JP4454817B2 - 導波路型光モジュール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば高密度波長多重伝送方式(DWDM)光通信システムにおいて用いられるアレイ導波路(AWG:Arrayed Waveguide Grating,アレイド・ウェ−ブガイド・グレーティング)などの、温度制御を必要とする導波路型光モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
図9は従来の導波路型光モジュールの一例を示した斜視図である。この導波路型光モジュール1は、上部に開口するパッケージ本体2aと板状の蓋2bとからなる中空直方体状のパッケージ2内に導波路型光素子3が収められて概略構成されている。
【0003】
導波路型光素子3は、その光学特性に温度依存性があるもので、この例の導波路型光素子3はアレイ導波路(AWG)型光合分波器である。
この導波路型光素子3は、基板4上に、長さが互いに異なる複数の弓型アレイ導波路5が並列して設けられており、その入射ポート8側と出射ポート9側にスラブ導波路6、7がそれぞれ設けられている。この導波路型光素子3は、例えばシリコン基板からなる基板4上に石英ガラス層を形成し、この石英ガラス層にゲルマニウムなどの屈折率上昇効果を有するドーパントを導波路パターンに沿ってドープすることによって製造される。
【0004】
導波路型光素子3の入射ポート8側に隣接して、ファイバ配列部品10aが設けられている。ファイバ配列部品10aは、支持板10b上に形成された複数のV溝内に複数本の光ファイバ10…の先端部分がそれぞれ収められ、接着剤などによって一体に固定されたものであり、これによって光ファイバ10…の先端部分がアレイ状に配列されている。
また導波路型光素子3の出射ポート9側にも同様に、支持板11b上に複数本の光ファイバ11…の先端部分が固定されたファイバ配列部品11aが設けられている。
なお、支持板10b、11bから延びる光ファイバ10…および光ファイバ11…は、パッケージ本体2aに設けられた孔2c、2dからパッケージ2外部にそれぞれ引き出されている。
【0005】
ところで、AWG型光合分波器(導波路型光素子3)は、波長の異なる光の合波、分波を行うもので、例えば、光ファイバ10から1つの入射ポート8に互いに波長が異なる複数チャンネルの光の合波光を入射すると、この合波光は入射側のスラブ導波路6を導波して、その各アレイ導波路5…に分配され、さらに出射側のスラブ導波路7で干渉して複数の出射ポート9…に各チャンネル毎に分配され、ファイバ配列部品11aに固定された複数の光ファイバ11…から波長の異なる光がそれぞれ出力されるようになっている。
【0006】
このようなAWG型光合分波器(導波路型光素子3)の光学特性は温度依存性を有するので、導波路型光素子3の下には板状のペルチェ素子12が取り付けられている。また、ペルチェ素子12には電力を印加するための導電線13、14が接続されており、これらはパッケージ本体2aに設けられた孔2e、2dからそれぞれ外部に引き出されている。
【0007】
ペルチェ素子12はペルチェ効果と呼ばれる現象を利用した素子で、熱電子に電界をかけて移動させ、上下面の一方の温度を下げ、かつ他方の温度を上げることができるものである。上下面のいずれの温度を上げるか下げるかは、電界方向によって決定することができる。したがって、導波路型光素子3の温度を下げる冷却素子として用いることもできるし、温度を上げる加温素子として用いることもできる。
この例において、ペルチェ素子12は導波路型光素子3を冷却する冷却素子として用いられており、導波路型光素子3側の上面が冷却面(制御面)12a、下面が熱を放出する放熱面12bである。
そして、導波路型光素子3の上には、パッケージ本体2aに設けられた孔2gから棒状の温度センサ15が挿入されており、この温度センサ15の測定温度によってペルチェ素子12が制御され、一定の温度条件が保たれるようになっている。
【0008】
また、ペルチェ素子12による導波路型光素子3の冷却が効率良く、かつ均一に行われるように、図10に示すように、ペルチェ素子12の放熱面12bにアルミ板等からなる放熱板21を貼り付けるとともに、導波路型光素子3の下面全面に平坦な均熱板20を密着して設けることが提案されている。図10(a)は上面からみた平面図、(b)は(a)中のB−B線に沿う断面図である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように放熱板21および均熱板20を設けた構造の導波路型光モジュール1にあっても、環境温度の影響で導波路型光素子3上において温度勾配が生じ、光学特性が不安定になるという問題があった。
すなわち、ペルチェ素子12の制御面12a上に均熱板20を介して導波路型光素子3を積層しても、制御面12aの中央部上に積層されている部分よりも、制御面12aの周縁部上の部分の方が環境温度の影響を受け易い。このため、ペルチェ素子12の制御温度より環境温度の方が高い場合には、制御面12aの周縁部上の部分の方が中央部上の部分よりも温度が高くなる。また逆に、ペルチェ素子12の制御温度より環境温度の方が低い場合には、制御面12aの周縁部上の部分の方が中央部上の部分よりも温度が低くなる。
さらに、ペルチェ素子12の制御面12aの面積が導波路型光素子3および均熱板20の面積より小さい場合には、均熱板20内において、ペルチェ素子12に接している部分と接していない部分とで温度差が生じるので、導波路型光素子3上における温度勾配はさらに顕著になる。
【0010】
導波路型光素子3上においてこのような温度勾配が生じ得るということは、導波路型光モジュール1において、温度センサ15の測定温度が一定となるように温度制御しても、導波路型光素子3上のアレイ導波路5の各部分の温度が環境温度に依存して変動し得るということであり、このために光学特性が環境温度の影響を受けて変動することが問題であった。
例えば、導波路型光素子3がAWG型光合分波器である場合には、温度変化による光学特性の変動により、例えば図11に示すように、出射光の中心波長がシフトするので、利用する複数のチャンネルの波長間隔を小さくしてチャンネル数を増大させることにより通信情報密度を高くすることが難しい。図11のグラフは、縦軸を透過損失(単位;dB)、横軸を波長として、AWG型光合分波器からの出射光について透過損失の波長特性を模式的に示したものであり、実線は常温時、波線は高温時、一点鎖線は低温時の特性をそれぞれ示している。この図に示されるように、温度変化によって出射光の中心波長がシフトするため、隣り合ったチャンネル間において相互に影響しあい、S/N比の悪化やクロストークの増大といった不都合が生じる。
本発明は前記事情に鑑てなされたもので、AWGなどの温度依存性の高い導波路型光素子に対して精度良く温度制御できるようにすることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の導波路型光モジュールは、温度依存性を有する導波路型光素子に、金属製の均熱板および空気層からなる熱緩衝層を介して前記導波路型光素子の温度を制御する加温冷却素子が設けられてなる導波路型光モジュールであって、前記均熱板の少なくとも一部が前記導波路型光素子に接しており、前記均熱板上に4つの凸壁が設けられ、該4つの凸壁を介して、前記均熱板上に前記導波路型光素子が配され、前記4つの凸壁によって囲まれた部分が前記熱緩衝層をなし、前記均熱板の上面から見たとき、前記4つの凸壁は、矩形の4つの角を切り欠いた形状を描くように、互いに離隔して配置され、前記熱緩衝層が前記導波路型光素子の要制御部分と重なるように配されたことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1および図2は本発明の導波路型光モジュールの第1の実施形態を示したもので、図1は断面図であり、図2は従来の構造と異なる部分を模式的に示した分解斜視図である。
本実施形態の導波路型光モジュール100が、図10に示した従来の導波路型光モジュール1と大きく異なる点は、均熱板30に凹部31が設けられている点である。図10に示したものと同様の構成については同符号を付してその説明を省略する。
【0013】
本実施形態においては、導波路型光素子3の下面に接して均熱板30が設けられており、この均熱板30の下面に接して加温冷却素子32が設けられている。そして均熱板30の上面中央部には凹部31が設けられており、この凹部31には熱緩衝材が充填されて、熱緩衝層が形成されている。熱緩衝材としては、熱伝導度が0.2〜0.3W/m・K程度のものが好ましく、具体例としてはシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリレート樹脂等の樹脂が挙げられる。本実施形態ではシリコングリス(信越シリコーン社製のHIVAC−G、G30など)が凹部31内に充填されている。
なお凹部31内に熱緩衝材を充填せずに、凹部31内の空気層が熱緩衝層の役割を果たすように構成することもでき、熱緩衝層を空気層で構成すれば熱緩衝の効果が高いので熱緩衝層を薄くでき、モジュール全体を薄くすることが可能となる。
均熱板30の材質は、熱伝導性が高いものが好ましく、例えば銅、アルミニウム等が好ましく用いられる。均熱板30の大きさは、少なくとも導波路型光素子3のうち温度制御を必要とする部分と同じ大きさが必要であり、これより大きいことが好ましく、導波路型光素子3の下面全体と同じ大きさであってもよく、導波路型光素子3の下面全体より大きくてもよい。均熱板30の厚さは、厚すぎると加温冷却素子32からの熱が導波路型光素子3に伝わり難くなり、薄いほど均熱板30内における温度分布の均一性が低下する。均熱板30の厚さはその材質にもよるが、概ね1.0〜2.5mm程度とするのが好ましい。均熱板30の形状は上面及び下面が互いに平行な平坦面であればよく、その平面形状は特に限定されないが、導波路型光素子3の下面と同じかまたは相似の形状が、導波路型光素子3全体における温度分布の均一性を向上させるうえで好ましい。また均熱板30の凹部31を除く部分の厚さが均一であることが望ましい。
【0014】
本実施形態の導波路型光モジュール100は、後述するように、導波路型光素子3のうち凹部31上に位置する部分において良好な温度均一性が得られ、ここから周辺部に向かって漸次温度が降下(または上昇)する温度分布が得られる。したがって、凹部31の大きさ(広さ)は、導波路型光素子3のうち温度の均一性を要する要制御部分と同じかそれ以上であることが好ましい。ただし、凹部31が大きすぎると、凹部31内においても温度不均一が生じるので、凹部31内における温度分布が均一性を保つことができる範囲内とすることが望ましい。例えば、本実施形態のように導波路型光素子3がAWG型光合分波器である場合、導波路型光素子3全体の大きさは一般に30mm×30mm〜70mm×50mm程度であり、そのうち精密な温度制御を要するアレイ導波路5(要制御部分)は、一般に20〜40mm×5〜20mm程度の大きさの範囲内に形成されているので、凹部31の大きさは50mm×30mm程度を上限とすることが好ましい。また凹部31の深さは、浅すぎると熱緩衝層を設けたことによる温度制御性の向上効果が十分に得られず、また凹部31が深いほど熱緩衝層が大きくなるので凹部31内での温度不均一が生じ難くなる。したがって凹部31の深さはこれらの不都合が生じない範囲で適宜設定可能であるが、例えば0.3〜1.0mm程度に好ましく設定される。
【0015】
また凹部31を設ける位置は、この凹部31を設けない場合に、加温冷却素子3が発熱(または吸熱)したときに均熱板30のうちで最も温度が高く(または低く)なる部分が好ましい。また後述するように、導波路型光素子3のうちでも特に凹部31上に位置する部分において良好な温度均一性が得られるので、凹部31を設ける位置は、導波路型光素子3のうち温度の均一性を要する要制御部分の下に位置する部分でもあることが好ましい。さらに、本実施形態のように均熱板30の中央に設けると、均熱板30内における温度差がより小さくなるので好ましい。
また、本実施形態では均熱板30の上面側に凹部31が設けられており、凹部31内の熱緩衝層が導波路型光素子3に接するように構成されているが、凹部31を均熱板30の下面側、すなわち加温冷却素子32と接するように設けることもできる。特に本実施形態のように熱緩衝層が導波路型光素子3に接するように構成すれば、熱緩衝層中に温度センサを封入することが可能であり、また熱緩衝層を加温冷却素子32に接するように構成すれば、導波路型光素子3と均熱板30との接触面積が増えて機械強度が増大する。
【0016】
加温冷却素子32としては、温度センサ15等の測温素子の測定結果に応じて、導波路型光素子3の温度を制御可能であり平坦な吸熱面および/または発熱面を有するものが用いられる。具体的にはペルチェ素子や面状発熱体等が好ましく用いられる。加温冷却素子32は、加温機能のみを有するものでも、冷却機能のみを有するものでも、あるいは両方の機能を有するものでもよい。
加温冷却素子32の大きさは特に限定されない。本実施形態では均熱板30に凹部31が設けられその内部が熱緩衝層となっているので、加熱冷却素子32の吸熱面および/または発熱面が比較的大きくて面内において多少の温度不均一が生じても、導波路型光素子3に対しては均一に温度制御を行うことができる。加温冷却素子32の大きさは導波路型光素子3における要制御部分の大きさに応じて適宜選択することができるが、一般に、ペルチェ素子の場合は発熱または吸熱面の大きさが400(または450)〜900mm2程度のものが用いられ、面状発熱体の場合は発熱面の大きさが1000mm2程度のものが好適に用いられる。加温冷却素子32の大きさは、凹部31より大きくても、小さくても、あるいは同じであってもよい。
【0017】
本実施形態の導波路型光モジュール100にあっては、導波路型光素子3の下面に接して均熱板30が設けられ、均熱板30の下面に接して加温冷却素子32が設けられており、均熱板30の上面すなわち導波路型光素子3との接触面側に凹部31が設けられている。したがって、加温冷却素子32が温度センサ15等の測温素子の測温結果に応じて導波路型光素子3の温度を制御するために発熱(または吸熱)した時に、加温冷却素子32からの熱が均熱板30および凹部31内の熱緩衝層を介して導波路型光素子3に伝わる。そして加温冷却素子32による温度の上昇(または降下)が大きい部分に、熱緩衝層が存在しているので、導波路型光素子3内における温度分布の均一性が凹部31が無い場合に比べて格段に向上する。
【0018】
図3は、均熱板30上の凹部31の有無による温度分布の違いを示したもので、(a)は凹部31が形成されている均熱板30を用いたときの導波路型光モジュール100における導波路型光素子(AWG型光合分波器)3上の温度分布を示したもので、(b)は凹部が形成されていない均熱板を用いたときの導波路型光モジュール1における導波路型光素子3上の温度分布を示したものである。両者の測定に際し、凹部31の有無以外の条件はすべて同じとした。測定は環境温度25℃、制御温度50℃で行い、温度分布の測定結果は0.1℃刻みで示した。
図3において、導波路型光素子3上のアレイ導波路5が形成されている範囲を斜線で示しており、(a)においては横方向−10mm〜+10mm、縦方向0mm〜+10mmの範囲、(b)においては横方向−10mm〜+10mm、縦方向−5mm〜+5mmの範囲である。また図3(a)において凹部31が設けられている範囲は横方向−17〜−13、縦方向0〜10の範囲である。
図3(a)に示されるように、均熱板30に凹部31が設けられている構造では、アレイ導波路5が形成されている部分(斜線部分)全体における温度差が0.1℃以内であるのに対して、図3(b)に示されるように、凹部31を設けなかった場合は、アレイ導波路5が形成されている部分(斜線部分)の横方向両端部分で0.2〜0.3℃の温度降下が生じていた。
【0019】
均熱板30に凹部31を設けると、図3(a)にも示されるように、導波路型光素子3のうちでも、特に凹部31上に位置する部分において良好な温度均一性が得られ、ここから周辺部に向かって漸次温度が降下(または上昇)する温度分布が得られる。したがって、導波路型光素子3内の温度制御を要する要制御部分が凹部31上に位置するように構成することによって、温度制御の精度をより向上させることができる。
また、凹部31を設けることによって、これを設けない場合に比べて、導波路型光素子3内のより広い範囲の温度を均一にすることができる。したがって、導波路型光素子3内において温度制御を必要とする要制御部分が広くても、また要制御部分に比べて加温冷却素子32の発熱面(または吸熱面)が小さくても、要制御部分全体の温度分布を精度良く均一化することができる。例えば、導波路型光素子3がAWG型光合分波器である場合には、アレイ導波路5が形成されている部分のみならず、スラブ導波路6,7が形成されている部分まで要制御部分といsて温度分布を均一にすることが可能となり、光学特性をより安定化することができる。
このようにしてAWG型光合分波器における温度制御の精度を向上させることにより、出射光の中心波長シフトを小さく抑えることができ、利用する複数のチャンネルの波長間隔を小さくしてチャンネル数を増大させ、通信情報の高密度化を図ることが可能となる。
【0020】
図4は本発明の第2の実施形態における均熱板40を示したものである、本実施形態が上記第1の実施形態と異なる点は、前記凹部31の代わりに均熱板40に貫通孔41を設けた点である。この貫通孔41内には熱緩衝材が充填されて熱緩衝層を形成している。本実施形態においては、貫通孔41を加温冷却素子32よりも小さく形成する必要がある。
本実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様の作用効果が得られるほか、均熱板40に貫通孔41が設けられているので、大量生産時の低価格化に寄与する。
【0021】
図5は本発明の第3の実施形態における均熱板50を示したものであり、(a)は上面からみた平面図、(b)は側面図である。本実施形態が上記第1の実施形態と異なる点は、均熱板50に凹部は設けられておらず、凹部が設けられていた部位(図中破線でかこまれた部分)の外周上に凸壁51が設けられている点である。この凸壁51で囲まれている部分の空気層が熱緩衝層の役割を果たす。本実施形態においては、均熱板50の凸壁51が導波路型光素子3に接触するように構成される。凸壁51の配置は、これらで囲まれた部分の熱緩衝層内の温度が均一になるような形状とすることが好ましく、本実施形態では、均熱板50の上面から見たときに、凸壁51が矩形の4つの角を切り欠いた形状を描くように配置されている。
本実施形態は、上記第1の実施形態に比べて導波路型光素子3と均熱板50との接触面積が小さいので、加温冷却素子32から導波路型光素子3へ伝わる熱の量は少ないが、図中破線で囲まれた部分上の導波路型光素子3においては良好な温度均一性が得られるので、上記第1の実施形態と同様の作用効果が得られる。また本実施形態では、図中破線で囲まれた部分上の導波路型光素子3の周辺部への伝熱が少ないので、導波路型光素子3のうちの所望の部位のみの温度制御を精度良く行うのに好適である。
【0022】
図6は本発明の第4の実施形態における導波路型光素子300、均熱板60、および加温冷却素子62の構成を示したものであり、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
本実施形態においては、導波路型光素子300として、光導波路71が形成されたチップ70に温度依存性を有するLD(laser diode;レーザダイオード)素子またはPD(photodiode;フォトダイオード)素子72が複数個組み込まれたハイブリッドモジュールが用いられている。図中符号73は電極を示している。
本実施形態では、導波路型光素子300のうちLD素子またはPD素子72が設けられている端部の下面に接して帯状の均熱板60が設けられており、この均熱板60の下面に接して加温冷却素子62が設けられている。そして均熱板60の上面であって複数のLD素子またはPD素子72の下に位置する部位には溝条の凹部61が設けられている。この凹部61内には熱緩衝材が充填されて熱緩衝層が形成されている。
本実施形態においても上記第1の実施形態と同様の作用効果が得られ、複数のLD素子またはPD素子72に対して、一括的に精度良く温度制御を行うことができる。
【0023】
なお、本発明における導波路型光素子としては、上記実施形態で用いたAWG型光合波分波器や、光導波路にLD素子やPD素子を組み込んだ複合素子に限らず、導波路型の光素子であって、温度変化によって光学特性が変化するものであればよい。例えばこの他に、光ファイバグレーティングの温度制御などにも本発明を適用することができる。
【0024】
以下、本発明の実施例を示す。
(実施例1)
図3(a)示す温度分布測定に用いた導波路型光素子3を備えた導波路型光モジュール1について、環境温度変化による中心波長の変動を調べた。すなわち、導波路型光素子3に波長可変光(波長1520〜1570nm)を入射させ、導波路型光モジュール1の環境温度を0℃から70℃まで段階的に変化させながら、出射光の中心波長の変化を測定した。中心波長における透過損失は3dBとなるようにした。その結果を図7に示す。
(比較例1)
図3(b)示す温度分布測定に用いた導波路型光素子を備えた導波路型光モジュールについて、上記実施例1と同様にして環境温度変化による中心波長の変動を調べた。その結果を図8に示す。
【0025】
図7のグラフ(実施例1)において、環境温度が0℃から70℃に変化したときの中心波長シフト量は、0.000016×70=0.00112nmとである。導波路型光素子3における光導波路の光学特性が0.011nm/℃であることから換算すると、この0.00112nmという値は温度が約0.1℃変化したときの中心波長シフト量に相当する。
一方、図8のグラフ(比較例1)においては、環境温度が0℃から70℃に変化したときの中心波長シフト量は、0.000055×70=0.00385nmとなり、導波路型光素子の光導波路の光学特性が0.011nm/℃であることから換算すると、この0.00385nmという値は温度が約0.4℃変化したときの中心波長シフト量に相当する。
したがって、実施例1の温度制御精度は、比較例1の温度制御精度の約4倍も高いことが認められる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、導波路型光素子とその温度を制御する加温冷却素子との間に、均熱板だけでなく熱緩衝層を設けることにより、導波路型光素子上の温度制御を必要とする要制御部分に対する温度制御の精度を格段に向上させることができ、該要制御部分における温度分布の均一性を向上させることができる。また、加温冷却素子の制御面よりも広い要制御部分に対しても高精度に温度制御することができる。したがって、環境温度変化に対する光学特性の安定度が高い導波路型光素子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の導波路型光モジュールの第1の実施形態を示した断面図である。
【図2】 本発明の導波路型光モジュールの第1の実施形態を示した分解斜視図である。
【図3】 導波路型光素子上の温度分布を示したもので、(a)は本発明に係る導波路型光素子、(b)は従来の導波路型光素子に関するものである。
【図4】 本発明の導波路型光モジュールの第2の実施形態における均熱板を示す斜視図である。
【図5】 本発明の導波路型光モジュールの第3の実施形態における均熱板を示すもので(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図6】 本発明の導波路型光モジュールの第4の実施形態を示したもので、(a)は要部斜視図、(b)は平面図である。
【図7】 本発明に係る実施例における中心波長の温度依存性の測定結果を示すグラフである。
【図8】 比較例における中心波長の温度依存性の測定結果を示すグラフである。
【図9】 従来の導波路型光モジュールの一例を示した斜視図である。
【図10】 従来の導波路型光モジュールの他の例を示したもので(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図11】 従来のAWG型光合分波器における中心波長シフトを説明するためのグラフである。
【符号の説明】
3、300…導波路型光素子、30、40、50、60…均熱板、
31、61…凹部、41…貫通孔、51…凸壁、32、62…加温冷却素子、
100…導波路型光モジュール。
Claims (1)
- 温度依存性を有する導波路型光素子に、金属製の均熱板および空気層からなる熱緩衝層を介して前記導波路型光素子の温度を制御する加温冷却素子が設けられてなる導波路型光モジュールであって、
前記均熱板の少なくとも一部が前記導波路型光素子に接しており、前記均熱板上に4つの凸壁が設けられ、該4つの凸壁を介して、前記均熱板上に前記導波路型光素子が配され、前記4つの凸壁によって囲まれた部分が前記熱緩衝層をなし、前記均熱板の上面から見たとき、前記4つの凸壁は、矩形の4つの角を切り欠いた形状を描くように、互いに離隔して配置され、前記熱緩衝層が前記導波路型光素子の要制御部分と重なるように配されたことを特徴とする導波路型光モジュール。
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