JP4450706B2 - 杭と柱の接合構造および接合方法 - Google Patents

杭と柱の接合構造および接合方法 Download PDF

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Description

本発明は、土木建築分野における杭と柱の接合構造および接合方法、特に柱脚をピン接合に近い状態で接合する杭と柱の接合構造および接合方法に関する。
従来、杭と柱の接合構造としては、図17に示すように、フーチング(パイルキャップ)例えば直方体の形状をした鉄筋コンクリート製のフーチング30を介して杭2と柱19とを接続する接合構造、すなわち柱19のベースプレート20をアンカーボルト34およびこれに固定されるナット等の固着具35により接合する構造が知られている。また、フーチング30には、鉄筋コンクリートの基礎梁(図示省略)を接続する構造とする場合もある。
鉄筋コンクリート製のフーチング30の寸法は一般的に、杭径の2.5倍、高さは杭頭の埋め込み長さや鉄筋またはアンカーボルト定着長さの確保から1m〜2m程度と大きい。このための杭工事の後に、以下のような工程となる。
掘削工事→土留め→砕石/捨てコンクリート工事→墨だし→鉄筋工事/アンカ−フレームのセット→型枠工事→コンクリート工事→養生→型枠外し→埋め戻し→残土処分
したがって、大きなフーチングの存在によりコスト高になるという問題がある。すなわち、多くの建材の使用と、多くの専門工による手間と長い作業工程により、コスト高となっている。また、解体時にもフーチング30の解体には高い費用がかかることになる。また、フーチング内の配筋の場合あるいはフーチング内の配筋と基礎梁(地中梁)の配筋となる場合には、鉄筋の過密配置、基礎梁の断面が大断面となり施工コスト増大の要因となっている。
また、多層建築の場合では、柱脚を固定とするために曲げモーメントが発生するため、鉄筋コンクリートと基礎梁が必要となるが、平屋の工場あるいは倉庫の場合では、柱脚をピン接合として設計することが多く、基礎に曲げモーメントが発生しないために、基礎梁を省略することができる。この場合、杭と柱を直接ピン接合することで基礎梁を省略することができ、工事費用の大幅削減することができる。
また、従来、中空柱の内部の中心部と杭内部の中心部とに渡って縦向きに棒状金物を配置し、かつ中空柱内部に接合のためのモルタルを充填する形態の杭と柱との接合構造も知られている(例えば、特許文献1参照)。このような構造とすることにより、杭頭部をピン接合あるいは半剛結接合させ、杭頭応力を低減することも知られている。
このように中空柱の内部の中心部と杭内部の中心部とに渡って縦向きに棒状金物を配置する場合には、柱がH型断面等の中心部にウエブを有する開放断面形の柱には、棒状金物とウエブが干渉するため適用できない。したがって、少なくとも柱脚部に中空閉断面形状を有する柱でないと適用できず、中心部にウエブを有する開放断面の形態の柱脚部には適用できず、中空閉断面の柱脚構造上にさらにH型断面等の中心部にウエブを有する開放断面形の柱を設ける構造となり、柱を含めた柱脚構造が複雑になるという問題がある。
また、棒状金物を杭側に固定するための杭頭部コンクリートの充填・養生硬化作業と、棒状金物を柱脚内部に配置した後の柱脚内コンクリートの充填・養生硬化作業との、2工程のコンクリートの充填・養生硬化作業により棒状金物を固定する形態であるので、工期が長くなり、施工が煩雑になると共に施工コストが高くなるという問題がある。
また、杭側に棒状金物を固定しているので、柱脚内空間で棒状金物の施工誤差を吸収する形態であるため、杭の横方向の施工誤差が生じた場合、柱脚内でその施工誤差を吸収することになるため、棒状金物が柱脚中心から偏心した位置に配置されることになり、作用するモーメントを合理的な設計とするために、杭側の中心軸線ではなく、柱中心軸線を基準とするように配置することが望まれる。
特開2004−100304号公報
本発明は、柱脚内のコンクリート等の接合のための硬化性充填材を充填することなく、また、杭と柱とが強固な剛結合にならないで、ピン結合に近い状態になり、柱脚や杭頭に曲げモーメントがほとんど発生しないと共に、安価でかつ短工期で施工できる杭と柱の接合構造および接合方法を提供することを主目的とする。
また、杭の水平精度が多少ずれた場合でも、柱側を基準にアンカーボルトの配置位置を調整することができる杭と柱の接合構造および接合方法を提供することも目的とする。
第1発明の杭と柱の接合構造においては、柱脚内にコンクリート等の接合のための硬化性充填材を充填しないで杭と柱脚とを接合する杭と柱との接合構造において、中空杭頭内に充填されるコンクリート等の硬化性充填材と鉄骨柱脚のベースプレートとが、柱中心軸線付近に配置された1本または複数本の棒状鋼材によって接合されている杭と柱の接合構造であって、杭頭部に載置され、かつ充填材注入口およびアンカーボルト挿通孔を有するトッププレートと、これに挿通される前記棒状鋼材としての複数のアンカーボルトと、前記アンカーボルトの下部に配置されて支持され杭内径よりも僅かに小さい外径の上位の充填材支持板で、かつアンカーボルト位置調整用大径孔を有する充填材支持板と、その充填材支持板の下側に重合配置されると共に前記アンカーボルトに支持されるアンカーボルト挿通用小径孔を有する充填材漏洩防止板とを備えたアンカーボルト位置決め兼仮支持金具におけるトッププレートが杭に載置され、トッププレートと杭内に配置された充填材支持板との間に硬化性充填材が充填されていることを特徴とする
第2発明では、第1発明の杭と柱の接合構造において、杭頭内に硬化性充填材が充填された杭頭と柱脚のベースプレートとの間に、杭の外径よりも大径のトッププレートが杭に載置されていることを特徴とする。
第5発明では、第1発明または第2発明の杭と柱の接合構造において、トッププレートの下面にせん断抵抗用プレートが固定され、そのせん断抵抗用プレートは硬化性充填材に埋め込まれていることを特徴とする。
発明では、第1発明〜第発明のいずれかの杭と柱の接合構造において、トッププレートと柱脚のベースプレートとの間に、高さ調整用材料が介在されていることを特徴とする。
発明では、請求項1〜のいずれかの杭と柱の接合構造において、棒状鋼材にねじ込まれるナット等の固着具と柱脚のベースプレートとの間に皿ばね等の弾性体が介在されて接合されていることを特徴とする。
発明の杭と柱の接合方法においては、杭頭部に載置されるトッププレートおよびこれに挿通されてナット等の着脱自在な固着具により支持される棒状鋼材を介して杭内に配置される充填材支持板と充填材漏洩防止板とを仮支持した状態で、前記トッププレートの充填材注入口から杭頭部内面とトッププレートと充填材支持板との間の空間に硬化性充填材を充填して硬化させ、その後前記固着具を取り外し、柱のベースプレートに前記棒状鋼材を挿通して柱を杭または杭上のトッププレートに載置すると共にナット等の固着具をねじ込んで、杭に柱を接合することを特徴とする。
発明の杭と柱の接合方法においては、充填材注入口を有するトッププレートに載置されたナット等の固着具に支持されたアンカーボルトおよびそのアンカーボルトに支持されるアンカーボルト位置調整用大径孔を有すると共に杭内径よりも僅かに小さい外径で上位の充填材支持板と、その下側に配置されアンカーボルト挿通用小径孔を有する充填材漏洩防止板とを重合配置して備えているアンカーボルト位置決め兼仮支持金具を杭の中空頭部に載置し、次いで前記トッププレートにおける充填材注入口から硬化性充填材を注入充填して硬化して、硬化性充填材の付着によりアンカーボルト位置決め兼仮支持金具を仮支持した後、前記ナット等の固着具を取り外し、柱のベースプレートに前記アンカーボルトを挿通して柱を杭または杭上のトッププレートに載置した後、前記アンカーボルトにナット等の固着具をねじ込んで、杭に柱を固定することを特徴とする。
本発明によると、次のような効果が得られる。
(1)1本または複数本の棒状鋼材が柱中心付近に配置されているため、強固な剛結合にならないで、ピン結合に近い状態になり、このため、柱脚や杭頭に曲げモーメントがほとんど発生しない。また、杭の外径寸法は、杭頭を強固に固定する構造の場合に比べて地震時の杭頭に生じる曲げモーメントが少なくなるので、小さい外径寸法の杭サイズのものを使用することができる。
(2)アンカーボルト等の棒状鋼材が柱中心軸線に近接するように柱中心付近に配置されているために、杭の水平精度が多少ずれた場合でも、棒状鋼材が杭の内壁に当たることなく柱側の中心軸線を基準にアンカーボルトの配置位置を調整することができる。
(3)アンカーボルト等の棒状鋼材の最下部に、コンクリート止めの充填材支持用板および充填材漏洩防止板が取り付けられているため、コンクリート等の硬化性充填材を中詰めしても杭最下部まで充填材が落ちることはない。また、杭の水平精度が多少ずれた場合でも、アンカーボルト等の棒状鋼材は常に鉛直を保つことができる。
(4)杭頭に載置されるトッププレートは、杭外径よりも大きくしているので、杭の水平位置がずれていても、施工誤差を容易に吸収できる。
(5)中詰コンクリート等の硬化性充填材が適切な長さで杭内部にあるため、棒状鋼材が引き抜力かれようとても、棒状鋼材からの引き抜き外力は、硬化性充填材と杭内周面との付着により抵抗でき、棒状鋼材が抜けることはない。
(6)棒状鋼材の最上部はナット等の固着具で容易に柱のベースプレートを固定でき、角形柱や円形柱等の閉断面柱の場合は締付け作業用の開口部を用意すれば容易に対応することができる。
(7)また、アンカーボルトあるいは充填材支持部材あるいは充填材漏洩防止板の仮支持部材としてトッププレートを機能させることができ、またトッププレートを介して柱のベースプレートを支持したり、トッププレートを取り外して柱のベースプレートを直接杭に載置したりすることができるため、平屋低層建物等の建物に応じて経済的な設計・施工をすることができ、施工方法も簡単で、柱脚内に杭との接合のための硬化性充填材を充填しない等、現場作業が少ないので、短工期で施工できる杭と柱の接合法である。そのため、杭頭部内への硬化性充填材の充填硬化後においては、直ちに建物の骨組みを組立構築でき、建物の施工効率を向上させ経済的に構築できる。
(8)トッププレートとアンカーボルトと充填材支持部材と充填材漏洩防止板およびナット等の着脱自在な固着具とにより、アンカーボルト位置決め兼仮支持金具を構成することができ、アンカーボルト位置決め兼仮支持金具におけるトッププレート上のナットおよびトッププレートを硬化性充填材の硬化後に外しても、アンカーボルト、硬化性充填材、充填材支持板および充填材漏洩防止板は杭内の下部まで落ちることはない。また、前記アンカーボルト位置決め兼仮支持金具におけるトッププレートを杭頭部に載置してアンカーボルトの位置調整をするだけで、杭頭内に硬化性充填材の充填準備することができるので、杭頭内に容易にコンクリート等の硬化性充填材を充填することができる。
(9)トッププレートの下面にせん断抵抗用プレートを固定して硬化性充填材に埋め込み配置されていると水平方向の抵抗力を高めることができる。
(10)トッププレートとベースプレートとの間に適宜の厚さの高さ調整用材料を介在すると、杭レベルが低レベルの場合等では、容易に所定の位置に柱ベースプレートを設置することができる。
(11)杭と柱の接合構造に皿ばね等の弾性体が介在されていると、柱脚の固定度が下がることにより、より弾性的な杭と柱脚との接合構造とすることができ、地震時や風荷重が建物に作用した場合の柱脚の曲げモーメントを低減させることができる。
まず、本発明において使用するアンカーボルト位置決め兼仮支持金具1の構成について図3および図1を参照して説明する。
図3(a)〜(c)および図4(a)〜(c)に示すように、アンカーボルト位置決め兼仮支持金具1の上端部には、杭の外径よりも大きな外径とし、杭2の横方向の施工誤差を吸収して杭2の上部に確実に載置できるようにされ、その上部に柱脚3を確実に載置できるようにされた鋼製のトップレート4を備えており、前記トッププレート4には、図3に示すように、中心に1つのモルタル等の硬化性充填材注入口5が設けられ、あるいは図4に示すように、必要に応じトッププレート4の裏面にせん断抵抗用縦板22を有する横断面十字状のせん断抵抗部材9を設ける場合には、中心よりに等角度間隔で複数(図示の場合は4つ)のモルタル等の硬化性充填材注入口5が設けられていると共にその外側に前記と同じ等角度間隔をおいて複数(図示の場合は4つ)のアンカーボルト挿通孔6を備えている。
前記のアンカーボルト挿通孔6は、これに挿通されるアンカーボルト7の外径よりも僅かに大きな内径とされて、アンカーボルト7の横方向の移動を拘束し、そのアンカーボルト挿通孔6上部の周面で、ナット等の着脱自在な固着具8により支持可能にされている。なお、図示の実施形態では、ロックナットを含むダブルナットとしているが、アンカーボルト7を仮支持する場合には、各アンカーボルト7に対応する一つのナットをトッププレート4の上部に配置してもよい。
前記のトッププレート4の外径寸法は、杭頭部の外径寸法よりも100mm程度大きく設定され、杭2の50mm前後の通常の横方向の施工誤差を吸収可能に構成されている。
図4に示すように、必要に応じ設けられるせん断抵抗用部材9は、前記トッププレート4の下面側に、周方向の充填材注入口5の間に位置するように、せん断抵抗用縦板22を有する横断面十字状の鋼製のせん断抵抗用部材9の上部を溶接により固定して設ければよい。
前記トッププレート4に間隔をおいて平行に下位のレベルに、充填材支持板10が配置され、その充填材支持板10には、前記トッププレート4におけるアンカーボルト挿通孔6と同じ等角度間隔をおいて複数(図示の場合は4つ)の大径のアンカーボルト位置調整用大径孔11が設けられている。また、充填材支持板10の外径寸法は、杭頭部の内径よりも僅かに小さい外径寸法とされ、杭内周面と充填材支持板10との間からのコンクリートまたはモルタルあるいは無収縮モルタル等の硬化性充填材12の漏洩を防止している。
前記充填材支持板10の底面側には、前記のアンカーボルト位置調整用大径孔11と同じ等角度間隔をおいて複数(図示の場合は4つ)のアンカーボルト挿通孔13を有する充填材漏洩防止板14が重合配置されている。充填材漏洩防止板14のアンカーボルト挿通孔13は、これに挿通されるアンカーボルト7の外径よりも僅かに大きく設定され、充填材支持板10におけるアンカーボルト位置調整用大径孔11の孔を塞ぎ、硬化性充填材の漏洩を防止し、充填材支持板10に対し充填材漏洩防止板14およびアンカーボルト7の横方向の位置調整が可能にされ、これにより、杭打設時の横方向の施工誤差を吸収し、アンカーボルト7群の中心を杭の中心軸線に対してではなく、柱の中心軸線を基準に配置可能にされている。
前記のトッププレート4と充填材支持板10と充填材漏洩防止板11とのアンカーボルト挿通孔6,11,13にわたって、頭部15を下向きにしたアンカーボルト7が縦向きに挿通配置されていると共に、各アンカーボルト7の上端部には、トッププレート4の上面に係合する複数のナット等の着脱自在な固着具8がねじ込まれて、アンカーボルト位置決め兼仮支持装置1が構成されている。トッププレート4と充填材支持板10との間の上下方向の距離は、硬化性充填材12の付着等を考慮して、杭径(杭外径)の約2倍程度の長さとすればよく、このようにするため、前記のアンカーボルト7の長さは、杭径(杭外径)の約2倍程度より若干長くされている。また、杭頭部分は硬化性充填材12の充填・硬化により、曲げモーメントや圧縮軸力に対して強くなっている(剛性が高められている)効果もある。
なお、アンカーボルト位置決め兼仮支持金具1における充填材支持板10としては、図16(a)に示す充填材支持板10の変形形態のように、予め杭2の芯ずれを測定し、それに合わせるようにアンカーボルト挿通孔11を設けるようにしてもよい。このようにすると、杭2の芯ずれを見込んだ分予め大きなボルト挿通孔を設けなくてもよくなり、アンカーボルト挿通孔の大きさを小さくすることができ、場合によってはテンプレートとなる充填材漏洩防止板14を省略できる。しかし、通常では、充填材漏洩防止板14は、図16(b)に示すように充填材支持板10の裏面に各アンカーボルト挿通孔が重合するように重合配置するようにするとよい。充填材漏洩防止板14を鋼製等剛性の大きい板とする場合が多く、充填材漏洩防止板14に最終的に硬化性充填材12は支持されるため、充填材支持板10の材質に自由度をもたせることができ、具体的な充填材支持板10の材質としては、鋼板、木材、プラスチック板等、硬化性充填材の圧力を支承できる板状材料であれば、適宜の材料を使用することができる。
次に、前記のアンカーボルト位置決め兼仮支持装置1を使用して、これを杭2の上部に設置する場合について、図6(a)を参照して説明すると(せん断抵抗用部材9を使用した場合を2点鎖線で示した。)、杭2を打設し、杭上端部17が所定の高さにレベル調整するように切断した後、前記のようにセットされたアンカーボルト位置決め兼仮支持装置1における充填材支持板10と充填材漏洩防止板11とを杭頭中空部16内に配置すると共に、トッププレート4を杭上端部17に載置する。
また、杭を打設する場合、通常50mm程度の杭の水平施工誤差が生じるが、この水平施工誤差を吸収するために、前記アンカーボルト7と杭内面との隙間で調整可能であり、アンカーボルト7と杭頭に配置のトッププレート4の位置を正確に設置することで精度を確保することができる。前記のトッププレート4の外径寸法は、杭2の水平施工誤差の吸収をするために、前記のように杭外径+100m程度以上の外径寸法とすればよい。
なお、杭頭のレベル調整については、杭自身のレベル調整切断以外に、トッププレート4の板厚を調節したり、トッププレート4の上に後記の実施形態(図10参照)で示すように、トッププレート4の上にレベル調整用材料18を配置することによってもよい。
そして、各アンカーボルト7が柱脚3の中心軸線と同心状となるように等角度間隔の位置に配置されるように位置調整した後、図6(b)に示すように、トッププレート4における硬化性充填材注入口5から、中詰コンクリートまたはモルタルあるいは無収縮モルタル等の硬化性充填材12を、前記せん断抵抗用部材9がある場合にはこれを埋め込むようにトッププレート4下面まで充填し硬化させ、前記硬化性充填材12の杭2内面への付着を確実にした上、トッププレート4上面側のナット等の固着具8を取り外し、前記の硬化性充填材12の付着により、充填材支持板10および充填材漏洩防止板11およびアンカーボルト7を仮支持させ、これらの落下を防止する。なお、杭2としては、杭との溶接の必要がないので、PHC杭、鋼管杭など、少なくとも、杭頭部が中空な杭ならいずれの形式の杭でもよい。
前記のよう硬化性充填材12の硬化により、ナット等の固着具8を除くアンカーボルト位置決め兼仮支持装置1を仮支持させた状態で、前記のトッププレート4の上面に、図1および図2に示すように、角形鋼管からなる柱19の鋼製柱脚3に固定の矩形状鋼板等のベースプレート20を載置すると共に、前記ベースプレート20におけるアンカーボルト挿通孔に各アンカーボルト7を挿通し、取り外しておいた各ナット等の着脱自在な固着具8を、柱脚3下部に設けられた開口部21から挿入して、柱脚3内においてアンカーボルト7の上端部にねじ込み固定して、柱19のベースプレート20をトッププレート4に固定する。なお、必要に応じ、せん断抵抗用部材9がある場合を断面図に2点鎖線で示した(以下の実施形態でも同様)。
また、前記のような杭2と鋼製柱脚3の固定構造では、柱脚3の固定が、その柱脚3の中心位置付近に近接配置されたアンカーボルト7およびナット等の固着具8により固定されている構造であるので、柱脚3をピン結合に近い状態で杭2に接合することができる。
また、必要に応じて、トッププレート4にせん断抵抗用縦板22を有するせん断抵抗用部材9を設ける場合には、せん断抵抗部材9が硬化性充填材12に埋め込み固定されているので、地震時等に水平力が作用しても、前記アンカーボルトに過大な力を負担させることなく、せん断抵抗用縦板22を介して伝達させることができる。また、アンカーボルト7の下端部の頭部15に充填材支持板10および充填材漏洩防止板14が係合しているので、これらの部品を介してコンクリートまたはモルタルあるいは無収縮モルタルからなる硬化性充填材12周面全体の付着機能および重量を、アンカーボルト7の引き抜き抵抗要素として発揮させることができる。
本発明において使用するアンカーボルト位置決め兼仮支持装置1においては、杭外径よりも大きな外径のトッププレート4とし、また、前記の充填材支持板10におけるアンカーボルト挿通孔11の内径とアンカーボルト7外径との差を大きくしているので、杭2の水平方向の施工誤差が多少ずれても杭外径とトッププレート4との外径差分の位置調整ができ、杭2の施工誤差を吸収可能である。例えば、図9に示すように、杭2の水平方向の施工誤差が生じて、杭2の縦中心軸線C1が、建て込まれる柱脚3の設計上の縦中心軸線C2と横方向にずれても、トッププレート4を逆に横方向反対方向にずらすことにより、柱脚3の中心軸線C2と複数のアンカーボルト7群の中心位置とを合致させて配置することができ、したがって、柱19に対して各アンカーボルト7が偏心した位置にならないので、柱19からアンカーボルト7に偏心した引き抜き力が作用しない。
なお、柱19に過大な引き抜き力が発生する場合には、アンカーボルト7を長くするか、または杭2の内面に鋼製のせん断抵抗部材33を溶接等により固着して対抗するようにしてもよく、あるいは杭2の上端部とトッププレート4とを現場溶接32により固定するようにしてもよく、これらを併用するようにしてもよい。
なお、前記せん断抵抗部材33を固着するには、アンカーボルト位置決め兼仮支持金具1における充填材支持板10が、せん断抵抗部材33のレベルよりも若干下方に位置した吊り下げ状態時に杭内周面に溶接により固定するようにすればよい。
図7および図8は、前記の柱脚3に地中梁を取り付ける形態を示したものであって、柱脚3の下端部の開口部21より上位のレベルにH形鋼などの鋼製の地中梁23が柱脚3の側板に固定されているが、その他の形態は前記実施形態と同様であるので、同様な部分には同様な符号を付して説明を省略する。
図10および図11は、トッププレート4と柱脚3のベースプレート20との間に、トッププレート4におけるアンカーボルト挿通孔6と同様な等角度間隔でアンカーボルト挿通孔およびナット31の収容部を形成可能なレベル調整用材料18を介在させて、トッププレート4とベースプレート20とを複数のアンカーボルト7により接合した形態である。杭2の切断レベルが正確な場合はレベル調整用材料18を省略してもよい。また、レベル調整用材料18としては、無収縮モルタル等のモルタルあるいは鋼板等、圧縮力に強く、レベル調整が可能な材料であればよい。なお、図10に示すように、トッププレート4の上面に係合するナット31は、硬化性充填材12が硬化した後に取り外してもよいが、レベル調整用材料18を設ける場合は、残したままの状態でもよい。レベル調整用材料18を鋼板とする場合には、ナット31の外径よりも若干大きな貫通孔を設けておけばよく、前記ナット31により、トッププレート4およびアンカーボルト7を所定の位置に保持することができる。
また、上部の柱19をH形鋼からなる柱とし、H形鋼の柱脚3とした形態であり、H形鋼製柱脚3のウエブ24の両側にアンカーボルト7を配置するようにした形態である。また、トッププレート4に設ける充填材注入口5を前記ウエブ24の両側に位置するように2つ設けた形態である。その他の構成は前記実施形態と同様である。
また、図4に示すようなせん断抵抗用縦板22を有する横断面十字状のせん断抵抗用部材9を使用する場合、すなわち、トッププレート4に充填材注入口5およびアンカーボルト挿通孔6を、4つ、例えば90°の同じ等角度間隔の位置に設けるようにした場合には、せん断抵抗用部材9における左右方向の縦板22が柱脚3のウエブ24とほぼ同面状または平行に位置するように、また、前後方向のせん断抵抗用縦板22が前記ウエブ24と交差する方向に配置するようにすればよい。
また、柱脚3のベースプレート20には、前記アンカーボルト7から離れた位に補強リブ25が設けられている。
図12の形態では、前記の図10および図11に示す形態に、さらに地中梁23を設けた形態であり、柱脚3のベースプレート20に地中梁23の下部フランジ25が溶接により固定されているとともに、前記柱脚3のフランジ26に地中梁23の上部フランジ27が溶接により固定され、対向する地中梁23の上部フランジ27間を繋ぐように、柱脚3のフランジ26間には、補強リブ(ダイアフラム)28が溶接により取り付けられている。
図14は、柱脚3の固定度を下げて、よりピン接合に近い形態とした本発明の第5の実施形態を示すものであって、柱脚3のベースプレート20と固着具8との間に弾性ばね等の弾性体29が介在されて、弾性的に杭2と柱脚3を接合する形態である。前記弾性体29としては、アンカーボルト挿通孔を有する鋼製皿ばね、合成樹脂板あるいはゴム板等の弾性部材を使用することができる。前記のような弾性体29を介在させることにより柱脚3を柔軟な接合構造とすることができ、地震や風により建物を介して柱脚部に生じる回転曲げモーメントを小さくすることができ、柱脚3と杭基礎構造を小型軽量化することができる。なお、トッププレート4が省略される接合構造では、杭基礎とベースプレート20との間あるいは柱脚3のベースプレート20と固着具8との間に弾性体29を介在させればよい。その他の構成は前記実施形態と同様であるので、同様な要素には同様な符号を付して説明を省略する。
本発明を実施する場合、図15に示すように、モルタル等の硬化性充填材12を充填した後に、トッププレート4を取り外してこれを省略して、ベースプレート20を直接杭2に載置するようにしてもよく、この場合には、杭2の外径よりもベースプレート20の外径を、トッププレート4と同様な大きさにしておけばよい。
本発明の接合構造および接合方法によると下記のような作用効果がある。
(1)1本または複数本の棒状鋼材が柱中心付近に配置されているため、強固な剛結合にならないで、ピン結合に近い状態になり、このため、柱脚や杭頭に曲げモーメントがほとんど発生しない。また、杭の外径寸法は、杭頭を強固に固定する構造の場合に比べて地震時の杭頭に生じる曲げモーメントが少なくなるので、小さい外径寸法の杭サイズのものを使用することができる。
(2)アンカーボルト等の棒状鋼材が柱中心軸線に近接するように柱中心付近に配置されているために、杭の水平精度が多少ずれた場合でも、棒状鋼材が杭の内壁に当たることなく柱側の中心軸線を基準にアンカーボルトの配置位置を調整することができる。
(3)アンカーボルト等の棒状鋼材の最下部に、コンクリート止めの充填材支持用板および充填材漏洩防止板が取り付けられているため、コンクリート等の硬化性充填材を中詰めしても杭最下部まで充填材が落ちることはない。また、杭の水平精度が多少ずれた場合でも、アンカーボルト等の棒状鋼材は常に鉛直を保つことができる。
(4)杭頭に載置されるトッププレートは、杭外径よりも大きくしているので、杭の水平位置がずれていても、施工誤差を容易に吸収できる。
(5)中詰コンクリート等の硬化性充填材が適切な長さで杭内部にあるため、棒状鋼材が引き抜力かれようとても、棒状鋼材からの引き抜き外力は、硬化性充填材と杭内周面との付着により抵抗でき、棒状鋼材が抜けることはない。
(6)棒状鋼材の最上部はナット等の固着具で容易に柱のベースプレートを固定でき、角形柱や円形柱等の閉断面柱の場合は締付け作業用の開口部を用意すれば容易に対応することができる。
(7)また、アンカーボルトあるいは充填材支持部材あるいは充填材漏洩防止板の仮支持部材としてトッププレートを機能させることができ、またトッププレートを介して柱のベースプレートを支持したり、トッププレートを取り外して柱のベースプレートを直接杭に載置したりすることができるため、平屋低層建物等の建物に応じて経済的な設計・施工をすることができ、施工方法も簡単で、柱脚内に杭との接合のための硬化性充填材を充填しない等、現場作業が少ないので、短工期で施工できる杭と柱の接合法である。そのため、杭頭部内への硬化性充填材の充填硬化後においては、直ちに建物の骨組みを組立構築でき、建物の施工効率を向上させ経済的に構築できる。
(8)トッププレートとアンカーボルトと充填材支持部材と充填材漏洩防止板およびナット等の着脱自在な固着具とにより、アンカーボルト位置決め兼仮支持金具を構成することができ、アンカーボルト位置決め兼仮支持金具におけるトッププレート上のナットおよびトッププレートを硬化性充填材の硬化後に外しても、アンカーボルト、硬化性充填材、充填材支持板および充填材漏洩防止板は杭内の下部まで落ちることはない。また、前記アンカーボルト位置決め兼仮支持金具におけるトッププレートを杭頭部に載置してアンカーボルトの位置調整をするだけで、杭頭内に硬化性充填材の充填準備することができるので、杭頭内に容易にコンクリート等の硬化性充填材を充填することができる。
(9)トッププレートの下面にせん断抵抗用プレートを固定して硬化性充填材に埋め込み配置されていると水平方向の抵抗力を高めることができる。
(10)トッププレートとベースプレートとの間に適宜の厚さの高さ調整用材料を介在すると、杭レベルが低レベルの場合等では、容易に所定の位置に柱ベースプレートを設置することができる。
(11)杭と柱の接合構造に皿ばね等の弾性体が介在されていると、柱脚の固定度が下がることにより、より弾性的な杭と柱脚との接合構造とすることができ、地震時や風荷重が建物に作用した場合の柱脚の曲げモーメントを低減させることができる。
本発明を実施する場合、柱としては、H型断面柱、角形断面柱、円形断面柱などの閉断面あるいは開断面の柱にかかわらず、鉄骨柱なら適宜の鉄骨柱を使用することができる。
本発明を実施する場合、地盤に接する柱部分は防食性の高い塗料を塗布するようにすると防錆効果が高まるのでよい。
本発明を実施する場合、柱脚3または柱19内に、柱脚3または柱19の剛性を単に高めるために、コンクリートまたはモルタル等のセメント系硬化性充填材を充填してもよい。
本発明の第1実施形態の杭と柱の接合構造を示す一部縦断正面図である。 図1のA−A線断面図である。 (a)は杭頭にセットするアンカーボルト位置決め兼仮支持金具の平面図、(b)は縦断正面図、(c)は(b)のB−B線断面図である。 (a)は杭頭にセットする他の形態のアンカーボルト位置決め兼仮支持金具の平面図、(b)は縦断正面図、(c)は(b)のC−C線断面図である。 (a)はモルタル止め用底板を示す平面図、(b)はアンカーボルトの位置決め用の充填材漏洩防止板の平面図である。 (a)は杭頭にアンカーボルト位置決め兼仮支持金具のセットを配置した状態を示す縦断正面図、(b)は杭頭内にモルタル等の充填材を充填した状態を示す縦断正面図である。 本発明の第2実施形態の杭と柱の接合構造を示す一部縦断正面図である。 図7のD−D線断面図である。 杭の施工時の位置ずれにより杭中心と柱中心とがずれた場合の施工状態を示す縦断正面図である。 本発明の第3実施形態の杭と柱の接合構造を示すものであって、H形鋼製柱とした場合の縦断正面図である。 図10のE−E線断面図である。 本発明の第4実施形態の杭と柱の接合構造を示すものであって、H形鋼製柱とした場合の縦断正面図である。 図12のE−E線断面図である。 本発明の第5実施形態の杭と柱の接合構造を示すものであって、皿ばねなどの弾性体を介在させて杭と柱を接合する形態を示す縦断正面図である。 トッププレートを省略する杭と柱の接合構造の形態を示す縦断正面図である。 充填材支持板の変形形態を示すものであって、(a)は充填材支持板の底面図、(b)は充填材支持板と充填材漏洩防止板とを重ね合わせた状態を示す底面図である。 従来の杭と柱の接合構造を示す縦断正面図である。
1 アンカーボルト位置決め兼仮支持金具
2 杭
3 柱脚
4 トッププレート
5 硬化性充填材注入口
6 アンカーボルト挿通孔
7 アンカーボルト
8 ナット等の着脱自在な固着具
9 せん断抵抗用部材
10 充填材支持板
11 アンカーボルト位置調整用大径孔
12 硬化性充填材
13 アンカーボルト挿通孔
14 充填材漏洩防止板
15 頭部
16 杭頭中空部
17 杭上端部
18 高さ調整用材料
19 柱
20 ベースプレート
21 開口部
22 せん断抵抗用縦板
23 地中梁
24 ウエブ
25 下部フランジ
26 フランジ
27 上部フランジ
28 補強リブ(ダイアフラム)
29 弾性体
30 フーチング
31 施工用の着脱可能なナット
32 現場溶接
33 せん断抵抗鋼材

Claims (7)

  1. 柱脚内にコンクリート等の接合のための硬化性充填材を充填しないで杭と柱脚とを接合する杭と柱との接合構造において、中空杭頭内に充填されるコンクリート等の硬化性充填材と鉄骨柱脚のベースプレートとが、柱中心軸線付近に配置された1本または複数本の棒状鋼材によって接合されている杭と柱の接合構造であって、杭頭部に載置され、かつ充填材注入口およびアンカーボルト挿通孔を有するトッププレートと、これに挿通される前記棒状鋼材としての複数のアンカーボルトと、前記アンカーボルトの下部に配置されて支持され杭内径よりも僅かに小さい外径の上位の充填材支持板で、かつアンカーボルト位置調整用大径孔を有する充填材支持板と、その充填材支持板の下側に重合配置されると共に前記アンカーボルトに支持されるアンカーボルト挿通用小径孔を有する充填材漏洩防止板とを備えたアンカーボルト位置決め兼仮支持金具におけるトッププレートが杭に載置され、トッププレートと杭内に配置された充填材支持板との間に硬化性充填材が充填されていることを特徴とする杭と柱の接合構造
  2. 杭頭内に硬化性充填材が充填された杭頭と柱脚のベースプレートとの間に、杭の外径よりも大径のトッププレートが杭に載置されていることを特徴とする請求項1に記載の杭と柱の接合構造。
  3. トッププレートの下面にせん断抵抗用プレートが固定され、そのせん断抵抗用プレートは硬化性充填材に埋め込まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の杭と柱の接合構造。
  4. トッププレートと柱脚のベースプレートとの間に、高さ調整用材料が介在されていることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれかに記載の杭と柱の接合構造。
  5. 棒状鋼材にねじ込まれるナット等の固着具と柱脚のベースプレートとの間に皿ばね等の弾性体が介在されて接合されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の杭と柱の接合構造。
  6. 杭頭部に載置されるトッププレートおよびこれに挿通されてナット等の着脱自在な固着具により支持される棒状鋼材を介して杭内に配置される充填材支持板と充填材漏洩防止板とを仮支持した状態で、前記トッププレートの充填材注入口から杭頭部内面とトッププレートと充填材支持板との間の空間に硬化性充填材を充填して硬化させ、その後前記固着具を取り外し、柱のベースプレートに前記棒状鋼材を挿通して柱を杭または杭上のトッププレートに載置すると共にナット等の固着具をねじ込んで、杭に柱を接合することを特徴とする杭と柱の接合方法。
  7. 充填材注入口を有するトッププレートに載置されたナット等の固着具に支持されたアンカーボルトおよびそのアンカーボルトに支持されるアンカーボルト位置調整用大径孔を有すると共に杭内径よりも僅かに小さい外径で上位の充填材支持板と、その下側に配置されアンカーボルト挿通用小径孔を有する充填材漏洩防止板とを重合配置して備えているアンカーボルト位置決め兼仮支持金具を杭の中空頭部に載置し、次いで前記トッププレートにおける充填材注入口から硬化性充填材を注入充填して硬化して、硬化性充填材の付着によりアンカーボルト位置決め兼仮支持金具を仮支持した後、前記ナット等の固着具を取り外し、柱のベースプレートに前記アンカーボルトを挿通して柱を杭または杭上のトッププレートに載置した後、前記アンカーボルトにナット等の固着具をねじ込んで、杭に柱を固定することを特徴とする杭と柱の接合方法。
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