JP4245302B2 - ステント - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、血管、体腔内に埋没可能で狭窄部の治療に使用されるステントの改良に関し、特に生物学的活性物質を含んだ高分子材料で被覆されて、抗血栓性の表面を提供し、再狭窄を予防するステントに関する。
【0002】
【従来の技術】
ステントとは、血管や他の生体内の管腔が狭窄や閉塞した場合、当該狭窄部等を拡張し必要な管腔領域を確保するため、当該部位に留置する管状の医療用具である。ステントは、直径が小さいまま体内に挿入し、狭窄部等で拡張させて直径を大きくし当該管腔を拡張・保持するのに使用される。
【0003】
例えば、近年、狭窄した血管の再建を目的として、経皮的冠動脈血管形成術(以下PTCA:Percutaneous Transluminal Coronary Angioplastyと称する。)により、PTCAバルーンカテーテルによる拡張、及びステントの留置による治療が行われている。当該ステントは、カテーテルに装着したバルーンに空気を送って膨張・拡張して形成された血管内に留置することにより、その再狭窄を防止・抑制させることを企図しているものである。
【0004】
このように、ステントの留置は、バルーン拡張のみによる血管形成に対し、再狭窄を抑制させる期待のもとに行われているものであったが、実際には、初期の予想ほど再狭窄率の低下を得られていないのが現状である。
【0005】
これは、ステントの拡張、留置時に、当該ステント自身が引き起こす血管障害のため、血栓の生成や平滑筋の増殖を誘導することが原因の一旦であると考えられる。
【0006】
血栓の生成メカニズムにおいては、主として、(a)血小板によるものと(b)血液凝固因子によるものが重要である。すなわち、(a)血小板は、これが活性化すると血管内の異物に付着、凝集を起こすために再狭窄が起こる。また(b)血液凝固因子(例えばトロンビンが挙げられる。)により、フィブリノーゲンがフィブリンに変化してフィブリンのネットワーク(網目)を形成し、このネットワークに血小板、血球が捕捉される。捕捉された血小板がさらにフィブリン形成を促進することにより血栓が生成、増大するのである。
【0007】
一方、平滑筋の増殖に関しては、上記血栓の生成が、術後における初期(急性期,亜急性期)の再閉塞の原因であるのに対して、当該増殖は、術後、長中期(遠隔期)の再閉塞の原因となることが知られている。
【0008】
これらを防止するためには、術中及び術後に、アスピリンに代表される抗凝血剤や抗血小板薬を中心とした薬剤を投与し、管理することが一般的であったが、抗凝血剤、抗血小板剤の全身投与は、術中、術後の出血傾向を増大させる副作用を有するという問題がある。
【0009】
そのため、従来から、カテーテル等においては、これら抗凝血剤等の薬剤を、カテーテルチューブを構成する高分子中に含有若しくは結合させ、局所的にこれら薬剤を徐放させる試みが行われてきた。しかしながら、ステントの場合は、その基材が通常金属であるために、カテーテルで主に行われていたように直接基材へ結合、含浸する等の技術を適用するのは困難である。従って、ステントについては、当該薬剤を高分子と共に有機溶媒に溶解混合し、塗布する方法のみが、実際上、適用可能な方法であるが、これらは、しばしば、水中に浸漬すると1〜2週間でステント基材よりコーティング層の剥離が起こる問題がある。
【0010】
また、あらかじめ、ステントに高分子材料を塗布して薄膜を形成した後、この高分子材料からなる薄膜を基材として、当該基材に抗血小板薬等の薬剤を含浸又は結合させる方法も提案されている。しかしながら、この方法は、ステントに形成される薄膜の厚みが極く薄いことから、このような薄膜形成後に薬剤を含浸・結合させる二次加工方法では、工程が煩雑になり、また、薬剤の効果の持続時間は必ずしも充分ではない。加えて同様に、コーティング層の強度低下や剥離等の問題が多く、現実的ではない。
【0011】
そもそも、従来知られているこれら抗血栓性の代表的な生理活性物質であるヘパリンやウロキナーゼは、実質的に有機溶媒に不溶であるため、上記方法の適用は、実質的には不可能である。なお、ヘパリンについては、逆に血小板を活性化する作用も知られている。
【0012】
さらに、従来、アスピリンやアルガトロバン等の抗凝血剤や抗血小板剤を単独または併用して含む高分子材料からなる被覆層で被覆したステントや当該高分子材料からなるフィルムが巻かれたステントは知られている(例えば、特開平8−224297や特開平8−33718等を参照。)。
【0013】
また、本出願人は、特開2001−190687において、抗凝血薬剤としてシロスタゾールを必須成分として含有する高分子材料からなる被覆層を備えたステント、特にシロスタゾールと共に他の薬剤を併用して含み、それぞれの薬剤の徐放性(リリース)の調整を行い、当該二薬剤が同時期に溶出して同時期に効果を発現できるようにしたステントを提案した。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、本発明者らが先に提案した、優れた抗血栓性を示し、体内留置後の血栓性閉塞を効果的に抑制し、低い再狭窄率を示すこれらステントにおいて、当該高分子材料からなる被覆層の膜質をさらに向上させ、剥離等を伴うことなく、より長期間、当該ステントを体内で安定的に使用しうるようにする技術を提供することであり、特に、当該ステントが体内に長期間(例えば、内膜が形成されるに充分な期間)留置された場合においても、そのシロスタゾール等を含有する高分子材料からなる被覆層が、ステント基材等から剥がれることなくシロスタゾールと他の薬剤(例えば抗トロンビン剤等)が同時期にリリースして、同時期に効果を確実・安定的に発現できるように調整したステントを提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明に従えば、以下の発明が提供される。
【0016】
〔1〕 ステント基材と、当該ステント基材を被覆し、少なくとも抗凝血薬剤を含み当該抗凝血薬剤を生体内で徐放しうる高分子材料からなる被覆層を備えたステントにおいて、前記ステント基材と、前記被覆される高分子材料の両方に対して親和性の高いプライマーで前記ステント基材が前処理されていることを特徴とするステント。
【0017】
〔2〕 ステント基材と、当該ステント基材を被覆し、少なくとも抗凝血薬剤を含み当該抗凝血薬剤を生体内で徐放しうる高分子材料からなる被覆層を備えたステントにおいて、前記高分子材料は前記抗凝血薬剤の分子鎖を有するものであり、かつ、前記ステント基材と、前記被覆される高分子材料の両方に対して親和性の高いプライマーで前記ステント基材が前処理されていることを特徴とするステント。
【0018】
〔3〕 前記プライマーが加水分解性基と有機官能基を有するシランカップリング剤であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載のステント。
【0019】
〔4〕 前記プライマーがシアノアクリレート系接着剤であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載のステント。
【0020】
〔5〕 前記高分子材料からなる被覆層中に、前記抗凝血薬剤を0.05〜80質量%含むことを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のステント。
【0021】
〔6〕 抗凝血薬剤が、シロスタゾールであることを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のステント。
【0022】
〔7〕 シロスタゾールからなる抗血小板剤とともに、当該シロスタゾールとほぼ同時期に溶出し同時期にその薬効を発現しうる他の薬剤を含むことを特徴とする〔6〕に記載のステント。
【0023】
〔8〕 前記高分子材料からなる被覆層中に、シロスタゾールと他の薬剤を、合計量で0.05〜80質量%含むことを特徴とする〔7〕に記載のステント。
【0024】
〔9〕 被覆層を一層又は二層以上に形成することを特徴とする〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載のステント。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
本発明は、基本的に、ステント基材をプライマー処理した後、少なくとも抗凝血薬剤を含み当該抗凝血薬剤を生体内で徐放しうる高分子材料からなる被覆層を形成したステントに関するものである。
【0027】
抗凝血薬剤としては、高分子材料からなる被覆層中に分散されて保持され、生体内で拡散その他の機構により当該被覆層から徐々に放出(リリース)されるものであれば、特に限定するものではなく、例えば、シロスタゾール(cilostazol)(6−[4−(1−シクロヘキシル−1H−テトラゾール−5−イル)ブトキシ]−3,4−ジヒドロ−2(1H)−キノリノン)(IUPAC命名法による。)、ワルファリンカリウム(warfarin potassium)、塩酸チクロピジン(ticlopidine HCl)、ベラプロストナトリウム(beraprost sodium)、アスピリン(aspirin)等の公知の抗血栓剤を使用することができるし、さらにこれ以外のものであってもよい。なお、本発明において抗血栓剤とは、血栓の形成を抑制するものだけでなく、形成された血栓を溶解するメカニズムに基づくものであってもよい。
【0028】
これらのうち、本発明において使用するに特に好ましい抗凝血薬剤は、シロスタゾールである。シロスタゾールは、抗凝血薬剤の中で抗血小板剤に分類され、血小板凝集抑制作用と末梢血管拡張作用を併せ持つタイプの薬剤である。
【0029】
本発明のステントとしては、シロスタゾールからなる抗血小板剤とともに、当該シロスタゾールとほぼ同時期に溶出し同時期にその薬効を発現しうる他の薬剤(例えば抗トロンビン剤等)を含む高分子材料からなる被覆層で被覆されていることも好ましい。
【0030】
このようなシロスタゾールとほぼ同時期に溶出し同時期にその薬効を発現しうる他の薬剤としては、代表的なものとして、ワルファリンカリウム、塩酸チクロピジン、ベラプロストナトリウム、アスピリン等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0031】
シロスタゾールは、ヘパリンやウロキナーゼ等の抗血栓性物質と異なり、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)等の有機溶媒に溶解が可能であることから、シロスタゾール(又はさらにDMF等の有機溶媒に溶解可能な他の薬剤とともに)と高分子材料を溶解した溶液を塗布、被覆することにより、当該高分子材料や金属材料の表面に抗血栓性(抗血小板活性等)を付与することが可能である。
【0032】
図1は、本発明のステントの一例を示す概略図であるが、図に示すように、本発明のステント10は、基材11及び当該基材を被覆する被覆層12からなる。ステントの基材11を構成する材質は、それ自身公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えばSUS316L等のステンレス鋼、Ti−Ni合金、Cu−Al−Mn合金等の形状記憶合金、Cu−Zn合金、Ni−Al合金、チタン、チタン合金、タンタル、タンタル合金、プラチナ、プラチナ合金、タングステン、タングステン合金等からなる金属パイプや平板をレーザー加工することにより表面に所定のパターンを形成した略管状体、又はこれら金属のワイヤーにより形成した編目状の略管状体等が使用される。なお、略管状体の形状については、目的の物性が得られるものであれば、特に限定されるものではない。
【0033】
また、被覆層12は、少なくともシロスタゾールを含み、当該薬剤を生体内で徐放しうる高分子材料(被覆用高分子材料)からなるものであるが、当該高分子材料としては、少なくとも、ステントの拡張に応じて剥離等することなく、追従できるコンプライアンスのある高分子が好ましい。例えば、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ(エチレン−ビニルアルコール)共重合体等や、また、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)−スチレンブロック共重合体等に代表される血液適合性に優れた高分子材料が好ましいものとして挙げられる。ただし、これらに限られるものではなく、所望の有機溶媒中に容易に溶解でき、また、水、血液、生理食塩水に溶解しない高分子材科であり、かつ、血液の凝固を抑制し得る有効量の抗凝血薬剤(併用する場合はその各々の抗凝血薬剤)を、生体内において当該被覆層表面より徐々に溶出(徐放)することが可能なものであれば、特に前記のものに限定されるものではない。
【0034】
後述するように、抗凝血薬剤を含む高分子材料からなる被覆層をステントに形成するには、通常、当該抗凝血薬剤と高分子材料を溶解しうる有機溶媒に両者を溶解し、この有機溶媒の溶液(被覆用溶液)を、ステントの基材に塗布して乾燥するが、本発明においてもっとも特徴とするのは、前記ステント基材と、前記被覆される高分子材料の両方に対して親和性の高いプライマーで、前記ステント基材をあらかじめ前処理しておくことである。すなわち、ステント基材の金属と高分子材料との両方に対して親和性を有するプライマーにより、まず当該ステント基材の表面を処理し、その後に抗凝血薬剤を含む高分子材料を塗布し、被覆層を形成するものである。
【0035】
かかるプライマーとして、種々のものが使用可能であるが、もっとも好ましくは、加水分解性基と有機官能基を有するシランカップリング剤又はシアノアクリレート系接着剤である。
【0036】
シランカップリング剤の、当該加水分解基(例えばアルコキシ基)はシラノール基を生成して金属ステント基材と共有結合等により結合され、一方当該有機官能基(例えば、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、メタクリロキシ等)は、抗凝血薬剤を含む高分子材料と化学結合により結合することにより、当該高分子材料とステント基材は、シランカップリング剤を介して、これを使用しない場合に比較して、ずっと密接に固着されるのである。ここで特に好ましくは、有機官能基としてエポキシ基を有するエポキシ系のシランカップリング剤であるが、これと同様の性能を有するアミノ系、メルカプト系のシランカップリング剤も好適に使用することができる。
【0037】
当該シランカップリング剤は、使用する高分子材料の樹脂の種類により、これに対応する有機官能基を有する適当なものを選択すればよく、例えば以下のものが好適に使用可能である。すなわち、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が好適に使用されるが、これらに限られるものではない。また、これらは二種以上併用してもよい。
【0038】
前記ステント基材の金属と高分子材料との両方に対して親和性を有するシランカップリング剤等のカップリング剤からなるプライマーは、通常、水、適当な有機溶媒、又は水と有機溶媒との混合溶媒に溶解し、これを処理溶液として、基材表面に塗布・乾燥することにより、前処理が行われる。有機溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール又は当該アルコールと水との混合溶媒や、アセトン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が好ましく用いられる。当該処理溶液中のプライマー濃度としては、比較的希薄溶液が用いられ、0.05〜2質量%、好ましくは0.1〜1.0質量%である。
【0039】
またプライマーとしては、シアノアクリレート系接着剤も使用可能である。シアノアクリレート系接着剤とは、例えばエチルシアノアクリレートに代表される単量体を主体とするいわゆる瞬間接着剤として用いられている一液型タイプの接着剤であり、当該シアノアクリレート単量体が被着体の接着面に薄く塗布されると、当該被着体の表面の僅かの水分等のアニオン種を触媒として、室温で短時間で重合硬化(アニオン重合)し、被着体を強固に接着させる高い接着能力を有している接着剤である。
【0040】
このように、当該シアノアクリレート系接着剤は、基本的には接着剤として使用されるものであるが、本発明においては、これを接着剤としてではなく、ステント基材の表面を前処理するプライマーとして使用する点に大きな特色を有するものである。
【0041】
すなわち、当該シアノアクリレート系接着剤は、式H2C=C(CN)−COOR(ただし、Rは、アルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、ベンジル等の基である。)で表現されるものであって、アクリル酸のアルキルエステル等を基本骨格とし、その2−位にシアノ基(−CN)を有するものである。当該シアノアクリレート単量体は、ステント基材である金属に対して親和性を有し、また、低粘度であって、金属表面に塗布された場合、当該表面をよく濡らすとともに、当該金属表面の微細な凹凸内に入り込み、この表面の微量な水分と接触して重合硬化するため、当該金属表面に強固に固定された金属表面を被覆する被膜層を形成するのである。
【0042】
一方、このシアノアクリレート系接着剤からなる被膜層の表面には、この単量体由来のビニル基、アクリロイル基、またはアクリロキシアルキル基等が残存しており、これが上記したシランカップリング剤と同様に、抗凝血薬剤を含有する高分子材料に対する強い化学結合を形成することができると考えられる。
【0043】
本発明において用いられるシアノアクリレート系接着剤、実質的にはシアノアクリレート単量体としては、特に限定するものではなく、従来公知のものがいずれも使用可能であり、例えば、メチル2−シアノアクリレート、エチル2−シアノアクリレート、n−プロピル2−シアノアクリレート、イソプロピル2−シアノアクリレート、n−ブチル2−シアノアクリレート、イソブチル2−シアノアクリレート、アミル2−シアノアクリレート、ヘキシル2−シアノアクリレート、2−エチルヘキシル2−シアノアクリレート、オクチル2−シアノアクリレート等のアルキル2−シアノアクリレート;シクロヘキシル2−シアノアクリレート等のシクロアルキル2−シアノアクリレート;アリル2−シアノアクリレート等のアルケニル2−シアノアクリレート;メトキシエチル2−シアノアクリレート、エトキシエチル2−シアノアクリレート、メトキシプロピル2−シアノアクリレート等のアルコキアルキル2−シアノアクリレート;2−シアノフェニルアクリレート、ベンジル−2−シアノアクリレート等のアリール2−シアノアクリレート;2−クロロエチル2−シアノアクリレート等のハロゲン化アルキル2−シアノアクリレート等があげられるが、これらに限定されるものではない。これらは、単独で使用しても二種以上混合して使用してもよい。
【0044】
本発明においては、これらシアノアクリレート系接着剤については、使用する高分子材料の種類及びステント基材の種類により、当該両方の基材に対し、より親和性の高いものを選択すればよい。かかるシアノアクリレート系接着剤としては、市販のものが好適に使用しうるし、また、上記のごときシアノアクリレート単量体を公知の方法により合成して使用してもよい。なお、シアノアクリレート系接着剤には、シアノアクリレート単量体の他に、これに通常配合される硬化促進剤、アニオン重合抑制剤、ラジカル重合抑制剤、増粘剤、架橋剤、着色剤、可塑剤、熱安定剤、軟化剤、充填剤、染料、顔料または溶剤等が添加されていてもかまわない。
【0045】
前記シアノアクリレート系接着剤は、通常、適当な有機溶媒、好ましくは非水系溶媒に溶解し、これを処理溶液として、基材表面に塗布・乾燥することにより、前処理が行われる。有機溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、アセトン、アセトフェノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、エチレングリコール、エチルエーテル等の有機溶媒が好ましく用いられる。当該処理溶液中のプライマーである、シアノアクリレート単量体の濃度としては、比較的希薄溶液が用いられ、好ましくは0.01〜20.0質量%である
【0046】
また、その他のプライマーとしては、上記シランカップリング剤の他のカップリング剤として、これと同様な機能を有する、テトラブトキシチタネート、テトラステアリルチタネート、テトライソプロポキシチタネート、イソプロポキシチタニウムステアレート、チタニウムラクテートのごとき有機チタン系カップリング剤;アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートのごときアルミニウム系カップリング剤:クロム系カップリング剤;有機リン酸系カップリング剤も適宜使用可能である。
【0047】
本発明においては、ステント基材に対し、高分子材料の被覆前に、このようなプライマー処理を実施することにより、高分子材料の被覆層の安定性が飛躍的に高められ、得られたステントは、これを体内に留置し、例えば血管内に埋殖した際に、内膜が形成されるに充分な期間、例えば少なくとも一ヶ月間程度体内に留置した場合においても、水環境下では、剥がれなど全く伴うことなく安定的にコーティング層を維持することができると云う顕著な作用効果を奏することができる。この点、ステント基材を構成する金属に、直接的に高分子材料を塗布した場合には、条件によっては、水環境下において、数日〜数週間でコーティング層の剥れが発生することがありうるため、上記ごとき長期間は、ステントを体内に留置することは到底困難であることと著しい対照をなしているといえる。
【0048】
以上のごとく、本発明においては、プライマー処理した後に上記した高分子材料を塗布することにより、高分子被覆層を形成するが、これらのうち、ポリプロピレンオキシド鎖、ポリテトラメチレンオキシド鎖等のポリエーテル鎖を構造中に有する高分子材料を用いることが望ましい。より具体的には、ポリエーテル系、ポリカーボネート系のポリウレタン、ポリエステル及びポリエーテルポリアミドなどが、ステントとして一定期間以上の徐放性を保つという点で好適に用いることができるため好ましい。これは基本的に、血管内に留置される血管内ステントは、カテーテルなどの一時的な処置または留置を行う医療用具とは異なり、半永久的に体内に留置(インプラント)するものであるため、耐加水分解性が高いポリエーテル系、ポリカーボネート系のポリウレタンが、本発明の血管内ステントに最も好適に使用できるのである。
【0049】
なお、特定の理論に拘泥するものではないが、例えばこれらのポリエーテル鎖を構造中に有する高分子材料は、ステント基材表面に被覆層を形成した後、シロスタゾール等の抗血液凝固薬剤等に対して親和性を有するポリエーテル鎖部分が上記シロスタゾール等の化合物を補足し、当該ポリエーテル鎖部分を流路としてこれら化合物を被覆層の外部に放出できると考えられる。
【0050】
上記したように、ステントは、半永久的に体内に留置(インプラント)することを前提とするものであり、カテーテルなどの、一時的な留置を行う医用材料の場合では実質的に問題とされない体内での材料の劣化が無視できない問題となるため、耐加水分解性が高いカーボネート系ポリウレタンも、インプラントを考えると好ましい。
【0051】
本発明においては、抗凝血薬剤の分子鎖を有する高分子材料でステントの被覆層を形成し、当該被覆層は、当該高分子材料に結合していない、すなわち物理的に混合・分散されている状態で抗凝血薬剤を含むようなステントとすることができる。
【0052】
なお、さらに、例えばシロスタゾールとともに例えば抗トロンビン剤等を併用する場合は、ステント基材は、当該シロスタゾールの分子鎖及び抗トロンビン剤等の分子鎖を有する高分子材料からなる被覆層で被覆され、当該被覆層は高分子材料に結合していない、すなわち単に物理的に混合された状態でシロスタゾールや抗トロンビン剤等を含むようなステントとすることもできる。
【0053】
ここで例えばシロスタゾールの分子鎖を有する高分子材料とは、当該シロスタゾール分子が当該高分子材料を構成する分子鎖(分子骨格)の一部として含まれているか、または、当該高分子材料にシロスタゾールの分子がグラフトされていることを意味し、いずれにせよ、単純にシロスタゾールが高分子材料中に物理的に混合されているものではなく、高分子の分子骨格にシロスタゾール分子が化学結合により固定されているものである。
【0054】
従来、抗凝血薬剤の分子鎖を高分子材料に組み込む方法としては、例えばそのカルボン酸基を、これと反応しうる水酸基やアミノ基等の官能基を有する付加重合可能なエチレン性化合物、例えば、ヒドロキシエチルメチルメタクリレート(HEMA)と反応させることにより、容易に、当該薬剤等を付加重合可能な化合物とすることによりなされることは公知である(例えば、特開平3−15478、特開平3−15479、特開平7−196650、特開平7−238067、特開平9−59247、特開平9−302039等を参照。)。
【0055】
例えば、シロスタゾールについては、その構造中に有するアミド基により、これを付加重合可能な化合物とすることができ、容易に、シロスタゾールの分子鎖を有する高分子材料を形成することができる。
【0056】
例えばシロスタゾールを含み、当該シロスタゾールを生体内で徐放しうる高分子材料(被覆用高分子材料)からなる被覆層をステントに形成した場合は、通常、当該被覆層は薄膜となるため、例えば一ヶ月以上という長期間経過する場合、当該シロスタゾールの徐放量(リリース量)又は徐放速度(リリース速度)は、初期に比較して相当減少してしまう。
【0057】
この場合、上記のごとく、例えば分子鎖にシロスタゾールを有する高分子材料を溶媒に溶解してステントに塗布した被覆層とすることにより、短期的には、当該高分子材料からリリースするシロスタゾールが血栓生成を抑制すると共に、長期的には、ステントの被覆層を形成する高分子材料自体が、その分子鎖に結合されたシロスタゾールの作用により、血栓生成や平滑筋細胞の増殖を抑制する効果を奏するのである。
【0058】
高分子材料からなる被覆層中のシロスタゾール等の抗凝血薬剤の含有量は、ステント基材表面に十分な抗血栓性を付与しつつ、かつ、血管や血液の機能には悪影響を与えず、さらに当該抗凝血薬剤を含有することにより、高分子材料からなる被覆層の強度を著しく低下させない範囲であることが好ましい。例えば、抗凝血薬剤を単独で使用する場合は、高分子材料からなる、被覆層中の当該抗凝血薬剤の含有量は、0.05〜80質量%、好ましくは1〜60質量%、さらに好ましくは5〜50質量%であり、また、二種以上の抗凝血薬剤を併用する場合、例えばシロスタゾール及び抗トロンビン薬剤等を併用する場合は、高分子材料からなる被覆層中に、当該薬剤の合計量として0.05〜80質量%、好ましくは1〜60質量%、さらに好ましくは5〜50質量%含有することが望ましい。なお、薬剤を併用する場合は、シロスタゾールは、少なくとも0.05質量%以上含まれることが好ましい。
【0059】
本発明において、シロスタゾール等を含む高分子材料からなる被覆層をステントに形成するには、シロスタゾール等と高分子材料を溶解しうる有機溶媒に両者を溶解し、この有機溶媒の溶液(被覆用溶液)を、ロールや刷毛によりステント(ステントの基材)に塗布して乾燥する方法、スプレーにより噴霧塗布して乾燥する方法、及び当該溶液中にステントを浸漬(ディッピング)して乾燥する方法等のいずれかの方法を採用すればよい。
【0060】
高分子材料とシロスタゾール(及び、場合によりさらに抗トロンビン剤等)を共に溶解する溶媒としては、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、スルホラン、γ−ブチルラクトン、β−プロピオラクトン、ε−カプロラクトン、テトラメチル尿素(TMU)、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の非プロトン性極性溶媒があげられ、これらにより、塗布等に適した、例えば、高分子材料/シロスタゾール(及び、場合によりさらに抗トロンビン剤等)の被覆用の均一溶液(被覆用溶液)を得ることができる。なお、これらの溶媒は、二種以上を混合して使用することもできるし、高分子材料とこれら抗凝血薬剤をそれぞれ別の溶媒に溶解してから混合することもできる。
【0061】
被覆用溶液中の、高分子材料及び抗凝血薬剤の濃度は、被覆層中に含有させるべき当該抗凝血薬剤の量、すなわち、被覆層表面からの当該抗凝血薬剤の所望のリリース量(リリース速度)及びステントの形状等の要件によって異なりうるものであるが、通常、溶媒に対しての高分子材料と抗凝血薬剤の合計量の濃度としては、当該溶媒への高分子材料及び当該抗凝血薬剤の飽和濃度以下の濃度範囲で選択され、例えば、0.02〜30質量%、好ましくは0.05〜20質量%程度が望ましい。
【0062】
一般的に、ステントの形状と目的にあわせ、高分子材料及び溶媒の組み合せと混合比、高分子材料とシロスタゾール(及び、場合によりさらに抗トロンビン剤等)の組成比、被覆用溶液の高分子材料とシロスタゾール(及び、場合によりさらに抗トロンビン剤等)の濃度等を適宜選択することにより、ステント基材表面へのシロスタゾール等を含んだ被覆層の厚さやシロスタゾール等の濃度を適宜設定することができる。
【0063】
具体的には、ステントを体内に留置後、当該ステントが完全に新生内膜で被覆されるまでは、ステント内に血栓形成や、急性冠閉塞が発生しやすいので、2〜4週間は、亜急性血栓性閉塞抑制のためにも、充分な抗凝固療法(投薬等)が必要とされていることから、本発明においても、ステント基材表面の被覆層からのシロスタゾール等(及び、場合によりさらに抗トロンビン剤等)の溶出量や期間が、かかる目的に合致する量になるように、被覆用溶液中のシロスタゾール等の濃度や被覆層の厚み等を調整すればよいのである。
【0064】
このように、ステント(基材)に形成される被覆層の厚さは、含有させるべき抗凝血薬剤の濃度、所望の溶出量や溶出量の経時変化等に応じて任意に採用できるものであるが、通常、0.1〜200μm、好ましくは0.1〜50μmである。なお、後記するように、被覆層は、一層又は二層以上に形成することができる。
【0065】
本発明においては、シロスタゾール等の抗凝血薬剤と高分子材料からなる被覆用溶液中には、当該シロスタゾール等の抗凝血薬剤の活性及び医療用具の本来の特性を損なわない範囲において、それ以外の種々の薬剤等の成分を添加してもよい。長期的には、血栓生成を原因するものから、平滑筋の増殖等による再狭窄が起こることを抑制することができる。
【0066】
以下、図面を参照しながら本発明のステントの実施の形態を説明する。
図1は、すでに説明したように、本発明のステントの一例を示す概略図であるが、ステント10は、例えばステンレス鋼製のステント基材11から構成され、その外周面には、抗凝血薬剤、例えばシロスタゾール等(及び、場合によりさらに抗トロンビン剤等)を含んだ高分子材料からなる被覆層12が被覆されている。このステント10の場合、ステント基材11の金属と高分子材料との両方に対して親和性を有するプライマーにより、まず当該ステント基材11の表面を処理し、その後に抗凝血薬剤を含む高分子材料で塗布し、被覆層12が形成される。
【0067】
図2は図1の断面図であって、高分子材料からなる被覆層12には、例えば、抗血小板剤であるシロスタゾール等13と抗トロンビン剤等14が分散して、すなわち、混合状態で含まれている例である。
【0068】
なお、かかる被覆層の形成方法は、すでに述べたとおり、シロスタゾール等と高分子材料をそれぞれ同一又は異なる溶媒で溶解して混合し、得られた被覆用溶液をスプレーによる塗布やディッピングによる塗布による被覆層の形成が可能である。ここで、スプレーやディッピングの回数は一回でも良いが、高分子材料の濃度等によって被覆層の厚さを調整するためは、複数回に分けて塗布する方法が通常用いられる。
【0069】
図3は、円筒状であるステント基材21の、内周面と外周面に、例えば、シロスタゾール(及び、場合によりさらに抗トロンビン剤等)を含む高分子材料の被覆層をそれぞれ、内層22及び外層23として設けたステント20の一例である。ここで、ステント基材21の内周面と外周面の両面に、内層22と外層23を被覆するには、塗布でも可能であるが、ディッピングによる被覆が特に有効である。このステント20の場合、ステント基材21の金属と高分子材料との両方に対して親和性を有するプライマーにより、まず当該ステント基材21の表面(内表面及び外表面)を処理し、その後に上記のように抗凝血薬剤を含む高分子材料で塗布し、被覆層(内層22、外層23)が形成される。
【0070】
図4に示すステント30は、ステント基材31の外周面に、シロスタゾール(及び、場合によりさらに抗トロンビン剤等)を含む高分子材料からなる被覆層(第一被覆層)32を被覆し、さらにその外周面上に、シロスタゾールまたは抗トロンビン剤等を含む高分子材料からなる被覆層(第二被覆層)33を形成した例である。
【0071】
このような層構成の被覆層を形成するには、ステント基材31の外周面に、例えばシロスタゾール(及び、場合によりさらに抗トロンビン剤等)と高分子材料の混合溶液を塗布又はスプレーして第一被覆層32を形成し、これを乾燥させた後に、シロスタゾールまたは抗トロンビン剤等と高分子材料の混合溶液を塗布又はスプレーして第一被覆層32の外周面に第二被覆層層33を形成するものである。このステント31の場合、同様に、ステント基材31の金属と高分子材料との両方に対して親和性を有するプライマーにより、まず当該ステント基材31の外周面を処理し、その後に上記のように抗凝血薬剤を含む高分子材料を塗布し、第一被覆層32が形成される。
【0072】
なお、通常は、高分子材料としては、第一被覆層32と第二被覆層33で双方とも同一の高分子材料(例えば、熱可塑性ポリウレタン)を使用するが、接着力が得られる組み合わせであれば、第一被覆層32と第二被覆層33に使用する高分子材料は、異なる種類の組み合わせも可能である。
【0073】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明がこれらの実施例により限定的に解釈されるものではない。
【0074】
〔比較例1〕(ステントへ塗布した高分子材料の水環境下での安定性試験1)
【0075】
(1)バイオネート80A(ポリカーボネートタイプ熱可塑性ポリウレタン)4.0gを、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)100mlに溶解し、その4質量%溶液を調整した。
【0076】
(2)この溶液を、図1に示すパターンを形成した管状のステント基材11に塗布し、DMFを揮発させて高分子材料からなる被覆層12を形成したステントのサンプルとした。なお、膜厚は約10μmであった。
【0077】
(3)このステントのサンプルを拡張後、pH7.4−リン酸緩衝液3mlが入った試験管に入れ、37℃で60回/分の速度にて、振盪させながら、経時的にサンプリングして、当該ステント表面を目視及び顕微鏡により観察し、塗布膜の剥れの有無を観察した。
この結果、当該塗布膜は、水溶液環境下で約2週間で剥れを生じることがわかった。
【0078】
〔実施例1〕(ステントへ塗布した高分子材料の水環境下での安定性試験2)
【0079】
(1)エポキシ系シランカップリング剤(KBM403(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン):信越化学工業社製)1.0gをMeOH/水(50/50)100mlに溶解し、1質量%溶液を調整した。
【0080】
(2)バイオネート80A(ポリカーボネートタイプ熱可塑性ポリウレタン)4.0gをDMF100mlに溶解し、4質量%溶液を調整した。
【0081】
(3)まず(1)の溶液を、図1に示すパターンを形成した管状のステント基材11に塗布し、MeOH/水を揮発させシランカップリング剤による前処理を行った。
【0082】
次に(2)の溶液を、ステント基材11に塗布し、DMFを揮発させて高分子材料からなる被覆層12を形成したステントのサンプルとした。なお、膜厚は約10μmであった。
【0083】
(4)このステントのサンプルを拡張後、pH7.4−リン酸緩衝液3mlが入った試験管に入れ、37℃で60回/分の速度にて、振盪させながら、経時的にサンプリングして、当該ステント表面を目視及び顕微鏡により観察し、塗布膜の剥れの有無を観察した。
【0084】
実施例1の結果、当該塗布膜は、水溶液環境下で約2ヶ月以上安定に存在することが確認された。
【0085】
〔実施例2〕
(1)シロスタゾール2.0g及びバイオネート80A(ポリカーボネートタイプ熱可塑性ポリウレタン)4.0gを、DMF100mlに溶解し、6質量%溶液を調製した。
【0086】
(2)図1に示すパターンを形成し、実施例1と同様にエポキシ系シランカップリング剤にて処理したステント基材11に、上記DMF溶液を塗布し、DMFを揮発させて高分子材料からなる被覆層12を形成したステントのサンプルとした。なお、膜厚は約10μmであった。
【0087】
(3)このステントのサンプルを拡張後、pH7.4−リン酸緩衝液1mlが入った試験管に入れ、37℃にて振盪し、経時的にサンプリングして分析し、シロスタゾールのリリース量及びリリース速度の経時的な変化を以下の方法により測定した。
【0088】
すなわち、測定は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で行い、溶離液として50mM−過塩素酸ナトリウム水溶液/アセトニトリル(60/40)、分析カラムとしてWakopak WS II5C18RS(直径4.6mm×長さ150mm:和光純薬工業社製)を用い、カラム温度40℃で測定を行った。カラム通過後に、UV検出器を用いて波長254nmでの測定を行った。結果を表1に示す。
【0089】
【表1】
Figure 0004245302
【0090】
〔実施例3〕(ステントへ塗布した高分子材料の水環境下での安定性試験3)
【0091】
(1)シアノアクリレート系接着剤(アロンアルファ:東亜合成社製)1.0gをアセトン100mlに溶解し、1質量%溶液を調整した。
【0092】
(2)テコフレックス85A(ポリエーテルタイプ熱可塑性ポリウレタン)4.0gをDMF100mlに溶解し、4質量%溶液を調整した。
【0093】
(3)まず(1)の溶液を、図1に示すパターンを形成した管状のステント基材11に塗布し、アセトンを揮発させシアノアクリレート系接着剤による前処理を行った。
【0094】
次に(2)の溶液を、ステント基材11に塗布し、DMFを揮発させて高分子材料からなる被覆層12を形成したステントのサンプルとした。なお、膜厚は約10μmであった。
【0095】
(4)このステントのサンプルを拡張後、pH7.4−リン酸緩衝液3mlが入った試験管に入れ、37℃で60回/分の速度にて、振盪させながら、経時的にサンプリングして、当該ステント表面を目視及び顕微鏡により観察し、塗布膜の剥れの有無を観察した。
【0096】
実施例3の結果、当該塗布膜は、水溶液環境下で約2ヶ月以上安定に存在することが確認された。
【0097】
〔実施例4〕
(1)図1に示すパターンを形成し、実施例3と同様にシアノアクリレート系接着剤にて処理したステントに、テコフレックス85Aを4.0gと、シロスタゾールを1.0g溶解したDMF溶液100mlを塗布し、DMFを揮発させて高分子材料からなる被覆層12を形成したステントのサンプルとした。なお、膜厚は約10μmであった。
【0098】
(2)このステントを拡張後、実施例2と同様の方法により、シロスタゾールのリリース量及びリリース速度を経時的に測定した。結果を表2に示す。
【0099】
【表2】
Figure 0004245302
【0100】
実施例1及び実施例3の結果から、本発明のステントにおいては、基本的に、高分子材料からなる被覆層は、長期間(60日)経過してもステント基材から剥がれることがないことが確認された。
【0101】
そして、実際に、実施例2及び4の結果から、あらかじめプライマー処理し、シロスタゾールを含有せしめた高分子材料を被覆したステントからの当該薬剤のリリース挙動については、30日以上、好ましくは60日を経過しても、当該被覆層は、ステント基材から剥がれることがなく、当該薬剤の放出速度コントロールが可能であることが確認された。
【0102】
なお、抗凝血薬剤について、二種以上を併用する場合、例えば抗血小板剤(シロスタゾール)により、血小板の凝集及び血管収縮を抑制する作用を早期に発現させたいとき、あるいは、これらの作用の発現が短期間で十分な場合は、シロスタゾールと抗トロンビン剤等を高分子材料に混合して、ステント基材の表面にコーティングするか、または、ステント基材の表面に、高分子材料に混合した抗トロンビン剤等(内層)、高分子材料に混合したシロスタゾール(外層)の順でコーティングすることにより、この目的を達成することができると予想される。
【0103】
【発明の効果】
本発明によれば、シランカップリング剤やシアノアクリレート系接着剤等によるプライマー前処理をステント基材へ施すことにより、シロスタゾール等を含有する高分子材料からなる被覆層が長期間経過してもステント基材から剥がれることなく、この間、当該シロスタゾール等は、継続的に徐放されるので、長期にわたって優れた抗血栓性を有し、体内留置後の血栓性閉塞を抑制し、低い再狭窄率を示すステントを提供することができる。
【0104】
また本発明のステントによれば、例えばシロスタゾールと抗トロンビン剤等が同時期に溶出して同時期に効果を発現できるように調整できる。すなわちシロスタゾールにより血小板粘着を阻害し、抗トロンビン剤等により血液凝固反応の開始と進展の抑制が可能となる。
【0105】
また、ステント基材に被覆する高分子材料層の厚さとシロスタゾール及び抗トロンビン剤等の配合量を調整すれば、ステント留置直後の即効的な薬剤放出から内皮細胞再生までの一ヶ月間までの長期間にわたって、抗凝血薬剤が血液中にリリースするようにコントロールすることが可能になる。
【0106】
さらにまた、抗凝血剤の静注による副作用発生も低減でき、患者に負担の少ない治療が実現できる。
【0107】
加えて本発明においては、例えば抗血小板剤として使用するシロスタゾールは血管平滑筋収縮抑制作用も有しているので、ステント留置による再狭窄の危険性をより低減できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のステントの概略図
【図2】図1のステントの断面図
【図3】本発明のステントの概略図
【図4】本発明のステントの概略図
【符号の説明】
10 、20、30 ステント
11、21、31 ステント基材
12 高分子材料からなる被覆層
13 抗血小板剤であるシロスタゾール等
14 抗トロンビン剤等
22 内層
23 外層
32 シロスタゾール(及び、場合によりさらに抗トロンビン剤等)を含む高分子材料の層(第一被覆層)
33 シロスタゾールまたは抗トロンビン剤等を含む高分子材料の層(第二被覆層)

Claims (6)

  1. ステント基材と、当該ステント基材を被覆し、少なくとも抗凝血薬剤を含み当該抗凝血薬剤を生体内で徐放しうる高分子材料からなる被覆層を備えたステントにおいて、
    当該抗凝血薬剤を含有する高分子材料からなる被覆層の厚みは0.1〜50μmであって、
    当該高分子材料からなる被覆層中に、前記抗凝血薬剤を1〜60質量%含むものであり
    前記ステント基材と、前記被覆される高分子材料の両方に対して加水分解性基と有機官能基を有するシランカップリング剤及びシアノアクリレート系接着剤から選択される親和性の高いプライマーで前記ステント基材が前処理されており、
    当該ステントは、これを、pH7.4の緩衝液中で60回/分で振盪した場合において、少なくとも30日間は当該被覆層は剥離せず、かつ、その間に当該抗凝血薬剤は液中に徐放を続けることができる安定な被覆を有することを特徴とするステント。
  2. ステント基材と、当該ステント基材を被覆し、少なくとも抗凝血薬剤を含み当該抗凝血薬剤を生体内で徐放しうる高分子材料からなる被覆層を備えたステントにおいて、前記高分子材料は前記抗凝血薬剤の分子鎖を有するものであことを特徴とする請求項1に記載のステント。
  3. 抗凝血薬剤が、シロスタゾールであることを特徴とする請求項1又は2に記載のステント。
  4. シロスタゾールからなる抗血小板剤とともに、当該シロスタゾールとほぼ同時期に溶出し同時期にその薬効を発現しうる他の薬剤を含むことを特徴とする請求項に記載のステント。
  5. 前記高分子材料からなる被覆層中に、シロスタゾールと他の薬剤を、合計量で60質量%含むことを特徴とする請求項に記載のステント。
  6. 被覆層を一層又は二層以上に形成することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のステント。
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