JP4460122B2 - フェノール変性難燃化ポリウレタンフォームおよびその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関するものであり、更に詳しくは、発泡剤に水単独、または水と他の発泡剤の併用をして寸法安定性、接着性、作業性等を損なうことなく、難燃性に優れるフェノール変性難燃化ポリウレタンフォーム並びにその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、硬質ポリウレタンフォームの主たる発泡剤として用いられているジクロロモノフルオロエタン(HCFC-141B)は、オゾン層破壊の問題がある。また次世代フロンとしてオゾン層を破壊することのないハイドロフルオロカーボン(HFC)が、次世代発泡剤として挙げられているが、これらの化合物は強い地球温暖化作用があり、更に発泡剤として使用するには沸点が低いものが多く、取り扱いにも問題を有する。
また、シクロペンタン、n−ペンタン等の炭化水素化合物を発泡剤として使用する技術も提案されているが、これらは、引火性であり、ポリウレタンフォーム製造時に危険性を伴うため、製造工程には厳重な防爆対策を行う必要がある。最近は環境汚染、火災などの危険が全くないところから、発泡剤に水を用いる水発泡が検討されている。
【0003】
しかしながら、この水発泡処方は、従来のフロン系発泡剤を使用したフォームに比べ、寸法安定性、接着性が低下し、またその配合液の粘度が高くなり作業性が悪くなる問題点がある。
一方従来のポリウレタンフォームの難燃性を向上させる方法として、イソシアヌレート化、芳香族系ポリエステルポリオールの使用、難燃剤の添加、金属、無機系充填剤の添加等が行われている。
しかし、発泡剤として水を用いた場合、ポリウレタンのイソシアヌレート化は、イソシアネート基が、イソシアヌレート化反応、ウレタン化反応および水との反応(ウレア化)が混在することが避けられないため、ウレタン化反応をコントロールすることが極めて難しく、良好なフォームを得ることができない。
【0004】
また、ポリウレタンフォームの製造に芳香族ポリエステルポリオールの使用は、該化合物は加水分解性があるため、水の存在下での使用は難しい。
また、ポリウレタンフォームに難燃剤の添加は、フォームへの着火性は改善されるものの、燃焼時には多量の煙の発生が避けられない。また、金属粉あるいは無機系充填剤等の添加は、ポリウレタンフォームに多量に使用するときは難燃性付与の効果は得られが、配合物の粘度が著しく上昇し作業性が低下し、得られるフォームの外観も悪くなり、さらにフォームの低密度化が妨害される。
【0005】
難燃化するときに、これらの問題点を回避するものとして、ポリオール成分としてフェノール樹脂(ベンジルエーテル型、ノボラック型)を配合する提案がなされている(特開平6−220154号、特開平9−208654号など)。
しかし、従来のウレタン用ポリオールに比べこれらのフェノール樹脂(特にノボラック型)は粘度が高く、更に、フロン系発泡剤などを使用した場合に比べ発泡剤に水を用いた場合、その添加量が極めて少ないため希釈が不十分となり、配合液の粘度が高く作業性が悪くなる。そのためフェノール樹脂に加えて減粘剤や汎用ポリオールを併用せざるを得ず、難燃性が低下するという問題点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、発泡剤に水を用いた場合でも硬質ポリウレタンフォームの特長を生かし、寸法安定性、接着性、作業性等を損なうことなく、難燃性に優れ、特に燃焼時においても発煙量が少なく、難燃性の評価レベルとしてJIS A-1321「建築材料及びその工法に関する燃焼試験方法」の難燃2級をクリアーすることができる硬質ポリウレタンフォーム及びその製造方法の開発を目的とする。
【0007】
【課題を解決する手段】
本発明は
[1] ポリウレタンフォームのポリオール原料として、アセチル化前の重量平均分子量が250〜1000のノボラック型フェノール樹脂の全水酸基の10〜95%をアセチル化したアセチル化ノボラック型フェノール樹脂を10重量%以上用いたフェノール変性難燃化ポリウレタンフォーム。
[2]ポリオール原料として、アセチル化ノボラック型フェノール樹脂と共に非アセチル化ノボラック型フェノール樹脂または10%未満のアセチル化ノボラック型フェノール樹脂を併用する請求項1に記載のフェノール変性難燃化ポリウレタンフォーム。
[3]ポリオール原料として、請求項1に記載のアセチル化ノボラック型フェノール樹脂と他のウレタン用ポリオールを併用し、これらの全ポリオール成分の水酸基の少なくとも10%をアセチル化したものである請求項1または2に記載のフェノール変性難燃化ポリウレタンフォーム。
[4]水酸基価が460mgKOH/g以下のアセチル化ノボラック型フェノール樹脂を用いた請求項1に記載のフェノール変性難燃化ポリウレタンフォーム、
【0008】
[5]ポリウレタンフォームのポリオール原料として、請求項1〜4のいずれかに記載のポリオール原料とポリイソシアネートとを、発泡剤の存在下に反応させることを特徴とするフェノール変性難燃化ポリウレタンフォームの製造方法。
[6]触媒、整泡剤の存在下にポリイソシアネートを反応させることからなるフェノール請求項5に記載の変性難燃化ポリウレタンフォームの製造方法。
[7]発泡剤が水単独、または水と他の発泡剤の併用である請求項5または6に記載のフェノール変性難燃化ポリウレタンフォームの製造方法を、開発することで上記の課題を解決した。
【0009】
【発明の実施の形態】
一般に発泡剤に水を用いた場合、フロン系発泡剤などに比べ、その添加量が極めて少ないため、フロン系発泡剤等に比して配合液の希釈効果を期待できずこのため配合液の粘度が高くなる傾向にあり作業性が悪くなる。
【0010】
特に、ポリオール成分としてフェノール樹脂(特にノボラック型)を使用するときは、フェノール樹脂は一般のウレタン用ポリオールに比べ粘度が高いため、配合液の粘度アップにつながり作業性が低下する。よって、配合液の低粘度化を図るためにはベースのフェノール樹脂の低粘度化が必要となった。
フェノール樹脂の粘度が高い原因の一つとしてフェノール樹脂の水酸基による分子間の水素結合によるものである。そこで、水酸基をアセチル化することで、分子間の水素結合を消去することにより樹脂の低粘度化をはかった。
【0011】
また、一般に高圧発泡機で使用できる粘度としては、1000mpa.s(25℃)以下であり、そのことを考慮すると、ベースのノボラック型フェノール樹脂の重量平均分子量としては、250〜1000のものが好ましい。重量平均分子量が250未満の場合、低粘度化することが可能となるが、得られたフォームの寸法安定性が悪く、脆さが生じる。また重量平均分子量が1000を越える場合、配合液の粘度が高くなって作業性、発泡性が低下する。
【0012】
本発明のポリオール成分としてアセチル化ノボラック型フェノール樹脂を使用したポリウレタンフォームは、フェノール樹脂を構成する分子構造に芳香環が密であることが影響し難燃性であって、かつ特に燃焼時の発煙量が少ないフォームが得られた。またフェノール樹脂の水酸基のアセチル化により、ポリイソシアネートとの相溶性及び混合性が向上するため、得られたフォーム中の未反応のイソシアネート基量が少なくなったことも難燃性に貢献している。
【0013】
本発明のフェノール変性難燃化ポリウレタンフォームに使用するアセチル化ノボラック型フェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂の水酸基の10〜95%をアセチル化することが必要である。アセチル化率としては好ましくは20〜90%、より好ましくは25〜80%、さらに好ましくは30〜60%である。このアセチル化率が10%未満では、樹脂粘度を下げることができず、通常のウレタン用ポリオールと同様の作業性を得ることは難しく、得られたフォームの外観が混合不良により悪くなったり、難燃性、特に燃焼時の煙の発生を抑制することが困難となる。
【0014】
ノボラック型フェノール樹脂の水酸基のアセチル化は、フェノール樹脂の水酸基がアセチル化ができればその製造方法は問わない。無水酢酸法等を使用する一般的な方法で行うことができる。例えばフェノール樹脂をアルコール類とアルカリ金属水酸化物の存在かでアセチルクロライドまたは無水酢酸を反応させる(特開平9−406081号など)により製造しても良い。
【0015】
アセチル化するベースのノボラック型フェノール樹脂としては、一般に、フェノールとホルムアルデヒド(ホルマリン)とをシュウ酸などの酸性触媒存在下で反応し得られる通常のノボラック型フェノール樹脂であって良い。
該フェノールの原料として、特に制限はなく、例えばフェノール、o−クレゾール、p−クレゾール、m−クレゾール、p−t−ブチルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノールなど及びそれらの混合物が使用できる。
またホルムアルデヒドの原料としては、ホルマリン、パラホルム、アセタールなど及びそれらの混合物が使用できる。
【0016】
本発明のアセチル化ノボラック型フェノール樹脂と共に使用する各配合成分は従来のポリウレタンフォームに使われるものが使用可能である。
すなわち、アセチル化ノボラック型フェノール樹脂等のポリオール成分と反応するポリイソシアネート原料としては、従来のポリウレタンフォームに使用されているものであればいずれでも使用できる。すなわち2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)またはその混合物、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)やその多核体混合物であるポリメリックMDIなどが挙げられ、これらの中で特にポリメリックMDIが適している。
【0017】
アセチル化ノボラック型フェノール樹脂と併用可能なポリオールとしては、従来の硬質ポリウレタン用ポリオール(ポリプロピレングリコールに代表されるポリアルキレンオキシドやグリコール、多糖類、アミン類等のプロピレンオキシド、エチレンオキシド付加物といったポリエーテルポリオール、骨格中にリンや窒素を含むポリオールなど)の併用も可能である。硬質ポリウレタン用ポリオールを併用する場合においては、アセチル化ノボラック型フェノール樹脂は少なくとも10重量%、好ましくは50重量%であり、高度の難燃性が必要な場合にはアセチル化ノボラック型フェノール樹脂単独使用とすることが好ましく、硬質ポリウレタン用ポリオールであっても全く使用しないかあるいはその配合量を少量とすべきである。
【0018】
触媒としては、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−ヘキサン−1,6−ジアミン、N−メチルモルフォリン、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール等のアミン系触媒、ジブチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫マレート、オクチル酸錫等の有機錫系触媒が挙げらる。
【0019】
発泡剤としては、水を添加する事によりイソシアネート基と尿素反応で生成する炭酸ガスを発泡剤とする水単独、またはこれにHCFC-141B、HCFC-123及びHCFなどの代替フロンや次世代フロン、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素、シクロヘキサン、n−ペンタンなどの炭化水素などの低沸点化合物等水以外の発泡剤の併用も可能である。
【0020】
整泡剤としては、従来のポリウレタンフォーム製造に使用されているポリシロキサンアルキレンオキシド付加物、いわゆるシリコーン系のものが適し、これをフォーム物性に合わせ選択する。
【0021】
また従来難燃性ポリウレタンフォームに使用されてきた難燃剤(ハロゲン化物、ハロゲン化リン酸エステル、含窒素化合物等)の添加もポリウレタンフォームの燃焼時の発煙が許される範囲で添加が可能である。
また耐熱性、耐燃性を向上させるため金属粉、タルク、水酸化アルミニウム、石膏などの無機充填剤を使用することも可能である。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するがこれに限定される訳ではない。
【0022】
【実施例】
(評価方法)
燃焼試験は、JIS A-1321「建築材料及びその工法に関する燃焼試験方法」に基づき、東洋精機製“建築材料燃焼試装置”(10分測定)にて測定した。
【0023】
(樹脂A試作)
フェノールを100kg、37%ホルマリンを30kg仕込み反応触媒としてシュウ酸1kgの存在下に100℃で5時間反応、脱水を行い、ノボラック型フェノール樹脂Aを得た。重量平均分子量500、水酸基価533mgKOH/g、アセチル化率0%、水分0.1%であった。
【0024】
(樹脂B試作)
ノボラック型フェノール樹脂Aを100kg、無水酢酸49kgを仕込み、140℃で3時間アセチル化反応、脱酢酸を行い、水酸基価222mgKOH/g、アセチル化率50%のアセチル化ノボラック型フェノール樹脂Bを得た 。
【0025】
(樹脂C試作)
ノボラック型フェノール樹脂Aを100kg、無水酢酸25kgを仕込み、140℃で3時間アセチル化反応、脱酢酸を行い、水酸基価360mgKOH/g、アセチル化率25%のアセチル化ノボラック型フェノール樹脂Cを得た。
【0026】
(樹脂D試作)
ノボラック型フェノール樹脂Aを100kg、無水酢酸88kgを仕込み、140℃で3時間アセチル化反応、脱酢酸を行い、水酸基価40mgKOH/g、アセチル化率90%のアセチル化ノボラック型フェノール樹脂Dを得た。
【0027】
(樹脂E試作)
フェノールを100kg、37%ホルマリンを60kg仕込み、反応触媒としてシュウ酸1kgの存在下に100℃で5時間反応、脱水を行い、ノボラック型フェノール樹脂を得た。重量平均分子量1500、水酸基価530mgKOH/g、水分0.07%であった。
そのノボラック型フェノール樹脂を100kg、無水酢酸49kgを仕込み、140℃で3時間アセチル化反応、脱酢酸を行い、水酸基価221mgKOH/g、アセチル化率50%のアセチル化ノボラック型フェノール樹脂Eを得た 。
【0028】
(実施例1〜6,比較例1〜2)
表1に示すように、指定したポリオール成分の合計100重量部に、整泡剤としてシリコーン(東レダウコーニング・シリコーン:SH−193)5重量部、反応触媒として、トリエチレンジアミン1.0重量部、それぞれの発泡剤を添加混合し、ポリオール成分配合液を得た。
イソシアネート成分として、ポリメリックMDI(住友バイエルウレタン:44V20)を、−NCO/−OH当量比1.0となるようにポリオール成分配合液に対し配合し、高速攪拌し室温で木箱にてフリー発泡させ、発泡体のコア部より220×220×25mmのサンプルを切り出した。そのポリオール成分組成、発泡剤組成、発泡特性、フォームの難燃性試験の結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
(実施例7−9,比較例3)
ポリオール成分として上記の樹脂Bを使用し、さらにこれにウレタン用ポリオール(旭電化(株)製SC−1000)所定量併用した。そのポリオール成分組成、発泡剤組成、発泡特性、フォームの難燃性試験の結果を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、アセチル化フェノール樹脂をポリオール成分として使用することで、発泡剤に水を用いた場合でも、寸法安定性、接着性、作業性を損なうことなく、難燃性に優れたポリウレタンフォームが得られる。また、アセチル化フェノール樹脂をポリオール側に使用し、配合を調整することで、スプレー発泡法から注入発泡、連続ラミネート法など各種発泡体生産法に適応できる。
Claims (7)
- ポリウレタンフォームのポリオール原料として、アセチル化前の重量平均分子量が250〜1000のノボラック型フェノール樹脂の全水酸基の10〜95%をアセチル化したアセチル化ノボラック型フェノール樹脂を10重量%以上用いたフェノール変性難燃化ポリウレタンフォーム。
- ポリオール原料として、アセチル化ノボラック型フェノール樹脂と共に非アセチル化ノボラック型フェノール樹脂または10%未満のアセチル化ノボラック型フェノール樹脂を併用する請求項1に記載のフェノール変性難燃化ポリウレタンフォーム。
- ポリオール原料として、請求項1に記載のアセチル化ノボラック型フェノール樹脂と他のウレタン用ポリオールを併用し、これらの全ポリオール成分の水酸基の少なくとも10%をアセチル化したものである請求項1または2に記載のフェノール変性難燃化ポリウレタンフォーム。
- 水酸基価が460mgKOH/g以下のアセチル化ノボラック型フェノール樹脂を用いた請求項1に記載のフェノール変性難燃化ポリウレタンフォーム。
- ポリウレタンフォームのポリオール原料として、請求項1〜4のいずれかに記載のポリオール原料とポリイソシアネートとを、発泡剤の存在下に反応させることを特徴とするフェノール変性難燃化ポリウレタンフォームの製造方法。
- 触媒、整泡剤の存在下にポリイソシアネートを反応させることからなるフェノール請求項5に記載の変性難燃化ポリウレタンフォームの製造方法。
- 発泡剤が水単独、または水と他の発泡剤の併用である請求項5または6に記載のフェノール変性難燃化ポリウレタンフォームの製造方法。
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