JP4458616B2 - インクジェット記録装置、およびインクジェット記録ヘッド内のインクの検出方法 - Google Patents

インクジェット記録装置、およびインクジェット記録ヘッド内のインクの検出方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録ヘッド内のインクの検出が可能なインクジェット記録装置、およびインクジェット記録ヘッド内のインクの検出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プリンタ、複写機、ファクシミリ等の機能を有する記録装置、或いはコンピューターやワードプロセッサ等を含む複合機やワークステーションの出力機器として用いられる記録装置は、画像情報に基づいて、用紙やプラスチック薄板(例えば、OHPに用いるシート)等の記録シート(以下、記録媒体ともいう)に画像を記録するように構成されている。このような記録装置は、使用する記録手段の記録方法により、インクジェット式、ワイヤドット式、感熱式、熱転写式、レーザービーム式等の記録方式に分けられる。
【0003】
それらの記録方式の内、インクジェット式の記録装置(インクジェット記録装置)は、記録手段であるインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッドともいう)から、記録シートなどの被記録媒体にインクを吐出して記録を行うものであり、記録手段のコンパクト化が容易であり、高精細な画像を高速で記録することができる。さらには、普通紙に、特別の処理を必要とせずに記録することができるためランニングコストが安く、また、ノンインパクト方式であるため記録動作時の騒音が少なく、しかも多色のインクを使用してカラー画像を記録することが容易である等の利点を有している。
【0004】
このようなインクジェット記録方式の中にもいくつか手法があり、その1つとしては、ノズル内に、インクに熱エネルギーを与えるための発熱体を設け、その発熱体の発熱によってノズル内のインクにバブルを発生させたときの発泡エネルギーを用いて、ノズルからインクを吐出させるバブルジェット記録方式がある。ここで、インクを吐出するためのエネルギーを発生させる記録素子としての発熱体は、半導体製造プロセスを用いて作製することができる。そのため、バブルジェット記録方式を利用したインクジェット記録ヘッドは、シリコン基板からなる素子基板上に記録素子を形成し、その上に、インク流路を形成するための溝が形成された天板を接合した構成となっている。その天板は、ポリサルフォン等の樹脂やガラス等からなる。
【0005】
また、素子基板がシリコン基板からなることを利用し、記録素子を素子基板上に構成するだけでなく、記録素子を駆動するためのドライバ、記録素子を記録ヘッドの温度に応じて制御する際に用いられる温度センサ、および、その温度センサの駆動制御部等を、素子基板上に構成したものもある。
【0006】
特開平7−256883号公報には、上述したインクジェット記録ヘッド用の基板の一例が開示されている。その公報に開示された従来のインクジェット記録ヘッド用基板の構成を図9に示す。
【0007】
図9において、記録ヘッド用の基板である素子基板100には、インク吐出用の熱エネルギーをインクに与えるための記録素子としての発熱体101が配置されている。また、並列に配列された複数の発熱体(記録素子)101に対して、各発熱体101を駆動するためのパワートランジスタ(ドライバ)102が設けられている。さらに、素子基板100上には、シフトレジスタ104と、ラッチ回路103と、複数のANDゲート115が形成されている。シフトレジスタ104は、端子106を介して外部から画像データをシリアルに入力し、また、これに同期するシリアルクロックを端子105から入力して、1ライン分の画像データを保持する。ラッチ回路103は、端子107を介して入力されるラッチ用のクロック(ラッチ信号)に同期して、シフトレジスタ104からパラレルに出力された1ライン分の画像データをラッチし、それをパワートランジスタ102にパラレルに転送する。複数のANDゲート115は、パワートランジスタ102に対応してそれぞれ設けられ、ラッチ回路103の出力信号を、外部からのイネーブル信号に応じてパワートランジスタ102に印加する。108は、駆動素子であるパワートランジスタ102のオン時間、すなわち発熱体101に電流を流して駆動する時間を、記録ヘッド部の外部から制御するための駆動パルス幅入力(ヒートパルス)端子である。109は、ラッチ回路103やシフトレジスタ104等のロジック回路の駆動電源(5V)を入力するための端子である。さらに、接地端子110、およびセンサ114の駆動やモニタ用の端子112等が設けられている。このように、基板100上に形成される端子105〜112は、画像データや各種信号等を外部から入力するための入力端子である。
【0008】
また、素子基板100には、その素子基板100の温度を測定するための温度センサ、あるいは各発熱体101の抵抗値を測定するための抵抗センサ等のセンサ114が形成される。以上のように、ドライバ、温度センサ、及びその駆動制御部等を素子基板上に構成したヘッドは実用に供されており、記録ヘッドの信頼性の向上、及び装置の小型化に寄与している。
【0009】
このような構成において、シリアル信号として入力された画像データは、シフトレジスタ104によってパラレル信号に変換され、ラッチ用のクロックに同期してラッチ回路103に保持される。この状態において、入力端子107を介して、発熱体101の駆動パルス信号(ANDゲート115に対するイネーブル信号)が入力されることにより、画像データに応じてパワートランジスタ102がオンされ、対応する発熱体101に電流が流れて、熱エネルギーが発生する。素子基板100には、インク吐出のための液流路(ノズルともいう)や、その液流路と連通する共通液室を形成するために、天板が接合される。このように構成することにより、インクタンク(インク収容部ともいう)に収容されるインクが共通液室を介して各ノズルへ供給され、インクの安定供給が達成されている。前述のように、発熱体の駆動によって発生した熱エネルギーにより、液流路(ノズル)内のインクが加熱されて、ノズル先端の吐出口からインクが液滴として吐出される。
【0010】
ここで、安定した印字等の記録を行なうための重要なポイントの1つとして、ヘッド内の共通液室や各ノズル内における記録時のインクの有無が挙げられる。つまり、インクタンク内のインク量が少なくなった場合、あるいはノズル先端部からノズルへの空気の混入や、共通液室内に発生した気泡のノズルへの移動等が生じた場合には、インクを安定して吐出することが困難となり、記録品位を劣化させるおそれがある。例えば、インクジェット記録ヘッドに設けられている複数のノズルの内、特定のノズルにのみインクの安定吐出が困難な状況が発生して、それが不良ノズルとなった場合には、その不良ノズルによる記録が行われなくなるため、記録画像中に記録が行われない部分がスジ状に発生してしまう。また、共通液室内のインクが少なくなった場合には、一部のノズルに対してのみインクが供給されることがあり得るため、上述のような不良ノズルの発生による部分的なインクの不吐出と同様に、記録品位を劣化させてしまうこととなる。
【0011】
このような、不良ノズルによる部分的なインクの不吐出の発生状態を検出するために、従来より、共通液室やノズル内のインクの状態、特にインクの有無を検出する方法が提案されている。
【0012】
例えば、特開昭58−118267号公報には、インクジェット記録ヘッドに配列された複数のノズルについて、ノズル毎について、インクの有無を検出する方法が提案されている。すなわち、その方法の場合には、各ノズルのインクの有無を検出するために、各ノズル内に、記録素子とは別に、熱によって抵抗が変化する温度検出用の素子が配置される。そして、ノズル内のインクが無くなった場合に、記録素子である発熱体の発熱によってノズル付近の温度上昇変化の割合が大きくなることを利用し、その温度上昇変化を温度検出用の素子によって検出することにより、インクの有無を検知する。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上記した特開昭58−118267号公報に開示される構成においては、ノズル近辺の温度を直接確認するために、各ノズル毎に、温度を検出可能な素子またはセンサーを配置したり、さらには、それらの温度検出用の素子やセンサーを駆動するための駆動素子についてもノズル内もしくはヘッド用基板上に配置する必要がある。このような構成は、ノズルのサイズが大きくて、比較的低い密度でノズルが配列される記録ヘッドに対しては、有効に適用することができる。
【0014】
しかしながら、近年においては、より高速かつ高精細な記録の達成が要求されており、このような要求に応えるべく、インクジェット記録ヘッドに配列するノズル数を多くしたり、ノズルを高密度に配列することによって、高記録密度化が年々進められている。
【0015】
このような、高密度にノズルを配列したインクジェット記録ヘッド用基板においては、ノズル内部やその近辺に、各記録素子に対応させて温度検出用の素子やセンサーを配置したり、その素子やセンサーを駆動するための駆動素子を基板上に配置することが困難となってきている。また、ノズル数を増大した場合も同様であり、基板上に配置する素子数が増えることとなり、インクジェット記録ヘッド用基板のチップサイズの大型化、あるいはセンサー素子とその他の回路等を電気的に接続するための配線層の多層化につながり、その結果、基板上の構造の複雑化や、チップの製造コストアップを招くこととなる。
【0016】
また、特開昭58−118267号公報においては、温度検出用の素子をヘッドの外部に対して電気的に接続するための検出用端子の構成については明記されておらず、記録素子毎に対応した検出用端子を基板上に設けるとすれば、ヘッドに必要な端子の数が増大してしまう。さらには、ヘッドと記録装置を電気的に接続するためのフレキシブル基板等の配線数の増大や、それらの配線における信号を個別に制御するための記録装置本体上の素子の増大など、さまざまな部分において装置の大型化を招くこととなり、コストアップを避けることが困難となる。
【0017】
また、特開昭58−118267号公報に開示される構成においては、温度変化を検知する方式であるため、その検知方式を適用可能な記録方式は、熱エネルギーを発生する発熱体を記録素子として用いた記録方式に限定されるという制約もあった。
【0018】
本発明の目的は、きわめて簡単な構成によってインクジェット記録ヘッド内のインクを高精度に検出することができ、しかも種々の記録方式に広く適用することができるインクジェット記録装置、およびインクジェット記録ヘッド内のインクの検出方法を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明のインクジェット記録装置は、インク吐出用駆動信号が供給されたときの記録素子の発生エネルギーによりインク中に気泡を発生させてインクを吐出する記録ヘッドを用いて、被記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、前記記録ヘッドは、前記記録素子とインクとの間に位置する金属部材と、前記記録素子に供給される駆動信号が前記記録ヘッド内のインクを介して伝達される検出電極と、を備え、前記インクジェット記録装置は、前記記録素子の発生エネルギーによって前記金属部材上のインク中に発生する気泡の発泡開始から消泡までの間に、インク中に気泡を発生させない程度の補正用駆動信号を前記記録素子に供給し、前記記録素子の発生エネルギーによってインク中に発生した気泡が消泡した後に、インク中に気泡を発生させない程度のインク検出用駆動信号を前記記録素子に供給する供給手段と、前記検出電極に伝達される前記補正用駆動信号を第1の検出信号として検出し、前記検出電極に伝達される前記インク検出用駆動信号を第2の検出信号として検出する検出手段と、前記第1の検出信号と前記第2の検出信号との差に基づいて、前記記録ヘッド内のインクの有無を判定する判定手段と、を備え、前記判定手段は、前記第1の検出信号と前記第2の検出信号との差と、基準値と、を比較し、前記第1の検出信号と前記第2の検出信号との差が前記基準値よりも大きい場合はインク無しと判定し、前記第1の検出信号と前記第2の検出信号との差が前記基準値以下の場合はインク有りと判定することを特徴とする。
【0020】
本発明のインクジェット記録ヘッド内のインクの検出方法は、インク吐出用駆動信号が供給されたときの記録素子の発生エネルギーによりインク中に気泡を発生させてインクを吐出する記録ヘッドを用いて、被記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、前記記録ヘッド内のインクを検出する検出方法であって、
前記記録ヘッドは、前記記録素子とインクとの間に位置する金属部材と、前記記録素子に供給される駆動信号が前記記録ヘッド内のインクを介して伝達される検出電極と、を備え、
前記検出方法は、
前記記録素子の発生エネルギーによって前記金属部材上のインク中に発生する気泡の発泡開始から消泡までの間に、インク中に気泡を発生させない程度の補正用駆動信号を前記記録素子に供給する工程と、前記検出電極に伝達される前記補正用駆動信号を第1の検出信号として検出する工程と、前記記録素子の発生エネルギーによってインク中に発生した気泡が消泡した後に、インク中に気泡を発生させない程度のインク検出用駆動信号を前記記録素子に供給する工程と、前記検出電極に伝達される前記インク検出用駆動信号を第2の検出信号として検出する工程と、前記第1の検出信号と前記第2の検出信号との差と、基準値と、を比較し、前記第1の検出信号と前記第2の検出信号との差が前記基準値よりも大きい場合はインク無しと判定し、前記第1の検出信号と前記第2の検出信号との差が前記基準値以下の場合はインク有りと判定する工程と、を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明において採用するインクの検出方式は、記録ヘッドにおける記録素子の駆動信号を信号源として利用する。
【0022】
すなわち、そのインクの検出方式は、記録素子の駆動時と非駆動時に、その記録素子と駆動素子との間に電圧の変化が発生し、その電圧の変化が交流的にインクに伝達することに着目してなされたものである。記録素子と駆動素子との間において電圧が発生する電圧発生領域と、インクとの間は、例えば保護膜によって絶縁する。
【0023】
具体的には、基板上の検出電極によって、電圧発生領域からインクを介して交流的に伝達される電圧の変化を検出し、そのインクの存在量に応じて検出電圧が変化することを利用して、インクを検出する。例えば、電圧発生領域の電圧変化が交流的に伝達される伝達部分を各記録素子毎に電気的に分離して備え、その伝達部分と検出電極との間におけるインクの有無によって電気抵抗が変化することを利用して、インクの有無をノズル毎に検出することができる。
【0024】
また、本発明において採用するインクの検出方式は、インクの検出信号の信号源が記録素子そのものであり、前述した従来例のように記録素子の熱を利用しないため、検出電極は、基板上の全記録素子に対して共通に備えることも可能であり、さらに記録素子が発熱素子である場合には、その発熱素子上にキャビテーション保護膜を形成する際に、それと同時に検出電極を形成することができる。
【0025】
また、本発明において採用するインクの検出方式は、インクの検出に熱を利用しておらず、また記録素子の駆動に応じて電圧の変化が生じればよいため、種々の記録素子を用いて多様な記録方式にも応用できる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0027】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の記録装置において用いることが可能なインクジェット記録ヘッドを構成する基板(インクジェット記録ヘッド用基板)の説明図である。なお、この図1は、インクジェット記録ヘッド用基板の説明に必要な要部構成を示したものであり、図1に示す素子や端子の構成、及びその数については限定されるものではない。
【0028】
図1に示すインクジェット記録ヘッド用基板の基本的な構成は、従来技術として図9を参照して説明したインクジェット記録ヘッド用基板100に対して、インクの検出に用いる検出電極118を追加した構成である。従来の構成と比較して、大幅に複雑化させることなく本発明の実施が可能なことは、図から明らかに分かる。検出電極118は、後述するように、保護膜405、耐キャビテーション膜205、およびノズル内のインクを介して、ヒータ101の駆動回路と交流的に結合している。図1中の116は、その交流的な結合部であり、図11のようにコンデンサとして等価回路を構成する。図11中の点線Bによって囲まれた部分は、後述するように、インクの存在量に応じて電気抵抗が変化するノズル内の部分であり、また図11中のDは、ANDゲート115からの駆動信号を表す。
【0029】
以下、インクジェット記録ヘッド用基板の基本的構成、及びノズル毎の検出の原理について、図2、図3、図4、および図7を参照して詳細に説明する。
【0030】
図2は、図1に示すインクジェット記録ヘッド用基板の概略構成を示す平面図であり、基板上に設ける素子、電極、端子等のレイアウトの概略が示されている。図3は、図1および図2に示すインクジェット記録ヘッド用基板に、吐出口およびノズルを構成するための天板を接合した状態を示す概略斜視図である。また、図4は、インクジェット記録ヘッド用基板に天板を接合した状態において、基板およびノズルの構成を示す断面図である。なお、この図4は、図3中の矢印a−a線に沿う断面図である。また、図7は、本発明において、記録素子である発熱素子を駆動した時の、インクジェット記録ヘッド用基板上における各部の電圧の状態を示す図である。
【0031】
図2は、本例のインクジェット記録ヘッド用基板を上から平面的に見た図であり、主に、本発明の特徴的な構成を図示している。図1と同様に、図2に示す101は記録素子として用いられる発熱体(以下、ヒータと称する)であり、駆動素子であるドライバ102によって駆動される。203は、ヒータ101の一端部とドライバ102との間を接続する配線であり、111は、ヒータ101の他端部に電源電圧を供給するための配線である。また、ヒータ101上には、図4のように、電気的に絶縁された保護膜405(保護層)が形成されており、この保護膜405を介してヒータ101の上方に耐キャビテーション膜205が配置されている。なお、図2においては、ヒータ101、ドライバ102等の配置を説明するために、保護膜405の図示は省略している。また、本実施例で説明するインクジェット記録ヘッドは、ヒータ101が駆動されたときに発生する熱エネルギーによって、ノズル内のインクに気泡を生成し、その気泡の成長圧力によってインクを吐出口310(図3および図4参照)から吐出する、いわゆるバブルジェット方式を採用するものである。前述の耐キャビテーション膜205は、インクを吐出する際に発生した気泡が収縮したときの衝撃が、ヒータ101や保護膜405に伝わるのを抑える役割を果たすために設けられるものであり、タンタル等の高融点金属で形成されている。118は、インク検出のために設けた電極配線であり、117は、電極配線118の端部に設けられて、その電極配線118を基板外部へ電気的に接続するための外部端子である。
【0032】
本例のインクジェット記録ヘッド用基板の特徴的な構成は、図2に示すように、耐キャビテーション膜205を各ヒータ(記録素子)101毎に分割して配置した構成と、ドライバ102から離れかつヒータ101とドライバ102間の配線203から離れた位置に、検出電極118をレイアウトした構成にある。検出電極118は、配線パターンとして形成することができる。
【0033】
この図2に示したインクジェット記録ヘッド用基板の構成において、どのようにしてノズル内のインクの有無を検出するかについて、図3および図4を参照し、以下詳細に説明する。
【0034】
上述したように、図3は、天板314をインクジェット記録ヘッド用基板100と接合した状態を示す概略斜視図であり、それらの天板314と基板100とを接合することにより、ノズル部408(図4参照)と共通液室311が構成される。なお、この図3では、ノズル部408、及び共通液室311の構成を説明するために、天板314の上方の壁部材の構成については点線で表している。また、図2に示したように、205が耐キャビテーション膜である。また、前述したように、記録素子であるヒータ101が耐キャビテーション膜205の下に位置し、なおかつヒータ101の上部には絶縁保護膜405が形成されているため、図3においては、ヒータ101は図示されていない。また、ヒータ101を駆動するためのドライバ102についても同様であり、それも図3において図示されていない。
【0035】
本例においては、各ノズル毎に分離して配置された耐キャビテーション膜205を含むヒーター101(図3では不図示)の部分と、ドライバ102(図3では不図示)と、ノズル壁312で形成されるノズル部408と、インク検出のための検出電極118と、の関係が重要となる。
【0036】
図4において、電源部から電源配線111を介して供給される駆動電力は、ドライバ102によるスイッチングにしたがってヒータ101へ与えられて熱エネルギーを発生する。この熱エネルギーによりノズル内に気泡が発生し、吐出口310からインクが吐出される。
【0037】
ここで、ドライバ102のスイッチングによってヒータ101が駆動される前の段階、つまりドライバ102がOFFの時点においては、そのヒータ101の電位と、ヒータ101とドライバ102との間の配線203の電位と、ドライバ102上の一部配線(ドライバ102内のスイッチとして作用する部分からヒータ101側の部分)の電位は、それぞれヒータ電源配線111の電位と同じとなっている。また、インク(一般的にインク成分中にはイオンが含まれているため、導電性がある)が電気的に浮いていることにより、つまりインクがGNDに対して直流的にハイインピーダンスの状態であることにより、電気的に絶縁膜となる保護膜405上の耐キャビテーション膜205の電位は、インクと同様に電気的に浮いた状態、つまりGND(グランド)に対して直流的にハイインピーダンスの状態となっている。同様に、検出電極118の電位も基本的には電気的に浮いた状態となり、その検出電極118の電位を検出するために接続される装置の入力インピーダンスによって、その電位はほぼ決定する。本例の場合は、検出電極118の電位を検出するために、図4のように、検出電極118とGNDとの間に、電圧モニタMと1M〜10MΩの抵抗を並列に接続した。したがって、ヒータ101の駆動前の段階では、検出電位が0Vとなる。
【0038】
一方、ヒータ101を駆動した場合、すなわちドライバ102が配線203をGNDに接続するようにスイッチング(ON)した場合は、当然ながらヒータ101に電流が流れる。その際、ヒータ101はドライバ102側に近いほど電位が下がり、ヒータ10とドライバ102との間の配線203、及びドライバ102上の一部配線の電位は、ほぼGNDレベルに急激に降下する。図4において、点線Aによって囲まれた部分は、ヒータ101の駆動時に電圧が急激に下がる部分を示している。このように電圧が降下したときに、直流的には絶縁膜として働いていた保護膜405がコンデンサの誘電膜として働くことにより、保護膜405を介してヒータ101上からドライバ102上に渡って設けられた耐キャビテーション膜205と、その上に位置するインクに、交流的に電位変化が伝達されることが分かった。そのため、インクがノズル部408および共通液室部311に存在する場合は、その電位変化が検出電極118に伝達されることとなる。また、ノズル部408および/または共通液室部311にインクが存在しない場合は、耐キャビテーション膜205の部分には電位変化が伝達されるものの、その部分と検出電極118との間におけるノズル部408および/または共通液室部311内の電気抵抗が著しく大きくなるため、結果的に、検出電極118に伝達される電位変化が著しく小さくなったり、あるいは検出電極118に電位変化が伝達されなくなる。このように、ノズル部408や共通液室部311内におけるインクの存在量、極端にはインクの有無に応じて、検出電極118の電位変化が異なることから、駆動したヒータ101の部分と、検出電極118との間におけるインクの存在量、極端にはインクの有無を検出することができる。
【0039】
図2および図4において、点線Bによって囲まれた部分は、インクの存在量によって電気抵抗が変化する部分、つまり検出電極118の電位変化に大きい影響を与える部分を示す。また、図2中の点線116によって囲まれた部分は、図1および図11中における交流的な結合部に相当する。
【0040】
図7は、以上のような検出原理を利用したインクの検出動作を説明するためのタイミングチャートである。701は、ヒータ101を駆動するタイミングと駆動時間を決定するイネーブル信号である。ヒータ101は、ドライバ駆動制御用の信号(図示せず)に基づき、イネーブル信号に同期して順次個別に駆動される。703は、ヒータ101とドライバ102との間における配線203の電位であり、この電位703の変化と同様に、ドライバ102側に近いヒータ101の部分の電位と、ドライバ102上の一部配線(ドライバ102内のスイッチとして作用する部分からヒータ101側の部分)の電位も変化する。これらの部分を含み、電圧が変化する部分を電圧変化領域ともいう。なお、ヒータ101上においては、その位置によって電位の変化の振幅が異なり、ドライバ102側に近いほど大きくなる。また、絶縁保護膜405の表面電位は、その下の電圧変化領域の電位とほぼ同一となっていると考えられる。704および705は、検出電極118の電位変化によって得られるインクの検出信号であり、検出信号704は、図4中の部分Bにインクがある場合の検出信号、検出信号705は、その部分Bにインクがない場合の検出信号である。部分Bにインクがある場合は、そのB部分の電気抵抗が小さいため、検出電極118によって検出される電位変化、ひいては検出信号704の変化が大きくなる。一方、部分Bにインクがない場合は、そのB部分の電気抵抗が大きいため、検出電極118によって検出される電位変化、ひいては検出信号704の変化が小さくなる。このように、部分Bにインクがある場合とない場合によって、検出電極118によって検出される検出信号が変化することが分かる。もちろん、部分Bにおけるインクの存在量に応じて、検出電極118によって検出される検出信号は変化する。
【0041】
このような検出電極118からの検出信号は、ヒータ101の駆動タイミングに応じて時分割することにより、駆動ノズル毎に、インクの存在量、極端にはインクの有無を検出することができる。図7中の検出信号704は、駆動ノズルの全てにおいてインクがある場合の検出信号であり、同様に、図7中の検出信号705は、駆動ノズルの全てにおいてインクがない場合の検出信号である。したがって、例えば、1つの駆動ノズルにおいてインクがなかった場合には、その駆動ノズルに対応する検出信号のみが変化の小さい検出信号705として現れ、他の駆動ノズルに対応する検出信号は変化の大きい検出信号705として現れることになる。
【0042】
なお、耐キャビテーション膜205を、ヒータ101に対応させて分離していることにより、隣接するノズルの影響を受けることなく、インクの有無に応じたノズル毎の電位変化を確実に検出することができる。また、このように耐キャビテーション膜205をヒータ101に対応させて分離するとともに、検出側の電極118を全ノズルに対して共通に用いて、各ノズルを順次時分割で駆動することにより、配列された複数のノズルの各々におけるインクの有無を1つの検出電極118からの検出信号によって検出することができる。
【0043】
また、インクの検出信号の信号源として、ヒーター101そのものを用いることができるため、各ノズル単位のインクの有無の検出は、従来よりシフトレジスタ等を構成すべく記録ヘッドに設けられているロジック回路を用いて行なうことができ、構造を複雑化することなく、非常に簡易な構成でインクの有無の検出を行うことが可能となる。
【0044】
図8は、本発明が適用できるインクジェット記録装置IJRAの概観図である。
【0045】
同図において、リードスクリュー84は、駆動モータ81の正逆回転により、駆動力伝達ギア82,83を介して正逆転される。キャリッジHCは、リードスクリュー84の螺旋溝に対して係合するピン(不図示)を有し、リードスクリュー84の回転方向に応じて、図中の矢印a,b方向に往復移動される。このキャリッジHCには、インクジェット記録ヘッド85とインクタンク86とから構成されるヘッドカートリッジIJHが搭載されている。この図8に示すインクジェット記録装置IJRAは、一般的にシリアルプリンタと称される記録装置であり、キャリッジHCの矢印a,b方向に沿った主走査と、被記録媒体である記録シート87の副走査とを繰り返すことにより、記録シート87の全面に対する記録動作が行われる。
【0046】
記録ヘッド85は、必要に応じてキャリッジHCと共に図8中左方のホームポジッションに戻され、回復処理部(回復手段)88によって、インクの吐出状態を回復させるための回復処理がなされる。回復処理部88は、記録ヘッド85におけるインク吐出口の形成面を覆うキャップ88Aを備えており、そのキャップ88Aによってインク吐出口をキャッピングした後、そのキャップ88A内に負圧を導入することにより、インク吐出口から、画像の記録に寄与しないインクを吸引排出させる。このように、インク吐出口からインクを吸引排出することにより、例えば、インク吐出口や共通液室からノズル内に進入した空気をインクと共に吸引排出して、インクの吐出状態を回復させることができる。ノズル内のインクは、そのノズル内における空気の分だけ少なくなるため、そのノズル内の空気の存在は、前述したノズル内のインクの検出方法によって検出することができる。また、このような回復処理により、ノズル内の空気のみならず、ノズル内の増粘インクや異物もインクと共に吸引排出することができる。また、キャップ88に向かってインク吐出口からインクを吐出することによって、つまり画像の記録に寄与しないインクをインク吐出口から吐出(以下、「予備吐出」ともいう)することによって、インクの吐出状態を回復させることもできる。このように、回復処理部88において、画像の記録に寄与しないインクを吸引排出したり予備吐出することによって、回復処理が実施される。
【0047】
キャップ88A内に負圧を導入する手段としては、チューブポンプやピストンポンプなどのポンプを用いることができる。また、インク吐出口から吸引排出されたインクなどは、廃インクタンクに排出する。
【0048】
図10は、図8に示した記録装置の記録制御を実行するための制御部の要部の構成を示すブロック図である。
【0049】
図10において、1000は制御回路、1100は記録信号を入力するインターフェースであり、インターフェース1100は、記録装置IJRAの外部に接続されるホスト機器等から転送されるデータの受信を行う。1001はMPU、1002はMPU1001が実行する制御プログラムを格納するプログラムROM、1003は各種データ(上記の記録信号やヘッドに供給される記録データ等)を保存しておくダイナミック型のRAMである。1004は、ヘッドカートリッジIJHに対する記録データの供給制御を行うゲートアレイであり、インターフェース1100、MPU1001、RAM1003の間のデータ転送制御も行う。1009は、ヘッドカートリッジIJHを搭載したキャリッジHC(図8)を走査するためのキャリアモータであり、図8中の駆動モータ81に相当する。1008は、被記録媒体である記録紙87を搬送するための搬送モータである。また、1006、1007は、それぞれ搬送モータ1008、キャリアモータ1009を駆動するためのモータドライバである。
【0050】
1117は、図1,図2に示す端子117に接続される信号線であり、その端子117を介して、インクジェット記録ヘッド用基板100の検出電極118と電気的に接続される。インクの検出時には、インク量に応じた電圧変化が、端子117から信号線1117を介して装置本体の制御回路1000へ入力される。1012は、記録素子であるヒータ101を駆動するためのイネーブル信号、素子基板100上のロジック回路に入力するクロック信号、およびラッチ信号等を含む、種々の信号を出力するための信号線である。また、1016は、不図示の電源部よりヘッドカートリッジIJHに対して、記録素子としてのヒータ101を駆動するための駆動電力を供給する信号線である。1017は、ヘッドカートリッジIJHに搭載される記録ヘッド用素子基板100のロジック回路に対して、電力を供給するための信号線である。
【0051】
このような制御部の構成において、任意のタイミングでヒータ101の駆動を行うとともに、信号線1117と端子117を介して、素子基板100上の検出電極118によって得られる検出信号を入力して、それをモニタすることにより、ノズル内のインクの有無を検出することができる。なお、このようなインクの有無の検出を行うタイミングについては、例えば、被記録媒体に対して記録動作を行っていない時に、各ノズル毎の駆動を順次行うことにより、各ノズル毎のインクの有無を検出することができる。一般に、インクジェット記録装置においては、インクジェット記録ヘッドの吐出状態を回復させるために、予備的にインクを吐出させる予備吐出動作、つまり画像の記録に寄与しないインクを記録ヘッドから吐出させる動作を行うことが知られており、この予備吐出動作を利用することにより、各ノズルのインクの有無に関する状態を個々に検出することができる。もちろん、記録動作中にインクの検出を行うこともできる。
【0052】
検出電極118によって得られる信号のモニタについては、制御回路1000上に設けた制御手段であるMPU1001によって行うことができる。制御回路1000は、検出電極118によって得られるインクの検出信号をA/D変換してから、インクの有無を判定する。その際、インクの検出信号としての電圧波形を瞬間的に積分した値を判定対象としたり、インクの検出信号の特定タイミングにおける瞬間的な電圧値を判定対象とすることができる。インクの検出信号の扱いについては、特に限定されない。また、制御回路1000は、このような検出結果の判定と共に、インクの検出タイミングを制御する。なお、駆動したヒータ101と、検出電極118の電位の変化とを対応付けることにより、配列されたノズルのそれぞれについてインクの有無を検出して、インクが無くなってインクの吐出が行えない状態が発生しているノズル、あるいは、そのインク不吐出の可能性があるノズルを特定することができる。
【0053】
本例のインクジェット記録ヘッド用基板の場合は、耐キャビテーション膜205をヒータ101に対応させて分離していることにより、隣接するノズルの影響を受けることなく、インクの有無に応じたノズル毎の電位変化を確実に検出することができる。また、検出電極118を全ノズルに対して共通に用いて、その検出電極118からの検出信号を各ノズルの駆動タイミングに対応付けることにより、複数のノズルの各々におけるインクの有無を1つの検出電極118からの検出信号によって検出することができる。また、インクの検出信号の信号源として、ヒーター101そのものを用いることにより、各ノズル単位のインクの有無の検出は、シフトレジスタ等を構成すべく従来より記録ヘッドに設けられているロジック回路を用いて行なうことができ、構造を複雑化することなく、非常に簡易な構成でインクの有無の検出を行うことが可能となる。
【0054】
また、ノズルの駆動方式としては種々の方式を採用することができ、その駆動方式に応じて、検出電極118からの検出信号を駆動ノズルに対応付けることにより、駆動ノズル毎におけるインクの有無を検出することができる。ノズルの駆動方式としては、一般に知られているブロック駆動方式、つまりノズルを複数ずつのブロック単位で駆動する方式も採用することができる。その場合には、1つの検出電極118からの検出信号によって、ブロック単位毎に、ノズルにおけるインクの有無を検出することになる。また、耐キャビテーション膜205は、所定数のノズルの間においては分離せずに設けてもよく、例えば、ノズルをブロック駆動する場合には、同じブロック内の複数のノズル、または異なるブロック内における所定数ずつのノズルに関しては、耐キャビテーション膜205を分離せずに設けてもよい。また、検出電極118は、基板100上に構成される複数のノズルの全てに対して共通するように1つ設ける他、所定数ずつのノズルに対応するように複数設けてもよい。
【0055】
また、基板100と天板314は、記録素子毎あるいは複数の記録素子毎にノズルを形成するものであればよい。また、インクジェット記録装置は、インクの検出信号に応じて記録動作を制限する等、そのインク検出信号を記録動作の制御に利用することができる。
【0056】
図12から図15は、ノズルからインクを吐出する記録動作と同時に、ノズル内のインクを検出する場合の説明図である。
【0057】
図12は、ヒータ101に入力される入力信号であり、本例の場合は、ノズルからインクを吐出するためにヒータ101に印加される駆動信号である。その入力信号SAの印加開始時点をt0、印加時間(パルス間隔)をPw、印加電圧をV0とする。図13は、入力信号SAが印加されたときに、ヒータ101上のインク中に生じた泡の大きさの変化を表し、印加開始時点t0から若干の時間だけ経過した発泡開始時点Tdにおいて、発泡が開始する。この泡の発泡エネルギーによって、ノズルからインクが吐出される。図14(a)は、ノズル内のヒータ101上における発泡開始時点Tdにおける泡Z、図14(b)は図13中のTA時点付近における泡Z、図14(c)は図13中の発泡終期時点TBにおける泡Zのそれぞれの大きさを模式的に示しており、各時点における泡Zの相対的な関係が図から理解できる。図15は、検出電極118の電位の変化を表し、その電位の変化は、前述したようにノズル内のインクを検出するための検出信号SBとなる。その検出信号SBは、発泡開始時点Tdの前後において、つまりt<Tdの時期とt>Tdの時期において挙動が異なる。その理由は、ヒータ101上の泡の発生により、ヒータ101上の耐キャビテーション膜205とノズル内のインクとの接触状態が変化したためと考えられる。発泡開始時点Td後は、泡の成長に伴なって、耐キャビテーション膜205とインクとの接触面積が小さくなるため、検出信号SBがGND電位に接近する。その後、耐キャビテーション膜205上の全面を泡が覆うことによって、検出信号SBがGND電位になる。
【0058】
本例の場合、このような発泡現象に伴なう検出信号SBの出力波形の変化は、その検出信号SBに基づいてノズル内のインクを検出するときに、その検出精度の低下をもたらすおそれがある。特に、入力信号SAの印加開始時点t0から発泡開始時点Tdまでの時間、および発泡の大きさなどの発泡現象は、記録ヘッドの使用環境、作動条件、ヒータ101の抵抗のバラツキ、インクの種類などの様々な要因によって決定されるため、それらを予測して制御することが難しい。その影響により、検出信号SBの出力波形にバラツキが生じて、インクの検出精度の低下をもたらすことが予想される。インクの検出精度の向上を図る上においては、検出信号SBの出力波形を安定化させることが望ましい。
【0059】
図16から図19は、検出信号SBの安定化させるために、ノズルからインクを吐出させることなく、ノズル内のインクを検出す場合の説明図である。
【0060】
図16は、ヒータ101に入力される入力信号であり、本例の場合は、ノズルからインクを吐出させない程度にヒータ101に印加される信号である。その入力信号SAの印加開始時点をt0、印加時間(パルス間隔)をPw′、印加電圧をV0とする。その印加時間Pw′は、前述した図12の印加時間Pwよりも短く設定されている。図17は、入力信号SAが印加されたときに、ヒータ101上におけるインク中の泡の観察結果を表す。しかし、本例の場合は、入力信号SAの印加時間Pw′が短いために、気泡は発生しない。当然ながら、図18(a),(b),(c)のように、前述した図14(a),(b),(c)における発泡の観察時点Td,TA,TBと同じ時点においては、発泡が観察されない。そのため、インクはノズルから吐出されない。図19は、検出電極118の電位の変化を表し、その電位の変化は、前述したようにノズル内のインクを検出するための検出信号SBとなる。本例の場合は、ヒータ上に発泡が生じないため、検出信号SBは図19のように安定し、前述した図15のような波形の乱れが抑えられる。このように、検出信号SBの出力波形が安定することにより、インクの検出精度を向上させることができる。
【0061】
このように、インクを検出するために、インクを吐出させない程度の入力信号SAを印加させる時期は、インクを吐出させる記録動作時期とは異なる検出動作時期として設定することができる。また、ダブルパルス駆動と称させる駆動方式によってインクを吐出させる場合には、記録動作中においてもインクを検出することもできる。すなわち、ダブルパルス駆動方式の場合は、インクの吐出を安定化させるために、インクを吐出させない程度の入力信号としてのプレパルスをヒータ101に印加して、ヒータ101を予備加熱し、その後に、インクを吐出させる入力信号としてのメインパルスをヒータ101に印加する。したがって、インクを吐出させない予備加熱用のプレパルスを図16の入力信号SAとして利用することにより、インクを高精度に検出することができる。
【0062】
(第2の実施形態)
図20から図24は、本発明の第2の実施形態を説明するための図である。
【0063】
図20は、ヒータ101に入力される入力信号であり、本例の場合は、ノズルからインクを吐出するためにヒータ101に印加される駆動信号(以下、「インク吐出用パルス」ともいう)P1と、その後にヒータ101に印加されるインク検出信号補正用の信号(以下、「補正用パルス」ともいう)P2と、その後にヒータ101に印加されるインク検出用の信号(以下、「インク検出用パルス」ともいう)P3からなる。それぞれのパルスP1,P2,P3の電圧は一定の電圧V0であり、またt0は入力信号SAの印加開始時点である。インク吐出用パルスP1の印加時間(パルス間隔)Pwは、インクの吐出に必要なパルス幅Pthよりも大きく設定(Pw≧Pth)されていて、ヒータ101に印加されることにより、ノズルからインクを吐出させる。補正用パルスP2は、インク吐出用パルスP1の印加終了後、所定の時間Tr経過した時点t2からヒータ101に印加され、その印加時間(パルス間隔)Prは、イクの吐出に必要なパルス幅Pthよりも小さく設定されている。また、インク検出用パルスP3は、インク吐出用パルスP1の印加による発泡終了後、充分な時間(数百μsec〜数秒程度)が経過してからヒータ101に印加され、その印加時間(パルス間隔)Piは、インクの吐出に必要なパルス幅Pthよりも小さく設定されている。本例の場合、パルス幅Pr,Piは等しく設定されており、パルス幅Pr,Pi,Pthは、Pr=Pi≦Pthの関係にある。
【0064】
図21は、入力信号SAが印加されたときに、ヒータ101上のインク中に生じた泡の大きさの変化を表し、インク吐出用パルスP1の印加開始時点t0から若干の時間だけ経過した発泡開始時点Tdにおいて、発泡が開始する。この泡の発泡エネルギーによって、ノズルからインクが吐出される。パルスP1の後に印加されるパルスP2,P3は、このような発泡現象には影響を与えない。図22(a)は、ノズル内のヒータ101上における発泡開始時点Tdにおける泡Z、図22(b)は図21中のTA時点付近における泡Z、図22(c)は図21中の発泡終期時点TBにおける泡Zのそれぞれの大きさを現す。
【0065】
図23は、検出電極118の電位の変化を表し、その電位の変化は、前述したようにノズル内のインクを検出するための検出信号SBとなる。その検出信号SBは、発泡開始時点Tdの前後において、つまり、t<Tdの時期と、t>Tdの時期において挙動が異なる。その理由は、ヒータ101上の泡の発生により、ヒータ101上の耐キャビテーション膜205とノズル内のインクとの接触状態が変化したためと考えられる。発泡開始時点Td後は、泡の成長に伴なって、耐キャビテーション膜205とインクとの接触面積が小さくなるため、検出信号SBがGND電位に接近する。その後、耐キャビテーション膜205上の全面を泡が覆うことによって、検出信号SBがGND電位になる。インク吐出用パルスP1の印加終了後、所定の時間Tr経過した時点t2において、ヒータ101上の泡が充分に大きくなり、ヒータ101上の耐キャビテーション膜205とインクとは全く接しない状態となる。この時点t2において、検出電極118と耐キャビテーション膜205との間は、電気的に接続されていない。したがって、この時点t2において補正用パルスP2を印加することにより、その時点t2の検出信号SBrは、図23のように、ノズル内にインクがないときの出力波形となる。つまり、擬似的にインクのない状態とされたときの検出信号SBrが観測できることになる。
【0066】
検出信号SBrの波形は、検出系全体のバックグランドレベルでのノイズの影響、記録ヘッド毎における検出電極118と回路系のばらつきによる個体差の影響、および記録ヘッド毎における検出環境の影響などを受けるため、実際にインクがなくなったときの検出信号と同じである。このようにして、意図的に、インクのないの状態における検出信号を取得する。
【0067】
その後、充分な時間の経過をまって、インク検出用パルスP3を印加することにより、検出信号SBとして、インクの存在量に応じた不図示の波形が現れる。そのインク検出用パルスP3の印加時の出力信号SBから、インクの有無を検出することができる。その際、インクの有無の判定基準に、先の補正用パルスP2の印加によって得られた検出結果を反映させることにより、より高精度にノズル内のインクを検出するができる。
【0068】
図24は、このようなインクの検出方法を説明するためのフローチャートである。
【0069】
まず、インク吐出用パルスP1を印加し(ステップS1)、その後、Tr時間の経過をまってから補正用パルスP2を印加する(ステップS2、S3)。そして、検出信号SBrから、補正用の検出値Vrefを取得する(ステップS)。次に、インクの吐出および発泡現象が終了した後、充分な時間の経過をまってから、インク検出用パルスP3を印加し(ステップS5)、そのときの検出信号から、インクの検出値Voutを取得する(ステップS6)。その後、取得した検出値Vref,Voutの差ΔV(=Vout−Vref)を算出し(ステップS7)、その差ΔVと、ノズル内のインクの有無を判定するための判定基準値Vthとを比較する(ステップS8)。その比較の結果、差ΔVが判定基準値Vth以下であるときは、ノズル内にインクがあると判定し(ステップS9)、また差ΔVが判定基準値Vthよりも大きいときは、ノズル内にインクがないと判定する(ステップS10)。
【0070】
このように、補正用パルスP2の印加によって取得した検出値Vrefを用いて、それを判定基準値Vthに反映させることにより、ノズル内のインクを高精度に検出することができる。そして、このような検出結果に基づき、必要に応じて回復処理などを行うことができる。例えば、ノズル内にインクがないと判定されときは、記録ヘッド85に対して前述した回復処理をする。その回復処理として、例えば、前述したインクの吸引排出を行うことにより、確実にインクの吐出状態を回復させることができる。また、この回復処理においては、前述したインクの吸引排出による回復動作と共に、インクの予備吐出による回復動作をしてもよい。その場合には、インクの予備吐出によってインクの吐出状態を検出し、吐出不良のノズルが回復するまで充分に回復処理を行うこともできる。また、インク検出用パルスP3を再度印加して、インクを吐出させることなくインクを再検出することもできる。このような回復処理は、前述したように、キャリッジHCをホームポジションに戻すことにより実施することができる。また、回復処理の結果、およびインク不吐出の検出結果は、記録装置において表示したり、ホスト装置に通知してもよい。
【0071】
また、本例の場合には、検出値Vref,Voutの差ΔVをインクの有無の判定に用いた。しかし、検出値Vrefの利用方法は制限を受けるものではない。要は、補正用パルスP2の印加によって検出値Vrefを取得し、その検出値Vrefをインクの有無の判定結果に反映させて判定精度を上げたり、その検出値Vrefをインクの存在量の検出結果に反映させて検出精度を上げることができればよく、その検出値Vrefの反映方法は特に限定されない。
【0072】
また、本例の場合には、インク検出用パルスP3の印加前に補正用パルスP2を印加したが、これに限定されるものではない。また、補正用パルスP2は、必ずしも検出用パルスP3毎に必要ではない。例えば、記録動作の開始直前に、補正用パルスを印加して補正用の検出値Vrefを取得しておき、その後に記録動作を開始してから、インク検出用パルスP3を印加してインクの検出結果を取得し、その検出結果に補正用の検出値Vrefを反映させることにより、インクの有無等の判断をするようにしてもよい。その場合、インク検出用パルスP3は、例えば、1ページ分の記録動作中において一時的に生じる非記録動作時期に印加してもよく、または前述したダブルパルス駆動による記録動作中に印加させるプレパルスを、インク検出用パルスP3として利用してもよい。
【0073】
このように、本例の場合は、擬似的にインクのない状態としたときの検出信号を取得することによって、実際にインクがなくなったときの検出信号、つまり、検出系全体のバックグランドレベルでのノイズの影響、記録ヘッド毎における検出電極118と回路系のばらつきによる個体差の影響、および記録ヘッド毎における検出環境の影響などを受けた検出信号を取得することができる。そして、その検出信号をインクの検出結果の判定基準に反映させることにより、インクの有無などの検出精度を上げることができる。
【0074】
(他の実施形態)
前述した実施形態では、図4のように、ヒータ101の駆動により電位が変化する部分Aと、検出電極118との位置関係において、検出電極118がドライバ102から離れた位置に配備されている。また、その図4の構成においては、保護膜405がほぼ均一に形成されている。本発明は、このような図4に示した構成に限られるものではなく、ヒータ101の駆動によってノズル内に電位変化をもたらす信号源となる部位に関しては、その構成を変更したものであってもよい。
【0075】
図5(a)は、図4に示す構成において、ヒータ101上の部分Eに位置する保護膜405の厚さを、保護膜405の他の部分よりも薄くした場合の構成例を示している。この図5(a)の構成によれば、保護膜405の厚さを薄くした部分Eの静電容量を大きくすることができ、結果的に、ノズル内のインクに伝わる電位変化を大きくして、検出電極118からの検出信号によるインクの検出感度を高めることができる。したがって、部分Eは、その静電容量が大きいために、インクの検出信号を発生させるための信号源F中において特に強い信号源となる。信号源Fは、ヒータ101におけるドライバー102寄りの部分と、配線203と、ドライバ102上の一部配線(ドライバ102内のスイッチとして作用する部分からヒータ101側の部分)と、を含み、電圧変化領域を構成する。これらの結果、ノズル内における部分Eと検出電極118との間の部分Bに、インクがあるか否かを確実に検出することができる。
【0076】
また、図5(b)は、ヒータ101上の部分Eに位置する保護膜405の厚さを、保護膜405の他の部分よりも薄くするとともに、検出電極118をドライバ102の上方に配置した構成を示している。なお、部分Eにおける保護膜405の厚さは、図5(a)の場合に比較して、さらに薄くされている。この図5(b)の構成によれば、ヒータ101上の部分Eにおける保護層405を薄くすることにより、その部分Eにおける静電容量は、ヒータ101とドライバ102との間の配線203部分における静電容量よりも大きくすることができる。図5(b)中のGは、配線203部分によって成る信号源である。また、検出電極118をドライバ102上に配置して、検出電極118を部分Eに近づけることにより、それらの間の局所的な部分Bにおけるインクの有無を検出することができる。
【0077】
また、図6は、ヒータ101上の部分Eの保護膜405を薄くした場合において、さらなる他の構成例を示すものである。この図6においては、保護膜405を保護膜405a、405bの2層で構成するとともに、ヒータ101上の耐キャビテーション膜205を保護膜405aの上に形成し、さらに、保護膜405aと405bの比誘電率を異ならせている。詳細には、保護膜405aを保護膜405bよりも誘電率が高い部材とした。このように、ヒータ101上の保護膜405aが薄くかつ高い誘電率となることにより、部分Eがより強い信号源となって、検出感度をさらに高めることが可能となる。
【0078】
以上のように、ヒータ上部の保護膜を薄くしたり、さらに、その部分の保護膜の誘電率を高くすることにより、ヒーター上の保護膜のエネルギー伝達効率をあげることができる。このような構成により、ヒータ部分が信号源として大きく働くため、必然的に、信号源となる位置をヒータ上の特定の位置に限定することができる。さらには、ヒータ上部を除く他の部分を信号源として作用しにくくして、インク検出の際に、その誤検出を招くノイズの影響を小さくすることができ、結果として、インクの検出感度を高めて精度良くインクの有無を検出することが可能となる。また、上記のように、信号源となる位置を限定することにより、検出電極をドライバ上などにフレキシブルに配置することも可能となる。
【0079】
なお、上述した実施形態においては、記録素子として発熱体を用いてインクを吐出するバブルジェット記録方式を例に説明した。しかし、記録素子を駆動した場合に発生する電圧変化をインクを介して検出することは、他の記録方式においても可能である。したがって、本発明は、バブルジェット記録方式に限らず、他の記録方式にも広く適用することができる。例えば、記録素子としてピエゾ素子を用いる記録方式において、インクを検出するときに、インクを吐出させない程度のインク検出用の駆動信号をピエゾ素子に供給することにより、インクの検出精度を上げることができる。すなわち、インクを検出するときに、仮に、インクを吐出させるインク吐出用の駆動信号をピエゾ素子に供給した場合には、ノズル内の大きな容積変化、およびインク吐出口におけるインクメニスカスの大きな変位が生じるため、それらの影響によってインクの検出信号が不安定となって、インクの検出精度が悪化するおそれがある。しかし、本発明のように、インクを検出するときに、インクを吐出させない程度のインク検出用の駆動信号をピエゾ素子に供給することにより、インクの検出信号を安定化させて、インクの検出精度を上げることができる。このように、本発明は、インクの安定した環境下に保ったまま、種々の記録素子の駆動信号を駆動源として、インクを高精度に検出することができる。したがって、本発明は、種々の記録素子を備えた記録ヘッドに対して、広く適用することができる。
【0080】
また、上述した構成においては、インクジェット記録ヘッド用基板として、ヒータ上部に、気泡が収縮する消泡時の衝撃を抑えるための耐キャビテーション膜を形成した例に挙げて説明した。しかし、導電性を有するインクを用いるのであれば、耐キャビテーション膜が無い場合においても、本発明の検出の原理を適用することが可能である。
【0081】
(その他)
なお、本発明は、特にインクジェット記録方式の中でも、インク吐出を行わせるために利用されるエネルギとして熱エネルギを発生する手段(例えば電気熱変換体やレーザ光等)を備え、前記熱エネルギによりインクの状態変化を生起させる方式の記録ヘッド、記録装置において優れた効果をもたらすものである。かかる方式によれば記録の高密度化,高精細化が達成できるからである。
【0082】
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書,同第4740796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式は所謂オンデマンド型,コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を越える急速な温度上昇を与える少なくとも1つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に一対一で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長,収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも1つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書,同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた記録を行うことができる。
【0083】
記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口,液路,電気熱変換体の組合せ構成(直線状液流路または直角液流路)の他に熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4558333号明細書,米国特許第4459600号明細書を用いた構成も本発明に含まれるものである。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59−123670号公報や熱エネルギの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59−138461号公報に基いた構成としても本発明の効果は有効である。すなわち、記録ヘッドの形態がどのようなものであっても、本発明によれば記録を確実に効率よく行うことができるようになるからである。
【0084】
さらに、記録装置が記録できる記録媒体の最大幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録ヘッドに対しても本発明は有効に適用できる。そのような記録ヘッドとしては、複数記録ヘッドの組合せによってその長さを満たす構成や、一体的に形成された1個の記録ヘッドとしての構成のいずれでもよい。
【0085】
加えて、上例のようなシリアルタイプのものでも、装置本体に固定された記録ヘッド、あるいは装置本体に装着されることで装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッド、あるいは記録ヘッド自体に一体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。
【0086】
また、本発明の記録装置の構成として、記録ヘッドの吐出回復手段、予備的な補助手段等を付加することは本発明の効果を一層安定できるので、好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加圧或は吸引手段、電気熱変換体或はこれとは別の加熱素子或はこれらの組み合わせを用いて加熱を行う予備加熱手段、記録とは別の吐出を行なう予備吐出手段を挙げることができる。
【0087】
また、搭載される記録ヘッドの種類ないし個数についても、例えば単色のインクに対応して1個のみが設けられたものの他、記録色や濃度を異にする複数のインクに対応して複数個数設けられるものであってもよい。すなわち、例えば記録装置の記録モードとしては黒色等の主流色のみの記録モードだけではなく、記録ヘッドを一体的に構成するか複数個の組み合わせによるかいずれでもよいが、異なる色の複色カラー、または混色によるフルカラーの各記録モードの少なくとも一つを備えた装置にも本発明は極めて有効である。
【0088】
さらに加えて、以上説明した本発明実施例においては、インクを液体として説明しているが、室温やそれ以下で固化するインクであって、室温で軟化もしくは液化するものを用いてもよく、あるいはインクジェット方式ではインク自体を30℃以上70℃以下の範囲内で温度調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあるように温度制御するものが一般的であるから、使用記録信号付与時にインクが液状をなすものを用いてもよい。加えて、熱エネルギによる昇温を、インクの固形状態から液体状態への状態変化のエネルギとして使用せしめることで積極的に防止するため、またはインクの蒸発を防止するため、放置状態で固化し加熱によって液化するインクを用いてもよい。いずれにしても熱エネルギの記録信号に応じた付与によってインクが液化し、液状インクが吐出されるものや、記録媒体に到達する時点ではすでに固化し始めるもの等のような、熱エネルギの付与によって初めて液化する性質のインクを使用する場合も本発明は適用可能である。このような場合のインクは、特開昭54−56847号公報あるいは特開昭60−71260号公報に記載されるような、多孔質シート凹部または貫通孔に液状又は固形物として保持された状態で、電気熱変換体に対して対向するような形態としてもよい。本発明においては、上述した各インクに対して最も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
【0089】
さらに加えて、本発明インクジェット記録装置の形態としては、コンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末として用いられるものの他、リーダ等と組合せた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を採るもの等であってもよい。
【0090】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、インクを吐出させない程度のインク検出用の駆動信号を記録ヘッドの記録素子に供給しれ、そのインク検出用の駆動信号を記録ヘッド内のインクを介して検出したときの検出信号に基づいて、記録ヘッド内のインクを検出することにより、インクを安定した環境下に保ったまま、きわめて簡単な構成によって記録ヘッド内のインクを高精度に検出することができ、しかも種々の記録方式に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態において用いるインクジェット記録ヘッドの電気的な概略構成を説明するための平面図である。
【図2】図1のインクジェット記録ヘッド用基板の要部の概略構成を示す平面図である。
【図3】図1のインクジェット記録ヘッド用基板に天板を接合してノズルを構成した状態を示す概略斜視図である。
【図4】図3のa−a線に沿うノズル周辺部分の断面図である。
【図5】(a),(b)は、本発明の他の実施形態において用いるインクジェット記録ヘッドのノズル周辺の断面図である。
【図6】本発明のさらに他の実施形態において用いるインクジェット記録ヘッドのノズル周辺の断面図である。
【図7】本発明の実施形態におけるインクジェット記録ヘッドのインク検出動作を説明するためのタイムチャートである。
【図8】本発明を適用可能なインクジェット記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【図9】従来のインクジェット記録ヘッド用素子基板の電気的な概略構成を示す平面図である。
【図10】図8に示すインクジェット記録装置の制御システムを示すブロック図である。
【図11】本発明の実施形態に用いるインクジェット記録ヘッドに形成されるインクの検出回路の概念図である。
【図12】本発明の第1の実施形態において、ヒータに印加可能なインク吐出用の入力信号の説明図である。
【図13】図12の入力信号が印加されたときに生じる泡の変化の説明図である。
【図14】(a),(b),(c)は、図13中の異なる時点における泡の大きさの説明図である。
【図15】図12の入力信号が印加されたときの検出信号の説明図である。
【図16】本発明の第1の実施形態において、ヒータに印加する入力信号の説明図である。
【図17】図16の入力信号が印加されたときに生じる泡の変化の説明図である。
【図18】(a),(b),(c)は、図17中の異なる時点における泡の大きさの説明図である。
【図19】図16の入力信号が印加されたときの検出信号の説明図である。
【図20】本発明の第2の実施形態において、ヒータに印加する入力信号の説明図である。
【図21】図20の入力信号が印加されたときに生じる泡の変化の説明図である。
【図22】(a),(b),(c)は、図21中の異なる時点における泡の大きさの説明図である。
【図23】図20の入力信号が印加されたときの検出信号の説明図である。
【図24】本発明の第2の実施形態におけるインクの検出方法を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
100 インクジェット記録ヘッド用基板(素子基板)
101 記録素子(発熱体)
102 駆動素子(ドライバ)
103 ラッチ回路
104 シフトレジスタ
116 交流的結合部
117 端子
118 検出用電極
203 配線部
205 耐キャビテーション膜
310 吐出口
311 共通液室
312 ノズル壁
314 天板
405 保護膜(絶縁性保護膜)
408 ノズル部
1000 制御回路

Claims (10)

  1. インク吐出用駆動信号が供給されたときの記録素子の発生エネルギーによりインク中に気泡を発生させてインクを吐出する記録ヘッドを用いて、被記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、
    前記記録ヘッドは、前記記録素子とインクとの間に位置する金属部材と、前記記録素子に供給される駆動信号が前記記録ヘッド内のインクを介して伝達される検出電極と、を備え、
    前記インクジェット記録装置は、
    前記記録素子の発生エネルギーによって前記金属部材上のインク中に発生する気泡の発泡開始から消泡までの間に、インク中に気泡を発生させない程度の補正用駆動信号を前記記録素子に供給し、前記記録素子の発生エネルギーによってインク中に発生した気泡が消泡した後に、インク中に気泡を発生させない程度のインク検出用駆動信号を前記記録素子に供給する供給手段と、
    前記検出電極に伝達される前記補正用駆動信号を第1の検出信号として検出し、前記検出電極に伝達される前記インク検出用駆動信号を第2の検出信号として検出する検出手段と、
    前記第1の検出信号と前記第2の検出信号との差に基づいて、前記記録ヘッド内のインクの有無を判定する判定手段と、
    を備え
    前記判定手段は、前記第1の検出信号と前記第2の検出信号との差と、基準値と、を比較し、前記第1の検出信号と前記第2の検出信号との差が前記基準値よりも大きい場合はインク無しと判定し、前記第1の検出信号と前記第2の検出信号との差が前記基準値以下の場合はインク有りと判定することを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記金属部材は、インク中の気泡の消泡時に発生するキャビテーションの衝撃を抑える耐キャビテーション膜であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記記録ヘッドは複数のノズルを備え、
    前記複数のノズルのそれぞれに、前記記録素子、前記検出電極、および前記金属部材が備わることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記記録ヘッドはインクジェット記録ヘッド用基板を備え、
    前記インクジェット記録ヘッド用基板は、前記記録素子と、前記記録素子を駆動するための駆動素子と、前記検出電極と、前記金属部材と、を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  5. 前記インクジェット記録ヘッド用基板上に絶縁性の保護膜が形成され、
    前記検出電極および前記金属部材は、前記保護膜を介して前記インクジェット記録ヘッド用基板上に位置することを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
  6. 前記保護膜における前記記録素子上であって前記金属部材の下の部分は、前記検出電極の下の部分よりも単位面積当たりの静電容量が大きく設定されることを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
  7. 前記記録ヘッドは、前記記録素子がそれぞれに備わる複数のノズルを備え、
    前記インクジェット記録ヘッド用基板上に、前記複数のノズルにおける複数の前記記録素子を選択的に駆動するための制御回路が構成されていることを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  8. 前記記録ヘッドは、前記記録素子がそれぞれに備わる複数のノズルと、前記ノズルの複数に連通する共通液室とを備え、
    前記検出電極の少なくとも一部は前記共通液室内に位置することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  9. 前記補正用駆動信号と前記インク検出用駆動信号のパルス幅は、インクの吐出に必要な駆動信号のパルス幅よりも小さいことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  10. インク吐出用駆動信号が供給されたときの記録素子の発生エネルギーによりインク中に気泡を発生させてインクを吐出する記録ヘッドを用いて、被記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、前記記録ヘッド内のインクを検出する検出方法であって、
    前記記録ヘッドは、前記記録素子とインクとの間に位置する金属部材と、前記記録素子に供給される駆動信号が前記記録ヘッド内のインクを介して伝達される検出電極と、を備え、
    前記検出方法は、
    前記記録素子の発生エネルギーによって前記金属部材上のインク中に発生する気泡の発泡開始から消泡までの間に、インク中に気泡を発生させない程度の補正用駆動信号を前記記録素子に供給する工程と、
    前記検出電極に伝達される前記補正用駆動信号を第1の検出信号として検出する工程と、
    前記記録素子の発生エネルギーによってインク中に発生した気泡が消泡した後に、インク中に気泡を発生させない程度のインク検出用駆動信号を前記記録素子に供給する工程と、
    前記検出電極に伝達される前記インク検出用駆動信号を第2の検出信号として検出する工程と、
    前記第1の検出信号と前記第2の検出信号との差と、基準値と、を比較し、前記第1の検出信号と前記第2の検出信号との差が前記基準値よりも大きい場合はインク無しと判定し、前記第1の検出信号と前記第2の検出信号との差が前記基準値以下の場合はインク有りと判定する工程と、
    を含むことを特徴とするインクジェット記録ヘッド内のインクの検出方法。
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