JP4461631B2 - スイッチングアンプ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オーディオ信号をスピーカ駆動用に増幅させるオーディオパワーアンプ装置に関し、特にPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)方式などに変調された信号でスイッチング手段を直接駆動して電源増幅を行うスイッチングアンプ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、オーディオ信号をスピーカ駆動用に増幅させるパワーアンプ装置が各種製品化されている。このオーディオ信号を増幅させるパワーアンプ装置の1つの方式として、入力したデジタルオーディオ信号を変調した信号で、直接電源をスイッチングして、オーディオ信号を増幅させるデジタルパワーアンプ装置と称されるものが開発されている。このデジタルパワーアンプ装置の場合には、例えば入力したデジタルオーディオ信号に基づいて、パルス幅変調(PWM)されたPWM波(以下このPWM波をPWM信号を称する)を生成させ、このPWM信号により安定化された電源を高速でスイッチングさせ、そのスイッチングされた電源をフィルタに供給して、オーディオ信号成分を抽出させる処理を行って、スピーカ駆動信号を得るようにしたものである。
【0003】
図11は、アナログオーディオ信号と、それに対応して変換されたPWM信号とを対比して示した図である。例えば図11のAに示すような正弦波のアナログオーディオ信号があるとき、このアナログオーディオ信号の波形レベルの大小に応じて、パルス幅変調された図11のBに示すPWM信号を生成させる処理が行われる。このようにして生成されたPWM信号により、電源をスイッチングするスイッチング手段(パワースイッチ)のオン・オフを制御するものである。
【0004】
そして、スイッチング手段でスイッチングされた電源を、ローパスフィルタに供給して、高域成分をカットしてオーディオ信号帯域の成分を抽出することで、スピーカ駆動用の増幅信号が得られるものである。
【0005】
ここで、このようなデジタルパワーアンプ装置でスピーカ装置から出力されるオーディオの音量調整を、デジタルデータの段階で行う方法としては、次の2種類が知られている。1つ目の方法としては、PWM信号により示されるレベルを、ゲインコントロール回路で音量の調整値に対応して可変させる方法である。2つ目の方法としては、スイッチング手段に供給する電源の電圧値を、音量の調整値に対応して可変させる方法である。この2つの方法のいずれかを適用することで、出力オーディオ信号のレベル調整が行え、接続されたスピーカ装置から出力されるオーディオの音量調整が可能である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、いずれの音量調整方法であっても、歪みが比較的大きく発生する領域が存在し、出力オーディオ信号に歪みが発生する問題があり、出力オーディオ信号の音質を劣化させていた。例えば、ゲインコントロール回路で、パルス波形のハイレベル期間とローレベル期間との比率を調整して、音量の調整を行う場合には、音量を小さくしたときパルス幅が狭くなるが、このようにパルス幅が狭くなると、スイッチング手段でのスイッチング能力が劣化し、出力に歪みが生じてしまう。また、スイッチング手段でのスイッチング速度には限界があるため、非常にパルス幅を狭くすることは困難である。さらに、スイッチング手段でスイッチングする電源電圧を音量の設定値に対応させて変化させる場合には、特に最大定格電圧に近い領域で、出力に歪みが発生しやすい問題がある。
【0007】
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであり、スイッチング素子を使用したアンプ装置でのデジタル的な音量調整が、音質劣化なく行えるようにすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、入力したオーディオ信号のパルス波形のハイレベル期間とローレベル期間の比率からゲインを調整するゲインコントロール手段と、ゲインコントロール手段が出力するパルス波形から、スイッチング制御用の制御信号を生成させる処理手段と、処理手段が出力する制御信号により電源のスイッチング制御を行うスイッチング手段と、スイッチング手段の出力からオーディオ信号成分を抽出して出力オーディオ信号を得る抽出手段と、抽出手段が出力するオーディオ信号の音量を指示する音量指示手段と、音量指示手段で指示されたレベルが、第1のレベルからこの第1のレベルよりも高い第2のレベルまでの間は、ゲインコントロール手段でのゲイン調整で音量調整を実行させ、第2のレベルからこの第2のレベルよりも高い第3のレベルまでの間は、スイッチング手段に供給する電源の電圧値の制御で音量調整を実行させ、第3のレベルからこの第3のレベルよりも高い第4のレベルまでの間は、ゲインコントロール手段でのゲイン調整で音量調整を実行させる制御を行う制御手段とを備えたものである。
この場合に制御手段は、さらに第4のレベルからこの第4のレベルよりも高い第5のレベルまでの間で、スイッチング手段に供給する電源の電圧値の制御で音量調整を実行させるようにした。
或いは第2のレベルから第3のレベルまでの範囲は、スイッチング手段でのスイッチングで歪みの発生が少ない電圧範囲に対応した範囲に選定した。
或いは制御手段は、ゲインコントロール手段でのゲイン調整で音量調整を実行させる制御を行うとき、音量の増加に伴って、スイッチング手段に供給する電源の電圧値を若干低下させる制御を行う。
或いは制御手段は、入力したオーディオ信号の平均レベル又は出力オーディオ信号が供給される負荷特性によって、第2及び第3のレベルの値を可変設定するようにした。
【0009】
本発明によると、第2,第3のレベルの値を適正に選択することで、スイッチング手段に供給する電源の電圧値の制御により音量調整が行われる範囲を、歪みが少ない範囲だけで実行させることができ、ゲインコントロール手段でのゲイン調整と電源電圧調整とを良好に組み合わせた低歪みの音量調整が可能になる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施の形態について説明する。
【0011】
図1は、本例のデジタルパワーアンプ装置10の全体構成を示す図である。本例のデジタルパワーアンプ装置10は、外部のオーディオ信号源(図示せず)から端子11に得られるデジタルオーディオ信号を、ゲインコントロール部12に供給する。この場合、入力端子11に得られるデジタルオーディオ信号としては、例えばコンパクトディスク(CD)から再生したマルチビット(例えば16ビット)方式のデジタルオーディオデータ(即ち例えば1サンプルを16ビットで表したデータ)である。
【0012】
このゲインコントロール部12は、供給されるデータにゲインを設定する演算を行って、ゲイン制御を行う回路であり、中央制御ユニット(CPU)20からの指示でゲイン制御が行われる。本例の場合には、CPU20で音量調整を行うときに、ゲイン制御が行われる。具体的な音量とゲインとの設定例については後述する。
【0013】
ゲインコントロール部12でゲイン制御が行われた信号をPWM変換した場合を、図2を参照して説明すると、例えば1単位のパルスが期間t0 で示されるとき、図2のA〜Eに示すように前半がハイレベルで後半がローレベルになるパルスで、音声波形が示されているとする。この図2のA〜Eに示すパルス波形は、幅W1 の範囲内でのパルス波形の立ち下がり位置の変化を使用して音声波形を示したものである。期間t0 内でハイレベル期間とローレベル期間とが等しい図2のCに示す状態が、レベル0の状態であり、最もハイレベル期間が長くなっている図2のAに示す状態が、一方(例えば+側)に最大レベルとなった状態であり、最もローレベル期間が長くなっている図2のEに示す状態が、他方(例えば−側)に最大レベルとなった状態である。
【0014】
この図2のA〜Eに示す波形変化で示される音声波形をゲイン調整して、ゲインを小さくしたとき、例えば図2のF〜Jに示す波形となる。この図2のF〜Jに示すパルス波形は、幅W2 (但しW2 <W1 )の範囲内でのパルス波形の変化を使用して音声波形が示されるようにしたもので、図2のFのパルスが図2のAのパルスのゲインを小さくした場合で、図2のGのパルスが図2のBのパルスのゲインを小さくした場合で、図2のHのパルスが図2のCのパルスのゲインを小さくした場合で、図2のIのパルスが図2のDのパルスのゲインを小さくした場合で、図2のJのパルスが図2のEのパルスのゲインを小さくした場合である。期間t0 内でハイレベル期間とローレベル期間とが等しい図2のHに示す状態が、レベル0の状態である。
【0015】
このようにゲインコントロール部12で単位期間あたりのハイレベル期間とローレベル期間の比率を変化させることで、結果的に出力音声信号のゲインが制御されることになる。なお、図2に示す1単位の期間t0 の両端部の所定幅t1 は、後述するスイッチング増幅部15でのスイッチング速度が追随しないために、パルス波形が変化することを設定するのが困難な位置である。また、この幅t1 に続いた所定幅t2 の範囲では、スイッチング増幅部15で増幅された出力にある程度の歪みが発生する。従って、幅W1 として使用できる最大幅は、本例の場合、1単位の期間t0 の90%としてある。後述する調整状態の説明では、この最大のゲインを設定した状態をゲイン0.9と称する。また、最もゲインを小さくした状態は、本例ではゲイン0.1(ゲイン0.9の1/9の状態)としてある。
【0016】
図1の説明に戻ると、このようにしてゲインコントロール部12でゲイン制御された信号は、デルタシグマ変換器13で1ビット方式のデジタルオーディオデータに変換され、さらにPWM変換部14に供給され、スイッチング素子を駆動するためのPWM信号を生成させる。PWM変換部14の具体的な構成としては、例えばデジタルデータをデルタシグマ変調されたデータに基づいてPWM信号を生成させる変調回路とで構成される。
【0017】
PWM変換部14で生成されたPWM信号は、スイッチング増幅部15に供給し、電源回路18から供給される安定化された直流電源を、PWM信号に基づいてオンオフ制御し、電源にオーディオ信号成分を重畳させる。スイッチング増幅部15が備えるスイッチング素子としては例えば電界効果トランジスタを使用する。スイッチング増幅部15でスイッチングされた信号は、ローパスフィルタ(LPF)16に供給して、スイッチングにより発生した高周波成分を除去してオーディオ信号成分だけを抽出し、その抽出されたオーディオ信号成分を、スピーカ駆動信号としてスピーカ接続端子17に接続されたスピーカ装置1に供給し、このスピーカ装置1から所定の音量でオーディオ(音声)を出力させる。
【0018】
ここで、本例の電源回路18としては、出力直流電源の電圧値が可変できる可変電源を使用してあり、CPU20により電圧値が制御されるようにしてある。このCPU20による電源電圧値の制御は、CPU20での音量調整状態に対応して行われる。具体的には、例えばスイッチング増幅部15でスイッチングされたパルス波形が、例えば図3のAに示す波形であるとすると、このパルス波形の波高値V1 が電源電圧に相当する。ここで、CPU20の制御で、図3のBに示すように、より高い波高値V2 のパルス波形とするような電源電圧として、出力オーディオ信号の音量を上げたり、図3のCに示すように、さらに高い波高値V3 のパルス波形とするような電源電圧として、出力オーディオ信号の音量をさらに上げるようにすることが可能としてある。本例の場合には、電源電圧として例えば3Vから30Vまでの範囲に可変できるような可変電源回路を使用してある。この電源電圧と音量調整状態との関係の詳細については後述する。
【0019】
なお、このデジタルパワーアンプ装置10は、各種操作キーや音量調整用のボリュームつまみ等で構成される操作部19を備えて、この操作部19の操作状況をCPU20が判断して、CPU20が音量調整などの各種制御を行うようにしてある。
【0020】
次に、本例のデジタルパワーアンプ装置10での音量調整時の制御例を、図4のフローチャートを参照して説明する。この音量調整は、操作部19内の音量調整用のボリュームつまみの操作があったとき、CPU20の制御で実行する。なお、この例では、ボリュームつまみの操作により設定されるボリューム値に対応して、出力電力が0Wから100Wまでの範囲で調整して音量調整ができるようにしてある。
【0021】
図4のフローチャートは、CPU20での音量調整の制御例を示した図で、この例では、音量調整用のボリュームつまみの操作があったか否か判断し(ステップ101)、ボリュームつまみの操作があるまで現在の音量設定値を維持する。そして、ボリュームつまみの操作があったとき、そのときのボリューム値の変更する範囲が0.25Wから25Wの範囲内であるか否か判断する(ステップ102)。この判断で、0.25Wから25Wの範囲内での変更であると判断したとき、電源回路18の出力電圧を変化させる電源電圧制御処理を行う(ステップ103)。また、ステップ102での判断で、0.25Wから25Wの範囲外での変更であるとき(即ち0.25Wよりも低い範囲でのボリューム調整又は25Wよりも高い範囲でのボリューム調整であるとき)には、ゲインコントロール回路13でのゲイン制御処理を行う(ステップ104)。
【0022】
但し、ステップ103での電源電圧制御処理の実行で、0.25Wから25Wの範囲を越えたときには、ステップ104のゲイン制御処理に移る。同様に、ステップ104でのゲイン制御処理の実行で、0.25Wから25Wの範囲になったときには、ステップ103の電源電圧制御処理に移る。
【0023】
図5は、このようにして音量調整を実行した場合の調整例を示した図である。図5に実線で示す特性VL1 が本例の調整例を示したものである。この例では、電源回路18での電源電圧は3Vから30Vの範囲で調整可能としてあり、図5では縦軸で電源電源値を示してある。ゲインコントロール回路13でのゲイン制御については、ゲイン0.1から0.9の範囲で調整可能としてあり、図5では横軸でゲインの値を示してある。ゲイン0.9よりも高い範囲は、図2に示した範囲t1 の範囲に相当するので、それ以上ゲインを上げることは困難である。
【0024】
図5に実線で示す特性VL1 の場合には、出力電力0Wのとき(即ち最小の音量としたとき)、電源電圧を3Vとし、ゲイン設定値を0.1とする。この状態から出力電力0.25Wまでの間では、ゲイン設定値を音量に比例して大きくして音量調整させる。この例では出力電力0.25Wのとき、ゲイン設定値が0.5となるようにしてある。そして、出力電力0.25Wから出力電力25Wまでの範囲では、ゲイン設定値を0.5に固定し、電源電圧を3Vから30Vまで音量に比例して大きくさせて、音量調整させる。この例では、出力電力25Wのとき、ゲイン設定値が0.5で電源電圧が30Vとなるようにしてある。
【0025】
さらに、出力電力25W以上に音量を上げるときには、電源電圧を30Vに固定し、ゲイン設定値を0.5から0.9まで音量に比例して大きくさせて、音量調整させる。この例では、電源電圧30Vでゲイン設定値0.9のとき、最大出力である出力電力100Wとなるようにしてある。
【0026】
このように制御される音量調整特性VL1 は、低歪みで良好な音量調整が行える。本例の音量調整特性VL1 での各出力電力での歪み率は、例えば図6に実線で示すような状態になり、この歪み率は従来の音量調整よりも低い値となる。即ち、ゲインコントロール回路でのゲイン調整だけで音量調整した場合の特性VLa(図5に仮想線で示す特性)及び電源回路での電源電圧調整だけで音量調整した場合の特性VLb(図5に仮想線で示す特性)の場合の出力電力と歪み率との関係を、図6に破線で示すと、いずれも場合でもこれらの従来の処理による特性の歪み率は最も良い出力電力でも0.1%程度であるのに対して、本例の特性VL1 の場合には、最も良い出力電力のとき0.01%以下になっている。
【0027】
特に本例の場合には、電源電圧の調整で最も歪みの少ない範囲(図5に示す10Vから20Vまでの範囲V0 )を、最も良く使用される範囲である音量調整範囲のほぼ中間位置(具体的には出力電力2Wから10Wまでの範囲)に設定してあるので、この最も良く使用される範囲の出力オーディオを低歪みとすることができる。また、出力電力25Wから100Wまでの範囲では、ゲイン制御により音量調整が実行され、この範囲での音量調整の場合には、既に図2のゲイン調整原理の説明で述べたように、出力信号にある程度の歪みが発生する範囲t2 が存在するが(図5の範囲t2 はほぼ同じ範囲を示している)、この範囲は比較的大音量の状態であり、この範囲でのある程度の歪みは目立たなく、問題にはならない。
【0028】
なお、図5に示した例では、ゲイン制御で音量調整が行われる範囲と、電源電圧制御で音量調整が行われる範囲とを、固定した範囲に設定したが、アンプ装置10に接続されるスピーカ装置1の負荷抵抗値や、入力オーディオ信号の平均レベルなどにより、それぞれの範囲は可変設定するようにしても良い。例えば、図5に破線で示した音量調整特性VL1 ′のように、そのときの負荷抵抗値などによって、ゲイン制御で音量調整が行われる範囲を、大音量時の範囲にシフトさせるようにしても良い。或いは逆方向にシフトさせるようにしても良い。
【0029】
また、図5の例では、小音量時と大音量時にゲイン制御で音量調整を行い、中音量時に電源電圧制御で音量調整を行うようにして、3段階で音量調整状態を変化させるようにしたが、より複雑にゲイン制御と電源電圧制御を組み合わせるようにしても良い。例えば図7に示す音量調整特性VL2 としても良い。
【0030】
この図7に示す特性VL2 は、出力電力0W(電源電圧3V,ゲイン設定値0.1)から出力電力0.15W(電源電圧3V,ゲイン設定値0.3)までの間では、ゲイン設定値を音量に比例して大きくして音量調整させる。そして、出力電力0.15Wから出力電力8W(電源電圧20V,ゲイン設定値0.3)までの間では、電源電圧を音量に比例して大きくして音量調整させる。そして、出力電力8Wから出力電力25W(電源電圧20V,ゲイン設定値0.9)までの間では、ゲイン設定値を音量に比例して大きくして音量調整させる。さらに、出力電力25Wから出力電力100W(電源電圧30V,ゲイン設定値0.9:ここでの最大音量)までの間では、電源電圧を音量に比例して大きくして音量調整させる。
【0031】
この図7に示す特性VL2 のようにゲイン制御と電源電圧制御とを組み合わせて音量調整を行うことで、より細かく定歪みの範囲を適切な音量の範囲に設定することができ、より良好な音量調整が行えるようになる。
【0032】
また、図8に示す音量調整特性VL3 としても良い。この図8に示す特性VL3 は、出力電力0Wから100Wまでの間で、ゲイン制御と電源電圧制御とを細かいステップで交互に行うようにしたものである。例えば、1ステップ音量が上がる毎に、ゲイン制御による調整と、電源電圧による調整とを交互に行うようにしても良い。この図8に示すような制御を行うことでも、低歪みでの良好な音量調整が行える。
【0033】
また、ゲイン制御により音量調整を行う際に、同時に電源電圧を変化させて、1ステップあたりの音量変化量を調整したり、低歪み化を図るようにしても良い。この場合、例えば音量を上げるためにゲインを大きくするとき、同時に電源電圧を下げるようにしても良い。例えば図9に示す音量調整特性VL4 (この特性VL4 の出力電力25W以下の特性は特性VL1 と同じ)のように、出力電力25Wから出力電力100Wまでの範囲で、音量調整値に対応してゲインを0.5から0.9まで大きくさせるとき、同時に電源電圧を30Vから少しずつ低下させる(例えば数V程度低下させる)。他の範囲でも、このようなゲイン制御と電源電圧の同時制御を行うようにしても良い。
【0034】
なお、ここまで説明した実施の形態では、図4に示したフローチャートに基づいたCPU20での演算処理で、ボリューム値からゲイン制御と電源電圧制御との2つの制御の設定値を得るようにしたが、CPU20に接続されたメモリなどに、予めボリューム値と2つの制御状態の設定値との対応を記憶したテーブルを用意し、そのテーブルを参照して、ゲイン制御と電源電圧制御を行うようにしても良い。図10は、テーブルの一例を示したものであり、例えばこの例ではボリューム値として、0から12までの13段階に設定できるようにしてあり、その13段階の各値ごとに、ゲインの値と、電源電圧値の値が記憶させてあり、CPU20はボリュームつまみが操作されたとき、このテーブルの値を参照して、ゲインの値と、電源電圧値の値を判断して、それぞれの値を設定するようにすれば良い。
【0035】
また、上述した実施の形態では、入力部に得られるマルチビット方式のデジタルオーディオデータを、1ビット方式のデジタルオーディオデータに変換し、その変換された1ビット方式のデジタルオーディオデータを入力レジスタにセットするようにした構成のデジタルパワーアンプ装置に適用したが、外部のオーディオ信号源からアンプ装置の入力部に1ビット方式のデジタルオーディオデータが供給される場合には、そのデータをそのまま入力レジスタに供給するようにしても良い。
【0036】
また、上述した実施の形態では、1ビット方式のデジタルオーディオデータに基づいてパルス幅変調されたPWM信号を生成させて、パワースイッチのスイッチングを制御するようにしたが、PDM(Pulse Duration Modulation )方式などのその他のパルス変調された信号でスイッチングを制御して、増幅された信号を得る各種方式のスイッチングアンプ装置に本発明が適用できるものである。
【0037】
【発明の効果】
本発明によると、第2,第3のレベルの値を適正に選択することで、スイッチング手段に供給する電源の電圧値の制御により音量調整が行われる範囲を、歪みが少ない範囲だけで実行させることができ、ゲインコントロール手段でのゲイン調整と電源電圧調整とを良好に組み合わせた低歪みの音量調整が可能になる。
【0038】
この場合、さらに第4のレベルからこの第4のレベルよりも高い第5のレベルまでの間で、スイッチング手段に供給する電源の電圧値の制御で音量調整を実行させるようにしたことで、さらに細かく2つの調整を組み合わせて良好な音量調整を実行できるようになる。
【0039】
また、第2のレベルから第3のレベルまでの範囲は、スイッチング手段でのスイッチングで歪みの発生が少ない電圧範囲に対応した範囲に選定したことで、効果的に低歪みの音量調整ができるようになる。
【0040】
また、ゲインコントロール手段でのゲイン調整で音量調整を実行させる制御を行うとき、音量の増加に伴って、スイッチング手段に供給する電源の電圧値を若干低下させる制御を行うことで、効果的な歪み低減処理が行えると共に、例えば1ステップずつ音量を変化させる際の、1ステップ毎の音量差を適切に選定することも可能になり、良好な音量調整が可能になる。
【0041】
さらに、入力したオーディオ信号の平均レベル又は出力オーディオ信号が供給される負荷特性によって、第2及び第3のレベルの値を可変設定するようにしたことで、そのときの入力レベルや負荷特性に適した低歪みの最適な音量調整を実行できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による全体構成の例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態による音量調整例を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施の形態によるゲイン調整例を示す波形図である。
【図4】本発明の一実施の形態による電源電圧調整例を示す波形図である。
【図5】本発明の一実施の形態による音量調整例(例1)を示す特性図である。
【図6】出力電力と歪み率の関係の例を示す特性図である。
【図7】本発明の一実施の形態による音量調整例(例2)を示す特性図である。
【図8】本発明の一実施の形態による音量調整例(例3)を示す特性図である。
【図9】本発明の一実施の形態による音量調整例(例4)を示す特性図である。
【図10】本発明の一実施の形態によるテーブルの例を示す説明図である。
【図11】PWM信号の生成例を示す波形図である。
【符号の説明】
1…スピーカ装置、10…デジタルパワーアンプ装置、11…入力端子、12…ゲインコントロール部、13…デルタシグマ変換器、14…PWM変換部、15…スイッチング増幅部、16…ローパスフィルタ、17…出力端子、18…電源回路、19…操作部、20…中央制御ユニット(CPU)

Claims (4)

  1. 入力したオーディオ信号のパルス波形のハイレベル期間とローレベル期間の比率からゲインを調整するゲインコントロール手段と、
    上記ゲインコントロール手段が出力するパルス波形から、スイッチング制御用の制御信号を生成させる処理手段と、
    上記処理手段が出力する制御信号により電源のスイッチング制御を行うスイッチング手段と、
    上記スイッチング手段の出力からオーディオ信号成分を抽出して出力オーディオ信号を得る抽出手段と、
    上記抽出手段が出力するオーディオ信号の音量を指示する音量指示手段と、
    上記音量指示手段で指示されたレベルが、第1のレベルからこの第1のレベルよりも高い第2のレベルまでの間は、上記ゲインコントロール手段でのゲイン調整で音量調整を実行させ、上記第2のレベルからこの第2のレベルよりも高い第3のレベルまでの間は、上記スイッチング手段に供給する電源の電圧値の制御で音量調整を実行させ、上記第3のレベルからこの第3のレベルよりも高い第4のレベルまでの間は、上記ゲインコントロール手段でのゲイン調整で音量調整を実行させる制御を行う制御手段とを備え、
    上記制御手段は、さらに上記第4のレベルからこの第4のレベルよりも高い第5のレベルまでの間で、上記スイッチング手段に供給する電源の電圧値の制御で音量調整を実行させるようにした
    スイッチングアンプ装置。
  2. 入力したオーディオ信号のパルス波形のハイレベル期間とローレベル期間の比率からゲインを調整するゲインコントロール手段と、
    上記ゲインコントロール手段が出力するパルス波形から、スイッチング制御用の制御信号を生成させる処理手段と、
    上記処理手段が出力する制御信号により電源のスイッチング制御を行うスイッチング手段と、
    上記スイッチング手段の出力からオーディオ信号成分を抽出して出力オーディオ信号を得る抽出手段と、
    上記抽出手段が出力するオーディオ信号の音量を指示する音量指示手段と、
    上記音量指示手段で指示されたレベルが、第1のレベルからこの第1のレベルよりも高い第2のレベルまでの間は、上記ゲインコントロール手段でのゲイン調整で音量調整を実行させ、上記第2のレベルからこの第2のレベルよりも高い第3のレベルまでの間は、上記スイッチング手段に供給する電源の電圧値の制御で音量調整を実行させ、上記第3のレベルからこの第3のレベルよりも高い第4のレベルまでの間は、上記ゲインコントロール手段でのゲイン調整で音量調整を実行させる制御を行う制御手段とを備え、
    上記第2のレベルから第3のレベルまでの範囲は、上記スイッチング手段でのスイッチングで歪みの発生が少ない電圧範囲に対応した範囲に選定した
    スイッチングアンプ装置。
  3. 入力したオーディオ信号のパルス波形のハイレベル期間とローレベル期間の比率からゲインを調整するゲインコントロール手段と、
    上記ゲインコントロール手段が出力するパルス波形から、スイッチング制御用の制御信号を生成させる処理手段と、
    上記処理手段が出力する制御信号により電源のスイッチング制御を行うスイッチング手段と、
    上記スイッチング手段の出力からオーディオ信号成分を抽出して出力オーディオ信号を得る抽出手段と、
    上記抽出手段が出力するオーディオ信号の音量を指示する音量指示手段と、
    上記音量指示手段で指示されたレベルが、第1のレベルからこの第1のレベルよりも高い第2のレベルまでの間は、上記ゲインコントロール手段でのゲイン調整で音量調整を実行させ、上記第2のレベルからこの第2のレベルよりも高い第3のレベルまでの間は、上記スイッチング手段に供給する電源の電圧値の制御で音量調整を実行させ、上記第3のレベルからこの第3のレベルよりも高い第4のレベルまでの間は、上記ゲインコントロール手段でのゲイン調整で音量調整を実行させる制御を行う制御手段とを備え、
    上記制御手段は、上記ゲインコントロール手段でのゲイン調整で音量調整を実行させる制御を行うとき、音量の増加に伴って、上記スイッチング手段に供給する電源の電圧値を若干低下させる制御を行う
    スイッチングアンプ装置。
  4. 入力したオーディオ信号のパルス波形のハイレベル期間とローレベル期間の比率からゲインを調整するゲインコントロール手段と、
    上記ゲインコントロール手段が出力するパルス波形から、スイッチング制御用の制御信号を生成させる処理手段と、
    上記処理手段が出力する制御信号により電源のスイッチング制御を行うスイッチング手段と、
    上記スイッチング手段の出力からオーディオ信号成分を抽出して出力オーディオ信号を得る抽出手段と、
    上記抽出手段が出力するオーディオ信号の音量を指示する音量指示手段と、
    上記音量指示手段で指示されたレベルが、第1のレベルからこの第1のレベルよりも高い第2のレベルまでの間は、上記ゲインコントロール手段でのゲイン調整で音量調整を実行させ、上記第2のレベルからこの第2のレベルよりも高い第3のレベルまでの間は、上記スイッチング手段に供給する電源の電圧値の制御で音量調整を実行させ、上記第3のレベルからこの第3のレベルよりも高い第4のレベルまでの間は、上記ゲインコントロール手段でのゲイン調整で音量調整を実行させる制御を行う制御手段とを備え、
    上記制御手段は、入力したオーディオ信号の平均レベル又は出力オーディオ信号が供給される負荷特性によって、上記第2及び第3のレベルの値を可変設定するようにした
    スイッチングアンプ装置。
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