JP4449926B2 - 接合基板及び接合方法 - Google Patents

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Description

本発明は、陽極接合により複数のガラス基板を接合した接合基板及び接合方法に関する。
近年では、マイクロリアクタと呼ばれる小型反応器が開発・実用化されている。マイクロリアクタは、複数種類の原料や試薬、燃料などの反応物を互いに混合させながら反応させる小型反応器であって、マイクロ領域での化学反応実験、薬品の開発、人工臓器の開発、ゲノム・DNA解析ツール、マイクロ流体工学の基礎解析ツールなどに利用されている。マイクロリアクタを用いる化学反応には、ビーカ、フラスコなどを用いた通常の化学反応にはない特徴がある。例えば、反応器全体が小さいため、熱交換率が極めて高く温度制御が効率良く行えるという利点がある。そのため、精密な温度制御を必要とする反応や急激な加熱又は冷却を必要とする反応でも容易に行うことができる。
具体的にマイクロリアクタには、反応物を流動させるチャネル(流路)や反応物同士を反応させるリアクタ(反応槽)などが形成されている。特許文献1では、所定パターンの溝を形成したシリコン基板と耐熱性のガラス基板とを互いに貼り合わせた状態で陽極接合し、2枚の基板の間の密閉領域にチャネルを形成している。
陽極接合とは、高温環境下(例えば、300℃〜400℃)でガラス基板とシリコン基板とを接触させた状態で、シリコン基板に陽極を、ガラス基板に陰極を接触させて高電圧を印加することで、シリコン基板側の正電荷を帯びたSiと、ガラス基板側のSiO2の負電荷を帯びた酸素原子とを界面で共有結合させる接合技術である。大気中でも基板の接合を行えることなどから、基板の接合技術においては特に優れた技術とされている。
また、ガラス基板同士を接合する場合には、一方のガラス基板に金属薄膜を設け、金属薄膜が設けられたガラス基板に陽極を、他方のガラス基板に陰極を接触させて高電圧を印加することで、金属薄膜側の正電荷を帯びた金属と、ガラス基板側のSiO2の負電荷を帯びた酸素原子とを界面で共有結合させ、接合を行うことができる(例えば、特許文献2参照)。
特開2001−228159号公報(段落番号0018〜0019参照) 特開平8−293753号公報
陽極接合に用いる金属薄膜には、SiO2の酸素原子と結合する金属を用いることができ、例えばTaを含む金属薄膜を用いることができる。
一方、金属薄膜の表面の金属は、陽極接合するまで際に、界面のSiO2の酸素原子と結合するため、ガラス基板の製造工程で酸化されないように耐酸化性が高いことが好ましい。
本発明の課題は、陽極接合に用いる金属薄膜の耐酸化性を向上させ、剥離しにくい膜を作成することである。
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、一方の面に金属薄膜が形成された第1のガラス基板と、前記金属薄膜によって陽極接合された第2のガラス基板と、を備え、前記金属薄膜は、主組成がTaであり、Alを1mol%以下含有してなるものであり、前記金属薄膜の陽極接合によって酸化されていない部分は、前記金属薄膜の前記主組成体心立方格子構造の微結晶を含み、前記微結晶の格子定数が前記主組成のバルクの格子定数より小さいことを特徴とする接合基板である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の接合基板において、前記主組成のバルクの体心立方格子の格子定数は3.37Åであることを特徴とする接合基板である。
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載の接合基板において、前記接合基板はマイクロリアクタの一部を構成することを特徴とする。
請求項に記載の発明は、一方の面に金属薄膜が形成された第1のガラス基板と、第2のガラス基板とを互いに当接させ、前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とを陽極接合する接合方法において、前記金属薄膜を、Taを主組成としAlを1mol%以下含有するターゲットを用いてスパッタリングにより形成することを特徴とする接合方法である。
本発明によれば、陽極接合に用いる金属薄膜の耐酸化性を向上させ、剥離しにくい膜を作成することができる。
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
図1は、本発明が適用される反応装置10が用いられる発電装置100のブロック図である。この発電装置100は、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、電子手帳、腕時計、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、ゲーム機器、遊技機、その他の電子機器に備え付けられたものであり、電子機器本体を動作させるための電源として用いられる。
発電装置100は、燃料容器101と、改質燃料気化器102aと、燃焼燃料気化器102bと、反応装置10と、発電セル103と、を備える。燃料容器101は、メタノール、エタノール、ブタン等の燃料と水を別々に又は混合した状態で貯留し、図示しないマイクロポンプにより燃料及び水の混合液を改質燃料気化器102a、燃焼燃料気化器102b経由で、反応装置10に供給する。なお、以下の説明では燃料としてメタノールを使用する場合について説明するが、エタノール、ブタン等の燃料についても同様である。
反応装置10は、高温反応部11と、低温反応部12とを有し、図示しない断熱容器に収納される。高温反応部11は改質器13、燃焼器15及び高温ヒーター17を有し、低温反応部12はCO除去器14、及び低温ヒーター16を有する。
燃料容器101から供給された燃料と水は、改質燃料気化器102aにより気化され、改質器13に供給される。改質器13は、改質燃料気化器102aから供給された燃料と水の混合気を化学反応式(1)のように反応させ、主生成物である水素ガス、二酸化炭素ガス(及び後述の副生成物である一酸化炭素を含む)の混合気体を生成する。CO除去器14は、化学反応式(1)についで逐次的に起こる化学反応式(2)のような式によって微量に副生される一酸化炭素を化学反応式(3)のように酸化させることで混合気体から除去する。以下、この一酸化炭素を除去した混合気体を改質ガスという。改質ガスは発電セル103の燃料極側に供給される。
CH3OH+H2O→3H2+CO2 …(1)
2+CO2→H2O+CO …(2)
2CO+O2→2CO2 …(3)
発電セル103の燃料極側にはCO除去器14から改質ガスが供給される。改質ガスのうちの水素ガスは電気化学反応式(4)に示すように、燃料極に設けられた触媒により水素イオンと電子とに分離される。水素イオンは電解質膜を通過して酸素極側へ移動し、電子は外部回路を経て酸素極に移動する。酸素極側では、電気化学反応式(5)に示すように、電解質膜を通過した水素イオンと、外部回路を経て酸素極から供給される電子と、外気から供給される酸素ガスとの化学反応により水を生成する。この燃料極と酸素極の電極電位の差から電気エネルギーを取り出すことができる。
2→2H++2e- …(4)
2H++2e-+1/2O2→H2O …(5)
なお、上記電気化学反応をせずに残った水素ガス(以下、オフガスという)を、燃焼器15に供給してもよい。
燃焼器15は、燃料容器101から供給された燃料、または、オフガスに、酸素を混在させて燃焼し高温反応部11を250℃以上、例えば約250〜400℃に加熱する。高温ヒーター17は起動時に燃焼器15の代わりに高温反応部11を加熱する。
低温ヒーター16は、起動時に低温反応部12を200℃未満、例えば約110〜190℃に加熱する。
次に、反応装置10の構造について説明する。図2は反応装置10の平面図であり、図3は図2のIII−III矢視断面図である。反応装置10には、高温反応部11と低温反応部12との間に熱伝導を妨げるためのスリット50が設けられている。また、反応装置10の外周部には、改質燃料気化器102aから改質器13に燃料と水の混合気を供給する供給管51、燃料容器101から燃焼燃料気化器102b経由で燃焼器15に燃料を供給する供給管52、燃焼器15から燃焼ガスを排出する排出管53、CO除去器14に酸素を供給する供給管54、CO除去器から改質ガスを排出する排出管55が設けられている。
反応装置10は例えば図3に示すように、3枚のガラス基板20、30、40を貼り合わせて形成された接合基板である。上部ガラス基板20と中央ガラス基板30の対向する面には、それぞれ対向配置されて改質器13を形成する溝21,31、対向配置されてCO除去器14を形成する溝22,32が形成されている。
溝21,31内には、化学反応式(1)、(2)の改質反応を促進させる改質触媒23,33が設けられている。また、溝22,32内には、化学反応式(3)のCO選択酸化反応を促進させるCO選択酸化触媒24,34が設けられている。
また、中央ガラス基板30には、溝31の裏側に高温ヒーター17が、溝32の裏側に低温ヒーター16が設けられている。また、高温ヒーター17は絶縁保護膜18により被覆されている。絶縁保護膜18は、例えばSiO2からなる。このような絶縁保護膜18は、スピンオンガラス(SOG)を高温ヒーター17に塗布し、中央ガラス基板30全体を400〜500℃で焼成することで形成される。SOGには、例えばメチルシロキサン等のSi,Oを含む有機化合物が含まれており、塗布したSOGを焼成することによりSiO2層が形成される。
なお、高温ヒーター17は後述するように燃焼器15内に配置されることになるが、絶縁保護膜18により被覆されているので、オフガスに含まれる水素の影響を受けることはない。
高温ヒーター17は、発熱抵抗層17aと、密着層兼拡散防止層17b,17cとからなり、低温ヒーター16は、発熱抵抗層16aと、密着層兼拡散防止層16bとからなる。
発熱抵抗層17a,16aは、抵抗率が低くかつ温度係数が大きい材料、例えばAuからなり、高温ヒーター17、低温ヒーター16の導電性を向上させる。
密着層兼拡散防止層17b,16bは発熱抵抗層17a,16aとガラス基板30との間の密着性を向上させる密着性に優れた材料、例えば、W等からなる。なお、密着層兼拡散防止層17b,16bは、ガラス基板30に形成した、後述する陽極接合用の金属薄膜36の上に設けてもよい。
密着層兼拡散防止層17cは、発熱抵抗層17aと絶縁保護膜18との間の密着性を向上させる密着性に優れた材料、例えば、W等からなる。(なお、高温ヒーター17、低温ヒーター16は温度計としても利用することができる。)
下部ガラス基板40には、中央ガラス基板30と対向する面に、燃焼器15となる溝41、低温ヒーター16を収納する溝42が設けられている。中央ガラス基板30と下部ガラス基板40を重ね合わせることで高温ヒーター17は溝41内に配置され、低温ヒーター16は溝42内に配置される。
溝41内には燃料を燃焼させる燃焼用触媒43が設けられている。この溝41内が中央ガラス基板30に蓋をされることで燃焼器15となる。
なお、低温反応部12側にも燃焼器を設けてもよい。
上記溝21,22、31,32,41,42は、ガラス基板20,30,40をサンドブラスト等により切削することで形成される。
また、中央ガラス基板30には、上部ガラス基板20との当接部に、陽極接合用の金属薄膜35が形成されている。同様に、下部ガラス基板40との当接部に、陽極接合用の金属薄膜36が形成されている。
金属薄膜35,36に用いる金属としては、酸素と結合する金属を用いることができ、例えばTaを含む金属薄膜を用いることができる。
一方、金属薄膜35,36の表面の金属は、上部ガラス基板20、下部ガラス基板40と陽極接合する際に、界面のSiO2の酸素原子と結合するため、金属薄膜35,36は中央ガラス基板30の製造工程で酸化されないように耐酸化性が高いことが好ましい。
ここで、中央ガラス基板30の製造工程について説明する。まず、ガラス基板の一方の面に、金属薄膜36となるTa含有層、密着層兼拡散防止層17b,16bとなるW層、発熱抵抗層17a,16aとなるAu層、密着層兼拡散防止層17cとなるW層を順に積層し、Ta/W/Au/Wの積層構造を形成する。また、ガラス基板の他方の面に、金属薄膜36となる金属薄膜を形成する。次に、Ta/W/Au/Wの積層構造をパターニングし、金属薄膜35,36,高温ヒーター17、低温ヒーター16を形成する。
次に、ガラス基板の金属薄膜36,高温ヒーター17、低温ヒーター16を形成した面に、SOGを塗布し、400〜500℃で焼成し、SiO2層を形成する。このとき、発熱抵抗層17a,16aのアニールが同時に行われる。
次に、SOGを焼成したSiO2層をパターニングし、絶縁保護膜18を形成する。その後、サンドブラストにより溝31,32を形成し、切断(ダイシング)することで中央ガラス基板30が製造される。
上記製造工程において、400〜500℃で焼成して絶縁保護膜18を形成するときに酸化が進み、中央ガラス基板30を切断(ダイシング)する時に、金属薄膜35,36の剥離が生じるおそれがある。そこで、金属薄膜35,36は陽極接合時まで酸化されないようにし、剥離が発生しにくいように、以下に示す構造であることが重要である。
すなわち、このTaを含む金属薄膜は、後述する実施例に示すように、表面が体心立方格子の微結晶構造であり、その微結晶の格子定数がTaのバルクの体心立方格子の格子定数(3.37Å)以下であることが重要である。このような微結晶構造を表面に有する金属薄膜では、400〜500℃の高温にしてもTaの酸化が生じにくく、剥離が発生しにくい。
上記構造の金属薄膜は、Taを主組成としAlを1mol%含有させたターゲット材料を用いてスパッタリングを行うことにより形成することができる。このようにして形成した金属薄膜は表面が体心立方格子の微結晶構造となり、その微結晶の格子定数がTaのバルクの体心立方格子の格子定数(3.37Å)以下となる。
次に、上部ガラス基板20と中央ガラス基板30、中央ガラス基板30、下部ガラス基板40を陽極接合により貼り合わせる手順について説明する。
まず、上部ガラス基板20及び中央ガラス基板30を高温雰囲気に曝露することによりこれらを加熱する。そして金属薄膜35と上部ガラス基板20とを接触させた状態で、金属薄膜35側に陽極を接触させるとともに上部ガラス基板20の上面(中央ガラス基板30との接合面と反対側の面)に陰極を接触させ、金属薄膜35と上部ガラス基板20との間に高電圧を印加する。すると、金属薄膜35側の正電荷を帯びた金属元素と、上部ガラス基板20側のSiO2の負電荷を帯びた酸素原子とが共有結合する。以上により、上部ガラス基板20と中央ガラス基板30とが接合される。
同様に、接合した上部ガラス基板20及び中央ガラス基板30と、下部ガラス基板40とを高温雰囲気に曝露することによりこれらを加熱する。そして金属薄膜36と下部ガラス基板40とを接触させた状態で、金属薄膜36側に陽極を接触させるとともに下部ガラス基板40の下面(中央ガラス基板30との接合面と反対側の面)に陰極を接触させ、金属薄膜36と下部ガラス基板40との間に高電圧を印加することで、中央ガラス基板30と下部ガラス基板40とが接合される。
なお、中央ガラス基板30と下部ガラス基板40との接合を先に行い、その後、中央ガラス基板30と上部ガラス基板20との接合を行ってもよい。
Ta単体またはTaを含む様々な組成のターゲットを用いてスパッタリングを行い、ガラス基板上にTaを含む金属薄膜を作成した。その後、結晶構造の確認、耐酸化性の調査、剥離の有無の調査を行った。
〔1〕ターゲット
以下に示す組成のターゲットを用いてそれぞれ金属薄膜を形成した。
(1)(0)Ta単体
(2)Ta−Si系
(i)TaとSiとをモル比50:50のストライプ組成にしたもの(Si:50mol%)
(ii)TaとSiとをモル比70:30のストライプ組成にしたもの(Si:30mol%)
(iii)TaとSiとをモル比90:10のストライプ組成にしたもの(Si:10mol%)
(iv)TaとSiとをモル比95:5のストライプ組成にしたもの(Si:5mol%)
(v)TaにSiを3mol%混合したもの(Si:3mol%)
(vi)TaにSiを1mol%混合したもの(Si:1mol%)
(3)Ta−Ge系
(vii)TaにGeを3mol%混合したもの(Ge:3mol%)
(viii)TaにGeを1mol%混合したもの(Ge:1mol%)
(4)Ta−Al系
(ix)TaにAlを3mol%混合したもの(Al:3mol%)
(x)TaにAlを1mol%混合したもの(Al:1mol%)
ここで、(2)のストライプ組成とは、例えば、円板状のターゲットを角度方向に分割して配置し、面積比率を調整したものである。
例えば、(i)モル比50:50のストライプ組成は、円板状のターゲットの中心を通る線でターゲットを偶数個に分割し、Ta領域とSi領域とを交互に配置することで実現する。
同様に、(ii)モル比70:30のストライプ組成、(iii)モル比90:10のストライプ組成、(iv)モル比95:5のストライプ組成は、例えば円板状のターゲットの中心を通る線でターゲットを9°毎に分割し、それぞれ(ii)7個(63°)のTa領域と3個(27°)のSi領域とを交互に配置、(iii)9個(81°)のTa領域と1個(9°)のSi領域とを交互に配置、(iv)19個(171°)のTa領域と1個(9°)のSi領域とを交互に配置することで実現する。
また、混合とは、面積比率を調整するのではなく、固溶元素として、所望のモル比で混合したものをターゲットとして一様に配置することで実現する。
〔2〕スパッタリング条件
到達真空度を5×10-4Pa、スパッタリング圧力を0.7Paとし、15nm/minの成膜速度で200nmの金属薄膜を作成した。
〔3〕結晶構造の確認
X線回折により金属薄膜表面の結晶構造を解析した。
〔4〕耐酸化性の調査
金属薄膜を形成したガラス基板を400℃で30分加熱した後、ラザフォード後方散乱分析(RBS分析)により金属薄膜の組成・密度を分析し、酸素の侵入程度により耐酸化性を調査した。
〔5〕剥離の有無の調査
金属薄膜を形成したガラス基板に対し、サンドブラストにて溝を形成した後、ダイシングした。その後の金属薄膜のガラス基板からの剥離があるかどうかを観察した。
〔6〕結果
表1に結果を示す。この表は、ターゲットの組成(括弧内は実際に作成されたものを実測した組成)の差によって、構造、特性等がどのように変わるかを示している。
Figure 0004449926
(1)Ta単体
Ta単体をターゲットに用いて作成した金属薄膜のX線回折スペクトルを図4に、400℃に加熱後のRBS分析の結果を図5に示す。金属薄膜表面は多結晶であり、結晶系は正方晶(tetragonal)であった。バルクの結晶系が立方晶(cubic)であるのに対し、異なる結晶系となった。また、RBS分析により酸化の程度を調査したところ、酸素は73nm程度まで侵入していた(図5)。
正方晶(tetragonal)であることは、膜が準安定状態にあることを示し、立方晶(cubic)に比べて酸化しやすいと考えられる。
Ta単体の金属薄膜を形成したガラス基板に対して、加熱前にサンドブラスト、ダイシングを施した後の金属薄膜の剥離は生じなかった。
しかし、加熱後にサンドブラスト、ダイシングを施す過程で金属薄膜の剥離が生じた。また、目視でも表面の色に変化が認められた。
(2)Ta―Si系
(i)〜(v)(Si:50〜3mol%)のターゲットを用いて作成した金属薄膜の結晶構造は、アモルファスと判断された。その例として、(ii)(Si:30mol%)のターゲットを用いて作成した金属薄膜のX線回折スペクトルを図6に示す。また、RBS分析により金属薄膜の組成を分析すると(v)(Si:3mol%)のターゲットを用いて作成した金属薄膜の組成はSiが2.4mol%になっていることが確認された。
一方、(vi)(Si:1mol%)のターゲットを用いて作成した金属薄膜では、微結晶構造となっていると判断された。その金属薄膜のX線回折スペクトルを図7に示す。図6と比較してピークが鋭くなっているだけでなく、ピークに対して(110)と(211)のミラー指数が指数付けされた。この指数は体心立方格子(body-centered cubic lattice)の結晶格子面が形成されていることを示す。すなわち、結晶系は立方晶(cubic)となっていることがわかる。同様に、RBS分析により金属薄膜の組成を分析すると、この金属薄膜の組成はSiが検出限界の1mol%以下になっていることが確認された。
これらのTa―Si系の金属薄膜について、RBS分析により加熱後の酸化の程度を調査したところ、酸素の侵入は、いずれも20nm〜30nmまでであった。したがって、Ta単体の金属薄膜と比較して耐酸化性が改善されていた。
Ta―Si系の金属薄膜を形成したガラス基板に対して、加熱前にサンドブラスト、ダイシングを施したところ、金属薄膜の剥離が生じた。耐酸化性は改善されてはいるが、堅くて脆い膜になっていると思われる。
(3)Ta−Ge系
(vii)(Ge:3mol%)のターゲットを用いて作成した金属薄膜の結晶構造は、アモルファスと判断された。
一方、(viii)(Ge:1mol%)のターゲットを用いて作成した金属薄膜の結晶構造は、微結晶構造になっていると判断された。その金属薄膜のX線回折スペクトルを図9に示す。ピークに対して(110)と(211)のミラー指数が指数付けされ、結晶系が立方晶(cubic)となっていることがわかる。また、RBS分析により金属薄膜の組成を分析すると、この金属薄膜の組成はGeが0.5mol%になっていることが確認された。
これらのTa―Ge系の金属薄膜について、RBS分析により加熱後の酸化の程度を調査したところ、酸素の侵入は、いずれも20nm〜30nmまでであった。したがって、Ta単体の金属薄膜と比較して耐酸化性が改善されていた。
Ta―Ge系の金属薄膜を形成したガラス基板に対して、加熱前にサンドブラスト、ダイシングを施したところ、金属薄膜の剥離が生じた。
(4)Ta−Al系
(ix)(Al:3mol%)のターゲットを用いて作成した金属薄膜の結晶構造は、アモルファスと判断された。そのターゲットを用いて作成した金属薄膜のX線回折スペクトルを図10に示す。また、RBS分析により金属薄膜の組成を分析すると、この金属薄膜の組成はAlが1.3mol%になっていることが確認された。
一方、(x)(Al:1mol%)のターゲットを用いて作成した金属薄膜の結晶構造は、微結晶構造になっていると判断された。その金属薄膜のX線回折スペクトルを図11に示す。ピークに対して(110)と(211)のミラー指数が指数付けされ、結晶系が立方晶(cubic)となっていることがわかる。そして、微結晶の結晶子サイズは回折ピークの半値幅から計算され、120〜150Åになっていることがわかる。
これらのTa―Al系の金属薄膜について、RBS分析により400℃に加熱後の酸化の程度を調査したところ、酸素の侵入は、いずれも20nm〜30nmまでであった。その例として、(x)(Al:1mol%)のターゲットを用いて作成した金属薄膜のRBS分析の結果を図12に示す。(AlはRBS分析によっても、1mol%の検出限界以下で、ESCA(光電子分光法)によっても、0.1mol%の検出限界以下となり、検出できなかった。)
したがって、Ta単体の金属薄膜と比較して耐酸化性が改善されていた。
Ta―Al系の金属薄膜を形成したガラス基板に対して、加熱前にサンドブラスト、ダイシングを施したところ、(ix)(Al:3mol%)のターゲットを用いて作成した金属薄膜では、剥離が生じた。一方、(x)(Al:1mol%)のターゲットを用いて作成した金属薄膜では、耐酸化性が高く、剥離もなく、良好な密着性が得られた。
〔7〕格子定数の算出
(vi)(Si:1mol%)、(viii)(Ge:1mol%)、(x)(Al:1mol%)のいずれについても、結晶構造はともに微結晶であるにもかかわらず、金属薄膜の剥離が見られなかったのは(x)(Al:1mol%)のみであった。そこで、これらの金属薄膜の差の原因を探るために格子定数の計算をした。
結晶構造が微結晶であり、また、配向性もあることから、(211)の結晶格子面から格子定数の計算をした。
以下に計算した格子定数を記載する。
(vi)Ta−Si(Si:1mol%):3.39Å
(viii)Ta−Ge(Ge:1mol%):3.37Å
(x)Ta−Al(Al:1mol%):3.36Å
(vi)Ta−Si(Si:1mol%)、(viii)Ta−Ge(Ge:1mol%)の格子定数は、Taのバルクの体心立方格子の格子定数(3.37Å)以上であった。一方、(x)Ta−Al(Al:1mol%)の格子定数は、バルクのTaの格子定数(3.37Å)よりも小さかった。Taのバルクの体心立方格子の格子定数以上であった(vi)Ta−Si(Si:1mol%)、(viii)Ta−Ge(Ge:1mol%)について剥離が発生したことを考慮すると、不純物を入れて結晶系を立方晶(cubic)である微結晶にする場合、少なくともTaのバルクの体心立方格子の格子定数より小さくすることが重要であると判断される。
〔8〕反応装置の作成
(x)Ta−Al(Al:1mol%)のターゲットを用いて陽極接合用の金属薄膜をガラス基板に作成し、その後SOGの塗布、焼成、サンドブラスト、ダイシングのプロセスを経て所望の性能を満たす反応装置を作成することができた。
本発明に係る反応装置10が用いられる発電装置100のブロック図である。 反応装置10の平面図である。 図2のIII−III矢視断面図である。 Ta単体をターゲットに用いて作成した金属薄膜のX線回折スペクトルである。 Ta単体をターゲットに用いて作成した金属薄膜のRBS分析の結果である。 Ta−Si(Si:30mol%)のターゲットを用いて作成した金属薄膜のX線回折スペクトルである。 Ta−Si(Si:1mol%)のターゲットを用いて作成した金属薄膜のX線回折スペクトルである。 Ta−Ge(Ge:3mol%)のターゲットを用いて作成した金属薄膜のX線回折スペクトルである。 Ta−Ge(Ge:1mol%)のターゲットを用いて作成した金属薄膜のX線回折スペクトルである。 Ta−Al(Al:3mol%)のターゲットを用いて作成した金属薄膜のX線回折スペクトルである。 Ta−Al(Al:1mol%)のターゲットを用いて作成した金属薄膜のX線回折スペクトルである。 Ta−Al(Al:1mol%)のターゲットを用いて作成した金属薄膜のRBS分析の結果である。
符号の説明
10 反応装置(接合基板)
20,30,40 ガラス基板
35,36 金属薄膜

Claims (4)

  1. 一方の面に金属薄膜が形成された第1のガラス基板と、
    前記金属薄膜によって陽極接合された第2のガラス基板と、を備え、
    前記金属薄膜は、主組成がTaであり、Alを1mol%以下含有してなるものであり、
    前記金属薄膜の陽極接合によって酸化されていない部分は、前記金属薄膜の前記主組成の体心立方格子構造の微結晶を含み、前記微結晶の格子定数が前記主組成のバルクの格子定数より小さいことを特徴とする接合基板。
  2. 前記主組成のバルクの体心立方格子の格子定数は3.37Åであることを特徴とする請求項1に記載の接合基板。
  3. 前記接合基板はマイクロリアクタの一部を構成することを特徴とする請求項1又は2に記載の接合基板。
  4. 一方の面に金属薄膜が形成された第1のガラス基板と、第2のガラス基板とを互いに当接させ、前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とを陽極接合する接合方法において、
    前記金属薄膜を、Taを主組成としAlを1mol%以下含有するターゲットを用いてスパッタリングにより形成することを特徴とする接合方法。
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