JP4460332B2 - ステント - Google Patents
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Description
このように、ステントの留置は、バルーン拡張のみによる血管形成に対し、再狭窄を抑制させる期待のもとに行われているものであったが、実際には、初期の予想ほど再狭窄率の低下を得られていないのが現状である。
これは、ステントの拡張、留置時に、当該ステント自身が引き起こす血管障害のため、血栓の生成や平滑筋の増殖を誘導することが原因の一つであると考えられる。
しかしながら特許文献1、特許文献2記載の発明では、水溶性薬剤の高分子材料中への保持量と徐放性の調整が困難であり、また高分子材料の剥離等の課題が指摘される。
本発明に従えば、以下の発明が提供される。
[1]本発明は、ステント基材(11)の内面及び外面に、それぞれプライマー層(P)/薬剤保持層(M)/被覆層(12)を順に被覆して、前記ステント基材(11)も含めて七層構造とし、
前記薬剤保持層(M)は、生理活性薬剤を含み当該生理活性薬剤を生体内で徐放し、少なくとも自重の100%以上の水を吸収する吸水性高分子材料からなり、
当該吸水性高分子材料は、ポリプロピレンオキシド鎖、ポリテトラメチレンオキシド鎖等のポリエーテル鎖を構造中に有するポリウレタン系エラストマーであり、
前記プライマー層(P)を構成するプライマーは、前記ステント基材(11)と前記薬剤保持層(M)を構成する吸水性高分子材料の両方に対して親和性の高い材料からなり、
当該プライマーは、加水分解性基と有機官能基を有するシランカップリング剤、またはシアノアクリレート系接着剤、またはパリレンから選択され、
前記被覆層(12)を構成する高分子材料は、前記薬剤保持層(M)を被覆可能な高分子材料であって、耐加水分解性の高いポリカーボネート系ポリウレタンであり、
前記被覆層(12)及び前記薬剤保持層(M)の厚みは、0.1〜50μmであり、
当該ステントは、これを、pH7.4の緩衝液中で60回/分で振盪した場合において、少なくとも2ケ月間は、当該被覆層(12)及び当該薬剤保持層(M)は剥離せず、かつ、その間に前記生理活性薬剤は液中に徐放を続けることができる安定な被覆を有する、ステント(1)を提供する。
〈1〉前記ステント基材(11)の内面及び外面に、それぞれ前記プライマー層(P)を、被覆する工程、
〈2〉前記プライマー層(P)の内面及び外面に、前記吸水性を有する高分子材料を溶解した溶液を塗布して、溶媒を揮発させることにより前記薬剤保持層(M)を形成して、被覆する工程、
〈3〉前記ステント基材(11)を、前記生理活性薬剤の水溶液中に浸漬後、乾燥することにより前記生理活性薬剤を前記薬剤保持層(M)中に導入する工程、
〈4〉前記薬剤保持層(M)の表面に前記被覆層(12)を被覆する工程、
また本発明のステントによれば、生理活性薬剤の徐放量および速度は、薬剤の含有量、薬剤保持層M及び被覆層12の厚さを適宜変更することでコントロールすることが可能になる。
本発明のステント1は、ステント基材11の内面及び外面を、それぞれプライマー層P/薬剤保持層M/被覆層12の順に被覆したステント1である。
前記薬剤保持層Mは、生理活性薬剤を含み当該生理活性薬剤を生体内で徐放し、少なくとも自重の100%以上の水を吸収する吸水性高分子材料からなる。
前記プライマー層Pはステント基材11と薬剤保持層Mを構成する吸水性高分子材料の両方に対して親和性の高い材料からなる。
前記被覆層12は前記薬剤保持層Mを被覆可能な高分子材料からなる。
本発明は、ステント基材11上に薬剤保持層Mを形成するにあたり、まずステント基材11及び薬剤保持層Mを形成する前記吸水性高分子材料の両方に対して親和性の高いプライマーにより、前記ステント基材11表面を処理してプライマー層Pを形成する。
次に吸水性高分子材料を溶解した溶液を調整し、これを前記プライマー層Pを形成したステント基材表面11に塗布または浸漬して溶媒を揮発させることにより、薬剤保持層Mを形成することができる。
また当該薬剤保持層M中に、水溶性の薬剤を導入するには、所望の生理活性薬剤水溶液中に前記薬剤保持層Mを形成したステント基材11を任意の時間浸漬後、乾燥することにより導入することができる。さらに当該薬剤保持層Mを、高分子材料からなる被覆層12で被覆する。このようにしてステント基材11の内面及び外面には、それぞれ三層の被覆層(プライマー層P/薬剤保持層M/被覆層12)が形成される。ステント1自体は、ステント基材11も含めて七層構造となる。
ステントの基材11を構成する材質は、それ自身公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えばSUS316L等のステンレス鋼、Ti−Ni合金、Cu−Al−Mn合金等の形状記憶合金、チタン、チタン合金、タンタル、タンタル合金、プラチナ、プラチナ合金、タングステン、タングステン合金等からなる金属パイプや平板をレーザー加工することにより表面に所定のパターンを形成した略管状体、又はこれら金属のワイヤーにより形成した編目状の略管状体等が使用される。なお、略管状体の形状については、目的の物性が得られるものであれば、特に限定されるものではない。
本発明では、前記吸水性高分子材料として、例えば公知のデンプン・ポリアクリロニトリル加水分解物、デンプン・ポリアクリル酸塩架橋物、架橋カルボキシメチルセルロース、酢酸ビニル・アクリル酸メチル共重合体ケン化物、ポリアクリル酸ナトリウム架橋物、架橋ポリビニルアルコール、ポリアクリクアミド系の材料であって、これらの中で自重の100倍以上の吸水性を有する材料を使用することができるが、本発明で使用する好適な吸水性高分子材料としては、有機溶媒に可溶でステントに被覆できること、少なくともステントの拡張に応じて剥離等することなく、追従できるコンプライアンスのある吸水性高分子材料好ましく、ポリプロピレンオキシド鎖、ポリテトラメチレンオキシド鎖等のポリエーテル鎖を構造中に有するポリウレタン系エラストマー及びこれらを基にしたゲルないしゲル状の吸水性高分子材料が好ましい。生体吸収性高分子としては、ポリ乳酸、ポリ乳酸系共重合体、ポリグリコール酸、ポリグリコール酸系共重合体等の高分子が挙げられる。
すなわち、ステント基材11の構成材料(金属)と吸水性高分子材料との両方に対して親和性を有するプライマーにより、まず当該ステント基材11の表面を処理してプライマー層Pを形成し、その後に吸水性高分子材料で塗布し、薬剤保持層Mを形成した後、当該ステント基材11を生理活性薬剤の水溶液中に所定の時間浸漬後、乾燥することにより生理活性薬剤を薬剤保持層M中に導入し、さらに高分子材料よりなる被覆層12を形成するものである。
また加水分解性基と有機官能基を有するシランカップリング剤も好ましいプライマーである。
シランカップリング剤の、当該加水分解基(例えばアルコキシ基)はシラノール基を生成して金属性のステント基材と共有結合等により結合され、一方当該有機官能基(例えエポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、メタクリロキシ等)は、生理活性薬剤を含む吸水性高分子材料と化学結合により結合することにより、当該吸水性高分子材料とステント基材11は、シランカップリング剤を介して、これを使用しない場合に比較して、ずっと密接に固着されるのである。ここで特に好ましくは、有機官能基としてエポキシ基を有するエポキシ系のシランカップリング剤であるが、これと同様の性能を有するアミノ系、メルカプト系のシランカップリング剤も好適に使用することができる。
その他、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系のペーストレジン適宜使用できる。
従って、当該薬剤保持層Mに生理活性薬剤を、当該高分子材料に結合していない、すなわち物理的に混合・分散されている状態で生理活性薬剤を含むようなステント1とすることができる。このように、ステント基材11に形成される薬剤保持層M及び被覆層12の厚さは、含有させるべき生理活性薬剤の濃度、所望の溶出量や溶出量の経時変化等に応じて任意に採用できるものであるが、通常、0.1〜200μm、好ましくは0.1〜50μmである。
図1は、すでに説明したように、本発明のステントの一例を示す概略図であるが、ステント1は、例えば図2の断面図に示すようにステンレス鋼製のステント基材11から構成され、その外周面にはプライマー層P、薬剤保持層M、被覆層12が順次被覆されている。このステント1の場合、ステント基材11を構成する金属と薬剤保持層Mを構成する吸水性高分子材料との両方に対して親和性を有するプライマーにより、まず当該ステント基材11の表面を処理しプライマー層Pを形成後、その後に吸水性高分子材料で塗布して薬剤保持層Mを形成して、生理活性薬剤を当該薬剤保持層4に導入後、当該薬剤保持層4を高分子材料で被覆することにより被覆層12を形成し、ステント基材11の内面及び外面に、それぞれ三層の被覆層(プライマー層P/薬剤保持層M/被覆層12)が形成され、ステント基材11も含めて七層構造としたステント1の一例である。
(1)吸水性高分子であるTecophilic HP-93A-100(ポリエーテルタイプ熱可塑性ポリウレタン,溶液Aとする)及びCarbothane PC-3585A(ポリカーボーネートタイプ熱可塑性ポリウレタン,溶液Bとする)2.0gを、テトラヒドロフラン(THF)100mlに溶解し、その2質量%溶液(溶液A、B)を調整した。
(2)図1に示すパターンを形成した管状のステント1(ステント基材11)に溶液Aを塗布乾燥して、薬剤保持層Mを被覆した後、当該ステント1を10%ヘパリンナトリウム水溶液に1時間浸漬した後真空乾燥を行い生理活性薬剤(ヘパリン)を導入した。その後、溶液Bを塗布し被覆層12を形成しステントのサンプルとした。なお、膜厚は約20μm、生理活性薬剤の導入量は約200μgであった。
この結果、当該塗布膜(薬剤保持層M、被覆層12)は、水溶液環境下で約2週間で剥がれを生じることがわかった。生理活性薬剤の徐放は剥れを生じる2週間まで確認できた。
(1)エポキシ系シランカップリング剤(KBM403(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン):信越化学工業社製)1.0gをMeOH/水(50/50)100mlに溶解し、1質量%溶液を調整した。
(2)吸水性高分子であるTecophilic HP-93A-100(ポリエーテルタイプ熱可塑性ポリウレタン,溶液Aとする)及びCarbothane PC-3585A(ポリカーボーネートタイプ熱可塑性ポリウレタン,溶液Bとする)2.0gを、テトラヒドロフラン(THF)100mlに溶解し、その2質量%溶液(溶液A、B)を調整した。
(4)このステントのサンプルを拡張後、pH7.4−リン酸緩衝液3mlが入った試験管に入れ、37℃で60回/分の速度にて、振盪させながら、経時的にサンプリングして、当該ステント表面を目視及び顕微鏡により観察し、薬剤の徐放及び塗布膜(薬剤保持層M、被覆層12)の剥がれの有無を観察した。
実施例1の結果、当該塗布膜(薬剤保持層M、被覆層12)は、水溶液環境下で約2ヶ月以上安定に存在することが確認された。また、微量ながら2ヶ月目においても生理活性薬剤の放出が確認された。
(1)エポキシ系シランカップリング剤(KBM403(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン):信越化学工業社製)1.0gをメタノール/水(50/50)100mlに溶解し、1質量%溶液を調整した。
(2)ペレセン2363−80AE(ポリエーテルタイプ熱可塑性ポリウレタン,溶液Aとする)及びCarbothane PC-3585A(ポリカーボーネートタイプ熱可塑性ポリウレタン,溶液Bとする)各2.0gを、THF100mlに溶解し、2質量%溶液を調製した。
また同様にステントのサンプルを拡張後、pH7.4−リン酸緩衝液1mlが入った試験管に入れ、37℃にて振盪し評価した。
その結果比較例2のサンプルの当該塗布膜(薬剤保持層M、被覆層12)は、水溶液環境下で約2ヶ月以上安定に存在することが確認されたが、徐放量は微量で、7日目には検出限界以下となった。
11 基材(ステント基材)
12 被覆層
M 薬剤保持層
P プライマー層
Claims (2)
- ステント基材(11)の内面及び外面に、それぞれプライマー層(P)/薬剤保持層(M)/被覆層(12)を順に被覆して、前記ステント基材(11)も含めて七層構造とし、
前記薬剤保持層(M)は、生理活性薬剤を含み当該生理活性薬剤を生体内で徐放し、少なくとも自重の100%以上の水を吸収する吸水性高分子材料からなり、
当該吸水性高分子材料は、ポリプロピレンオキシド鎖、ポリテトラメチレンオキシド鎖等のポリエーテル鎖を構造中に有するポリウレタン系エラストマーであり、
前記プライマー層(P)を構成するプライマーは、前記ステント基材(11)と前記薬剤保持層(M)を構成する吸水性高分子材料の両方に対して親和性の高い材料からなり、
当該プライマーは、加水分解性基と有機官能基を有するシランカップリング剤、またはシアノアクリレート系接着剤、またはパリレンから選択され、
前記被覆層(12)を構成する高分子材料は、前記薬剤保持層(M)を被覆可能な高分子材料であって、耐加水分解性の高いポリカーボネート系ポリウレタンであり、
前記被覆層(12)及び前記薬剤保持層(M)の厚みは、0.1〜50μmであり、
当該ステントは、これを、pH7.4の緩衝液中で60回/分で振盪した場合において、少なくとも2ケ月間は、当該被覆層(12)及び当該薬剤保持層(M)は剥離せず、かつ、その間に前記生理活性薬剤は液中に徐放を続けることができる安定な被覆を有する、ことを特徴とするステント(1)。 - 次の各工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のステント(1)の製造方法。
〈1〉前記ステント基材(11)の内面及び外面に、それぞれ前記プライマー層(P)を、被覆する工程、
〈2〉前記プライマー層(P)の内面及び外面に、前記吸水性を有する高分子材料を溶解した溶液を塗布して、溶媒を揮発させることにより前記薬剤保持層(M)を形成して、被覆する工程、
〈3〉前記ステント基材(11)を、前記生理活性薬剤の水溶液中に浸漬後、乾燥することにより前記生理活性薬剤を前記薬剤保持層(M)中に導入する工程、
〈4〉前記薬剤保持層(M)の表面に前記被覆層(12)を被覆する工程、
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