この発明を実施するための最良の形態を、添付図面に示す実施形態を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態としての駆動解除機構を具えた画像形成装置の概略全体構成を示す正面図であり、図2は、駆動解除機構の全体構成を示す正面図であり、図3は、同駆動解除機構の全体構成を示す背面図であり、図4は、駆動解除機構の正規位置の状態を示し、(a)は要部切欠平面断面図、(b)は要部側面図であり、図4は、同駆動解除機構の強制解除位置の状態を示す要部側面図であり、図5は、同駆動解除機構の解除位置の状態を示す要部側面である。
この画像形成装置は、装置の外部から入力された画像情報に対応した光書き込みによって感光体上に静電潜像を生成してトナー像を形成しこのトナー像を用紙に転写して画像を形成する電子写真方式のプリンタ1とされている。
すなわち、図1に示すように、プリンタ1は、所定に回転駆動されるドラム状の感光体2を有し、この感光体2の回転に同期した一連の画像形成処理を実行するようにしている。この感光体2の周りには、図示しない帯電装置、光書き込み装置3、図示しない現像装置、転写装置4、および図示しないクリーニング装置が配置されており、また感光体2の下方には給紙装置5が配置され、上方には定着装置6と排紙トレイ7とが配置され、給紙装置5から転写装置4および定着装置6を介して排紙トレイ7に到達するまで記録紙を移動する経路として搬送路S1を形成した図示しないシート搬送手段が設けられ、この搬送路S1の大部分は、プリンタ1の側面に沿った垂直方向に延在されている。
したがって、帯電装置が所定に帯電した感光体2上に、光書き込み装置3が画像情報に対応した光書き込みをして静電潜像を生成し、この潜像を現像装置が可視化してトナー像とし、このトナー像を記録紙に転写して画像が形成される。すなわち、給紙装置5から記録紙が搬送路S1に繰り出され、転写装置4にまで搬送された記録紙に、感光体2上に担持したトナーによって可視化されたトナー像が転写され、このトナー像が転写された記録紙は、定着装置6によって画像としてのトナー像を定着されたうえで排紙トレイ7上に排出される。
プリンタ1は、開閉可能なカバー(ドア)1Aを有し、このカバー(ドア)1Aを開くことによって、プリンタ本体内部に設けられた搬送路S1を外部に開放可能にしている。すなわち、プリンタ1には、この搬送路S1に対面したプリンタ本体における筐体壁部の一部が、プリンタ本体に対して開閉可能に構成され、開閉部が形成されている。つまり、搬送路S1の大部分を占める上下方向の経路の部分は、蓋として矩形の長板状に形成されたカバー(ドア)1Aによってカバーされている。このカバー(ドア)1Aは、その下端部が、水平な支軸を構成したヒンジ部hによってプリンタ本体である装置本体S2の一側面に開閉可能に枢着され、その上端部には開閉を容易化する図示しないハンドル状の手掛け部が形成されている。また、カバー1Aの上端裏側には、図示しないマグネットキャッチが設置され、この上端を装置本体S2側に磁力吸着してカバー1Aを閉鎖位置に保持可能としている。さらに、カバー1Aの裏面側で上端近傍には、押圧片1A1(図4(b)参照)が、面としてのカバー1A部材の裏面から所定長さ突出して設けられている。
したがって、搬送路S1において用紙ジャムが発生した場合には、カバー(ドア)1Aを開いて、搬送路S1の大部分を外部に露呈させ、用紙ジャムをすみやかに解消できる。しかも、このように用紙に対する各装置4,6による処理箇所を上下方向に揃えて配置し、これらの箇所を直線状に結んで給紙装置5から排紙トレイ7に至る搬送路S1としたので、プリンタ1の内部を屈曲させて搬送路を構成した場合に比べて、搬送距離が短くできる。このため、搬送時間が短縮され、プリント処理を高速化できる。
記録紙が搬送される経路の末端近傍に位置した定着装置6は、記録紙の搬送路S1を挟んで対向配置した定着ローラ6Aおよび加圧ローラ6Bを備えており、記録紙の画像担持面に定着ローラ6Aが接するように配置されている。定着装置6は、定着ローラ6Aと加圧ローラ6Bとで記録紙を挟持搬送しながら、記録紙に所定に加圧および加熱を加えて、未定着画像の定着処理を行なっている。
図1に示した定着装置6は、定着ローラ6Aと、この定着ローラ6Aに対して駆動力を伝達する駆動力伝達部(機構部)とが個別に設けられており、この駆動力伝達部は、図2に示すように、ユニット化した駆動力伝達ユニット(以降、伝達ユニットと称する)10として構成されている。
そして、この定着装置6では、搬送路S1で用紙ジャムが発生し、このジャムした記録紙の一部がローラ6A,6B間にあり、これらのローラ6A,6Bによって挟持されているような場合には、定着ローラ6Aへの駆動力伝達を解除できるようにしており、この解除機能を備えた駆動解除機構30が伝達ユニット10に対向配置されている。
図2は、定着ローラ6Aが取り付けられる側から、伝達ユニット10を視た図である。すなわち、定着ローラ6Aは、図示面に対して手前側に取り付けられていることになる。また、駆動力伝達部を成す伝達ユニット10の側面図である図4(a)において、符号d1で示す矢視方向から視た図が、この図2となる。
図2において、伝達ユニット10は、プリンタ1の装置本体S2(図1参照)の基枠を形成した本体フレーム1Bの一部をなす伝達ユニット本体10aを有し、この伝達ユニット本体10aは、略環状の周壁10Aと、この周壁10Aの一方の周縁に接合されて周囲を囲まれた底面10Bとを有して、その周壁10Aの立ち上がり方向の他方の周縁で囲んだ面を開口として開放した略箱形状に形成されている。伝達ユニット10は、図4(a)に示すように、前記の本体フレーム1Bに対して、定着ローラ6Aとは、個別に取り付けられている。
駆動力伝達部としての伝達ユニット10の底面10Bには、図示しないメインモータを格納したメインモータハウジング11がネジ止めされて取り付けられており、このメインモータが、上記の定着ローラ6Aを始めとして図示しない現像装置での現像ローラなどの回転体に対して、回転駆動力を供給するプリンタ1の回転駆動源とされている。すなわち、前記の底面10Bの一部から伝達ユニット10の内部空間内に向けて、メインモータが有した図示しない出力軸が、突出して設けられている。
このメインモータの出力軸には、図2に示すように、メインモータギヤ12が取り付けられ、このメインモータギヤ12には、ギヤ列の入力ギヤである中間伝達ギヤ13が噛合されている。なお、図3は、図2に示した伝達ユニット10の裏面図(図4(a)において、符号d2で示す矢示方向から見た図)である。
すなわち、このギヤ列は、中間伝達ギヤ13に同軸結合された中間ギヤ14と、この中間ギヤ14に噛合された中間ギヤ15と、この中間ギヤ15に噛合された中間ギヤ16とを有し、これらの中間ギヤ13〜16には、それぞれ減速比やトルクなどを考慮して直径や歯数が所定に設定されている。また、中間ギヤ16には、ギヤ列の最終出力歯車として、中間ギヤ16の軸を同軸にして固着された小アイドルギヤ16Aが設けられ、この小アイドルギヤ16Aには、伝達ギヤ17が噛合されている。この伝達ギヤ17は、定着ローラ6Aの長手方向の一端に外嵌されて固着された定着ローラギヤ(以降、定着ギヤと称する)6A1(図5参照)に、噛み合いおよび噛み合いを解除可能に設けられている。したがって、メインモータからギヤ列に入力された回転駆動力は、所定に減速されて、定着ローラ6Aに伝達され、定着ローラ6Aが所定の回転速度で回転される。
そして、このような定着ローラ6Aへの回転駆動力の伝達を、駆動解除機構30が伝達の解除と接続とに切り換えるようにしている。
すなわち、伝達ギヤ17は、揺動部材18によって、小アイドルギヤ16Aの周りをその周方向に移動可能に支持されており、小アイドルギヤ16Aに噛合した状態を維持しながら、定着ギヤ6A1に接離可能にして、定着ギヤ6A1との噛合を任意に解除、接続できるようにしている。この伝達ギヤ17は、図2および図4(a)に示すように、揺動部材18のギヤ端18Aに補助枠18Dを介して取り付けられている。この揺動部材18は、小アイドルギヤ16Aの支軸16Bに支持されており、この支軸16Bを支点にして揺動可能に構成されている。したがって、揺動部材18が揺動した姿勢に応じて、伝達ギヤ17が定着ギヤ6A1に対して噛み合った正規状態である正規位置P1(図4(b)参照)と、強制的に噛み合いを解除された強制解除状態(強制解除位置)P3(図5参照)と、前カバー1Aの開放時に噛み合いを解除された状態である解除位置P2(図6参照)とからなる3つのポジションのうちの、いずれかのポジションが選択される。これらの各状態となる位置は、駆動解除機構30の連動操作部材19の摺動に連動して、揺動部材18の揺動する方向を切り換えることによって、それぞれ設定できるようにしている。
駆動解除機構30の要部をなす駆動切り換え手段は、図4(b)に示すように、本体フレーム1Bに枢支され略上下方向に延在された揺動部材18と、この揺動部材18の上端を図中の右側に押圧する付勢部材としてのスプリング20とを主体に構成されている。
すなわち、揺動部材18はその略中央部が、装置本体内の本体基枠である本体フレーム1Bに支軸16Bを介して枢支されている。揺動部材18は、図4(a)に示すように、長片状の本体183と、その左右端から屈曲して延出された左右延出部181、182と、左延出部181の中間部から屈曲して延出形成された中間延出部184とで形成されている。左右延出部181、182は、支軸16Bに貫通され、枢支されている。
スプリング20は、捻りスプリングであり、揺動部材18の操作端18Bに当接して、この操作端18Bを所定方向に押圧する弾性操作端20Bを具えている。すなわち、このスプリング20は、弾性変形可能な所定太さの線状部材を、支軸16Bの周囲を左回りにに巻回して、その両端が支軸16Bの径方向の外方に突出されて設けられ、一端である固定端20Aが装置本体側の固定部材K(図2参照)に当接して係止された固定端とされ、他端である弾性操作端20Bが操作端18Bに当接された自由端とされている。そして、スプリング20は、このようにこれらの一端と他端とが、それぞれ所定に係止および当接された状態で、互いになす角度を、外力を受けない無負荷の自然状態での角度よりも狭めた角度で設置されている。したがって、スプリング20が有した自由端としての弾性操作端20Bは、その弾性復帰力によって、自然状態に戻るように、固定端20Aとなす角度を広げようとする。このため、スプリング20はその弾性操作端20Bが揺動部材18の操作端18Bと当接して押圧する状態において、揺動部材18を右回り方向に押圧する。この結果、付勢部材としてのスプリング20は、揺動部材18のギヤ端18Aに軸支された伝達ギヤ17を定着ローラ6A側の定着ギヤ6A1から離脱する方向に揺動するように、揺動部材18を付勢している。
揺動部材18の両延出部の内、図中の上側の延出部181はその突端側が支軸16Bより上方に延出する部分によって操作端18Bを形成する。さらに、図中の下側の延出部182は支軸16Bより下方部分および補助片18Dとによって、伝達ギヤ17を軸支するギヤ端18Aを形成している。
支軸16Bは、小アイドルギヤ16Aを外嵌して回転可能に軸支しており、同じくこの支軸16Bを支軸にして揺動中心とした揺動部材18のギヤ端18Aに設けられた支軸17Aに伝達ギヤ17が外嵌されて回転可能に軸支されているので、伝達ギヤ17は小アイドルギヤ16Aとの噛み合い状態を維持したままで、小アイドルギヤ16Aの周囲を回るように揺動して変位できる。
中間延出部184は、本体フレーム1B側に設けた長穴27に干渉しないように嵌挿され、貫通した延出端がソレノイド24の係止ピン24A1を係止可能なフック部18Eとして形成され、しかもその一部のバネ係止部18Fが第2スプリング23の一端に係止されている。
第2スプリング23は、その他端が本体フレーム1B側に設けたフック32に係止され、支軸16B回りに揺動部材18を正規の姿勢である正規位置P1に向けて回動付勢するように形成されている。この第2スプリング23の弾性力は、スプリング20の弾性力に比べて小さく設定され、スプリング20の弾性力が有効に働く場合はこの第2スプリング23の弾性力に抗してスプリング20の弾性力によって揺動部材18を解除位置P2側に向けて回動するようにしている。
ここで、図4(a)において、支軸16Bは互いに対向する2つの本体フレーム1Bに貫通装着されており、その支軸16Bの一端は機外側(上側)に向けて延出し、同延出端を備え、捻りスプリングであるスプリング20のコイル部が外嵌支持されている。スプリング20はその一方の突き出し端が本体フレーム1B側の係止部k(図3参照)に係止され、他方の突き出し端である弾性操作端20Bは本体フレーム1Bに設けた長穴21に干渉しないように嵌挿され、貫通した延出端が連動操作部材19の押圧端19Cおよび揺動部材18の操作端18Bに係合されている。
駆動解除機構30の要部をなす接続動作部材として連動操作部材19は、図4(a),(b)に示すように、ドアであるカバー1Aの開閉動作に連係してスライド移動可能に設けられている。
すなわち、この連動操作部材19は、所定長さで延在された長板片状に形成され、同図4(a),(b)中の左右方向の所定範囲を、スライド移動可能に設けられている。この連動操作部材19は、その中央に長さ方向に沿った長溝19A2および長穴19A1が形成される一方、押圧本体フレーム1Bには、水平方向に所定間隔をおいて一対の摺接ピン19Bが、突出して固着されており、連動操作部材19の長溝19A2および長穴19A1が、摺接ピン19Bに離脱不可に嵌挿されている。したがって、連動操作部材19は、押圧本体フレーム1Bに操作方向X(図4参照)に摺動可能に支持されている。また連動操作部材19は、同図中に右端として示される基端をドア端19Aとし、左端として示される先端を押圧端19Cとしており、ドア端19Aは、平面方向で略直角に屈折した形状に形成され、ドア端19Aが安定して接するように所定の当接面積を確保している。
したがって、連動操作部材19は、その押圧端19Cが操作端18Bと対向するが相互に押圧関係には無いように配置される。ドア端19Aは、ドアであるカバー1Aの内壁より突き出す押圧片1A1に対向した位置を占めている。ここで連動操作部材19はカバー1Aの開時には、押圧端19Cがスプリング20の押圧力を受けて基準位置Q1に位置し、カバー1Aの閉時には、押圧片1A1に押圧されて押圧位置Q2に位置するように切り換わる。なお、連動操作部材19が基準位置Q1に位置する場合、定着ローラ6Aの中心位置L0とドア端19Aの間隔がBに設定され、連動操作部材19が押圧位置Q2に位置する場合、定着ローラ6Aの中心位置L0とドア端19Aの間隔がAに設定される。つまり、カバー1Aが開位置より閉じ態位に達することで、押圧片1A1により連動操作部材19が基準位置Q1より、押圧位置Q2に変位し、連動操作部材19が(B−A)ほど異なる距離を摺動することとなる。このため、このような連動操作部材19はカバー1Aが閉じた時に押圧位置Q2に位置して駆動切り換え手段の一部である揺動部材18を接続状態(接続位置P1)に切り換え、ドアが開いた時にスプリング20の押圧力を受けて解除状態(解除位置P2、強制解除位置P3)に切り換え操作される。
また、図4(a)に示すように、捻りバネであるスプリング20の弾性操作端20Bと対向することで弾性的に揺動させることが可能な場合、当該位置に強制駆動解除手段(ドア開時と同様な駆動解除を行なう手段)としてのソレノイド24が設けられている。
揺動部材18の中間延出部184のフック部18Eには、強制駆動駆動手段であるソレノイド24が対向配置されている。ソレノイド24は、伝達ユニット10の本体フレーム1Bに対して取り付けられているブラケット25に締結固定されており、作動部であるアクチュエータ24Aに形成された係止ピン24A1を中間延出部184のフック部18Eに係止可能に形成されている。
ソレノイド24は、本体フレーム1B側に固定され所定に電気的な配線が施されたソレノイド本体24Bと、このソレノイド本体24Bから出没可能に設けられたアクチュエータ24Aとを有している。ソレノイド24は、通電されて励磁された状態が作動状態とされ、この作動状態では、ソレノイド本体24Bから所定長さ突出された長棒状のアクチュエータ24Aが、その長さ方向でソレノイド本体24B内に引き込まれるように構成されている。またこのアクチュエータ24Aの移動ストロークは、揺動部材18を図4(b)に示す正規位置P1から強制的に図5に示す強制解除位置P3に切り換え移動させるに見合うストローク量が設定されている。なお、アクチュエータ24Aの移動ストロークは、アクチュエータ24Aに設けられた鍔24Bの固着された位置によって規定されている。
このような揺動部材18を強制的に強制解除位置P3に切り換え移動させるに当たり、ここでの揺動部材18はその操作端18Bにスプリング20の弾性操作端20Bが当接し、中間延出部184のバネ係止部18Fに第2スプリング23の一端が係止されている。しかも、この状態において、揺動部材18の操作端18Bと連動操作部材19の押圧端19Cとは押圧関係に無く、単に、バネ常数の低い第2スプリング23の弾性力に抗して、支点軸である支軸16B回りに揺動部材18を回動させればよい。
このように揺動部材18の伝達ギヤ17と定着装置側のギヤ6A1との噛み合い結合をスプリング20等の弾性力を用いて解除するよう構成しているが、この揺動部材18とこれに中間延出部184およびフック部18Eを介して連動するソレノイド24を備え、ソレノイド24が中間延出部184および揺動部材18を介しての動作方向と、スプリング20、第2スプリング23の弾性力の作用方向とが互いに直角な水平方向と垂直方向の状態において、揺動部材18の揺動により伝達ギヤ17の噛み合いによる駆動連結が行なわれるので、揺動部材18や両スプリング20,23のレイアウトの自由度を向上できる。
さらに、ここでのソレノイド24の励磁力、アクチュエータとしての駆動能力を上げることなく、容量が比較的小さい小型のソレノイド(例えば3N程度)を採用できる。つまり前記した所定の制御に対して必要充分なスプリング圧力と、ソレノイド吸引力つまり電磁力による引っ張り力を抑えた手段とを採用できるという利点がある。
ソレノイド24の作動時期としては、メインモータの始動時に相当する、プリンタ1の始動時に相当させてあり、メインモータの始動時直後もしくはカバー1Aが開放された状態から閉じ態位に変化した後の所定時間の間に設定されている他に、ウォームアップ時でのプリンタ1内の雰囲気温度あるいは定着ローラ6Aの表面温度が条件とされている。
すなわち、この実施形態では、プリンタ1内の温度および定着ローラ6Aの表面温度を、それぞれ個別に検知可能な図示しない温度センサが設けられ、温度センサの出力信号が図示しないソレノイド24の駆動制御部に入力されている。プリンタ1内の雰囲気温度および定着ローラ6Aの表面温度を条件とする場合には、定着ローラ6Aの表面温度が所定の温度、この場合には定着可能な温度に近い場合あるいはプリンタ1内の雰囲気温度が通常のプリント動作時での雰囲気温度に近い場合さらにはプリンタの使用保証温度よりも低い場合には、それぞれソレノイド24を作動させないという条件が設定されている。これらの条件は、定着ローラ6Aの温度立ち上げ時と違って定着ローラ6Aが加圧ローラ6Bに接触した際の温度勾配が生じにくい傾向あるいは温度勾配が迅速に解消されるときであるので、敢えて定着ローラ6Aへの駆動力の伝達を断つことをしないでソレノイド24での消費電力を低減するようにしている。
本実施形態は以上のような構成において、駆動手段であるソレノイド24の作動態位が上述した条件に基づき設定されているので、カバー1Aの開閉状態に依存することなく、カバー1Aが閉じ態位にあるときには、伝達ギヤ17と定着ギヤ6A1との噛み合い関係を変化させることができる。
この時、スプリング20の弾性操作端20Bは、連動操作部材19の押圧端19Cと係止するが、揺動部材18の操作端18Bとは係止しない。すなわち、揺動部材18の操作端18Bは、スプリング20の弾性操作端20Bとの間に距離Cだけスキマを空けているので、引張りスプリングである第2スプリング23による左回りの力Paが加わっているだけとなる。一方、スプリング20の弾性力Fa(支点軸である支軸16B周りのモーメント)は連動操作部材19を介して押圧片1A1の押込み力Waと釣り合っている。
そして、この状態で電源オフした後、再度電源が投入された場合、ソレノイド24には所定の電圧がかかり、自重Gの力で下方に落ち込んでいたアクチュエータ24Aは、吸引力Naで上方に移動する。なお、ここで、吸引力Naによる揺動部材18の支軸16B周りのモーメントは、当然、自重Gおよび第2スプリング23の引張り力Paによるモーメント和よりも大きく設定されている。
したがって、アクチュエータ24Aが上方に移動すると、アクチュエータ24Aに打ち込まれていた係止ピン24A1と係止していた中間延出部184のフック部18Eは右回りに、つまり強制解除位置P2(図5参照)に向けて回転し始める。
なお、アクチュエータ24Aが吸引されるまでは、ソレノイド24の本体の下方に置かれている訳であるが、その間の距離が所定量より大きすぎると充分な吸引力が得られなくなってしまう(通常は5mm程度以下)。そこで、ソレノイド24の本体を搭載している本体フレーム1B側に支持された突起35を設け、アクチュエータ24Aの落下量を管理している。すなわち、アクチュエータ24Aと一体的に設けられている止め輪24Bが図5に示す強制解除位置P3の場合よりも5mm程度移動(落下)したところに突起35を位置させている。
次に、ソレノイド24の駆動時には、図5に示すように、上方にアクチュエータ24Aが移動する。この場合、アクチュエータ24Aに一体的に設けられた止め輪24Bがソレノイド24の本体下面側の図示しない緩衝部(騒音防止用)を介してソレノイド24の本体に当接して停止するまで、アクチュエータ24Aがソレノイド24に引き込まれるように移動する。したがって、アクチュエータ24Aに打ち込まれていた係止ピン24A1と係止していたフック部18Eは、右回りに回転し、第2スプリング23が引き伸ばし変位し、揺動部材18のギヤ端18Aの伝達ギヤ17は、定着ギヤ6A1と離間し、本体側から伝達された回転駆動力は、定着ユニット側に伝わらなくなる。
なお、該動作は、例えば、電源投入直後のように、定着ユニット立ち上げ時間を最も短くする手段として定着ローラ6Aの回転を一時的に停止させるものである。また、アクチュエータ24Aと揺動部材18とスプリング20、第2スプリング23以外の部品に関しては、図4(b)に示す正規位置P1の場合と比べて何ら変動は無い。
次に、カバー1Aの開放(ソレノイド24オフ)時には、図6に示すように、スプリング20の弾性操作端20Bは、連動操作部材19の押圧端19CをストロークC(図4(b)参照)ほど押込んだ後、揺動部材18の操作端18Bに当接し、押圧端19Cおよび操作端18Bの両者を図中右回転方向に押出し、図5と同様に伝達ギヤ17を定着ギヤ6A1より離間させる。
なお、スプリング20の弾性力Fcによるモーメントは、第2スプリング23の弾性力Pbやアクチュエータ24Aや揺動部材18の自重Gによるモーメントより大きく設定してある。また、ソレノイド24に通電する時間は、電源投入後の所定の時間に設定しても良いが、定着ローラ6Aの表面温度や機内温度を検知して通電/非通電を判断させても構わない。
駆動手段であるソレノイド24の作動態位が上述した条件に基づき設定されることにより、カバー1Aの開閉状態とは別に、カバー1が閉じ態位にあるときに伝達ギヤ17と定着ギヤ6A1との噛み合い関係を変化させることができる。つまり、カバー1Aが閉じ態位にあるときに、メインモータが始動された場合には、その時期に対応してソレノイド24の作動状態が設定され、この作動状態に応じてメインモータから定着ローラ6Aに対する回転駆動力の断接切換が行われることになる。これにより、定着ローラ6Aに対する新たな駆動源を用いることなくプリンタ1に装備されているメインモータを用いて定着ローラ6Aの回転状態を制御することができる。
特に、メインモータの始動時であるプリンタ1の始動時には、メインモータによって駆動される定着ローラ6A以外の回転部材である感光体や現像装置における現像ローラのウォームアップ回転に関係なく所定時間の間、伝達ギヤ17を介した定着ギヤ6A1への回転駆動力の伝達を解除することができる。このため、定着ローラ6Aが回転した場合に、この定着ローラ6Aと従動回転した加圧ローラ6Bとが互いに回転方向の先の周面が接触して定着ローラ6Aから加圧ローラ6Bに熱が奪われ、定着ローラ6Aの温度が低下してしまうのを防止することができる。この結果、定着ローラ6Aを所定の定着可能温度に昇温する立ち上がりまでの所要時間を少なくでき、ファースト(1st)プリントタイムを短くできる。しかも、定着ローラ6Aの温度低下が生じる条件にない場合、換言すれば、定着ローラ6Aが所定の定着温度に近い場合および定着温度の低下が少ない雰囲気温度である場合に、つまり機内温度が所定温度(通常の印字中の雰囲気温度)に近い場合は解除動作を省き、敢えて電力が消費される状態をなくすことができるので、電力消費によるプリンタとしての作動コスト上昇を抑えることができ、しかも、可動部の磨耗などによる劣化を防ぎ耐久性を向上できる効果が得られる。
なお、以上の実施形態においては、画像形成装置としてプリンタ1の一例を説明したが、これに代えて複写機やファクシミリ装置、プロッタ、印刷機などにおける駆動解除機構を構成しても良く、これらの場合も上述と同様に構成でき、同様の作用効果が得られる。
ところで、以上に説明した画像形成装置としてのプリンタ1の場合、駆動解除機構30のソレノイド24が負担する(打克つべき)荷重は、第2スプリング23の弾性力Pbだけではなく、ギヤの噛み合いを解除するのに要する力が追加されている。すなわち、実際に、駆動用モータの回転動作が終了した後には、図7(a)に示すように、揺動部材18に軸支された伝達ギヤ17が小アイドルギヤ16Aと定着ギヤ6A1との間に挟まれているので、伝達ギヤ17は小アイドルギヤ16Aから図中の矢印Fで示す方向の力を反力として受け、定着ギヤ6A1と伝達ギヤ17との噛み合い部でギヤの歯先が食い込んだ状態で停止することになる。すなわち、この場合には、ギヤ6A1,17同士の歯先間における、一方から他方への回転周方向の接触圧による回転力の伝達だけではなく、前記の矢印Fで示す径方向に向かう力を受けるので、ギヤ6A1,17同士の歯先が、くさびを打ち込んだのと同様に、互いに相手側に食い込んだ状態となってしまう。このため、このような食い込み状態によって、この状態からギヤ6A1,17同士を離れる方向に移動させる解除動作に抵抗する力として解除時の荷重負担が大きくなる。
この実施形態では、荷重の増加分を極力少なくするために、図7(a)のようなギヤ配列(回転方向)の場合、3つのギヤ16,17,6A1で成す「角度α」を、
90°+ギヤの圧力角(通常は20°)=110°
よりも僅かに大きめに設定することにより、食い込み力を極力少なくするようにしている。すなわち、伝達ギヤ17の回転中心を共通の頂点にして、この頂点とギヤ16の回転中心を結んだ線と、この頂点とギヤ6A1の回転中心を結んだ線とで挟まれて形成された角度を、110°よりも僅かに大きく111.5°に設定している。
すなわち、上記の90°とは、揺動部材18が、伝達ギヤ17を定着ギヤ6A1側の中心に押し付ける力が最大となる角度であり、つまり揺動部材18に加えられたスプリング20からの付勢力は、支軸16Bを支点にして作用点としての伝達ギヤ17にモーメント力として作用するが、支点から作用点までの見かけ上のモーメントアームが、この90°の位置で最も長くなるので、結果として前記の押し付ける力が最も大ききなる。したがって、この90°に歯車の圧力角20°を加味したものが、伝達ギヤ17から定着ギヤ6A1への駆動力の伝達として最も伝達効率が高いことになる。そして、この110°よりも僅かに大きな角度αを設定することにより、伝達ギヤ17と定着ギヤ6A1との互いに接した歯同士がすべり接触しながら離脱しやすくしている。
ちなみに、図7(b)に示すように、101.5°に設定して、上記角度αを、α<110°と設定した場合には、伝達ギヤ17は小アイドルギヤ16Aから図中の矢印Fで示す方向の力を反力として受けるので、伝達ギヤ17が跳ね上がってしまって駆動力が伝達されない。また、図4(c)に示すように、161.45°に設定して、上記角度αを110°よりもかなり大きく設定した場合には、伝達ギヤ17は小アイドルギヤ16Aから図中の矢印Fで示す方向の力を反力として受けるので、伝達ギヤ17と定着ギヤ6A1の食い込み力が大きくなる。なお、図4(d)に示すように、201.45°に設定して、上記角度αが180°を超えて大きく設定した場合には、ギヤ回転方向と揺動部材18の付勢方向との関係から、駆動力は伝達されない。
以上のように、3つのギヤ16,17,6A1で成す角度αを図7(a)のように110°より僅かに大きめに設定することにより、ギヤ同士間で伝達される回転駆動力を充分に確保したうえで、ギヤ同士の噛み合い部での食い込み力を少なくすることができる。
しかし、食い込み力を極力少なくする角度に設定できたとしても、経時使用に伴いギヤ歯面が磨耗したり、歯面に異物が付着したりすると、歯面の摩擦係数が増加して、結果として、食い込み力が大きくなる。また、負荷が大きくなってもこれに伴って食い込み力が増大することが知られている。すなわち特に、回転力を伝達して駆動する対象の定着ローラ6Aが大型化して重量が増加したり、定着条件として加圧ローラ6Bによる加圧力が高められたり、定着ローラ6Aがより高速回転化されたりした場合には、これらの結果として駆動負荷が増加するので、食い込み力の増大が促進される。
さらに、図4(a)に示す通り、第2スプリング23で引っ張る個所と、伝達ギヤ17が定着ギヤ6A1に噛み合っている個所とは、揺動部材18の軸方向の位置から離れているので、これらの間に介在した揺動部材18の部分の剛性強度が不充分だと、第2スプリング23による引張り力が揺動部材18の変形(捻じれ)をもたらすこともありうる。
以上のことから、ソレノイド24の引っ張り力で確実な解除動作を行なうためには、さらなる改良が必要となる。そこで、この実施形態では、以下の(1)〜(2)のいずれかの制御動作、または組み合わせた制御動作を行なうことにより、伝達ギヤ17と定着ギヤ6A1の噛み合い部の食い込み力を極力少なくしてから、ソレノイド24による強制解除動作を行なっている。すなわち、(1)の制御動作としては、:以上に説明した構成の画像形成装置(プリンタ)1において、駆動用モータとして正逆回転方向に切り換え可能なモータを有し、該モータを所定時間、正規(画像形成時)の回転方向とは逆方向に回転させる制御手段を有し、且つ、上記モータを正規(画像形成時)の回転方向に対して、逆方向に回転させるタイミングを、画像形成動作、或いはアイドル回転動作(ウォーミングアップ時)の直後としている。また、(2)の制御動作としては、:上記(1)に加えて、上記モータを正規(画像形成時)の回転方向から逆方向に変更するタイミングを、画像形成動作、或いはアイドル回転動作(ウォーミングアップ時)の終了に引き続き、連続して行なうようにしている。
なお、これまでに説明したモータやソレノイド以外の上記の制御に関連した電気的な構成を簡単に記せば、まず装置本体S2(図1参照)は図示しない制御手段としての制御部を有し、この制御部は、回路を主体に構成され、所定のタイミングを計時するタイマー機能や、プログラム機能を有している。また、この制御部は、モータの図示しない駆動回路に配線を介して電気的に接続されるとともに、ソレノイド24の図示しない駆動回路に配線を介して電気的に接続され、各駆動回路は、装置本体S2の図示しない電源部に配線を介して接続されて、それぞれに動作用の電力が供給されている。したがって、制御部は、各実施形態の制御動作用のソフトウェア・プログラムに従って、所定のタイミングで動作指令信号としての制御信号を、それぞれの配線を介して各駆動回路に送出し、この指令に基づいて各駆動回路が、それぞれのモータやソレノイド24への通電や、通電して供給する電力量、電圧極性などを制御して、互いに連係した所定の制御動作が行なわれる。
次に、具体的な各制御動作の例である実施形態を説明する。図8は、上記(1)の制御動作に対応した制御信号のタイミングチャート、図9は上記(2)の制御動作に対応した制御信号のタイミングチャートである。
これらのタイミングチャートのいずれも、モータ停止時〜電源OFF〜電源ON〜再起動〜READY遷移までの制御動作を時系列的に併記してある。すなわち、モータおよびソレノイドを所定に連係動作させる各制御信号が、その信号状態を相互に時間的に関連させた所定のタイミングで、変化させていることが示されている。
・モータのON/OFF信号
・モータの回転:正転(CW)/逆転(CCW)信号
・ソレノイドのON/OFF信号
モータ動作指令信号は、その信号電圧をロウ状態かハイ状態かのいずれかにして、モータを所定に動作させることを指示しており、ロウ状態が、モータに回転動作を開始し回転動作を継続することを示した動作(ON)信号とされるとともに、ハイ状態が、モータに回転動作を停止し停止を維持することを示した停止(OFF)信号とされている。またモータ回転方向指令信号は、モータ動作指令信号と同様に、ハイ/ロウ状態の信号電圧で、所定の動作としてモータに回転方向を指示しており、ロウ状態が、モータに正転方向に動作することを示した正転(CW)信号とされるとともに、ハイ状態が、モータに逆転方向に動作することを示した逆転(CCW)とされている。さらにソレノイド動作指令信号は、ハイ/ロウ状態の信号電圧で、ソレノイドを所定に動作させることを指示しており、ロウ状態が、ソレノイドに引き込み動作を開始し引き込んだ状態を維持することを示した動作(ON)信号とされるとともに、ハイ状態が、ソレノイドに引き込んだ状態を解除し突出した状態に復帰して維持することを示した停止(OFF)信号とされている。
なお、同図中の電源OFFは、画像形成装置の主電源を断状態とした場合だけでなく、モータやソレノイドを始めとするメカトロ部品としての電気的なアクチュエータへの電力供給を遮断した状態の場合を指す(例えば、ドア(カバー)1Aのオープン状態や省電力状態など)。
まず上記(1)に対応した制御である第1の実施形態を説明する。この第1の実施形態では、モータを停止制御する場合に、このモータの停止過程に所定時間のモータ逆回転動作を介在させて、上記の食い込み力を減少させるとともに、このモータ逆回転動作時間が、この逆回転による歯飛び音を抑制した時間になるようにしている。
すなわち、(1)の制御において、図8に示すように、正転方向に回転していたモータは、信号OFFで停止し、50ms(ミリ秒)後にモータへその回転方向を指令する信号がCW→CCWに変わった200ms後、逆回転動作(20ms)が行なわれる。すなわち、モータ動作指令信号がONからOFFに切り換わると、この切り換わった時点から50msが経過した時点で、モータ回転方向指令信号が正転方向から逆回転方向に切り換わる。そして、このモータ回転方向指令信号が切り換わった時点から200msが経過した時点を開始時点にして20msの期間、モータ動作指令信号がONに保持され、この20msの期間だけモータが逆回転動作する。
したがって、伝達ギヤ17と定着ギヤ6A1とで互いに噛み合った歯部同士が互いに食い込むことが緩和され、食い込み力を極力少なくすることができる。これとともに、20msだけモータを逆回転動作させているので、この際の歯飛び音の発生が、1回以下に抑制される。
その200ms後には、回転方向信号を再びCWに戻し、次のモータ回転スタートに備える。すなわち、前記のモータ逆回転動作を行なった20msの期間が完了した時点から200msが経過すると、モータ回転方向指令信号が逆回転方向から正転方向に切り換えられて復帰する。そして、電源がOFF→ONの後、まずソレノイド24がONとなり、前述の強制駆動解除動作が行なわれる。このとき、伝達ギヤ17と定着ギヤ6A1の食い込みが極力少なくなっているので、立ち上がり時のソレノイド24による解除動作を確実に行なうことができる。また、駆動解除動作から500ms後にモータが正規の方向に8秒間回転し、停止後、ソレノイド24がOFFとなり、解除動作終了とともにREADY状態に遷移する。
なお、この実施例は一例であり、READYまでの時間を10秒間とするために、各時間は様々に設定しても構わないが、逆回転時間X(s)は下記式の関係を満たすように設定して、この逆回転時の歯飛び音の発生を低減または解消するようにしている。
すなわち、
モータ逆回転動作時間:X(単位s.この実施例では、一旦停止後の0.02s)
モータの回転数:N(単位rps;毎秒回転数)
定着ローラ6Aに設けられたギヤ6A1の歯数:Z
定着ローラ6Aのモータの回転数に対する減速比:A
としたとき、下記の式を満たすように逆回転時間X(s)を設定した。
X・N ≦ A/Z
なお、換言すれば、モータ逆回転動作時間:Xとは、モータが逆回転動作を維持して継続させる時間を規定した時間であり、モータの回転数:Nとは、モータ出力軸の回転速度であり、定着ローラ6Aのモータの回転数に対する減速比:Aとは、モータの回転数に対する定着ローラ6Aの回転数として得られる回転速度比である。
この式の両辺に定着ローラ直径Dと円周率πを掛けると、下記式が得られる。
D・π・N・X ≦ D・π・A/Z
この式における右辺のAを、左辺に移項すると、下記式が得られる。
∴ (D・π・N/A)・X ≦ D・π/Z
したがって、この式では、下記の関係が成立していることを示していることになる
∴ (定着ローラ6Aが1秒間に回る周速)・X ≦ (定着ローラ6Aがギヤ6A1の1歯毎に回る距離、つまりギヤ6A1のある1つの歯から回転前進方向の次の歯が噛合するまでに必要な定着ローラ6Aが回る周方向の距離)
このような過程から、最終的に下記式が導出される。
∴ (定着ローラ6AがX秒間に回る理論上の距離) ≦ (定着ローラ6Aがギヤ6A1の1歯毎に回る距離)
したがって、上記式を満たすように、逆回転時間X(s)を設定すると、モータが逆転する際の歯飛び音の発生は、理論上、1回以下に抑えることができる。すなわち、ギヤ6A1の1歯毎に回る距離以下の距離に、定着ローラ6Aが回った距離となるように、逆回転時間X(s)を定めた。
なお、「理論上」と定義して付帯条件を付加したのは、1)距離が増加する要因として、モータ停止後の慣性でギヤ列が計算値以上に回転すること、2)距離が減少する要因として、モータ回転開始時の駆動伝達にロスが生じること、との相反する2つの要因が挙げられるからである。
しかしながら、実際には、前記の1)および2)の要因が、互いに相殺し合って、理論値と実際値とは、ほぼ一致することが実証されている。すなわち、本発明者は、実験で確かめて、実際上問題なく、充分な実用性が得られることを確認した。
実証例として、駆動解除機構が設けられた定着装置を有した画像形成装置としての実機に、下記の諸条件から得られる逆回転時間X(s)を設定するとともに、他の逆回転時間X(s)を設定して検証した。すなわち、これらの諸条件としてのN,Z,Aは、実機から取得した。
N=(1680rpm)=28rps,A=26.33,Z=41とすると、
X・N ≦ A/Z の関係式から、
X ≦ A/Z/N = 0.023s (=23ms)
すなわち、上記の条件に対する適切な逆回転時間X(s)としては、23msが得られる。このため、逆回転時間Xを20msに設定した。
実機の試験では、比較例とした30ms,25msの設定では、歯飛び音が「カタカタッ」と2回以上聞こえた。これに対して、この実施形態による20msの設定では、「カタッ」という1回の動作音に留まり、違和感はなかった。
なお、ここで重要なのは、伝達ギヤ17は、定着ギヤ6A1と減速することなくギヤ列として1列に連結されたギヤ列中の1つのギヤとすることである。すなわち、増速段や減速段を含まないギヤ列中であれば、定着ギヤの1歯回転当たりの時間は同じであり、上記の式の関係が成立する。換言すれば、モータからの回転駆動力が、中間ギヤ13〜16からなる所定の減速比Aを有したギヤ列を介して定着ローラ6Aに伝達された構成において、この所定の減速比Aを有したギヤ列以外の要因で、定着ローラ6Aへ伝達する回転速度が変わらないことである。
しかし、これに反して、減速する前の段であると、ギヤ1歯当たりの回転時間が定着ギヤ1歯回転当たりの時間より短くなることから、所定の距離だけ回転させたときには、その分、余計に歯飛び音が聞こえてしまう計算になる。
また、逆転時間(距離)の設定目的は、ソレノイドの動作を確実にする以外に、感光体ドラムや定着ローラを適宜逆回転させ、表面に堆積する紙紛やトナーの固着を防止する場合もあるので、その時間を極端に短くすることはできない。
ちなみに、この実施例では、感光体ドラム径:d=定着ローラ径:D=30mmとしたときに、前記の堆積や固着を防止するための逆回転距離は、1〜3mmであるので、この逆回転距離に必要な逆回転時間は、下記式から算定できる。
1(〜3)/(D・π・N/A)=1(〜3)/(30・π・28/26.33)=0.01〜0.03s=10〜30ms
したがって、前記の堆積や固着の防止に必要な逆回転時間が、10〜30msとなるので、堆積や固着を防止する目的に関しても狙い通りのものとなる。すなわち、堆積や固着を防止する10〜30msの逆回転時間の範囲内に、上記の適切な逆回転時間X(s)として20msが収まるので、両者が互いに排除しあうことなく、それぞれの目的を達成することができ、両者の効果を同時に得ることができる。
このように(1)の制御動作を実施する第1の実施形態によれば、駆動解除機構が設けられた定着装置を有した画像形成装置において、定着装置は、モータ駆動源から減速ギヤ列を介して所定に減速された回転駆動力が伝達されて回転駆動される定着ローラを有し、この定着ローラに固着された ギヤには、前記の減速された回転駆動力が伝達ギヤを介して入力され、駆動解除機構は、定着ローラの ギヤに対して、伝達ギヤを接離可能に構成し、かつ、伝達ギヤは定着ローラのギヤと減速することなく連結可能とされており、少なくとも、モータの回転数:N、定着ローラに設けられたギヤの歯数:Z、モータの回転数に対する定着ローラの回転数との比である減速比:A、が予め定められ、これらのN,Z,Aに基づき、X・N≦A/Zとした関係式を用いて、モータの逆回転時間X(s)を設定して所定にモータを制御し、モータを所定に逆回転動作させているので、この逆回転時間に回転した定着ローラの周面の距離を、ギヤ1歯当たりが回転する距離よりも短くすることができ、逆回転時の歯飛び音の発生を最低限(1回以下)に抑えることができる。このため、歯飛び音による不快感や違和感が生じることを未然に防止できる。したがって、機械的な構成を何ら変更や新たな構成を追加することなく、制御内容を変更するだけで、前記の歯飛び音を抑えた効果が得られるので、コスト上昇を抑制できる。また、このような実施形態の構成を有した画像形成装置であれば、同様に制御内容を変更するだけで、前記の効果が得られるので、コスト上昇を抑制しながら、広い適用範囲が得られる。
次に、上記(2)に対応した制御の第2の実施形態を説明する。この第2の実施形態では、所定のモータ停止制御を前提にして、この停止制御によって実際に行なわれたモータ逆回転時間が、この逆回転による歯飛び音を防止した時間になるようにしている。また、第2の実施形態では、モータに逆回転動作させる指令を発するタイミングを、予め正回転動作していたモータがその正回転の制動に要する時間、謂わば、正回転動作から逆回転動作に直接切り換えた逆回転動作指令に対する応答遅れ時間を余分に見込んだ早めのタイミングとしている。
すなわち、図9に示すように、CW方向に回転させていたモータは、信号OFFで停止するY秒(55ms)前に、回転方向信号がCW→CCWに変わる。この間、モータは急制動がかかり、しかる後に逆回転することになる。
この実施形態(上記した実機)では、Y=55ms中の30〜40msがCW方向の制動時間、つまりモータ正転方向の回転の制動にかかる時間であると確認されており、この制動時間を除いた55ms中の残りの20ms〜25msの時間が、CCW回転に割当てられた制御になる。つまり、前記の55ms中のうち、前半の30〜40msは、実際にはモータ出力軸およびこの軸に連係したギヤ列が正転方向に回転してしまう時間であり、後半の20ms〜25msの時間が、実際に逆転方向に回転する時間となる。
すなわち、モータ制御として、モータ動作指令をON状態からOFF状態に切り換えて、モータを停止させる制御をしている場合に、このOFF状態に切り換える時点を基準にして、OFF時点よりもY秒(55ms)前の時点を、回転方向信号を正転指令状態から逆転指令状態に切り換える時点としている。この結果として、実際にモータがCCW回転方向に回転する時間は、この逆回転時間に回転した定着ローラの周面の距離が、ギヤ1歯当たりの回転距離よりも短くなる時間となる。
このような逆回転時間を得るためのY秒は、下記式の関係を満たすように設定して、この逆回転時の歯飛び音の発生を低減または解消するようにしている。
すなわち、
モータがON→OFF信号に変わる前のCCW信号時間:Y(単位s;この実施例では0.055秒〔55ms〕)
モータの回転数:N(単位rps;毎秒回転数)
定着ローラ6Aに設けられたギヤ6A1の歯数:Z
定着ローラ6Aのモータの回転速度に対する減速比:A
としたとき、下記の式を満たすようにCCW信号時間Yを設定した。
Y・N≦A/Z×2.5
なお、換言すれば、CCW信号時間:Yとは、モータに逆回転方向に回転動作させる指令信号を発するタイミングを規定した時間であり、モータ動作指令信号がON指令状態からOFF指令状態に変わる時点を基準の起点にして逆回転指令に切り換わる時点を指定したこれらの2つの時点の間の時間的な長さを示している。またモータの回転数:Nとは、モータ出力軸の回転速度であり、定着ローラ6Aのモータの回転数に対する減速比:Aとは、モータの回転数に対する定着ローラ6Aの回転数として得られる回転速度比である。
すなわち、上記式を整理した下記式に、上記の第1の実施形態で用いた実機から得られる条件としてN,Z,Aの各値を代入して、Yを求めると、
Y ≦ A/Z×2.5/N=0.058s=58ms
となる。
したがって、上記式を満たすように、実機にCCW信号時間Y(55ms)を設定すると、実際に逆回転する際の歯飛び音の発生は、上記の第1の実施形態の制御と同様に、理論上、1回以下に抑えることができ、また、上記の第1の実施形態と同様な理由から充分な実用性が得られることが確認されている。
なお、このようにしてモータの停止を完了した後の制御は、図8と同じであるので、説明を省略する。
このように(2)の制御動作を実施する第2の実施形態によれば、駆動解除機構が設けられた定着装置を有した画像形成装置において、定着装置は、モータ駆動源から減速ギヤ列を介して所定に減速された回転駆動力が伝達されて回転駆動される定着ローラを有し、この定着ローラに固着されたギヤには、前記の減速された回転駆動力が伝達ギヤを介して入力され、駆動解除機構は、定着ローラの ギヤに対して、伝達ギヤを接離可能に構成し、、かつ、伝達ギヤは定着ローラのギヤと減速することなく連結可能とされており、少なくとも、モータの回転数:N、定着ローラに設けられたギヤの歯数:Z、モータの回転数に対する定着ローラの回転数との比である減速比:A、が予め定められ、これらのN,Z,Aに基づき、Y・N≦A/Z×2.5とした関係式を用いて、CCW信号時間Yを設定して所定にモータを制御し、モータを所定に逆回転動作させているので、この逆回転動作で実際に回転した定着ローラの周面の距離を、ギヤ1歯当たりが回転する距離よりも短くすることができ、逆回転時の歯飛び音の発生を最低限(1回以下)に抑えることができる。このため、歯飛び音による不快感や違和感が生じることを未然に防止できる。
他方、この(2)の制御動作では、モータを正規(画像形成時)の回転方向と逆方向に回転させる逆回転の開始タイミングを、画像形成動作(或いはアイドル回転動作〔ウォーミングアップ時〕)の終了に引き続き、連続して行なわせたことにより、逆転動作力を以ってモータの制動動作とすることが可能となる。このため、上記(1)の制御の効果に加えて、ブレーキ機能を有する駆動メカニズムをソフトウェア制御だけで構成することができ、ユニット駆動停止時の(速度変動による)異音の防止や正確な回転停止位置の制御が可能となる。また、ブレーキ機能を構成するための専用回路も不要となる。
次に、上記(1)に対応した制御のさらなる改良例としての第3の実施形態、および上記(2)に対応した制御のさらなる改良例としての第4の実施形態を説明する。すなわち、これらの第3および第4の実施形態では、モータの逆転時間の時間的な長短に拘わることなく、モータの逆回転動作前に、ソレノイドを用いて駆動伝達を遮断して、歯飛び音を防止した構成とされている。つまり、モータ逆回転動作前に、物理的に伝達ギヤ17と定着ギヤ6A1とを離して噛み合いを解除させるように制御して、歯飛び音の発生を防止するようにしている。
まず第3の実施形態は、上記の第1の実施形態の制御に加えて、図10に示すように、逆転動作開始の直前に、ソレノイド24をオンして、駆動解除したものである。すなわち、ソレノイド24に通電してオン動作させると、この通電によりソレノイド24内に生じた電磁力によって、ソレノイド24のアクチュエータ24Aがソレノイド24に引き込まれ、揺動部材18が伝達ギヤ17を定着ギヤ6A1から離す方向に揺動され、定着ギヤ6A1からその歯車径方向に伝達ギヤ17が離れる。なお、このようにソレノイド24をオン動作させて伝達ギヤ17と定着ギヤ6A1と噛合を解除させた制御以外は、第1の実施形態の制御と同様なので、説明を省略する。
したがって、このようにギヤが離間するので、モータが逆回転しても歯飛びは一切起こり得ない。すなわち、伝達ギヤ17と定着ギヤ6A1との歯同士の噛合を解除しているので、歯同士の噛合を原因とした歯飛び現象は、一切生じることがなくなり、歯飛び音を生じさせなくできる。
なお、実際に聞こえるのは、ソレノイド24の動作音であるが、このソレノイド動作音を消音化する手段は、広く知られているので説明は省略する。すなわち、適宜、何らかのソレノイド消音手段を適用してよい。
このように第3の実施形態によれば、モータ逆回転動作前に、ソレノイドをオン動作させて、歯飛びの原因となるギヤ同士の噛合を解除しているので、逆回転時の歯飛び音の発生を未然に防止できる。このため、歯飛び音による不快感や違和感が生じることを解消できる。
次に、第4の実施形態は、上記の第2の実施形態の制御に加えて、図11に示すように、逆転動作開始の直前に、ソレノイド24をオンして、駆動解除するものである。また、ソレノイドの動作としては、上記の図10に示された第3の実施形態と同様であるが、この第3の実施形態の場合、ソレノイド24がオン動作するタイミングは、モータが正回転している最中としている。
なお、実際には、このタイミングでソレノイド24に通電してオン動作させても、ギヤ同士は離間しない。すなわち、これは、正回転駆動時には、ギヤ17とギヤ6A1が食い込む力が停止時のそれよりも大変強力であるためである。しかしながら、解除を容易化するために食い込み力を減少させるという観点からは、食い込み力の充分な減少効果が得られる。
このように第4の実施形態によれば、モータ逆回転動作前に、ソレノイドをオン動作させて、歯飛びの原因となるギヤ同士の噛合を解除しているので、逆回転時の歯飛び音の発生を未然に防止できる。このため、歯飛び音による不快感や違和感が生じることを解消できる。
請求項2の発明によれば、駆動解除機構が設けられた定着装置を有した画像形成装置において、少なくとも、モータの回転数:N、定着ローラに設けられたギヤの歯数:Z、モータの回転数に対する定着ローラの回転数との比である減速比:A、が予め定められ、かつ、ギヤは定着ローラのギヤと減速することなく連結可能とされており、これらのN,Z,Aに基づき、Y・N≦A/Z×2.5とした関係式を用いて、CCW信号時間Yを設定して所定にモータを制御し、モータを逆回転動作させているので、逆回転時間に回転した定着ローラの周面の距離を、ギヤ1歯当たりの回転距離よりも短くすることができ、逆回転時の歯飛び音を最低限(1回以下)に抑えることができる。したがって、機械的な構成を何ら変更したり新たな構成を追加したりすることなく、制御内容を変更するだけで、前記の歯飛び音を抑えた効果が得られるので、コスト上昇を抑制できる。また、この発明の構成を有した画像形成装置であれば、同様に制御内容を変更するだけで、前記の効果が得られるので、コスト上昇を抑制しながら、広い適用範囲が得られる。
なお、以上に示した第1〜4の実施形態は一例であり、これらを組み合わせて実行しても構わなく、例えば、モータ逆転動作を、モータ回転動作の停止前までに行なう第2の実施形態と、モータ停止後に行なう第1の実施形態との双方を実施するように制御することで、より信頼性を高めることができる。