JP4462875B2 - カチオン性ルテニウム担持ヒドロキシアパタイト - Google Patents
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Description
また、均一系の貴金属錯体を用いるルイス酸触媒(非特許文献3、非特許文献4)は、従来の卑金属系ルイス酸触媒には無い高い触媒活性と高い反応選択性を有するものではあったが、高価な触媒金属や配位子を反応後に反応混合物から回収することが困難であったために、実際には用途が限定されていた。
しかし、これらのハイブリッド触媒はその製造において多段階の工程を要したり、得られた触媒の触媒活性は元の均一系錯体触媒より劣っていたり、貴金属活性成分がマトリックスから溶出してしまったりする等、前記触媒の有する問題は解決されていなかった。
最近、このようなルテニウムハライド錯体をp−トルエンスルホン酸銀と処理してなる系がニトリルとカルボニル化合物とのアルドール反応の触媒となること(非特許文献6、非特許文献7)を見出したが、炭素−炭素結合生成反応により広範囲に適用される高活性なルイス酸触媒は得られていなかった。
Ca10-Z(HPO4)Z(PO4)6-Z(OH)2-Z・nH2O
[式中、Zは0〜1の数であり、nは0〜2.5の数である]
で表されるヒドロキシアパタイトにカチオン性ルテニウムを担持してなるカチオン性ルテニウム担持ヒドロキシアパタイトを提供する。
また、本発明は該カチオン性ルテニウム担持ヒドロキシアパタイトからなる不均一系ルイス酸触媒、該触媒を用いてα,β−不飽和カルボニル化合物と共役ジエンからディールスアルダー反応により環状付加体を得る方法、該触媒を用いてシリルエノールエーテルとカルボニル化合物からムカイヤマ−アルドール反応によりβ−ヒドロキシカルボニル化合物を得る方法、および、該触媒を用いてイソニトリルとカルボニル化合物からオキサゾリン誘導体を得る方法を提供する。
さらに、(A)上記式で表されるヒドロキシアパタイトを三ハロゲン化ルテニウム(III)で処理して一ハロゲン化ルテニウム担持ヒドロキシアパタイトを得る工程と、(B)(A)工程で得られた一ハロゲン化ルテニウム担持ヒドロキシアパタイトを脱ハロゲン化剤と反応させる工程とを有する前記カチオン性ルテニウム担持ヒドロキシアパタイトの製造方法を提供する。
また、本発明の製造方法は、上記カチオン性ルテニウム担持ヒドロキシアパタイトの製造に有用なものである。
出発原料となるヒドロキシアパタイトは、例えば、蒸発乾固法、固相反応法、水熱合成法、沈殿反応法、加水分解法等の公知の方法、好ましくは、水熱合成法、沈殿反応法、加水分解法、より好ましくは、沈殿反応法により製造することができる。
例えば、以下のような方法が挙げられる。まず始めに、リン酸水素アンモニウム水溶液にアンモニア水を添加してpHを11に調整する。この溶液にアンモニア水でpHを予め11に調整した1.00〜2.00モル当量、好ましくは1.30〜1.80モル当量、より好ましくは1.50モル当量または1.67モル当量の硝酸カルシウムを含む硝酸カルシウム水溶液を添加し、通常0〜100℃、好ましくは20〜95℃、より好ましくは70〜90℃で、通常10〜600分間、好ましくは10〜200分間、より好ましくは10〜60分間、その状態を保持した後、生じた沈殿を濾過、洗浄、乾燥することによりヒドロキシアパタイトが得られる。例えば、硝酸カルシウムを1.50モル当量用いた場合、上記式においてZ=0のヒドロキシアパタイト:Ca10(PO4)6(OH)2・nH2Oが、また、硝酸カルシウムを1.67モル当量用いた場合、Z=1のヒドロキシアパタイト:Ca9(HPO4)(PO4)5(OH)・nH2Oが得られる。
上記式中、Zは0〜1の数であることが必要であり、好ましくは0〜0.5の数、より好ましくは0である。Zが1を超えると、Ca欠損型の結晶構造となり好ましくない。nは0〜2.5の数であることが必要であり、好ましくは0〜2.0、より好ましくは0〜1.0の数である。nが2.5を超えると、取り扱い中に脱水による結晶構造の変化が起こり好ましくない。
本発明のカチオン性ルテニウム担持ヒドロキシアパタイトは、
(A)上記式で表されるヒドロキシアパタイトを三ハロゲン化ルテニウム(III)で処理して一ハロゲン化ルテニウム担持ヒドロキシアパタイトを得る工程と、
(B)(A)工程で得られた一ハロゲン化ルテニウム担持ヒドロキシアパタイトを脱ハロゲン化剤と反応させる工程、
とを有する方法により製造することができる。
(A)工程は、具体的には、上記式で表されるヒドロキシアパタイトのスラリーに、三ハロゲン化ルテニウム(III)(RuX3)溶液を添加し、攪拌することにより、ルテニウムが前記ヒドロキシアパタイトに担持され、一ハロゲン化ルテニウム担持ヒドロキシアパタイト(XRu/HAP)の粉末を得る工程である。
前記ヒドロキシアパタイトヘのルテニウムの担持量は、特に限定されないが、通常1.0μmol/g〜2mmol/g、好ましくは10μmol/g 〜1.5mmol/g、より好ましくは20μmol/g〜1.2mmol/gである。
(B)工程は、具体的には、(A)工程で得られた一ハロゲン化ルテニウム担持ヒドロキシアパタイト(XRu/HAP)を、担持されているルテニウムに対して1〜1.2倍モル、好ましくは1.1倍モルの脱ハロゲン化剤の水溶液に添加してスラリー化させ、空気中または不活性雰囲気下で攪拌することにより、カチオン性ルテニウム担持ヒドロキシアパタイト(Ru+/HAP)を得る工程である。
前記脱ハロゲン化剤としてアルカリ金属の弱配位性アニオン塩を使用する場合、前記ハロゲンイオン引き抜きの速度は、タリウムや銀の弱配位性アニオン塩、特に銀の弱配位性アニオン塩に比べて遅くなるが、生成するアルカリ金属ハロゲン化物は水に可溶であり、濾過・洗浄によって目的とするカチオン性ルテニウム担持ヒドロキシアパタイトを容易に単離することができる。
反応系の雰囲気としては、特に限定されないが、例えば空気中で取り扱うと、得られるカチオン性ルテニウム担持ヒドロキシアパタイトが触媒として一部不活性化する場合があるので、高い触媒活性を保持する点から、好ましくは、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス、より好ましくは、窒素またはアルゴンの雰囲気で取り扱うことが望ましい。
上記で得られたカチオン性ルテニウム担持ヒドロキシアパタイト(Ru+/HAP)の構造は、元素分析、XPS、XANES等を組み合わせて用いることにより同定することができる。その推定構造を、図2に示す。前記同定の方法は、具体的には、以下の方法による。まず、アルカリ金属の弱配位性アニオン塩の処理で得られたカチオン性ルテニウム担持ヒドロキシアパタイトの元素分析およびXPSを用いて測定、データ解析を行うことにより、カチオン性ルテニウム担持ヒドロキシアパタイトにハロゲンイオンが含まれていないことが確認される。そして、カチオン性ルテニウム担持ヒドロキシアパタイトのルテニウムのK−端XANESスペクトルを用いて測定およびデータ解析を行うことにより、該スペクトルは元のXRu/HAPと類似のスペクトルを示すことが確認される。このことから、ルテニウムがRu3+の酸化状態で存在すると考えられる。
したがって、ルテニウムがRu3+の状態およびハロゲンイオンが引き抜かれた状態にあることから、ルテニウムはモノカチオン状態で担持されていると推定される。
以下、前記カチオン性ルテニウム担持ヒドロキシアパタイトの不均一系ルイス酸触媒としての特長について詳しく説明する。
本発明のカチオン性ルテニウム担持ヒドロキシアパタイトは、通常用いられる反応溶媒、特に水溶媒に不溶であり、該反応溶媒中で安定である。その上、さらに、該ヒドロキシアパタイトを不均一系ルイス酸触媒として用いる場合、従来の均一系錯体触媒を用いるルイス酸触媒で知られていた炭素−炭素結合生成反応に対し、それらと同等もしくはそれ以上の高い触媒活性を示す。
特に、前記(B)工程で、脱ハロゲン化剤としてヘキサフルオロアンチモン酸銀(AgSbF6)を用いた場合(以下、「Ru+/HAP−(I)」という)には、ディールスアルダー反応に高い触媒活性を示す。また、該脱ハロゲン化剤としてトリフルオロメタンスルホン酸銀(AgOTf)を用いた場合(以下、「Ru+/HAP−(II)」という)には、アルドール反応、ムカイヤマ−アルドール反応、付加環化反応、クネーベネーゲル反応等に高い触媒活性を示す。
上述した本発明の触媒を用いた反応の反応様式の代表例を図1に示す。図1において、スキーム1はディールスアルダー反応の反応様式であり、スキーム2はアルドール反応の反応様式であり、スキーム3はイソニトリル付加環化反応の反応様式であり、スキーム4はムカイヤマ−アルドール反応の反応様式である。なお、本発明の触媒が適用できる反応は、これらの代表例に限定されるものではない。
一方、本発明の触媒、特にRu+/HAP−(I)によるディールスアルダー反応は、ジエノフィルとしてα,β−不飽和カルボニル化合物を用いた場合でも、ほぼ定量的な転化率で環状付加体を与える。本発明のカチオン性ルテニウム担持ヒドロキシアパタイト触媒を用いるディールスアルダー反応では、1:1のモル比で仕込んだ基質のジエンとジエノフィルの反応が終了した後、再び1:1のモル比のジエンとジエノフィルを仕込むとさらに反応が進行し、再び環状付加体を1回目と同様な収率で得ることができる。同様にして、3回目以上繰返しても、ほとんど活性が低下することなく前記反応を継続することができる。
さらに、本発明の触媒、特にRu+/HAP−(II)は、水溶媒中でのニトリルとカルボニル化合物とのアルドール反応に有効であり、対応するα,β−不飽和ニトリルを高収率(90〜100%)で与える。
ジシアノメタンと脂環式α,β−不飽和カルボニル化合物とのアルドール付加反応は既に公知(ケミカルエンジニアリング、2002年第47巻第9号第676〜682頁)であるが、本発明の触媒を用いるアルドール反応は、上記の例より幅広い基質に対して適用可能である。
特にホルムアルデヒド等の水溶性のカルボニル化合物は、従来のTiCl4、SnCl3等のルイス酸触媒では煩雑な操作によって無水状態としなければ使用することができなかったが、本発明の触媒系では系中に水が存在していても、全く影響されることなく高収率(80〜100%)で目的物を得ることができる。
本発明の触媒は基質1モルに対して通常0.01〜20モル%、好ましくは0.1〜10モル%、より好ましくは0.5〜5モル%の範囲で用いられる。
〔ヒドロキシアパタイトの合成〕
<合成例>
リン酸水素二アンモニウム(NH4)2HPO440mmolを水150mLに溶解し、そこへ30%アンモニア水溶液を加えてpHが11となるように調整した。次いで、この溶液を25℃で激しく攪拌しながら、予め30%アンモニア水溶液でpHが11となるように調整した硝酸カルシウム4水和物66.7mmolの水溶液を滴下した。滴下終了後も攪拌を継続し、30分かけて90℃まで昇温し、そのままの状態で20分間保持した。その後、90分かけて25℃まで放冷した。得られた結晶を濾過し、それを脱イオン水により濾液の電導度が20μS以下となるまで洗浄した後、110℃で16時間保持することにより乾燥させて、式:Ca10(PO4)6(OH)2で表されるヒドロキシアパタイト(HAP−0)を得た。
該ヒドロキシアパタイトのBET比表面積は45m2/gであり、格子面間隔d=2.81の結晶子径は30nmであった。
<実施例1>
0.0134Mの塩化ルテニウム水和物RuCl3・nH2Oの脱イオン水溶液75mLに、ヒドロキシアパタイト(以下、「HAP」という)粉末0.9gを添加し、得られたスラリーを25℃で24時間攪拌した。次いで、前記スラリーを濾過し、固体を脱イオン水で洗浄した後、真空下で乾燥することにより、暗褐色の塩化ルテニウム担持HAP粉末(ClRu/HAP、Ru含有量:0.97mmol/g)を得た。
このClRu/HAP粉末1.0gに脱イオン水75mLを加え、攪拌してスラリー化し、これにトリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム(NaOTf)0.20gの含まれた脱イオン水溶液7.5mLを添加し、室温でアルゴン気流中、16時間攪拌保持した。次いで、濾過し、脱イオン水で洗浄し、真空乾燥することにより、カチオン性ルテニウム担持HAP触媒(即ち「Ru+(OTf)-/HAP」であり、以下「Ru+/HAP」という)1.1gを得た。
k3−重み付けしたルテニウムのK−端のEXAFSのフーリエ変換では、隣接したRu−Ruサイトの存在に帰属される3.5Å付近のピークは検知されなかった。Ru+/HAPの逆フーリエ変換は、元のClRu/HAP中のRu−Cl結合(2.32Å)が、NaOTfによる処理によって、弱く結合した水配位子に帰属されるRu−O結合(2.10Å)に置換されたことを示した。
このように、Ru+/HAPはHAPの表面にカチオン性のルテニウムリン酸塩錯体が形成されて生成したものと推察される。
<実施例2−1>
パイレックス製反応器にClRu/HAP粉末をRuとして0.5mmol取り、系内をアルゴン置換しながら水40mLを加え、攪拌してスラリー化した。これにヘキサフルオロアンチモン酸銀(AgSbF6)0.196gの脱イオン水溶液4mLを添加し、室温で、アルゴン気流下、攪拌を継続した。
前記攪拌を5時間継続した後、溶媒を除去し、固体を真空乾燥した。次いで、アルゴン雰囲気下で、溶媒であるニトロメタン50mLを添加し、さらにジエンとしてシクロペンタジエン(1a)10mmolを、ジエノフィルとしてメチルビニルケトン(2a)12mmolを添加した。得られた混合物を室温で攪拌し、反応の進行状況を反応液のガスクロマトグラフ分析でモニターした。以下、特に断らない限り、転化率および収率はガスクロマトグラフ分析の結果を示す。
前記攪拌の開始から4時間後、基質(シクロペンタジエンおよびメチルビニルケトン)がなくなり、5−アセチル−2−ノルボルネン(エンド:エキソ=90:10)が92%の収率で得られた。以上の一連の反応を「反応サイクルA」とする。なお、エンド:エキソの比率は1HNMRスペクトルで同定した。
得られた結果を表1に示す。
弱配位性アニオン塩としてヘキサフルオロアンチモン酸銀(AgSbF6)0.196gの脱イオン水溶液4mLの代わりにトリフルオロメタンスルホン酸銀(AgOTf)0.146gの脱イオン水溶液4mLを添加した以外は、実施例2−1と同様にして反応を行った。
得られた結果を表1に示す。
ジエノフィルとしてメチルビニルケトン(2a)の代わりにメチルアクリレート(2b)を添加し、5時間反応させた以外は、実施例2−1と同様にして反応を行った。
得られた結果を表1に示す。
ジエノフィルとしてメチルビニルケトン(2a)の代わりにナフトキノン(2c)を添加し、4時間反応させた以外は、実施例2−1と同様にして反応を行った。
得られた結果を表1に示す。
ジエンとしてシクロペンタジエン(1a)の代わりにシクロヘキサジエン(1b)を、ジエノフィルとしてメチルビニルケトン(2a)の代わりにベンゾキノン(2d)を添加し、6時間反応させた以外は、実施例2−1と同様にして反応を行った。
得られた結果を表1に示す。
ジエンとしてシクロペンタジエン(1a)の代わりに2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン(1c)を、ジエノフィルとして(2a)の代わりにベンゾキノン(2d)を添加し、6時間反応させた以外は、実施例2−1と同様にして反応を行った。
得られた結果を表1に示す。
ジエンとしてシクロペンタジエン(1a)の代わりに2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン(1c)を、ジエノフィルとしてメチルビニルケトン(2a)の代わりに無水マレイン酸(2e)を添加し、6時間反応させた以外は、実施例2−1と同様にして反応を行った。
得られた結果を表1に示す。
<実施例8−1>
パイレックス製反応器にClRu/HAP粉末をRuとして0.05mmol取り、系内をアルゴン置換しながら水40mLを加え、攪拌してスラリー化した。これにトリフルオロメタンスルホン酸銀(AgOTf)14.6mgの脱イオン水溶液0.4mLを添加し、室温で、アルゴン気流下、攪拌を継続した。
前記攪拌を5時間継続した後、溶媒を除去し、固体を真空乾燥した。次いで、アルゴン雰囲気下で水5mLを添加し、さらにニトリルとしてエチルシアノアセテート(3a)1mmolを、カルボニル化合物としてベンズアルデヒド1.2mmolを添加した。得られた混合物を室温で攪拌し、反応の進行状況を反応液のガスクロマトグラフィー分析でモニターした。
前記攪拌の開始から4時間後、基質(エチルアセテートおよびベンズアルデヒド)がなくなり、(E)−エチル−2−シアノ−3−フェニル−2−プロペノエート(4a)が99%以上の収率で得られた。以上の一連の反応を「反応サイクルB」とする。得られた結果を表2に示す。
2回目、3回目の(E)−エチル−2−シアノ−3−フェニル−2−プロペノエート(4a)の収率はいずれの場合も97%であった。このように、毎回ほぼ定量的に反応が進行し、触媒活性の低下は確認されなかった。
弱配位性アニオン塩としてトリフルオロメタンスルホン酸銀(AgOTf)14.6mgの脱イオン水溶液0.4mLの代わりにヘキサフルオロアンチモン酸銀(AgSbF6)19.6mgの脱イオン水溶液0.4mLを添加した以外は、実施例8−1と同様にして反応を行った。
得られた結果を表2に示す。
ニトリルとしてエチルシアノアセテート(3a)の代わりにシアノアセトアミド(3b)を添加して、4時間反応させた以外は、実施例8−1と同様にして反応を行った。
その結果、対応するα,β−不飽和ニトリル生成物(4b)が得られた。得られた結果を表2に示す。
カルボニル化合物としてベンズアルデヒドの代わりにシンナムアルデヒドを添加して、50℃で8時間反応させた以外は、実施例8−1と同様にして反応を行った。
その結果、対応するα,β−不飽和ニトリル生成物(4c)が得られた。得られた結果を表2に示す。
カルボニル化合物としてベンズアルデヒドの代わりにn−ブチルアルデヒドを添加して、50℃で3時間反応させた以外は、実施例8−1と同様にして反応を行った。
その結果、対応するα,β−不飽和ニトリル生成物(4d)が得られた。得られた結果を表2に示す。
カルボニル化合物としてベンズアルデヒドの代わりに3−シクロヘキセンカルボキシアルデヒドを添加して、50℃で5時間反応させた以外は、実施例8−1と同様にして反応を行った。
その結果、対応するα,β−不飽和ニトリル生成物(4e)が得られた。得られた結果を表2に示す。
ニトリルとしてエチルシアノアセテート(3a)の代わりにジシアノメタン(3c)を添加して、80℃で6時間反応させた以外は、実施例8−1と同様にして反応を行った。
その結果、対応するα,β−不飽和ニトリル生成物(4f)が得られた。得られた結果を表2に示す。
ニトリルとしてエチルシアノアセテート(3a)の代わりにジシアノメタン(3c)を、カルボニル化合物としてベンズアルデヒドの代わりにシクロヘキサノンを添加して、80℃で3時間反応させた以外は、実施例8−1と同様にして反応を行った。
その結果、対応するα,β−不飽和ニトリル生成物(4g)が得られた。得られた結果を表2に示す。
ニトリルとしてエチルシアノアセテート(3a)の代わりにジシアノメタン(3c)を、カルボニル化合物としてベンズアルデヒドの代わりにシクロペンタノンを添加して、80℃で5時間反応させた以外は実施例8−1と同様にして反応を行った。
その結果、対応するα,β−不飽和ニトリル生成物(4h)が得られた。得られた結果を表2に示す。
ニトリルとしてエチルシアノアセテート(3a)の代わりにジシアノメタン(3c)を、カルボニル化合物としてベンズアルデヒドの代わりに2−シクロペンテノン(5a)を添加して、80℃で8時間反応させた以外は、実施例8−1と同様にして反応を行った。
その結果、対応するα,β−不飽和ニトリル生成物が90%の収率で得られた。
ニトリルとしてエチルシアノアセテート(3a)の代わりにジシアノメタン(3c)を、カルボニル化合物としてベンズアルデヒドの代わりに2−シクロヘキセノン(5b)を添加して、80℃で8時間反応させた以外は、実施例8−1と同様にして反応を行った。
その結果、対応するα,β−不飽和ニトリル生成物が89%の収率で得られた。
パイレックス製反応器にClRu/HAP粉末をRuとして2mmol取り、系内をアルゴン置換しながら水4Lを加え、攪拌してスラリー化した。これにトリフルオロメタンスルホン酸銀(AgOTf)0.59gの脱イオン水40mL溶液を添加し、室温で、アルゴン気流下、攪拌を継続した。
前記攪拌を5時間継続した後、溶媒を除去し、固体を真空乾燥した。次いで、アルゴン雰囲気下で水500mLを添加し、さらにニトリルとしてエチルシアノアセテート(3a)100mmolを、カルボニル化合物としてベンズアルデヒド120mmolを添加した。得られた混合物を50℃で攪拌し、24時間反応させ、生成物(E)−エチル−2−シアノ−3−フェニル−2−プロペノエート(4a)が18.9g(収率:94%)得られた。
<実施例19>
溶媒として水の代わりにTHF5mlを、ニトリルとしてエチルシアノアセテート(3a)の代わりにメチルイソシアノアセテート(6)1mmolを添加して、12時間反応させた以外は、実施例8−1と同様にして反応を行った。その結果、4−(メトキシカルボニル)−5−フェニル−2−オキサゾリン(7)(トランス:シス=9:1)が90%の収率で得られた。
なお、トランス:シスの比は1HNMRスペクトルにて決定した。
<実施例20>
パイレックス製反応器にClRu/HAP粉末をRuとして0.05mmol取り、系内をアルゴン置換しながら水40mLを加え、攪拌してスラリー化した。これにトリフルオロメタンスルホン酸銀(AgOTf)14.6mgの脱イオン水0.4mL溶液を添加し、室温で、アルゴン気流下、攪拌を継続した。
前記攪拌を5時間継続した後、溶媒を除去し、固体を真空乾燥した。次いで、アルゴン雰囲気下で、溶媒であるジニトロメタン5mLを添加し、さらにベンズアルデヒド1mmolと1−メトキシ−1−トリメチルシロキシプロペン(8a)1.2mmolを添加した。得られた混合物をアルゴン気流下、室温で攪拌し、反応の進行状況を反応液のガスクロマトグラフ分析でモニターした。
前記攪拌の開始から20時間後、トリフルオロ酢酸0.1mLと脱イオン水0.1mLを添加した。更に30分間攪拌させ、反応混合物として、2−フェニル−2−ヒドロキシ−1−メチルプロピオン酸メチル(9a)が90%の収率で得られた。
1−メトキシ−1−トリメチルシロキシプロペンの代わりに1−メトキシ−1−トリメチルシロキシエチレン(8b)1.2mmolを添加した以外は、実施例20と同様にして反応を行った。その結果、対応するβ−ヒドロキシカルボニル化合物(9b)が89%の収率で得られた。
ルテニウム担持ヒドロキシアパタイト、カチオン性ルテニウム担持ヒドロキシアパタイト、および、カチオン性ルテニウム担持ヒドロキシアパタイトに対するα−シアノアセテート付加体のRu−K端EXAFS分析ならびにX線吸収スペクトルの測定は、西播磨の放射光研究施設JASRIのSpring-8のビームライン01B1にSi(III)モノクロメーターを付けて行った。
上記で得られたデータの解析は公知の方法(T.Tanaka et al., J.Chem.Soc., Faraday Trans. 1988,84,2987)に従って行った。
本発明の触媒(Ru+/HAP−(I))のk3−重み付けされたRu−K端EXAFS実験データのフーリエ変換(FT)を示すグラフを図5に、逆フーリエ変換(逆FT)を示すグラフ(点線は、4〜12Å-1の範囲のカーブフィッティング懸架を示す)を図6に示す。
本発明の触媒へのニトリルの付加中間体(エチルシアノアセテート(3a)で処理されたRu+/HAP−(II))のk3−重み付けされたRu−K端EXAFS実験データのフーリエ変換(FT)を示すグラフを図7に、逆フーリエ変換(逆FT)を示すグラフ(点線は、4〜12Å-1の範囲のカーブフィッティング懸架を示す)を図8に示す。
なお、以上において、逆フーリエ変換(逆FT)はそれぞれ、図4の0.8〜2.8Å、図6の0.8〜2.9Åおよび図8の0.8〜2.8Åの領域において行った。
Claims (6)
- 一般式:
Ca10-Z(HPO4)Z(PO4)6-Z(OH)2-Z・nH2O
[式中、Zは0〜1の数であり、nは0〜2.5の数である]
で表されるヒドロキシアパタイトにカチオン性ルテニウムを担持してなるカチオン性ルテニウム担持ヒドロキシアパタイトからなる、シリルエノールエーテルとカルボニル化合物とのムカイヤマ−アルドール反応またはイソニトリルとカルボニル化合物との付加環化反応用の不均一系ルイス酸触媒。 - 前記カチオン性ルテニウムのヒドロキシアパタイトへの担持量が1.0μmol/g〜2.0mmol/gである、請求項1に記載の不均一系ルイス酸触媒。
- 請求項1または2に記載の触媒を用いて、シリルエノールエーテルとカルボニル化合物からムカイヤマ−アルドール反応によりβ−ヒドロキシカルボニル化合物を製造する方法。
- 上記カルボニル化合物が脂肪族、脂環式、若しくは芳香族のケトン若しくはアルデヒドである、請求項3の方法。
- 請求項1または2に記載の触媒を用いて、イソニトリルとカルボニル化合物から付加環化反応によりオキサゾリン誘導体を製造する方法。
- イソシアノアセテートとベンズアルデヒドとからオキサゾリン誘導体を製造する、請求項5に記載の方法。
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