JP4445179B2 - 吸引鋳造方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の分野】
本発明は、金属および金属合金の吸引鋳造(coutergravity casting)に関す る。
【0002】
【発明の背景】
米国特許第3,863,706号および第3,900,064号には、反応性金属および合金を真空中で溶解し、次いでアルゴンのような不活性ガスを溶解チャンバーに導入して溶融金属を保護する吸引鋳造方法および装置が説明されている。ガス透過性の鋳型が、溶解チャンバーの上方にあり、かつ水平方向の隔離弁により溶解チャンバーから分離された鋳型チャンバー中に配置される。鋳型チャンバーを真空排気し、次にアルゴンのような不活性ガスを鋳型チャンバーに導入して溶解チャンバーと同じ圧力にし、鋳型と溶解チャンバーとの間の水平方向の隔離弁を開く。ガス透過性の鋳型が降下して鋳型充填チューブを溶融材料中に浸漬する。その後、鋳型チャンバーを再び真空排気して、溶融材料を、充填チューブを通して鋳型に持ち上げるのに十分な圧力差を発生させる。
【0003】
上記吸引鋳造方法の成功にもかかわらず、生産経験からその効果を相殺する多くの欠点を確認している。特に、鋳型中に含まれる不活性ガスをガス透過性の鋳型を通して排気する速度よりも速く、溶融金属を鋳型中に導入する(吸引鋳造)ことができない。特に顕著なことは、溶融金属が鋳型の高さの約3分の2を越えて上昇する場合、残留ガスが鋳型から鋳型壁を通して排気可能な市販の鋳型壁表面領域は、鋳型頂部への金属の流入が著しく遅くなる地点にまで減少する。非常に薄い壁を有する鋳造部品において、充填工程においてその地点に到達するまでに最初の過熱の大部分を失う、比較的ゆっくり動く溶融金属は、鋳型形状に完全に充填する前に凝固する傾向を有するという欠点がある。これにより、鋳型の頂部付近の鋳造部品のスクラップ発生率が非常に高くなり、合格鋳造部品の製造に割当てるコストが増える。
【0004】
さらに、上記方法の実施において、不活性ガスを用いた交換後の鋳型チャンバーから反応性ガスを除去するため、比較的完全な真空中に鋳型それ自身が露出するのを非常に短時間に制限する(例えば、数秒間)。隙間や気孔のあるガス透過性の鋳型が上記方法に使用される場合、ガスが鋳型壁内の隙間や気孔に閉じ込められる。同様に、予備形成したセラミックコアが、鋳型中に配置されて鋳造中に複雑な内部通路を形成する場合、セラミックコアも閉じ込められたガスを含む空隙を有する。高真空中に鋳型が露出する時間が数秒間と短いため、一部のガス分子は逃げ出すが、全ての閉じ込められたガス分子が逃げ出すことができない。不活性ガスを用いての再充填は、基本的に工程を逆方向にすることであり、閉じ込められた分子をセラミック材料の空隙領域に押し戻す。鋳型が液体金属または合金で満たされる場合、熱膨張が原因となりガスが隙間や気孔により駆動される第二の機構が発生する。特に、比較的肉厚の鋳造品やセラミックコアを含む鋳造品を上記方法により製造する場合、この熱膨張の結果としてガスの気泡が形成される傾向があり、時々鋳造品のX線検査での不良率を増加させる鋳造品中の内部ガス欠陥を生じ、また、時折、特に熱間静水圧プレス(HIP)により製造された鋳造品において目視検査で不良となる外部欠陥を生じる。
【0005】
本発明の目的は、上記欠点を克服する吸引鋳造方法および装置を提供することである。
【0006】
【発明の要約】
本発明は、金属および金属合金(以下、「金属材料」と称する。)を吸引鋳造するための実施方法および装置を提供する、すなわち本発明は、溶解容器中で負圧下で金属材料を溶解し、負圧下でガス透過性またはガス不透過性の鋳型を排気し、一方で負圧を維持しながら、鋳型基部とその間の密閉手段を有する溶解容器との係合で定義される密閉された空間中の溶融金属材料上に局所的にガス圧を印加することにより、制御された、鋳型への急速充填をおこなう。密閉された空間内に局所的に印加されるガス圧により、溶融金属材料に圧力差を設けて、溶融金属材料を、充填チューブを経由して上方の、負圧に保たれた鋳型中に圧入する。
【0007】
本発明の特別な実施例によれば、金属材料は、負圧下(例えば、10ミクロン以下の真空度)で溶解区画の溶解容器中で溶融される。同時に、予熱された鋳型と充填チューブが鋳造区画の外側の鋳型基部上に配置され、その後、ボンネット上の鋳型クランプが予熱された鋳型を、鋳型基部とボンネットの中で締付けるように、鋳型ボンネットが予熱された鋳型の周りの鋳型基部上に配置される鋳造区画へ、予熱された鋳型と充填チューブは移動される。鋳型充填チューブは、鋳型基部を通って延びている。鋳造区画および鋳型は、真空排気されて負圧になる(例えば、10ミクロン以下の真空度)。その後、溶解容器は、鋳型基部の下の鋳造区画へ移動する。鋳型基部/ボンネットは下降されて、鋳型充填チューブを溶融金属材料中に浸漬し、溶解容器中の溶融金属材料と鋳型基部との間に密閉されたガス加圧可能空間を形成するような方法で、鋳型基部とその間にシールを有する溶解容器の上端を係合する。鋳型基部は、溶解容器に締付けられる。その後、密閉された空間は、鋳型は負圧下に維持したままで、アルゴンのような不活性ガスで加圧し、溶融金属材料を充填チューブを経由して鋳型中に上方に圧入するのに有効な圧力差を設ける。この定義された時間間隔の終わりに、空間内の溶融金属材料面上へのガス加圧を終了し、鋳型中に残った液体の金属材料を溶解容器に戻すことにより、密封可能な空間と鋳造区画とは等しい負圧にする。鋳型基部は、溶解容器から締付を解放され、鋳型基部/ボンネットは持上げられて溶解容器から分離される、また充填チューブは溶融金属材料から引上げられる。溶解容器は溶解区画へ戻り、隔離弁が閉じられる。その後、鋳造区画は大気圧に戻されてから開かれ、鋳型ボンネットは鋳型基部から締付を解放されて分離される。その後、鋳型基部上の鋳造鋳型物は取外され、鋳造サイクルを繰り返して行うよう新しい鋳型に交換される。
【0008】
本発明は、溶融金属材料で満たす前およびその間中、鋳型を連続して相対的な真空中(例えば、10ミクロン以下)に保持して、鋳型壁/コア体中に閉じ込められたガスによる鋳造欠陥を減らすことができるという効果がある。また、本発明は、局所的に密閉された空間に正のガス圧(例えば、2気圧まで)を印加して制御するおかげで、鋳型充填速度が制御可能でありかつ再現性があるので、鋳型充填率を改良し、不十分な鋳型充填、特に薄肉の鋳造部品において見られる不十分な鋳型充填による鋳造欠陥を減少させ、背の高い鋳型の充填も可能であるという効果がある。さらに、本発明は、鋳造される部品の重量に対する製造時に消費される全金属材料量の比の見地から金属材料の効率的な利用を提供するという効果がある。
【0009】
本発明の上記目的および効果は、図面を用いた次の詳細な説明から、容易に明らかになるであろう。
【0010】
【発明の説明】
図1は、制約のためではなく説明のために、本発明の実施例を実施するためニッケル、コバルトおよび鉄系超合金を溶解および吸引鋳造する装置の階床上正面図を、説明の目的のため断面で示される所定の装置部品とともに示す。例えば、溶解チャンバー1と軸4dが説明のため断面で示される。本発明は、これらの特別な合金の溶解および鋳造に限定されるものではなく、溶融状態において酸素および/または窒素に露出することを抑えるのが望ましい広範囲な金属および合金を、溶解および吸引鋳造するために用いることができる。
【0011】
溶解チャンバーまたは区画1は、滑り仕切弁のような第1の隔離弁2により鋳造チャンバーまたは区画3と連結している。溶解区画1は、ステンレス鋼の二重壁で水冷式の構造により構成される。鋳造区画3は軟鋼で単一壁である。脇にそれた溶解容器5に連結される中空の軸4dを、溶解区画1から鋳造区画3に延びる一対の軌道6(1つの軌道が図示されている)に沿って、水平方向に溶解区画1から鋳造区画3中へ動かす溶解容器位置制御シリンダー4が、溶解区画1に隣接して示されている。
【0012】
溶解容器5は、軌道6に乗る前部、中央および後部に車輪対5wを有する軌道車5t上に配置される。軌道車5tの鋼製枠は、溶解容器および軸4dの端部にボルトで固定されている。軌道6は隔離弁2の位置で中断される。2つ以上の車輪対5wが同時に離脱することなく軌道車5tが区画1と区画3との間を動くように、軌道車5tが隔離弁2の位置での軌道6の中断上を移動できるほど、軌道6の中断は狭い。
【0013】
制御シリンダー4は、位置Lで装置の鋼製枠Fに固定されるシリンダーチャンバー4a、および図1Aおよび図3に示すように、レールの上下で平行なレール対4rlに乗る前後および上下に車輪対4wを有する車輪付きプラットフォーム構造4cに連結されるシリンダー棒4bとで構成される。レール4rlは、一般に軸4dの水準または高さに対応する水準または高さに位置する。図1において、後部レール4rl(図3に示される電源21により近い方)は軸4dの後ろに隠れており、前部レール4rlは軸4dを見せるために省略されている。車輪4wおよびレール4rlが、図1Aに示されている。中空の軸4dは、プラットフォーム構造4cの一端で軸筒4eにより、また溶解区画1の皿状端壁1aの開口中の他端で密封軸筒4fにより、摺動可能にかつ回転可能に取付けられる。中空軸4dの直線的な摺動運動は駆動シリンダー4により付与され、レール4rl上の構造物4cを動かす。
【0014】
溶解区画の皿状端壁1aの開口に動力を供給して周囲雰囲気にし、油圧シリンダー8により溶解区画1が開いた場合、溶解容器5は軌道車の軌道6から離脱可能であり、プラットフォーム構造4c上に配置された直接駆動電動機および歯車駆動装置7により逆立ちまたは回転が可能である。回転電気電動機および歯車駆動装置7は、中空軸4d上の歯車7bを駆動して中空軸4dを回転する歯車7aを有する。直接駆動電動機の電気制御は、作業者/操作員が手持ち式の付属品(図示せず)により行う。図4に示す溶解容器5内のるつぼCを清掃、修理または交換する必要がある場合、または鋳造キャンペインの終わりに溶解容器からるつぼの下に位置する受け(図示せず)中に過剰の溶融金属材料を注ぐ必要がある場合に、溶解容器5は逆立ちまたは回転が可能である。
【0015】
図1および図4は、中空軸4dが電源21から、溶解容器5の図4中に示す水冷誘導コイル11を有する溶解容器5へ、電力を伝える電力リード線9を有することを示す。リード線9は、電気絶縁スペーサ38により中空軸4dから離れて配置されている。図4にさらに詳細に示すと、電力リード線9は中空円筒状で水冷式の内側リード円筒9a、およびG10ポリマーあるいはフェノール樹脂のような電気絶縁材料9cにより端部およびリード円筒間の空間に沿って分離される、環状中空二重壁で水冷式の外側リード円筒9bとで構成される。冷却水供給通路は中空内側リード円筒9a中に輪郭を規定され、冷却水戻り通路は二重壁外側リード円筒9b中に規定され、溶解容器5中の誘導コイル11に冷却水供給と戻しを行う。図1に戻ると、中空軸4dの外側端および母線9dに接続されて作動中の動きを吸収するための可撓性の水冷式電力ケーブル39を経由して電力リード円筒9aおよび9bへ、電力および水が供給さらには排出される。電源21は、これらの電力ケーブルにより軸4dの端部でそれぞれ電力リード円筒9aおよび9bに接続される、外側嵌め込みFT1およびFT2に接続する。電源は、コイル11へ電力を供給するため直流電力に変換される3相60Hzの交流電源を有する。軸4dを回転する電気電動機7cは、軸4dの動きを吸収するための可撓性の電力ケーブル(図示せず)から電力を受ける。
【0016】
図4および図13に示されるガス加圧導管4hも中空軸4d中に含まれ、かつ軸4dの端部の嵌め込みにより、容器5中の溶解された金属材料に対して非反応性であるアルゴンや他のガスの大量貯蔵タンクのような加圧ガス供給源Sに連結される。軸4dの動きを吸収するための可撓性のガス供給ホースH1により、導管4hはガス制御弁VAを経由して供給源Sに連結される。図4および図13に示される真空導管4vも中空軸4dに含まれる。真空導管4vは、軸4dの端部の嵌め込みにより、軸4dの端部で軸4dの動きを吸収するための弁VVおよび可撓性のホースH2を経由して真空排気系23a、23bおよび23cに連結される。真空排気系23a、23bおよび23cは、以下に説明するように溶解区画1を排気する。
【0017】
前述のように、開口に動力を供給して油圧シリンダー8により溶解区画1が開いたときに作動させる直接駆動電動機7cおよび駆動装置7の歯車7aと7bにより、溶解容器5の回転運動が行われる。特に、シリンダーチャンバー8aは、床にしっかりと取付けられた平行なレール対8rに取付けられている。シリンダー棒8bは、可動装置枠Fが溶解区画1の皿状端壁1aに連結するF1で、レール付きの可動装置枠Fに連結する。溶解区画に近づくため、例えば、溶解容器5内のるつぼCの清掃や交換を行うために締付金具1dを解放した後、溶解区画の皿状端壁1aはシリンダー8により、密封シール1cで本体の溶解区画の壁1bから水平に離れる方向に動くことが可能である。シール1cは溶解区画の壁1bに留まる。支持枠Fおよび端壁1aは、シリンダー8による移動中に平行レール8r上の前部および後部の車輪対8wにより支持される。
【0018】
従来型の油圧ユニット22が図1および図3に示され、装置の全ての油圧要素に動力を供給する。油圧ユニット22は溶解区画1の脇に沿って配置される。
【0019】
図1において、鋳造区画3あるいは必要により、以下に述べる溶解区画1を除いて、装置の全ての部分を排気するための従来型真空排気系24aおよび24bが示される。溶解区画1は、図3に示される別の従来型真空排気系23a、23bおよび23cにより排気される。装置の操作は、従来型のオペレータデータ制御インターフェース、データ記憶制御ユニット、および図3中のCPUで概略的に表される全体操作ロジックおよび制御系の組合せにより制御される。
【0020】
溶解区画1用の真空排気系23は、3台の市販ポンプを有して所望の負圧(周囲より低い圧力)を実現する、すなわち、隔離弁2が閉じているとき、溶解区画1内を50ミクロン以下(例えば10ミクロン以下)の真空レベルにするために、ストークス412マイクロバック型油回転真空ポンプ23a、リングジェットブースター真空ポンプ23bおよび回転羽根保持真空ポンプ23cが設けられる。
【0021】
温度計測および制御装置19が図1および図5に示すように溶解区画1に設けられ、非常に簡単で高速な温度計測用の固定式単色光学高温計19bと組合わされる最精度な温度計測用の可動浸漬型熱電対19aを含む多機能素子を有する。隔離弁19dが開いて溶解区画1と連通するとき、浸漬型熱電対は電動機駆動される軸19c上に取付けられて、るつぼC中の溶融金属材料中に降ろされる。軸19cは、その動きがガイドローラ19rにより案内される状態で、図1に示す電気電動機19mにより駆動される。熱電対および高温計は単一の検出ユニットに組合わされ、光学高温計および浸漬型熱電対の両方により、金属温度の同時計測を行うことができる。光学高温計は、華氏1800〜3200度の範囲の温度を計測する単色系である。汚れた覗きガラスのような比較的小さな事柄が光学式読取の精度に影響するので、浸漬型熱電対の読取に対して補正を頻繁に行うことが、良好なプロセス制御を行うために得策である。熱電対および高温計は温度信号をCPUへ供給する。ハンドル19hにより隔離弁19dを閉じた後、真空隔離チャンバー19vは開いて、溶解区画1の真空を破ることなく、浸漬型熱電対チップの交換および光学高温計の覗きガラス19gの清掃のために立入ることができる。光学高温計の周りのエンベロープは、温度計測の感度と精度を最高にするため水冷される。溶解容器5は素子19の直下に保持され、溶解時に溶解温度を監視および制御する。
【0022】
インゴット装入装置20は図1、図6および図6Aに示され、溶解区画1と連通している。この装置は、溶解区画1の真空を破ることなく溶解容器5の溶融金属材料中に、個々のインゴットIの形状の添加金属材料(例えば、金属合金)を、簡単かつ迅速に導入できるように設計されている。これにより、余分な時間を節約し、るつぼ中に残る溶融金属を繰り返し暴露して大気中の酸素または窒素により汚染されることを避ける。この装置は、チャンバー29a、垂れ下がっている操作員手動制御器HP(図3)により制御される電気電動機20cにより駆動されるチェーンホイスト20b、および図6中の装置の左側にヒンジで留められたインゴット装入組立体20dにより構成される。装置の右側にヒンジで留められた扉20eも、閉じた状態の切欠き図とともに示され、インゴット供給装置と溶解区画1とを隔離したり連通させたりする隔離弁20f(ロード弁と呼ばれる)も示される。ロード弁20fが閉じた状態で、扉20eを開くためにチャンバー20a内の圧力は大気圧にできる。
【0023】
溶解容器5の装入が準備できると、予熱されたインゴットI(インゴットから湿気を取除くために予熱される)は、インゴット装入組立体20dに載せられる。その後、インゴット装入組立体20dはチャンバー20a内へ振り回される。フック20kがインゴットループLLを係合するためチェーンホイスト20bが降りてくる。その後、ホイスト20bは上昇して、インゴット装入組立体20dからインゴットIを離す。インゴット装入装置20はチャンバー20aの外に動かされる。扉20eが閉じられて密封される。このとき、チャンバー20aは、排気口20pに連結された真空導管24cおよび24d(図3)を経由して、真空排気系24aおよび24bにより真空に排気して、溶解チャンバーまたは区画1と同じ真空度にする。その後、ロード弁20fが開いて溶解容器5と連通し、インゴットIが溶解容器5中のるつぼCの直上に来るまで、ホイスト20bが電動機20cにより降ろされる。
【0024】
その後インゴットがるつぼC中に降ろされて予熱されるようにホイスト速度を下げる。インゴットがるつぼ中に入ると、チェーンホイストフック20kにかかる重さは、るつぼまたはるつぼ中の溶融金属材料からの上向き方向の圧力により自動的に解放される。図6Aに示すフック20k上のつりあいおもり20wにより、フックはインゴットIから取外される。
【0025】
ホイスト20bは上昇し、ロード弁20fが閉まる。るつぼCに完全に装入が終わるまで、この工程手順は繰り返されて個々の添加インゴットを溶解容器中に装入する。鏡20mと連携する図1の覗きガラス20gにより、るつぼを観察し装入量が適切かどうかを決める。
【0026】
るつぼ清掃のため溶解容器5を溶解チャンバー1の外に引き出したとき、溶解容器5が溶解チャンバー1に戻る前に、装入される全インゴットをるつぼC中に配置することができる。これにより、最初の装入に対してインゴットを装入する必要が一度になくなる。インゴット装入装置20の位置でインゴットを溶解容器5に装入した後、誘導コイル11によりエネルギーを与えられてインゴットが溶解する計測装置19の位置へ、溶解容器5は移動する。
【0027】
図4について説明すると、溶解容器5は水冷の中空銅製誘導コイル11が収容される鋼製の円筒殻5aを有する。コイル11は、ねじ付き嵌め込みFT5とFT6、およびFT4とFT7により、リード線9aおよび9bに接続される。コイル11は、上部および下部のシャントリング5bおよび5c間の円周方向に分離された、複数(例えば、6個)の垂直なシャントタイロッド部材5dにより連結される上部および下部の水平なシャントリング5bおよび5cにより退避され、磁束をコイル近傍に集中させて誘導エネルギーが周囲の鋼製殻5aへ移るのを防ぐ。タイロッド部材5dは、ねじ付き棒(図示せず)により上部および下部のシャントリング5a、5bに接続される。上部および下部のコイル圧縮リング5eおよび5fとスペーサリング対5gおよび5hが、機械的な組立のために、それぞれのシャントリング5bおよび5cの上部および下部に設けられる。
【0028】
シャントリング5bおよび5cとシャントタイロッド部材5dは、この目的のため、複数の鉄層板5iとフェノール樹脂絶縁層板5pとを交互に積層した積層体を有する。電気的な絶縁材料により形成される磁束シールド5shは下部シャントリング5cの下に配置される。
【0029】
閉じた円筒形状(または他の形状)のセラミックるつぼCは、鋼製殻5a中の誘導コイル11の内側に位置する耐火材料5rのベッド中に配置される。セラミックるつぼCは、ニッケル基超合金を溶解鋳造する場合、アルミナまたはジルコニアセラミックるつぼにより構成することができる。溶解鋳造する金属または合金に応じて、他のセラミックるつぼ材料を使用できる。るつぼCはセラミック粉を冷間圧縮して焼成することにより形成できる。
【0030】
るつぼは、約200メッシュの酸化マグネシウムセラミック粒子のような、ゆるやかな締付けのない耐火粒子のベッド5r中に置かれる。ゆるやかな耐火粒子のベッド5rは、約60メッシュの樹脂接合されたアルミナシリカセラミック粒子のような、図4の誘導コイル11に隣接して配置される、薄肉の樹脂接合された耐火粒子コイルグラウチング51を含む。
【0031】
樹脂接合されたライナ51は、手作業で塗られ乾燥して形成され、その後、ベッド5rのゆるやかな耐火粒子がライナ51の底面に設けられる。さらに、るつぼCがゆるやかな耐火粒子の底面に配置され、るつぼCの垂直側壁とライナ51の垂直側壁との間の空間が、ベッド5rのゆるやかな耐火粒子により充填される。
【0032】
環状のガス加圧チャンバー形成部材5sは、適合する周方向に空間的に離れた締付部材5jおよび殻5aの上端の環状シール5vにより締付け固定される。部材5sは、上部の周フランジ5z、大きな直径の円形中央開口501および、るつぼCの上部開口端に隣接しかつ中央空間SPを定義する下部の小さな直径の円形中央開口502より構成される。ステンレス鋼製の水冷通路5ppは、部材5s中に設けられる。水冷通路5ppは、中空軸4d内に含まれる水配管5pから冷却水を受取る。戻り水は、配管5pの真裏に位置する類似な第二の水配管(図示せず)を通過する。
【0033】
ガス加圧導管4hは溶解容器5へ延び、部材5sの中央空間SPおよび溶解誘導コイル11の外周空間と連通されて、るつぼC内において圧力差が発生するのを防ぐ。同様に、真空導管4vは溶解容器5へ延び、図4中の導管4hについて示されるのと同様な方法により、部材5sの中央空間SPおよび溶解誘導コイル11の外周空間と連通される。
【0034】
本発明の実施において、インゴット装入装置20の位置で溶解容器5にインゴットが装入された後、完全な真空状態(例えば、10ミクロン以下)下において、溶解区画1中で誘導コイル11により溶解目的でエネルギーを与えられてインゴットが溶解する計測装置19の位置へ溶解容器5は移動して、るつぼC中に溶融金属材料Mの浴を形成する。図4の真空導管4vと図1および図3の弁VVは、溶解時に、空間SPおよび溶解容器5の誘導コイル11の外周の空間が真空になるように制御される。
【0035】
インゴットが溶解容器5中で溶解されると、予熱されたセラミック鋳型15が、弁2により溶解区画1と隔離された鋳造チャンバーまたは区画3中に配置される。鋳造区画3は上部チャンバー3aと、図2に示すローディング/アンローディング用のシール可能な扉3cを有する下部チャンバー3bで構成される。下部チャンバーは水平方向に枢動する鋳型基部支持体14も有する。鋳型基部支持体14は垂直軸14aと、上下移動および枢動のための軸14a上の油圧駆動部14bを含む。軸14aは、不動の装置枠および鋳造区画3の側面に溶接された、上部および下部の三角板14p間に支持される。支持体アーム14cが駆動部14bから延び、二又形状に配置されて鋳型基部13を係合運搬する。
【0036】
図2および図7の鋳型基部13は、平板を貫通する中央開口13aを有する平板で構成される。鋳型基部13は、後述する目的のため、円周方向に90度離れて上向きに対向する板表面に、図2、7、8、9Bおよび9Dに示す複数(例えば、4)のホブサドル送り六角穴肩付き止めねじ13bを有する。鋳型基部は、上部表面13d上に環状の短い直立するスタブ壁13cを有して、図7に示すように、クラックの入った鋳型15から漏れる溶融金属材料をためる格納チャンバーを形成する。
【0037】
密閉手段により構成される環状のシールSMB1は、鋳型基部13と溶解容器5のフランジ5zとの間に配置される。シールは、鋳型基部13と溶解容器5のフランジ5zとの間をシールするように適合され、鋳型基部13および溶解容器5が以下に説明するように係合する場合、ガスの密封シールになる。1つまたは多数のシールSMB1は、シール目的で鋳型基部13および溶解容器5との間に設けられる。鋳型基部シールSMB1はシリコン材料により構成することができる。シールSMB1は、鋳型基部および溶解容器が係合するとき圧縮されるように、典型的には鋳型基部13の下部表面13e上に配置されるが、シールSMB1は交互にあるいは追加的に溶解容器5のフランジ5z上に配置することもできる。同様なシールSMB2が鋳型ボンネット31の下端フランジ31cおよび/または鋳型基部13の上部表面13d上に設けられて、鋳型基部13と鋳型ボンネット31との間をガス密封シールする。
【0038】
鋳型基部13は、予熱した開口13aの周りの鋳型−基部セラミック繊維シールまたはガスケットMS1、予熱したセラミック鋳型15、および予熱したスノートまたは充填チューブ16を収容するように適合される。充填チューブ16付きの予熱した鋳型15は、開口13を貫通して鋳型基部13の最下端表面13eを超えて延びる充填チューブ16、および鋳型15と充填チューブ16との間を密封するセラミック繊維ガスケットであるシールMS2上に位置する鋳型15の底面とともに、鋳型基部13上に置かれる。
【0039】
セラミック鋳型15は、ガス透過性またはガス不透過性が可能である。ガス透過性の鋳型は、良く知られたロストワックス法により形成することができる。ロストワックス法は、ワックスまたは他の不堅牢パターンが、水または有機担体中において微細なセラミック粒子のスラリに繰返し浸され、余分なスラリを排出した後、粗いセラミック粒子で漆喰を塗るまたはおおって、パターン上に適当な厚さの壁のガス透過性シェル型を構成する。ガス不透過性鋳型15は、固体の鋳型材料を用いて、または本質的にガス不透過性である緻密壁構造のようなシェル型を形成するためのスラリおよび/または漆喰の微細セラミック粒子のロストワックス法を用いて形成することができる。ロストワックス法では、パターンは加熱、溶解あるいは他の公知のパターン除去技術によるフラッシュ脱ろう法などの従来の加熱パターン除去動作により、選択的にシェル型から取外される。その後、グリーンシェル型を高温で焼成して、鋳造用の鋳型強度を発現させる。
【0040】
本発明の実施において、セラミック鋳型15は通常、充填チューブ16に連通し、米国特許第3,863,706号および第3,900,064号に示されるように、長さ方向に沿って湯口15aの周りに配置されるサイドゲート15cを経由して、溶融金属材料を複数の型穴15bに供給する中央の湯口15aを有するように形成される。上記特許の教えるところは、本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0041】
鋳型基部13およびその上の鋳型15を積み込む支持アーム14cは、アクセス扉3cを開いた状態でチャンバー3中に枢動され、図2の下部チャンバー3bの床に固定された支持支柱3d上に置かれる。
【0042】
図7に示すように、鋳造区画の上部チャンバー3aにおいて、二重壁で水冷式の鋳型フードまたはボンネット31は、鋳型15の周りの鋳型基部13上に降ろされる。鋳型ボンネット31は、鋳型15を囲む下部の鐘形形状部分31aおよび上部円筒管状延長部31bから構成され、密封軸筒SRを通してボンネット31の垂直動作を可能にする。図7に示すように、下部領域31aは、シールSM2が圧縮されてガス気密を形成した状態で、鋳型基部13と合わせるよう適合された最下端の周端フランジ31cを有する。フランジ31cは、複数の弓形の長穴33a、それに付属する拡大された入口の開口33bとより狭い弓形の長穴領域33cを有する回転可能な鋳型締付リング33により構成される。カム表面33sは、各長穴33aに近接する締付リング上に設けられる。鋳型基部13/鋳型15の連結体を鋳造区画3中にローディングする際に、鋳型締付リング33は、作業員が操作するハンドル33hにより回転する。詳細には、鋳型ボンネット31は、図9Aおよび図9Bに示すように、止めねじ13bが拡大された開口33a中に収容されるよう鋳型基部13上に降ろされる。その後、作業員は鋳型基部13に対してリング33を回転して、図9Cおよび図9Dに示すように、カム表面33sと止めねじ13bの頭部13hの下面を係合し、鋳型ボンネット31の底面に対して鋳型基部13をカム錠する。
【0043】
フランジ31cは、以下に説明する方法により、吸引鋳造時に溶解容器5および鋳型基部13を締付けるように駆動される、複数(例えば、4)の周状に離れた市販のアルゴン駆動トグル締付具34(DE−STA−CO製のNo.895型締付具が入手可能)にしっかりと固定される。トグル締付具34は、区画3の外側の供給源から、図7の中空円筒延長部31b中に延び、かつ各供給導管(図示せず)を通して各締付具34にアルゴンを供給する共通導管34cを経由してアルゴンを受取る。トグル締付具は、フランジ31c上の締付具により取付けられたハウジング34aおよび、図7のガス加圧チャンバー形成部材5sの周フランジ5zの下面に係合して、フランジ5zと鋳型基部13の間を圧縮して真空密封シールを形成するシールSMB1とともに、溶解容器5、鋳型基部13および鋳型ボンネット31を締付ける枢動可能な止め部材34bで構成される。
【0044】
鋳型ボンネット31の中空延長部31bは、鋳型ボンネット31が鋳型区画3に対して上下に移動することにより、油圧シリンダー対35に連結される。油圧シリンダー棒35bは、チャンバー3の固定の取付フランジ3e上に取付けられる。シリンダーチャンバー35aはフランジ3fで鋳型ボンネット延長部31bに連結され、シリンダーの駆動により垂直方向に動き、鋳型ボンネットを上げ下げする。鋳型ボンネット延長部31bは、真空密封シールSRを通して鋳型区画3に対して動く。
【0045】
油圧シリンダー37は、鋳型ボンネット延長部31bの上端に取付けられ、シリンダーチャンバー37aおよび、鋳型ボンネット延長部31b中で動いて鋳型締付具17を上下させるシリンダー棒37bにより構成される。詳細には、鋳型ボンネット31が下がり鋳型基部13がロックされた後、図7に示すように、シリンダー37はボンネット31中の鋳型15の頂部に対して鋳型締付具17を降ろし、鋳型基部13に対して鋳型15とシールMS1およびMS2を締付ける。
【0046】
鋳造区画3は、図1および図3に示すように従来型の真空排気系24aおよび24bを使用して排気する。鋳造区画真空排気系24aおよび24bは、それぞれ所望の負圧(周囲より低い圧力)を達成するため市販のポンプ対を装備する、すなわち、油回転真空ポンプおよびルーツ型ブロワーから成り、隔離弁2が閉じているとき鋳造区画3内の初期真空レベルでおよそ50ミクロン以下を可能にするストークス1739HDBPシステムである。
【0047】
真空排気系24aおよび24bは、単独にまたは並列に、個々にまたは同時に、導管24gおよび24hを経由して鋳造区画3の上部チャンバー3aを、枝管導管24cおよび24dを経由して前述のインゴット装入装置20を、および導管24dに連結する可撓性導管(図示せず)を経由して温度計測装置19を排気する。真空排気系24aおよび24bは、図1および図2に示すように、枝管導管24fおよび延長部31bの直径側面の対向位置上のポート31o(1つが示される)に連結される可撓性導管対24e(図1にその1つが示される)を経由して鋳型ボンネット延長部31bを、導管24hを経由して区画3bをも排気する。導管24eは図3から省略されている。
【0048】
詳細に説明した装置の動作を、次に図10〜図14に関して説明する。インゴット装入装置20の位置で溶解容器5にインゴットIが挿入された後、図10に示すように、完全な真空状態(例えば、10ミクロン以下)下において、溶解区画1中で、必要な熱エネルギーを入力するため誘導コイル11によりエネルギーを与えられてインゴットが溶解する計測装置19の位置へ溶解容器5は軸4dによって移動する。
【0049】
るつぼC中のインゴット溶解が完了し、温度計測装置19と誘導コイル11のエネルギーにより決まる溶融物の温度が必要な鋳造温度に達すると、図10に示すように、予熱された充填チューブ16付きの予熱されたセラミック鋳型15および予熱されたシールMS1とMS2は、支持アーム14c上の鋳型基部13上に装填される。その後、図11に示すように、区画3が弁2により溶解区画1から隔離された状態で、支持アーム14cはアクセス扉3cを経由して鋳造区画3中に、鋳型基部13を配置するように枢動される。鋳型ボンネット31は、上部チャンバー3a中の上昇した位置にある。
【0050】
鋳型基部13が鋳造チャンバー3a中に配置された後、鋳型ボンネット31はシリンダー35により降下して、締付リング33の長穴開口33b中に止めねじ13bを心出しする。その後、作業員は締付リング33を回して(部分的に回して)、止めねじの頭部13hと係合するカム表面33sにより、鋳型ボンネット31に対して鋳型基部13をロックする。鋳型締付具17はシリンダー37により降下して、鋳型基部13に対して鋳型15およびシールMS1とMS2を係合保持する。鋳型基部13および鋳型ボンネット31は、互いに締付け合って内部に鋳型15を有する鋳型チャンバーMCを形成する。
【0051】
締付けられた鋳型基部/ボンネット13/31は、持上げられて鋳造区画3の上部チャンバー3a中に戻り、図12に示すように、鋳造区画扉3cを閉じて扉締付具3jを用いる扉の締切とロックにより密封して真空排気ができるように、鋳型基部支持アーム14cは作業員により振り回される。鋳造区画3および鋳型基部/ボンネット13/31内に形成される第二の鋳型チャンバーMCはともに、真空排気系24aおよび24bにより、速やかに達成可能でしかも非常に低い初期圧力、例えば50ミクロン以下の負圧に排気される。連続排気は約2分間行ない、10ミクロン以下のような、さらに完璧な真空度を得る。この真空度は、事実上全てのガスを取除く米国特許第3,863,706号および第3,900,064号の方法を用いて達成される真空度よりも良い。ガスは、鋳造区画3および鋳型チャンバーMC内では自由であり、鋳型中に存在する場合には、これらのガスはシェル型15およびコア(図示せず)中の空隙に含まれている。金属材料中のより活性な元素と結合して酸化物を形成する機会がある場合、ガスは潜在的に活性な液体金属材料(例えば、ニッケル基超合金)を損なうことがある。鋳型15がガス非透過性の場合、湯口または充填チューブ16を経由する、鋳型への開口が真空排気用に設けられる。
【0052】
るつぼC中のインゴット溶解が完了し、温度計測装置19により決まる溶融物の温度が必要な鋳造温度に達し、溶解区画1および鋳造区画3が必要な真空レベルに到達した後、隔離弁2を空気駆動シリンダー2aにより開く。図12に示すように、溶解容器5およびその内部の溶融金属材料は、シリンダー4の駆動により軌道6上を、鋳型基部/ボンネット13/31下の鋳造区画3中に移動する。軌道6は、心合わせおよび、重く広がりのある積荷を搬送するのに必要な機械的な安定性の両方をもたらす。
【0053】
鋳型基部/ボンネット13/31は、図7および図13に示すように、鋳型基部13が溶解容器5のフランジ5zと係合し、90度の機械的なラッチ止めを行ってフランジ5zと係合するアルゴン駆動のトグルクランプ34により、鋳型基部13がフランジ5zに締付けられるように、溶解容器5上に降下する。この動作により2つが完了する。
【0054】
第一に、鋳型基部/ボンネットの垂直運動により、鋳型充填チューブ16がるつぼC中のプールである溶融金属材料M中に浸漬される。
【0055】
第二に、溶解容器5のフランジ5zに対する鋳型基部13の係合および締付により、密閉されたガス加圧可能な空間SPが溶融金属材料Mの上端表面と鋳型基部13の底面13eとの間に形成される。シールSMB1は、鋳型基部13と溶解容器のフランジ5zとの間で圧縮され、この目的のために、そのまま気密性のシールを形成する。この小さな(例えば、通常1000立方インチ)空間SPおよび溶解容器5の誘導コイル11の周りの空間は、区画1および3は10ミクロン以下の真空度に排気され続けたままで、アルゴンガス供給導管4hを通し弁VAの開口および真空導管遮断弁VVを経由して加圧される、これによりるつぼC中の溶融金属材料M上に圧力差が発生し、湯口15aおよびサイドゲート15cを経由して鋳型キャビティ15b中に、充填チューブ16を通して上方向に溶融金属材料を押しやるあるいは「押す」。アルゴン加圧ガスは通常、空間SPが1〜2気圧であるような、ガス圧2気圧まで供給される。指定の鋳造サイクルの間、通常は湯口15aではなく鋳型キャビティ15b内の金属材料および鋳型サイドゲート15cの部分が固体化する間、密封された空間SP中の正のアルゴン圧は維持される。溶解容器5は、導管4hを用いてガス加圧する工程時に鋳型基部13に対して加圧気密が取れるよう、または次に説明する真空導管4vを用いて真空排気する工程時に真空気密が取れるように構成される。
【0056】
遮断弁VAによりガス加圧を終了した後、空間SPおよび溶解容器5の誘導コイル11の周りの空間は、弁VVを開け真空導管4vを用いて真空排気し、密閉可能な空間SPと区画1および3の間の負圧に等しくする。鋳型湯口15a中に残った溶融金属材料はるつぼCに戻され、それにより液体状であるので次の鋳型の鋳造に使用することができる。トグルクランプ34は減圧され、それにより鋳型基部/ボンネット13/31が溶解容器5から上昇することが可能となり、るつぼC中の溶融金属材料から充填チューブ16が引抜かれる。図2に示すように、受皿70は油圧シリンダー72により鋳型基部13の下に配置され、充填チューブ16からの溶融金属材料の残りの液滴を受ける。
【0057】
このとき、図14に示す鋳造サイクルにおいて、溶解容器5は溶解区画1中に後退し、隔離弁2の遮断により鋳造区画3と隔離される。図14に示すように、これにより区画3の真空が、大気開放弁CVにより開放されて、内部が大気圧になり、扉3cが開放され、鋳型基部13上の鋳型15は支持アーム14cを用いて取出すことができる。るつぼC内に次の鋳型に鋳造できるほどの十分な金属材料が残っていなければ、るつぼCは装入装置20を用いて新しい母合金を再装入し、新しいインゴットを溶解し、鋳造すべき部品に対する溶解鋳造温度を設定することにより鋳造するための装入量が再び用意される。新しい鋳型15への溶融金属材料の鋳造は、前述のように鋳造チャンバー3内で行われる。
【0058】
本発明の効果は、鋳型15が真空中(例えば、10ミクロン以下の負圧)にあっても、鋳型が液体金属材料で満たされることである。そのため、鋳型中にいかなるガスの背圧も発生しないため、鋳型キャビティ中への金属の流入に抵抗がない。鋳型壁が、ガスを逃がし金属を流入させるために、ガス透過性である必要がない。完全にガス不透過性の鋳型でも簡単に鋳造でき、鋳型それ自身の製造に関して多くの新しい選択肢ができ、以前は実施できなかった工程の組合せが可能となる。さらに、前述のように、熱膨張の結果としてガス気泡を形成する可能性をもつ、隙間に介在するガスは、セラミックの空隙中に、すなわち鋳型壁面あるいは予備形成されたセラミックコア中に実質的に残らないので、鋳造スクラップ発生率が減少する。
【0059】
鋳造鋳型の湯口からるつぼに戻る溶融金属材料は、鋳造サイクル中に反応性ガスに曝されることが少ないため、従来の方法による同様なリサイクル材料よりきれいである。これは、同じ回数の鋳造サイクルを行った後で、るつぼ中に残る金属の表面上に浮いている溜まったドロスが比較的少ないことにより明らかになる。さらに、金属を鋳型中に持上げる圧力差を発生する、溶融物上の小さな空間へのガス加圧はより迅速に実行でき、このため鋳型が完全にすばやく充填され、肉の薄い鋳造部分にも充填される。鋳型の表面領域および鋳型内の圧力変化率を制御する機構の変数としての鋳型透過性がなくなったため、同じ鋳型の異なる高さでのキャビティ充填率において測定結果がよく一致する。1気圧より大きな圧力差を本発明の実施において利用することができる。これにより、1気圧以下の圧力差により持上げられる金属の高さに限度のある従来の方法で製造するよりも背の高い部品の鋳造が可能となる。たいていの金属において液体から固体へ遷移するときに収縮の結果として、鋳造凝固中に発生する気孔をつぶす手助けをすることもできる。この増加した圧力により、液体は凝固先端を通して進行を続け、後に残されがちな空隙を満たす。本発明を完全に実施すれば、本発明はゲートをより小さくまたは少なくでき、付加的なコストが削減される。また本発明は、微小空洞を除去する方法の1つである熱間静水圧プレス法(HIP)の需要をなくすることができる可能性もあり、さらにコストを削減できる。
【0060】
鋳型ボンネット31は、鋳型基部13上の鋳型15を密閉し、鋳型締付具17を搬送して示されるが、鋳型基部13上に鋳型15を締付けるような方法で他の態様により鋳型締付具17を支持できれば、鋳型ボンネットは省略してもよい。すなわち、本発明の他の実施例において、鋳型ボンネット31を介在することなしに、鋳型基部13上の鋳型15は、直接鋳造区画3と連通できる。さらに、米国特許第3,900,064号に記載されるような方法により、すなわち、溶解容器5が鋳造区画中に上方へ移動して、鋳造区画内に位置する鋳型基部13と係合密封して、ガス加圧空間を形成し、鋳型基部上の鋳型中に溶融金属材料を吸引するような方法により、本発明は溶解区画1が鋳造区画3の下に位置することを想像させる。
【0061】
本発明の個々の実施例はこれまで述べたが、当該技術分野の技術者は、本発明が制約されるものではなく、また添付の特許請求の範囲において述べた本発明の範囲に反することなしに変更、改良などを構成できることがわかるであろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を実施するための装置および断面で示される所定の装置部品の正面図である。
図1のAは、車輪付き軸プラットフォームおよび誘導電源に隣接するプラットフォームの後ろに位置するレール上の車輪を示す切り除かれた軸の部分正面図である。
【図2】 図1の鋳造区画の部分正面図である。
【図3】 図1の装置の平面図である。
【図4】 軸の中心線についての溶解容器および立面で示される一部の要素の断面図である。AおよびBは、水平方向のシャントリングおよび垂直方向のタイロッド部材の部分拡大正面図である。
【図5】 立面で示される所定の内部部品を説明するための温度測定および制御装置の縦断面図である。
【図6】 インゴット装入装置の一部切り除かれた正面図である。
図6のAは、フックの部分正面図である。
【図7】 立面で示される所定の部品および溶解容器上に締付けられた鋳型基部上の鋳型ボンネットの直径に沿った断面図である。
【図8】 鋳型基部に締付けられた鋳型ボンネットの平面図である。
【図9】 Aは、締付金具をはずした位置における鋳型ボンネット上の締付リングの部分平面図である。
Bは、締付金具をはずした位置における鋳型ボンネット上の締付リングの一部断面で示される部分正面図である。
Cは、締付位置における鋳型ボンネット上の締付リングの部分平面図である。
Dは、締付位置における鋳型ボンネット上の締付リングの一部断面で示される部分正面図である。
【図10】 本発明を実施するための連続する工程を示す装置の概略図である。
【図11】 本発明を実施するための連続する工程を示す装置の概略図である。
【図12】 本発明を実施するための連続する工程を示す装置の概略図である。
【図13】 本発明を実施するための連続する工程を示す装置の概略図である。
【図14】 本発明を実施するための連続する工程を示す装置の概略図である。
Claims (28)
- a)溶解容器中で負圧にて金属材料を溶解し、
b)負圧にて鋳型を鋳型基部上に配置し、鋳型基部がその開口を通って延在する鋳型の充填チューブを有しており、
c)溶解容器および鋳型基部を相対的に動かして、充填チューブの開口を溶解容器内の溶融金属材料中に浸漬し、溶解容器と鋳型基部とをそれらの間の密閉手段を介して係合して、溶解容器の周囲と鋳型の周囲に負圧を形成しながら溶融金属材料と鋳型基部との間に密閉されたガス加圧可能な空間を形成し、
d)鋳造区画内で溶解容器の周囲と鋳型の周囲に負圧を形成しながら、溶解容器内の溶融金属材料上に密閉された空間内のガス圧を印加することにより、前記空間をガス加圧して溶融金属材料に圧力差を設けて、溶融金属材料を上方へ向けて充填チューブを経由して鋳型中に圧入する、金属材料を吸引鋳造する方法。 - d)の工程の後に、ガス加圧を終えて、鋳型と前記密閉可能な空間との間の負圧と等しくする工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 溶解容器と鋳型基部を相対的に移動させて溶解容器と鋳型基部とを分離させ、充填チューブを溶解容器中の溶融金属材料から引上げる工程をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
- 密閉手段が鋳型基部上に配置されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 溶解容器の上端と鋳型基部とをそれらの間の密閉手段を介して係合する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記上端と鋳型基部とを一緒に締付ける工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
- 鋳型基部上に鋳型を締付ける工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 鋳型ボンネットを、移動可能な鋳型締付具を有する鋳型基部上に配置して、鋳型ボンネット中で鋳型基部上の鋳型を締付ける工程を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
- 負圧に真空排気された溶解チャンバー中に配置された溶解容器中で、金属材料が溶解されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 鋳型基部上の鋳型が、負圧に真空排気された鋳造チャンバー中に配置されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
- 溶解容器を、鋳型基部下で鋳造チャンバーに移動させる工程を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
- 鋳型基部を降下させて、充填チューブの開口を、溶解容器の溶融金属材料中に浸漬し、溶解容器と鋳型基部とをそれらの間の密閉手段を介して係合させる工程を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
- 金属材料が、ニッケル基超合金により構成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- a)内部に溶融金属材料を有する溶解容器と、
b)鋳型が配置される鋳型基部と、鋳型基部がその開口を通って延在する鋳型充填チューブを有することと、
c)鋳型基部と溶解容器の少なくとも一方に設けられた密閉手段と、
d)溶解容器および鋳型基部を相対的に動かして、充填チューブの開口を溶融金属材料中に浸漬し、溶解容器と鋳型基部とをそれらの間の密閉手段を介して係合して溶融金属材料と鋳型基部との間に密閉されたガス加圧可能な空間を形成する手段と、
e)溶解容器と鋳型とを収容する鋳造区画と、溶解容器と係合する鋳型基部に鋳型が配置されていることと、鋳造区画内で溶解容器と鋳型の周囲に負圧を形成するための真空排気系と、
f)前記空間をガス加圧して圧力差を設けて、溶融金属材料を上方へ充填チューブを経由して鋳型中に圧入する手段と、鋳造区画内で溶解容器の周囲と鋳型の周囲に負圧を形成しながら、溶解容器内の溶融金属材料上に密閉された空間内のガス圧が印加されるようになっていることを含む、金属材料を吸引鋳造する装置。 - 溶解容器が、前記開口の上端に近接した周フランジを有していて、鋳型基部との間の密閉手段を介して鋳型基部と係合することを特徴とする請求項14に記載の装置。
- 周フランジと鋳型基部とをそれらの間の密閉手段と一緒に締付けるための複数のクランプを有することを特徴とする請求項15に記載の装置。
- 鋳型基部上に鋳型を締付けるための締付手段を有することを特徴とする請求項15に記載の装置。
- ガス加圧手段が、前記空間に連通するガス導管を有することを特徴とする請求項15に記載の装置。
- a)溶解容器を内部に最初に配置するための溶解チャンバーと、
b)溶解チャンバーを真空排気して、その内部を負圧にする手段と、
c)鋳造チャンバーと、鋳造チャンバーを真空排気してその内部を負圧にする手段と、
d)鋳型基部を有する鋳型チャンバー(MC)と、鋳型チャンバー(MC)が鋳造チャンバー中に配置されていてその中に鋳型を有することと、鋳造チャンバー中で鋳型チャンバーの外側にある充填チューブの開口部と、
e)溶解容器を、溶解チャンバーから鋳造チャンバーへ、鋳型チャンバーの下の位置に移動させるための手段とを含み、
相対的な移動のための手段が設けられていて、充填チューブを有する鋳型チャンバーを移動させて溶解容器と鋳型チャンバーとを密閉手段で係合し、溶解容器内の溶融金属材料と鋳型基部との間に密閉されたガス加圧可能な空間が形成されるようになっていることを特徴とする請求項14に記載の装置。 - 溶解容器が上端を有し、係合される基部を鋳型チャンバーが有することを特徴とする請求項19に記載の装置。
- 溶解容器が、前記基部に係合された上端に近接した周フランジを有することを特徴とする請求項20に記載の装置。
- 鋳型チャンバーが、周フランジと前記基部とを一緒に締付けるための複数のクランプを有することを特徴とする請求項21に記載の装置。
- 鋳型チャンバーが、鋳型基部を有していてその上に鋳型を有し、充填チューブが鋳型基部の開口を通って延在しており、鋳型の周りで前記基部に配置された鋳型ボンネットを有することを特徴とする請求項19に記載の装置。
- 鋳型ボンネットが、鋳型基部上に一緒に鋳型を締付ける締付手段を有することを特徴とする請求項23に記載の装置。
- 鋳造チャンバーが、アクセス扉と鋳型基部装填機構とを有し、これらにより上部に鋳型を有する鋳型基部が鋳造チャンバー中に位置付けられることを特徴とする請求項19に記載の装置。
- 鋳型ボンネットが、鋳造チャンバー中の鋳型の周りで鋳型基部上へ移動可能であることを特徴とする請求項25に記載の装置。
- 鋳型ボンネットが、鋳型を鋳型基部に一緒に締付けるための締付手段を有することを特徴とする請求項26に記載の装置。
- 鋳型ボンネットを鋳型基部上まで下方に移動させ、鋳型基部と鋳型ボンネットが一緒に締付けられた後で上方に移動させる手段を有することを特徴とする請求項26に記載の装置。
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