JP4455922B2 - ガス検出装置、車両用オートベンチレーションシステム - Google Patents
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Description
さらに、一般に緩慢な変化であっても、特定ガスの濃度変化によって生じた場合には、ある程度継続すると、ガスの濃度が十分高くなりあるいは十分低くなるため、センサ出力値の変化(増加あるいは減少)が停止(飽和)し、変化しなくなる。一方、風速の変化による場合には、一般的に生じる特定ガスの濃度変化に比べてさらに緩慢であり、継続期間も長いことが多いことが判ってきた。車道などにおいて、排気ガス(特定ガス:CO,NOxなど)は所々に濃度の高い滞留空間が形成しやすい。従って、自動車にガス検出装置を搭載して走行した場合、通常の道路においては、特定ガスの濃度及びセンサ出力値が長時間掛けて徐々に上がったり下がったりすることは少なく、特定ガスの濃度及びセンサ出力値の上昇や低下の変化は比較的早い。これに対し、風速の変化によるセンサ出力値の変化は、これらの変化に比して長く、数十秒あるいはそれ以上継続する場合が多い。ヒータやガスセンサ素子の温度が静定するまでに時間を要するので、ガスセンサ素子の温度変化に伴って、センサ出力値が緩慢に変化するためであると考えられる。
従って、本発明のガス検出装置のように、センサ出力値の濃度高方向あるいは濃度低方向への変化の継続期間を監視することで、センサ出力値に生じた変化が、特定ガスの濃度変化によるものであるか、風速の変化によるものであるかを区別することができる。つまり、センサ出力値の風起因変化の有無を確実に判別することができる。
また、風起因変化とは、ガスセンサ素子等と環境気体との相対速度の変化に起因するセンサ出力値の変化である。従って、例えば相対速度が上昇した場合のほか、相対速度が低下した場合も含む。
従って、特定ガスの濃度が高くなったとき、センサ出力値が大きくなるようにガスセンサ素子の特性や電子回路が構成されているガス検出装置では、センサ出力値について濃度高方向とは、センサ出力値が大きくなる方向をいう。これとは逆に、特定ガスの濃度が高くなったとき、センサ出力値が小さくなるガス検出装置では、センサ出力値について濃度高方向とは、センサ出力値が小さくなる方向をいう。
さらに敷衍して、風起因変化によりセンサ出力値が濃度高方向に変化する場合の、この相対速度(風速)の変化方向も濃度高方向ということとする。即ち、濃度高方向の相対速度変化とは、センサ出力値が濃度高方向に変化するような方向への相対速度の変化をいうこととする。従って、例えば、特定ガスの濃度が高くなったとき、センサ出力値が大きくなるように構成されたガス検出装置では、風速が大きくなったときに、センサ出力値が大きくなるのであれば、風速が大きくなる方向へ変化することを、風速が濃度高方向へ変化すると言うこととする。
一方、濃度低方向とは、この濃度高方向とは逆方向をいうこととする。
また、この逆に、センサ出力値の変化方向が、特定ガスの濃度が低くなったときにセンサ出力値が変化するのと同じ方向に変化する場合の風起因変化を風起因低方向変化ということとする。
このガス検出装置では、センサ出力値の風起因変化のうち、風起因高方向変化の有無を検知し、風起因高方向変化の影響を補償するので、特定ガスの濃度上昇を特に確実に捕捉することができる。
このガス検出装置では、風変化終期検知手段を有しており、検知した風起因変化の終期まで、適切に風起因変化の影響を補償することができる。
しかし、このことから、センサ出力値が濃度高方向に変化した場合、その変化当初には、その変化が特定ガスの濃度変化によるものであるか、風起因高方向変化によるものであるかは判別できない。但し、その後、適切な期間に亘って、センサ出力値の変化傾向を評価すれば、両者を判別することができると考えられる。
なお、ガスセンサ素子のみならず、他のガスセンサ素子(第2ガスセンサ素子)をも用いて、自身のセンサ出力値と第2ガスセンサ素子の第2センサ出力値とを用いて、風起因高方向変化の有無を検知することもできる。
そこで、本発明のガス検出装置では、センサ出力値を取得する間隔よりも長い時間間隔で、風起因変化の有無を検知する。これにより、ノイズ成分など、比較的短い周期で変化する微小変化の影響を除去できるので、適切に風起因変化の有無を検知することができて好ましい。また、これにより、頻繁に風起因変化の有無を検知する必要が無く、センサ出力値等の取得毎に検知を行う場合に比して、メモリ等の節約にも寄与できる。
なお、風起因変化の有無を検知する時間間隔としては、風起因変化によってセンサ出力値に生じる変動の周期(周波数)を考慮して、例えば、この周期の数分の一以下程度の時間間隔を選択するのが好ましい。
そこで、本発明のガス検出装置では、風起因変化検知手段は、濃度高変化情報が連続して第1所定個得られたとき、または連続する第2所定個の変化情報において濃度高変化情報が第1所定個以上含まれることが判明したときに、センサ出力値の変化が風起因高方向変化であると判定する。この様な条件を満たした場合には、「所定サイクル時間」×「第1所定個」または、「所定サイクル時間」×「第2所定個」程度の期間に亘って、センサ出力値が濃度高方向に変化し続けていることが判る。従って、第1所定個、あるいは第2所定個の数値を適切に定めておけば、センサ出力値の濃度高方向への変化を、特定ガスの濃度上昇による比較的早い変化と、比較的緩慢な風起因高方向変化とに分けることができるからである。
また、濃度高変化情報とは、変化情報のうち、センサ出力値が濃度高方向に変化していることを示す変化情報をいう。例えば正の傾き、あるいは正の所定値より大きな傾きを持つ変化情報が挙げられる。一方、濃度低変化情報とは、変化情報のうち、濃度高変化情報以外の濃度変化情報をいう。例えば、傾きが0または負、あるいは正の所定値より小さな傾きを持つ変化情報が挙げられる。
また、第1所定個の具体的数値は、経験則などから、特定ガス濃度の上昇によって濃度高変化情報が得られたとしたときには得られず、センサ出力値の風起因高方向変化では起こり得る数を指定すると良い。また、第2所定個は、ガス検出装置の特性や使用環境などから、信号に侵入するノイズ等によって、得られるはずの濃度高変化情報が得られない場合が生ずる可能性の程度などを考慮して、第1所定個よりも若干大きな適宜の数に定めれば良い。
そこで、本発明のガス検出装置では、風起因変化検知手段で風起因高方向変化であるか否かの判定に用いた変化情報とこの判定以降に取得した変化情報のうちで、濃度高変化情報の数と、濃度低変化情報の数とが所定の関係となったら、風変化終期検知手段で風起因高方向変化の終期であると判定する。あるいは、濃度低変化情報の得られるパターンが所定のパターンとなったら、風変化終期検知手段で風起因高方向変化の終期であると判定する。これにより、適切に風起因変化の終期を検知できる。
また、濃度低変化情報が所定パターンで得られる場合としては、濃度低変化情報が連続してAヶ(例えば3ヶ)得られた場合や、連続するBヶ(例えば5ヶ)の変化情報の中で、濃度低変化情報がCヶ(例えば3ヶ)得られた場合などが挙げられる。
本発明のガス検出装置では、特定ガスの濃度変化を検知するにあたり、風補償手段によってセンサ出力値の風起因高方向変化の影響を補償する。このため、風起因高方向変化が生じている期間でも、特定ガスの濃度変化の検知を適切に行うことができる。
ところで、センサ出力値のほかに過去の基準値を用いて現在の基準値を算出する基準値算出手段を有するガス検出装置が考えられる。このものでは、現在のセンサ出力値と対比する現在の基準値として、この風起因高方向変化を考慮しない値を用いると、風起因高方向変化を考慮しなかった影響が次第に累積して、算出される基準値が、適切な値から次第にずれてゆく。このため、特定ガスの濃度変化が生じていないのにガス濃度変化に関する誤検知が生じる虞がある。
あるいは、過去の基準値を補正してから上述の基準値算出手段で現在の基準値を算出する。これにより、同様に、算出された現在の基準値に生じる風起因高方向変化の影響をなくしあるいは低減することができる。
また、風補償値が場合によって大きく変化することがないことが判っている場合には、風補償値を一定値とすることもできる。このようにすると風補償値を算出する必要が無く処理が容易になる。
これに対し本発明のガス検出装置では、濃度検知手段が、現在及び過去のセンサ出力値のうちの2つ以上を用いて風補償値を算出する。このため、風起因高方向変化の大きさに応じた適切な風補償値を得ることができる。従って、この風補償値を用いれば、基準値を適切に補正することができ、適切なガス検知ができる。
そこで、このガス検出装置では、風補償更新算出手段により、風補償値を更新して算出する。これにより、各時点で適切な風起因高方向変化に対する補償ができるから、より適切なガス検知ができる。
なお、風補償値更新算出手段で風補償値を得る手法としては、前述の風補償値算出手段と同様の手法を用い、適時、風補償値を算出、更新することができる。
これに対し、このガス検出装置では、風起因高方向変化を検知すると、特定ガスについて、この時点で濃度低信号と濃度高信号のいずれを発生していたかに拘わらず、濃度低信号を発生する。このため、濃度高の誤判断を直ちに取り消すことができる。従って、オートベンチレーションシステムなどに適用した場合には、フラップが外気導入に変更されるなど、誤動作が速やかに解消される。なお、濃度低信号が出されていた場合には、信号を変える必要がなく、そのまま維持することとなる。
もし、センサ出力値に生じている変化が、風速変化に起因する変化であるとすれば、第2ガスセンサ素子にも、何等かの影響が有ると考えられる。また、特定ガスの濃度変動によって変化が生じている場合には、特定ガスと第2特定ガスとの間に何等かの関係がある場合には、その関係に従って、第2センサ出力値にも影響が生じると考えられる。そこで、第2センサ出力値の挙動を観察し、上述の関係を考慮すれば、センサ出力値のみで判定していた場合よりも、より適切に判定をすることができる。
また、特定ガスの濃度変化と第2特定ガスの濃度変化との間の相関関係などにもよるが、第2ガスセンサ素子の第2センサ抵抗値が、第2特定ガスの濃度が高くなることによって変化する方向と、(第1の)ガスセンサ素子のセンサ抵抗値が、特定ガスの濃度が高くなることによって変化する方向(濃度高方向)、あるいは、第2ガスセンサ素子の第2センサ抵抗値が、風速の増加によって変化する方向と、第1のガスセンサ素子のセンサ抵抗値が、風速の増加によって変化する方向のいずれかが、互いに異なる特性と持つように第2ガスセンサ素子を選択するのが好ましい。特定ガス及び第2特定ガスの濃度変化と、風速の変化との分離が容易となるからである。
従って、第2特定ガスの濃度が高くなったとき、第2センサ出力値が大きくなるように第2ガスセンサ素子の特性や電子回路が構成されているガス検出装置では、第2センサ出力値について第2濃度高方向とは、第2センサ出力値が大きくなる方向をいう。これとは逆に、第2特定ガスの濃度が高くなったとき、第2センサ出力値が小さくなるガス検出装置では、第2センサ出力値について第2濃度高方向とは、第2センサ出力値が小さくなる方向をいう。
さらに敷衍して、第2ガスセンサ素子に接触する環境気体との相対速度の変化に起因する第2センサ出力値の変化を第2風起因変化ということとする。また、第2風起因変化により第2センサ出力値が第2濃度高方向に変化する場合の、この相対速度(風速)の変化方向も第2濃度高方向ということとする。即ち、第2濃度高方向の相対速度変化とは、第2センサ出力値が第2濃度高方向に変化するような方向への相対速度の変化をいうこととする。従って、例えば、第2特定ガスの濃度が高くなったとき、第2センサ出力値が大きくなるように構成されたガス検出装置では、風速が大きくなったときに、第2センサ出力値が大きくなるのであれば、風速が大きくなる方向へ変化することを、風速が第2濃度高方向へ変化すると言うこととする。
一方、第2濃度低方向とは、この第2濃度高方向とは逆方向をいうこととする。
また、この逆に、第2センサ出力値の変化方向が、第2特定ガスの濃度が低くなったときに第2センサ出力値が変化するのと同じ方向に変化する場合の第2風起因変化を第2風起因低方向変化ということとする。
なお、第2センサ出力値の挙動としては、センサ出力値が濃度高方向へ変化している継続期間に相前後する期間における、第2センサ出力値の変化の方向(増加するのか、減少するのか、あるいは変化しないのか)、変化の大きさ、変化が継続する期間の長さなどが挙げられる。例えば、第2センサ出力値の変化が継続する期間としては、具体的には、第2センサ出力値が、徐々に第2濃度高方向に変化する場合の第2継続期間と、徐々に第2濃度低方向に変化する場合の第2継続期間と、どちらにも変化しない場合の第2継続時間とが挙げられる。
この場合には、センサ出力値が濃度高方向に変化する継続時間のみでは、この濃度高方向への変化が、風速変化によるものであるのか、トンネル等への進入によるものであるのかを区別することができない。
しかしながら、トンネルにおいては、酸化性ガス(NOx等)及び還元性ガス(CO,HC等)のいずれも、トンネル内の進行と共に徐々に濃度が上昇する傾向にあることが判ってきた。
また、酸化性ガスに反応するガスセンサ素子として、酸化性ガス濃度の上昇と風速の増加のいずれでも、センサ抵抗値が上昇する特性を持つガスセンサ素子を用いることができる。一方、還元性ガスに反応するガスセンサ素子として、風速の増加ではセンサ抵抗値は増加するが、還元性ガス濃度の上昇ではセンサ抵抗値が減少する特性を持つガスセンサ素子を用いることができる。
即ち、ガスセンサ素子は、風速が増加した場合と特定ガスの濃度が増加した場合のいずれでもセンサ抵抗値が増加する特性を有している。一方、第2ガスセンサ素子は、風速が増加したときには第2センサ抵抗値が増加するが、第2特定ガスの濃度が増加した場合には第2センサ抵抗値は減少する特性を有している。
従って、特定ガス及び第2特定ガスが滞留している空間(例えばトンネル等)に進入した場合には、センサ出力値が増加(濃度高方向に変化)し、第2センサ出力値は減少(第2濃度高方向に変化)する。一方、風速が増加した場合には、センサ出力値は同様に増加(濃度高方向に変化)するものの、第2センサ出力値は増加(第2濃度低方向に変化)する。かくして、センサ出力値が同様に増加(濃度高方向に変化)していても、風速の増加による変化と、他の場合(トンネル等に進入した場合)とを区別することができる。
即ち、ガスセンサ素子は、風速が増加したときにはセンサ抵抗値が増加するが、特定ガスの濃度が増加した場合にはセンサ抵抗値は減少する特性を有している。一方、第2ガスセンサ素子は、風速が増加した場合と第2特定ガスの濃度が増加した場合のいずれでも第2センサ抵抗値が増加する特性を有している。
従って、特定ガス及び第2特定ガスが滞留している空間(例えばトンネル等)に進入した場合には、センサ出力値が減少(濃度高方向に変化)し、第2センサ出力値は増加(第2濃度高方向に変化)する。一方、風速が減少した場合には、センサ出力値は同様に増加(濃度高方向に変化)するものの、第2センサ出力値は減少(第2濃度低方向に変化)する。かくして、センサ出力値が同様に減少(濃度高方向に変化)していても、風速の減少による変化と、他の場合(トンネル等に進入した場合)とを区別することができる。
そこで、このガス検出装置では、風補償更新算出手段により、風補償値を更新して算出する。これにより、各時点で適切な風起因高方向変化に対する補償ができるから、より適切なガス検知ができる。
なお、風補償値更新算出手段で風補償値を得る手法としては、前述の風補償値算出手段と同様の手法を用い、適時、風補償値を算出、更新することができる。
これに対し、このガス検出装置では、風起因高方向変化を検知すると、特定ガスについて、この時点で濃度低信号と濃度高信号のいずれを発生していたかに拘わらず、濃度低信号を発生する。このため、濃度高の誤判断を直ちに取り消すことができる。従って、オートベンチレーションシステムなどに適用した場合には、フラップが外気導入に変更されるなど、誤動作が速やかに解消される。なお、濃度低信号が出されていた場合には、信号を変える必要がなく、そのまま維持することとなる。
本発明の第1の実施形態について、図1〜図6を参照して説明する。まず、図1に本実施形態のガス検出装置10の回路図及びブロック図と、これを含む車両用オートベンチレーションシステム100の概略構成を示す。このシステム100は、特定ガスの濃度変化に応じて濃度信号LVを出力するガス検出装置10と、フラップ34を回動させて、内気取り入れ用ダクト32及び外気取り入れ用ダクト33のいずれかをダクト31に接続させる換気系30と、濃度信号LVに従って換気系30のフラップ34を制御する電子制御アセンブリ20とを備える。
バッファ13の出力(センサ出力電位Vs)は、A/D変換回路15に入力されて、所定のサイクル時間(例えば0.5秒)毎にデジタル化された現在のセンサ出力値S(n)として出力され、マイクロコンピュータ16の入力端子17に入力される。nは順序を表す一連の整数である。
また、本実施形態1では、風起因変化のうち、風起因高方向変化とは、センサ出力値S(n)が大きくなる方向(濃度高方向)に変化する場合を指すので、ガスセンサ素子11等と外気との相対速度が大きくなった場合に生じる変化を指すこととなる。
電子制御アセンブリ20のうち、フラップ駆動回路21は、マイクロコンピュータ16の出力端子18からの濃度信号LV、本実施形態1に即して言えば、NOxなどの酸化性ガス成分の濃度が上昇したか下降したかを示す濃度信号LVに従って、アクチュエータ22を動作させフラップ34を回動させて、内気取り入れ用ダクト32及び外気取り入れ用ダクト33のいずれかをダクト31に接続させる。
これは、ガスセンサ素子11をヒータ素子2で加熱しているため、自動車の移動速度の変化や外気の風速の変化によって、ガスセンサ素子11やヒータ素子2から外気に奪われる時間当たりの熱量が変化するため、ガスセンサ素子11の温度が変化するためであると考えられる。ガスセンサ素子11のセンサ抵抗値Rsは、特定ガスの濃度変化のみならず、その温度変化によっても変化する。具体的には、本実施形態1のガスセンサ素子11は、それ自身の温度が低下するとセンサ抵抗値Rsが上がる特性を有している。
しかし、前述の従来技術では、第2のガスセンサ素子が、他のガス(還元性ガス)の濃度変化を検知しているときには、この処理を行えないなどの不具合がある。
まず、自動車のエンジンが駆動されると、本制御システムが立ち上がる。ガスセンサ素子11がヒータ素子2によって加熱され、活性状態となるのを待って、まずステップS11で初期設定を行う。初期設定として、ベース値B(0)として、ガスセンサ素子11が活性状態となった当初のセンサ出力値S(0)を記憶しておく(B(0)=S(0))。また、後述するステップS13で、不適切な値が算出されないようにするため、S(−7)=S(−6)=…=S(−1)=S(0)としておく。また、濃度信号LVとして濃度低信号を発生させておく、具体的には濃度信号LVをローレベル(LV=0)としておく。
なお、起動から8回サンプリングするまでは、このステップS13による移動差分値M(n)の算出には、意味がない。
ここで、No、即ち、濃度低信号(LV=0)を発生している場合には、ステップS16に進んで、ベース値B(n)を算出する。一方、Yes、即ち、濃度高信号(LV=1)を発生している場合には、ステップS17に進んで、ベース値B(n)を算出する。
一方、No、風補正フラグがセットされていない場合には、補正は不要であるので、そのままステップS21に進む。
そこで、まずステップS22に進み、濃度高信号発生中であるか否かを判断する。
ここで、No、即ち、濃度低信号を発生している場合には、ステップS23に進んで、比L(n)と第1しきい値TH1とを比較する。比L(n)が第1しきい値TH1を超えた場合(Yes)、つまりセンサ出力値S(n)がベース値B(n)に対して相対的に大きくなった場合には、ステップS24に進んで、濃度信号LVとして、現在の濃度低信号(ローレベル:LV=0)に代えて濃度高信号(ハイレベル:LV=1)を発生する。一方、比L(n)が第1しきい値TH1以下の場合(No)には、現在の濃度低信号発生を維持すればよいから、そのままステップS30に進む。
なお、第2しきい値TH2は、ステップS23で用いる第1しきい値TH1と比較して、TH2<TH1とするのが好ましい。2つのしきい値TH1,TH2を異ならせて濃度信号LVの切換えにヒステリシス特性を持たせ、濃度高信号発生と濃度低信号発生を短時間で繰り返すチャタリングを防止するためである。
そして、No、即ち風補正フラグがセットされていない場合には、以下のステップにおいて、風起因高方向変化の発生を検知する。まず、ステップS32に進み、前述のステップS13で算出した移動差分値M(n)が正の値であるか否かをチェックする。このステップS32では、移動差分値M(n)により、センサ出力値S(n)の最近の変化動向をチェックする。
一方、M(n)>100である場合(Yes)、つまり、濃度高変化情報が得られた場合には、ガス濃度の上昇によるほか、風によってセンサ出力値が濃度高方向へ変化(増加)している可能性があるので、ステップS33において、カウント値ANGを1だけ増加させて(ANG=ANG+1)、ステップS35に進む。
そこで、このステップS35でNo、つまりカウント値ANGが70を超えない場合には、そのままステップS46に進む。センサ出力値S(n)の増加傾向がそれほど長く継続しているとは認められないから、少なくとも現段階で風起因高方向変化によってセンサ出力値S(n)が増加していると判定できないからである。
なお、このように長期間に亘ってセンサ出力値S(n)が濃度高方向に増加すると、前述のステップS16で算出されたベース値B(n)は、逆に減少しセンサ出力値S(n)より小さな値となることが多い。このため、センサ出力値の上昇開始からある程度時間が経過すると、ステップS23で比L(n)が、L(n)>TH1と判断される。従って、ほぼ確実に濃度信号LVは濃度高信号(ハイレベル)を発生していると考えられる。
また、ステップS37で用いる現在のセンサ出力値S(n)は、具体的には、風速変化によるセンサ出力値の変化を検知した回に得たセンサ出力値である。
但し、もし、未だ濃度高信号に切り換えられていない場合にも、サイクル数SNSとしてSNS=1が得られる。従って、この場合でも、風補償値NMSを得ることができる。
このようにする理由は以下である。酸化性ガスの濃度変化に応じたセンサ抵抗値Rsを発生するというガスセンサ素子11に要求された特性からみれば、風速変化によるセンサ抵抗値Rsの変化、さらには、センサ出力値S(n)の変化は、本来的に不要なものである。従って、もし、この風速変化が無ければ、センサ出力値S(n)は変化しなかったと考えられる。すると、前述したステップS16,S17,S18のいずれかで得られたベース値B(n)は、その性質上、センサ出力値S(n)に等しいかごく近い値になっていたと考えられる。例えば、しばらくの間センサ出力値S(n)が一定の値であったとすると、式(2)において、第3項は0となる。また、第1項及び第2項で得られる値は、センサ出力値S(n)に追従するので、センサ出力値S(n)が変化しないと、徐々にこれに漸近するように変化することから、理解できるであろう。この状態に戻すために、ステップS39において、ベース値B(n)をセンサ出力値S(n)に一致させるのである。
そして、それ以降は、ベース値B(n)の算出に当たって、風速変化による影響を各回毎に補償するために、前述したステップS20において、ベース値B(n)に風補償値NMSを加えて、これを補正するのである。
一方、M(n)≦100である場合(No)、つまり濃度低変化情報が得られた場合には、ステップS43で、ANG=ANG−20として、新たなカウント値を、現在のカウント値ANGよりも大きく減少させてステップS44に進む。センサ出力値S(n)が増加傾向にないことを示していることから、風起因高方向変化によるセンサ出力値の増加が終息したか終息に近づいている可能性があるからである。
そこで、このステップS44でYes、つまりカウント値ANGが負の値となった場合(ANG<0)には、ステップS45に進み、風補正フラグをリセットし、その後ステップS46に進む。
一方、このステップS44でNo、つまりカウント値ANGが未だ正の値である場合には、まだ風起因高方向変化によるセンサ出力値の増加が終息していないと考えられるので、そのままステップS46に進む。
一方、ステップS46でYes、つまり濃度高信号発生中である場合には、ステップS49に進み、サイクル数SNSを1つずつインクリメントし、、メインルーチンに戻る。これにより、ステップS38で用いる際には、サイクル数SNSは、風起因高方向変化を検知し、風補償値NMSを得る回までのサイクル数をカウントしたものとなる。
かくしてステップS30での処理を終えた後には、ステップS50に進む。このステップS50で次回のセンサ出力値を取得するタイミングの到来を判定し、サンプリングタイム(サイクルタイム)が経過した(Yes)と判定されたときに、ステップS12に戻る。その後は、上述したのと同様に、ステップS12以降の処理を繰り返し行う。
なお、図5では、ステップS30に示す風補正ルーチン(図4参照)及びステップS19,S20が無いとした場合に得られる無補正ベース値Ba(n)も併せて示してある。また、時刻t0等と共に示してあるのは、その時刻に得られたセンサ出力値S(n)等の番号nを示している。つまり時刻t0には、センサ出力値S(n0)やベース値B(n0)が得られることを示す。
なお、この図5においては、特定ガスの濃度変化が生じていない状況下でのセンサ出力値S(n)の変化を示している。
ベース値B(n)は、図5に示すように、時刻t4までは上述の無補正ベース値Ba(n)と同じである。即ち、当初(時刻t0以前)は、センサ出力値S(n)とほぼ同じ値であった。なお、時刻t0以前の期間には、カウント値ANGは0あるいはそれに近い値となる。
そして、時刻t0以降、センサ出力値S(n)の増加により、ベース値B(n)は逆にその値が小さくなるように変化する。式(2)における第3項の影響によるものである。
図5を見れば判るように、この時刻t1〜t4においては、センサ出力値S(n)は増加傾向を示していることから、ステップS32で算出される移動差分値M(n)は、この期間には100(正の所定値)より大きい値となる。従って、ステップS33に従って、各回毎にカウント値ANGが1ずつ増加する。そして、時刻t4には、ついにステップS35でANG>70となると、ステップS36において風補正フラグがセットされる。さらに、ステップS37で差分SAが算出される。具体的には、時刻t4におけるセンサ出力値S(n4)を用い、SA=S(n4)−NMPが算出される。なお、上述したように、保持値NMPは、センサ出力値S(n1−1)である(NMP=S(n1−1))。次いで、S38で風補償値NMSが算出される。具体的には、NMS=SA/SNS={S(n4)−S(n1−1)}/SNSであるから、風補償値NMSは、時刻t1〜t4の間のセンサ出力値の1サイクル当たりの平均変化量(平均傾き)を求めたことに相当する。
次いで、ステップS40おいて、濃度信号LVが実線で示すように濃度低信号(ローレベル)に戻される。濃度高信号の発生は風速変化に起因する誤りであったからである。
なお、本実施形態1では、風補償値NMSとして、時刻t1〜t4の期間におけるセンサ出力値の平均変化量(平均傾き)を算出し、これを時刻t4〜t5においてベース値B(n)の補正に用いている。このため、センサ出力値S(n)の変化が時間の経過と共に収まってくると、同じ風補償値NMSを用い続けることで、過補償となる可能性が考えられる。しかし、本実施形態では、補正されたベース値B(n)が次回のサイクルにおいてB(n−1)として、ステップS14でセンサ出力値S(n)と対比され、B(n−1)≧S(n)のときには、ステップS18で、新たなベース値B(n)は、センサ出力値に一致させられる(B(n)=S(n))ので、過補償となることはない。
もし風起因高方向変化がなく、センサ出力値に変動がなかったとすれば、ベース値B(n)は、センサ出力値S(n)に追従し、これとほぼ同じ値となっていたと考えられるから、本実施形態1の処理フローにより、これと同様な状態を実現でき、風起因高方向変化の影響を無くしあるいは抑制できたことが判る。
また、カウント値ANGは、ステップS42によって、徐々に増加する。
これにより、時刻t5以降には、ベース値B(n)の風補正(ステップS20)が行われなくなる。
また、例えば図6において矢印状の実線で示すように、風起因高方向変化によるセンサ出力値の増加の最中であるにも拘わらず、確実に酸化性ガスの濃度変化を検知できる。
ついで、本発明の第2の実施形態について、図7〜図18を参照して説明する。まず、図7に本実施形態2のガス検出装置210の回路図及びブロック図と、これを含む車両用オートベンチレーションシステム200の概略構成を示す。このシステム200は、前述した実施形態1にかかるシステム100(図1参照)と対比すれば容易に理解できるように、システム100では、1つのガスセンサ素子11を用いたのに対して、本実施形態2のシステム200では、2つのガスセンサ素子211,221を用いた点で異なり、他は同様であるので、異なる部分を中心に説明する。
このうち、D側ガスセンサ素子211は、実施形態1のガスセンサ素子11と同じく、被測定ガス(本実施形態2でも大気)中にNOxなど酸化性ガス成分がある場合に、これに反応し、酸化性ガス成分の濃度上昇と共にセンサ抵抗値Rs1が上昇するタイプの酸化物半導体のガスセンサ素子である。このD側ガスセンサ素子211は、ヒータ素子202に近接した位置に配置されており、このヒータ素子202に通電することによって加熱されることで、NOx等の酸化性ガスの検出能力を発揮する。
一方、G側ガスセンサ素子221は、D側ガスセンサ素子211とは特性が異なり、被測定ガス中にCO、HC(ハイドロカーボン)など還元性ガス成分がある場合に、これに反応し、還元性ガス成分の濃度上昇と共にセンサ抵抗値Rs2が低下するタイプの酸化物半導体のガスセンサ素子である。このG側ガスセンサ素子221も、ヒータ素子202に近接した位置に配置されており、このヒータ素子202によって加熱されることで、CO,HC等の還元性ガスの検出能力を発揮する。
バッファ213の出力は、A/D変換回路215を経由し、所定のサイクル時間(例えば0.5秒)毎に現在のD側センサ出力値Sd(n)として出力され、マイクロコンピュータ216の入力端子217に入力される。nは順序を表す一連の整数である。
バッファ223の出力は、A/D変換回路225を経由し、D側センサ出力値Sd(n)と同じ所定のサイクル時間(例えば0.5秒)毎に、現在のG側センサ出力値Sg(n)として出力され、マイクロコンピュータ216の入力端子227に入力される。D側センサ出力値Sd(n),G側センサ出力値Sg(n)等を対比する場合、「n」など同じ記号を用いて、同じタイミングで得られた値であることを示すこととする。
また、本実施形態2において、D側センサ出力値Sd(n)に生じる風起因変化のうち、風起因高方向変化とは、D側センサ出力値Sd(n)が大きくなる方向(濃度高方向)に変化する場合を指すので、D側ガスセンサ素子211等と外気との相対速度が大きくなった場合(風速が大きくなった場合)に生じる変化を指すこととなる。
また、G側センサ出力値Sg(n)に生じる第2風起因変化のうち、第2風起因高方向変化とは、G側センサ出力値Sg(n)が小さくなる方向(第2濃度高方向)に変化する場合を指すので、G側ガスセンサ素子211等と外気との相対速度が小さくなった場合(風速が小さくなった場合)に生じる変化を指すこととなる。
なお、実施形態1では、1つのガスセンサ素子11を用いていたため、センサ出力値S(n)を用いた判断で、濃度高信号(LV=0)と濃度低信号(LV=1)のいずれかの濃度信号を発生させ得た。しかし、本実施形態2では、2つのガスセンサ素子211,221を用いるため、後述するように、D側ガスセンサ素子211によるD側ガス検知信号がクリーンエア検知の状態(濃度低:LVd=0)で、かつ、G側ガスセンサ素子221によるG側ガス検知信号もクリーンエア検知の状態(濃度低:LVg=0)である場合にのみ、濃度信号LVが濃度低(LV=0)となる(図10:ステップT64〜T66参照)。
これは、D側ガスセンサ素子211及びG側ガスセンサ素子221の両者をヒータ素子202で加熱しているため、自動車の移動速度の変化や外気の風速の変化によって、D側ガスセンサ素子211及びG側ガスセンサ素子221やヒータ素子202から外気に奪われる時間当たりの熱量が変化するため、D側ガスセンサ素子211及びG側ガスセンサ素子221の温度が変化するためであると考えられる。
従って、このような変化を生じている期間には、自動車の速度変化などによるD側センサ出力値Sd(n)の変化を、酸化性ガスの濃度変化によるものと誤検知する虞がある。本実施形態2では、D側ガスセンサ素子211が冷やされる側、つまり、自動車の車速が高くなったり、風速が大きくなったりして、D側ガスセンサ素子211と外気との相対速度が大きくなる側に変化した場合に、D側ガスセンサ素子211のD側センサ抵抗値Rs1が高くなる方向に変化し、D側センサ出力値Sd(n)も上昇するから、酸化性ガスの濃度上昇が生じたとの誤検知を生じやすい。つまり、風速が増加した場合に、酸化性ガスの濃度が濃度高方向に変化したと誤検知されやすい。
G側ガスセンサ素子221が暖められる側、つまり、自動車の車速が低くなったり、風速が小さくなったりして、G側ガスセンサ素子221と外気との相対速度が小さくなる側に変化した場合に、G側ガスセンサ素子221のG側センサ抵抗値Rs2が低くなる方向に変化し、G側センサ出力値Sg(n)も低下するから、還元性ガスの濃度上昇が生じたとの誤検知を生じやすい。つまり、風速が低下した場合に、還元性ガスの濃度が第2濃度高方向に変化したと誤検知されやすい。
しかし、この従来技術では、(第1の)センサ出力値の変化が自動車の速度変化によるものであることを検知すると、センサ出力値を無視してしまい、自動車の速度変化が検知されている期間中、あるいはその直後などにおいては、酸化性ガスの濃度上昇が生じてもこれを検知することはできない。また、第2のガスセンサ素子が、還元性ガスの濃度変化を検知しているときには、この処理を行えないなどの不具合がある。
初期設定として、D側,G側ベース値Bd(0),Bg(0)として、D側,G側ガスセンサ素子211,221が活性状態となった当初のD側,G側センサ出力値Sd(0),Sg(0)を記憶しておく(Bd(0)=Sd(0),Bg(0)=Sg(0))。また、濃度信号LVとして濃度低信号を発生させておく、具体的には濃度信号LVをローレベル(LV=0)としておく。
ついで、ステップT14に進み、D側センサ出力値Sd(n)及びG側センサ出力値Sg(n)の変化の傾きを監視するタイミングであるか否かを判断する。具体的には、監視時間カウンタC0=16であるか否かを判断する。No、即ち、この監視時間カウンタC0≦15の場合には、ステップT21に進み、この監視時間カウンタC0を1つだけインクリメントし(C0=C0+1)、ステップT24に進む。一方、Yes、即ちC0=16の場合には、ステップT15に進み、まず、この監視時間カウンタC0をクリアする(C0=0)。
従って、本実施形態2のガス検出装置210では、ステップT12,T13で、D側センサ出力値Sd(n)及びG側センサ出力値Sg(n)を取得するうち、16回に1回ずつステップT15に進み、後述する風補正終了判断やトンネル・風検知を行うこととなる。
ステップT25では、後述するステップT314,T317(図15参照)及びT514,T517(図16参照)で算出するD側ベース値Bd(n)及びG側ベース値Bg(n)の算出式に用いる係数Kd,Hd,Kg,Hgをそれぞれ設定する。具体的には、Kd=k1,Hd=h1,Kg=k4,Hg=h4とする。
一方、ステップT26でも、係数Kd,Hd,Kg,Hgをそれぞれ設定する。具体的には、Kd=k2,Hd=h2,Kg=k5,Hg=h5とする。
従って、ステップT16,T24でトンネル検知中の場合(Yes)であると判断されると、トンネル検知中ではない場合(No)に比して、ステップT314,T317で算出されるD側ベース値Bd(n)は、変化が緩慢にされる。また、ステップT514,T517で算出されるG側ベース値Bg(n)も、変化が緩慢にされる。
ステップT31のサブルーチンでは、まずステップT311において、D側センサ出力値Sd(n)の取得開始後、4サンプリング以上経過しているか否かを判断する。後述するようにD側ベース値Bd(n)の算出(ステップT314参照)の際、4サンプリング分過去のD側センサ出力値Sd(n−4)を用いるが、始動から4サンプリング分の期間は、このSd(n−4)を得ていないからである。
そこで、4サンプリング以上経過していない場合(No)には、ステップT317によりD側ベース値Bd(n)を算出し、メインルーチンに戻る。具体的には、Bd(n)=Bd(n-1)+Kd[Sd(n)−Bd(n-1)]−Hd[Sd(n)−Sd(0)]の式による。
ところで、後述するように(ステップT32,T34,T40参照)、D側センサ出力値Sd(n)とD側ベース値Bd(n)とのD側差分値Dd(n)を用いて、酸化性ガスの濃度の高低を判断する。
続いて、ステップT316に進み、D側ベース値Bd(n)を強制的にD側センサ出力値Sd(n)に一致させる。トンネル終了認識フラグTNEがTNE=1とされる場合には、後述するように、G側センサ出力値Sg(n)を用いて、ガス滞留空間から自動車が抜け出たことを検知した場合(ステップT59参照)である。この時点では、既に還元性ガスのみならず、酸化性ガスの濃度もガス滞留空間における濃度よりも低くなっていると考えられる。そこで、この時点で、D側ベース値Bd(n)をD側センサ出力値Sd(n)に一致させて、その後の酸化性ガスの濃度上昇をより早期に捕捉できるようにする。その後、メインルーチンに戻る。
ここで、D側ガス検知信号がLVd=0(濃度低)の場合(No)には、ステップT40に進む。一方、LVd=1の場合(Yes)には、ステップT34に進む。
このうち、D側差分値Dd(n)がD側第1しきい値TH21より大きい場合(ステップT40においてYes:Dd(n)>TH21)、つまりD側センサ出力値Sd(n)がD側ベース値Bd(n)に対して所定値(TH21)分よりも大きくなった場合には、ステップT41に進む。ステップT41では、酸化性ガスの濃度上昇を検知したとする。具体的には、D側ガス検知信号LVdとして、現在のLVd=0に代えてLVd=1を発生する。D側差分値Dd(n)が、大きくなったと言うことは、D側センサ出力値Sd(n)の値が上昇、つまり、濃度高方向に変化したことを示すからである。その後、ステップT43に進む。
逆に、D側差分値Dd(n)がD側第1しきい値TH21以下の場合(No)には、ステップST42において、酸化性ガスについてクリーンエアが維持されているとし、現在のLVd=0を維持し、ステップT43に進む。
このうち、D側差分値Dd(n)がD側第2しきい値TH22より大きい場合(ステップT34においてYes:Dd(n)>TH22)、つまりD側センサ出力値Sd(n)がD側ベース値Bd(n)に対して所定値(TH22)分よりも大きい状態を維持している場合には、ステップT35に進み、酸化性ガスの濃度が高く維持された状態を検知したとし、現在のLVd=1を維持し、ステップT43に進む。
逆に、D側差分値Dd(n)がD側第2しきい値TH22以下の場合(No)には、ステップT36で、酸化性ガスの濃度低下つまりクリーンエアを検知したとし、D側ガス検知信号LVdとして、現在のLVd=1に代えてLVd=0を発生し、ステップT37に進む。D側差分値Dd(n)が、小さくなったと言うことは、D側センサ出力値Sd(n)の値が減少、つまり、濃度低方向に変化したことを示すからである。
ステップT38では、トンネル検知中であったのをクリアする。つまりトンネル検知フラグTN=1であったのを、TN=0とする。さらに、ステップT39において、トンネル終了認識フラグTNEを、TNE=1とし、ステップT43に進む。トンネルなどガス滞留空間内では、他の場所よりも酸化性ガス及び還元性ガスの濃度が高くなっている。従って、ステップT36において酸化性ガスの濃度低下を検知できたことから、トンネルなどのガス滞留空間を抜け出したと解されるからである。
ステップT51のサブルーチンでは、まずステップT511において、G側センサ出力値Sg(n)の取得開始後、4サンプリング以上経過しているか否かを判断する。D側ベース値算出の場合と同じく、G側ベース値Bg(n)の算出(ステップT514参照)の際、4サンプリング分過去のG側センサ出力値Sg(n−4)を用いるが、始動から4サンプリング分の期間は、このSg(n−4)を得ていないからである。
そこで、4サンプリング以上経過していない場合(No)には、ステップT517によりG側ベース値Bg(n)を算出し、メインルーチンに戻る。具体的には、Bg(n)=Bg(n-1)+Kg[Sg(n)−Bg(n-1)]−Hg[Sg(n)−Sg(0)]の式による。
ステップT512で、TNE=0と判定された場合(No)には、ステップT513に進み、前回得たG側ベース値Bg(n−1)を、現在のG側センサ出力値Sg(n)と比較する。本実施形態2では、還元性ガスの濃度が上昇したときにG側センサ出力値Sg(n)が小さな値となる。つまり、G側センサ出力値Sg(n)は、値が小さくなる方向が第2濃度高方向である。また、車両用オートベンチレーションシステム200では、酸化性ガスのみならず、還元性ガスの濃度が上昇した場合にも、早く的確にフラップ34を閉じて内気循環にできることが重要視される。
ところで、後述するように(ステップT52,T54,T60参照)、G側センサ出力値Sg(n)とG側ベース値Bg(n)とのG側差分値Dg(n)を用いて、還元性ガスの濃度の高低を判断する。
続いて、ステップT516に進み、G側ベース値Bg(n)を強制的にG側センサ出力値Sg(n)に一致させる。トンネル終了認識フラグTNEがTNE=1とされる場合には、後述するように、D側センサ出力値Sd(n)を用いて、ガス滞留空間から自動車が抜け出たことを検知した場合(ステップT39参照)もある。この時点では、既に酸化性ガスのみならず、還元性ガスの濃度もガス滞留空間における濃度よりも低くなっていると考えられる。そこで、TNE=1とされたら、G側ベース値Bg(n)をG側センサ出力値Sg(n)に一致させて、その後の還元性ガスの濃度上昇をより早期に捕捉する。その後、メインルーチンに戻る。
ここで、G側ガス検知信号がLVg=0(濃度低)の場合(No)には、ステップT60に進む。一方、LVg=1の場合(Yes)には、ステップT54に進む。
このうち、G側差分値Dg(n)がG側第1しきい値TH23より大きい場合(ステップT60においてYes:Dg(n)>TH23)、つまりG側センサ出力値Sg(n)がG側ベース値Bg(n)に対して所定値(TH23)分よりも小さくなった場合には、ステップT61に進む。ステップT61では、還元性ガスの濃度上昇を検知したとする。具体的には、G側ガス検知信号LVgとして、現在のLVg=0に代えてLVg=1を発生する。G側差分値Dg(n)が、大きくなったと言うことは、G側センサ出力値Sg(n)の値が減少、つまり、第2濃度高方向に変化したことを示すからである。その後、ステップT63に進む。
逆に、G側差分値Dg(n)がG側第1しきい値TH23以下の場合(No)には、ステップST62において、還元性ガスについてクリーンエアが維持されているとし、現在のLVg=0を維持し、ステップT63に進む。
このうち、G側差分値Dg(n)がG側第2しきい値TH24より大きい場合(ステップT54においてYes:Dg(n)>TH24)、つまりG側センサ出力値Sg(n)がG側ベース値Bg(n)に対して所定値(TH24)分よりも小さい状態を維持している場合には、ステップT55に進み、還元性ガスの濃度が高く維持された状態を検知したとし、現在のLVg=1を維持し、ステップT63に進む。
逆に、G側差分値Dg(n)がG側第2しきい値TH24以下の場合(No)には、ステップT56で、還元性ガスの濃度低下つまりクリーンエアを検知したとし、G側ガス検知信号LVgとして、現在のLVg=1に代えてLVg=0を発生し、ステップT57に進む。G側差分値Dg(n)が、小さくなったと言うことは、G側センサ出力値Sg(n)の値が上昇、つまり、濃度低方向に変化したことを示すからである。
ステップT58では、トンネル検知フラグをクリア、つまりトンネル検知フラグTNを、TN=0とする。さらに、ステップT59において、トンネル終了認識フラグTNEを、TNE=1とし、ステップT63に進む。トンネルなどガス滞留空間内では、他の場所よりも酸化性ガス及び還元性ガスの濃度が高くなっている。従って、ステップT56において還元性ガスの濃度低下を検知できたことから、トンネルなどのガス滞留空間を抜け出したと解されるからである。
ステップT17のD側傾き&風補正終了判断サブルーチン(図11参照)では、ステップT701において、D側センサ出力値Sd(n)を用いた傾き検知を行う。具体的には、現在と16サンプリング分だけ過去のD側センサ出力値Sd(n),Sd(n−16)及び正の所定値A1を用い、Sd(n)−Sd(n-16)>A1であるか否かを判定する。ここでは、D側センサ出力値の近時の上昇量(濃度高方向へ変化の傾き)が、所定の大きさを超えているか否かを判断している。
ここで、Yes、即ち、増加の傾きが大きい場合には、現在まで16サンプリング分の期間(8秒=16×0.5)において、D側センサ出力値Sd(n)が増加傾向にあったと考えられる。そこで、ステップT702に進み、D側傾き認識カウンタC1をインクリメントし(C1=C1+1)、メインルーチンに戻る。従って、このD側傾き認識カウンタC1の値は、D側センサ出力値Sd(n)の増加(濃度高方向への変化)が継続している期間の長さに対応していることになる。一方、上昇量(傾き)が小さい場合には(No)、ステップT703に進む。
さらに、このステップT704では、D側風検知フラグWdをクリアし、Wd=0とする。D側センサ出力値Sd(n)について、風速変化に起因する濃度高方向への変化が認められないからである。
ここで、Yes、即ち、減少の傾きが大きい場合には、現在まで16サンプリング分の期間において、G側センサ出力値Sg(n)が減少傾向にあったと考えられる。そこで、ステップT802に進み、G側傾き認識カウンタC2をインクリメントし(C2=C2+1)、メインルーチンに戻る。従って、このG側傾き認識カウンタC2の値は、G側センサ出力値Sg(n)の減少(第2濃度高方向への変化)が継続している期間の長さに対応していることになる。
一方、減少量(傾き)が小さい場合には(No)、ステップT803に進む。
さらに、このステップT804では、G側風検知フラグWdをクリアし、Wd=0とする。G側センサ出力値Sg(n)について、風速変化に起因する第2濃度高方向への変化が認められないからである。
まずステップT901では、D側傾き認識カウンタC1がC1=5であり、かつ、G側傾き認識カウンタC2がC2≧2であるか否かを判定する。ここで、Yesの場合、つまり、D側センサ出力値Sd(n)については、C1=5となるまでの長期間(具体的には、少なくとも16×5=80サンプリング分以上の期間)に亘り、その値が増加傾向(濃度高方向への変化)を維持している。その一方、G側センサ出力値Sg(n)については、C2≧2となるまでの期間(具体的には、少なくとも16×2=32サンプリング分以上の期間)に亘り、その値が減少傾向(第2濃度高方向への変化)を維持しているが、未だ十分長いとは言えない場合には、ステップT902に進む。ここでは、D側保持カウンタCdをCd=3に設定する。
ここで、Yes、つまり、以前に前述のステップT902においてD側保持カウンタCdが設定されており、かつ、G側傾き認識カウンタC2がC2>0であるとき(この場合には、G側傾き認識カウンタC2は、C2≧2となっているはずである)には、ステップT904に進む。ステップT904では、D側保持カウンタCdをデクリメントする(Cd=Cd−1)。さらに続いて、ステップT905で、D側傾き認識カウンタC1を強制的にC1=5に設定する。
逆に、ステップT903でNo、即ち、Cd=0及びC2=0の少なくともいずれかに該当する場合には、ステップT906でD側保持カウンタCdをクリアする(Cd=0)。
ここで、Yes、つまり、以前に前述のステップT912においてG側保持カウンタCgが設定されており、かつ、D側傾き認識カウンタC1がC1>0であるときには、ステップT914に進む。ステップT914では、G側保持カウンタCgをデクリメントする(Cg=Cg−1)。さらに続いて、ステップT915で、G側傾き認識カウンタC2を強制的にC2=5に設定する。
逆に、ステップT913でNo、即ち、Cg=0及びC1=0の少なくともいずれかに該当する場合には、ステップT916でG側保持カウンタCgをクリアする(Cg=0)。
既に、以前に、Wd=1とされている場合(Yes)には、ステップT221に進み、D側風補償値VADDを算出する。算出式は、VADD=[Sd(n)-Sd(n-16)]/16で与えられる。
なお、このD側風補償値VADDは、このD,Gセンサによるトンネル・風検知サブルーチンが実行されるたび、従って、D側センサ出力値Sd(n)取得の16サイクル毎に1回(16×0.5=8秒に1回)算出される、つまり、16サイクル毎に更新されるという点で、前述の実施形態1と異なっている。風速変化に起因してD側センサ出力値Sd(n)に生じる変化は、一般には、風速変化の生じた当初に大きく、次第に小さくなり終息する。従って、この変化を補償するための風補償値VADDについても、一定値を用いるよりも、各時点で適切な値を算出・選択する方が、より適切に変動の影響を抑制できて好ましいことは明らかである。
その後は、メインルーチンに戻る。
既に、以前に、Wg=1とされている場合(Yes)には、ステップT222に進み、G側風補償値VADGを算出する。算出式は、VADG=[Sg(n-16)-Sg(n)]/16で与えられる。
なお、このG側風補償値VADGも、D側風補償値VADDと同様の理由により、G側センサ出力値Sg(n)取得の16サイクル毎に1回算出される点で、前述の実施形態1と異なる。その後は、メインルーチンに戻る。
かくして、既に風検知フラグWdあるいはWgがセットされている場合、つまり、既に風による変化を検知している場合(前述の(3)の場合)には、D側風補償値VADDまたはG側風補償値VADGが算出されてメインルーチンに戻ることとなる。
前提として、G側傾き認識カウンタC2は、C2=5ではなく(ステップT201)、風検知フラグWd,Wgがセットされておらず(ステップT202,T203)、保持カウンタCd,Cgが0である(ステップT204)。このことから、このステップT206で、C1=5である(Yes)と判断される場合には、G側センサ出力値Sg(n)は減少傾向が続いていないことになる。とすると、D側センサ出力値Sd(n)のみが長期間(本実施形態2では少なくとも40秒以上)に亘り濃度高方向に変化し続けていると言うことは、この変化は、風起因高方向変化であると推測される。酸化性ガスの濃度上昇が起こっている場合、トンネルなどの場合を除き、一般に40秒以上に亘って徐々に生じることはなく、通常、比較的短時間に濃度上昇が起き、これに伴ってD側センサ出力値Sd(n)が比較的早く上昇することが判っている。従って、このような長期間にわたる濃度高方向への変化は、トンネルを除けば、風速変化に起因する風起因高方向変化であると解されるからである。
そこで、ステップT206において、D側風検知フラグWdをWd=1にセットする。
その後は、メインルーチンに戻る。
ここで、C2=5でない場合(No)には、メインルーチンに戻る。トンネル内に進入したわけではなく、風によるD,G側センサ出力値の変化も生じていない、通常の場合(前記(1)の場合)である。
そこで、ステップT216において、G側風検知フラグWgをWg=1にセットする。
その後は、メインルーチンに戻る。
このうち、図17は、本実施形態2のガス検出装置210を搭載した自動車について、低速走行から高速走行に移行し再び低速走行のパターンで走らせた場合のデータについて記載している。一方、図18は、自動車で、長いトンネル内を走行した場合のデータについて記載している。
また、これらには、風検知及びトンネル検知に関する処理(ステップT17〜T20)をしなかった場合に得られる仮想D側ベース値ABd(n),仮想G側ベース値ABg(n)及びこのようにした場合に得られる仮想D側,G側ガス検知信号ALVd,ALVgについても併せて示してある。
本図に示す場合には、本図の計測の開始直後(時刻0秒)に、低速走行(市街地走行)から高速走行(高速道路走行)に移行している、このため、時刻t0において、D側センサ出力値Sd(n)が徐々に上昇をはじめている。自動車の速度が上昇することで風速が増加し、D側ガスセンサ素子211が冷やされてそのセンサ抵抗値Rs1が上昇したためであると考えられる。このD側センサ出力値Sd(n)の緩慢な上昇は、概略250秒以上に亘って継続している。
なお、仮想D側ガス検知信号ALVdも同様に、時刻t1でALVd=1となる。
一方、仮想D側ガス検知信号ALVdについては、風起因高方向変化を検知できないため、時刻t2以降も引き続いて、LVd=1とされ続け、D側センサ出力値Sd(n)が反転(減少)に転じる時刻t3までの約200秒間に亘り、酸化性ガスの濃度が高くないのに濃度高(LVd=1)と判断する誤検知の状態が継続していることが判る。従って、この間、LV=1とされ、フラップ34が内気循環側に回動された状態となる。
なお、その後、D側センサ出力値Sd(n)に緩慢な変動により、時刻t5,t6においても風起因高方向変化が検知され、D側風検知フラグWdがWd=1とされている。
G側センサ出力値Sg(n)の減少(第2濃度高方向への変化)により、時刻t8で、G側ガス検知信号LVgが、LVg=1とされ(ステップT61)となり、還元性ガスの濃度上昇を検知している。但し、COガス濃度の変化から判るように、この還元性ガスの検知は、誤検知である。
なお、仮想G側ガス検知信号ALVgも同様に、時刻t8でALVg=1となる。
一方、仮想G側ガス検知信号ALVgについては、風起因高方向変化を検知できないため、時刻t9以降も引き続いて、LVg=1とされ続け、還元性ガスの濃度が高くないにも拘わらず、濃度高(LVg=1)と判断する誤検知の状態が継続されていることが判る。
なお、その後も続くG側センサ出力値Sg(n)に緩慢な変動により、時刻t11においても風起因高方向変化が検知され、G側風検知フラグWgがWg=1とされている。
しかしながら、G側センサ出力値Sg(n)の減少が緩やかであるため、G側ベース値Bg(n)も緩やかに追従して減少しており、両者の差(G側差分値Dg(n))の値が大きくならないため、ステップT60においてYesと判断されるまでに時間がかかり、G側センサ出力値Sg(n)が急減した時刻t21において、漸くG側ガス検知信号LVg=1(ステップT61)とされり、還元性ガスの濃度上昇を検知している。なお、仮想G側ガス検知信号ALVgも同様に、時刻t21でALVg=1となっている。
一方、仮想D側ガス検知信号ALVdについては、トンネル検知を行わないため、係数が変更にならず、時刻t23以降も、ALVd=0、つまり、濃度上昇を検知できないままとなっている。
しかしながら、本実施形態2では、前述したように、D,Gセンサ変化タイミングずれ認識のサブルーチン(ステップT19:T901〜916)を有しているため、G側保持カウンタCg(ステップT912)を用いて、タイミングのずれを認識しているため、時刻t22で、適切にトンネルなどのガス滞留空間を検知できている。
しかるに、G側センサ出力値Sg(n)については、風速が増加した場合にこれが変化する方向と、還元性ガスの濃度が高くなった場合に変化する方向とは、逆方向である。具体的には、風速が増加した場合、G側センサ出力値Sg(n)は増加するかあるいは余り変化しない(図17参照)。一方、還元性ガスの濃度が高くなった場合には、G側センサ出力値Sg(n)は減少する。
従って、もし、風速が増加してD側センサ出力値Sd(n)の値が徐々に増加した場合には、G側センサ出力値Sg(n)も増加するかあるいは余り変化しない。一方、トンネルなどに進入してD側センサ出力値Sd(n)の値が徐々に増加した場合には、G側センサ出力値Sg(n)は、還元性ガスの濃度上昇によりその値が減少する。かくして、2つの特性の異なるガスセンサ素子211,221を用いることにより、D側,G側センサ出力値の変化が、風速変化によるものであるか、トンネルなどへの進入によるものであるかを区別することができている。
逆に言えば、この時刻t22以降、D側センサ出力値Sd(n)とD側ベース値Bd(n)との差(D側差分値Dd(n))が大きくなり、時刻t23において、ステップT40を満たしてLVd=1(ステップT42)とされている。
一方、仮想G側ガス検出信号ALVgは、この時刻t21〜t27のうち、時刻t24〜t25,t26〜27において、ALVg=0とされている。即ち、この期間においては、還元性ガスの濃度が低いと誤判断していることとなる。この原因は、時刻t22〜t27において、仮想G側ベース値ABg(n)が、G側ベース値Bg(n)に比して、比較的早くG側センサ出力値Sg(n)に追従して変化するため、これらの差が、第2差分値Dg(n)よりも小さな値となっている。このため、時刻t24,t26に、ステップT54においてNoと判断され、ステップT56で仮想LVgがクリアされたためである(ALVg=0)。逆に、本実施形態2のガス検出装置210では、時刻t22において、D側ベース値Bd(n)及びG側ベース値Bg(n)算出のための係数を変更したため(ステップT24,T25)、このような誤判断を防止し得たと言える。
本例では、時刻t27の直後の時刻t28に、実際のトンネルを抜け出しており、トンネルの終了検知についても適切であったことが理解できる。
例えば、上記実施形態1では、酸化性ガスに反応してセンサ抵抗値Rsが変化するタイプのガスセンサ素子11を有するガス検出装置10に用いた例を示した。しかし、還元性ガスに反応してセンサ抵抗値が変化するガスセンサ素子を用いたガス検出装置に適用することもできる。
また、上記実施形態1では、センサ出力値S(n)とベース値B(n)との比L(n)を用いてガス濃度の変化を検知した。しかし、実施形態2で示したように(ステップT32,T52参照)、センサ出力値S(n)とベース値B(n)との差分値を用いることもできる。また逆に、実施形態2において、D側差分値、G側差分値に代えて、実施形態1のL(n)と同様の比を用いることもできる。
さらに、風補償値NMSとして、ステップS37,S38によって求めた値を用いたが、他の手法によって求めた値を用いることもできる。風補償値NMSを固定値とせずに、各時点でのセンサ出力値の変化に応じた値として各時点でその都度算出して用いることもできる。
また、ステップS13で算出した移動差分値M(n)を用いてセンサ出力値S(n)の変化傾向を判断し、ステップS33,S34,S42,S43において、カウント値ANGを増加あるいは減少させたが、他の値を用いてセンサ出力値S(n)の変化傾向を判断することもできる。
また、ステップS33,S34,S42,S43におけるカウント値の増加または減少の大きさ等も適宜設定することができる。
また、上記実施形態1では、ステップS16等で、一旦現在のベース値B(n)を得た後に、ステップS20において、現在のベース値B(n)に風補償値NMSを加えてこれを補正した。しかし、予め前回のベース値B(n−1)を風補償値NMSで補正し、その後、ステップS16等で現在のベース値B(n)を得るようにしても良い。
2,202 ヒータ素子
Rh ヒータ抵抗
100,200 車両用オートベンチレーションシステム
10,210 ガス検出装置
11 ガスセンサ素子
211 D側ガスセンサ素子(ガスセンサ素子)
221 G側ガスセンサ素子(第2ガスセンサ素子)
12,212,222 検出抵抗
Rs,Rs1,Rs2 センサ抵抗値
Rd,Rd1,Rd2 検出抵抗値
Pd,Pd1,Pd2 動作点
13,213,223 バッファ
14,214,224 センサ抵抗値変換回路
15,215,225 A/Dコンバータ
16,216 マイクロコンピュータ
17,217,227 入力端子
18,218 出力端子
19 センサ出力値取得回路(取得手段)
219 D側センサ出力値取得回路(取得手段)
229 G側センサ出力値取得回路(第2取得手段)
20 電子制御アセンブリ
21 フラップ駆動回路
31,32,33 ダクト
34 フラップ
S(n) センサ出力値
Sd(n) D側センサ出力値(センサ出力値)
Sg(n) G側センサ出力値(第2センサ出力値)
B(n) ベース値(基準値)
Bd(n) D側ベース値(基準値)
Bg(n) G側ベース値(第2基準値)
Dd(n) D側差分値
Dg(n) G側差分値
LV 濃度信号
LVd D側ガス検知信号(濃度信号)
LVg G側ガス検知信号(第2濃度信号)
NMS 風補償値
VADD D側風補償値
VADG G側風補償値
Wd,Wg 風検知フラグ
TN トンネル検知フラグ
TNE トンネル終了検知フラグ
TH1,TH2,TH21,TH22,TH23,TH24 しきい値
Claims (12)
- ヒータ素子によって加熱されて、環境気体中の特定ガスの濃度変化に応じてセンサ抵抗値が変化するガスセンサ素子を用いるガス検出装置であって、
上記センサ抵抗値に応じたセンサ出力値を取得する取得手段と、
上記センサ出力値を用いて上記特定ガスの濃度変化を検知して、上記特定ガスの濃度が低下したことを示す濃度低信号及び上記特定ガスの濃度が上昇したことを示す濃度高信号を発生する濃度検知手段と、
を備え、
上記濃度検知手段は、
上記ガスセンサ素子及び上記ヒータ素子とこれらに接触する上記環境気体との相対速度の変化に起因する上記センサ出力値の変化である風起因変化の有無を、上記センサ出力値を用いて検知する風起因変化検知手段を有し、
上記風起因変化検知手段は、
上記センサ出力値の濃度高方向または濃度低方向への変化が生じたときに、この変化の継続期間から、この変化が上記風起因変化であるか否かを判定する
ガス検出装置。 - ヒータ素子によって加熱されて、環境気体中の特定ガスの濃度変化に応じてセンサ抵抗値が変化するガスセンサ素子を用いるガス検出装置であって、
上記センサ抵抗値に応じたセンサ出力値を取得する取得手段と、
上記センサ出力値を用いて上記特定ガスの濃度変化を検知して、上記特定ガスの濃度が低下したことを示す濃度低信号及び上記特定ガスの濃度が上昇したことを示す濃度高信号を発生する濃度検知手段と、
を備え、
上記濃度検知手段は、
上記ガスセンサ素子及び上記ヒータ素子とこれらに接触する上記環境気体との相対速度の変化に起因する上記センサ出力値の変化である風起因変化のうち、少なくとも変化方向が濃度高方向である風起因高方向変化の有無を、上記センサ出力値を用いて検知する風起因変化検知手段を有し、
上記風起因変化検知手段は、
上記センサ出力値の濃度高方向への変化が生じたときに、この濃度高方向への変化の継続期間から、この変化が上記風起因高方向変化であるか否かを判定する
ガス検出装置。 - 請求項2に記載のガス検出装置であって、
前記濃度検知手段は、
前記風起因変化検知手段が、前記センサ出力値の濃度高方向への変化を前記風起因高方向変化であると判定したとき、前記特定ガスの前記濃度低信号を発生する濃度低信号発生手段を有する
ガス検出装置。 - 請求項2または請求項3に記載のガス検出装置であって、
前記風起因変化検知手段は、
所定サイクル時間毎に現在及び過去の上記センサ出力値からその変化情報を取得し、上記センサ出力値が濃度高方向に変化していることを示す濃度高変化情報が連続して第1所定個得られたとき、または連続する第2所定個の上記変化情報において上記濃度高変化情報が第1所定個以上含まれることが判明したときに、前記風起因高方向変化であるとする
ガス検出装置。 - 請求項4に記載のガス検出装置であって、
前記濃度検知手段は、
前記風起因変化検知手段での前記風起因高方向変化であるか否かの判定に用いた前記変化情報、及び上記判定以降に取得した上記変化情報のうち、前記濃度高変化情報の数と、前記センサ出力値が濃度高方向に変化していないことを示す濃度低変化情報の数とが所定の関係となったときに、または上記濃度低変化情報が得られるパターンが所定パターンとなったときに、上記風起因高方向変化の終期であると判定する風変化終期検知手段を有する
ガス検出装置。 - 請求項2〜請求項5のいずれか1項に記載のガス検出装置であって、
前記濃度検知手段は、
前記風起因変化検知手段による前記風起因高方向変化の検知以降に、または、
前記風起因変化検知手段による前記風起因高方向変化の検知から、前記風変化終期検知手段によって検知した前記風起因高方向変化の終期までの期間に、
前記特定ガスの濃度変化の検知における、前記センサ出力値の上記風起因高方向変化の影響を補償する風補償手段を有する
ガス検出装置。 - 請求項6に記載のガス検出装置であって、
前記濃度検知手段は、
現在の前記センサ出力値及び過去に得た過去の基準値を用いて現在の基準値を算出する基準値算出手段と、
上記現在のセンサ出力値と上記現在の基準値とを対比して、前記特定ガスの前記濃度低信号と前記濃度高信号のいずれかを発生する濃度信号発生手段と、を有し、
前記風補償手段は、
風補償値を用いて、上記現在の基準値を、または上記基準値算出手段で用いる上記過去の基準値を補正する
ガス検出装置。 - 請求項7に記載のガス検出装置であって、
前記濃度検知手段は、
現在及び過去のセンサ出力値のうちから選択した少なくとも2つのセンサ出力値を用いて前記風補償値を算出する風補償値算出手段を有する
ガス検出装置。 - 請求項2〜請求項8のいずれか1項に記載のガス検出装置であって、
前記ヒータ素子またはこれとは異なる第2ヒータ素子によって加熱されて、前記環境気体中の前記特定ガス以外の第2特定ガスの濃度変化に応じて第2センサ抵抗値が変化する第2ガスセンサ素子と、
上記第2センサ抵抗値に応じた第2センサ出力値を取得する第2取得手段と、を備え、
前記風起因変化検知手段は、
前記センサ出力値の濃度高方向への変化が生じたときの、この濃度高方向への変化の継続期間、及び、上記第2センサ出力値の挙動を用いて、上記センサ出力値の変化が上記風起因高方向変化であるか否かを判定する
ガス検出装置。 - 請求項2〜請求項8のいずれか1項に記載のガス検出装置であって、
前記ヒータ素子またはこれとは異なる第2ヒータ素子によって加熱されて、前記環境気
体中の前記特定ガス以外の第2特定ガスの濃度変化に応じて第2センサ抵抗値が変化する第2ガスセンサ素子と、
上記第2センサ抵抗値に応じた第2センサ出力値を取得する第2取得手段と、を備え、
前記ガスセンサ素子は、
上記環境気体との相対速度が増加した場合と、この素子で検知する特定ガスの濃度が増加した場合のいずれでも、前記センサ抵抗値が増加する特性を有し、
第2ガスセンサ素子は、
上記環境気体との相対速度が増加したときには、上記第2センサ抵抗値が増加または変化しない一方、上記第2特定ガスの濃度が増加した場合には、上記第2センサ抵抗値が低下する特性を有し、
前記風起因変化検知手段は、
前記センサ出力値の濃度高方向への変化の継続期間に加え、前記第2センサ出力値の挙動を用いて、上記センサ出力値の変化が上記風起因高方向変化であるか否かを判定するガス検出装置。 - 請求項2〜請求項8のいずれか1項に記載のガス検出装置であって、
前記ヒータ素子またはこれとは異なる第2ヒータ素子によって加熱されて、前記環境気体中の前記特定ガス以外の第2特定ガスの濃度変化に応じて第2センサ抵抗値が変化する第2ガスセンサ素子と、
上記第2センサ抵抗値に応じた第2センサ出力値を取得する第2取得手段と、を備え、
ガスセンサ素子は、
上記環境気体との相対速度が増加したときには、上記センサ抵抗値が増加または変化しない一方、上記特定ガスの濃度が増加した場合には、上記センサ抵抗値が低下する特性を有し、
前記第2ガスセンサ素子は、
上記環境気体との相対速度が増加した場合と、この素子で検知する第2特定ガスの濃度が増加した場合のいずれでも、前記第2センサ抵抗値が増加する特性を有し、
前記風起因変化検知手段は、
前記センサ出力値の濃度高方向への変化の継続期間に加え、前記第2センサ出力値の挙動を用いて、上記センサ出力値の変化が上記風起因高方向変化であるか否かを判定するガス検出装置。 - 請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載のガス検出装置を含む
車両用オートベンチレーションシステム。
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