JP4452779B2 - 被膜形成材料および金属材料の製造方法 - Google Patents

被膜形成材料および金属材料の製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、硬さ、剛性、耐腐食性、耐摩耗性に優れたマグネシウム化合物MgX(Xは、Si,Ge,SnおよびPbからなる群から選ばれた元素およびその組合せ、以下、特に記載しない場合は同じ)、該化合物被膜、該化合物被膜を有する金属材料およびそれらの製造方法に関する。
周期律表第4B族に属するSi、Ge、Sn、またはPbの元素Xが、いずれも、マグネシウム(Mg)とMgXの化合物を形成することは、平衡状態図にも記載されている。その特性について、例えばMgSiに関しては、特開平6−81068号公報や特開2000−17352号公報に記載されているように、優れた耐腐食性を有することから、鋼板用亜鉛メッキなどの表面被膜中に耐腐食粒子として分散させる用途がある。しかしながら、MgSiをはじめMgX単体としての使用に関してはこれまで開示がない。
金属材料に耐食性を付与する手段としては、従来、有機被膜あるいは無機被膜を形成させることが一般的であり、その形成には、塗装、メッキ或いは表面改質など様々な方法がある。しかし、これらの方法は、その被膜に十分な硬さを得ることができない、比較的厚い領域の被膜が困難である等の課題がある。
MgXの製造方法に関しては、Mg粉末を用いる場合、粉末表面に安定な酸化被膜(MgO)が存在し、これが元素Xからなる粉末との固相での反応・拡散を阻害する。そのため、従来はまず元素X粉末を固化し、その状態で溶融したMgを含浸・浸透させる方法によりMgと元素Xとの液相反応を進行させてマグネシウム化合物MgXを合成していた。
さらに、MgXの製造方法として、メカニカルアロイング法がある。この方法によれば、使用する出発原料が粉末形状であるため、特にMg粉末では酸素含有量が増大する。その結果、得られるMgX中の高い酸素量によって各種特性、特に耐腐食性が低減する。また、メカニカルアロイング処理を施した後に得られる試料は粉末状態であるため、取出した際に酸化するといった特性上の問題や爆発による危険性などがあり、マグネシウム化合物MgXの固相合成プロセスには適していなかった。
このような状況下、本発明者は、特願2001−292117号(2001年9月25日出願)、特願2001−292118号(2001年9月25日出願)において、混合原料を管理された加熱雰囲気中でMgの融点以下の適切な固相温度域で加熱/保持することでマトリックス中にMgとSiの反応で微細なMgSiを生成して分散させたMgSi粒子分散型マグネシウム複合材料及びその製造方法を提案した。
ところで、向上した硬さ・剛性、耐摩耗性、及び/又は耐腐食性を有するMgXを得るには、微細粒を有するMgXを合成すればよいことがわかっている。
しかしながら、従来技術により、10μm程度を下回る微細な粒子径を有するMgX化合物を製造することは困難であった。その理由は、次のようなことによる。即ち、従来の粉末製造技術を用いる際に、微細なSi粒子を粉砕等により得る場合を考慮する。1μmを下回るような微細なSi粒子がたとえ製造されても、Si粒子の表面積増大に基づく静電引力等によってSi粒子同士が凝集し、10〜数十μm程度の粗大な塊が形成される。このような状態でMg粉末と混合して加圧・加熱したとしても、得られるマグネシウム化合物MgSiの粒子径は、Si粒子の粒子径に依存して、10μmを越えることとなる。そのため、硬さ、耐摩耗性、及び/又は耐腐食性の向上は見込まれなかった。なお、上述は説明を簡単にするため、Siについてのみ言及したが、このような課題はSiに限らず、Ge、Sn、Pbなどの金属粉末においても同様な問題として生じる。
このような点から、従来技術により10μm程度を下回る微細粒子径を有するMgX(X:Si、Ge、Sn、Pb)化合物を製造することは困難であった。
この発明の目的は、微細粒を有するMgXを提供することである。
この発明の他の目的は、向上した硬さ、剛性、耐摩耗性、および/または耐腐食性を有するMgXを提供することである。
この発明のさらに他の目的は、上記の特性を有するマグネシウム化合物被膜を提供することである。
この発明のさらに他の目的は、上記の被膜を形成することのできる被膜形成材料を提供することである。
この発明のさらに他の目的は、上記の特性を有するマグネシウム化合物被膜を表面に形成したマグネシウム合金材料を提供することである。
この発明のさらに他の目的は、上記の特性を有するマグネシウム化合物被膜を表面に形成した金属材料を提供することである。
この発明のさらに他の目的は、上記の特性を有するMgXの製造方法を提供することである。
この発明のさらに他の目的は、上記の特性を有するマグネシウム合金材料の製造方法を提供することである。
この発明のさらに他の目的は、上記の特性を有する金属材料の製造方法を提供することである。
本発明者らは、固相反応によりMgX粒子を合成する方法を見出した。特に、本発明者らは、上記合成過程で顕著な粒成長(粒子の粗大化現象)を伴わないことを見出した。また、合成されるMgX粒子の大きさは、出発原料であるX粉末の粒子径とほぼ等しくなることを見出した。
本発明に従ったMgXは、Si、Ge、Sn及びPbからなる群から選ばれる元素Xとマグネシウム(Mg)との化合物であって、10ナノメートル(nm)以上、10ミクロン(μm)以下の粒子径(結晶粒径)を有する。
その化合物MgXは1つでも良いが、2つ、3つ・・・の組み合わせ等と少なくとも1つ以上のものとする。また、その化合物MgXを被覆した(被膜を形成した)マグネシウム合金材料または金属材料は、JIS Z 2371に規定される塩水噴霧試験に100時間付しても腐食状況が発生しないことが好ましい。
化合物MgXは、▲1▼10ナノメートル(nm)以上、10ミクロン(μm)以下、好ましくは10〜500nm、より好ましくは30〜250nmの粒子径を有するもの、▲2▼10ナノメートル(nm)以上、500ナノメートル(nm)以下、好ましくは300nm以下、より好ましくは30〜250nmの粒子径を有するもの、▲3▼300ナノメートル(nm)以上、10ミクロン(μm)以下、好ましくは500nm以上(例えば500nm〜5μm)、より好ましくは1〜3μmの粒子径を有するもの、▲4▼10ナノメートル(nm)〜300ナノメートル(nm)の第1の粒子径範囲と300ナノメートル(nm)〜10ミクロン(μm)の第2の粒子径範囲との双方の粒子径範囲の粒子を含んだもの等を採用する。
また、その各MgXは、荷重50gを用いるビッカーズ硬度計で130以上の硬度であるのがよい。このとき、XがSiのMgXは、荷重50gを用いるビッカーズ硬度計で300以上、好ましくは300〜450、より好ましくは350〜450の硬度であるのがよい。特に、MgXの粒子径が10〜300nmの場合には、荷重50gを用いるビッカーズ硬度計で330〜450の硬度であるのがよい。
XがGeのMgXは、荷重50gを用いるビッカーズ硬度計で230以上、好ましくは230〜400、より好ましくは330〜400の硬度であるのがよい。特に、MgXの粒子径が10〜300nmであり、荷重50gを用いるビッカーズ硬度計で330〜400の硬度であるのがよい。
XがSnのMgXは、荷重50gを用いるビッカーズ硬度計で130以上、好ましくは130〜250、より好ましくは160〜250の硬度であるのがよい。特に、MgXの粒子径が10〜300nmであり、荷重50gを用いるビッカーズ硬度計で160〜250の硬度であるのがよい。
XがPbのMgXは、荷重50gを用いるビッカーズ硬度計で160以上、好ましくは160〜270、より好ましくは190〜270の硬度であるのがよい。特に、MgXの粒子径が10〜300nmであり、荷重50gを用いるビッカーズ硬度計で190〜270の硬度であるのがよい。
本発明に従ったマグネシウム化合物被膜は、Si、Ge、Sn及びPbからなる群から選ばれる元素Xとマグネシウム(Mg)との化合物MgXを主成分とするものである。好ましくは、MgXの粒子径は、10ナノメートル(nm)以上、10ミクロン(μm)以下である。
本発明に従った被膜形成材料は、Si、Ge、Sn及びPbからなる群から選ばれる元素Xとマグネシウム(Mg)との化合物MgXを主成分とするものである。
本発明に従ったマグネシウム合金材料は、マグネシウム合金基材と、マグネシウム合金基材上に形成されたマグネシウム化合物被膜とを備える。マグネシウム化合物被膜は、Si、Ge、Sn及びPbからなる群から選ばれる元素Xとマグネシウム(Mg)との化合物MgXを主成分とする。好ましくは、マグネシウム合金材料は、JIS Z2371に規定される塩水噴霧試験に100時間付しても腐蝕状況が発生しないものである。
この発明に従った金属材料は、Si,Ge,SnおよびPbからなる群から選ばれる元素Xとマグネシウムとの化合物MgXの少なくとも1つを主成分とする被膜を有する。好ましくは、金属材料は、JIS Z 2371に規定される中性塩水噴霧試験に100時間付しても腐食状況が発生しないものである。
この発明に従ったMgXの製造方法は、Si、Ge、Sn及びPbからなる群から選ばれる元素Xの第1の試料とマグネシウム(Mg)試料とを、第1の試料:Mg試料のモル比が1:2となるように準備する工程と、第1の試料及びMg試料を配合して配合体を得る工程と、該配合体を塑性加工する塑性加工工程とを備える。塑性加工工程は、配合体を金型臼又は容器内に入れて行うことができる。
上記塑性加工工程後には、さらに加熱工程を有するのがよい。その加熱工程は150℃以上650℃未満、好ましくは200℃以上400℃以下で行うのがよい。このとき、加熱工程は、真空下又は不活性ガス雰囲気下で行うのがよい。塑性加工工程は、配合体を金型臼又は容器内に充填した後、該配合体を圧縮変形、押出変形又は後方押出、並びにこれらの任意の組合せを行い、前記配合体の各試料を混合及び/又は粉砕及び/又は合金化反応させるのがよく、第1の試料とMg試料との一部又はすべてをMgXにするのがよい。
また、塑性加工工程は、配合体を圧縮・固化して圧縮固化中間体を得る第1の工程と、圧縮固化中間体を後方に押出し後方押出成形体を得る第2の工程とからなる一組の工程を一回又は複数回繰り返し、これにより得られた後方押出成形体を圧縮・固化する工程によって行われるのがよい。
この発明に従ったマグネシウム合金材料の製造方法は、マグネシウム合金基材の表面にマグネシウム化合物被膜を形成する工程を備える。マグネシウム化合物被膜は、Si、Ge、Sn及びPbからなる群から選ばれる元素Xとマグネシウム(Mg)との化合物MgXを主成分とする。
マグネシウム化合物被膜形成工程は、例えば、化合物MgXをスパッタリング法によりマグネシウム合金基材表面に被覆することを含む。一つの例として、化合物MgXを主成分とする被膜形成材料をターゲット材料として用いたスパッタリング法によって行なう。この場合、より具体的には、マグネシウム化合物被膜形成工程を、化合物MgXを主成分とするターゲット材料をイオンビームスパッタリング法によりマグネシウム合金基材の表面に蒸着することにより行う。ターゲット材料として、マグネシウム板と、元素Xからなる板とを交互に貼り合わせたものも使用できる。
他の例として、マグネシウム化合物被膜形成工程を、MgXをマグネシウム合金基材の表面に堆積した後に加圧及び/又は加熱する工程により行う。さらに他の例として、マグネシウム化合物被膜形成工程は、化合物MgXを溶射法によりマグネシウム合金基材の表面に被覆することを含む。さらに他の例として、化合物MgXをグロー放電スパッタリング法によりマグネシウム合金基材の表面に被覆することを含む。さらに他の例として、マグネシウム化合物被膜形成工程は、化合物MgXを塗装法によりマグネシウム合金基材の表面に被覆することを含む。
この発明に従った金属材料の製造方法は、Si、Ge、Sn及びPbからなる群から選ばれる元素Xとマグネシウム(Mg)との化合物MgXを金属材料の表面に被覆する工程と、被覆層を加圧および加熱、又は加圧及び加熱の一方を行って金属材料上に化合物MgXを主成分とする被膜を形成する工程とを備える。
一つの例として、被覆工程は、化合物MgXを溶射法により金属材料の表面に被覆することを含む。他の例として、被覆工程は、化合物MgXをイオンビームスパッタリング法により金属材料の表面に被覆することを含む。さらに他の例として、被覆工程は、化合物MgXを塗装法により金属材料の表面に被覆することを含む。さらに他の例として、被覆工程は、化合物MgXをグロー放電スパッタリング法により金属材料の表面に被覆することを含む。
金属材料は、鉄系、非鉄系のいずれでも良く、前者には、炭素鋼、ステンレス鋼などの特殊鋼、工具鋼および快削鋼などの鉄鋼材料、ダクタイル鋳鉄、ねずみ鋳鉄などの鋳鉄材料、ステンレス鋳鋼、炭素鋼鋳鋼などの鋳鋼材料などを、また、後者には、マグネシウム合金、アルミニウム合金、チタン合金、銅合金、亜鉛合金、鉛合金、リチウム合金など挙げることができる。
MgSiなどのMgXは、MgとXを加熱加圧により圧粉焼結体に形成するが、製造可能な限りにおいて、種々の方法を採用できる。例えば、BMA(バルクメカニカルアロイング),ECAP(せん断加工)、HPT(高圧ねじりこみ)、CEC(繰り返し押し出し据えこみ)などの方法により製造する。また、MgX粉末は、例えば、スタンプミル、ボールミルなどを使用して粉砕し製造する。このとき、粉末の粒径は、均一な被覆層などの良好な被膜特性面を容易に得られる点から、微細なものであることが好ましく、例えば、100μm以下、より好ましくは、10μm以下とする。
このMgX粉末を金属材料表面に被覆する(被膜を形成する)には、接合、接着する、或いは溶射法、電着塗装、イオンビームスパッタリング法などによりコーティングし、この作用を繰り返して、薄膜から厚膜にする。その被膜度合(面積)は、用途などにより、全表面或いはその必要とする部分のみ等と適宜に設定すればよい。
接合、接着による被膜は、例えば、MgXを金属材料の表面に所要厚さの層に設けた後、加圧・加熱又は加圧と加熱の一方をすることにより形成する方法を挙げることができる。
溶射による被膜は、アーク溶射、ガス溶射、プラズマ溶射などを挙げることができ、必要に応じて雰囲気を真空或いは減圧下、不活性雰囲気にしてもよい。また、溶射後の被膜に対して、加圧成形を行ったり、或いは熱処理を施すことも、硬さなどの性能を向上させるために用いてもよい。この溶射に際しては、被溶射材(金属材料)の表面をブラスト処理などにより活性化することが好ましい。
イオンビームスパッタリング法は、ターゲット材として、MgXの固化体又はMgXを一部含む固化体を用い、イオンビームをターゲット材に照射し、金属材料の表面に蒸着形成する。このとき、未反応分が残っているような場合には、必要に応じて、その蒸着面の後加熱を行うことが好ましい。
塗装による被膜は、MgXの粉末あるいはMgXを一部含む粉末を含有する塗料をはけ塗り、スプレー、浸漬塗装、粉体塗装、電着塗装などにより金属材料の表面に塗装し、必要に応じて、予熱、後加熱などの硬化処理を行う。また、必要に応じて、展着剤としてエポキシ樹脂などの合成樹脂或いはシリケートや水ガラスなどの無機系のものを用いる。さらに、各種顔料、添加剤を混入してもよい。
このようにして製造したMgX被覆の(被覆を有する)金属材料の用途としては、鉄系は構造物、管類、機械部品など、非鉄系としては、構造用部品、家電部品、機械部品、介護福祉器具、スポーツ部品、ホビー用品などを挙げることができる。
図1は、この発明の化合物MgXの製造方法を示すフロー図である。
図2は、この発明の化合物MgXの製造方法の一工程である強塑性加工工程の一態様を模式的に示す図である。
図3は、MgX被膜を有する金属材料を製造する一態様を示す図である。
図4は、他の金属材料を製造する一態様であるガス溶射法を説明する図である。
図5は、他の金属材料を製造する一態様であるイオンビームスパッタリング法を説明する図である。
図6は、実施例2の固化体A−8(a)及びその出発原料(b)のX線回折(XRD)結果を示す図である。
図7は、実施例2の固化体A−8のTEM観察結果を示す図である。
図8は、実施例2の固化体A−7のTEM観察結果を示す図である。
図9は、実施例3の固化体A−9のTEM観察結果を示す図である。
図10は、実施例3によって得られた最終生成物A−9’のTEM観察結果を示す図である。
図11は、実施例4のX線回折図である。
図12は、実施例4の断面図である。
以下、この発明を、化合物MgX及びその製造方法、並びに該化合物MgXを被膜として有する金属材料及びその製造方法の順で詳細に説明する。
<化合物MgX及びその製造方法>
この発明の化合物MgX(X:Si、Ge、Sn、Pb)の粒子径(結晶粒径)は、10nm以上10μm以下である。好ましくは、5μm以下であるのがよい。前述のように、従来法で得られるMgXは、せいぜいで10μm程度である。また、MgXの粒子径が10μm以下、特に5μm以下、好ましくは3μm以下であると、硬さ及び/又は耐腐食性が向上する。さらに、MgXの特性は、その粒子径が300nm〜500nmを境に著しく向上する。したがって、この発明の化合物MgXの粒子径は、10nm〜500nm、又は10nm〜300nmであるのがよい。なお、より好ましくは30〜250nmであるのがよい。
例えば、耐腐食性に関して評価すると、次のようになる。即ち、JIS Z2371に規定された塩水噴霧試験(35℃に管理した5%食塩水)により耐腐食性を評価する。MgXの粒子径が10μm以上の場合、腐食開始時間は試験開始後10〜15時間程度であるのに対し、MgXの粒子径が5〜10μmでは同20時間程度、500nm〜5μmの場合には同30〜50時間、粒子径が500nm以下になると70〜100時間となり、粒子径の減少と共に耐腐食性は向上する。
また、硬さに関して評価すると、次のようになる。即ち、MgXの硬さ(マイクロビッカーズ硬さ;荷重50g付与)は、表1に記載するように、300nmを下回る超微細なナノ粒子レベルにまで至ると、硬さの顕著な増加が生じる。なお、粒子径がさらに小さくなり、例えば10nmを下回っても硬さに関しての特性の更なる向上は認められない。その一方で、後述するMgXの固相合成に要する塑性加工時間が長くなるために経済性の面において不利となる傾向が生じる。
Figure 0004452779
次に、この発明の化合物MgXの製造方法を図1のフローを用いて説明する。
出発原料として、純Mgと元素Xを用いる。純Mgは、粉末状、チップ状又は塊状素材を用いることができる。また、元素Xは、Si、Ge、Sn及びPbから選ばれる1種類であり、粉末状、チップ状又は塊状素材を用いることができる。モル比でMg:X=2:1となるように各出発原料を秤量し、両者を配合・混合する。このとき、Xとして2以上の元素を用いてもよい。
この配合・混合体に対して繰返し塑性加工を施す。これにより、その加工過程でMgと元素Xとが固相反応することによって粒子径300〜500nm以下のマグネシウム化合物MgXが合成される。したがって、後述する加熱処理工程を有することなく、塑性加工工程により、MgXが合成される。このとき、Xが2種以上であれば、2種以上のMgXが合成される。
塑性加工工程の際、出発原料がすべてマグネシウム化合物MgXへと合成される場合、そのMgXの粒子径は、上記範囲、即ち10〜500nm以下である。
一方、出発原料がすべてMgXに合成されることなく、未反応のMgと元素Xが残存する場合がある。この場合、元素Xの粒子径は300nm〜10μm程度である。未反応のMgと元素Xとは、さらに加熱処理を行うことにより、MgXへの合成をすることができる。この際に得られるMgXの粒子径は、未反応のX粉末の粒子径と同等の300nm〜10μm、例えば500nm〜10μmとなる。最終的に得られるMgXの粒子径は、塑性加工工程によって得られる10〜500nmのものと、熱処理工程によって得られる300nm〜10μm(例えば500nm〜10μm)との双方が存在する。
上記塑性加工工程は、種々の手段によって行うことができる。その一例を、図2を参照しつつ、以下に説明する。
図2の(a)は、金型臼1と下パンチ3とで形成された器に出発原料の配合・混合体5を充填した模式図である。
次いで、配合・混合体は、塑性加工工程(b)〜(f)に付される。塑性加工工程(b)〜(f)は、圧縮用上パンチ7と押込用上パンチ9とを備えるプレス加工機で行われる。なお、ここで用いるプレス加工機として既存の油圧式、機械式、スクリュー式など、いずれの駆動方式のプレス機であっても使用することができる。
工程(b)は、圧縮用上パンチ7を金型臼内に下降させて、配合・混合体が圧縮・固化される。次いで、圧縮用上パンチ7を上昇させた(工程(c))後、工程(d)では、押込用上パンチ9を金型臼1内に下降させる。この際、工程(d)の図に示すように、圧縮固化した配合・混合体(固化体)が後方(矢印Bの方向)に押出されることによって塑性加工が付与され、Mg及び元素Xが機械的に粉砕されて微細化する。
次に、押込用上パンチ9を上昇させた(工程(e))後、再度、圧縮用上パンチ7を金型臼1内に下降させて図2(f)においてU字型となっている固化体を圧縮する。これにより、金型臼1内面に沿って存在する固化体が金型臼1内側(矢印Cの方向)に回りこむ。これら一連の作業(b)〜(f)により、配合・混合体は、より混合・攪拌され且つ各出発原料は微細化される。
一連の作業(b)〜(f)、即ち圧縮過程(圧縮用上パンチ7による加圧・圧縮加工)と押込用上パンチ9による後方押出塑性加工とを1サイクルとして、所定のサイクル数を繰返すことにより、Mg及びXの均一混合及び微細化を経て、固相拡散現象によってMgXが合成される。
この加工において、出発原料の配合・混合体に与える塑性加工量を制御することにより、MgXの粒子径を10〜500nmの範囲で調整することができる。また、その塑性加工量は、種々のパラメータを変化することによって、制御することができる。例えば、パラメータとして、(b)〜(f)のサイクル数、(d)の押込用上パンチ9の荷重及び速度、金型臼1の内径と押込用上パンチ9の外径との関係、(f)の圧縮用上パンチ7の荷重及び速度などを挙げることができる。
なお、金型臼1の底部での配合・混合体が停滞することを解消するため、必要に応じて、あるサイクル数間隔で金型臼1を上下反転させるか、又は配合・混合体を取り出した後に該配合・混合体を上下反転して再度圧縮・後方押出加工を施す、などの方法を行うことも有効である。
作業(b)〜(f)を所定のサイクル繰り返した後に、作業(b)を行うことで、円筒状の固化体(図2(g))を得ることができる。固化体は、上述のように、MgとXとがすべて反応している場合、粒子径10〜500nmのMgXのみからなり、すべて反応していない場合、上記範囲の粒子径を有するMgX、並びに未反応Mg及びXからなる。
塑性加工工程後に、加熱処理工程を有する場合、その加熱温度は、150℃以上650℃未満、好ましくは200℃以上400℃以下であるのがよい。Mgの融点である650℃を越えると、Mgの液相が出現し、元素Xと反応して得られるMgXの粒子径が粗大化する傾向が生じる。また、150℃未満であると、MgとXとの間で十分に反応が進行せず、加熱処理後であっても未反応のMgおよびXが残存するため、好ましくない。特に、加熱処理によって微細粒を有するMgXを得るには、加熱温度が200℃以上400℃以下であるのがよい。なお、試料の酸化抑制の観点から加熱雰囲気は、真空下又は不活性ガス下とすることが望ましい。
<MgX被膜を有する金属材料とその製造方法>
MgX被膜を有する金属材料は、基材となる金属材料の表面にMgX被膜を有してなる。「表面」は、MgX被膜を有する金属材料の用途などに依存するが、金属材料の全表面であっても一部であってもよい。金属材料は、マグネシウム合金材料であってもよいし、それ以外の金属または合金材料であってもよい。
マグネシウム合金は、マグネシウムを主要成分として含む合金であれば、いずれのものを用いてもよい。例えば、AZ31合金、AM60合金、AZ91合金、ZK60合金、ZM20合金などが挙げられる。
以下の方法により、金属材料の表面にMgX被膜を設けることができる。即ち、基材である金属材料と、上述のMgXの固化体又はMgXを一部に含む固化体とを準備する工程;及び金属材料の表面に固化体の層を、従来より公知の方法を用いて設ける工程;並びに、必要ならば、固化体中の未反応のMg及びXを反応させるために加熱する工程;及び/又は、固化体の層と基材である金属材料との密着性を高める工程を有することにより、MgX被膜を有する金属材料を得ることができる。
なお、ここで「MgXの固化体」とは、上述のMgXの製造方法で、すべてのMgとXとが反応して得られた固化体を示し、「MgXを一部に含む固化体」とは、MgとXとの一部が反応してMgXとなり一部が未反応のMg及びXが残存する状態の固化体、例えば図2(g)に示すものをいう。
また、必要ならば有してもよい工程である「固化体中の未反応のMg及びXを反応させるために加熱する工程」における加熱温度は、150℃以上650℃未満、好ましくは200℃以上400℃以下であるのがよい。前述したように、Mgの融点である650℃を越えると、Mgの液相が出現し、元素Xと反応して得られるMgXの粒子径が粗大化する傾向が生じる。また、150℃未満であれば、MgとXとの間で十分に反応が進行せず、熱処理後であっても未反応のMgおよびXが残存するため、好ましくない。特に、微細粒のMgXを創製するためには、加熱温度は200℃以上400℃以下がより好ましい。なお、試料の酸化抑制の観点から加熱雰囲気は、真空下又は不活性ガス下とすることが望ましい。
金属材料の表面に固化体の層を設ける工程について、図面を参照しつつ、より具体的に説明する。
図3は、金型11内に挿入した金属材料13の表面に固化体15を配置し、その後、加熱及び/又は加圧するこにより、固化体と金属材料とを接合させる工程及びそれによって得られる「MgX被膜19を有する金属材料17」を示している。この方法を用いた場合、得られるMgX被膜の厚さは、用いる固化体の厚さにほぼ依存し、一般的には数mm程度の厚さとなる傾向にある。
他の方法として、溶射法を適用することができる。具体的には、アーク溶射、プラズマ溶射、ガス溶射、HVOF(High Velocity Oxygen Fuel)法などが挙げられる。図4は、一例としてガス溶射を示している。この方法は、金属材料13に、溶射ガン20からアセチレンガスと酸素ガスとの混合ガスを燃焼させたガス炎20aを吐出させ、そのガス炎20aにMgX粉末15aを送り込んで、そのMgX粉末を金属材料13の表面に溶射してMgX被膜19を形成する。
また、別の方法として、図5に示すイオンビームスパッタリング法を適用することもできる。この図5において、ターゲット材21として上述のMgX固化体又はMgXを一部に含む固化体を用いることができる。イオンビームをターゲット材21に照射することにより、MgXを被膜19として金属材料13の表面に蒸着・形成することができる。
なお、固化体として、MgXを一部に含む固化体を用いた場合、固化体中の未反応Mg及び未反応Xが気相中又はターゲット材上などで反応してMgXを形成し、該MgXを被膜として金属材料表面に蒸着・形成することができる。また、未反応Mg及び未反応Xがそのまま金属材料表面に蒸着・形成される場合もある。後者の場合、未反応Mg及び未反応Xを反応させるため、蒸着形成した層をさらに加熱工程に付するのがよい。加熱工程の加熱温度は、上述の温度、即ち150℃以上650℃未満、好ましくは200℃以上400℃以下であるのがよい。
このようにして得られた化合物MgXは、ナノスケールの微細構造粒子から構成されるため、硬さ・耐摩耗性・耐腐食性に優れる。また、この化合物を被膜として金属材料表面に形成することにより、その金属材料自身の機械的特性・耐摩耗性・耐食性を向上させることができる。したがって、軽量化ニーズの高い構造用部品、例えば二輪車・自動車部品;家電部品;機械部品:パイプや棒状素材からなる介護福祉器具(車椅子・介護用ベッド・杖・福祉車両など);スポーツ製品や釣具などのホビー用品;等の、マグネシウム合金の使用が望まれる部品・製品に本発明を適用し、硬さ・耐腐食性・耐摩耗性を大幅に向上させることができる。
以下、実施例に基づいて、この発明をさらに詳細に説明するが、この発明は本実施例に限定されるものではない。
出発原料として純Mg粉末(平均粒子径:165μm)と、第4B族元素XとしてSi粉末(平均粒子径:23μm)、Ge粉末(平均粒子径:34μm)、Sn粉末(平均粒子径:44μm)、Pb粉末(平均粒子径:29μm)をそれぞれ準備した。
組成モル比でMg:X=2:1となるように各粉末を秤量・混合し、混合粉末体を得た。
各混合粉末体を前述の図2に示した装置を用いて、常温で強塑性加工工程を行い、円柱形(35mmφ×高さ約30mm)の固化体を得た。なお、図2に示す装置において、金型臼(SKD11鋼製)の内径:35mmφ、圧縮用パンチの外径:34.85mmφ、押込用パンチの外径:25mmφ、先端半径:12.5mmとした。圧縮用パンチによる加圧:1回+押込用パンチによる加圧:1回を1サイクルとし、表2に示すようにその繰り返し回数を200〜600サイクルとして固化体A−1〜A−6を作製した。
また、表2に示すように、比較例として、強塑性加工工程を行わず(表中、「繰り返し回数」がゼロ(0)と記載)にその後、真空熱処理を施し、比較固化体試料A−101〜A−104を得た。なお、熱処理温度は、表2に記載の通りであり、各温度で30分間加熱・保持した。
固化体A−1〜A−6及びA−101〜A−104について、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)による組織観察を行い、得られた組織構造写真から画像解析により固化体中に存在するマグネシウム化合物MgXの粒子径を算出した。
また、JIS Z2371に規定された塩水噴霧試験(35℃に管理した5%食塩水)に100時間付した後の試料表面の腐食状況を観察した。
さらに、ビッカーズ硬度計(荷重50g下)を用いて硬さを測定した。これらの結果を表2に示す。
Figure 0004452779
固化体A−1〜A−6は、所定回数の繰り返し強塑性加工を施すことにより、この発明が規定する粒子径、特に300〜500nm以下の微細な粒子径を有するMgXを固相合成できることが観察された。また、これらの固化体A−1〜A−6は、優れた耐腐食性およびビッカーズ硬さを有することを確認した。
一方、比較例としての固化体A−101〜A−104は、同一元素粉末を用いたにも関わらず、繰返し強塑性加工工程を施さず、Mg又は元素Xのいずれか一方の融点以上の温度域において加熱する工程を採用したため、液相反応によってMgXが合成されている。それによって得られた固化体は、MgXの粒子径が10μmを越えていることが観察された。また、これらの固化体A−101〜A−104は、耐腐食性およびビッカーズ硬さが著しく低い、特に固化体A−1〜A−6と比較すると格段に低いものであった。
出発原料として純Mg粉末(平均粒子径:165μm)とSi粉末(平均粒子径:23μm)を準備し、組成モル比でMg:Si=2:1となるように粉末を秤量・混合し、混合粉末体を得た。混合粉末体を、前述の図2に示した装置を用いて、常温で強塑性加工工程を行い、円柱形(35mmφ×高さ約28mm)の固化体を得た。なお、図2に示す装置において、金型臼(SKD11鋼製)の内径:35mmφ、圧縮用パンチの外径:34.85mmφ、押込用パンチの外径:20mmφ、先端半径:10mm、圧縮用パンチによる加圧:1回+押込用パンチによる加圧:1回を1サイクルとし、その繰り返し回数を300サイクル(A−7)および600サイクル(A−8)とした。
300サイクル処理工程によって得られた固化体A−7についてのみ、さらに350℃で30分間の真空熱処理工程を施した。
600サイクル処理工程によって得られた固化体A−8について、X線回折(XRD)を行った結果を図6に示す。なお、比較として出発原料のXRD結果も併せて図6中、(b)として示す。
図6からわかるように、600サイクル処理を行うことにより得た固化体A−8は、ほぼMgSi単相からなることがわかる。
また、固化体A−8のTEM観察結果を図7に、真空熱処理後の固化体A−7のTEM観察結果を図8にそれぞれ示す。図7から分かるように、固化体A−8は、100nmを下回るMgSi微細粒子のみからなることがわかる。図8に示すように、繰り返し強塑性加工工程及び適切な熱処理工程を付して得られた固化体A−7は、100nmを下回るMgSi微細粒子と500nm前後の結晶粒径のMgSi粒子とからなることがわかる。
出発原料として純Mg粉末(平均粒子径:165μm)とSi粉末(平均粒子径:23μm)を準備し、組成モル比でMg:Si=2:1となるように粉末を秤量・混合し、混合粉末体を得た。混合粉末体を、前述の図2に示した装置を用いて、常温で強塑性加工工程を行い、円柱形(35mmφ×高さ約30mm)の固化体を得た。なお、図2に示す装置において、金型臼(SKD11鋼製)の内径:35mmφ、圧縮用パンチの外径:34.85mmφ、押込用パンチの外径:20mmφ、先端半径:10mm、圧縮用パンチによる加圧:1回+押込用パンチによる加圧:1回を1サイクルとし、その繰り返し回数を150サイクルとして固化体A−9を得て、引き続き320℃で30分間の真空熱処理を施し、最終生成物A−9’を得た。
繰り返し強塑性加工後、即ち固化体A−9のTEM観察結果を図9に、真空熱処理後、即ちA−9’のTEM観察結果を図10にそれぞれ示す。
150サイクルの繰り返し強塑性加工後、即ち固化体A−9は、図9(a)に示すように、500nm程度の未反応のSi粒子が一部に存在し、且つ図9(b)に示すように、大半はMgとSiとの固相反応によって合成された粒子径30〜80nm程度のMgSiが存在する。一方、真空熱処理後、即ちA−9’は、図10に示すように、500nm前後のMgSiが存在する。これは、強塑性加工後に残存していた未反応Si粒子の大きさにほぼ同じであり、適切な熱処理を施すことにより未反応Si粒子が未反応Mgと反応することで全てがMgSiへと合成され、且つその粒子径が未反応Si粒子と同程度の粒子径となるものと考えられる。なお、図9及び図10から、繰り返し強塑性加工工程及び熱処理工程を有することにより、所望の特性を有するMgSiを形成できることがわかる。
純Mg粉末と純Si粉末を組成モル比で2:1とした混合粉末を、前述図2の方法により固化体とし(BMA回数は600回)、この固化体をスタンプミルを用いて粉砕し粉末とした。その粉末粒径は45μm以下である。
この粉末を70mm×150mm×厚さ1.6mmの軟鋼板上に前述図4の方法でガス溶射を行い、次いで面圧800MPaで加圧成形し、被膜19を形成した。
得られた複合材料について、図11に示すように、X線回折によるMgSiピークの有無を確認すると共に、図12に示すように、複合材料の断面を光学顕微鏡により観察した。また、JIS Z 2371に規定される中性塩水噴霧試験に100時間付し耐食性を評価した。さらに、ビッカース硬度計を用いて硬さを測定した。
そのX線回折の結果、ガス溶射で被膜を形成させた面からはMgSiのピークが確認され、また、被膜断面の光学顕微鏡観察によると、軟鋼板と被膜は良好な結合状態にあり、その被膜厚さは50μmであった(図12参照)。
塩水噴霧試験、硬さ測定の結果を表3に示し、その塩水噴霧試験の結果から、MgSi被膜を形成した軟鋼板は著しく耐食性が向上することを確認した。
ダクタイル鋳鉄製板に実施例4と同様の方法でMgSi被膜を形成した。その被膜厚さは光学顕微鏡観察から200μmであった。また、JIS Z 2371に規定される中性塩水噴霧試験に100時間付し、耐食性を評価した結果、及びビッカース硬度計を用いて硬さを測定した結果を表3にそれぞれ示す。
アルミニウム合金(A5083)板に実施例4と同様の方法でMgSi被膜を形成した。その被膜厚さは光学顕微鏡観察から200μmであった。
また、JIS Z 2371に規定される中性塩水噴霧試験に100時間付し、耐食性を評価した結果、及びビッカース硬度計を用いて硬さを測定した結果を表3にそれぞれ示す。
Figure 0004452779
これらの結果から、いずれの実施例も、十分な厚みのMgSi被膜19を有し、耐食性、硬度において優れたものであることが理解できる。
この発明は、以上のように、Siなどのマグネシウム化合物の被膜を有する金属材料としたので、耐食性及び硬さに優れたものとなり、各種構造物などの優れた素材となり得るものを提供できる。

Claims (3)

  1. 金属材料の表面に堆積する被膜を提供するための被膜形成材料であって、
    Si、Ge、Sn及びPbからなる群から選ばれる元素Xと、マグネシウム(Mg)との化合物MgXからなり、前記MgXの粒子径が10ナノメートル(nm)以上、500ナノメートル(nm)以下である、被膜形成材料。
  2. マグネシウム(Mg)と、Si、Ge、Sn及びPbからなる群から選ばれる元素Xとのモル比がMg:X=2:1となるように各出発原料を秤量し、両者を混合する工程と、
    前記混合体に対して塑性加工を繰り返して施すことにより、前記マグネシウムと前記元素Xとを固相反応させて粒子径が10ナノメートル(nm)以上、500ナノメートル(nm)以下のマグネシウム化合物MgXを合成する工程と、
    前記マグネシウム化合物MgXからなる材料を被膜形成材料として用いて、金属材料基材の表面に前記被膜形成材料を付着させてMgXからなるマグネシウム化合物被膜を形成する工程とを備える、金属材料の製造方法。
  3. 前記金属材料基材は、マグネシウム合金からなる基材である、請求項2に記載の金属材料の製造方法。
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