JP4453805B2 - 画像処理システム、プロジェクタ、プログラム、情報記憶媒体および画像処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、階調補正を行うための画像処理システム、プロジェクタ、プログラム、情報記憶媒体および画像処理方法に関する。
【0002】
【背景技術】
ガンマ補正、ヒストグラム平坦化、線形変換等を基本とした階調補正処理は、コントラスト強調処理として画像処理において一般的に行われている手法である。動画の画像処理においても、このような階調補正処理は一般的に行われており、LUT(Look Up Table)を用いて1フレームごとに適応的に階調補正を行う手法がある。
【0003】
より具体的には、例えば、階調特性データをLUT形式でメモリに記憶しておき、1垂直走査期間(1フレームまたは1フィールド)の映像信号の平均輝度レベルや、高輝度または低輝度レベルの面積率(所定輝度範囲における画素数)等の特徴量を検出し、これらの特徴量の変化に応じてLUTを更新することにより、階調補正を行う手法がある。
【0004】
例えば、特許文献1では、映像の輝度分布の偏り具合に応じて最適な階調補正を行うために、入力輝度信号の輝度レベル各々の頻度データに応じて輝度分布の分散値を算出し、当該分散値に基づく混合比で元の輝度レベルと補正輝度レベルとを混合した値を用いてLUTを更新することにより、階調補正を行っている。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−322047号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、処理対象とする画像の種類によっては、LUTを更新するときに急激に階調特性が変化することによって急激な輝度変動が生じる場合があり、画像の観察者が当該輝度変動をフリッカ(ちらつき)として知覚する場合がある。
【0007】
従来の一般的な手法では、しきい値に基づいて階調補正を行っていたため、しきい値の前後のどちらに該当するかによって階調補正の度合いが大きく異なってしまい、フリッカが顕著となってしまう事態が生じる可能性があった。
【0008】
また、例えば、特許文献1の手法の場合、1垂直走査期間ごとのヒストグラムメモリの輝度分布に基づいて分散値を算出して当該分散値に応じて混合比kを算出しているが、分散値から混合比kを求める手法についての具体的な記載はなく、補正後の値=k*補正値+(1−k)*基準値という補正の手法と、分散値が小さい場合にk>0.5とし、分散値が中程度の場合にk=0.5とし、分散値が大きい場合にk<0.5とする手法が開示されているに過ぎない。
【0009】
また、特許文献1の手法は、輝度分布の偏りを考慮したものであり、フリッカの問題を考慮していない。
【0010】
このため、特許文献1の手法では、急激な輝度変動が発生した場合、分散値も急激に変化してしまう。例えば、分散値が小さい状態から分散値が大きい状態に急変した場合、k>0.5からk<0.5に急変し、補正後の値も急変するため、結果として急激な輝度変動が生じ、フリッカが生じることになる。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、階調特性の変化時に生じる輝度変動を低減することが可能な画像処理システム、プロジェクタ、プログラム、情報記憶媒体および画像処理方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明に係る画像処理システムは、画像信号から1垂直走査期間ごとに画像の特徴量を生成する画像特徴量生成手段と、
当該画像特徴量生成手段によって生成された特徴量を少なくとも1垂直走査期間の間保持するとともに、保持した1垂直走査期間以上前の特徴量と、現在の1垂直走査期間における特徴量との差分値を生成する差分値生成手段と、
当該差分値に基づき、階調特性データの補正度合いを示す補正係数を生成する補正係数生成手段と、
当該補正係数に基づき、前記階調特性データを補正し、補正した階調特性データに基づき、前記画像信号の明るさの指標となる明るさ指標値を出力する明るさ指標値出力手段と、
を含み、
前記明るさ指標値出力手段は、前記階調特性データと前記補正係数に基づく補正量との加減算を行うことにより、新たな階調特性データを生成することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るプロジェクタは、画像信号から1垂直走査期間ごとに画像の特徴量を生成する画像特徴量生成手段と、
当該画像特徴量生成手段によって生成された特徴量を少なくとも1垂直走査期間の間保持するとともに、保持した1垂直走査期間以上前の特徴量と、現在の1垂直走査期間における特徴量との差分値を生成する差分値生成手段と、
当該差分値に基づき、階調特性データの補正度合いを示す補正係数を生成する補正係数生成手段と、
当該補正係数に基づき、前記階調特性データを補正し、補正した階調特性データに基づき、前記画像信号の明るさの指標となる明るさ指標値を出力する明るさ指標値出力手段と、
当該明るさ指標値に基づき、画像の明るさを補正する明るさ補正手段と、
明るさが補正された画像を投写する画像投写手段と、
を含み、
前記明るさ指標値出力手段は、前記階調特性データと前記補正係数に基づく補正量との加減算を行うことにより、新たな階調特性データを生成することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るプログラムは、コンピュータにより読み取り可能なプログラムであって、
コンピュータを、
画像信号から1垂直走査期間ごとに画像の特徴量を生成する画像特徴量生成手段と、
当該画像特徴量生成手段によって生成された特徴量を少なくとも1垂直走査期間の間保持するとともに、保持した1垂直走査期間以上前の特徴量と、現在の1垂直走査期間における特徴量との差分値を生成する差分値生成手段と、
当該差分値に基づき、階調特性データの補正度合いを示す補正係数を生成する補正係数生成手段と、
当該補正係数に基づき、前記階調特性データを補正し、補正した階調特性データに基づき、前記画像信号の明るさの指標となる明るさ指標値を出力する明るさ指標値出力手段として機能させ、
前記明るさ指標値出力手段は、前記階調特性データと前記補正係数に基づく補正量との加減算を行うことにより、新たな階調特性データを生成することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る情報記憶媒体は、コンピュータにより読み取り可能なプログラムを記憶した情報記憶媒体であって、
コンピュータを、
画像信号から1垂直走査期間ごとに画像の特徴量を生成する画像特徴量生成手段と、
当該画像特徴量生成手段によって生成された特徴量を少なくとも1垂直走査期間の間保持するとともに、保持した1垂直走査期間以上前の特徴量と、現在の1垂直走査期間における特徴量との差分値を生成する差分値生成手段と、
当該差分値に基づき、階調特性データの補正度合いを示す補正係数を生成する補正係数生成手段と、
当該補正係数に基づき、前記階調特性データを補正し、補正した階調特性データに基づき、前記画像信号の明るさの指標となる明るさ指標値を出力する明るさ指標値出力手段として機能させるためのプログラムを記憶し、
前記明るさ指標値出力手段は、前記階調特性データと前記補正係数に基づく補正量との加減算を行うことにより、新たな階調特性データを生成することを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る画像処理方法は、画像信号から1垂直走査期間ごとに画像の特徴量を抽出し、
少なくとも1垂直走査期間の間、抽出した特徴量を保持し、
画像の特徴量と、保持した1垂直走査期間以上前の特徴量との差分値を生成し、
当該差分値に基づき、階調特性データの補正度合いを示す補正係数を演算し、
前記階調特性データと前記補正係数に基づく補正量との加減算を行うことにより、新たな階調特性データを生成し、
当該階調特性データに基づき、前記画像信号の明るさの指標となる明るさ指標値を出力し、
当該明るさ指標値に基づき、画像の明るさを補正することを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、画像処理システム等は、画像の特徴量の差分値に基づいて階調特性データを補正することにより、画像の変化に応じて徐々に階調特性データを補正することができる。
【0018】
これにより、画像処理システム等は、階調特性の変化時に生じる輝度変動を低減することができる。
【0019】
なお、前記特徴量としては、例えば、APL(Average Picture Level、すなわち、対象領域における平均輝度値)、対象領域における所定の輝度範囲(例えば、所定の輝度レベル以下、所定の輝度レベル以上、所定の輝度レベル以上かつ所定の輝度レベル以下)に含まれる画素数の累積和、ヒストグラムにおける最多画素数の輝度レベル等を採用してもよい。
【0020】
また、前記垂直走査期間としては、例えば、フレーム、フィールドが該当する。また、前記明るさ指標値としては、例えば、輝度値等が該当する。
【0021】
また、前記画像処理システムおよび前記プロジェクタは、前記画像信号に含まれる輝度信号に基づき、所定の階調範囲における画素数の累積和を示す累積ヒストグラムデータを生成する累積ヒストグラムデータ生成手段を含み、
前記特徴量生成手段は、前記累積ヒストグラムデータに基づき、前記特徴量としてAPLを生成してもよい。
【0022】
また、前記プログラムおよび前記情報記憶媒体は、所定の階調範囲における画素数の累積和を示す累積ヒストグラムデータを生成する累積ヒストグラムデータ生成手段としてコンピュータを機能させ、
前記特徴量生成手段は、前記累積ヒストグラムデータに基づき、前記特徴量としてAPLを生成してもよい。
【0023】
また、前記画像処理方法は、前記画像信号に含まれる輝度信号に基づき、所定の階調範囲における画素数の累積和を示す累積ヒストグラムデータを生成し、
当該累積ヒストグラムデータに基づき、前記特徴量としてAPLを生成してもよい。
【0024】
これによれば、画像処理システム等は、特徴量としてAPLを用いることにより、画像の特徴を適切に捉え、階調特性データを適切に補正することができる。
【0025】
また、前記画像処理システム、前記プロジェクタ、前記プログラムおよび前記情報記憶媒体において、前記補正係数生成手段は、入力値が、最大値または最小値に近い場合には中間値に近い場合と比べて出力値の変化が少なくなるS字曲線状の入出力特性を有する関数に基づき、前記補正係数を演算してもよい。
【0026】
また、前記画像処理方法では、入力値が、最大値または最小値に近い場合には中間値に近い場合と比べて出力値の変化が少なくなるS字曲線状の入出力特性を有する関数に基づき、前記補正係数を演算してもよい。
【0027】
なお、このような関数としては、例えば、シグモイド関数等が該当する。
【0028】
これによれば、シグモイド関数は、人の感覚を近似する場合に用いられる関数であるため、画像処理システム等は、視覚的な不自然さを低減する階調補正を行うことが可能となる。
【0029】
また、前記画像処理システム、前記プロジェクタ、前記プログラムおよび前記情報記憶媒体において、前記明るさ指標値出力手段は、前記階調特性データと所定の階調補正用データとの差分値と、前記補正係数との乗算値を、前記階調特性データに加算することにより、新たな階調特性データを生成してもよい。
【0030】
また、前記画像処理方法では、前記階調特性データと所定の階調補正用データとの差分値と、前記補正係数との乗算値を、前記階調特性データに加算することにより、新たな階調特性データを生成してもよい。
【0031】
これによれば、画像処理システム等は、元の階調特性データに差分値に基づく乗算値を加算することによって階調特性データを更新することにより、階調特性データを徐々に更新することができる。
【0032】
これにより、画像処理システム等は、階調特性の変化時に生じる輝度変動を低減することができる。
【0033】
また、前記画像処理システム、前記プロジェクタ、前記プログラムおよび前記情報記憶媒体において、前記明るさ指標値出力手段は、前記画像信号に含まれる輝度信号の輝度値を入力値として、当該入力値が、最大値または最小値に近い場合には中間値に近い場合と比べて出力値の変化が少なくなる入出力特性を有する関数を用いて前記階調補正用データを生成してもよい。
【0034】
また、前記画像処理方法では、前記画像信号に含まれる輝度信号の輝度値を入力値として、当該入力値が、最大値または最小値に近い場合には中間値に近い場合と比べて出力値の変化が少なくなる入出力特性を有する関数を用いて前記階調補正用データを生成してもよい。
【0035】
これによれば、輝度値が最大値または最小値に近い場合はグレーではなく白や黒に近い場合であるため、画像処理システム等は、白や黒に近い輝度値の変化率を中間階調(グレー)に近い輝度値の変化率と比べて少なくすることができ、黒つぶれや白とびの発生を低減し、伸長効果の高い中間階調をより伸長することができるため、適切な階調補正を行うことができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、画像信号の一種であるRGB信号を入力し、各信号の輝度(「輝度値」または「輝度レベル」ともいう。)の階調補正を行う画像処理システムに適用した場合を例に採り、図面を参照しつつ説明する。なお、以下に示す実施形態は、特許請求の範囲に記載された発明の内容を何ら限定するものではない。また、以下の実施形態に示す構成の全てが、特許請求の範囲に記載された発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0037】
(システム全体の説明)
以下、本発明を液晶プロジェクタの画像処理システムに適用した場合を例に採り、説明する。
【0038】
図1は、本実施形態の一例に係るプロジェクタ20の概略説明図である。
【0039】
スクリーン10のほぼ正面に設けられたプロジェクタ20は、種々の画像を投写する。これにより、スクリーン10上に画像の投写領域12が形成される。
【0040】
入力される画像の階調特性が急激に変化した場合、投写領域12がちらついてしまう場合がある。
【0041】
本実施の形態におけるプロジェクタ20は、このような場合における画像のちらつきを低減するために、フレーム間のAPL(Average Picture Level、すなわち、対象領域における平均輝度値)の差分値に基づいて階調特性データの変化度合いを決定している。
【0042】
次に、このような機能を実現するためのプロジェクタ20の画像処理部の機能ブロックについて説明する。
【0043】
図2は、本実施形態の一例に係る画像処理部800の機能ブロック図である。
【0044】
プロジェクタ20内の画像処理部800は、画像信号の一種であるアナログRGB信号(R1、G1、B1)をデジタルRGB信号(R2、G2、B2)に変換するA/D変換部810と、デジタルRGB信号(R2、G2、B2)を補正する画像処理部800と、補正されたデジタルRGB信号(R3、G3、B3)をアナログRGB信号(R4、G4、B4)に変換するD/A変換部880と、アナログRGB信号(R4、G4、B4)に基づき、画像を投写する画像投写部890とを含んで構成されている。また、画像処理部800は、補正部820を含む。
【0045】
また、補正部820は、入力輝度信号Yを補正することにより階調補正を行って補正後の輝度信号Y’を出力する階調補正部822を含んで構成されている。
【0046】
また、画像投写部890は、空間光変調器892と、アナログRGB信号(R4、G4、B4)に基づき、空間光変調器892を駆動する駆動部894と、空間光変調器892に光を出力する光源896と、空間光変調器892で変調された光を投写するレンズ898とを含んで構成されている。
【0047】
このようにしてプロジェクタ20は、階調補正を行って画像を投写する。
【0048】
ここで、階調補正部822の構成について説明する。
【0049】
図3は、本実施形態の一例に係る階調補正部822の機能ブロック図である。
【0050】
階調補正部822は、画像信号から1フレームごとに画像の特徴量を生成する画像特徴量生成部150と、画像特徴量生成部150によって生成された特徴量を1フレームの間保持するとともに、保持した1フレーム前の特徴量と、現在のフレームにおける特徴量との差分値を生成する差分値生成部160と、当該差分値に基づき、階調特性データの補正度合いを示す補正係数を生成する補正係数生成部170と、当該補正係数に基づき、階調特性データを補正し、補正した階調特性データに基づき、入力輝度信号を補正して輝度信号を出力する明るさ指標値出力手段として機能する輝度信号出力部130とを含んで構成されている。
【0051】
また、階調補正部822は、輝度信号を1フレーム分遅延させて出力するための遅延部120と、輝度信号の累積ヒストグラムデータを生成する累積ヒストグラムデータ生成部140とを含んで構成されている。
【0052】
また、画像特徴量生成部150は、画像の特徴量として、Lmax(累積ヒストグラムデータのy%にあたる点の輝度値)、Lmin(累積ヒストグラムデータのx%にあたる点の輝度値)、S(Lmaxを白方向に伸長した輝度値)、T(Lminを黒方向に伸長した輝度値)、APL(平均輝度値)を生成するために、Lmax演算部151と、S演算部152と、Lmin演算部153と、T演算部154と、APL演算部156とを含んで構成されている。
【0053】
また、差分値生成部160は、APL演算部156から出力されたAPLを1フレームの間保持する遅延部162と、遅延部162によって1フレーム分遅延されたAPLと現在のフレームのAPLとの差分値を演算する減算部164と、補正係数であるfを演算するf演算部166とを含んで構成されている。
【0054】
なお、遅延部120、累積ヒストグラムデータ生成部140、画像特徴量生成部150、差分値生成部160は、垂直同期信号に基づき、1フレームごとにメモリの内容をリセットする。
【0055】
次に、これらの各部を実現するためのハードウェア構成について説明する。
【0056】
図4は、本実施形態の一例に係る階調補正部822のハードウェアブロック図である。
【0057】
例えば、遅延部120としては、例えばラッチ回路940等、輝度信号出力部130としては、例えばCPU910、セレクタ回路930、RAM950等、累積ヒストグラムデータ生成部140としては、例えば演算回路920等、差分値生成部160としては、例えば演算回路920、ラッチ回路940等、補正係数生成部170としては、例えばCPU910、演算回路920等を用いて実現できる。
【0058】
なお、これらの各部はシステムバス980を介して相互に情報をやりとりすることが可能である。
【0059】
また、これらの各部は回路のようにハードウェア的に実現してもよいし、ドライバのようにソフトウェア的に実現してもよい。
【0060】
さらに、階調補正部822としてコンピュータを機能させるためのプログラムを記憶した情報記憶媒体900からプログラムを読み取って階調補正部822の機能をコンピュータに実現させてもよい。
【0061】
このような情報記憶媒体900としては、例えば、CD−ROM、DVD−ROM、ROM、RAM、HDD等を適用でき、そのプログラムの読み取り方式は接触方式であっても、非接触方式であってもよい。
【0062】
また、情報記憶媒体900に代えて、上述した各機能を実現するためのプログラム等を、伝送路を介してホスト装置等からダウンロードすることによって上述した各機能を実現することも可能である。
【0063】
(画像処理の流れの説明)
次に、これらの各部を用いた画像処理の流れについて説明する。
【0064】
図5は、本実施形態の一例に係る画像処理のフローチャートである。
【0065】
まず、累積ヒストグラムデータ生成部140は、輝度の累積ヒストグラムを示す累積ヒストグラムデータを生成して正規化した状態で保持する。
【0066】
図6は、累積ヒストグラムの模式図である。
【0067】
累積ヒストグラムデータは、図6に示すように、所定の輝度範囲(グラフの横軸)と当該輝度範囲に該当する画素の累積数を百分率に正規化した値(グラフの縦軸)との関係を示す。
【0068】
Lmax演算部151は、図6に示す累積ヒストグラムのy%にあたる点の輝度値Lmaxを演算する(ステップS1)。
【0069】
また、Lmin演算部153は、累積ヒストグラムのx%にあたる点の輝度値Lminを演算する(ステップS2)。
【0070】
なお、xについては0<x<50であり、yについては50<y<100である。
【0071】
APL演算部156は、累積ヒストグラムの50%点にあたる輝度値APLを演算する(ステップS3)。
【0072】
また、S演算部152は、S(Lmax)を演算する(ステップS4)。
【0073】
図7は、S(Lmax)のグラフを示す模式図である。
【0074】
なお、ここで、S(Lmax)は、輝度値Lmaxを白方向に伸長する関数である。また、図7のグラフにおいて、横軸がLmax、縦軸がS(Lmax)である。また、Lmax<=S(Lmax)を満たす。
【0075】
さらに、S(Lmax)は、図7に示すように、輝度値Lmaxの採り得る中間値よりも最大値側に折れ点を有する折れ線形状で表される。これにより、輝度値の最大値である白に近づくにつれて伸長の度合いが小さくなるため、元々コントラストが十分であるような画像に対しては過度な白伸長を行わないで済む。
【0076】
また、T演算部154は、T(Lmin)を演算する(ステップS5)。
【0077】
図8は、T(Lmin)のグラフを示す模式図である。
【0078】
なお、ここで、T(Lmin)は、輝度値Lminを黒方向に伸長する関数である。また、図8のグラフにおいて、横軸がLmin、縦軸がT(Lmin)である。また、Lmin>=T(Lmin)を満たす。
【0079】
さらに、T(Lmin)は、図8に示すように、輝度値Lminの採り得る中間値よりも最小値側に折れ点を有する折れ線形状で表される。これにより、輝度値の最小値である黒に近づくにつれて伸長の度合いが小さくなるため、元々コントラストが十分であるような画像に対しては過度な黒伸長を行わないで済む。
【0080】
また、減算部164は、APL演算部156の出力(APL)と、APL演算部156の出力を遅延部162によって1フレーム分遅延させたもの(APLold)との差分値APLdiffを演算する(ステップS6)。
【0081】
また、f演算部166は、APLdiffを引数にとる関数f(APLdiff)を演算する(ステップS7)。
【0082】
例えば、f(APLdiff)=1/(1+exp(−b*(APLdiff−a)))である。
【0083】
図9は、f(APLdiff)のグラフを示す模式図である。
【0084】
なお、ここで、a、bは正の定数である。また、図9のグラフにおいて、横軸がAPLdiff、縦軸がf(APLdiff)である。例えば、APLdiffがaと一致する場合、bの値にかかわらず、f(APLdiff)は0.5になる。また、fはbを大きくすればするほど急峻な勾配をもつ関数になる。
【0085】
なお、fは、シグモイド関数と呼ばれる関数であり、一般的に人の感覚を近似し、ニューラルネットワークで用いられることが多い。また、APLdiffは視覚的なシーン変化との相関が比較的高い特徴量である。したがって、APLdiffを引数にとるシグモイド関数を用いて階調特性の変化度合いを決定することにより視覚的なシーン変化の度合いと階調特性変化の度合いとの相関が高くなり、視覚的に不自然さがなく階調特性を変化させることが期待できる。
【0086】
なお、本実施例では経験的に例えば、輝度値の最大値が255である場合、a=10〜40、b=0.5〜2.0程度が適当である。
【0087】
また、f(APLdiff)は、階調特性の変化度合いを決定する量で、0から1の値をとる。補正係数生成部170は、差分値生成部160からのf(APLdiff)並びに画像特徴量生成部150からのLmax、S(Lmax)、Lmin、T(Lmin)およびAPLを入力する。
【0088】
そして、補正係数生成部170は、(Lmax,S(Lmax))、(Lmin,T(Lmin))、(APL,APL)を折れ点とする3点折れ線q(l)を求める。
【0089】
図10は、q(l)のグラフを示す模式図である。
【0090】
例えば、lが0以上Lmin未満の場合、q(l)=l*T(Lmin)/Lmin、lがLmin以上APL未満の場合、q(l)=l*(APL−T(Lmin))/(APL−Lmin)+T(Lmin)、lがAPL以上Lmax未満の場合、q(l)=l*(S(Lmax)−APL)/(Lmax−APL)+APL、lがLmax以上255以下の場合、q(l)=l*(255−S(Lmax))/(255−Lmax)+S(Lmax)という数式を採用することにより、q(l)は、図10に示すグラフとなる。
【0091】
なお、ここで、図10のグラフの横軸であるlはLUTに入力する入力輝度値を示す。また、図10のグラフの縦軸であるq(l)は階調補正用データの一種である。
【0092】
また、補正部134は、各lについて下記の数式によってLUT(l)を演算する。
【0093】
LUT(l)=LUTold(l)+(q(l)−LUTold(l))*f(APLdiff)
なお、LUT(l)はLUTのl番地の値を表し、輝度値lに対応する変換後の値が格納される。また、LUTold(l)は、更新前のLUT(l)を示す。
【0094】
このようにして補正部134は、階調特性データ記憶部132に記憶されたLUT形式の階調特性データ(LUT)を補正する(ステップS8)。
【0095】
そして、輝度信号出力部130は、補正されて階調特性データ記憶部132に記憶された階調特性データに基づき、入力輝度信号Yを補正して出力輝度信号Y’を出力する。
【0096】
以上のように、本実施形態によれば、プロジェクタ20は、画像の特徴量の差分値に基づいて階調特性データを補正することにより、画像の変化に応じて徐々に階調特性データを補正することができる。
【0097】
これにより、画像処理システム等は、階調特性の変化時に生じる輝度変動を低減することができる。
【0098】
また、プロジェクタ20は、APLのフレーム間差分値を引数にとる関数f(APLdiff)を用い、APLのフレーム間差分値が大きいときは、画面の変化が大きいとみなし、階調特性の変化度合いを大きくし、階調変換の画面変化への応答性を高め、APLのフレーム間差分値が小さいときは階調特性の変化度合いを小さくすることにより、輝度変化が少ない場面で階調特性を変化させることによってフリッカが生じることを防ぐことができる。
【0099】
また、プロジェクタ20は、特徴量としてAPLを用いることにより、画像の特徴を適切に捉え、階調特性データを適切に補正することができる。
【0100】
また、プロジェクタ20は、図7、図8、図10に示すように、白や黒に近い輝度値の変化率を中間階調に近い輝度値の変化率と比べて少なくすることができ、黒つぶれや白とびの発生を低減し、伸長効果の高い中間階調をより伸長することができるため、適切な階調補正を行うことができる。
【0101】
さらに、プロジェクタ20は、元の階調特性データに差分値に基づく乗算値を加算することによって階調特性データを更新することにより、階調特性データを徐々に更新することができる。
【0102】
これにより、プロジェクタ20は、階調特性の変化時に生じる輝度変動を低減することができる。
【0103】
(変形例)
以上、本発明を適用した好適な実施の形態について説明してきたが、本発明の適用は上述した実施例に限定されない。
【0104】
例えば、上述した実施例では、画像の特徴量として、APLを適用したが、例えば、対象領域における所定の輝度範囲(例えば、所定の輝度レベル以下、所定の輝度レベル以上、所定の輝度レベル以上かつ所定の輝度レベル以下)に含まれる画素数の累積和、ヒストグラムにおける最多画素数の輝度レベル等を適用してもよい。
【0105】
また、上述した実施例では、垂直走査期間として、フレームを採用したが、例えば、フィールドを採用し、フィールド単位に処理を行ってもよい。遅延部120、162は、必ずしも1フレーム分遅延したものを保持する必要はなく、例えば、2フレーム以上遅延させてもよい。
【0106】
また、上述した実施例で用いた数式そのものに代えて当該数式を変形した数式を用いてもよいことはもちろんである。
【0107】
また、上述した階調補正部822の機能を複数の装置に分散して階調補正を行ってもよい。
【0108】
さらに、上述した階調補正を実行する画像処理システムは、プロジェクタ20のような液晶プロジェクタに限定されず、例えば、DMD(Digital Micromirror Device)を用いたプロジェクタ、CRT(Cathode Ray Tube)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)、EL(Electro Luminescence)、直視型液晶表示装置等の階調補正を行う種々の表示装置に実装してもよい。なお、DMDは米国テキサスインスツルメンツ社の商標である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施形態の一例に係るプロジェクタの概略説明図である。
【図2】 本実施形態の一例に係る画像処理部の機能ブロック図である。
【図3】 本実施形態の一例に係る階調補正部の機能ブロック図である。
【図4】 本実施形態の一例に係る階調補正部のハードウェアブロック図である。
【図5】 本実施形態の一例に係る画像処理のフローチャートである。
【図6】 累積ヒストグラムの模式図である。
【図7】 f(APLdiff)のグラフを示す模式図である。
【図8】 S(Lmax)のグラフを示す模式図である。
【図9】 T(Lmin)のグラフを示す模式図である。
【図10】 q(l)のグラフを示す模式図である。
【符号の説明】
130 輝度信号出力部、150 画像特徴量生成部、160 差分値生成部、170 補正係数生成部、900 情報記憶媒体
Claims (7)
- 画像信号から1垂直走査期間ごとに画像の特徴量を生成する画像特徴量生成手段と、
当該画像特徴量生成手段によって生成された特徴量を少なくとも1垂直走査期間の間保持し、保持した1垂直走査期間以上前の特徴量と、現在の1垂直走査期間における特徴量との差分値を生成するとともに、当該差分値に基づくシグモイド関数の出力値を演算する差分値生成手段と、
当該出力値に基づき、階調補正用データを生成する補正係数生成手段と、
階調特性データと前記階調補正用データとの差分値と、前記出力値との乗算値を、前記階調特性データに加算することにより、前記階調特性データを補正し、補正した階調特性データに基づき、前記画像信号の輝度信号を出力する輝度信号出力手段と、
を含むことを特徴とする画像処理システム。 - 請求項1において、
前記画像信号に含まれる輝度信号に基づき、所定の階調範囲における画素数の累積和を示す累積ヒストグラムデータを生成する累積ヒストグラムデータ生成手段を含み、
前記画像特徴量生成手段は、前記累積ヒストグラムデータに基づき、前記特徴量としてAPLを生成することを特徴とする画像処理システム。 - 請求項1、2のいずれかにおいて、
前記補正係数生成手段は、前記画像信号に含まれる輝度信号の輝度値を入力値として、当該入力値が、最大値または最小値に近い場合には中間値に近い場合と比べて出力値の変化が少なくなる入出力特性を有する関数を用いて前記階調補正用データを生成することを特徴とする画像処理システム。 - 画像信号から1垂直走査期間ごとに画像の特徴量を生成する画像特徴量生成手段と、
当該画像特徴量生成手段によって生成された特徴量を少なくとも1垂直走査期間の間保持し、保持した1垂直走査期間以上前の特徴量と、現在の1垂直走査期間における特徴量との差分値を生成するとともに、当該差分値に基づくシグモイド関数の出力値を演算する
差分値生成手段と、
当該出力値に基づき、階調補正用データを生成する補正係数生成手段と、
階調特性データと前記階調補正用データとの差分値と、前記出力値との乗算値を、前記階調特性データに加算することにより、前記階調特性データを補正し、補正した階調特性データに基づき、前記画像信号の輝度信号を出力する輝度信号出力手段と、
当該輝度信号に基づき、画像の明るさを補正する明るさ補正手段と、
明るさが補正された画像を投写する画像投写手段と、
を含むことを特徴とするプロジェクタ。 - コンピュータにより読み取り可能なプログラムであって、
コンピュータを、
画像信号から1垂直走査期間ごとに画像の特徴量を生成する画像特徴量生成手段と、
当該画像特徴量生成手段によって生成された特徴量を少なくとも1垂直走査期間の間保持し、保持した1垂直走査期間以上前の特徴量と、現在の1垂直走査期間における特徴量との差分値を生成するとともに、当該差分値に基づくシグモイド関数の出力値を演算する差分値生成手段と、
当該出力値に基づき、階調補正用データを生成する補正係数生成手段と、
階調特性データと前記階調補正用データとの差分値と、前記出力値との乗算値を、前記階調特性データに加算することにより、前記階調特性データを補正し、補正した階調特性データに基づき、前記画像信号の輝度信号を出力する輝度信号出力手段として機能させることを特徴とするプログラム。 - コンピュータにより読み取り可能なプログラムを記憶した情報記憶媒体であって、
コンピュータを、
画像信号から1垂直走査期間ごとに画像の特徴量を生成する画像特徴量生成手段と、
当該画像特徴量生成手段によって生成された特徴量を少なくとも1垂直走査期間の間保持し、保持した1垂直走査期間以上前の特徴量と、現在の1垂直走査期間における特徴量との差分値を生成するとともに、当該差分値に基づくシグモイド関数の出力値を演算する差分値生成手段と、
当該出力値に基づき、階調補正用データを生成する補正係数生成手段と、
階調特性データと前記階調補正用データとの差分値と、前記出力値との乗算値を、前記階調特性データに加算することにより、前記階調特性データを補正し、補正した階調特性データに基づき、前記画像信号の輝度信号を出力する輝度信号出力手段として機能させるためのプログラムを記憶した情報記憶媒体。 - 画像特徴量生成部と、差分値生成部と、補正係数生成部と、輝度信号出力部とを含むコンピュータによる画像処理方法であって、
前記画像特徴量生成部は、画像信号から1垂直走査期間ごとに画像の特徴量を抽出し、
前記差分値生成部は、少なくとも1垂直走査期間の間、抽出した特徴量を保持し、
前記差分値生成部は、画像の特徴量と、保持した1垂直走査期間以上前の特徴量との差分値を生成し、
前記差分値生成部は、当該差分値に基づくシグモイド関数の出力値を演算し、
前記補正係数生成部は、当該出力値に基づき、階調補正用データを生成し、
前記輝度信号出力部は、階調特性データと前記階調補正用データとの差分値と、前記出力値との乗算値を、前記階調特性データに加算することにより、前記階調特性データを補正し、当該階調特性データに基づき、前記画像信号の輝度信号を出力することを特徴とする画像処理方法。
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