JP4457171B1 - 切断補助装置および切断工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】切断作業がスムーズに行われつつ、切断対象物に重ね合わされた非切断対象物に対する切断刃の刃先の食い込みが確実に防止される、切断補助装置および切断補助装置を備えた切断工具を提供する。
【解決手段】切断補助装置10は、切断刃12の刃先78が外方に突出されるようにして切断刃12が取り付けられる取付部材18と、刃先78を切断対象物に対して近接・離間させる方向に回動可能に取付部材18を支持すると共に、作業者に把持される把持部30を備えた本体部材16と、取付部材18と本体部材16とを連結して、取付部材18に対して、刃先78を切断対象物に押し当てる押し当て方向に付勢力を及ぼす付勢部材20と、付勢部材20による押し当て方向への付勢力を調整する調整部材22と、を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、切断刃を備えた切断工具に設けられて、切断刃で切断対象物を切断する厚さ(以下、切断厚さともいう。)を所望の厚さに調整して切断作業を補助する、切断補助装置およびそれを備えた切断工具に関する。
従来、カッターナイフやフライス等の切断刃を備えた切断工具を用いて、切断対象物を切断する際には、切断刃の刃先が切断対象物を貫通して、切断対象物と重ね合わされた非切断対象物に食い込むことにより、非切断対象物が切断刃で傷付けられることがある。なお、切断対象物とは、例えば、用紙や布、薄板、建物の壁面に貼られた壁紙、床面に敷かれたカーペット等の切断刃により切断可能な各種の構造物をいい、非切断対象物とは、上述の切断対象物の下に敷かれる、別の用紙や布、薄板、建物壁部、建物床部等の切断刃により切断されることを目的としない各種の構造物をいう。
この問題に対処するため、特許文献1や特許文献2には、切断刃の刃先が非切断対象物に食い込むことを防止するようにした切断補助装置が提案されている。
具体的に、特許文献1に記載の切断補助装置では、切断刃を保持する保持部材から切断刃の刃先よりも外方に延び出すアームを備え、アームの先端部分において刃先と対向する位置に下敷きこてが設けられている。そして、建物壁部の壁紙等を切断刃で切断する際に、下敷きこてが壁紙と壁部との間に差し込まれて刃先を受けることによって、刃先の壁部への食い込みが阻止される。
また、特許文献2に記載の切断補助装置では、切断刃の保持部材において切断対象物と対向する側に接地ガイドが設けられていると共に、切断刃の保持部材から突出する方向で当該切断刃と対向するようにして調整部材(ストッパ部)が変位可能に設けられている。目的とする切断厚さに基づいて、切断刃が接地ガイドから切断対象物に向かって所定量だけ突出する位置に保持されるように、切断刃が調整部材に当接して保持される。これにより、切断刃で切断対象物が切断される際に、接地ガイドが切断対象物に接地されると、切断厚さが規定されることとなり、刃先の非切断対象物への食い込みを防止しつつ、切断することが可能となる。
実登第3040865号公報 実登第3079339号公報
ところが、特許文献1に示されるように、下敷きこてを壁紙と壁部との間に差し込んで、切断工具を任意の方向に動かして切断作業を行う切断補助装置においては、下敷きこてで壁紙を壁面から引き剥がしつつ、切断工具を動かす必要があるため、切断工具に大きな負荷がかかって、切断作業が困難になったり、切断工具や切断補助装置、建物壁部等の耐久性が低下したりするおそれがあった。また、切断作業の際に、刃先が下敷きこてに当接すると、刃先の磨耗が進み、切断刃の劣化が早くなる問題があった。
一方、特許文献2に記載の切断補助装置においては、上述の如き下敷きこての採用による切断作業の困難性や切断刃の劣化はない。
しかしながら、切断対象物を接地ガイドで押さえ付けながら切断作業が行われることから、接地ガイドと切断対象物との摩擦に起因して、切断刃が切断方向にスムーズに引かれ難くなったり、切断対象物における切断部分以外の箇所に接地ガイドの移動痕が残ったりするおそれがあった。加えて、切断対象物の形状や切断対象物が配置される周りの環境等によっては、接地ガイドが他部材等に当接して切断工具の移動が制限されることがあり、その結果、切断対象物が目的の形状に切断され難い問題があった。
また、切断作業に際して、作業者が切断刃に加える力は作業者に応じて異なるものであるが、特許文献2に記載の切断補助装置では、この点に関して十分に考慮されていないため、たとえ刃先の突出量を高度に調整したとしても、切断刃や切断対象物の材質と作業者の力加減との関係によっては、刃先が非切断対象物に食い込むおそれがあった。
本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、切断作業がスムーズに行われつつ、切断対象物に重ね合わされた非切断対象物に対する切断刃の刃先の食い込みが確実に防止される、切断補助装置および切断工具を提供することにある。
かかる課題を解決するために為された請求項1に記載の発明は、(イ)切断刃の刃先が外方に突出されるようにして該切断刃が取り付けられる取付部材と、(ロ)前記刃先を切断対象物に対して近接・離間させる方向に回動可能に前記取付部材を支持すると共に、作業者に把持される把持部を備えた本体部材と、(ハ)前記取付部材と前記本体部材とを連結して、前記取付部材に対して、前記刃先を前記切断対象物に押し当てる押し当て方向に付勢力を及ぼす付勢部材と、(二)前記本体部材に運動可能に支持されて、前記付勢部材と前記取付部材とを連結することにより、前記付勢部材による前記押し当て方向への付勢力を調整するリンク部材と、を備える切断補助装置を特徴とする。
このような本発明の切断補助装置においては、作業者が本体部材の把持部を把持して、切断刃の刃先を切断対象物に押し当て、本体部材を任意の方向に移動させることで、切断対象物が切断刃により切断される。
ここで、把持部を備えた本体部材と切断刃の取付部材とは付勢部材を介して連結されており、刃先を切断対象物に向けて押し当てる作業者の力が、切断刃に直接に伝わらないようになっている。
これにより、刃先を切断対象物に押し当てる主たる力は、付勢部材の付勢力によるところとなり、この付勢力をリンク部材で調整することによって、刃先を切断対象物に押し当てる力、延いては切断刃で切断対象物を切断する厚さを所望の値に設定することが出来る。その結果、切断刃の刃先が、切断対象物を貫通して、切断対象物に重ね合わされた非切断対象物に達することが防止される。
また、本発明の切断補助装置では、特許文献1や特許文献2に示されるような下敷きこてや接地ガイド等を刃先の周囲に特別に設けて、刃先における取付部材からの突出量を制限しなくとも、刃先の非切断対象物への食い込みが防止される。
つまり、刃先の突出量の設定自由度が大きくされて、切断対象物の形状や厚さ、材質等に応じて、切断作業に最適な刃先の突出量が設定されるのであり、しかも、下敷きこてや接地ガイドを切断対象物等に当接させつつ切断することによって切断作業が困難になるおそれがない。
また、本発明では、リンク部材が、前記本体部材に運動可能に支持されて、前記付勢部材と前記取付部材とを連結することにより、付勢部材による前記押し当て方向への付勢力を調整する。
このような本発明によれば、取付部材がリンク部材を介して付勢部材に連結されることから、かかるリンク部材の形状や大きさ、リンク部材の本体部材における運動制限領域等の各種設計に基づいて、付勢部材による刃先の切断対象物への押し当て方向の付勢力を調整することが出来る。即ち、付勢部材の形状や大きさ、構造等の付勢部材そのものの設計とは別に、付勢力を調整することが可能となり、それによって、付勢力の調整自由度が大きくされて、切断厚さを高度に調整することが出来る。
それ故、本発明の切断補助装置によれば、切断作業がスムーズに行われると共に、刃先の非切断対象物への食い込みが確実に防止される。
また、前記切断補助装置に関する請求項2に記載の発明では、前記本体部材は、前記取付部材の回動中心軸の軸方向両側から該取付部材を挟むように対向して配置された一対の壁部からなり、前記付勢部材は、それら一対の壁部が対向する間に配置されることを特徴とする。
このような本発明によれば、取付部材や付勢部材が一対の壁部により外部から保護されて、作業者の手指等が取付部材や付勢部材に直接に触れることが抑制されることから、取付部材や付勢部材の動作が安定して確保されて、切断作業の安定化が図られる。
また、前記切断補助装置に関する請求項3に記載の発明では、前記付勢部材は、前記取付部材において前記回動中心軸を挟んで前記刃先が突出する側の部分と反対側の部分に連結されることを特徴とする。このような本発明によれば、取付部材の回動に際して、刃先が付勢部材に当接することが抑制され、取付部材の回動領域、延いては切断厚さの設定範囲が大きく確保されると共に、付勢部材の安定した動作の確保によって切断作業がスムーズに行われる。
なお、本発明では、好ましくは、請求項に記載の発明及び/又は請求項に記載の発明と組み合わされる。
つまり、前記切断補助装置に関する請求項に記載の発明では、前記リンク部材は、少なくとも一つの回動ピンを介して前記取付部材に対して相対的に回動可能に支持されることを特徴とする。
このような本発明によれば、例えば、切断刃で切断対象物を切断する際に、切断刃の切断対象物に対してなす角度が変化して、取付部材が不意に回動しても、リンク部材が取付部材と相対的に回動することによって、取付部材の回動による反力が、付勢部材に直ちに伝わらない。換言すれば、取付部材の不意な回動に伴う反力が、リンク部材の回動により吸収される。これにより、刃先を切断対象物に対して押し付ける付勢力をより安定して保つことが出来、切断厚さの精度が一層向上される。
また、前記切断補助装置に関する請求項に記載の発明では、前記付勢部材と前記取付部材は、何れも長尺状とされて、各長手方向が互いに略平行に延びる形態で前記本体部材において並列的に配置され、前記取付部材の前記刃先が突出する長手方向一方と反対側の長手方向他方の側における前記本体部材と前記リンク部材との少なくとも一方には、線部材が懸架された滑車が設けられて、かかる線部材を介して該付勢部材と該取付部材とが連結されることを特徴とする。
このような本発明によれば、滑車による力の作用方向の変化を利用して、付勢部材と取付部材とが各長手方向に略直交する方向で並列的に配置された形態で、付勢力を取付部材に及ぼすことが可能となる。それ故、本体部材における付勢部材及び取付部材の長手方向に略直交する方向の寸法が抑えられて、作業者の把持部がより握られ易い形状となり、切断作業がより簡単になる。
また、前記切断補助装置に関する請求項に記載の発明では、前記取付部材には、前記切断刃を伸縮自在に収容する収容溝部が設けられることを特徴とする。
このような本発明によれば、切断作業を行わない不使用時に、切断刃を取付部材から一々取り外すことなく、切断刃の刃先における取付部材からの突出が防止される。それによって、取り扱いの利便性や安全性が向上される。
さらに、上述の課題を解決するために為された請求項に記載の発明は、請求項1乃至の何れか一項に記載の切断補助装置と、前記切断補助装置の前記取付部材に取り付けられた切断刃と、を備える切断工具を特徴とする。
このような本発明の切断工具においては、上述の如き切断補助装置を備えていることから、切断作業がスムーズに行われつつ、切断対象物に重ね合わされた非切断対象物に対する切断刃の刃先の食い込みが確実に防止される。
本発明の一実施形態としての切断補助装置にカッターナイフを取り付けた切断工具において、切断補助装置の右壁部を取り外した状態を示す右側面図。 同切断補助装置において右壁部を取り外した状態を示す右側面図。 同切断補助装置の左側面図。 同切断補助装置の正面図。 同切断補助装置の背面図。 同切断補助装置の平面図。 同切断補助装置の底面図。
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1には、本発明の一実施形態としての切断補助装置10に対して、切断刃としてのカッターナイフ12を取り付けた切断工具(カッター)14が示されている。
切断補助装置10は、カッターナイフ12で図示しない用紙や建物壁部に張られた壁紙等の各種の切断対象物を切断する際に、切断厚さを所望の厚さに調整する切断補助機能を備えており、図2〜7にも示されるように、本体部材16や、本体部材16に回動可能に支持されてカッターナイフ12が取り付けられる取付部材18、取付部材18に対して回動方向一方向に付勢力を及ぼす付勢部材としての引張りコイルスプリング20、引張りコイルスプリング20による付勢力を調整する調整部材(ばね調整機構)22等を含んで構成されている。
詳細には、本体部材16は、左右一対の壁部24a,24bを備えている。左右の壁部24a,24bは、長尺の略平板形状を呈しており、周縁部分付近で周方向に所定距離を隔てて複数配置された円筒形状のスペーサ26を挟んで、板厚方向(図4,5中、左右又は図6,7中、上下)で相互に重ね合わされている。各スペーサ26には、左右何れか一方の壁部24を貫通して他方の壁部24に螺着されたネジ28が内挿されている。即ち、左右の壁部24a,24bは、複数のスペーサ26付きのネジ28を介して板厚方向に離隔して、相互に固定されている。
また、左右の壁部24a,24bは、長手方向一方から他方に向かって幅寸法が小さくなる先細り状とされている。これら左右の壁部24a,24bにおいて幅寸法の大きな長手方向一方の側が、把持部30として構成されている。把持部30は、切断作業が安定して行われること等を目的として、必要に応じて、適当な凹凸が設けられたり、表面にローレット加工が施されたりする。
取付部材18は、長尺の略矩形板状の底壁部分32と、底壁部分32の短手方向の一対の長尺状の端縁部分から、それぞれ板厚方向一方の外方(図4中、右)に立ち上がるように突出して、その突出先端部分が内側に折り曲げられた屈曲板状の側壁部分34,34とを備えている。即ち、取付部材18は、略矩形凹状の断面で長手方向に延びる板状部材とされており、底壁部分32と一対の側壁部分34,34とで画成された内側の矩形状の溝が、カッターナイフ12を収容する、収容溝部36とされている。
このような取付部材18は、本体部材16における一対の壁部24a,24bが対向する間に配されている。また、取付部材18は回動中心軸としての枢軸38を介して、本体部材16の左右の壁部24a,24bの何れか一方(本実施形態では左壁部24b)に回動可能に支持されている。
枢軸38は、略円柱形状を呈しており、一端が左壁部24bの長手方向略中央部分を貫通して該中央部分に回動可能に支持されていると共に、他端が取付部材18の底壁部分32の長手方向略中央部分に対して固設されている。
なお、枢軸38は、取付部材18に対して一体形成され、若しくは別体形成された後に固定される何れの構成も採用されるが、取付部材18の収容溝部36内に突出しないように設けられる。また、本実施形態では、取付部材18が本体部材16に対して枢軸38回りを回動した際に、少なくとも一つの回動位置で、取付部材18の長手方向一方(図1,2中、左)の端部が、一対の壁部24a,24bの下端部分において把持部30と長手方向反対側の先細り側の対向間から外方に向かって突出する形態をとるように、本体部材16や取付部材18の形状や大きさ、枢軸38の配置等が設計されている。
引張りコイルスプリング20は、図6にも示されるように、鋼線などを螺旋状に巻いた公知の弦巻ばねからなり、ハウジングケース40に収容されている。ハウジングケース40は、軸方向一方の開口が略円板状の底部で閉塞された略有底円筒形状を有しており、軸方向他方の開口部から引張りコイルスプリング20を軸方向に弾性変形可能に内挿している。なお、ハウジングケース40の周壁部の上側部分において引張りコイルスプリング20とケース40の軸直角方向で対向する位置には、ケース40及び引張りコイルスプリング20の軸方向に沿って長尺状の窓部43が穿設されており、この窓部43を通じて引張りコイルスプリング20がケース40外部から視認可能とされている。また、ハウジングケース40の周壁部の下端部分には、台座42が固設されている。
台座42は、ハウジングケース40の軸方向に沿って延びる長尺状の略矩形板状を呈し、ハウジングケース40の周壁部の下端部分に溶接やはんだ等で固定されている。また、台座42は、その長手方向が本体部材16の長手方向と略平行に延びる形態で、左右の壁部24a,24bの上端部分側で対向する間に配されると共に、台座42の短手方向の一対の長尺状の端縁部分44a,44bが、それぞれ右壁部24aと左壁部24bとに重ね合わされて、複数のネジ46を用いて左右の壁部24a,24bに螺着固定されている。
これにより、ハウジングケース40に内挿された引張りコイルスプリング20が、本体部材16の長手方向と略平行に延び、且つ本体部材16の短手方向(図1中、上下)で取付部材18と並列的に位置して、本体部材16に支持されている。
さらに、左右の壁部24a,24bにおける把持部30側の対向間には、リンク部材48が配設されている。このリンク部材48は、第一リンク50、第二リンク52及び第三リンク54を備えている。
第一リンク50と第二リンク52は、略矩形乃至は楕円形の長尺板状を呈しており、各長手方向一方の側が板厚方向(図4,5中、左右又は図6,7中、上下)に対向位置して、第一連結ピン56を介して相対的に回動可能に連結されている。また、第一リンク50の長手方向他方の側が、取付部材18における枢軸38を挟んだ長手方向他方の端部(後述するカッターナイフ12の刃先78が突出する側の端部と枢軸38を挟んで反対側の端部)に重ね合わされて、溶接やはんだ等で固定されている。
第三リンク54は、略V字形の板状を呈しており、V字の拡開側の一対の端部のうちの一方の端部が、第二リンク52の長手方向他方の側と板厚方向に対向位置して、第二連結ピン58を介して相対的に回動可能に連結されている。また、第三リンク54におけるV字の二辺が交差する頂点部分(V字の縮小側の端部)が、本体部材16の左右何れか一方の壁部(本実施形態では左壁部24b)に対して、第三連結ピン60を介して回動可能に支持されている。
従って、リンク部材48は、第三連結ピン60を枢軸として本体部材16に回動可能に支持されて、取付部材18の枢軸38回りの回動に連動して第三連結ピン60回りに回動することが可能とされている。
具体的には、取付部材18が、枢軸38を中心として図1,2中、右回り(または左回り)に回動すると、第一リンク50が、取付部材18と一体的に枢軸38回りを回動すると共に、第一リンク50とピン結合された第二リンク52が、第一リンク50延いては取付部材18と相対的に回動する。
そして、第二リンク52が、第一リンク50と所定量だけ相対的に回動した後に、第二リンク52の第三リンク52を介しての本体部材16への支持により、かかる回動が制限されて、第一リンク50および取付部材18と共に枢軸38回りを回動する。
さらに、第二リンク52とピン結合された第三リンク54が、第二リンク52と相対的に回動すると共に、第二リンク52の枢軸38回りの回動に基づいて、第三連結ピン60を中心として、取付部材18と同様に、図1,2中、右回り(または左回り)に回動する。
また、第三リンク54におけるV字の拡開側の一対の端部のうちの他方の端部には、滑車62が回動可能に支持されている。更に、リンク部材48と引張りコイルスプリング20との間における本体部材16の左右何れか一方の壁部24(本実施形態では左壁部24b)にも、固設された板部材64を介して滑車66が回動可能に支持されている。つまり、第三リンク54に設けられた滑車62は、第三連結ピン60回りに回動可能とされ、且つ、自身の枢軸を介してリンク部材48に対して回動可能とされている一方、本体部材16に設けられた滑車66は、リンク部材48と連動することなく、自身の枢軸回りで本体部材16に対して回動可能とされている。
さらに、両滑車62,66には、線部材としての鋼線68が掛け渡されており、鋼線68の一方の端部が、引張りコイルスプリング20の一方の端部に固定されていると共に、鋼線68の他方の端部が、第二リンク52の長手方向他方の端部に固定されている。
更にまた、ハウジングケース40の周壁部の上端側には、軸方向に長孔形状の調整孔70が穿設され、調整孔70に軸部72が挿通されている。軸部72の軸方向(図1〜3中、上下)一方の端部がハウジングケース40の上方に突設されていると共に、軸方向他方の端部がハウジングケース40内で引張りコイルスプリング20の他方の端部と固定されている。また、固定リング74が、軸部72の軸方向中間部分に設けられたネジ溝を介して外嵌され、軸部72との相対的な回動による軸方向の捻じ込み作用で、軸部72をハウジングケース40の周壁部に対して押さえ付け支持させている。
引張りコイルスプリング20の一方の端部が、ハウジングケース40から、複数の滑車62,66に懸架された鋼線68とリンク部材48とを介して、リンク部材48の第三連結ピン60回りを回動方向他方向(図1,2中、右回り)に延びて、取付部材18の長手方向他方の端部に連結されている。また、引張りコイルスプリング20は、本体部材16の長手方向と略平行に延びる長尺状とされて、引張りコイルスプリング20の他方の端部が軸部72や固定リング74、ハウジングケース40、台座42を介して本体部材16に支持されている。
これにより、引張りコイルスプリング20が、取付部材18の長手方向他方の端部と本体部材16とを弾性的に連結しており、それら両部材16,18の間で引張荷重が及ぼされた状態に保持されていることによって、取付部材18を枢軸38回りの回動方向一方向(図1,2中、左回り)に付勢している。
また、軸部72のハウジングケース40に対する固定位置を、調整孔70を通じて軸方向で適宜に変更することで、引張りコイルスプリング20の長さが変更され、コイルスプリング20にかかる引張荷重が調整可能とされている。その結果、取付部材18に及ぼす付勢力、延いては後述のカッター12で切断対象物を切断する厚さ(切断厚さ)が調整される。
特に本実施形態では、筒状を有する硬質の当接部材76が、鋼線68の第二リンク52に固定された端部付近に外嵌されると共に、第二リンク52に溶接やはんだ等で固定されている。そして、当接部材76が本体部材16におけるスペーサ26の一つと当接されることによって、第三リンク54における第三連結ピン60回りの回動方向一方向の変位が制限されると共に、第一及び第二リンク50,52を介して、取付部材18における枢軸38回りの回動方向一方向の変位が制限される。つまり、取付部材18における枢軸38回りの回動方向一方向の変位を制限する(回動端を規定する)機構が、当接部材76とスペーサ26との当接によるストッパ機構を含んで構成されている。
また、本実施形態では、引張りコイルスプリング20が、取付部材18と所定量だけ相対的に回動する第二リンク52を介して、取付部材18に連結されていることから、取付部材18の回動に伴う反力が、引張りコイルスプリング20に直ちに伝わらないようになっている。換言すると、引張りコイルスプリング20による付勢力が、取付部材18に対して相対変位可能なリンク部材48(第二リンク52)を介して取付部材18に及ぼされることで、その変位分だけ取付部材18に直接に伝わらないように調整されている。
要するに、引張りコイルスプリング20による付勢力を調整する調整部材(ばね調整機構)22が、リンク部材48や調整孔70、軸部72、固定リング74を含んで構成されている。
このような構成の切断補助装置10においては、カッターナイフ12が、取付部材18の長手方向一方の端部から本体部材16の左右の壁部24a,24bの対向間を通じて本体部材16の外方に刃先78が突出されるようにして、取り付けられる。なお、上述の説明からも明らかなように、引張りコイルスプリング20は、一対の壁部24a,24bの対向間において枢軸38と直交する幅方向一方向(図1,2中、上下)で該枢軸38を挟んで刃先78が突出する側の領域と反対の領域に位置して、それら一対の壁部24a,24bに支持される。
カッターナイフ12は、その切断刃本体80が取付部材18に直接に取り付けられても良いが、本実施形態では、切断刃本体80を軸方向に伸縮移動させることが可能な保持部材82を備えた市販のカッターナイフが採用されており、保持部材82が取付部材18の収容溝部36における長手方向一方の開口側から内挿されて、取付部材18に嵌め付け固定されている。それによって、切断刃本体80が、取付部材18に対して軸方向に変位可能に支持されて、また、刃先78を保持部材82の内側に収めた状態で取付部材18に支持されることも可能とされている。
これらカッターナイフ12と切断補助装置10とを含んでなるカッター14を用いて、用紙や建物壁部の壁紙等の各種の切断対象物を切断する際には、作業者が本体部材18の把持部30を把持して、カッター14の刃先78を切断対象物に押し当てる。そして、図1に一点鎖線で示されるように、当接部材76がスペーサ26から離隔される程度に、引張りコイルスプリング20の付勢力に抗して、取付部材18に取り付けられたカッターナイフ12における枢軸38回りの回動方向他方向(図1中、右回り)に力を入れる。
こうすることで、カッターナイフ12における枢軸38回りの回動方向一方向(図1中、左回り)の変位規制が解除され、カッターナイフ12が、引張りコイルスプリング20による付勢力に基づいて、刃先78で切断対象物を切断する方向となる当該回動方向一方向に変位する。この変位を利用して、カッターナイフ12の刃先78が切断対象物に突き刺さり、本体部材18を任意の方向に移動させることで、切断対象物がカッターナイフ12で任意の形状に切断される。
つまり、刃先78を切断対象物に押し当てる主たる力が、引張りコイルスプリング20による付勢力とされることから、そこで例えば、作業者の本体部材16に対する力加減を変えても、本体部材16の切断対象物に対してなす角度が大きく変化するだけであって、カッターナイフ12の切断対象物に対してなす角度は殆ど変化せず、カッターナイフ12から切断対象物に加わる力は、略一定に保たれている。
また、例えば、カッターナイフ12の切断対象物に対してなす角度が変化する程に、大きな力が刃先78に加えられて、取付部材18が枢軸28回りを回動する場合においても、第二リンク52が取付部材18に対して相対的に所定量だけ回動した後に、取付部材18の回動による反力、延いては引張荷重が、引張りコイルスプリング20に及ぼされるようになっている。これにより、引張荷重の急激な変化が抑えられ、軸部材72のハウジングケース40に対する位置決めに基づいて調整された初期の付勢力が、リンク部材48によって略一定の値に調整される。
それ故、本実施形態の切断補助装置10を備えたカッター14によれば、特許文献1や特許文献2に示される如き下敷きこてや接地ガイド等を用いることなく、切断厚さが高度に調整されて、刃先78が切断対象物を貫通して切断対象物に重ね合わされた非切断対象物に食い込むことが確実に防止される。しかも、下敷きこてや接地ガイド等と切断対象物との接触状態によって切断作業に及ぼされる影響がないことから、カッター14による切断スペースが切断作業がスムーズに行われるのである。
特に本実施形態では、引張りコイルスプリング20が本体部材16の長手方向と平行に延びるように配されると共に、引張りコイルスプリング20は、その一方の端部がハウジングケース40から、複数の滑車62,66に懸架された鋼線68とリンク部材48とを介して、リンク部材48の第三連結ピン60回りを回動方向他方向(図1,2中、右回り)に延びて取付部材18の長手方向他方の端部に連結されて、取付部材18を回動方向一方向に付勢している。
これにより、引張りコイルスプリング20が本体部材16から外方に大きく突出することなく、スプリング20の引張り長さの調整スペースが十分に確保されることとなり、それによって、コンパクトな構造で、切断厚さが精度良く調整される。
なお、上述の説明からも明らかなように、本実施形態において、取付部材18における枢軸38回りの回動方向一方向は、刃先78を切断対象物に近接して押し当てる押し当て方向(近接方向)をいい、取付部材18における枢軸38回りの回動方向他方向は、刃先78を切断対象物から離間させる離間方向をいう。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、かかる実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能である。また、そのような実施態様が本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
例えば、前記実施形態では、作業者として人等が本体部材18の把持部30を把持するようになっていたが、マニピュレータ等の機械装置で把持部を把持することも勿論可能である。
また、リンク部材48は、互いにピン結合された複数のリンク(50,52,54)により構成されていたが、リンク部材48の構成は、要求される付勢力の調整機能や製作性等に応じて適宜に設計変更されるものであり、リンクの形状や大きさ、数、結合構造、配置等の形態は例示の如きものに限定されない。例えばリンク同士の結合や、リンクと本体部材乃至は取付部材との結合に、公知のスライド機構が採用されても良い。
さらに、前記実施形態では、取付部材18において引張りコイルスプリング20と連結される部分が、枢軸38を挟んで長手方向他方の端部とされていたが、例えば、かかる端部以外の長手方向他方の側としたり、取付部材における枢軸を挟んで刃先が突出する長手方向一方の側としたりすることも可能である。
更にまた、付勢部材として用いられた引張りコイルスプリング20に代えて或いは加えて、圧縮コイルスプリングや板ばね、弾性ゴム材等を採用し、本体部材の下端側と取付部材との間に配設する等して、圧縮コイルスプリング等の高さ方向のばねを利用して、取付部材の回動方向一方向に付勢力を及ぼすことも可能である。
また、付勢部材には、弾性ゴムや板ばねを、前記引張りコイルスプリング20に代えて或いは組み合わせて採用することも可能である。つまり、付勢部材が取付部材に対して回動方向一方向に付勢力を及ぼすものであれば、付勢部材の形状や大きさ、構造、数、配置などは何等限定されるものでない。
さらに、本体部材18は、例示の如き取付部材18を枢軸38の軸方向両側から挟む一対の壁部24a,24bで構成されることに限定されるものでなく、取付部材の枢軸の軸方向一方の側に配された壁部であったり、切断刃の刃先が突出される部分を残して取付部材を略全体に亘って覆う箱状部材であったりしても良い。
更にまた、例えば、前記実施形態のハウジングケースにおける調整孔の周りにおいて、軸部の固定位置を定める目印を、軸部の移動方向(ハウジングケースの軸方向、換言すれば引張りコイルスプリングの変形方向)に離隔して複数設け、この各固定位置に軸部を合わせることで、所定の切断対象物の切断厚さが測れるようにしても良い。
加えて、前記実施形態では、本発明の切断補助装置が、切断刃として軸方向に伸縮するカッターナイフ12を備えたカッター14に対して適用される具体例が示されていたが、例えば、円板の周縁部に複数の切断刃を備え、回転して切断対象物を切断するフライスや、布裁断用の刃物、その他各種の切断工具に適用可能である。
10…切断補助装置、12…カッターナイフ、16…本体部材、18…取付部材、20…引張りコイルスプリング、22…調整部材、78…刃先

Claims (7)

  1. 切断刃の刃先が外方に突出されるようにして該切断刃が取り付けられる取付部材と、
    前記刃先を切断対象物に対して近接・離間させる方向に回動可能に前記取付部材を支持すると共に、作業者に把持される把持部を備えた本体部材と、
    前記取付部材と前記本体部材とを連結して、前記取付部材に対して、前記刃先を前記切断対象物に押し当てる押し当て方向に付勢力を及ぼす付勢部材と、
    前記本体部材に運動可能に支持されて、前記付勢部材と前記取付部材とを連結することにより、前記付勢部材による前記押し当て方向への付勢力を調整するリンク部材と、
    を備えることを特徴とする切断補助装置。
  2. 前記本体部材は、前記取付部材の回動中心軸の軸方向両側から該取付部材を挟むように対向して配置された一対の壁部からなり、
    前記付勢部材は、それら一対の壁部が対向する間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の切断補助装置。
  3. 前記付勢部材は、前記取付部材において前記回動中心軸を挟んで前記刃先が突出する側の部分と反対側の部分に連結されることを特徴とする請求項1又は2に記載の切断補助装置。
  4. 前記リンク部材は、少なくとも一つの回動ピンを介して前記取付部材に対して相対的に回動可能に支持されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の切断補助装置。
  5. 前記付勢部材と前記取付部材は、何れも長尺状とされて、各長手方向が互いに略平行に延びる形態で前記本体部材において並列的に配置され、
    前記取付部材の前記刃先が突出する長手方向一方と反対側の長手方向他方の側における前記本体部材と前記リンク部材との少なくとも一方には、線部材が懸架された滑車が設けられて、かかる線部材を介して該付勢部材と該取付部材とが連結されることを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の切断補助装置。
  6. 前記取付部材には、前記切断刃を伸縮自在に収容する収容溝部が設けられることを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の切断補助装置。
  7. 請求項1乃至の何れか一項に記載の切断補助装置と、
    前記切断補助装置の前記取付部材に取り付けられた切断刃と、
    を備えることを特徴とする切断工具。
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