JP4459563B2 - 歩行者用誘導システム及び歩行者用照明・誘導システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、歩行者に対して照明及び/又は誘導を行う歩行者用照明システム、歩行者用誘導システム及び歩行者用照明・誘導システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の一般的な歩行者用照明システムでは、いずれの歩行者に対しても一律に同じ明るさの照明が行われていた。そして、その照明の明るさは、一般的に、視覚的な健常者を基準として当該健常者に過不足のない程度の明るさに設定されていた。
【0003】
これに対し、下記の非特許文献1において、高齢者・視覚障害者などの視覚的な弱者が安全で安心に歩行するには、このような健常者に過不足のない程度の明るさ(例えば、水平面照度で5lx〜10lx)の照明では明るさが不足し水平面照度で20lx程度の明るさが必要であること、視野障害の有る人は視野障害の無い人に比べて視認特性が格段に劣るためより明るい照明が必要であること、個々の視覚的弱者の視認特性によっても必要な明るさが異なること、歩く時の手がかり・目印となる誘導灯を設けることが好ましい場合があることなどが、報告されている。
【0004】
さらに、下記の特許文献1には、携帯者の所在検出に用いられる位置信号を電波を媒体として発信する発信装置と、前記位置信号を受信して前記携帯者の所在を検出する位置検出装置と、位置検出装置により検出した携帯者の位置が予め設定した領域内であるときに照明を点灯させる制御する制御装置とを備えたシステムが、開示されている。このシステムを歩行者用照明システムに適用すれば、前記発信器を携帯した歩行者が前記領域内にいるときにのみ照明が点灯される一方、前記発信器を携帯した歩行者が前記領域内にいないときには照明が消灯される。したがって、照明が必要以上に点灯し続けることがなく、無駄な電力消費を低減することができる。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−353595号公報
【非許文献1】
市原,外3名,「人にやさしい道路環境に関する研究−ロービジョン者の夜間歩行に関する研究−」,兵庫県立福祉のまちづくり工学研究所報告集平成14年度版,社会福祉法人表原研社会福祉事業団・総合リハビリテーションセンター・兵庫県立福祉のまちづくり工学研究所,平成15年3月31日,p.69−78
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の一般的な歩行者用照明システムでは、いずれの歩行者に対しても一律に同じ明るさの照明が行われていた。また、特許文献1に開示されたシステムでは、発信装置の携帯者の有無によって照明の点灯・消灯を制御するのみであるため、発信装置を携帯していない人には全く照明が行われないとともに、発信装置を携帯した携帯者に対しては、いずれの携帯者に対しても一律に同じ明るさの照明がなされる。このため、結局、特許文献1に開示されたシステムを適用した歩行者用照明システムにおいても、照明が行われる歩行者に対してはいずれの歩行者に対しても一律に同じ明るさの照明が行われることには、変わりがない。
【0007】
このように、従来の歩行者用照明システムでは、いずれの歩行者に対しても一律に同じ明るさの照明が行われるため、以下に述べるような不都合が生じていた。
【0008】
従来は照明の明るさが視覚的な健常者に過不足のない程度の明るさに設定されているため、前記非特許文献1で報告されているように、高齢者や視覚障害者などの視覚的な弱者が安全で安心に歩行するには、照明の明るさが不足していた。また、全盲者などの白杖保持者の場合、自身にとっては照明の明るさは直接の影響はないが、視覚的な健常者が歩行するのに過不足のない程度の明るさでは、白杖保持者の周囲を歩行する視覚的な健常者が白杖を認識し難いため、周囲の歩行者によって白杖保持者に道をあける等の行為が行われず、ひいては、白杖保持者の歩行の安全性及び安心感が低下していた。
【0009】
また、女性等が夜道等を歩行する場合、防犯上及び心理上の観点から、男性等が歩行する場合に比べて、照明が十分に明るいことが好ましい場合がある。
【0010】
そこで、視覚的な弱者や女性等にとって十分な明るさの照明を、いずれの歩行者に対しても一律に行うことが考えられる。しかし、この場合の照明の明るさは、視覚的な健常者や男性等には過剰な明るさとなるため、視覚的な健常者や男性等のみが歩行している際や歩行者が存在しない場合などには、無駄な電力消費が増大するとともに、いわゆる光害となって周辺環境へ悪影響を及ぼすおそれがある。
【0011】
ところで、視覚的な弱者は、その視認特性によっては、歩道や道路の状態の認識が困難であるため、例えば、歩道に沿って歩くことが困難であり、意図せずに斜めに歩行して車道側に出てしまうことがあり、安全で安心な歩行が困難である場合がある。したがって、前記非特許文献1で報告されているように、歩く時の手がかり・目印となる誘導灯を設けることが好ましい。
【0012】
しかし、従来は、視覚的な弱者を歩道等に沿って誘導する歩行者用誘導システムは提供されていなかった。
【0013】
そこで、歩行者の視線等を誘導する誘導灯を歩道等に沿って配置し、当該誘導灯を常時点灯しておくことが考えられる。しかし、この場合、誘導が必要な視覚的な弱者がいなくても、誘導灯が常時点灯され続けるので、無駄な電力消費が増大するとともに、誘導灯の寿命も短くなってしまう。
【0014】
本発明は、前述したような事情に鑑みてなされたもので、歩行者の属性等に応じて適切な照明を行うことができ、これにより、歩行者の安全性及び安心感等を高めることができると同時に、無駄な電力消費が少ないとともに周辺への悪影響を低減することができる歩行者用照明システムを提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、歩行者の属性等に応じて適切な誘導を行うことができ、これにより、歩行者の安全性及び安心感等を高めることができると同時に、無駄な消費電力が少ない歩行者用誘導システムを提供することを目的とする。
【0016】
さらに、本発明は、歩行者の属性等に応じて適切な照明を行うことができるとともに、歩行者等の属性に応じて適切な誘導を行うことができる歩行者用照明・誘導システムを提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明の第1の態様による歩行者用照明システムは、1つ以上の照明灯と、所定の歩行者により携帯されかつ当該歩行者の属性を示す情報又は当該歩行者に対する照明の明るさ状態を示す情報が書き込まれて前記情報が離れた位置から読み取り可能である情報媒体から、前記情報を読み取る読み取り手段と、照明時において、前記読み取り手段により読み取られた前記情報に基づいて、前記1つ以上の照明灯を制御する制御手段と、を備えたものである。前記照明灯の数は、複数でもよい。
【0018】
この第1の態様によれば、読み取り手段によって、所定の歩行者が携帯する情報媒体から、当該歩行者の属性を示す情報又は当該歩行者に対する照明の明るさ状態を示す情報が読み取られる。そして、この情報に基づいて、制御部によって、照明時において1つ以上の照明灯が制御される。なお、前記照明灯は、白熱灯やLEDや無電極放電ランプなどの調光可能な照明灯でもよいし、調光不能な照明灯でもよい。調光不能な照明灯の場合でも、例えば、複数の灯器を有するものを用い、点灯する灯器の数を変えることで、実質的に調光し得る。
【0019】
したがって、前記第1の態様によれば、例えば、視覚的な弱者であるか否か、視覚的な弱者の視認特性、夜道等を特に明るくすることを望む女性等であるか否かなどの、歩行者の属性等に応じて適切な照明を行うことができる。このため、歩行者の安全性及び安心感等を高めることができると同時に、無駄な消費電力や周辺環境への悪影響を低減することができる。
【0020】
なお、前記第1の態様において、前記1つ以上の照明灯は、屋外に設置される街路灯等でもよいし、例えば、建物内の通路や地下街の通路の照明灯でもよい。
【0021】
本発明の第2の態様による歩行者用照明システムは、前記第1の態様において、前記制御手段は、前記読み取り手段により前記情報が読み取られない定常的な照明時において、前記読み取り手段により読み取られた前記情報に基づく照明の明るさ状態と比べて暗くなるように、前記1つ以上の照明灯を制御するものである。
【0022】
この第2の態様によれば、前記読み取り手段により前記情報が読み取られない定常的な照明時において、前記読み取り手段により読み取られた前記情報に基づく照明の明るさ状態と比べて暗くなるので、定常的な照明時の消費電力を抑えることができる。また、定常的な照明時の明るさを視覚的な健常者等に過不足のない明るさにしておけば、大多数を占める視覚的な健常者等は、前記情報媒体を携帯する必要がなくなる。
【0023】
本発明の第3の態様による歩行者用照明システムは、前記第1又は第2の態様において、前記情報媒体は、電波を媒体として前記情報を発信するものである。
【0024】
この第3の態様は情報媒体が電波を媒体として情報を発信する例を挙げたものであるが、前記第1及び第2の態様では、情報媒体は、電波以外の媒体により情報を発信するものでもよい。また、前記第1乃至第3の態様において、前記情報媒体は、自身がバッテリを搭載したものでもよいし、自身はバッテリを有することなく例えば読み取り手段から電波による電力を受けて作動するものでもよい。さらに、前記第1乃至第3の態様において、前記情報媒体は、前記情報を前記読み取りに読み取らせる機能のみを有するもの(例えば、ICカード)として構成してもよいし、他の装置(例えば、白杖、携帯電話機など)に組み込まれた構成としてもよい。
【0025】
本発明の第4の態様による歩行者用照明システムは、前記第1乃至第3のいずれかの態様において、前記属性が視覚的な弱者であることを含むものである。
【0026】
この第4の態様によれば、高齢者や視覚障害者などの視覚的な弱者に対して適切な照明を行うことができる。なお、前記属性が視覚障害等の種類や程度を含めば、よりきめ細かく適切な照明を行うことができる。
【0027】
本発明の第5の態様による歩行者用照明システムは、前記第4の態様において、前記属性が視野障害を有するか否かを含むものである。
【0028】
前記非特許文献1に報告されているように視野障害の有無によって要求される照明の明るさが比較的大きく異なるので、視野障害を有する歩行者の安全性及び安心感等を一層高めるためには、前記第5の態様のように、前記属性が視野障害を有するか否かを含むことが好ましい。この場合、前記属性が視野障害の程度を含むことがより好ましい。
【0029】
本発明の第6の態様による歩行者用照明システムは、前記第4の態様において、前記属性が全盲者であること又は白杖所持者であることを含むものである。
【0030】
この第6の態様によれば、歩行者が全盲者又は白杖保持者である場合に照明の明るさを明るくすることができ、これにより、周囲を歩行する視覚的な健常者が白杖を認識し易くなるため、周囲の歩行者が全盲者等に道をあける等の行為が行われ、ひいては、全盲者等の歩行の安全性及び安心感が向上する。
【0031】
本発明の第7の態様による歩行者用誘導システムは、1つ以上の誘導灯と、所定の歩行者により携帯されかつ当該歩行者の属性を示す情報又は当該歩行者に対する誘導状態を示す情報が書き込まれて前記情報が離れた位置から読み取り可能である情報媒体から、前記情報を読み取る読み取り手段と、前記読み取り手段により読み取られた前記情報に基づいて、前記1つ以上の誘導灯を制御する制御手段と、を備えたものである。前記1つ以上の誘導灯は、例えば、歩道に沿って配置される。
【0032】
この第7の態様によれば、読み取り手段によって、所定の歩行者が携帯する情報媒体から、当該歩行者の属性を示す情報又は当該歩行者に対する誘導状態を示す情報が読み取られる。そして、この情報に基づいて、制御部によって、1つ以上の誘導灯が制御される。なお、誘導灯は、歩くときの手がかり・目印となるものであるので、必ずしも通常の照明灯と同様の照度は必要ないし、必ずしも調光可能である必要はない。
【0033】
したがって、前記第7の態様によれば、視覚的な弱者の視認特性などの歩行者の属性等に応じて適切な誘導を行うことができる。このため、歩行者の安全性及び安心感等を高めることができると同時に、無駄な消費電力を低減することができる。
【0034】
本発明の第8の態様による歩行者用誘導システムは、前記第7の態様において、前記制御手段は、前記読み取り手段により前記情報が読み取られない定常的な状態において、前記1つ以上の誘導灯が消灯するように、前記1つ以上の誘導灯を制御するものである。
【0035】
この第8の態様によれば、前記読み取り手段により前記情報が読み取られない定常的な状態において誘導灯が消灯されるので、定常的な状態の消費電力を抑えることができる。
【0036】
本発明の第9の態様による歩行者用誘導システムは、前記第7又は第8の態様において、前記情報媒体は、電波を媒体として前記情報を発信するものである。
【0037】
この第9の態様は情報媒体が電波を媒体として情報を発信する例を挙げたものであるが、前記第7及び第8の態様では、情報媒体は、電波以外の媒体により情報を発信するものでもよい。また、前記第7乃至第9の態様において、前記情報媒体は、自身がバッテリを搭載したものでもよいし、自身はバッテリを有することなく例えば読み取り手段から電波による電力を受けて作動するものでもよい。さらに、前記第7乃至第9の態様において、前記情報媒体は、前記情報を前記読み取りに読み取らせる機能のみを有するもの(例えば、ICカード)として構成してもよいし、他の装置(例えば、白杖、携帯電話機など)に組み込まれた構成としてもよい。
【0038】
本発明の第10の態様による歩行者用誘導システムは、前記第7乃至第9のいずれかの態様において、前記属性が視覚的な弱者であることを含むものである。
【0039】
この第10の態様によれば、高齢者や視覚障害者などの視覚的な弱者に対して適切な誘導を行うことができる。なお、前記属性が視覚障害等の種類や程度を含めば、よりきめ細かく適切な誘導を行うことができる。
【0040】
本発明の第11の態様による歩行者用照明・誘導システムは、1つ以上の照明灯と、1つ以上の誘導灯と、所定の歩行者により携帯されかつ当該歩行者の属性を示す情報又は当該歩行者に対する照明の明るさ状態及び誘導状態を示す情報が書き込まれて前記情報が離れた位置から読み取り可能である情報媒体から、前記情報を読み取る読み取り手段と、前記読み取り手段により読み取られた前記情報に基づいて、前記1つ以上の誘導灯を制御するとともに照明時において前記1つ以上の照明灯を制御する制御手段と、を備えたものである。前記照明灯の数は、複数でもよい。
【0041】
この第11の態様によれば、読み取り手段によって、所定の歩行者が携帯する情報媒体から、当該歩行者の属性を示す情報又は当該歩行者に対する照明の明るさ状態及び誘導状態を示す情報が読み取られる。そして、この情報に基づいて、制御部によって、1つ以上の誘導灯が制御されるとともに、照明時において1つ以上の照明灯が制御される。
【0042】
したがって、前記第11の態様によれば、例えば、視覚的な弱者であるか否か、視覚的な弱者の視認特性、夜道等を特に明るくすることを望む女性等であるか否かなどの、歩行者の属性等に応じて適切な照明を行うことができるとともに、視覚的な弱者の視認特性などの歩行者の属性等に応じて適切な誘導を行うことができる。このため、照明及び誘導の両方の観点から、歩行者の安全性及び安心感等を高めることができると同時に、無駄な消費電力や周辺環境への悪影響を低減することができる。
【0043】
なお、前記第11の態様において、前記1つ以上の照明灯は、屋外に設置される街路灯等でもよいし、例えば、建物内の通路や地下街の通路の照明灯でもよい。また、前記1つ以上の誘導灯は、例えば、歩道に沿って配置される。
【0044】
本発明の第12の態様による歩行者用照明・誘導システムは、前記第11の態様において、前記制御手段は、前記読み取り手段により前記情報が読み取られない定常的な照明時において、前記読み取り手段により読み取られた前記情報に基づく照明の明るさ状態と比べて暗くなるように、前記1つ以上の照明灯を制御し、前記制御手段は、前記読み取り手段により前記情報が読み取られない定常的な状態において、前記1つ以上の誘導灯が消灯するように、前記1つ以上の誘導灯を制御するものである。
【0045】
この第12の態様によれば、前記読み取り手段により前記情報が読み取られない定常的な照明時において、前記読み取り手段により読み取られた前記情報に基づく照明の明るさ状態と比べて暗くなるので、定常的な照明時の消費電力を抑えることができる。また、前記読み取り手段により前記情報が読み取られない定常的な状態において誘導灯が消灯されるので、定常的な状態の消費電力を抑えることができる。なお、定常的な照明時の明るさを視覚的な健常者等に過不足のない明るさにしておけば、大多数を占める視覚的な健常者等は、前記情報媒体を携帯する必要がなくなる。
【0046】
本発明の第13の態様による歩行者用照明・誘導システムは、前記第11又は第12の態様において、前記情報媒体は、電波を媒体として前記情報を発信するものである。
【0047】
この第13の態様は情報媒体が電波を媒体として情報を発信する例を挙げたものであるが、前記第11及び第12の態様では、情報媒体は、電波以外の媒体により情報を発信するものでもよい。また、前記第11乃至第13の態様において、前記情報媒体は、自身がバッテリを搭載したものでもよいし、自身はバッテリを有することなく例えば読み取り手段から電波による電力を受けて作動するものでもよい。さらに、前記第11乃至第13の態様において、前記情報媒体は、前記情報を前記読み取りに読み取らせる機能のみを有するもの(例えば、ICカード)として構成してもよいし、他の装置(例えば、白杖、携帯電話機など)に組み込まれた構成としてもよい。
【0048】
本発明の第14の態様による歩行者用照明・誘導システムは、前記第11乃至第13のいずれかの態様において、前記属性が視覚的な弱者であることを含むものである。
【0049】
この第14の態様によれば、高齢者や視覚障害者などの視覚的な弱者に対して適切な照明及び誘導を行うことができる。なお、前記属性が視覚障害等の種類や程度を含めば、よりきめ細かく適切な照明及び誘導を行うことができる。
【0050】
本発明の第15の態様による歩行者用照明・誘導システムは、前記第14の態様において、前記属性が視野障害を有するか否かを含むものである。
【0051】
前記非特許文献1に報告されているように視野障害の有無によって要求される照明の明るさが比較的大きく異なるので、視野障害を有する歩行者の安全性及び安心感等を一層高めるためには、前記第15の態様のように、前記属性が視野障害を有するか否かを含むことが好ましい。この場合、前記属性が視野障害の程度を含むことがより好ましい。
【0052】
本発明の第16の態様による歩行者用照明・誘導システムは、前記第14の態様において、前記属性が全盲者であること又は白杖保持者であることを含むものである。
【0053】
この第16の態様によれば、歩行者が全盲者又は白杖保持者である場合に照明の明るさを明るくすることができ、これにより、周囲を歩行する視覚的な健常者が白杖を認識し易くなるため、周囲の歩行者が全盲者等に道をあける等の行為が行われ、ひいては、全盲者等の歩行の安全性及び安心感が向上する。
【0054】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による歩行者用照明システム、歩行者用誘導システム及び歩行者用照明・誘導システムについて、図面を参照して説明する。
【0055】
[第1の実施の形態]
【0056】
図1は、本発明の第1の実施の形態による歩行者用照明システムを示す概略ブロック図である。図2は、図1中の主要な構成要素の配置例を模式的に示す概略斜視図である。図3は、図2中の一部を拡大した拡大図である。
【0057】
本実施の形態による歩行者用照明システムは、図1乃至図3に示すように、交差点S1から交差点S2までの区間K1に間隔をあけて配置された4個の照明灯1a〜1dと、交差点S2から交差点S3までの区間K2に間隔をあけて配置された4個の照明灯2a〜2dと、昼夜等を検出するため周囲の照度を検出する照度センサ3と、所定の歩行者Hが携帯する情報媒体4から当該情報媒体4に書き込まれている情報を読み取る読み取り器5a〜5cと、照度センサ3及び読み取り器5a〜5cにより読み取られた情報に基づいて照明灯1a〜1d,2a〜2dを制御する制御部6と、を備えている。なお、図2において、照度センサ3及び制御部6の図示は省略している。
【0058】
図2及び図3において、7は車道、8は歩道である。
【0059】
本実施の形態では、照明灯1a〜1d,2a〜2dは屋外に配置され、街路灯となっている。もっとも、本発明では、照明灯は、建物内の通路や地下街の通路の照明灯でもよい。また、本実施の形態では、図面には示していないが、各照明灯1a〜1d,2a〜2dは、複数の灯器を有しており、点灯する灯器の数を変えることで、実質的に調光し得るようになっている。もっとも、各照明灯1a〜1d,2a〜2dとして、白熱灯やLEDや無電極放電ランプなどの調光可能な照明灯を採用してもよい。さらに、本実施の形態では、照明灯1a〜1d,2a〜2dは2段階に明るさを変え得るようになっているが、3段階以上に明るさを変え得るようにしてもよい。そして、本実施の形態では、照明灯1a〜1d,2a〜2dの最も暗い明るさは、視覚的な健常者に過不足のない程度の明るさ(例えば、水平面照度で5lx〜10lx)に設定されている。また、本実施の形態では、照明灯1a〜1d,2a〜2dが2段階に明るさを変え得るようになっているので、明るい方の明るさは、視覚的な弱者が安全かつ安心に歩行するのに十分な明るさに設定されている。照明灯1a〜1d,2a〜2dを3段階以上に明るさを変え得るようにする場合には、視覚的な弱者の視認特性(視野障害の有無等の種類や障害の程度など)に応じて、最も暗い明るさ以外の明るさを設定しておく。
【0060】
本実施の形態では、情報媒体4には、当該情報媒体4を携帯する歩行者の属性を示す情報及び当該歩行者に固有の識別情報が予め書き込まれている。もっとも、本発明では、前記識別情報は必ずしも書き込んでおく必要はない。そして、本実施の形態では、情報媒体4は、高齢者・視覚障害者などの視覚的な弱者に配布され、前記属性を示す情報として、当該歩行者が視覚的な弱者であることを示す情報が書き込まれている。ここで、視覚的な弱者には、視力を有する者の他、全盲者も含む。照明灯1a〜1d,2a〜2dを3段階以上に明るさを変え得るようにする場合には、視覚的な弱者の視認特性(視野障害の有無等の種類や障害の程度など)を、前記属性を示す情報として情報媒体4に書き込んでおく。
【0061】
なお、情報媒体4には、当該情報媒体4を携帯する歩行者の属性を示す情報に代えて、当該歩行者に対する照明の明るさ情報を直接に書き込んでもよい。
【0062】
また、本実施の形態では、情報媒体4は、電波を媒体として書き込まれている情報を発信するように構成され、読み取り器5a〜5cはこの電波を受信して情報媒体4に書き込まれている情報を読み取るように構成されている。情報媒体4及び読み取り器5a〜5cは、例えば、質問と回答の形式で情報の授受を行うように構成してもよいし、情報媒体4が一方的に情報を発信しこれを読み取り器5a〜5cが単に読み取るように構成してもよい。情報媒体4は、前記情報を読み取り器5a〜5cに読み取らせる機能のみを有するもの(例えば、ICカード)として構成してもよいし、他の装置(例えば、白杖、携帯電話機など)に組み込まれた構成としてもよい。また、情報媒体4は、自身がバッテリを搭載したものでもよいし、自身はバッテリを有することなく例えば読み取り器5a〜5cから電波による電力を受けて作動するものでもよい。電波を媒体として発信するものの一例として、情報媒体4として、リンテック株式会社から市販されている全方位長距離通信型タグ(型式TR−T003)を用いることができ、読み取り器5a〜5cとして、リンテック株式会社から市販されているアンテナ・コントローラ(型式DR−A003/DR−W003)を用いることができる。
【0063】
なお、本発明では、情報媒体4は、離れた位置から読み取り器5a〜5cが読み取り可能であれば、電波以外の媒体により情報を発信するものでもよい。
【0064】
本実施の形態では、図2に示すように、読み取り器5aは、区間K1の一方端付近に配置された照明灯1aの支柱に取り付けられ、読み取り器5bは、区間K1の他方端付近及び区間K2の一方端付近に配置された照明灯2aの支柱に取り付けられ、読み取り器5cは、区間K2の他方端付近に配置された照明灯2dの支柱に取り付けられている。もっとも、本発明では、読み取り器5a〜5cの配置がこのような配置に限定されるものではないことは、言うまでもない。
【0065】
本実施の形態では、制御部6は、照度センサ3からの検出信号に基づいて、夜間等のように周囲が暗ければ、照明灯1a〜1d,2a〜2dを点灯させることで照明を行う一方、昼間等のように周囲が明るければ、照明灯1a〜1d,2a〜2dを消灯させることで照明を行わない。
【0066】
制御部6は、この照明時において、情報媒体4の情報がいずれの読み取り器5a〜5cによっても読み取られない定常的な状態では、照明灯1a〜1d,2a〜2dを暗い状態で点灯させる。
【0067】
制御部6は、照明時において、前記定常的な照明状態から、情報媒体4を携帯した歩行者Hがいずれかの読み取り器5a〜5cに近づいて当該読み取り器によって情報媒体4の情報が読み取られると、当該読み取り器に対応する区間の照明灯を明るい状態で点灯させる。すなわち、(a)前記定常的な照明状態から、読み取り器5aにより情報媒体4の情報が読み取られると、制御部6は、区間K1の照明灯1a〜1dを明るい状態で点灯させ、区間K2の照明灯2a〜2dは暗い状態で点灯させ続ける。(b)前記定常的な照明状態から、読み取り器5bにより情報媒体4の情報が読み取られると、制御部6は、区間K1,K2の照明灯1a〜1d,2a〜2dを明るい状態で点灯させる。(c)前記定常的な照明状態から、読み取り器5cにより情報媒体4の情報が読み取られると、制御部6は、区間K2の照明灯2a〜2dを明るい状態で点灯させ、区間K1の照明灯1a〜1dは暗い状態で点灯させ続ける。なお、照明灯1a〜1d,2a〜2dを3段階以上に明るさを変え得るようにし、視覚的な弱者の視認特性(視野障害の有無等の種類や障害の程度など)を情報媒体4に書き込んだ場合には、制御部6は、照明灯1a〜1d,2a〜2dを明るい状態で点灯させる際には、その明るさは当該情報に応じた明るさで点灯するように照明灯を制御する。
【0068】
その後、制御部6は、同一の歩行者(同一の情報媒体4を携帯した歩行者であり、本実施の形態では情報媒体4には当該歩行者に固有の識別情報が書き込まれているので、情報媒体4を同定できる。)の情報媒体4の情報が、対応する区間の反対側端の読み取り器によって読み取られた時点で、明るい状態で点灯させていた照明灯を暗い状態で点灯させ、前記定常的な状態に戻る。すなわち、前記(a)の場合には、読み取り器5bにより同一の情報媒体4から情報が読み取られた時点で、区間K1の照明灯1a〜1dを暗い状態で点灯させ、区間K2の照明灯2a〜2dは暗い状態で点灯させ続ける。前記(b)の場合には、読み取り器5a又は5cにより同一の情報媒体4から情報が読み取られた時点で、区間K1,K2の照明灯1a〜1d,2a〜2dを暗い状態で点灯させる。前記(c)の場合には、読み取り器5bにより同一の情報媒体4から情報が読み取られた時点で、区間K2の照明灯2a〜2dを暗い状態で点灯させ、区間K1の照明灯1a〜1dは暗い状態で点灯させ続ける。
【0069】
歩行者が区間の途中で当該区間から逸脱したり逆行する可能性がある。そこで、制御部6は、情報媒体4が一旦読み取り器5a〜5cのいずれかにより読み取られた後に、同一の情報媒体4が前述した反対側の読み取り器により読み取られることなく所定時間経過した後に、明るい状態で点灯させていた照明灯を暗い状態で点灯させ、前記定常的な状態に戻る。
【0070】
なお、情報媒体4には当該歩行者に固有の識別情報が書き込まれていない場合には、制御部6は、前記(a),(b),(c)のいずれの場合においても、読み取り器5a〜5cのいずれかにより読み取られた後に所定時間経過した時点で、明るい状態で点灯させていた照明灯を暗い状態で点灯させ、前記定常的な状態に戻ればよい。
【0071】
以上は、情報媒体4を携帯した1人の歩行者に着目した制御部6の制御内容の説明であったが、2人以上の情報媒体4を携帯した歩行者が区間K1,K2に同時に進入する場合もある。この場合には、制御部6は、明るい状態の点灯を優先するように制御する。すなわち、制御部は、前述した説明に従って情報媒体4を携帯した少なくとも1人の歩行者に関して明るい状態で点灯させるべき区間の照明灯は、明るい状態で点灯させ、全ての歩行者に関して暗い状態で点灯させるべき区間の照明灯は、暗い状態で点灯させる。このとき、歩行者の視認状態に応じて明るい状態の明るさの段階を分ける場合には、情報媒体4が示す属性に応じた明るさ状態のうち最も明るい状態の点灯を優先するように、制御する。
【0072】
なお、情報媒体4から読み出された属性情報と照明灯の点灯時の明るさ情報との対応付けは、例えば、制御部6にルックアップテーブルを持たせることで行うことができる。
【0073】
本実施の形態によれば、夜間等の周囲が暗い照明時において、情報媒体4を携帯した視覚的な弱者である歩行者が区間K1(又は区間K2)の歩道8を歩行するときには、区間K1(又は区間K2)の照明灯1a〜1d(又は照明灯2a〜2d)が明るい状態で点灯する。したがって、視覚的な弱者である歩行者は、従来に比べて、安全かつ安心に歩行することができる。一方、夜間等の周囲が暗い照明時において、区間K1,K2に歩行者がいないとき及び区間K1,K2に情報媒体4を持たない視覚的な健常者のみが歩行しているときの、定常的な照明状態では、視覚的な健常者に過不足のない明るさの暗い状態で、照明灯1a〜1d,2a〜2dが点灯する。したがって、無駄な消費電力や周辺環境への悪影響を低減することができる。
【0074】
このように、本実施の形態によれば、視覚的な弱者の歩行の安全性及び安心感等を高めることができると同時に、無駄な消費電力や周辺環境への悪影響を低減することができる。
【0075】
また、前述したように、照明灯1a〜1d,2a〜2dを3段階以上に明るさを変え得るようにし、視覚的な弱者の視認特性(視野障害の有無等の種類や障害の程度など)を情報媒体4に書き込んでおき、制御部6が情報媒体4に書き込まれた視認特性に応じて明るさを変えるようにした場合には、よりきめ細かく適切な照明を行うことができる。したがって、視覚的な弱者の歩行の安全性及び安心感等を一層高めることができると同時に、無駄な消費電力や周辺環境への悪影響を一層低減することができる。特に、視覚障害の有無によって要求される照明の明るさが比較的大きく異なるので、視野障害を有する歩行者の安全性及び安心感等を一層高めるためには、情報媒体4に書き込む属性として視野障害を有するか否かを含めることが好ましく、この場合、視野障害の程度を含むことがより好ましい。
【0076】
さらに、本実施の形態では、前述した説明からわかるように、夜間等の照明時において、情報媒体4を携帯した視力を有する視覚的な弱者のみならず、情報媒体4を携帯した全盲である視覚的な弱者が区間K1,K2を歩行するときにも、照明灯1a〜1d,2a〜2dが明るい状態で点灯する。したがって、全盲者の周囲を歩行する視覚的な健常者が白杖を認識し易くなるため、周囲の歩行者が全盲者等に道をあける等の行為が行われ、ひいては、全盲者の歩行の安全性及び安心感が向上する。本実施の形態では、この利点は、全盲者のみならずいくぶん視力を有する視覚的な弱者であっても、白杖を有する者には、同様に得ることができる。
【0077】
なお、本実施の形態では、定常的な照明時に比べて明るい状態の照明を、視覚的な弱者に対してのみ行っているが、本発明では、例えば、防犯上及び心理上の観点から、希望する女性等に対しても明るい状態の照明を実現するように構成してもよい。この場合、具体的には、例えば、当該女性等に予め情報媒体4を配布し、当該情報媒体4に当該歩行者の属性情報として、夜道等の通常に比べて明るく照明することを希望する希望者である旨の情報を予め書き込み、その情報を読み取り器5a〜5cが読み取ったときに制御部6が視覚的な弱者である旨の情報を読み取ったときと同様の制御を行うようにすればよい。
【0078】
[第2の実施の形態]
【0079】
図4は、本発明の第2の実施の形態による歩行者用照明・誘導システムを示す概略ブロック図である。図5は、図4中の主要な構成要素の配置例を模式的に示す概略斜視図である。図6は、図5中の一部を拡大した拡大図である。図4乃至図6において、図1乃至図3中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0080】
本実施の形態による歩行者用照明・誘導システムが前記第1の実施の形態による歩行者用照明システムと異なる所は、以下に説明する点のみである。
【0081】
本実施の形態では、照明灯1a〜1dの支柱にそれぞれ取り付けられることで区間K1において歩道8に沿って配置された誘導灯11a〜11d、及び、照明灯2a〜2dの支柱にそれぞれ取り付けられることで区間K2において歩道8に沿って配置された誘導灯12a〜12dが、追加されている。誘導灯11a〜11d,12a〜12dは、歩く時の手がかり・目印となって歩道8の方向等を示すことになる。誘導灯11a〜11d,12a〜12dは、必ずしも支柱に取り付ける必要はなく、例えば、地面に埋設することも可能である。本実施の形態では、誘導灯11a〜11d,12a〜12dは、歩道18の延びる方向の両側から見えるように光を発するようになっている。誘導灯11a〜11d,12a〜12dとしては、歩くときの手がかり・目印となるものであるので、必ずしも照明灯と同様の照度は必要ないし、必ずしも調光可能である必要はない。誘導灯11a〜11d,12a〜12dとしては、例えばLED等を用いることができる。
【0082】
また、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同様に、情報媒体4には、当該情報媒体4を携帯する歩行者の属性を示す情報及び当該歩行者に固有の識別情報が予め書き込まれている。また、情報媒体4は、高齢者・視覚障害者などの視覚的な弱者に配布され、前記属性を示す情報として、当該歩行者が視覚的な弱者であることを示す情報が書き込まれている。誘導灯11a〜11d,12a〜12dによる誘導を、視覚的な弱者に一般的に適用するのではなく、当該誘導が特に有効である者(例えば、全盲者以外の視野障害の無い視覚的弱者)に限定して適用する場合には、前記属性としてその旨の情報を書き込んでおけばよい。なお、情報媒体4には、当該情報媒体4を携帯する歩行者の属性を示す情報に代えて、当該歩行者に対する照明の明るさ情報の他、当該歩行者に対する誘導状態(誘導の必要性や、場合によっては誘導方法など)を直接に書き込んでもよい。
【0083】
さらに、本実施の形態では、制御部6は、照明灯1a〜1d,2a〜2dに関して第1の実施の形態と同じ制御を行う他、誘導灯11a〜11d,12a〜12dに関して例えば次の制御を行う。
【0084】
すなわち、制御部6は、昼夜に拘わらず(すなわち、照度センサ3からの信号に拘わらず)、定常的な状態では、誘導灯11a〜11d,12a〜12dを消灯させる。
【0085】
制御部6は、この定常的な状態から、情報媒体4を携帯した歩行者Hがいずれかの読み取り器5a〜5cに近づいて当該読み取り器によって情報媒体4の情報が読み取られると、当該読み取り器に対応する区間の誘導灯を点灯させる。すなわち、(a)前記定常的な状態から、読み取り器5aにより情報媒体4の情報が読み取られると、制御部6は、区間K1の誘導灯11a〜11dを点灯させ、区間K2の誘導灯12a〜12dは消灯させ続ける。(b)前記定常的な状態から、読み取り器5bにより情報媒体4の情報が読み取られると、制御部6は、区間K1,K2の誘導灯11a〜11d,12a〜12dを点灯させる。(c)前記定常的な状態から、読み取り器5cにより情報媒体4の情報が読み取られると、制御部6は、区間K2の誘導灯12a〜12dを点灯させ、区間K1の誘導灯11a〜11dは消灯させ続ける。なお、誘導灯による誘導を、例えば全盲者以外の視野障害の無い視覚的弱者に限定して適用する場合には、制御部6は、情報媒体4からその属性情報が読み取り器により読み取られた場合にのみ、前記(a)〜(c)の動作を行う。
【0086】
その後、制御部6は、同一の歩行者(同一の情報媒体4を携帯した歩行者であり、本実施の形態では情報媒体4には当該歩行者に固有の識別情報が書き込まれているので、情報媒体4を同定できる。)の情報媒体4の情報が、対応する区間の反対側端の読み取り器によって読み取られた時点で、点灯させていた誘導灯を消灯させ、前記定常的な状態に戻る。すなわち、前記(a)の場合には、読み取り器5bにより同一の情報媒体4から情報が読み取られた時点で、区間K1の誘導灯11a〜11dを消灯させ、区間K2の誘導灯12a〜12dは消灯させ続ける。前記(b)の場合には、読み取り器5a又は5cにより同一の情報媒体4から情報が読み取られた時点で、区間K1,K2の誘導灯11a〜11d,12a〜12dを消灯させる。前記(c)の場合には、読み取り器5bにより同一の情報媒体4から情報が読み取られた時点で、区間K2の誘導灯12a〜12dを消灯させ、区間K1の誘導灯11a〜11dは消灯させ続ける。
【0087】
歩行者が区間の途中で当該区間から逸脱したり逆行する可能性がある。そこで、制御部6は、情報媒体4が一旦読み取り器5a〜5cのいずれかにより読み取られた後に、同一の情報媒体4が前述した反対側の読み取り器により読み取られることなく所定時間経過した後に、点灯させていた誘導灯を消灯させ、前記定常的な状態に戻る。
【0088】
なお、情報媒体4には当該歩行者に固有の識別情報が書き込まれていない場合には、制御部6は、前記(a),(b),(c)のいずれの場合においても、読み取り器5a〜5cのいずれかにより読み取られた後に所定時間経過した時点で、点灯させていた誘導灯を消灯させ、前記定常的な状態に戻ればよい。
【0089】
以上は、情報媒体4を携帯した1人の歩行者に着目した制御部6の制御内容の説明であったが、2人以上の情報媒体4を携帯した歩行者が区間K1,K2に同時に進入する場合もある。この場合には、制御部6は、誘導灯の点灯を優先するように制御する。すなわち、制御部は、前述した説明に従って情報媒体4を携帯した少なくとも1人の歩行者に関して点灯させるべき区間の誘導灯は、点灯させ、全ての歩行者に関して消灯させるべき区間の誘導灯は、消灯させる。
【0090】
このように、本実施の形態では、2人以上の情報媒体4を携帯した歩行者が区間K1,K2に同時に進入した場合、制御部6は、誘導灯に関しては、誘導灯の点灯を優先するように制御する。また、本実施の形態においても、前記第1の実施の形態と同じく、2人以上の情報媒体4を携帯した歩行者が区間K1,K2に同時に進入した場合、制御部6は、照明灯に関しては、明るい状態の点灯を優先するように制御する。したがって、誘導灯を点灯すべき人と明るい状態の照明灯の点灯を行うべき人とを完全に一致させないような場合(例えば、誘導灯の誘導を全盲者以外の視野障害の無い視覚的障害者に限定するとともに、明るい状態の照明を全盲者等を含む視覚的な障害者に一般的に適用する場合)において、誘導灯の誘導のみが必要でかつ明るい状態の照明が不要である人(例えば、全盲者以外の視野障害の無い視覚的障害者であって、その旨の属性が書き込まれた情報媒体4を携帯した人)と、誘導灯の誘導が不要でかつ明るい状態の照明が必要である人(例えば、視野障害の有る視覚的障害者であって、その旨の属性が書き込まれた情報媒体4を携帯した人)とが、同じ区間に同時に進入した場合、その区間の誘導灯が点灯されるとともに、その区間の照明灯が明るい状態で点灯される。
【0091】
本実施の形態によれば、前記第1の実施の形態と同様の利点が得られる他、次の利点も得られる。
【0092】
すなわち、本実施の形態によれば、昼夜を問わず、情報媒体4を携帯した視覚的な弱者である歩行者が区間K1(又は区間K2)の歩道8を歩行するときには、区間K1(又は区間K2)の誘導灯11a〜11d(又は誘導灯12a〜12d)が点灯する。したがって、視覚的な弱者である歩行者は、従来に比べて、安全かつ安心に歩行することができる。一方、区間K1,K2に歩行者がいないとき及び区間K1,K2に情報媒体4を持たない視覚的な健常者のみが歩行しているときの、定常的な照明状態では、誘導灯11a〜11d,12a〜12dが消灯する。したがって、無駄な消費電力を低減することができるとともに、誘導灯11a〜11d,12a〜12dの寿命が延びる。なお、本実施の形態のように、昼夜を問わず、読み取り器5a〜5cから読み取られた情報に基づいて誘導灯11a〜11d,12a〜12dによる誘導を行うことが好ましいが、本発明では、例えば、昼間は常に誘導灯11a〜11d,12a〜12dを消灯させ、夜間にのみ、読み取り器5a〜5cから読み取られた情報に基づいて誘導灯11a〜11d,12a〜12dによる誘導を行ってもよい。
【0093】
このように、本実施の形態によれば、照明及び誘導の両方の観点から、視覚的な弱者の歩行の安全性及び安心感等を高めることができると同時に、無駄な消費電力や周辺環境への悪影響を低減することができる。
【0094】
なお、本実施の形態による歩行者用照明・誘導システムのうち、照明灯1a〜1d,2a〜2d及び照度センサ3、並びに、制御部6における照明灯1a〜1d,2a〜2dに関する制御機能を、除いた部分が、本発明の一実施の形態による歩行者用誘導システムを構成している。この歩行者用誘導システムは、例えば、いずれの歩行者に対しても一律に同じ明るさの照明を行う従来の歩行者用照明システムと併用してもよい。
【0095】
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0096】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、歩行者の属性等に応じて適切な照明を行うことができ、これにより、歩行者の安全性及び安心感等を高めることができると同時に、無駄な電力消費が少ないとともに周辺への悪影響を低減することができる歩行者用照明システムを提供することができる。
【0097】
また、本発明によれば、歩行者の属性等に応じて適切な誘導を行うことができ、これにより、歩行者の安全性及び安心感等を高めることができると同時に、無駄な消費電力が少ない歩行者用誘導システムを提供することができる。
【0098】
さらに、本発明によれば、歩行者の属性等に応じて適切な照明を行うことができるとともに、歩行者等の属性に応じて適切な誘導を行うことができる歩行者用照明・誘導システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による歩行者用照明システムを示す概略ブロック図である。
【図2】図1中の主要な構成要素の配置例を模式的に示す概略斜視図である。
【図3】図2中の一部を拡大した拡大図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態による歩行者用照明・誘導システムを示す概略ブロック図である。
【図5】図4中の主要な構成要素の配置例を模式的に示す概略斜視図である。
【図6】図5中の一部を拡大した拡大図である。
【符号の説明】
1a〜1d,2a〜2d 照明灯
3 照度センサ
4 情報媒体
5a〜5c 読み取り器
6 制御部
11a〜11d,12a〜12d 誘導灯
Claims (10)
- 所定の歩行者が歩くときの目印となる1つ以上の誘導灯と、
前記所定の歩行者により携帯されかつ当該歩行者の属性を示す情報又は当該歩行者に対する誘導状態を示す情報が書き込まれて前記情報が離れた位置から読み取り可能である情報媒体から、前記情報を読み取る読み取り手段と、
前記読み取り手段により読み取られた前記情報に基づいて、前記1つ以上の誘導灯を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする歩行者用誘導システム。 - 前記制御手段は、前記読み取り手段により前記情報が読み取られない定常的な状態において、前記1つ以上の誘導灯が消灯するように、前記1つ以上の誘導灯を制御することを特徴とする請求項1記載の歩行者用誘導システム。
- 前記情報媒体は、電波を媒体として前記情報を発信することを特徴とする請求項1又は2記載の歩行者用誘導システム。
- 前記属性が視覚的な弱者であることを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の歩行者用誘導システム。
- 1つ以上の照明灯と、
所定の歩行者が歩くときの目印となる1つ以上の誘導灯と、
前記所定の歩行者により携帯されかつ当該歩行者の属性を示す情報又は当該歩行者に対する照明の明るさ状態及び誘導状態を示す情報が書き込まれて前記情報が離れた位置から読み取り可能である情報媒体から、前記情報を読み取る読み取り手段と、
前記読み取り手段により読み取られた前記情報に基づいて、前記1つ以上の誘導灯を制御するとともに照明時において前記1つ以上の照明灯を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする歩行者用照明・誘導システム。 - 前記制御手段は、前記読み取り手段により前記情報が読み取られない定常的な照明時において、前記読み取り手段により読み取られた前記情報に基づく照明の明るさ状態と比べて暗くなるように、前記1つ以上の照明灯を制御し、
前記制御手段は、前記読み取り手段により前記情報が読み取られない定常的な状態において、前記1つ以上の誘導灯が消灯するように、前記1つ以上の誘導灯を制御することを特徴とする請求項5記載の歩行者用照明・誘導システム。 - 前記情報媒体は、電波を媒体として前記情報を発信することを特徴とする請求項5又は6記載の歩行者用照明・誘導システム。
- 前記属性が視覚的な弱者であることを含むことを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の歩行者用照明・誘導システム。
- 前記属性が視野障害を有するか否かを含むことを特徴とする請求項8記載の歩行者用照明・誘導システム。
- 前記属性が全盲者であること又は白杖保持者であることを含むことを特徴とする請求項8記載の歩行者用照明・誘導システム。
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