以下、本発明が適用された子守帯の好適な一形態について説明する。図1はその子守帯1の概要を示すものである。この子守帯1は、幼児(乳児を含む)100を略水平に寝かせた状態で支持する横抱き状態(図1(a))と、幼児100を対面状態で抱っこする対面抱っこ状態(図1(b)〜(d))と、幼児100を前向き状態で抱っこする前向き抱っこ状態(図1(e)、(f))と、幼児100を背負うおんぶ状態(図1(g)、(h))とを使い分けることができる。さらに、対面抱っこ状態、前向き抱っこ状態、及びおんぶ状態では、それぞれヘッドサポート64(図25参照)の折り返し位置を変更することにより複数のスタイルを使い分けることができる。
上述した4通りのいずれの使い方をする場合でも、使用者101は子守帯本体2を装着する必要がある。そして、横抱き状態では横抱き用シート3が子守帯本体2と組み合わせて使用され、それ以外の状態では縦抱き用シート4が子守帯本体2と組み合わせて使用される。以下、これらの部品の構成及び使用方法について順に説明する。
(子守帯本体について)
まず子守帯本体2について説明する。図2は子守帯本体2を表面2a側から、図3は裏面2b側からそれぞれみた状態を示す図である。子守帯本体2は使用者101の胸側及び背側のいずれの側にも装着可能であるが、いずれの向きにおても図3に示した裏面2bが使用者101と対向する。つまり、裏面2bが使用者101の胸又は背に当てられる。また、図2及び図3の上下方向は使用者101への装着時の上下方向と一致している。これらの図に示すように、子守帯本体2は、使用者101の胸又は背に当てられるベース部10と、そのベース部10の上端から延びる一対の肩帯11、11と、ベース部10の下部に設けられて使用者101の腰回りに装着される腰当部12と、その腰当部12の両側から延びる一対の腰ベルト13、13とを備えている。
ベース部10の内部には図4に示す背板14が設けられている。背板14は、肩帯11等の芯材に使用されるウレタン等と比べて十分に硬い材料、例えばポリプロピレン樹脂等の硬質樹脂材料からなる成形品である。背板14の剛性は、子守帯本体2を使用者101に装着した際のベース部10の弾性変形を制限してそのベース部10の形状をほぼ一定に維持できるように定められている。背板14は、図4の右側部をベース部10の上側に一致させた状態でベース部10内に埋め込まれる。背板14は、肩帯11の取付位置に対応する一端側に分岐部15を有し、他端側にヒンジ軸16を中心として回転可能な折り曲げ部17を有している。分岐部15にはベース部10の通気性を改善するために抜き窓18が設けられている。ベース部10内に挿入された背板14は表生地にて覆われる。表生地は各種の布地、立体メッシュ生地等の各種の素材が使用される。背板14と表生地との間にはクッション材が適宜設けられてもよい。
図5にも示したように、腰当部12の幅方向(図3の左右方向)中央には、腰当部本体20の背面側からカバー21が縫い付けられてポケット19が形成されている。カバー21にもポリプロピレン樹脂等の硬質材料製の背板が芯材として内蔵されている。ポケット19にはベース部10の下端部10aが挿入され、その下端は腰当部本体20及びカバー21と縫い付けられている。背板14はベース部10の下端部10aの縫い合わせ部10bまで配置され、その縫い合わせ部10bよりも下方には背板14が省略された折り畳み部10cが設けられている。この折り畳み部10cを折り畳み、あるいは伸すことにより、ベース部10に対する腰当部12の位置を図3に矢印Aで示したように変化させることができる。
ベース部10の下端部10aには、折り畳み部10cを折り畳んだ位置、及び伸した位置のそれぞれで腰当部12のスナップ22a(図3参照)と噛み合ってベース部10と腰当部12との位置ずれを防止するスナップ22b…22bが設けられている。なお、背板14の折り曲げ部17の曲げ機能を損なうことがないように、折り畳み部10cを折り畳んだ状態でもヒンジ軸16はポケット19よりも僅かに上方に位置している。従って、子守帯本体2はベース部10と腰当部12との位置関係に拘わらず、ヒンジ軸16の位置を境として二つに折り曲げ可能である。
図2に戻って、ベース部10の表面2a側の上部には、横抱き用シート3や縦抱き用シート4を留めるための左右一対の留め具25、25が設けられている。図6(a)に示すように、留め具25は、支軸部25aと、その支軸部25aと間隔を空けて並べられた掛止部25bと、支軸部25aと掛止部25bのそれぞれの両端を結ぶ連絡部25c、25cとを備えたリング状に形成されている。掛止部25bが弧状に延びて留め具25の全体が略D字型を描くことにより、留め具25は「Dカン」と呼ばれることがある。
図6(b)に示すように、留め具25は支軸部25aに巻き付けられた連結帯26を介して固定部102(ベース部10はその一例)に固定されるが、左右の連絡部25c(図6(b)では片側のみ示す)が固定部102に向かって曲げられている。このような曲げを連絡部25cに与えることにより、留め具25の掛止部25bと、留め具25の支持点Xとを結ぶ荷重の作用線LAに対して留め具25が固定部102側へ後退する。ちなみに、連絡部25cが直線状であれば図6(c)に示すように留め具25の全体が作用線LA上に位置する。つまり、固定部102に対する荷重の作用線LAの傾き角θが同一であれば、連絡部25cを曲げた構造の方が留め具25の固定部102からの浮き上がりを相対的に小さく抑えられる。ベース部10の留め具25は横抱き用シート3や縦抱き用シート4を吊り下げるために使用され、ベース部10の前方には幼児100が収容されるから、留め具25を図6(b)のように構成した場合は留め具25のベース部10からの浮き上がりを抑え、それにより留め具25と幼児100との接触を抑えて幼児100の居住性を改善することができる。
図2に示すように、ベース部10の縦抱き用シート4の下端部を留めるためのメスバックル26b、26bが設けられている(図29及び図30も参照)。各メスバックル26bはそれぞれの差し込み方向先端を下に向けてベース部10の表生地に固定されている。なお、上述した各留め具25及び各メスバックル26bはそれぞれフラップ27、28にて概ね覆われている。メスバックル26bに対するフラップ28の裏面側(メスバックル26bと対向する側)にはスナップ29aが取り付けられている。フラップ28よりも下方にはベース部10を横断するようにして揺れ止めバンド30が設けられている。メスバックル26bをフラップ28で覆っているのは未使用時(例えば横抱き状態の時)にメスバックル26b及びこれと噛み合うオスバックル26a(図25参照)が幼児100と当たらないようにするためである。
各肩帯11の付け根(ベース部10と連結される部分)付近には補助留め具31、31が取り付けられている。これらの留め具31は留め具25と同様のリング状であるが、その大きさは留め具25よりも小さい。さらに各肩帯11の先端側には肩帯11を腰当部12に固定するためのオスバックル32aが取り付けられている。一方、腰当部12には肩帯11のオスバックル32aと噛み合うメスバックル32bが取り付けられている。各オスバックル32aは左右いずれのメスバックル32bとも噛み合うことができる。つまり、子守帯本体2は、左側の肩帯11を腰当部12の右側のメスバックル32bと連結し、右側の肩帯11を腰当部12の左側のメスバックル32bと連結して肩帯11を交差させるたすき掛け状態と、左側の肩帯11を腰当部12の左側のメスバックル32bと連結し、右側の肩帯11を腰当部12の右側のメスバックル32bと連結して肩帯11を交差させないリュック掛け状態とのいずれにおいても使用者101に装着できる。
オスバックル32aの取り付け位置は肩帯11の長手方向に関して調整可能である。なお、たすき掛け時とリュック掛け時とでは必要な肩帯11の長さが変化するが、その調整はオスバックル32aの取付位置を肩帯11上で変化させることによって行うことができる。勿論、使用者101の体格に応じてもオスバックル32aの位置を調整することができる。肩帯11の長さは、たすき掛け状態でも十分な余長部(オスバックル32aから引き出された肩帯11の余り部分を意味する。)11aが残るような長さに設定されているため、リュック掛け時にはオスバックル32aから引き出される肩帯11の余長部11aの長さが相当に増すことが予想される。また、使用者101の体格が小さい場合には肩帯11の掛け方に関わりなく余長部11aが延びる。従って、肩帯11には、余長部11aを図7に示すように折り畳んで保持するためのバンド11bが設けられている。
また、腰当部12に設けられたメスバックル32bには通常のメスバックルと異なる特徴がある。図8及び図9に示すように、メスバックル32bの後端及び前端にはベルト通し部32c、32dがそれぞれ設けられている。なお、オスバックル32aを受け入れる開口32eが設けられている側をメスバックル32bの前端と呼んでいる。メスバックル32bの後端側のベルト通し部32cに通されたバックル固定ベルト33はメスバックル32bの裏面側を通って前端側のベルト通し部32dからメスバックル32bの前方に引き出される。このバックル固定ベルト33の両端部33a、33bが腰当部12に縫い付けられることにより、メスバックル32bはオスバックル32aが抜き差しされる方向に関する前後において固定部としての腰当部12に固定される。
通常のメスバックルではその後端側にのみベルト通し部が設けられており、前端側は固定されていない。これに対して、図8及び図9のメスバックル32bにおいては、その前後端が腰当部12に拘束されている。従って、図10に示すように肩帯11のオスバックル32aをメスバックル32bに噛み合わせて肩帯11に矢印B方向の張力を加えた場合、メスバックル32bを介して腰当部12に加わる荷重をメスバックル32bの前後に分散させることができる。これにより、腰当部12の一部への負荷の集中を防ぎ、肩帯11の張力で腰当部12を使用者101側に満遍なく引き込んで腰当部12を使用者101の腰回りに十分に馴染ませることができる。また、メスバックル32bの前後を腰当部12に固定することにより、バックル固定ベルト33によるメスバックル32bの取付方向を適切な方向に固定できる利点もある。オスバックル32aを装着する際には、メスバックル32bが後端側のベルト通し部32cを中心として逃げるように回転するおそれがなく、オスバックル32aの取り付けが容易となる利点もある。
再び図2に戻って、腰当部12から延ばされた一方の腰ベルト13にはオスバックル34aが、他方の腰ベルト13にはメスバックル34bがそれぞれ取り付けられている。オスバックル34aの取付位置は腰ベルト13の長手方向に調整可能である。腰当部12を使用者101の腰回りに当てた状態でこれらの腰ベルト13を腰回り巻き付けてオスバックル34aをメスバックル34bに嵌め合わせることにより腰当部12を使用者101の腰部に取り付けることができる。
(横抱き用シートについて)
次に、横抱き用シート3について説明する。横抱き用シート3は図11に示すシート本体40と、図14に示すハンギングボード41とを備えている。シート本体40は幼児100を寝かせた状態で置くためのマット42と、そのマット42の頭部支持部42aの周囲を取り囲むように配置されたヘッドガード43と、マット42の臀部支持部42bを覆うように設けられた腹部パッド44と、臀部支持部42bの両側から延ばされて腹部パッド44と組み合わされる腹部ベルト45と、マット42の脚支持部42cから延ばされた臀部ベルト46とを備えている。
マット42の内部には図12に示す背板47が配置されている。背板47はマット42の形状を保持するための芯材として機能するもので、子守帯本体2のベース部10に設けられた背板14と同様に、ポリプロピレン樹脂等の硬質樹脂材料からなる成形品である。背板14の剛性は、横抱き用シート3を吊り下げ支持した際のマット42の弾性変形を制限してそのマット42の形状をほぼ一定に維持できるように定められている。背板47にはその剛性を高めるためにリブ等の補強部が適宜設けられてもよい。
図11に二点鎖線で示すように、ハンギングボード41は頭部支持部42aにおいてマット42の内部をその幅方向に横断するように装着されるが、背板47との上下関係に関してはハンギングボード41が背板47よりも下に配置される(図19参照)。従って、ハンギングボード41と重ね合わされる部分にはマット42の幅方向に延びる補強リブ47aを設けることが好ましい。
背板47にはマット42の通気性を向上させるために複数の通気孔47b…47bが設けられている。背板47は表生地にて覆われる。表生地は各種の布地、立体メッシュ生地等の各種の素材が使用される。背板47と表生地との間にはクッション材が適宜設けられてもよい。また、ヘッドガード43の内部には図13に示す芯材48が設けられている。芯材48は背板47と比して十分に柔らかい材料、例えば発泡ポリエチレン樹脂等からなる成形品である。ヘッドガード43の通気性を改善するため、芯材48にも複数(図では3つ)の通気孔48a…48aが形成されている。芯材48を覆うヘッドガード43の表生地には、通気性を考慮して立体メッシュ生地が使用される。
図11に鎖線で示すように、背板47はヘッドガード43の取付位置から臀部支持部42bと脚支持部42cとの境界付近に亘って設けられている。脚支持部42cの内部には背板47とは別部品として構成された座板49が設けられている。座板49も背板47と同様に硬質樹脂で形成されて表生地で覆われる。マット42はこれら背板47と座板49との間、言い換えれば臀部支持部42bと脚支持部42cとの間で折り曲げ可能である。幼児100の脚部をマット42の幅方向(図11の上下方向)に関して十分な範囲で支持できるように、座板49は、臀部支持部42bにおける背板47よりもマット42の幅方向左右に張り出しており、かつ、座板49は幼児100の足先へ向かうほど幅が広がる末広がり形状に形成されている。
腹部パッド44は、股押え部44aとその股押え部44aの上端からマット42の幅方向に拡大する腹部押え部44bとを備えている。股押え部44aの下端(図11の左端)がマット42に縫い付けられることにより、腹部パッド44は股押え部44aを腕として開閉可能な状態でマット42に取り付けられている。股押え部44aの上端にはマット42の幅方向両側に開口する袋部44cが設けられている。一方の腹部ベルト45はその袋部44cの一端側から通過して他端側に引き出されている。その一方の腹部ベルト45に設けられたオスバックル50aが他方の腹部ベルト45に設けられたメスバックル50bに噛み合わされることにより、腹部ベルト45が相互に連結される。腹部ベルト45に対するメスバックル50bの取付位置は腹部ベルト45の長手方向に調整可能である。
臀部ベルト46は腹部パッド44の股押え部44aに沿って配置されており、その端部が股押え部44aとともにマット42に縫い付けられている。臀部ベルト46はマット42の幅方向に関する中心に配置されている。腹部ベルト45が通される袋部44cの表面にはリング状のベルト通し具51が取り付けられている。臀部ベルト46はそのベルト通し具51を通過してヘッドガード43側に引き出されており、その先端にはフック52が取り付けられている。フック52は臀部支持部42b側を子守帯本体2に装着する際に使用されるが詳細は後述する。
図14はハンギングボード41の斜視図、図15は平面図、図16は底面図である。これらの図に示すように、ハンギングボード41は、帯状のマット受け部41aの両端から上方に突出する一対のアーム部41b、41bとを備えている。一方のアーム部41bの上端には留め具55が取り付けられ、他方のアーム部41bの上端にはハンギングベルト56が取り付けられている。また、ハンギングボード41の内部には図16に示す芯材57が設けられている。芯材57は背板14等と同様にナイロン、ポリプロピレン等の硬質樹脂材料にて形成されており、ハンギングボード41の外観と略相似形である。芯材57は布地、立体メッシュ生地等の各種の素材からなる表生地にて覆われる。
図14及び図15に戻って、ハンギングベルト56の先端にはフック58が取り付けられ、ハンギングベルト56の途中にはそのフック58と噛み合うことが可能な留め具59が取り付けられている。フック58の位置調整によって生じるハンギングベルト56の余長部56aはフック58から折り返されて元のハンギングベルト56に沿って配置されている。留め具55はフック58が通過可能な大きさである。この留め具55は図2の子守帯本体2に装着された留め具25と同様に、側方からみて屈曲した形状を有している。その曲がり方向はハンギングボード41のマット受け部41aの長手方向に関して外側に曲がるように設定されている(図19参照)。
ハンギングボード41はシート本体40に対して着脱可能である。ハンギングボード41をシート本体40から分離すればその破損時には単独で交換でき、汚れた際にはこれを単独で洗濯することができる。また、携行時にもシート本体40が嵩張らない利点が生じる。図16に示すように、ハンギングボード41の底面側には一対のスナップ60が設けられている。これらのスナップ60はハンギングボード41をマット42に装着した際にマット42側のスナップ(不図示)と噛み合ってハンギングボード41とマット42との位置ずれを防止する手段として設けられている。なお、マット42の側方にはハンギングボード41を抜き差しするための開口部(不図示)が設けられるが、マット42の幅方向に関するハンギングボード41の向きは左右反転可能である。つまり、ハンギングボード41は、その留め具55が図11の上側に位置する状態、図11の下側に位置する状態のいずれの向きでもマット42に取り付け可能である。
次に、横抱き用シート3の使用方法を説明する。図18は横抱き用シート3を子守帯本体2に装着した状態を示し、図19はシート本体40に装着されたハンギングボード41を留め具25に装着した状態を示している。ハンギングボード41は子守帯本体2に近い側にハンギングベルト56が位置するような向きでシート本体40に装着される。従って、図18の左側に頭部支持部42aが向けられる場合にはハンギングボード41はその長手方向に関して逆向きでシート本体40に装着される。
図18及び図19に矢印a、b、cで示すように、ハンギングボード41を留め具25に装着する際には、まずハンギングベルト56のフック58を内側から留め具25に通し、続いてフック58をハンギングボード41の留め具59に下から通し、留め具59の上方に引き出されたフック58をハンギングベルト56自身の留め具59に噛み合わせる。これにより、図19に示すようにハンギングボード41のマット受け部41a、及びアーム部41b、41bとハンギングベルト56とがループ状に繋がり、ハンギングボード41が留め具25に吊り下げられて、そのハンギングボード41のマット受け部41aにより背板47が支持される。図19に示すように、マット42の頭部支持部42aは硬質樹脂製の背板47と、硬質樹脂製の芯材57を内蔵したハンギングボード41にて囲まれるので吊り下げ荷重による変形が制限され、幼児の頭部100aの周囲に十分なスペースが確保されてその居住性が高まる。留め具55が外側へ屈曲しているので、頭部100a側への留め具55やハンギングベルト56の張り出しが抑えられて居住性がさらに向上する。
なお、図20(a)に示すように、ハンギングベルト56のフック58を留め具59に噛み合わせた状態において、フック58から引き出されたハンギングベルト56の余長部56aは留め具55側に折り返される。従って、仮にフック58が留め具59から外れたとしても、図20(b)に示すように余長部56aが留め具55に引っ掛かってフック58は留め具55をすり抜けることができない。これにより、フック58が外れた場合でもハンギングベルト56が留め具55から外れてハンギングボード41の片側が開放されるおそれがなく、安全性が確保される。
また、図14、図19及び図21(a)に示すように、ハンギングベルト56の途中にはハンギングベルト56を折り返して縫い合わせることにより一対のストッパ部56b、56bが形成されている。ハンギングベルト56を子守帯本体2の留め具25に通す際に、図21(b)に示すように留め具25の前後にストッパ部56b、56bを配置することにより、留め具25に対するハンギングベルト56の滑りを制限することができる。これにより、留め具25を基準としたハンギングボード41の各アーム部41b、41bの相対位置の変化を制限し、留め具25からのシート本体40の吊り下げ姿勢をほぼ一定に保つことができる。
図18に戻って、横抱き用シート3の臀部支持部42b側は、ベルト通し具51を通過した臀部ベルト46の先端のフック52を子守帯本体2の反対側の留め具25に噛み合わせることにより留め具25に吊り下げ支持される。この吊り下げ状態では腹部パッド44の股押え部44aが折り曲げられてマット42の脚支持部42cが臀部支持部42bから斜め上方に持ち上げられる。このため、図22に示すように幼児100の脚部100cが臀部100bよりも持ち上がる。また、ハンギングベルト56による頭部支持部42aの支持位置が、臀部ベルト46にて支持される臀部支持部42bよりも上方に偏るように各ベルト56、46の長さが設定されている。従って、横抱き用シート3に寝かされた幼児100の姿勢は、図22に仮想線LBで示したように頭部100aから臀部100bに向かって徐々に下がり、臀部100bよりも脚部100cが持ち上げられた状態となり、自然な抱っこ姿勢が得られる。横抱き用シート3を子守帯本体2から外してフロア等の水平面上に置いた場合には、臀部ベルト46による脚支持部42cの持ち上げがなくなって頭部支持部42aから脚支持部42cまでが水平に保持される。このため、脚部100cのみが持ち上げられた不自然な姿勢で幼児100が寝かせられることもない。
上述した横抱き状態において、頭部支持部42aがハンギングベルト56によりその幅方向両側で分散して支持される。また、臀部支持部42b及び脚支持部42cは臀部ベルト46により脚支持部42cの幅方向中央で支持されるとともに、腹部ベルト45により臀部支持部42bの幅方向両側で支持される。このため、マット42がその中心線LCの回りに捻られるおそれがなく、マット42に寝かされた幼児100を中心線LCに沿って真っ直ぐに支持することができる。幼児100の体重により背板47が中心線LCを底として適度に湾曲するため、幼児100をマット42の中心線LC上に寄せてその横抱き姿勢をさらに安定させることができる。さらに、脚部100cに関しては幅の広い座板49が配置されることにより、図24に示したように脚部100cの周囲に十分なスペースを確保し、脚部100cの圧迫を防ぐことができる。
(縦抱き用シートについて)
次に、縦抱き用シート4について説明する。図25は縦抱き用シート4を表面4a側から、図26は裏面4b側からそれぞれみた状態を示す図である。また、図27は縦抱き用シート4の表面4a側の異なる態様を示す図である。なお、図25及び図26の上下方向は使用時における上下方向に一致させてある。縦抱き用シート4は内面4bを子守帯本体2の表面2aと対向させた状態で子守帯本体2に取り付けられることにより、幼児100を縦に収容する袋状部分を形成するために用いられる。これらの図に示すように、縦抱き用シート4は、シート本体62と、そのシート本体62の下部に連続して設けられた底支持部63と、シート本体62の上部に連続して設けられたヘッドサポート64とを備えている。
シート本体62は子守帯本体2に向かって幼児100を引き寄せて保持する部分であり、その両側からは脇下ベルト65、65が延ばされている。脇下ベルト65にはオスバックル66aが設けられ、シート本体62の表面4a側にはそれぞれのオスバックル66aと噛み合い可能なメスバックル66bが取り付けられている。左右のオスバックル66aをメスバックル66bとそれぞれ噛み合わせることにより、図27に示すようにシート本体62の左右において脇下ベルト65によるループを形成することができる。オスバックル66aは脇下ベルト65の長手方向に位置調整可能である。オスバックル66aから引き出された脇下ベルト65の余長部65aはハンギングベルト56の余長部65a等と同様に、オスバックル66aから脇下ベルト65の付け根(シート本体62との連結部)側に折り返される。また、シート本体62の一側部からは幼児100の胴回りに装着される胴部ベルト67が延ばされている。胴部ベルト67の先端にもオスバックル68aが位置調整可能に設けられ、そのオスバックル68aはシート本体62の反対側に設けられたメスバックル68bと噛み合い可能である。
シート本体62とヘッドサポート64との間には幼児100の腕を通すための腕抜き部69が形成されている。また、シート本体62の幅は底支持部63に近付くほど徐々に狭められている。縦抱き用シート4は、子守帯本体2の背板14や横抱き用シート3の背板47及び座板49のような剛性の高い芯材を備えておらず、その内部には発泡ウレタンのような軟質材料からなる芯材が必要に応じて配置されているだけである。縦抱き用シート4の通気性を改善するため、図26にハッチングを付して示した領域70aは立体メッシュ生地にて構成されている。ハッチング領域70aよりも外側の領域70bは上記の芯材を適当な表生地にて覆った構成である。表生地は表面4aと裏面4bとで異なってもよいし同一でもよい。なお、領域70aにも適宜芯材やクッション材等の内装材が設けられてよいが、その場合には図27に破線で示したように適宜の通気孔72…72を内装材に設けることが望ましい。なお、シート本体62の下部から底支持部63にかけての領域70aには芯材やクッション材といった内装材が設けられず、縦抱き用シート4は図示の状態から幅方向に縮めることが可能である。シート本体62の表面側には立体メッシュ生地に覆われるようにして一対のスナップ73a、73bが幅方向に距離を空けて設けられている。これらのスナップ73a、73bを嵌め合わせることにより、シート本体62の下部の幅を狭めた状態に保持することが可能である。幼児を前向き抱っこする場合にこのように幅を狭めることにより、幼児の股部分を十分に解放して快適性を向上させることができる。
底支持部63は子守帯本体2と組み合わされることにより幼児保持用の袋状部分の底部を形成するために設けられている。図25及び図27に示すように底支持部63には左右一対のアジャストベルト75、75が設けられている。各アジャストベルト75の先端にはオスバックル26aが取り付けられている。各オスバックル26aは子守帯本体2のメスバックル26bと噛み合い可能である。アジャストベルト75に対するオスバックル26aの取付位置はアジャストベルト75の長手方向に調整可能である。
さらに、底支持部63にはオスバックル26aを隠すためのフラップ76が設けられ、そのフラップ76にはスナップ29bが設けられている。スナップ29bは子守帯本体2のスナップ29a(図2参照)と噛み合い可能である。また、フラップ76にはアジャストベルト75を通すためのループベルト78が設けられている。オスバックル26aはこれらのループベルト78をくぐって縦抱き用シート4の下端側に引き出し可能である。
ヘッドサポート64は幼児100の頭部100aを保護する目的で設けられている。図25に示すように、ヘッドサポート64の両側からはサポートベルト80が延ばされており、それらのサポートベルト80の先端側にはフック81が取り付けられている。フック81は子守帯本体2の補助留め具31と噛み合い可能である。フック81はサポートベルト80の裏面4b側に取り付けられている。つまり、フック81はサポートベルト80に対して表裏逆に取り付けられており、補助留め具31にフック81を引っ掛ける際にはサポートベルト80を捻る必要がある。その理由は後述する。なお、図26及び図27に示すように、サポートベルト80にはフック81を覆うようにヘッドフックカバー82が取り付けられる。図25ではヘッドフックカバー82の図示が省略されている。ヘッドフックカバー82を設けたのはフック81が幼児100の顔等に当たらないようにするためである。洗濯等の便宜を図るため、ヘッドフックカバー82はサポートベルト80から抜き取り可能である。
さらに、ヘッドサポート64には上下方向に間隔を設けられた3本の縫い目線83によって区分されている。これらの縫い目線83毎に芯材等が分けられることにより、ヘッドサポート64はいずれかの縫い目線83を境として外側(表面4aの側)に折り曲げ可能である。
次に、縦抱き用シート4の使用方法について説明する。図28は縦抱き用シート4を子守帯本体2に装着した状態を示している。この図に示すように、縦抱き用シート4を子守帯本体2に取り付けるには、縦抱き用シート4を裏返した状態で矢印dに示すように底支持部63の各オスバックル26aを子守帯本体2のメスバックル26bに装着し、スナップ29a、29bを相互に噛み合わせて子守帯本体2と縦抱き用シート4の底支持部63とを連結する。連結後に縦抱き用シート4を上方に折り返して底支持部63により幼児100の下から支えるループを形成する。また、脇下ベルト65については矢印eに示すようにオスバックル66aを留め具25に裏側から通し、留め具25の表側に脇下ベルト65を引き出す。そして、矢印fに示すようにオスバックル66aを縦抱き用シート4に固定されたメスバックル66bに装着して脇下ベルト65によるループを形成する。さらに、ヘッドサポート64から延びたサポートベルト80のフック81を矢印gに示すように補助留め具31に対して外側から引っ掛ける。以上のような手順を踏むことにより、図28に示したように縦抱き用シート4を子守帯本体2に固定してそれらの間に幼児100を収容するポケットを形成することができる。なお、オスバックル66aからは脇下ベルト65の余長部65aが折り返されているので、仮にオスバックル66aがメスバックル66bから外れることがあっても、余長部65aが留め具25に引っ掛かってオスバックル66aは留め具25をすり抜けることができない。これにより、安全性が高められている。この点はハンギングベルト56と留め具25との関係と同じである。
図28の状態では、底支持部63によって形成されたループの底部に幼児の臀部が載せられ、幼児の脚部は底支持部63の側方に生じている股抜き用の開口85から縦抱き用シート4の外部へ突き出される。また、幼児の腕は腕抜き部69の部分に生じた開口から縦抱き用シート4の外部へ突き出され、その幼児の脇下を脇下ベルト65が通ることになる。
以上の取り付け方法は、縦抱き用シート4を使用する対面抱っこ状態、前向き抱っこ状態及びおんぶ状態に共通する基本的な方法であるが、本実施形態の子守帯1では、縦抱き用シート4の各部の調整機能を利用して様々な使用方法を実現することができる。以下、これらについて説明する。
(縦抱き用シートの深さ調整について)
本実施形態の子守帯1においては、アジャストベルト75に対するオスバックル26aの取付位置を変化させることによって縦抱き用シート4の底支持部63の深さ、換言すれば底支持部63による幼児の臀部の支持位置を上下方向に変化させることができる。すなわち、アジャストベルト75を短くすれば底支持部63の深さを減少させることができ、アジャストベルト75を長くすれば底支持部63の深さを増加させることができる。図29はアジャストベルト75を短くした場合の底支持部63と子守帯本体2との連結手順を示し、図30はアジャストベルト75を長くした場合の底支持部63と子守帯本体2との連結手順を示している。
すなわち、底支持部63を浅くするには図29(a)に示すように、アジャストベルト75をループベルト78に通したままオスバックル26aの取付位置をアジャストベルト75の付け根(底支持部63に対する縫い付け位置)側に変化させることにより、アジャストベルト75を短くして底支持部63を部分的に折り畳む。この状態で図29(b)に示すようにオスバックル26aを子守帯本体2のメスバックル26bに差し込んでスナップ29a、29bを噛み合わせる。
一方、底支持部63を深くするには、図30(a)に示すようにアジャストベルト75をループベルト78に通したままオスバックル26aの取付位置をアジャストベルト75の先端側に変化させることによりアジャストベルト75を長くして、底支持部63を真っ直ぐに延ばす。この状態で図30(b)に示すようにオスバックル26aを含む底支持部63の下端部分を子守帯本体2の揺れ止めバンド30(図2参照)にくぐらせ、その後、図30(c)に示すようにオスバックル26aを子守帯本体2のメスバックル26bに差し込んでスナップ29a、29bを噛み合わせる。このように底支持部63の深さを調整すれば、縦抱き用シート4を利用した抱っこ状態又はおんぶ状態において、幼児の体格に応じた最適な深さで底支持部63をループ状に丸めることができる。なお、特に深さを増した場合において、底支持部63を揺れ止めバンド30に通すことにより、底支持部63の揺れを抑えることができる利点がある。すなわち、底支持部63の深さを増加させた場合には、底支持部63によって形成されるループの底がバックル26a、26bの連結位置よりも下方に遠く離れるため、バックル26a、26bの連結位置で底支持部63を拘束しても底支持部63に支持される幼児の臀部の前後左右の揺れを十分に抑えることができない。これに対して、メスバックル26bよりも下方にて揺れ止めバンド30を利用して底支持部63を前後左右に拘束すれば、底支持部63に支持された幼児の臀部の揺れを抑えることができる。
以上のような連結構造によれば、底支持部63を二組のバックル26a、26bによって子守帯本体2と連結するので、仮に一組のバックル26a、26bが外れたとしても底支持部63が子守帯本体2と連結された状態が維持され、安全性が高い。また、底支持部63によって形成されるループよりも高い位置にバックル26a、26bが配置されているので、底支持部63のループ状部分にクッション材等を入れて着座時の感触を改善することもできる。
なお、底支持部63による支持位置の調整は上記の構成に限らず、他の構成によっても実現することができる。図31(a)〜(d)はその一例を示している。この例では、子守帯本体2に上下二段にループバンド86が取り付けられ(図31(a))、縦抱き用シート4の底支持部63にはオスバックル26a及びメスバックル26bが取り付けられている(図31(b))。底支持部63を子守帯本体2に連結する際において、上下いずれかのループバンド86を選択し、選択されたループバンド86にオスバックル26aを通してからメスバックル26bと連結し、(図31(c))、その後に底支持部63をループ状に折り返す(図31(d))。これにより、底支持部63の連結位置を上下二段に変化させることができる。
また、図32(a)〜(d)は他の例を示している。この例では、子守帯本体2に上下二段にファスナ87aが取り付けられ(図32(a))、縦抱き用シート4の底支持部63にはファスナ87aと噛み合い可能なファスナ87bが取り付けられている(図32(b))。底支持部63を子守帯本体2に連結する際において、子守帯本体2側の上下いずれかのファスナ87aを選択し、選択されたファスナ87aと、底支持部63のファスナ87bとを揃えてチャック87cを引いて両者を噛み合わせる(図32(c))。その後に底支持部63をループ状に折り返し、クランプ87cの引き手87dを子守帯本体2の裏面側にスナップ88を利用して固定する(図32(d))。このような構造によっても底支持部63の連結位置を上下二段に変化させることができる。
(ヘッドサポートの折り返しについて)
図1において既に説明したように、本実施形態の子守帯1においては、縦抱き用シート4を利用する際にそのヘッドサポート64を3本の縫い目線83(図25、図27及び図28参照)のいずれかに沿って外側に折り返すことにより、異なるスタイルで使用することができる。図33に折り返した状態の一例を示す。上述したように、本実施形態ではサポートベルト80のフック81が裏表逆に取り付けられ、サポートベルト80を裏返すように半回転させてフック81を補助留め具31に取り付けることになる。従って、ヘッドサポート64を折り返した際にサポートベルト80に生じる捻れ方向と逆方向に予めサポートベルト80を半回転させてフック81を留め具31に取り付けておけば、ヘッドサポート64を折り返す際にサポートベルト80の捻れが解消することになり、フック81を留め具31に装着したまま円滑にヘッドサポート64を折り返すことができる。
なお、図1(d)及び図1(f)から明らかなように、ヘッドサポート64を最大限に折り返した際、幼児100の腕の位置によってはサポートベルト80が邪魔になることがあり、その場合には幼児100の脇下を通してサポートベルト80を通した上でフック81を留め具31に取り付けることがあり得る。
(子守帯本体の利点について)
次に、子守帯本体2のさらなる利点について説明する。まず、本実施形態では子守帯本体2に硬質樹脂からなる背板14が内蔵されているため、子守帯本体2に作用する荷重を肩帯11及び腰当部12に分散させることができる。このため、使用者における負担が軽減される。このような背板14を省略し、クッション材のみを子守帯本体2に内蔵した場合には子守帯本体2が幼児の自重で大きく変形し、使用者の肩又は腰に荷重が偏って作用する。
また、本実施形態では背板14の下部に折り曲げ部17を設けることにより、腰当部12をベース部10に対して曲げ変形可能としているため、幼児をソファ等の座面に座らせた状態から幼児を背負う場合において、その座面と子守帯本体2の下部とが接しても、腰当部12が適度に逃げることにより背板14の存在が邪魔にならない利点がある。
一方、縦抱き用シート4に関しては背板14のような剛体が内蔵されていないので、縦抱き用シート4に保持された幼児は脇下ベルト65によって脇の下から引っ張り上げられるようになる。このため、縦抱き用シート4が幼児の体格にフィットし易く、使用者と幼児との密着性を高めることができる。これにより、使用者の肩及び腰への荷重分散をさらに確実なものとし、使用者の負担を軽減することができる。
上述したように、子守帯本体2の肩帯11はたすき掛け状態及びリュック掛け状態のいずれにおいても使用可能であるが、たすき掛け状態は主として幼児を抱っこする際に使用され、リュック掛け状態は幼児をおんぶする際に使用される。このような使い分けをする場合において、仮に腰当部12の位置が不変であると、おんぶ状態で腰当部12が使用者の胸付近までせり上がり、その結果として幼児が使用者から離れてそのおんぶ位置が必要以上に下がることがあり、幼児の体重を使用者の腰回りに適切に分散できないことがある。これに対して、本実施形態の子守帯本体2はベース部10に対して腰当部12の位置を上下に変化させることができる。従って、おんぶ時には腰当部12を下げ、抱っこ時には腰当部12を上げることにより、おんぶ及び抱っこのいずれに対しても子守帯本体2の上下方向の長さを最適化することができる。これにより、上述したような幼児のおんぶ位置の低下を防ぎことができ、いずれの位置においても使用者の肩及び腰に荷重を分散させて使用者の負担を軽減することができる。
以上の実施形態においては、肩帯11が帯状物品に、腰当部12が固定部に、肩帯11に取り付けられたオスバックル32aが一方のバックルに、腰当部12に取り付けられたメスバックル32bが他方のバックル又は固定側バックルにそれぞれ相当する。本発明は以上の実施形態に限定されることなく、各種の形態にて実施してよい。例えば、腰当部にオスバックルを取り付けてもよい。本発明の連結構造は子守帯の肩帯と腰当部との連結部分に限らず、雌雄のバックルを利用した各種の連結構造に適用可能である。