方向)の流れが、型の凸部によって上方(重力に抗する方向)への流れに変更され、上方で逆の横方向に戻ることにより生じる渦状の流れ方である。このような渦流動により、加飾面6aに巻き込まれた気泡が持ち去り持ち上げられる。
【0064】
図5に示すように、例えば、加飾模様の凹凸(凸部、凸模様6b)がパネルの幅方向(y方向)に縞状に多くあるなら、加振方向aを加飾型6(キャビティ7)の長手方向(x方向)に設定するとキャビティ7の面内でより多くの材料Mを掻き分けることができ、渦流動をより多くの部分に発生させられる。
【0065】
この渦流動の生起する領域は、材料Mのレオロジー及び加振条件(特に加振加速度)によって決定される。材料Mのレオロジーは、例えば、JIS R 5201のスタンプフロー試験に記載されている広がり試験などのフローテーブルの持ち上げ/落下を実施後、広がり量を測定することにより求められる。
【0066】
また、この渦流動は、材料Mに顔料などのマーカーを適宜の箇所に振りかけ、加振試験後、硬化させ、得られた成形体の断面を観察することにより確認される(図6参照)。この図6において、材料M中の曲線13は、マーカーとしての顔料の軌跡を示している。この曲線13は、材料Mが渦状に回遊していることを裏付けている。
【0067】
実験の結果、スランプフロー試験で140mm〜160mm程度の材料Mを使用し、加振条件として両振幅で9mm程度、加速度で2.5G程度のものを用いた場合の実験では、加飾型6の凸模様6bと振動の方向とが直交する場合、振動により材料Mの渦流動の激しく生起する領域14は、図5に想像線により示すように、凸模様から両振動方向に20mm程度であった。この領域14は、特に注型時の材料Mの充填が不十分なデッド部となりやすいので、この領域14で激しく渦流動を起こすことは、効率的である。
【0068】
この渦流動により、材料Mは、その加飾型6の加飾面6aをまんべんなく通過して回遊されることとなる。これにより、デッド部を生じることなく、加飾面6aに補足された気泡は、この渦流動によって効果的に剥離作用が働き除去される。
【0069】
実際に上型を外した状態での加振実験では、材料M自体に渦流動が発生している場合、渦流動発生時、図7に模式図を示すように、上面(パネル裏側)に材料Mの隆起15が観測される。この隆起15は、加振加速度の大きさが大きくなるほど、隆起15の高さh15が高くなることが観測され、渦流動の発生がこの高さh15に比例して勢い良く発生していると推定される。
【0070】
これにより、加飾面6a付近の気泡が勢い良く持ち去られ、持ち上げられる。また、これにより、加飾面6aに残留する気泡がなくなり、結果として効率よく外観の優れた無機質発泡体パネルが得られる。
【0071】
従って、図2に示すように、上型3がセットされた成形型1内(キャビティ7)に材料Mが充満されているような状態での加振では、加飾面6aの凸部6bが材料Mを掻き分けることができないので、降伏値を跨ぐような繰り返しの力が材料Mにかからずに、渦流動は発生しない。このため、流動した材料Mによる加飾面6a上での気泡の消滅効果は期待されずに、効果的に気泡を除去することが不十分となり、外観の不良を生じることがある。
【0072】
加振加速度と渦流動との関係を実験により確認するために、両振幅は一定のままとして振動周波数を変化させた。この装置の設計値である5Gまで加速度を変化させた実験を行ったところ、加速度が1.1G以上で渦流動が観察された。この装置では加速度は最大5Gであるが、それ以上の加速度でも渦流動は発生すると考えられる。
[振動付与工程の改良1]
加飾面6aの気泡を取り除くためには、加飾面6aと気泡の接している面積をできるだけ小さくさせて気泡の浮力を増大させることが望ましい。例えば、図8(b)に示すような扁平気泡16の形から図8(a)に示すような球状気泡17に気泡形状を変形させる又は変形し易くさせることが望ましい。もちろん、材料Mと加飾面6aとの親しさ(濡れ性)を高めることも重要である。気泡の形状を図8(a)に示すような球状気泡17の形状に近づけることにより、気泡下面17aは材料Mと接する面積が増大されるので、球状気泡17は、扁平気泡16に比較して大きな浮力を得ることができる。このような、気泡形状の変形は、材料Mの粘性を低めることにより得られる。
【0073】
前述したように、この発明で好適に用いられる硬化性無機質材料は、材料Mに降伏値以上の力が加わると液体のように振る舞い、それ以下の力では固体のように振る舞うという特徴を有する。この特徴を生かして、機械的に材料の粘度を低減させれば、符号16で示される扁平気泡は、符号17で示される球状気泡に近づくことになり、気泡は、浮力の増大により除去しやすくなる。
【0074】
このため、この振動付与工程の改良1では、コンクリート材料などの締め固めで広く利用されている高周波微振動を併用することである(朝倉書店発行のコンクリートハンドブック第211頁など参照)。高周波微振動を併用することにより、材料Mの粘性は低下される。
【0075】
ここでいう高周波とは、10,000rpm(又はvpm)程度の振動周波数であり、微振動とは振幅1mm以下の振幅振動のことである。この高周波振動の方向は、渦流動を発生させる目的とは異なるので、水平方向、垂直方向、斜め方向など、凸部の形状や位置とは無関係に材料Mに対して高周波微振動が付与されればよい。
【0076】
このような高周波微振動を与える装置としては、例えば、図9及び図10に示すように、振動台10の両側面に高周波発生装置18を固定して成形型1の加飾面6a側から振動台10を介して垂直方向(矢印b方向)に高周波振動を与える装置が挙げられる。このようにして、この加振装置9では、材料Mに対して均一に高周波微振動を付与しやすく構成されている。
【0077】
また、図11及び図12に示すように、成形型1の上面1aは開放されているので、材料Mの全面にわたって高周波微振動が伝わるように、棒状バイブレータ19を面状に(例えば、千鳥状に)配列した高周波微振動発生装置20であってもよい。この図11,図12において、高周波微振動発生装置20から発生された高周波微振動は、棒状バイブレータ(振動端子)19を介して材料Mに伝えられている。
【0078】
以上のように構成された加振装置9では、高周波微振動により気泡は浮力の働きやすい形状に整形されるので、振動装置11により渦流動を発生させた際には、一層気泡の除去が容易となる。
[硬化]
加振を終えた成形型1は、この注型口8が上型3により閉鎖されて、成形型1内の材料Mは必要により加熱等により昇温されて、所定時間の後、材料は硬化される。
[脱型・乾燥]
硬化が大略完了すると、上型3が外されて脱型される。得られた硬化体は、必要に応じ任意の段階で、アフターキュア、冷却、乾燥させて、板状の無機質パネルが得られる。このようにして得られた成形体は、脱水縮重合反応により硬化し、緻密なゲルを形成し、これが密に重合していくため、高強度である。また加飾面に気泡が残存することがないので、外観が良好となる。
【0079】
これにより、得られた平板状成形体は、無機質発泡体パネルとして、例えば建物外壁材、屋根材、内装材などとして利用され、加飾面6aに接した面が外装面(外表面)として利用される。
【0080】
以下に実施例及び比較例により本発明の効果を具体的に説明する。
【0081】
【実施例1〜3及び比較例1,2】
[硬化性無機質材料Mの調製]
粉砕メタカオリンの100部、アルカリ金属珪酸塩としての珪酸カリウム水溶液(日本化学工業社製、SiO2:K2O=1.4:1(モル比)、濃度45重量%)の200部、無機質充填材としてのワラストナイト(土屋カオリン工業社製、ケモリットA−60)の50部、珪石紛(住友大阪セメント社製、ブレーン値500cm2/g)の100部、補強繊維としてのビニロン繊維(クラレ社製、RM182×3)の3部、発泡剤としてのシリコン粉末(キンセイマテック社製、M−Si #600)の0.1部、発泡助剤としてステアリン酸亜鉛(試薬特級)の3部をオムニミキサーに供給して5分間混合し、注型用材料Mとした。
[成形体の形成]
成形型1に注型用材料Mを注型し、上型3を開放した状態で材料Mの温度を変化させることによりスランプフロー値を変化させたり、表1に記載のとおりに振動条件を変更して実験を行った。
【0082】
所定の振動条件を与えた後、型締めを行い、枠ごと85°Cの熱風乾燥機中で10時間加熱させて硬化体である無機質発泡体パネルを得た。得られた無機質発泡体パネルは裏面型のみを外し、50°Cで乾燥した。得られた無機質発泡体パネルの外観を目視で判定し、振動条件と併せて表1に示した。
【0083】
【表1】
Figure 0004465059
【0084】
棒状バイブレータ19のみ使用した比較例1や高周波微振動発生装置18(垂直方向に高周波微振動)のみを使用した比較例2では、成形品の外観が満足できなかった。これに対して、硬化反応前に振動装置11により渦流動を発生させて成形体を得た場合の実施例1では、外観が改良されていた。また、この渦流動の発生している間に、高周波微振動を与えた実施例2、3では、いずれの手法によっても良好な外観の無機質発泡体パネルを得ることができた。
[振動付与工程の改良2]
振動付与工程の改良1では、高周波微振動により材料Mの粘度を下げたが、高粘性材料は、一般的に温度が高くなればなるほど粘度が低下する。そこで、この特性を生かして、材料Mの粘性を下げる方法としては、ミキサーに加熱装置を設けることにより混合時の材料温度を予め高く設定することが考えられる。しかしながら、過剰な温度設定を行うと、材料の硬化反応をいたずらに促進してしまい、これにより、材料粘度を高めてしまうことになる。
【0085】
例えば、上述した本発明で好ましく用いられるアルカリ金属珪酸塩とアルミノシリケート系反応性無機粉体との組成物(材料M)では、図13に示すように、材料温度−材料粘度の関係が得られ、材料粘度に極小値を有する温度領域があることが確認された。すなわち、20℃〜40℃の間で、特に材料粘度に極小値を認めることができる。
【0086】
そこで、この発明の振動付与工程の改良2では、気泡を除く振動付与工程での材料温度を加熱や冷却などを施して、粘度が低下される温度に材料Mを調整した状態で、振動付与することを特徴とする。
【0087】
この材料温度の調節時期は、振動付与工程の前でもよいし、振動付与工程時でもよい。前工程を利用する場合には、図14に示すように、(1)混合・混練する工程で、混練装置としてのミキサー21に温度調節機能を備えた温調ジャケット22を用いて予め温度調整する方法、(2)成形型1及び加飾型6に対して温度調整したシャワー23などにより散水して材料Mを加熱・冷却し、余剰の水分はエアーブロー装置24により除去して、振動付与工程へ移行させる方法、(3)材料Mを予め又は成形型に注型(充填)後、熱的に隔離された部屋(不図示)などでの所定の温度の雰囲気下で予熱又は予冷却して振動付与工程へ移行させる方法がある。また、(4)この予備加熱を必要とする場合には、誘導加熱など手法を用いれば、実質的に硬化反応が進行しない、短時間加熱により、予熱をすることができる。
【0088】
一方、振動付与工程時に温度調整する場合は、図15に示すように、(5)熱的に隔離された部屋25などの温度調整した雰囲気下で振動付与を行ったり、また、(6)この場合、材料に対する伝熱速度を速めるために、ブロアー26で温風を吹き付けるなどの手段を併用することが望ましい。
【0089】
これにより、材料Mの粘性が低下し、例えば、図8(b)に示すような扁平気泡16の形から図8(a)に示すような球状気泡17に気泡形状を変形させることができ、気泡は浮力の働きやすい形状に整形されるので、加振装置9により渦流動を発生させた際には、一層気泡の除去が容易となる。
【0090】
また、このように、温度調整をすることにより、振動付与工程後の材料Mの品質が安定し、次工程以降の硬化工程において、常に一定の条件(加熱温度、加熱時間など)での硬化が可能となる。例えば、冬場などに極端に環境温度が冷え込む場合、加熱硬化工程では初期設定条件が変化してしまうことがあり、硬化時間の延長をしばしば余儀なくされるが、このように、温度調整することにより、工程の安定化が図れることになる。
【0091】
以下に実施例により本発明の効果を具体的に説明する。
【0092】
【実施例4〜6】
実施例1と同じ組成の注型用材料Mを用い、材料温度が10℃及び30℃になるようにミキサー21の調整を行った。ついで、その材料温度を保ちつつ所定温度に設定された成形型1に注型し、上型3を開放した状態で振動実験を行った。
【0093】
所定の振動条件を与えた後、実施例1と同様にして無機質発泡体パネルを得た。得られた無機質発泡体パネルの外観を目視で判定し、振動条件と併せて表2に示した。
【0094】
【表2】
Figure 0004465059
【0095】
表2から明らかなように、材料温度が10℃と低い場合にも、成形型1を30℃に予熱したり(実施例4)、材料に50℃の温風を吹き付ける(実施例5)ことにより、成形品の外観が良好となることがわかる。これは、材料Mの温度を調整することにより、粘度が低下し、振動条件での気泡の除去が良好に行われたことと理解される。
[振動付与工程の改良3]
立体形状を有するコーナー材のようなパネルの場合、図16に示すように、加飾面6aは傾斜することになる。このように加飾面6aが傾斜された状態で加振が行われると、重力方向の上端の加飾面6aの材料Mが重力方向に落ちてしまい、加飾型コーナ部27付近に材料Mの堆積部28を作る。一方、加飾型先端部29の材料Mは流下して、場合によっては加飾面6a(凸部6b)が露出してしまう。
【0096】
このような場合には、加振操作により気泡を除去した部分から材料Mが無くなってしまう。上型3のセット時には堆積部27に堆積した材料Mが重力方向に逆らって押し広げられるので先端部29まで材料Mが充填されることになるが、この場合には、加飾型6と材料Mとの間に閉じこめられた気泡が発生してしまい、気泡の除去が思うように行えないことがある。
【0097】
ここで、図17に示すように、上型3を型枠5にボルトなどにより固定して材料Mをキャビティ7に充満させて、材料Mの落下を防止した状態で成形型1を加振することも考えられる。しかしながら、材料Mがキャビティ7に充満又は加飾面6aが材料Mに浸っている程度の充満に近い状態では、加振しても、図18に示すように、加飾型先端部29に材料Mの充填されない領域30が発生し、気泡を完全には除去することはできず、したがって、良好な外観を有するコーナーパネルを得ることができない。
【0098】
そこで、この振動付与工程の改良3では、図19、図20に示すように、落ちてくる材料Mを各加飾面6aの重力方向に逆らってへらなどの塗り上げ部材31により上方に塗り上げつつ、材料Mに渦流動を発生させることを特徴とする。
【0099】
この図19,図20において、加飾型6は、コーナ部27で略直角に曲折され、これにより、型枠4も直角に曲折され、この型枠4は、適宜の間隔で配置された型枠支持部4bを介して係止部4aに固定され、この係止部4aによりボルト12により振動台10に固定されている。また、加飾面6aに平行に堆積部28に堆積した材料Mを重力方向に逆らって塗り上げる一対の塗り上げ部材31が設けられている。
【0100】
このような加振装置9において、加振方向aに振動装置11により加振すると同時に堆積部28の材料Mは、塗り上げ材により重力方向に逆らって塗り上げられる。これにより、加振と凸部6bの作用により材料Mに渦流動が発生し、加飾面6aの気泡は除去される。また、それと同時に先端部29付近の材料Mが重力方向にズレ落ちて堆積部28を形成するが、この材料Mは塗り上げ材31により重力方向に逆らって塗り上げられるので、先端部分29の加飾面6aが露出することがない。これにより、常に、気泡が残存せずに、良好な無機質発泡体パネルが形成される。
【0101】
このような塗り上げ部材31としては、例えば、ゴムべら等を例示できるが、このような弾性のある材料を用いれば、加飾型6の凸部6bや平滑な部分の材料Mを剥ぎ取ることなく、加飾型6に材料Mを塗りつけ、加飾型6と材料Mとの間に閉じこめられている気泡を破泡させ、その空気を大気中に開放させることができる。したがって、この塗り上げ手段31としては、ゴムのような比較的剛性の低い材質のへらが望ましい。
【0102】
また、加飾面に沿ってへらが先に変形することにより、加飾の凹凸にへらが追従して、面延設方向の加飾の凸部分により生じる材料M自体の渦流動の影響が及ばない部分の材料を積極的に流動させ、気泡を持ち上げ、持ち去ることができ、外観に及ぼす気泡の除去を効率的に行うことができる。
【0103】
これにより、加振と凸部との相互作用により凸部の両側(領域14)に各20mm程度の渦流動が発生する条件で加飾面6aの近傍に材料Mの流動を行う場合には、凸部と凸部との間隔が広い(例えば80mm程度)場合には、この領域14と領域14との間に渦流動の生起しないデッドゾーンが生じることになり、そのデッドゾーンでは渦流動による材料Mの流動が起こりにくいので、気泡の効率的除去は期待されないが、このへらにより材料Mに流動を起こさせる手法では、このデッドゾーンで効率的に材料Mの効率的な流動を行うことができる。
【0104】
また、このへら塗りの手法によれば、凹凸の小さい模様に対しては、流動を大きく取りやすく効果的であることは容易に理解される。
【0105】
これにより、加振による渦流動と、このへら塗りによる流動とを併用することにより、全ての領域にデッド部がなくなり、結果として良好なデッドゾーンとの双方の流動を効率的の行うことができる。
【0106】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1又は請求項に記載の発明によれば、成形型の内面は、硬化以前の段階で硬化性無機質材料の流動がおこる。これにより、この流動する硬化性無機質材料と加飾面とが接触することになり、これにより加飾面の気泡は取り除かれ、しかる後硬化反応されて外観の良好な無機質発泡体パネルを製造することができる。
【0107】
さらに、請求項又は請求項に記載の発明によれば、この流動は、渦流動であるので、加飾面に取り込まれた気泡の除去が効率的に行える。
【0108】
請求項又は請求項に記載の発明によれば、上方が開口された成形型で加振させることにより、硬化性無機質材料の降伏値をまたぐような繰り返しの力を加えることにより渦流動を発生させることができる。
【0109】
請求項又は請求項に記載の発明によれば、硬化性無機質材料に高周波微振動を与えることにより硬化性無機質材料の粘性を低めることができるので、渦流動と併用することにより、気泡の除去を一層効率的に行うことができる。
【0110】
請求項又は請求項に記載の発明によれば、硬化性無機質材料の温度を調節することにより硬化性無機質材料の粘性を低めることができるので、渦流動と併用することにより、気泡の除去を一層効率的に行うことができる。
【0112】
請求項に記載の発明によれば、型が傾斜されていた状態で加振しても、硬化性無機質材料が加飾面から脱落することがない。また、この塗り上げにより、加振では渦流動が発生しにくい領域の硬化性無機質材料の流動を引き起こすことにより、加飾面の全領域での硬化性無機質材料の流動により、模様の凹凸が少ない場合も含めて良好な外観の無機質発泡体パネルを製造することができる、という実用的な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 無機質発泡体パネルを製造する方法の概略を説明する工程図である。
【図2】 無機質発泡体パネルを製造する成形型の内部模式図である。
【図3】 加振装置を説明する正面図である。
【図4】 図3の矢視方向から見た成形型の内部模式図である。
【図5】 加飾型を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図6】 硬化性無機質材料Mの渦流動の状態を説明する成形型の断面図である。
【図7】 図6の渦流動の状態を説明する説明図である。
【図8】 加飾面と気泡との関係を説明する模式図である。
【図9】 加振装置の変形例を説明する正面図である。
【図10】 図9の矢視方向から見た成形型の内部模式図である。
【図11】 加振装置の変形例を説明する正面図である。
【図12】 図11の矢視方向から見た成形型の内部模式図である。
【図13】 硬化性無機質材料Mの粘度と温度の関係を説明する図である。
【図14】 変形例による温度調整の方法を説明する工程図である。
【図15】 変形例による温度調整の方法を説明する加振装置の模式図である。
【図16】 コーナ部材を製造する場合の課題点を説明する成形型の内部を説明する一部断面模式図である。
【図17】 コーナ部材を製造する場合の課題点を説明する成形型の内部を説明する断面模式図である。
【図18】 図17において、硬化性無機質材料Mが少ない場合の先端部分の拡大図である。
【図19】 加振装置の変形例を説明する正面図である。
【図20】 図19の矢視方向から見た成形型の内部模式図である。
【符号の説明】
M…無機質材料
1…成形型
6…加飾型
6a…加飾面(凹凸模様)
6b…凸部(凹凸模様)
9…加振装置(流動発生装置)

Claims (8)

  1. 発泡剤を含んだ硬化性無機質材料を成形型に供給して、該硬化性無機質材料を硬化させて板状の無機質発泡体パネルを形成するための成形装置であって、
    前記成形型は、前記硬化性無機質材料が上方から内部に注型される加飾型を備え、前記加飾型の内部には、水平方向に凹凸模様が形成された加飾面を有し、
    前記加飾型の内部に注型された前記硬化性無機質材料の硬化が始まる以前に、前記加飾型の上方を開放した状態で前記成形型を水平方向に加振することにより、前記加飾面の凸部が前記硬化性無機質材料を掻き分けて前記硬化性無機質材料自体に上向きの渦流動を発生させて前記硬化性無機質材料と前記加飾面との間に閉じ込められている気泡を剥離する加振装置を備えたことを特徴とする無機質発泡体パネルの成形装置。
  2. 前記成形型に高周波微振動を与える高周波微振動発生装置を前記加振装置と併用可能としたことを特徴とする請求項1に記載の無機質発泡体パネルの成形装置。
  3. 前記成形型に温度調整装置を前記加振装置と併用可能とし、当該温度調整装置は、前記硬化性無機質材料の温度を、前記硬化性無機質材料の粘度が低下して前記気泡が球状になるように調節することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無機質発泡体パネルの成形装置。
  4. 発泡剤を含んだ硬化性無機質材料を成形型に供給して、該成形型内の硬化性無機質材料に上向きの渦流動を発生させ、しかる後、該硬化性無機質材料を硬化させて板状の無機質発泡体パネルに成形することを特徴とする無機質発泡体パネルの製造方法。
  5. 前記成形型は、凹凸模様を有する加飾面を重力方向上方に向けて配置された成形型であり、前記渦流動充填された前記硬化性無機質材料の重力方向上方が開放された状態で前記成形型に水平方向の振動を与えることにより発生させることを特徴とする請求項4に記載の無機質発泡体パネルの製造方法。
  6. 前記渦流動の発生と同時に、前記硬化性無機質材料に高周波微振動を与えることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の無機質発泡体パネルの製造方法。
  7. 前記渦流動の発生と同時に、前記硬化性無機質材料の温度を、前記硬化性無機質材料の粘度が低下して前記気泡が球状になるように調節することを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の無機質発泡体パネルの製造方法。
  8. 前記成形型は、凹凸模様を有する加飾面を重力方向上方に向けて傾斜配置された成形型であり、前記渦流動を前記成形型に供給された前記硬化性無機質材料の重力方向上方が開放された状態で前記成形型に水平方向の振動を与えることにより発生させると共に、前記振動により重力方向に移動した前記硬化性無機質材料を重力方向に逆らって前記加飾面に押し付けながら塗り上げることを特徴とする請求項4に記載の無機質発泡体パネルの製造方法。
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