JP4451029B2 - 使い捨ての体液吸収性着用物品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、透液性の表面シートを肌に当接して着用する使い捨ての体液吸収性物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、熱可塑性合成繊維からなる不織布や熱可塑性合成樹脂からなる開孔フィルム等の透液性シート素材を肌に当接させる表面シートとして使用した使い捨ての体液吸収性着用物品は、よく知られている。これらの不織布やフィルムの多くは、疎水性、撥水性のものではあるが、それらの性質をさらに高めるために、シート素材の表面にシリコーンオイルを塗布して表面シートとして使用することもよく知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、表面シートの上を体液が流れたり、表面シートが肌や着衣でこすられたりしたときに、シリコーンオイルが流れ去ったり、拭き取られたりしてその機能を果たし得ないことがある。そうした表面シートでは、粘稠な経血や軟便が排泄されると、これらがコアに吸収される前に表面シートの上に広がり、これら排泄物によって着用者の肌を広い範囲にわたって汚すとか、着用物品を廃棄するときに排泄物で汚れた表面が外に出て環境衛生上好ましくないということがある。
【0004】
そこで、この発明は、従来技術のこうした問題を解消すべく、排泄物が表面シートの上に広がることを抑え、排泄物を速やかにコアへ移行させることが可能な表面シートを有する使い捨ての体液吸収性着用物品の提供を課題にしている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題解決のために、この発明が対象とするのは、不織布および開孔フィルムのいずれかからなる透液性シート素材によって肌に当接する表面シートが形成され、前記表面シートの内側に体液吸収性コアが位置している使い捨ての体液吸収性着用物品である。
【0006】
かかる使い捨ての体液吸収性着用物品において、この発明が特徴とするところは、前記透液性シート素材の前記肌に対する当接面には、シリコーン樹脂層とシリコーンオイル層とが前記当接面の外側に向かって順に重なるように形成されていることにある。
【0007】
この発明の好ましい実施態様において、前記両層におけるシリコーン樹脂とシリコーンオイルとが混和性を有している。また、前記透液性シート素材は、熱可塑性合成樹脂からなる。
【0008】
【発明の実施の形態】
この発明に係る使い捨ての体液吸収性着用物品として生理用ナプキンを例にとり、添付の図面を参照して発明の詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0009】
図1に部分破断斜視図で示された生理用ナプキン1は、透液性表面シート2と、不透液性裏面シート3と、これら両シート2,3間に介在する体液吸収性コア4とを有する。表裏面シーと2,3は、コア4の周縁から延出して重なり合う部分において互いに接合している。
【0010】
かかる生理用ナプキン1は、表面シート2をナプキン着用者の肌に当接して使用するもので、図示例の表面シート2は、経血をコア4へ向かって透過させるための多数の透孔11を有するフィルム15(図2参照)からなり、そのフィルムはポリエチレン等の熱可塑性合成樹脂で形成されている。透孔11の径は、0.1〜5mm、より好ましくは0.4〜3mmの範囲にあり、透孔11が表面シート2に占める割合は、コア4が当接する部位において5〜70%、より好ましくは10〜50%の範囲にある。かような透孔11は、その周囲にコア4へ向かって延びる導液管を有するものであってもよい。また、透孔11の径は、生理用ナプキン1をはじめとするこの発明の使い捨ての体液吸収性着用物品の用途によって選択することができる。裏面シート3は、ポリエチレン等の熱可塑性合成樹脂フィルムからなる。コア4は、粉砕パルプまたは粉砕パルプと高吸水性ポリマー粒子との混合物によって形成される。かかる混合物の意味には、コア4において高吸水性ポリマー粒子が層を成している場合も含まれる。
【0011】
図2は、図1のII−II線断面図である。断面で見た表面シート2は、開孔11を有しコア4に当接しているフィルム15からなり、そのフィルム15の肌に対する当接面にはシリコーン樹脂層16が形成され、樹脂層16の外側(図の上側)にシリコーンオイル層17が形成されている。樹脂層16は、例えばエポキシ変性シリコーンとアンチモン系触媒との混合物をフィルム15に塗布した後、紫外線を照射してエポキシの開環重合を促進することによって得ることができる。樹脂層16は、かかる重合過程においてフィルム15と強固に一体化する。オイル層17は、所要の撥水性と樹脂層16との混和性を有する例えばジメチルシリコーン等のシリコーンオイル、より好ましくは表面張力が30mN/m以下であり、ポリシロキサン骨格導入率が30〜100%であって、重合度100以下のシリコーンオイルを樹脂層16に塗布することによって得ることができる。
【0012】
かような生理用ナプキン1では、シリコーンオイル層17の作用によって、粘稠な経血でも、表面シート2の上を速やかに流れて開孔11に入り、コア4へと移行することが可能で、表面シート2の上には多くの経血が滞溜するということがない。それゆえ、このナプキン1は、使用中であれば、表面シート2の上に滞留した経血によって肌を広範囲にわたって汚すということがなく、また使用後であれば、経血がコア4に吸収されているので表面シート2の汚れが目立つことがないうえに、環境衛生上好ましい廃棄が可能になる。さらにはまた、シリコーンオイル層17のオイルは樹脂層16の樹脂との混和性を有しているから、シリコーンオイルが経血とともに流れ去るとか、肌や着衣によって拭き取られるとかということによって表面シート2の上から消失するということがない。それゆえ、シリコーンオイル層17は、その機能を長く維持することが可能である。
【0013】
図3は、表面シート2を評価するための試験器31の斜視図である。試験器31は、例えば協和界面科学株式会社製の接触角計「CA−Sミクロ2型」として入手できるもので、この試験器31では、斜面33の傾斜角度Aを一定の速度で変化させることができる。その斜面33には、30×110mmの大きさの表面シート2またはその他の評価すべきシート34を固定する。試験開始時には、傾斜角度Aを0°にセットし、シート34には0.2gの馬血36を滴下する。次いで傾斜角度Aを1°/秒の速度で大きくなるように変化させ、馬血36が斜面33を流れ始めるときの角度を滑落角Bとして求める。馬血36が流れ終わったときには、シート34を秤量してシート34に対して付着している馬血36の重量を求める。
【0014】
表1は、表面シート2を含む各種シートの試験器31による評価結果を示す。評価に供した表中の各シートは、次のものである。
(1)ポリエチレンフィルム:厚さ15μm
(2)ポリテトラフルオロエチレンフィルム:厚さ15μm
(3)シリコーン樹脂処理ポリエチレンフィルム:(1)のフィルムにエポキシ変性シリコーンとアンチモン系触媒との混合物を0.5μmの厚さに塗布し、溶媒を蒸発させた後に、350nmの紫外線を120w・cm/cmの割合で1秒間照射してシリコーン樹脂層を形成したもの
(4)シリコーンオイル処理ポリエチレンフィルム:(1)のフィルムの上に粘度20mm/s,表面張力20.8mN/mのジメチルシリコーンオイルを2.0μmの厚さに塗布してシリコーンオイル層を形成したもの
(5)シリコーン樹脂・シリコーンオイル処理ポリエチレンフィルム:(3)のフィルムのシリコーン樹脂層の上に(4)のフィルムと同じようにしてシリコーンオイル層を形成したもの
【0015】
【表1】
Figure 0004451029
【0016】
表1において、「摩擦20回」とは、評価に供するシートをポリプロピレンからなるスパンレース不織布で20回こすった後に試験器31で評価した結果を意味し、「摩擦なし」とは、スパンレース不織布でこすることなく評価した結果を意味する。表1の結果から、シリコーン樹脂層16の上にシリコーンオイル層17を形成した表面シート2では、馬血が流れ易くて表面シート2に付着することがなく、そのような性能は、表面シート2を不織布で20回こすっても容易に低下することがない。
【0017】
この発明において、開孔11を有する表面シート2は、フィルムに代えて不織布や織布を使用することができる。不織布や織布の繊維素材には、熱可塑性合成樹脂以外のものを使用することもできる。また、この発明は、図示例の生理用ナプキンの他に、使い捨ておむつ等の使い捨ての体液吸収性着用物品で実施することができる。
【0018】
【発明の効果】
この発明に係る使い捨ての体液吸収性着用物品では、それに使用された透液性表面シーがシート素材の肌当接面にシリコーン樹脂層とシリコーンオイル層とを有しているから、体液はシリコーンオイル層の上を速やかに流れてコアへ移行することが可能である。シリコーン樹脂層はシート素材に強固に密着し、これら両層の間ではシリコーン樹脂とシリコーンオイルとが混和性を有しているから、着用物品の使用中にシリコーンオイルが流れ去るとか、拭き取られるとかということがなく、シリコーンオイル層はその機能を長く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】生理用ナプキンの斜視図。
【図2】図1のII−II線断面図。
【図3】試験器の斜視図。
【符号の説明】
1 使い捨ての体液吸収性着用物品(生理用ナプキン)
2 表面シート
15 シート素材(フィルム)
16 シリコーン樹脂層
17 シリコーンオイル層

Claims (3)

  1. 不織布および開孔フィルムのいずれかからなる透液性シート素材によって肌に当接する表面シートが形成され、前記表面シートの内側に体液吸収性コアが位置している使い捨ての体液吸収性着用物品において、
    前記透液性シート素材の前記肌に対する当接面には、シリコーン樹脂層とシリコーンオイル層とが前記当接面の外側に向かって順に重なるように形成されていることを特徴とする前記使い捨ての体液吸収性着用物品。
  2. 前記両層におけるシリコーン樹脂とシリコーンオイルとが混和性を有している請求項1記載の使い捨ての体液吸収性着用物品。
  3. 前記透液性シート素材が熱可塑性合成樹脂からなる請求項1または2記載の使い捨ての体液吸収性着用物品。
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