JP4461562B2 - 再生装置および方法、ならびに、信号処理装置および方法 - Google Patents

再生装置および方法、ならびに、信号処理装置および方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、複数種類のフォーマットのディジタルビデオ信号を処理すると共に、ディジタルビデオ信号のフォーマット変換を行うことができる再生装置および方法、ならびに、信号処理装置および方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来技術において、2種類以上の信号フォーマットのビデオ信号を再生可能で、尚かつ、ビデオ信号のフォーマットを変換することができるようにされたVTR(Video Tape Recorder)が既に提案されている。このようなVTRとして、特開平2−171090号に記載されるVTRなどがある。
【0003】
この、特開平2−171090には、再生されたビデオ信号の方式と、設定されたビデオ信号方式とによって、自動的に方式変換器などの動作状態を変更するようにされたVTRが記載されている。また、この特開平2−171090には、記録されているテレビジョン標準方式の判別は、フィールド周波数の計測などによって行うことが記載されている。
【0004】
一方、近年では、ディジタル方式によるテレビジョン放送の実用化が進められており、その放送方式も多様化している。そのため、放送局用のVTRでも、1台で複数のフォーマットに対応できる、マルチフォーマット対応のものが開発されている。上述した特開平2−171090号に記載されているVTRのようなNTSCやPALへの対応だけでなく、1フレームを1フィールドで構成するプログレッシブ走査や、より解像度を高めたHD(High Definition)方式にも対応可能なVTRが開発されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このようなフォーマットで、例えば480I(480ライン、インタレース走査)と480P(480ライン、プログレッシブ走査)とを共に記録再生できるようにされたVTRを考える。480Iおよび480Pでは、フィールド周波数が共に60Hzであるので、上述した特開平2−171090号の例のように、ビデオ信号のフィールド周波数の計測によりフォーマットを判断することができないという問題点があった。
【0006】
また、近年のディジタルテレビジョン放送で用いられるビデオ信号のフォーマットは、とても複雑なものとなっている。例えば、480Pの信号であっても、クロマフォーマットが4:2:2の規格だけでなく、4:2:0の帯域で信号を伝送するように定められている、SMPTE 294Mと称される規格も存在する。クロマフォーマットが4:2:2ビデオ信号を、この規格で出力するためには、クロマ信号だけ垂直方向に帯域制限を行う必要がある。すなわち、この場合には、方式変換を行うだけでなく、クロマ信号に対してフィルタ処理を行うかどうかという選択肢が必要になってくる。従来では、このような選択肢を有したVTRは、存在しなかったという問題点があった。
【0007】
さらに、放送局用VTRにおいては、外部リファレンスに同期してビデオ信号を出力する必要がある。上述の480Iおよび480Pの信号を同時に出力するような場合にも、480Pの信号は、480Iの信号のフレーム周期(30Hz)に同期していることが望ましい。これは、従来のタイムコードに対応した編集や、SMPTE 294Mに規定される、デュアルリンク方式との整合性などの理由からである。なお、デュアルリンク方式は、プログレッシブ走査のビデオ信号を、リンクAおよびリンクBにそれぞれライン毎に交互に伝送する方式である。フィールド毎に、奇数ラインと偶数ラインが入れ替わる。また、通常、480Iの信号を480Pに変換するI/P変換と、480Pの信号を480Iに変換するP/I変換とでは、処理に要する時間が異なる。
【0008】
このような状況でも、出力が1系統しかない場合には、外部リファレンスに対してVTRの出力ビデオ信号における再生開始位相を合わせる(先行させる)ことにより、出力信号の位相を外部リファレンスに合わせることができる。しかしながら、出力が方式変換する系と方式変換しない系の2系統ある場合に、2系統共、正しい位相に合わせるためには、方式変換する系と方式変換しない系との間で、何らかの位相あわせが必要となる。従来は、この点が考慮されたVTRが存在していなかったという問題点があった。
【0009】
さらにまた、放送局用VTRの出力は、他の装置の同期の基準に用いられていることがある。そのため、例えばテープを入れ替えて以前と異なるフォーマットのビデオ信号の再生を開始するときにも、出力信号の同期が乱れることなく正しく出力されている必要がある。また、テープの入れ替えに伴って、再生信号のフォーマットが変わるときには、VTR内部において、例えばエラー訂正回路、ビデオ復号回路および方式変換回路などの、再生回路系の動作モードが変更されることになる。動作モードが変更された後に動作が安定するまでには、数秒乃至は数十秒の時間を要し、その間に、誤動作中の信号が出力されてしまうという問題点があった。
【0010】
また、上述では、例えば480Iおよび480Pといった、異なるフォーマットのビデオ信号を2系統出力するVTRを前提として説明したが、ユーザの要望や商品形態によっては、一方のフォーマットの信号のみを2系統出力したいという場合も考えられる。
【0011】
さらに、480Iのフォーマットにおいて、例えば再生時のテープ速度が記録時の1/2であるような1/2倍速再生といったような変速再生を行った場合、再生ビデオ信号のインタレース構造が崩れる。すなわち、第1フィールドを続けて2フィールド分出力し、次に、第2フィールドを続けて2フィールド分出力することで、1/2倍速再生が行われる。この場合、最初の第1フィールドの信号は本来の第1フィールドのライン位置で表示されるが、連続して再生される次の第1フィールドの信号は、第2フィールドのライン位置で表示される。第2フィールドの信号も、同様である。その結果、表示画面に、1/2ライン幅の縦揺れ(上下動)が発生してしまうという問題点があった。
【0012】
さらにまた、以上に列挙した問題点を解決するための構成をVTRに内蔵させるには、従来では、回路が大規模になり、コストも上がってしまうという問題点があった。
【0013】
したがって、この発明の目的は、異なるフォーマットビデオ信号に対応すると共に複数系統のビデオ出力を有し、且つ、安価で小型化が可能な再生装置および方法、ならびに、信号処理装置および方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上述した課題を達成するために、複数の信号フォーマットのビデオ信号を再生可能で、且つ、再生されたビデオ信号を複数のフォーマットで同時に出力可能な再生装置において、 記録媒体に記録されたビデオ信号を再生する再生手段と、再生手段で再生されたビデオ信号のフォーマットを変換するフォーマット変換手段と、再生手段で再生されたビデオ信号を、フォーマット変換手段でフォーマット変換されて出力されたビデオ信号と位相を合わせて出力するバイパス手段と、フォーマット変換手段から出力されたビデオ信号と、バイパス手段から出力されたビデオ信号とを選択して出力する複数の出力手段とを有し、複数の出力手段から同時にビデオ信号の出力を行うことを特徴とする再生装置である。
【0015】
また、この発明は、複数の信号フォーマットのビデオ信号を再生可能で、且つ、再生されたビデオ信号を複数のフォーマットで同時に出力するようにされた再生方法において、記録媒体に記録されたビデオ信号を再生する再生のステップと、再生のステップで再生されたビデオ信号のフォーマットを変換するフォーマット変換のステップと、再生のステップで再生されたビデオ信号を、フォーマット変換のステップでフォーマット変換されて出力されたビデオ信号と位相を合わせて出力するバイパスのステップと、フォーマット変換のステップから出力されたビデオ信号と、バイパスのステップにより出力されたビデオ信号とを選択して出力する複数の出力のステップとを有し、複数の出力のステップから同時にビデオ信号の出力を行うことを特徴とする再生方法である。
【0016】
また、この発明は、複数の信号フォーマットのビデオ信号を入力可能で、且つ、入力されたビデオ信号を複数のフォーマットで同時に出力可能な信号処理装置において、入力されたビデオ信号のフォーマットを変換するフォーマット変換手段と、入力されたビデオ信号を、フォーマット変換手段でフォーマット変換されて出力されたビデオ信号と位相を合わせて出力するバイパス手段と、フォーマット変換手段から出力されたビデオ信号と、バイパス手段から出力されたビデオ信号とを選択して出力する複数の出力手段とを有し、複数の出力手段から同時にビデオ信号の出力を行うことを特徴とする信号処理装置である。
【0017】
また、この発明は、複数の信号フォーマットのビデオ信号を入力可能で、且つ、入力されたビデオ信号を複数のフォーマットで同時に出力するようにされた信号処理方法において、入力されたビデオ信号のフォーマットを変換するフォーマット変換のステップと、入力されたビデオ信号を、フォーマット変換のステップでフォーマット変換されて出力されたビデオ信号と位相を合わせて出力するバイパスのステップと、フォーマット変換のステップにより出力されたビデオ信号と、バイパスのステップにより出力されたビデオ信号とを選択して出力する複数の出力のステップとを有し、複数の出力のステップから同時にビデオ信号の出力を行うことを特徴とする信号処理方法である。
【0023】
また、請求項およびに記載の発明は、再生されたビデオ信号から検出された、記録時に埋め込まれたフォーマット情報に基づきフォーマット変換されたビデオ信号と、フォーマット変換をバイパスされた再生ビデオ信号とを、位相を合わせて同時にそれぞれ出力することができる。
【0025】
また、請求項および10に記載の発明は、入力されたビデオ信号から検出された、予め埋め込まれたフォーマット情報に基づきフォーマット変換されたビデオ信号と、フォーマット変換をバイパスされた再生ビデオ信号とを、位相を合わせて同時にそれぞれ出力することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態について説明する。先ず、理解を容易とするために、この発明に適用できる記録フォーマットについて説明する。ディジタルビデオ信号は、所定の方式で圧縮符号化される。この実施の一形態では、DCT(Discrete Cosine Transform)および動きベクトルによる動き補償を用いた圧縮符号化方式である、MPEG2(Moving Pictures Experts Group 2)を用いてディジタルビデオ信号の圧縮符号化を行う。圧縮符号化されたディジタルビデオ信号は、内符号パリティおよび外符号パリティを付加され、積符号を用いてエラー訂正符号化される。そして、エラー訂正符号化されたデータに対して、内符号パリティ単位で、同期を検出するためのSYNCパターン、シンクブロックを識別するためのIDおよび記録されるデータの内容に関する情報を示すDIDが付加され、シンクブロックが構成される。データは、シンクブロック単位でパケットとして扱われる。
【0027】
SYNCパターン、IDおよびDIDを付加されたデータは、回転ドラム上に設けられた磁気ヘッドにより、ヘリカルスキャン方式で以て磁気テープ上に記録される。磁気ヘッドは、回転ドラム上の互いに対向する位置に、それぞれ複数個が設けられる。すなわち、磁気テープが回転ヘッドに180°程度の巻き付け角で以て巻き付けられている場合、回転ヘッドの180°の回転により、同時に複数本のトラックを形成することができる。また、磁気ヘッドは、互いにアジマスの異なる2個で一組とされる。複数個の磁気ヘッドは、隣接するトラックのアジマスが互いに異なるように配置される。
【0028】
図1は、上述した回転ヘッドにより磁気テープ上に形成されるトラックフォーマットの一例を示す。これは、1フレーム当たりのビデオおよびオーディオデータが8トラックで記録される例である。例えばフレーム周波数が29.97Hz、レートが50Mbps、有効ライン数が480本で有効水平画素数が720画素のインタレース信号(480I信号)およびオーディオ信号が記録される。また、フレーム周波数が25Hz、レートが50Mbps、有効ライン数が576本で有効水平画素数が720画素のインタレース信号(576I信号)およびオーディオ信号も、図1と同一のテープフォーマットによって記録できる。
【0029】
互いに異なるアジマスの2トラックによって1セグメントが構成される。すなわち、8トラックは、4セグメントからなる。セグメントを構成する1組のトラックに対して、アジマスと対応するトラック番号〔0〕とトラック番号〔1〕が付される。図1に示される例では、前半の8トラックと、後半の8トラックとの間で、トラック番号が入れ替えられると共に、フレーム毎に互いに異なるトラックシーケンスが付される。これにより、アジマスが異なる1組の磁気ヘッドのうち一方が、例えば目詰まりなどにより読み取り不能状態に陥っても、前フレームのデータを利用してエラーの影響を取り除くことができ、データの修整を良好に行うことができる。
【0030】
トラックのそれぞれにおいて、両端側にビデオデータが記録されるビデオセクタが配され、ビデオセクタに挟まれて、オーディオデータが記録されるオーディオセクタが配される。なお、この図1および後述する図2は、テープ上のセクタの配置を示すものである。
【0031】
この例では、8チャンネルのオーディオデータを扱うことができるようにされている。A1〜A8は、それぞれオーディオデータの1〜8chを示す。オーディオデータは、セグメント単位で配列を変えられて記録される。また、ビデオデータは、この例では、1トラックに対して4エラー訂正ブロック分のデータがインターリーブされ、Upper SideおよびLower Sideのセクタに分割され記録される。Lower Sideのビデオセクタには、所定位置にシステム領域が設けられる。
【0032】
なお、図1において、SAT1(Tr)およびSAT2(Tm)は、サーボロック用の信号が記録されるエリアである。また、各記録エリアの間には、所定の大きさのギャップ(Vg1,Sg1,Ag,Sg2,Sg3およびVg2)が設けられる。
【0033】
図1は、1フレーム当たりのデータを8トラックで記録する例であるが、記録再生するデータのフォーマットによっては、1フレーム当たりのデータを4トラック、6トラックなどでの記録することができる。図2Aは、1フレームが6トラックのフォーマットである。この例では、トラックシーケンスが〔0〕のみとされる。
【0034】
図2Bに示すように、テープ上に記録されるデータは、上述したシンクブロックと称される等間隔に区切られた複数のブロックからなる。図2Cは、シンクブロックの構成を概略的に示す。シンクブロックの先頭から、SYNCパターン、ID、DIDおよび内符号パリティの順に配される。記録あるいは再生されるデータ単位の最小のものが1シンクブロックである。シンクブロックが多数並べられて(図2B)、例えばビデオセクタが形成される(図2A)。
【0035】
IDは、ID0およびID1の2つの部分からなり、個々のシンクブロックを識別するための情報が格納される。図3Aは、ID0およびID1のビットアサインの一例を示す。ID0は、1トラック中のシンクブロックのそれぞれを識別するための識別情報(SYNC ID)が格納される。SYNC IDは、例えば通し番号である。SYNC IDは、8ビットで表現される。
【0036】
ID1は、シンクブロックのトラックに関する情報が格納される。MSB側をビット7、LSB側をビット0とした場合、このシンクブロックに関して、ビット7でトラックの上側(Upper)か下側(Lower)かが示され、ビット5〜ビット2で、トラックのセグメントが示される。また、ビット1は、トラックのアジマスに対応するトラック番号が示され、ビット0は、このシンクブロックがビデオデータおよびオーディオデータのうち何方のものであるかが示される。
【0037】
DIDは、ペイロードに関する情報が格納される。上述したID1のビット0の値に基づき、ビデオおよびオーディオで、DIDの内容が異なる。図3Bは、ビデオの場合のDIDのビットアサインの一例を示す。ビット7〜ビット4は、未定義(Reserved)とされている。ビット3および2は、ペイロードのモードであり、例えばペイロードのタイプが示される。ビット3および2は、補助的なものである。ビット1でペイロードに1個あるいは2個のマクロブロックが格納されることが示される。ビット0でペイロードに格納されるビデオデータが外符号パリティであるかどうかが示される。
【0038】
図3Cは、オーディオの場合のDIDのビットアサインの一例を示す。ビット7〜ビット4は、Reservedとされている。ビット3でペイロードに格納されているデータがオーディオデータであるか、一般的なデータであるかどうかが示される。ペイロードに対して、圧縮符号化されたオーディオデータが格納されている場合には、ビット3がデータを示す値とされる。
【0039】
ビット2〜ビット0の〔Amode2〕、〔Amode1〕および〔Amode0〕は、NTSC方式における、5フィールドシーケンスの情報が格納される。すなわち、NTSC方式においては、ビデオ信号の1フィールドに対してオーディオ信号は、サンプリング周波数が48kHzの場合、800サンプルおよび801サンプルの何れかであり、このシーケンスが5フィールド毎に揃う。ビット2〜ビット0によって、シーケンスの何処に位置するかが示される。
【0040】
また、後述するが、このビット2〜ビット0は、その3ビットによって〔7〕が表されるときに、続くデータがビデオの記録フォーマットを識別する情報である、AUX2であることが示される。
【0041】
この発明においては、1台のビデオテープレコーダ(以下、VTRと称する)で、複数のフォーマットのビデオ信号を扱うようにされている。図4は、このビデオ信号の複数のフォーマットについて、例示する。例えば互いに異なる14のフォーマットモードに対応し、画枠サイズは、720画素×480ライン、720画素×576ラインの2種類に対応する。各フォーマットモードのそれぞれにおいて、磁気テープに記録する際の最短記録波長が互いに略等しくなるように、例えばビデオデータの圧縮符号化の際のレートが設定されている。
【0042】
このフォーマットでは、インタレース走査と、プログレッシブ(ノンインタレース)走査の2種類の画面の走査方式に対応している。インタレース走査では、1フレームが2フィールドから構成される。一方、プログレッシブ走査では、1フレームで画面が完結する。なお、プログレッシブ走査においても、1フレーム期間は、2フィールド期間に対応するものとする。また、図4の各フォーマットモードにおいて、ライン数の横に、プログレッシブ走査では「p」、インタレース走査では「i」を付し、これらを表す。
【0043】
図4は、列方向に、フレーム周波数で分類され、それぞれがEdit Freqによって識別される。例えば、フレーム周波数が23.976Hz、25Hz、29.97Hz、50Hzおよび59.97Hzに対して、それぞれEditFreqとして〔0〕、〔2〕、〔3〕、〔5〕および〔6〕の各値が割り当てられる。
【0044】
フレーム周波数が23.976Hz、50Hzおよび59.94Hzの列は、プログレッシブ走査が行われるグループで、各グループのそれぞれは、ビデオレートの異なる2つのモードが定義されている。なお、フレーム周波数が23.976Hzのモードは、シネマに対応したモードであって、例えば同一画像の2フィールドから1フレームが構成される。また、フレーム周波数が25Hzおよび29.97Hzのグループは、それぞれ、インタレース走査をするビデオレートが異なる2つのモードと、プログレッシブ走査をするビデオレートが異なる2つのモードとを有する。このグループのプログレッシブ走査のモードでは、上述のシネマモードと同様に、例えば同一画像の2フィールドから1フレームが構成される。スキャン方式と、ビデオレートに対して、それぞれ〔1〕あるいは〔0〕のいずれかの値からなるフラグが割り当てられる。この例では、ライン数は、全て〔1〕の値のフラグが割り当てられている。
【0045】
すなわち、この図4に示される各ビデオフォーマットモードは、〔Edit Freq〕の値と、〔line〕、〔scan〕および〔rate〕の各フラグで識別することができる。
【0046】
一方、オーディオデータに関しては、サンプリング周波数および量子化ビット数はそれぞれ共通で、例えば48KHz、1サンプル当たり16ビットとされる。チャンネル数は、8チャンネルおよび4チャンネルに対応している。また、この一実施形態では、オーディオデータは、非圧縮で扱われ、オーディオデータを格納するシンクブロックの長さは、サンプル当たりのビット数とフレーム周波数とによって一定である。すなわち、オーディオデータを格納するシンクブロックの長さは、サンプル当たりのビット数とフレーム周波数とが同じであれば、ビデオの画枠および圧縮レートに関わらず、一定値となる。
【0047】
図5〜図7は、1エラー訂正ブロックにおけるオーディオデータの配置の例を、各フレーム周波数毎に示す。これら図5〜図7は、外符号パリティの付加後の配置を示す。図5A、図6Aおよび図7Aに示されるように、1フィールド期間あるいは1Pフレーム期間に、8シンクブロックのオーディオデータに対して10シンクブロック分の外符号パリティが付されたエラー訂正ブロックが2個、形成される。
【0048】
各チャンネルのオーディオデータは、1フィールド期間の偶数番のサンプルと奇数番のサンプルとでそれぞれ1エラー訂正ブロックを構成する。すなわち、1フィールド期間に2エラー訂正ブロックが形成される。図5B、図6Bおよび図7Bにおいて、1エラー訂正ブロック中の各枠は、1サンプルのデータを表す。番号は、サンプル順に付されたサンプル番号である。なお、外符号パリティは、PV0〜9で示す。この例では、1サンプルが16ビット(2バイト)であるので、各枠は、それぞれ16ビット分のデータである。
【0049】
図5は、フレーム周波数が59.94Hz(プログレッシブ走査)あるいは29.97Hz(インターレス走査)の例であり、1フィールド期間のオーディオデータが800または801サンプルである。図6は、フレーム周波数が50Hz(プログレッシブ走査)あるいは25Hz(インターレス走査)の例であり、1フィールド期間のオーディオデータが960サンプルからなる。また、図7は、フレーム周波数が23.976Hzの例であり、1フィールド期間のオーディオデータが1001サンプルからなる。図5〜図7に共通して、各行のそれぞれが1シンクブロックを構成するパケットであり、1エラー訂正ブロックは、8シンクブロック分のデータと、10シンクブロック分の外符号パリティとからなる。
【0050】
各エラー訂正ブロックの最初の3シンクブロックのそれぞれにおいて、先頭の1サンプル分にAUXデータが格納される。図8は、各AUXデータの内容の一例を示す。図8Aは、AUXデータのビットアサインの例を示し、図8Bは、データそれぞれの意味を示す。
【0051】
AUX0は、オーディオの編集点を表す2ビットのデータEF、量子化ビット数が16ビットであるか24ビットであるかを表す1ビットのビット長データB、非圧縮オーディオデータであるかどうかを表す1ビットのデータD、オーディオモードを識別する2ビットのデータAmd、サンプリング周波数が48KHz、44.1KHz、32KHzおよび96Hzの何れであるかを表す2ビットのデータFSからなる。続く8ビットおよび1サンプルが24ビットである場合には、さらに8ビットがReserved(予約)とされている。
【0052】
AUX1は、その全体がReserved(予約)とされている。
【0053】
データAUX2は、最初の8ビットがフォーマットモードとされている。続く8ビットおよび1サンプルが24ビットである場合には、さらに8ビットがReserved(予約)とされている。フォーマットモードは、2ビットの〔Line mode〕、2ビットの〔Rate〕、1ビットの〔Scan〕、3ビットの〔Freq〕からなる。これら〔Line mode〕、〔Rate〕、〔Scan〕および〔Freq〕は、それぞれ上述の図4に示した〔Edit Freq〕、〔line〕、〔scan〕および〔rate〕に対応する。すなわち、このデータAUX2を見ることで、ビデオフォーマットを知ることができる。
【0054】
図9は、ビデオデータおよびオーディオデータを記録するトラックフォーマットの一例を示す。この図9は、上述した図2と同一のトラックフォーマットが示されており、6トラックが1Pフレームに対応する。図9Aに示されるように、この例では、各トラックに対してオーディオセクタが8個ずつ配置され、各オーディオセクタは、6シンクブロックからなる。1フレーム分のデータが6トラックに記録され、オーディオデータは、6シンクブロック×6トラックで、全36シンクブロックとされ、上述の図5〜図7に対応される。
【0055】
各オーディオセクタは、図9Bに一例が示されるように、ヘッドトレース方向から、連続したブロックID(FF、FE、FD、FC、FB、FA:全て16進表記))が割り当てられる。各シンクブロックは、図9Cに一例が示されるように、ヘッドトレース方向から、2バイトのSYNCパターン、2バイトのブロックID、1バイトのDIDが配され、続けてオーディオデータが格納されるデータパケットが配される。オーディオデータのパケットに続けて、12バイトの内符号パリティが配される。データパケットは、先頭からD0、D1、D2、・・・と順に、1バイト単位でデータが詰め込まれている。すなわち、上述したAUX0、AUX1およびデータAUX2の最初の8ビットは、データパケットの先頭のD0に格納されることになる。
【0056】
この例では、上述したDIDに対して所定の情報を格納し、DIDからこの所定の情報が得られたときに、続くデータパケットのD0にデータAUX2の先頭8バイトが格納されていることが示される。より具体的には、上述したDIDのビットアサインにおいて、オーディオデータのDIDの下位3ビット(Amode0、Amode1およびAmode2)によって〔7〕が表されているときに、続くデータパケットのD0がデータAUX2であるとされる。
【0057】
次に、この発明の実施の一形態について、図面を参照しながら説明する。図10は、この発明の実施の一形態によるディジタルVTRの再生系の一例の構成を示す。上述したフォーマットで以て磁気テープに記録されたディジタルビデオ信号は、この構成によって再生することができる。なお、以下の説明では、このディジタルVTRが、480ライン/インタレース走査(480Iと略称する)および480ライン/プログレッシブ走査(480Pと略称する)の、2つのディジタルビデオ信号のフォーマットに対応しているものとする。
【0058】
ディジタルVTRにおいて、図示されない回転ドラムに設けられた磁気ヘッドによって、磁気テープから再生された再生信号が再生回路10に供給される。再生回路10は、再生アンプ、再生イコライザ、PLL(Phase Locked Loop)、復調回路などを含み、供給された再生信号をディジタルデータに変換する。
【0059】
再生回路10から出力されたディジタルデータは、SYNC・ID検出回路11に供給され、SYNCパターン、IDおよびDIDが抽出される。抽出されたDIDに基づき、当該シンクブロックがオーディオデータのAUXを含むブロックであると判断されたら、AUX2が読み出され、ビデオ信号の記録フォーマットが判別される。この例では、記録フォーマットが480Iであるか、480Pであるかが判別される。この判別結果に基づき、再生フォーマットを指示する再生フォーマット指示信号が出力される。再生フォーマット指示信号は、出力制御回路18に供給されると共に、エラー訂正回路12およびビデオ復号回路13に供給される。
【0060】
SYNC・ID検出回路から出力されたデータは、エラー訂正回路12に供給される。エラー訂正回路12では、再生フォーマット指示信号の指示に従い、SYNC・ID検出回路11から供給された再生データに対してエラー訂正符号の復号化処理を行い、エラー訂正する。このとき、エラー訂正符号のエラー訂正能力を超えてエラーが存在するときは、エラー訂正を行わず、エラーが存在することを示すエラーフラグを出力する。エラーフラグは、例えば図示されないエラー修整回路で用いられる。
【0061】
エラー訂正回路12でエラー訂正されたデータは、ビデオ復号回路13に供給される。ビデオ復号回路13では、再生フォーマット指示信号の指示に従い、供給された再生データに対してMPEG2のデコードを行い、圧縮符号化された信号を伸張し、ベースバンドのディジタルビデオ信号を出力する。ビデオ復号回路13から出力されたディジタルビデオ信号の輝度成分Yが垂直フィルタブロック14に供給され、色成分Cが垂直フィルタブロック15に供給される。
【0062】
垂直フィルタブロック14は、方式変換回路20と、垂直フィルタ回路21と、遅延調整回路22とからなる。方式変換回路20は、供給されたビデオ信号に対して、プログレッシブ走査からインタレース走査への変換(P/I変換)およびインタレース走査からプログレッシブ走査への変換(I/P変換)を行う。
【0063】
また、垂直フィルタ回路21は、例えば外部から供給されたリファレンス信号と、ビデオ復号回路13から出力されたビデオ信号とのフィールド極性、すなわちODDフィールドとEVENフィールドの対応関係が異なることで生じる表示画面の縦揺れを解消する。
【0064】
一方、遅延調整回路22は、無変換出力を得る回路であって、方式変換回路20および垂直フィルタ回路21から出力されるディジタルビデオ信号の位相と合わせるために、供給されたディジタルビデオ信号に対して所定量の遅延を与える。方式変換回路20、垂直フィルタ回路21および遅延調整回路22から出力された信号は、出力回路16および17の入力切替回路30および34にそれぞれ供給される。
【0065】
垂直フィルタブロック15は、上述の垂直フィルタブロック14と同様に、方式変換回路23、垂直フィルタ回路24および遅延調整回路25とからなり、垂直フィルタブロック14とは独立して制御可能なものである。垂直フィルタブロック15に供給されたディジタルビデオ信号の色信号成分Cは、上述と同様にしてこれらの回路で所定の処理をされ、出力回路16および17の入力切替回路31および35にそれぞれ供給される。
【0066】
入力切替回路30および34は、出力制御回路18から出力される選択指示信号に基づき、遅延調整回路22、方式変換回路20および垂直フィルタ回路21から出力されたディジタルビデオ信号を選択的に切り替えて出力する。入力切替回路31および35も同様にして、出力制御回路18から出力される選択指示信号に基づき、遅延調整回路25、方式変換回路23および垂直フィルタ回路24から出力されたディジタルビデオ信号を切り替えて出力する。
【0067】
例えば、再生フォーマット指示信号によって480Pフォーマットの信号の再生が指示され、出力フォーマット指示信号によって480Iフォーマットの信号の出力が指示されている場合には、480Pフォーマットで再生された信号を、480Iフォーマットに方式変換して出力する必要があることを示している。したがって、入力切替回路30によって方式変換回路20の出力が選択され、入力切替回路31によって方式変換回路23の出力が選択される。
【0068】
出力回路16において、入力切替回路30および31からそれぞれ出力された輝度信号Yと色信号Cとがミュート回路32に供給される。ミュート回路32は、図示されない制御回路からの指示に基づき、再生されたビデオ信号のフォーマットが変更された後の所定期間、供給された輝度信号Yおよび色信号Cを、所定の信号、例えばグレーを表示するような信号に置き換えて出力する。ミュート回路32による信号の置き換えは、再生系の回路、例えばビデオ復号回路13の動作が安定するまでの数秒間、続けられる。
【0069】
ミュート回路32から出力されたディジタルビデオ信号は、同期信号発生・付加回路33に供給される。同期信号発生・付加回路33は、例えばカウンタを有し、外部から供給された同期信号(リファレンス信号)に基づきシンクパターンを発生させる。同期信号発生・付加回路33に供給されたディジタルビデオ信号は、発生されたシンクパターンが所定に付加されて出力される。
【0070】
同期信号発生・付加回路33は、例えばこのVTRのパネル面に設けられたスイッチなどにより設定された出力フォーマットの指示に従い、一定のフォーマットに対応して動作し続けるようにされている。
【0071】
出力回路17においても、入力切替回路34および35、ならびに、ミュート回路36および同期信号発生・付加回路37により上述の出力回路16と同様な処理がなされ、ディジタルビデオ信号が出力される。出力回路16および17に対する外部同期信号の入力や出力フォーマットの指示は、それぞれ独立して行うことができる。したがって、出力回路16および17は、互いに異なるフォーマットのディジタルビデオ信号をそれぞれ独立して出力することができる。
【0072】
出力制御回路18は、SYNC・ID検出回路11から供給された再生フォーマット指示信号と、例えばこのVTRのパネル面からの操作に基づく出力フォーマット指示信号とに基づき、入力切替回路30および31、ならびに、入力切替信号34および35に対する選択指示信号を出力する。例えば、再生フォーマット指示信号が480Pの再生を示し、且つ、出力フォーマット指示信号が480Iの出力を示している場合には、入力切替回路30および入力切替回路31では、それぞれ方式変換回路20および方式変換回路23の出力が選択される。なお、出力フォーマット指示信号は、出力回路16および17に対応して、独立した2系統が入力可能である。
【0073】
上述したように、この発明においては、方式変換回路、垂直フィルタ回路および遅延調整回路を輝度信号Yおよび色信号Cに対してそれぞれ独立して設け、これらの出力位相を合わせた上で、出力回路の先頭に配される入力切替回路で輝度信号Yおよび色信号Cそれぞれ独立して切り替えるようにしている。そして、磁気テープから再生された、480Iおよび480Pの信号フォーマットの再生ディジタルビデオ信号を、2系統の出力に対して、480Iおよび480P間でのフォーマット変換を自在に行い、それぞれ出力できるようにしている。
【0074】
ここで、垂直フィルタブロック14に入力されるディジタルビデオ信号について、概略的に説明する。図11は、信号フォーマットが480Iおよび480Pのディジタルビデオ信号のラインの位置関係について示す。なお、フィールド周波数は、480Pおよび480Iフォーマットで、共に60Hzとする。なお、垂直フィルタブロック15は、垂直フィルタブロック14と同等であるので、詳細な説明を省略する。
【0075】
信号フォーマットが480Pの場合は、図11Aに示されるように、1フィールドが525ラインから構成される。全525ラインのうち、画面に表示される有効ライン数が480本とされる。一方、信号フォーマットが480Iの場合は、図11Bに一例が示されるように、全525ラインが第1フィールドおよび第2フィールドに分けられ、これら第1および第2フィールドで1フレームが構成される。第1フィールドは、第1ラインから第263ラインからなり、第264ラインからの第2フィールドは、第1フィールドの開始ライン(第1ライン)から1/2ライン分遅れて開始される。すなわち、480Iフォーマットでは、画面上では、第2フィールドは、第1フィールドよりも1/2ライン分下の位置に表示されることになる。
【0076】
ここで、このようなビデオ信号が記録された磁気テープを、記録時とは異なる速度で再生する、変速再生を行う場合について考える。なお、ここでは、変速再生は、1倍速未満の速度、例えば記録時の半分の速度で再生を行う、1/2倍速再生であるものとする。また、以下では、インタレース走査の場合の第1フィールドを「ODDフィールド」、第2フィールドを「EVENフィールド」として説明する。
【0077】
図12は、1/2倍速再生の際の、インタレース走査におけるODDおよびEVENフィールドの出力順を概略的に示す。1/2倍速再生の際には、通常再生の際の、本来の2フレームの期間に1フレームが出力され、図12Bに一例が示されるように、本来の1フレーム期間に、ODDおよびEVENフィールドがそれぞれ2回ずつ連続的に出力される。これは、図12Aに示されるような、本来のODDおよびEVENフィールドの出力順と異なっており、本来のODDおよびEVENフィールドの順番に対して逆転するフィールドが存在する。
【0078】
一方、このVTRから出力されるビデオ信号を、外部から供給される同期信号に同期させ例えばモニタなどに表示させる場合には、このODDおよびEVENが逆転しているフィールドでは、本来のODDフィールドのライン位置にEVENフィールドの信号が表示されたり、逆に、本来のEVENフィールドのライン位置にODDフィールドの信号が表示されることになり、不都合が生じる。
【0079】
これを避けるために、通常、出力されるビデオ信号に対して垂直フィルタ処理を行い、画面の重心を移動させる。この実施の一形態では、垂直フィルタブロック14および15においてこの処理がなされる。
【0080】
次に、垂直フィルタブロック14および15について、より詳細に説明する。なお、垂直フィルタブロック14および15は、略同一の構成で実現可能なので、以下では、垂直フィルタブロック14について説明する。図13は、垂直フィルタブロック14の一例の構成をより詳細に示す。ビデオ復号回路13から出力された再生ビデオ信号は、4連の遅延回路50A〜50Dに供給されると共に、係数乗算器51Aに供給される。遅延回路50A〜50Dの出力は、それぞれ係数乗算器51B〜51Eに供給される。
【0081】
4連の遅延回路50A〜50D、係数乗算器51A〜51Dおよび加算器52で、垂直フィルタが構成される。4連の遅延回路50A〜50Dは、例えばラインメモリからなり、それぞれ入力された信号に1ライン分の遅延を与える。1ライン分の遅延は、信号フォーマットが480Iのときには64μsに相当し、480Pのときには32μsに相当する。
【0082】
図14は、係数乗算器51A〜51Eをさらに詳細に示す。係数乗算器51A〜51Eのそれぞれは、2つの係数レジスタにセットされた係数を係数選択回路で選択し、選択された係数と入力されたビデオ信号とを乗算回路によって乗算する。これら係数乗算器51A〜51Eは、同一の構成なので、係数乗算器51Aについて説明する。2つの係数レジスタに係数a1およびb1がセットされる。係数a1、b1は、係数選択回路53Aによって、上述した再生フォーマット指示信号および出力フォーマット指示信号に基づき一方が選択される。乗算回路54Aに入力されたディジタルビデオ信号は、係数選択回路53Aで選択された係数が乗ぜられて出力される。
【0083】
係数乗算回路51B〜51Eにおいても、同様にして係数a2〜a5、b2〜b5の選択がなされ、入力されたディジタルビデオ信号に対して係数が乗ぜられる。係数乗算回路51A〜51Eのそれぞれから出力された信号は、加算器52で加算され、1ライン分の信号に合成されて出力される。
【0084】
図15は、係数a1〜a5、b1〜b5の例を示す。この図15に示される各係数は、ビデオ信号のフォーマット変換の際に用いられる、周知の値である。図15において、列(a)の係数a1〜a5、b1〜b5は、I/P変換の際に一般的に用いられる係数であって、係数a1〜a5を用いたときには、重心が0.5Hだけずれ、係数b1〜b5を用いたときには、重心がずれない。また、この列(a)の係数を用いたときには、信号の周波数特性が半分に落ちる。
【0085】
列(b)の係数a1〜a5は、1/2倍速再生の際に一般的に用いられる係数であって、係数a1〜a5を用いたときには重心が5/8Hだけずれ、係数b1〜b5を用いたときには重心が1/8Hだけずれる。後述するように、この実施の一形態では、この列(b)の係数a1〜a5、b1〜b5を、従来の用法の、1/2倍速再生におけるODD/EVENフィールド反転の際の重心ずれを補正するために用いると共に、I/P変換の際にも用いる。
【0086】
また、列(c)の係数a1〜a5、b1〜b5は、P/I変換を行う際に用いられる係数である。係数a1〜a5と係数b1〜b5とは、それぞれ同一の値が用いられているため、列(c)による変換では、重心の変化は生じない。この列(c)による変換では、上述の列(a)による変換と同様に、信号の周波数特性が半分に落とされる。
【0087】
図15で分かるように、列(b)の係数において、垂直フィルタによる重心のずれは、5/8Hとなる。また、重心をずらさない処理の場合でも、実際には1/8Hだけ重心をずらす。また、列(a)および列(c)において、共に周波数特性が落ちるような係数を用いている。これにより、垂直フィルタによってビデオ信号の補間を行った場合と、そうでない場合とで、出力されるビデオ信号の画質を一定とすることができる。そのために、このような、周波数特性の近い一組の係数を用いて垂直フィルタ処理を行う。これにより、出力ビデオ信号のフリッカを防止することができる。
【0088】
図15に示した係数a1〜a5と係数b1〜b5とは、係数選択回路53A〜53Eによって、所定のタイミングで切り替えられ、選択的に乗算回路54A〜54Eにそれぞれ供給される。図16は、この係数選択回路53A〜53Eの一例の動作を示すタイムチャートである。係数選択回路53A〜53Eは、全て同一の動作を行うので、ここでは、係数乗算器51Aおよび係数選択回路53Aを例にとって説明する。
【0089】
図16Aは、係数乗算器51Aに入力されるビデオ信号であり、D0、D1、D2、・・・は、それぞれ画素データを示す。画素データは、480Iフォーマットのフィールド周波数に基づき、1/13.5MHzの周期で入力される。図16Bに示されるように、係数切替指示信号COESELは、画素データの入力周期の1/2の周期で係数選択回路53Aの選択を切り替えるように指示する。係数a1およびb1は、この係数切替指示信号COESELにより、画素データの入力周期の1/2の周期で、係数a1、係数b1の順で切り替えられて乗算回路54Aに供給される。したがって、係数乗算器51Aから、図16Cに示されるように、重心が0.5H上げられた信号と重心が変化されない信号とが、1画素データの期間中に複合されて出力されることになる。すなわち、乗算回路54Aの出力は、データレートが入力信号に対して2倍とされている。
【0090】
このようにして、係数a1およびb1を画素データの入力周期の1/2の周期で切り替えることで、2ライン分の信号が生成される。なお、図16Cにおいて、F0’、F1’、F2’、・・・は、係数a1を乗ぜられたことによる、0.5H重心が上げられたライン上の画素データを示し、F0、F1、F2、・・・は、係数b1が乗ぜられ、重心が上げられていない、すなわち、元のライン位置にあるライン上の画素データを示す。
【0091】
係数乗算器51Aの出力は、同様にして係数a2〜a5およびb2〜b5をそれぞれ乗じられた他の係数乗算器51B〜51Eの出力と、加算器52で加算されて垂直フィルタ出力とされる。この垂直フィルタ出力は、それぞれ32μsの遅延を与える遅延回路56A〜56Dに供給される。遅延回路56A〜56Dは、遅延量の調整を行うためのものであり、例えばそれぞれFIFO(First In-First Out)メモリからなる。
【0092】
遅延回路56A〜56D以降の構成は、垂直フィルタ回路21としての構成と、方式変換回路20としての構成とからなる。垂直フィルタ回路21としてのビデオ出力は、セレクタ63から取り出され、方式変換回路20の出力としてのビデオ出力は、セレクタ60から取り出される。先ず、垂直フィルタ回路21としての構成および処理について説明する。
【0093】
遅延回路56Aの出力が取り出され、セレクタ63に供給されると共に、遅延回路56Bおよび遅延回路56Dの出力がそれぞれ重心選択回路61Aおよび61Bを介してセレクタ63に供給される。
【0094】
重心選択回路61Aおよび61Bについて説明する。図17は、重心選択回路61Aおよび61Bの一例の動作を示すタイムチャートである。図17Aは、垂直フィルタの出力を示し、上述した図16Cに対応する図である。上述したように、垂直フィルタの出力すなわち加算器52から出力される信号は、重心が0.5H上げられたデータと重心が変化していないデータとが、本来の1画素のデータの期間に複合された信号である。この信号は、重心選択回路61Aおよび61Bにおいて、重心が変化された信号と重心が変化されない信号とに選択されて出力される。
【0095】
より具体的には、ビデオ復号回路13から出力された再生ビデオ信号と、最終出力時のリファレンス、例えば外部同期信号とで、フィールド極性が反転している場合には、係数a1〜a5に基づく信号(図17C)を選択し、反転していない場合には、係数b1〜b5に基づく信号(図17B)を選択してタイミングを揃えてセレクタ63に供給する。
【0096】
例えば重心選択回路61Aは、画素データの入力周期の1/2の周期で動作する2個のラッチ回路で構成され、再生ビデオ信号とリファレンスとでフィールド極性が反転していないフィールドでは、図17Aの垂直フィルタ出力のうちデータF0、F1、F2、・・・を選択的に1回ラッチし、1画素分のデータタイミングに同期させて出力する(図17B)。一方、再生ビデオ信号とリファレンスとでフィールド極性が反転しているフィールドでは、垂直フィルタ出力のうちデータF0’、F1’、F2’、・・・を選択的に2回ラッチし、1画素分のデータタイミングに同期させて出力する(図17C)。重心選択回路61Bの動作および構成も、重心選択回路61Aと同様である。
【0097】
セレクタ63は、480Iフォーマットのビデオ信号の変速再生時において、ビデオ復号回路13から出力された再生ビデオ信号のフィールド極性と、例えば外部から供給される外部同期信号などのリファレンス信号のフィールド極性との関係に基づき、遅延回路56Bおよび56Dから供給された信号を選択的に出力する。この実施の一形態においては、再生ビデオ信号のフィールド極性がODDで、リファレンス信号のフィールド極性がEVENであれば、遅延回路56Bの出力を選択し、それ以外の場合には、遅延回路56Dの出力を選択する。
【0098】
また、セレクタ63は、480Pフォーマットのビデオ信号を出力する際には、遅延回路56Aの出力を選択する。
【0099】
図18および図19を用いて、1/2倍速再生時における、ビデオ復号回路13から出力された再生ビデオ信号と、セレクタ63から出力される出力ビデオ信号との、重心の関係を示し、上述した構成による処理について説明する。
【0100】
図18は、入力される再生ビデオ信号に対して、リファレンスのODDおよびEVENフィールドが反転しない例である。図18Cにインタレース走査で再生されたビデオ信号、すなわち480Iフォーマットのビデオ信号を示し、図18Aおよび図18Bが図18Cの信号に基づくODDフィールド出力、図18Dおよび図18Eが図18Cの信号に基づくEVENフィールド出力を示す。図18Cの信号を480Iフォーマットで出力する場合には、図18Aおよび図18Eにそれぞれ示されるように、ODDおよびEVENフィールドの何れにおいても、何の処理も施さずに、そのまま出力することができる。
【0101】
すなわち、ビデオ復号回路13から出力され、垂直フィルタブロック14に入力されたビデオ信号は、4連の遅延回路50A〜50Dに供給され、3段目の遅延回路50Cから取り出されて、無変換出力として出力される。この出力は、後段の入力切替回路30および34に供給される。
【0102】
一方、図18Cの信号をプログレッシブ走査、すなわち480Pフォーマットで出力する場合には、図18Bおよび図18Dにそれぞれ示されるように、補間により480Pのラインを生成して出力する。ラインの補間は、上述した遅延回路50A〜50D、係数乗算器51A〜51Eおよび加算器52からなる垂直フィルタによってなされる。係数乗算器51A〜51Eの係数レジスタに、上述した図15の列(a)に示される係数a1〜a5、b1〜b5を格納し、係数選択回路53A〜53Eを所定に切り替えることで、補間を行う。補間された信号は、遅延回路56Aに供給されて位相を合わされ、セレクタ63を介して出力される。
【0103】
図19は、ODDおよびEVENフィールドが反転するフィールドで、且つ、インタレース走査、すなわち480Iフォーマットで出力する例である。図19Dが480Iで再生されたビデオ信号を示し、この信号が図19C、図19Bの処理を経て図19AのようにしてODDフィールドで出力される。同様に、図19Dの信号が図19Eの処理を経て図19FのようにしてEVENフィールドで出力される。
【0104】
ODDおよびEVENが反転されているため、図19Dの信号のうちODDフィールドの信号は、EVENフィールドの同期に合わせてビデオ復号回路13から出力される。そのため、図19Cに示されるように、重心が0.5ライン分(0.5H)下がることになる。この信号は、垂直フィルタブロック14に供給され、上述した図15の列(b)に示される係数a1〜a5が用いられて垂直フィルタ処理され、重心が0.5H下げられる(図19B)。さらにこの信号は、セレクタ63により選択が遅延回路56Dから56Bへと切り替えられることで、図19Aに示されるように重心が1H、上げられる。これにより、ODDフィールドの信号が元の、すなわち、図19Dに示される再生信号のライン位置に戻される。
【0105】
一方、EVENフィールドに関しても同様に、ODDフィールドの同期に合わせてビデオ復号回路13から出力される。EVENフィールドがODDフィールドに合わせられるため、この場合には、図19Eに示されるように重心が0.5H上がることになる。重心が0.5H上がったこの信号は、上述した図15の列(b)に示される係数a1〜a5が用いられた垂直フィルタ処理により重心が0.5H下げられ、図19Fに示されるように、EVENフィールドが元のライン位置に下げられる。
【0106】
このように垂直フィルタ処理された信号は、遅延回路56A〜56Dに供給され、位相を合わせられると共に、重心選択回路61Aおよび61Bで所定に重心が選択され、セレクタ63に供給される。そして、図19Dから図19Aへの処理では、遅延回路56Bの出力が選択され、図19Dから図19Fへの処理では、遅延回路56Dの出力が選択される。
【0107】
次に、方式変換回路20としての構成および処理について説明する。方式変換回路20は、上述したように、P/I変換およびI/P変換を行う。遅延回路56A、56Bおよび56Cの出力がそれぞれ取り出され、セレクタ57に供給される。したがって、セレクタ57には、32μsすなわち480Pフォーマットの1Hずつがシフトされた信号が3系統、入力される。セレクタ57では、これら3系統の信号を選択的に出力し、時間軸変換回路58および59に供給する。セレクタ57では、出力フォーマット指示信号によって出力する信号を選択すると共に、ビデオ復号回路13から出力される再生ビデオ信号と、リファレンス信号とのフィールド極性に基づき出力する信号を選択する。
【0108】
時間軸変換回路58および59は、例えばFIFOメモリからなり、入力されたディジタルビデオ信号を、入力時とは異なる時間軸で読み出すことで時間軸を変換し、P/I変換あるいはI/P変換を行う。時間軸変換回路58および59の出力は、セレクタ60に供給され、再生フォーマット指示信号および出力フォーマット指示信号に基づき所定に選択され出力される。
【0109】
先ず、通常再生の場合について説明する。セレクタ57において、遅延回路56Bの出力が選択される。図20は、この通常再生の際の一例のタイムチャートを示す。なお、図20および後述する図22、図23および図24において、斜線部は、水平ブランキング期間を示す。
【0110】
図20Aは、リファレンス信号を示す。リファレンス信号は、この例では、インタレース走査の信号に対応し、1H=64μsとされている。このリファレンス信号に同期して、図20Bに示される480Iフォーマットのビデオ信号が垂直フィルタブロック14に入力される。この信号から、垂直フィルタにより480Pフォーマットのラインが生成される(図20C)。上述したように、垂直フィルタでは、係数選択回路53A〜53Eにより、1画素データの期間に2画素分のデータが複合されており、480Pフォーマットの2H分の信号が480Iフォーマットの1Hの期間に多重されている。この信号が遅延回路56Aおよび56Bでそれぞれ32μsずつ遅延され(図20D、図20E)、セレクタ57を介して時間軸変換回路58および59に供給される。
【0111】
時間軸変換回路58では、遅延回路56Bから出力された信号から、480Iフォーマットの1H期間に多重された480Pフォーマットの2Hのうち、前半のラインの信号を選択的にFIFOメモリに書き込む(図20F)。この信号は、図20Gのように、FIFOメモリに当該信号が書き込まれる1Hの後半の期間に読み出される。一方、時間軸変換回路59では、遅延回路56Bから出力された信号から、480Iフォーマットの1H期間に多重された480Pフォーマットの2Hのうち、後半のラインの信号を選択的にFIFOメモリに書き込む(図20H)。この信号は、図20Iのように、FIFOメモリに当該信号が書き込まれる1Hの次の1Hの前半の期間に読み出される。
【0112】
時間軸変換回路58および59で時間軸変換された信号は、セレクタ60で1本の信号とされ、図20Jの変換出力として出力される。このように時間軸変換回路58および59が制御されることで、垂直フィルタで作られた0.5H上に重心がずらされた信号と、重心変化のない信号とが1Hおきに出力され、正しく補間された480Pフォーマットの信号が得られる。
【0113】
なお、変換出力は、図20Jに示されるように、入力された信号に対して3H分遅延している。これに対して、上述したセレクタ63からの出力は、図20Kに示されるように、加算器52の出力に対して遅延回路56A〜56Dを介され、合計で入力信号に対して3H分遅延される。さらに、無変換出力は、遅延回路50A〜50Dの3段目から取り出されるため、入力信号に対して3H遅延されている。すなわち、方式変換回路20、垂直フィルタ回路21および遅延調整回路22の出力は、互いに位相が合っている。
【0114】
変速再生、例えば1/2倍速再生を行った場合について説明する。この場合には、既に述べたように、ビデオ復号回路13から出力される再生ビデオ信号とリファレンス信号とのフィールド極性が反転する。
【0115】
図21は、変速再生時に、ODDおよびEVENフィールドが反転するフィールドで、且つ、プログレッシブ走査、すなわち480Pフォーマットで出力する場合の、重心の変化を示す。図21Dが480Iで再生されたビデオ信号を示し、この信号が図21C、図21Bの処理を経て図21AのようにしてODDフィールドで出力される。同様に、図21Dの信号が図21Eおよび図21Fの処理を経て図21GのようにしてEVENフィールドで出力される。
【0116】
ODDおよびEVENが反転されているため、図21Dの信号のうちODDフィールドの信号は、EVENフィールドの同期に合わせてビデオ復号回路13から出力される。そのため、図21Cに示されるように、重心が0.5H下がることになる。そして、垂直フィルタブロック14において、上述した図15の列(a)に示される係数a1〜a5、b1〜b5が用いられた垂直フィルタ処理によりラインが補間されることで、図21Bに示されるように、プログレッシブ走査に対応するラインが生成される。480Pのフォーマットとされたこのビデオ信号は、垂直フィルタの後段の遅延回路56A〜56Dに供給され、メモリの読み出しを制御されることで、図21Aに示されるように重心が1H上げられ、出力される。
【0117】
一方、EVENフィールドの信号は、ODDフィールドの同期に合わせてビデオ復号回路13から出力される。そのため、図21Eに示されるように、重心が0.5H上がることになる。そして、垂直フィルタブロック14において、上述した図15の列(a)に示される係数a1〜a5、b1〜b5が用いられた垂直フィルタ処理によりラインが補間されることで、図21Fに示されるように、プログレッシブ走査に対応するラインが作成される。480Pのフォーマットとされたこのビデオ信号は、遅延回路56A〜56Dに供給され、図21Gに示されるように重心が1H下げられ、出力される。480IフォーマットにおけるEVENフィールドの第1ラインから480Pフォーマットの第2ラインが作られるため、1H重心を下げることで、EVENフィールド側のライン位置が図21AのODDフィールド側のライン位置と同じになる。
【0118】
このように、変速再生により再生された再生ビデオ信号と、リファレンス信号とのフィールド極性が反転した場合には、本来の重心に対して、480Iフォーマットの0.5H分(32μs)だけ重心がずらされる。そのため、これをセレクタ57において遅延回路56A〜56Cの段数を切り替えることで、この0.5H、すなわち32μs分の重心のずれを元に戻す。その後は、上述の通常再生のときと同様に、時間軸変換回路58および59で時間軸変換することで、正しく補間された480Pフォーマットの信号が得られる。
【0119】
図22は、ODDフィールドの信号をEVENフィールドのタイミングで出力する場合の一例のタイミングチャートを示し、図23は、EVENフィールドの信号をODDフィールドのタイミングで出力する場合の一例のタイミングチャートを示す。ODDフィールドの信号をEVENフィールドのタイミングで出力する場合は、セレクタ57において、遅延回路56Aの出力が選択される。一方、EVENフィールドの信号をODDフィールドのタイミングで出力する場合は、セレクタ57において、遅延回路56Cの出力が選択される。このように遅延段数を切り替えることで、上述した0.5H分の重心のずれが元に戻される。時間軸変換回路58および59の動作は、上述した図20のタイミングと同一なので、詳細な説明を省略する。
【0120】
次に、ビデオ復号回路13から480Pフォーマットで再生された信号を処理する場合について説明する。信号の流れは、上述した480Iフォーマットの信号を再生する場合と同様である。垂直フィルタにおいて、係数a1〜a5、b1〜b5は、図15の列(c)の値を用いることができる。480Pフォーマットの信号は、データレートが480Iフォーマットの2倍になっているので、図16および図17で説明したような、垂直フィルタでの係数切り替えや、重心選択回路61Aおよび61Bでの切り替えを考慮する必要がない。また、480Pフォーマットは、元来、インタレース走査を行わない、ノンインタレース走査であって、1フィールド=1フレームである。したがって、変速再生時の、ビデオ復号回路13から出力される再生ビデオ信号と、リファレンス信号とのフィールド極性反転の現象が生じない。このため、セレクタ57およびセレクタ63では、共に、常に遅延回路56Aの信号を選択する。
【0121】
図24は、480Pフォーマットの信号の一例の処理を示すタイムチャートである。リファレンス信号は、図24Aに示されるように、480Pフォーマットに対応した信号となっており、1Hが32μsとされる。ビデオ復号回路13から出力された480Pフォーマットのビデオ信号は、垂直フィルタブロック14に対して図24Bのように入力される。この信号は、垂直フィルタで、64μs分遅延され、遅延回路56Aに入力される(図24C)。遅延回路56Aで864ワードだけ遅延された信号(図24D)は、時間軸変換回路58および59に供給される。
【0122】
時間軸変換回路58および59では、図20、図21および図23で上述した480Iフォーマットの処理の際の、逆の処理を行う。すなわち、図24Eおよび図24F、ならびに、図24Hおよび図24Iにそれぞれ示されるように、FIFOメモリに書き込まれた、1Hが32μsである480Pフォーマットの信号を、64μsの時間をかけて読み出す。また、時間軸変換回路58および59では、図24Gおよび図24Jに示されるように、互いに480Pフォーマットの1Hだけずれて読み出しがなされる。この例では、時間軸変換回路58の出力が第1フィールド(ODDフィールド)とされ、時間軸変換回路59の出力が第2フィールド(EVENフィールド)とされる。このように、P/I変換の際には、時間軸変換回路58および59において、信号が1Hずつ間引かれて出力されることで、480Iフォーマットに対応した出力信号が得られる。
【0123】
この例でも、図24G、図24J、図24Kおよび図24Lに示されるように、方式変換回路20、垂直フィルタ回路21および遅延調整回路22の出力は、互いに位相が合わせられる。
【0124】
なお、上述では、垂直フィルタブロック14での処理、すなわちビデオ信号の輝度信号成分Yを中心に説明し、ビデオ信号のライン数を変換する例について説明したが、これをビデオ信号の色信号成分Cに適用することで、クロマフォーマットの変換を行うことができる。例えば、クロマフォーマットが4:2:2の信号をクロマフォーマットが4:2:0の信号に変換することができる。例えば、上述したように、垂直フィルタにおいて図15に示される係数のうち、列(a)および列(c)の係数を用いると、信号の周波数特性が半分に落とされるので、これを利用してクロマフォーマットの変換を行うことができる。また、垂直フィルタブロック14および15は、互いに独立して制御されるため、ライン数とクロマフォーマットを共に変換することもできる。
【0125】
さらに、上述では、この実施の一形態を、480Iフォーマットと480Pフォーマットとの間の変換に適用するように説明したが、これはこの例に限定されない。例えば、この実施の一形態の構成で、HD(High Definition)フォーマットとSD(Standard Definition)フォーマットとの間での変換を行うこともできる。HDフォーマットは、SDフォーマットに対してライン数および1ラインのサンプル数を多くすることで、SDフォーマットよりも高解像度を実現している。
【0126】
さらにまた、上述では、この発明が磁気テープを記録媒体とし、磁気テープから再生された信号を処理するVTRに適用されるように説明したが、これはこの例に限定されない。例えば、記録媒体をディスク状記録媒体として、このディスク状記録媒体から再生されたビデオ信号を変換するような装置にも適用できる。また例えば、この実施の一形態は、記録媒体から再生されたビデオ信号だけでなく、有線または無線の伝送路を介して供給されるビデオ信号の変換を行う場合にも適用できる。
【0127】
また、上述では、この実施の一形態によるVTRが2系統のフォーマットに対応するように説明したが、これはこの例に限られず、さらに多系統のフォーマットに対応するようにもできる。
【0128】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、磁気テープ上に記録された再生ビデオフォーマット情報と、予め指定された出力フォーマット情報とから、P/I変換およびI/P変換を行う方式変換器の動作モードを自動的に変更することができるという効果がある。
【0129】
また、垂直フィルタおよび出力回路が輝度成分信号Yおよび色信号成分Cにそれぞれ独立して設けられているため、出力時のクロマの周波数特性の違いなどにも対応できる効果がある。
【0130】
さらに、この実施の一形態では、2種類以上の異なるフォーマットの出力を有し、これら2種類以上の異なるフォーマットのビデオ信号を互いに位相を合わせて出力することができる効果がある。
【0131】
さらにまた、この実施の一形態によれば、出力回路が独自に、出力信号に対して外部同期信号に基づく同期を付加しているため、再生する磁気テープを異なるフォーマットのテープに入れ替える際にも、継続して同期を付加することができる効果がある。また、フォーマットの変更時に、所定期間だけ出力信号がミュートされ、例えばグレー信号に置き換えられるため、フォーマット変更時のエラー画面が表示されないという効果がある。
【0132】
また、この実施の一形態によれば、2系統以上のフォーマットをマトリクス的に自在に選択できるという効果がある。
【0133】
さらに、この実施の一形態によれば、変速再生用のフィルタ処理と方式変換用のフィルタ処理とを共通の構成で行っているので、回路規模を削減できるという効果がある。
【0134】
さらにまた、方式変換用のフィルタとして、周波数特性の略等しい2種類のフィルタ係数を用いているので、変速再生時に再生信号とリファレンス信号とのフィールド極性の違いにより発生するフリッカを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁気テープ上に形成されるトラックフォーマットの一例を示す略線図である。
【図2】テープ上のセクタの配置を示す略線図である。
【図3】ID0およびID1のビットアサインの一例を示す略線図である。
【図4】ビデオ信号の複数のフォーマットを示す略線図である。
【図5】1エラー訂正ブロックにおけるオーディオデータの配置の一例を示す略線図である。
【図6】1エラー訂正ブロックにおけるオーディオデータの配置の一例を示す略線図である。
【図7】1エラー訂正ブロックにおけるオーディオデータの配置の一例を示す略線図である。
【図8】AUXデータの内容の一例を示す略線図である。
【図9】ビデオデータおよびオーディオデータを記録するトラックフォーマットの一例を示す略線図である。
【図10】この発明の実施の一形態によるディジタルVTRの再生系の一例の構成を示すブロック図である。
【図11】信号フォーマットが480Iおよび480Pのディジタルビデオ信号のラインの位置関係について示す略線図である。
【図12】1/2倍速再生の際の、インタレース走査におけるODDおよびEVENフィールドの出力順を概略的に示す略線図である。
【図13】垂直フィルタブロックの一例の構成をより詳細に示すブロック図である。
【図14】係数乗算器をさらに詳細に示すブロック図である。
【図15】係数a1〜a5、b1〜b5の例を示すブロック図である。
【図16】係数選択回路の一例の動作を示すタイムチャートである。
【図17】重心選択回路の一例の動作を示すタイムチャートである。
【図18】入力される再生ビデオ信号に対して、リファレンスのODDおよびEVENフィールドが反転しない例を示す略線図である。
【図19】ODDおよびEVENフィールドが反転するフィールドで、且つ、インタレース走査、すなわち480Iフォーマットで出力する例を示す略線図である。
【図20】通常再生の際の一例のタイムチャートである。
【図21】変速再生時に、ODDおよびEVENフィールドが反転するフィールドで、且つ、プログレッシブ走査、すなわち480Pフォーマットで出力する場合の、重心の変化を示す略線図である。
【図22】ODDフィールドの信号をEVENフィールドのタイミングで出力する場合の一例のタイミングチャートである。
【図23】EVENフィールドの信号をODDフィールドのタイミングで出力する場合の一例のタイミングチャートである。
【図24】480Pフォーマットの信号の一例の処理を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
11・・・SYNC・ID検出回路、13・・・ビデオ復号回路、14,15・・・垂直フィルタブロック、16,17・・・出力回路、18・・・出力制御回路、20,23・・・方式変換回路、21,24・・・垂直フィルタ回路、22,25・・・遅延調整回路、30,31,34,35・・・入力切替回路、32,36・・・ミュート回路、33,37・・・同期信号発生・付加回路、50A〜50D・・・遅延回路、51A〜51E・・・係数乗算回路、52・・・加算器、53A〜53E・・・係数選択回路、54A〜54E・・・乗算回路、56A〜56D・・・遅延回路、57・・・セレクタ、58,59・・・時間軸変換回路、60・・・セレクタ、61A,61B・・・重心選択回路、63・・・セレクタ

Claims (10)

  1. 複数の信号フォーマットのビデオ信号を再生可能で、且つ、再生されたビデオ信号を複数のフォーマットで同時に出力可能な再生装置において、
    記録媒体に記録されたビデオ信号を再生する再生手段と、
    上記再生手段で再生された上記ビデオ信号のフォーマットを変換するフォーマット変換手段と、
    上記再生手段で再生された上記ビデオ信号を、上記フォーマット変換手段でフォーマット変換されて出力されたビデオ信号と位相を合わせて出力するバイパス手段と、
    上記フォーマット変換手段から出力されたビデオ信号と、上記バイパス手段から出力されたビデオ信号とを選択して出力する複数の出力手段と
    を有し、
    上記複数の出力手段から同時にビデオ信号の出力を行うことを特徴とする再生装置。
  2. 請求項に記載の再生装置において、
    上記フォーマット変換手段および上記バイパス手段は、上記ビデオ信号の輝度成分と色成分とにそれぞれ設けられ、
    上記複数の出力手段は、上記フォーマット変換手段および上記バイパス手段を、上記輝度成分と上記色成分とで独立して選択するようにしたことを特徴とする再生装置。
  3. 請求項に記載の再生装置において、
    上記再生手段で再生された上記ビデオ信号に対してフィルタ処理を行うフィルタ手段をさらに有し、
    上記フィルタ手段は、上記フォーマット変換手段でフォーマット変換されて出力されたビデオ信号と位相を合わせてビデオ信号を出力すると共に、上記複数の出力手段は、上記フォーマット変換手段から出力されたビデオ信号と、上記バイパス手段から出力されたビデオ信号と、上記フィルタ手段から出力されたビデオ信号とを選択して出力するようにしたことを特徴とする再生装置。
  4. 請求項に記載の再生装置において、
    上記フィルタ手段、上記フォーマット変換手段および上記バイパス手段は、上記ビデオ信号の輝度成分と色成分とにそれぞれ設けられ、
    上記複数の出力手段は、上記フィルタ手段、上記フォーマット変換手段および上記バイパス手段を、上記輝度成分と上記色成分とで独立して選択するようにしたことを特徴とする再生装置。
  5. 複数の信号フォーマットのビデオ信号を再生可能で、且つ、再生されたビデオ信号を複数のフォーマットで同時に出力するようにされた再生方法において、
    記録媒体に記録されたビデオ信号を再生する再生のステップと、
    上記再生のステップで再生された上記ビデオ信号のフォーマットを変換するフォーマット変換のステップと、
    上記再生のステップで再生された上記ビデオ信号を、上記フォーマット変換のステップでフォーマット変換されて出力されたビデオ信号と位相を合わせて出力するバイパスのステップと、
    上記フォーマット変換のステップから出力されたビデオ信号と、上記バイパスのステップにより出力されたビデオ信号とを選択して出力する複数の出力のステップと
    を有し、
    上記複数の出力のステップから同時にビデオ信号の出力を行うことを特徴とする再生方法。
  6. 複数の信号フォーマットのビデオ信号を入力可能で、且つ、入力されたビデオ信号を複数のフォーマットで同時に出力可能な信号処理装置において、
    入力されたビデオ信号のフォーマットを変換するフォーマット変換手段と、
    上記入力されたビデオ信号を、上記フォーマット変換手段でフォーマット変換されて出力されたビデオ信号と位相を合わせて出力するバイパス手段と、
    上記フォーマット変換手段から出力されたビデオ信号と、上記バイパス手段から出力されたビデオ信号とを選択して出力する複数の出力手段とを有し、
    上記複数の出力手段から同時にビデオ信号の出力を行うことを特徴とする信号処理装置。
  7. 請求項に記載の信号処理装置において、
    上記フォーマット変換手段および上記バイパス手段は、上記ビデオ信号の輝度成分と色成分とにそれぞれ設けられ、
    上記複数の出力手段は、上記フォーマット変換手段および上記バイパス手段を、上記輝度成分と上記色成分とで独立して選択するようにしたことを特徴とする信号処理装置。
  8. 請求項に記載の信号処理装置において、
    上記再生手段で再生された上記ビデオ信号に対してフィルタ処理を行うフィルタ手段をさらに有し、
    上記フィルタ手段は、上記フォーマット変換手段でフォーマット変換されて出力されたビデオ信号と位相を合わせてビデオ信号を出力すると共に、
    上記複数の出力手段は、上記フォーマット変換手段から出力されたビデオ信号と、上記バイパス手段から出力されたビデオ信号と、上記フィルタ手段から出力されたビデオ信号とを選択して出力するようにしたことを特徴とする信号処理装置。
  9. 請求項に記載の信号処理装置において、
    上記フィルタ手段、上記フォーマット変換手段および上記バイパス手段は、上記ビデオ信号の輝度成分と色成分とにそれぞれ設けられ、
    上記複数の出力手段は、上記フィルタ手段、上記フォーマット変換手段および上記バイパス手段を、上記輝度成分と上記色成分とで独立して選択するようにしたことを特徴とする信号処理装置。
  10. 複数の信号フォーマットのビデオ信号を入力可能で、且つ、入力されたビデオ信号を複数のフォーマットで同時に出力するようにされた信号処理方法において、
    入力されたビデオ信号のフォーマットを変換するフォーマット変換のステップと、
    上記入力されたビデオ信号を、上記フォーマット変換のステップでフォーマット変換されて出力されたビデオ信号と位相を合わせて出力するバイパスのステップと、
    上記フォーマット変換のステップにより出力されたビデオ信号と、上記バイパスのステップにより出力されたビデオ信号とを選択して出力する複数の出力のステップとを有し、
    上記複数の出力のステップから同時にビデオ信号の出力を行うことを特徴とする信号処理方法。
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