JP4447418B2 - シンナミルアミン系化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
また、本発明者は、ハロゲン化シンナミル系化合物とアミン化合物を水中で反応させるに当たっては、アミン化合物を水に溶解して水溶液にし、その水溶液にハロゲン化シンナミル系化合物を添加し、均一に懸濁させながら反応させると、反応が円滑に進行することを見出した。
さらに、本発明者は、水中でハロゲン化シンナミル系化合物とアミン化合物を反応させた後、反応生成物を含む水性反応液を水と非混和性の有機溶媒で抽出処理すると、目的とするシンナミルアミン系化合物を未反応の原料化合物や副生物から容易に分離回収できることを見出し、それらの知見に基づいて本発明を完成した。
(1) 下記の一般式(I);
(式中、R4およびR5はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキレン基、R6は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、nは0〜2の整数を示し、nが0のときにR4およびR5が結合して炭素数2〜6のアルキレン基を形成している。)
で表されるアミン化合物を、水中で反応させて、下記の一般式(IIIa);
(式中、R1、R2およびR3は上記したのと同じ基であり、mは上記したのと同じ数であり、pは1または2、qは0または1であり、pとqの合計が2である。)
で表されるシンナミルアミン系化合物、または下記の一般式(IIIb);
[式中、R4およびR5は上記したのと同じ基であり、Aは水素原子または下記の式(IV)で表されるシンナミル基を示し、BはR6(但しR6は上記したとのと同じ基である)または下記の式(IV)で表されるシンナミル基を示し、nは上記したのと同じ数であり、nが0のときにAは下記の式(IV)で表されるシンナミル基であり、nが1のときにAおよびBの少なくとも一方が下記の式(IV)で表されるシンナミル基であり、nが2のときにAと2個のBのうちの少なくとも1つが下記の式(IV)で表されるシンナミル基である;
(2) 前記一般式(IIa)または一般式(IIb)で表されるアミン化合物を溶解した水溶液中に、前記一般式(I)で表されるハロゲン化シンナミル系化合物を添加し、懸濁させながら反応させる前記(1)のシンナミルアミン系化合物の製造方法;および、
(3) 一般式(I)で表されるハロゲン化シンナミル系化合物が下記の化学式(I’);
本発明の方法による場合は、爆発などの恐れがあって取り扱いに注意を要する危険性の高いアジ化合物、高価な試薬、吸湿性で取り扱い性や保存性に劣る試薬などを使用せずに、上記の一般式(I)で表されるハロゲン化シンナミル系化合物と、上記の一般式(IIa)または一般式(IIb)で表されるアミン系化合物を、触媒を使用せずに、温和な温度条件下に水中で反応させるだけで、目的とするシンナミルアミン系化合物を高収率で大量に製造することができるので、かかる点においても安全性、経済性、操作性などに優れている。
更に、本発明の方法による場合は、目的物であるシンナミルアミン系化合物を簡単に且つ円滑に反応系から分離、回収することができる。
本発明では、下記の一般式(I);
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基、Xはハロゲン原子であり、mは0〜3の整数を示す。)
で表されるハロゲン化シンナミル系化合物[以下「ハロゲン化シンナミル系化合物(I)」という]と、下記の一般式(IIa);
(式中、R4およびR5はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキレン基、R6は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、nは0〜2の整数を示し、nが0のときにR4およびR5が結合して炭素数2〜6のアルキレン基を形成している。)
で表されるアミン化合物[以下「アミン化合物(IIb)」という]を、水中で反応させる。
ハロゲン化シンナミル系化合物(I)の具体例としては、塩化シンナミル(3−クロロ−プロペニルベンゼン)、フッ化シンナミル(3−フルオロ−プロペニルベンゼン)、臭化シンナミル(3−ブロモ−プロペニルベンゼン)、沃化シンナミル(3−ヨード−プロペニルベンゼン)などを挙げることができる。これらのうちでも、入手の容易性の観点から塩化シンナミル、臭化シンナミルが好ましく、特に下記の化学式(I’);
上記したアミン化合物(IIb)のうちでも、特に、入手容易性、経済性の観点からピロリジン系化合物およびピペラジン系化合物が好ましく用いられる。
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基、R2は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、R3は炭素数1〜10のアルキル基、mは0〜3の整数、pは1または2、qは0または1であり、pとqの合計が2である。)
で表されるシンナミルアミン系化合物[以下これを「シンナミルアミン系化合物(IIIa)」という]が生成する。
[式中、R4およびR5はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキレン基、Aは水素原子または下記の式(IV)で表されるシンナミル基を示し、BはR6(但しR6は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を示す)または下記の式(IV)で表されるシンナミル基を示し、nは0〜2の整数を示し、nが0のときにAは下記の式(IV)で表されるシンナミル基であり、nが1のときにAおよびBの少なくとも一方が下記の式(IV)で表されるシンナミル基であり、nが2のときにAと2個のBのうちの少なくとも1つが下記の式(IV)で表されるシンナミル基である;
(i)アミン化合物(IIa)またはアミン化合物(IIb)を水に溶解して水溶液を調製し、その水溶液にハロゲン化シンナミル系化合物(I)をゆっくりと滴下し添加して懸濁液にし、撹拌しながら反応させる方法;
(ii)ハロゲン化シンナミル系化合物(I)と、アミン化合物(IIa)またはアミン化合物(IIb)の水溶液を一度に混合した後に撹拌しながら反応させる方法;
(iii)ハロゲン化シンナミル系化合物(I)と、アミン化合物(IIa)またはアミン化合物(IIb)を同時に水中に滴下しながら水中で反応させる方法;
などを挙げることができる。
そのうちでも、上記(i)の方法が、反応を確実に行わせることができ、しかも反応により発生する酸を確実にトラップできることから好ましい。上記(i)の方法を採用する場合は、アミン化合物(IIa)またはアミン化合物(IIb)の水溶液へのハロゲン化シンナミル系化合物(I)の添加が終了した後も、懸濁液の攪拌を任意の時間継続し反応を十分に行わせることが好ましい。
ハロゲン化シンナミル系化合物(I)と、アミン化合物(IIa)またはアミン化合物(IIb)との反応の進行度は、ガスクロマトグラフィー(GC)、プロトン核磁気共鳴分光法(1H−NMR)などにより確認することができる。
反応は通常、0.1〜50時間の範囲内で行うことが好ましい。
ここで、本明細書でいう「水と非混和性の有機溶媒」とは、水に全く溶解しないか、または水への溶解性の低い有機溶媒をいう。
本発明の方法で好ましく用いられる水と非混和性の有機溶媒の好ましい具体例としては、ジエチルエーテル、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチルなどの極性有機溶媒、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの非極性有機溶媒を挙げることができ、これらは単独で用いてもよいしまたは2種以上を併用してもよい。
限定されるものではないが、本発明で製造し得るシンナミルアミン系化合物(IIIa)またはシンナミルアミン系化合物(IIIb)の具体例としては、シンナミルアミン(3−フェニル−2−プロペニルアミン)、N−メチルシンナミルアミン[N−メチル−(3−フェニル−2−プロペニル)−アミン]、N−エチルシンナミルアミン[N−エチル−(3−フェニル−2−プロペニル)−アミン]、N−プロピルシンナミルアミン[N−プロピル−(3−フェニル−2−プロペニル)−アミン]、N−ブチルシンナミルアミン[N−ブチル−(3−フェニル−2−プロペニル)−アミン]、N,N−ジメチルシンナミルアミン[N,N−ジメチル−(3−フェニル−2−プロペニル)−アミン]、N,N−ジエチルシンナミルアミン[N,N−ジエチル−(3−フェニル−2−プロペニル)−アミン]、N,N−ジプロピルシンナミルアミン[N,N−ジプロピル−(3−フェニル−2−プロペニル)−アミン]、N,N−ジブチルシンナミルアミン[N,N−ジブチル−(3−フェニル−2−プロペニル)−アミン]、シンナミルピロリジン[N−(3−フェニル−2−プロペニル)−ピロリジン]、シンナミルピペラジン[N−(3−フェニル−2−プロペニル)−ピペラジン]などを挙げることができる。
以下の実施例において、反応の進行度はプロトン核磁気共鳴分光装置(1H−NMR)(日本電子データム社製「JNM−LA400」)を用いて測定した。また、以下の実施例で生成した生成物(シンナミルアミン系化合物)は、重アセトンに溶解し、前記したプロトン核磁気共鳴分光装置を使用して、プロトン核(1H)を25℃で測定して、その構造の確認を行った。
また、水は、イオン交換水を蒸留して用いた。
以下の実施例では、アミン化合物、塩化シンナミル、ジエチルエーテルなどとしていずれも試薬(特級)として購入したものをそのまま用いた。
(1) 容量1000mlのナス型フラスコに、表面がテフロン(登録商標)で被覆されているマグネチックスターラーを入れ、ここに水146.3mlとジエチルアミン146.3g(2.0モル)を加えて完全に溶解させた。この溶液の温度を室温に保ち、攪拌しながら塩化シンナミル100g(0.65モル)をゆっくりと滴下した。塩化シンナミルを滴下すると、透明で均一な溶液から白濁した懸濁液となった。この懸濁液の温度を室温に保ち、攪拌しながら12時間反応を行った。12時間反応を行った後、反応液の一部をサンプリングして、1H−NMR測定を行った結果、塩化シンナミルは残存していなかった。
(2) 上記(1)で得られた反応液にジエチルエーテル200mlを加え、有機層と水層に分離させて水層を除去した。有機層をさらに水100mlで2回洗浄した後、有機層に硫酸マグネシウム50gを加えて乾燥した。なお、水層の一部をサンプリングし、1H−NMR測定を行ったところ、残存したジエチルアミンと、ジエチルアミン塩酸塩が含まれていた。
(3) 上記(2)で得られた乾燥後の有機層からジエチルエーテルを減圧下に留去することにより、N,N−ジエチルシンナミルアミン118g(収率95%)を得た。
これにより得られたN,N−ジエチルシンナミルアミンの1H−NMRスペクトルにおける吸収ピークは次のとおりであった。
・1H−NMR(CD3C(=O)CD3):δ 0.98(t,6H)、2.47(q,4H)、3.20(d,2H)、6.27(m,1H)、6.51(d,1H)、7.15−7.42(m,5H)
(1) 容量500mlのナス型フラスコに、テフロン(登録商標)で表面を被覆したマグネチックスターラーを入れ、ここに質量濃度50%のジメチルアミン水溶液86g(ジメチルアミン0.95モル)を仕込んだ。この溶液の温度を室温に保ち、攪拌しながら塩化シンナミル45.8g(0.30モル)をゆっくりと滴下した。塩化シンナミルを滴下すると、透明で均一な溶液から白濁した懸濁液となった。この懸濁液の温度を0℃に保ち、攪拌しながら12時間反応を行った。12時間反応を行った後の反応液の一部をサンプリングして、1H−NMR測定を行った結果、塩化シンナミルは残存していなかった。
(2) 上記(1)で得られた反応液にジエチルエーテル100mlを加え、有機層と水層に分離させて水層を除去した。有機層をさらに水50mlで2回洗浄した後、有機層に硫酸マグネシウム30gを加えて乾燥した。なお、水層の一部をサンプリングして、1H−NMR測定を行ったところ、残存したジメチルアミンと、ジメチルアミン塩酸塩が含まれていた。
(3) 上記(2)で得られた乾燥後の有機層からジエチルエーテルを減圧下に留去することによりN,N−ジメチルシンナミルアミン47g(収率97%)を得た。
これにより得られたN,N−ジメチルシンナミルアミンの1H−NMRスペクトルにおける吸収ピークは次のとおりであった。
・1H−NMR(CD3C(=O)CD3):δ 2.21(s,6H)、2.98(dd,2H)、6.26(m,1H)、6.52(d,1H)、7.16−7.41(m,5H)
(1) 実施例1において、ジエチルアミン146.3gの代わりにピペラジン172.3g(2.0モル)を水172.3gに溶解させて用いた以外は実施例1と同様にして反応を行った。
(2) 上記(1)で得られた反応液にジエチルエーテル250mlを加えて有機層と水層に分離させて水層を除去した。有機層をさらに水100mlで2回洗浄した後、有機層に硫酸マグネシウム50gを加えて乾燥した。なお、水層の一部をサンプリングして、1H−NMR測定を行ったところ、残存したピペラジンと、ピペラジン塩酸塩が含まれていた。
(3) 上記(2)で得られた乾燥後の有機層からジエチルエーテルを減圧下に留去することにより、シンナミルピペラジン107g(収率80%)を得た。
これにより得られたシンナミルピペラジンの1H−NMRスペクトルにおける吸収ピークは次のとおりであった。
・1H−NMR(CD3C(=O)CD3):δ 1.68(s,1H,N−H)、2.48(t,4H)、2.63(t,4H)、3.11(dd,2H)、6.27(m,1H)、6.52(d,1H)、7.14−7.41(m,5H)
(1) 実施例1において、ジエチルアミン146.3gの代わりにピロリジン142.2g(2.0モル)を水142.2gに溶解させて用いた以外は実施例1と同様に反応を行った。
(2) 上記(1)で得られた反応液にジエチルエーテル300mlを加えて有機層と水層に分離させて水層を除去した。有機層をさらに水100mlで2回洗浄した後、有機層に硫酸マグネシウム50gを加え乾燥した。なお、水層の一部をサンプリングして、1H−NMR測定を行ったところ、残存したピロリジンと、ピロリジン塩酸塩が含まれていた。
(3) 上記(2)で得られた乾燥後の有機層からジエチルエーテルを減圧下に留去することにより、シンナミルピロリジン116g(収率94%)を得た。
これにより得られたシンナミルピロリジンの1H−NMRスペクトルにおける吸収ピークは次のとおりであった。
・1H−NMR(CD3C(=O)CD3):δ 1.59(t,4H)、2.50(t,4H)、3.15(dd,2H)、6.25(m,1H)、6.51(d,1H)、7.15−7.43(m,5H)
(1) 実施例1において、ジエチルアミン146.3gの代わりにn−ブチルアミン146.3g(2.0モル)を水146.3gに溶解させて用いた以外は実施例1と同様に反応を行った。
(2) 上記(1)で得られた反応液にジエチルエーテル300mlを加えて有機層と水層に分離させて水層を除去した。有機層をさらに水100mlで2回洗浄した後、有機層に硫酸マグネシウム50gを加えて乾燥した。なお、水層の一部をサンプリングし、1H−NMR測定を行ったところ、残存したn−ブチルアミンと、n−ブチルアミン塩酸塩が含まれていた。
(3) 上記(2)で得られた乾燥後の有機層からジエチルエーテルを減圧下に留去して、N−n−ブチルシンナミルアミン120g(収率96%)を得た。
これにより得られたN−n−ブチルシンナミルアミンの1H−NMRスペクトルにおける吸収ピークは次のとおりであった。
・1H−NMR(CD3C(=O)CD3):δ 0.88(t,3H)、1.26−1.51(m,4H)、2.54(t,2H)、3.22(dd,2H)、6.28(m,1H)、6.53(d,1H)、7.13−7.42(m,5H)
Claims (3)
- 下記の一般式(I);
で表されるハロゲン化シンナミル系化合物と、下記の一般式(IIa);
で表されるアミン化合物または下記の一般式(IIb);
で表されるアミン化合物を、水中で反応させて、下記の一般式(IIIa);
で表されるシンナミルアミン系化合物、または下記の一般式(IIIb);
で表されるシンナミルアミン系化合物を製造することを特徴とするシンナミルアミン系化合物の製造方法。 - 前記一般式(IIa)または一般式(IIb)で表されるアミン化合物を溶解した水溶液中に、前記一般式(I)で表されるハロゲン化シンナミル系化合物を添加し、懸濁させながら反応させる請求項1に記載のシンナミルアミン系化合物の製造方法。
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