JP4445049B2 - 光ファイバジャイロスコープ用速度制御ループ - Google Patents

光ファイバジャイロスコープ用速度制御ループ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバジャイロスコープの制御ループの動作を制御するための装置に関する。特に、本発明は、固有の帰還信号時間遅延から生じるエラーを補償するための装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
サニャック干渉計は、一対の逆伝播光ビーム間で発生する非相反性位相差の測定によって回転を判定する計器である。この計器は、一般に、レーザ等の光源と、数個のミラーまたは複数ターンの光ファイバからなる光導波路と、ビームスプリッタ/コンバイナと、検出器と、信号処理器とから構成されている。
【0003】
干渉計では、ビームスプリッタから出てくる波は単一光路に沿って逆伝播する。光導波路は“相反的”になっている。すなわち、光路のどんなねじれも逆伝播ビームに同じ影響を与えるが、それらは必ずしも同時にまたは同一方向に前記外乱を経験するとは限らない。時間変動外乱は、その時間間隔が光導波路を回る光の伝播時間に匹敵している場合に観測される。これに対して、“非相反性”外乱は逆伝播ビームに異なるようにかつ伝播方向にしたがう影響を与える。前記非相反性外乱は、2つの波が伝播する光媒体の対称性を破壊する物理的効果によって引き起こされる。非相反性効果のうち2つは事実上周知になっている。ファラデー効果、すなわち共線電磁ー光的効果は、磁界が光学物質中で電子の優先回転方向を作り出す時に起こるのに対して、サニャック効果、すなわち慣性相対論的効果は、慣性フレームに対する干渉計の回転が伝播時間の対称性を壊した時に起こる。後者の効果は、リングジャイロスコープの動作原理として用いられる。
【0004】
ジャイロの逆伝播ビームで形成される干渉パターンの縞が、2つの成分、すなわち、直流成分と、ビーム間の位相差の原因に関連している(例えば、コサイン関数)成分からなるのが知られている。この位相差は、例えば回転に起因する非相反性外乱の測定基準を提供する。縞パターンの形状の結果として、測定された位相差が小さい場合(例えば、低回転速度の場合)は、合成ビームの強度は、前記差が位相縞パターンの最大に近く生じるので、位相差に比較的不感になっている。また、合成ビームの強度だけでは、回転の方向を示さない。
【0005】
前述の理由のため、人為的にバイアスされた位相差が逆伝播ビームに共通に付加される。この位相シフトのバイアスづけは、“非相反性ゼロシフト”としても知られており、位相差に対する強度測定の感度を高める。最大程度の感度は、ジャイロスコープの動作点を±π/2(またはその奇数倍)にシフトすることによって達成される。さらに、+π/2と−π/2間でバイアスを変化させることにより、2つの異なる動作点が観測される。これにより、システムは位相差の符号、したがって回転の方向を判別することができる。
【0006】
位相変調に加えて、干渉計出力の処理は、通常、非相半性(サニャック)効果に起因する位相差を補償するために負帰還メカニズムにより追加の位相シフトを導入する“位相ゼロ化”を使用する。通常、負帰還は、その傾斜が測定されるべき回転速度に比例する位相傾斜路を発生する。実際の実施時には、ゼロ化位相シフトが電圧制約のためいつまでも増加することはできないので、その高さが0と2πラジアンの間を変化する傾斜路が使用される。
【0007】
グレインドージュ(Graindorge)等の米国特許第4,705,399号には、“階段”波形を用いるデジタルベースの配置が開示されている。各階段の高さは測定される位相差と等しく、各階段の幅つまり期間は光コイルの群遅延時間になる。概して、傾斜路の傾斜は、単位時間当たりの測定される非相反性位相差に等しくなる。この方法は、デジタル信号処理と互換性があり、その結果生じる多くの利点を持っている。この位相変調は、デジタルシグナル プロセッサで提供される同期によりデジタル傾斜路に直接追加することができる。(合成された)信号は、最後に、光ファイバコイル内に配置された位相変調器を制御する。
【0008】
よって、光ファイバジャイロスコープの動作は、継続するバイアスによる上述の変調(及び関連した復調)を含む、多くの機能の実行を必要とする。すなわち、前記動作は、一般に、少なくとも各ループ遷移時間τと同じくらい頻繁に実行しなければならない。(例えば、ジャイロ精度を増すために)追加の機能が望まれる場合には、前記他の機能は、各ループ遷移時間の間に動作の繰り返しを要することもある。
【0009】
“多重化3軸ジャイロ用ループコントローラ”と題するジョン・ジー・マーク(John G. Mark)及びダニエル エイ・タザーテス(Daniel A. Tazartes)の米国特許第5,337,143号には、3軸ジャイロ用ループコントローラとして機能するアプリケーション仕様集積回路(ASIC)が開示されている。このコントローラは、3台の変調されたジャイロのデジタル化出力を受け入れ、各々と関連した回転を測定し、前記出力をデジタル的に処理して、ジャイロ位相変調器を駆動するためのアナログ信号を供給する。ループコントローラの動作はマイクロプロセッサによって指示される。それだけで、種々の変調形式(例えば、ランダム、疑似ランダム、直交、決定論的)をマイクロプロセッサから入力することができると共に、マイクロプロセッサの計算パワーがシステムパラメータを更新するために利用できるという、ある程度のフレキシビリティが達成される。ループコントローラは本質的にかつ自然にはプログラマブルになっていない。その結果、それは、関連マイクロプロセッサの速度とそれ自身のフレキシビリティのなさの両方で制限される。それに応じて、ループコントローラは、動作範囲が制約され、ジャイロ変調、速度情報の復調、位相ゼロ化傾斜路の発生、位相ゼロ化のために使用される速度データの出力、傾斜路のリセットという“基本的”ループコントローラ機能に本質的に制限される。もちろん、ジャイロは(リニアリティと2πを法とする精密動作とを保証するために)角速度の測定と位相変調器スケールファクタ制御が可能になっているべきであることが絶対に不可欠である。さらに、他の特徴、例えば(広帯域レスポンスのための)ループゲイン制御や(ノイズを最小限にするための)オフセット制御は、必須ではないが非常に望ましい能力である。
【0010】
“分散データ処理を用いた光ファイバジャイロスコープ用ループコントローラ”と題するジョン・ジー・マーク(John G. Mark)及びダニエル エイ・タザーテス(Daniel A. Tazartes)の係属中の米国特許出願第08/520,217号には、必要なデータ処理機能を分散させるための別個のユニットを含むことにより、動作をパラレルに行うことができて、各ループ遷移時間内に追加の有効な機能を付与することができるアーキテクチャを使用するループコントローラが開示されている。フィールドプログラマブル ゲートアレイは変化する符号を有する変数を発生するが、補助プロセッサは、ループ遷移時間ごとの更新を要しないパラメータを更新する。前記動作の組み合わせにより、ジャイロプロセッサが処理量集中テストと分岐動作を実行する必要性を除去することが可能となる
【0011】
従来技術は多くのループコントローラ動作を開示しているが、クローズドループ形態の場合における共通の問題は、ジャイロで検出される角速度を表わす帰還信号が発生し、安定な動作点を維持するために位相変調器に印加されるという事実から生じる。理想的には、帰還位相は、上述のゼロ状態を維持するためにサニャック位相をキャンセルすべきである。光ファイバジャイロループ中にある固有の遅延(典型的には、ループ遷移時間の2、3倍)に起因して、帰還信号は常にサニャック位相を遅らせる。加速及び減速を受けて変化する角速度の存在時、帰還位相は、引き続き実際のサニャック位相に“追いつこう”として、残留瞬間信号を残す。この残留信号は、高周波振動の存在時に大きくなって、ゼロ検出増幅器やアナログ−デジタル変換器を飽和させることがある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、第1の態様において、光ファイバジャイロスコープと、位相変調器と、光検出器と、位相積分器及び帰還積分器を有するループコントローラとを含むタイプのクローズドループシステムであって、残留エラーにさらされるクローズドループシステムにおける改善を提供することによって、従来技術の前述及び他の欠点に取り組んでいる。本発明のシステムの帰還積分器は複数の積分器からなる。前記複数の積分器は、残留エラーがより高次の周波数関数となるように相互接続される。
【0013】
第2の態様において、本発明は、残留エラーにさらされるクローズドループシステムを変形する方法を提供する。前記システムは、光ファイバジャイロスコープと、位相変調器と、光検出器と、位相積分器及び帰還積分器を有するループコントローラとを含むタイプのものである。前記方法は、残留エラーがより高次の周波数関数となるように帰還積分器を形成するステップからなる。
【0014】
本発明の前記及び他の特徴及び利点は以下の詳細な説明から明らかになるだろう。記載説明は1組の図面を伴う。図面の数字は、記載説明の数字に対応して本発明の特徴を示し、同じ数字は同じ特徴を指している。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明を用いたクローズドループ光ファイバジャイロのブロック図である。ループコントローラ10の特定の配置は、一般に、係属中の米国特許出願第08/520,271号に開示されているものに基づく。本発明は、一般に前記教示によるループコントローラを用いる光ファイバジャイロに関して説明されるが、そのうちのいくつかが本出願の背景部分に説明されているクローズドループジャイロとループコントローラであって、測定された速度を帰還信号として受けて処理し、後続のループ遷移時間の間ループ位相変調器を駆動する信号を得るクローズドループジャイロとループコントローラに適用可能であることがわかるだろう。
【0016】
コヒーレント光源(図示しない)がジャイロ12に出力ビームを印加する。ジャイロ12は、光ファイバ製コイルと、出力ビームをコイル内を逆伝播する一対のビームに分割する関連カップラ(図示しない)を含む。ジャイロ12からの干渉計出力ビームは光検出器14に入力され、光検出器14は光エネルギーを対応する電気信号に変換する。上記に説明した光位相変調が、多機能集積光チップ(MIOC)16に存在するような電子−光位相変調器によりジャイロ12の光ファイバコイル内を逆伝播するビームに与えられる。この位相変調は、一般に、電界にさらされた特別にドープされたLiNbO3 導波路で形成される。
【0017】
検出器14からのアナログ電気信号出力は前置増幅器18に供給され、次いで、前置増幅器18の出力はフィルタ20に供給される。フィルタ20の出力はアナログ−デジタル変換器22を駆動し、アナログ−デジタル変換器22はフィルタを通ったアナログ信号をデジタル化し、ループコントローラ10に印加するためにデジタルデータビットの波形を発生する。
【0018】
ループコントローラ10は、変換器22よりデジタル波形出力を受け入れ、それに応じて、ジャイロ12の検出軸に関する回転の測定量と、後続のループ遷移時間τの間にジャイロ12を変調して位相ゼロ化するのに用いるためのデジタル制御信号(MIOC16に供給される)の両方を発生するように整えられている。ループコントローラ10のデジタル出力はデジタル−アナログ変換器24に供給され、次いで、その対応するアナログ出力はドライバ26に供給され、ドライバ26の出力はMIOC16を駆動する。
【0019】
ループコントローラ10の説明において、時折発生する参照は、いくつかの信号とパラメータを判別する頭字語を用いることとする。前記パラメータは、ソフトウェア、有線ロジック及び/またはこれらの組み合わせを含む多くの手段によりジャイロプロセッサ(後述する)に供給することができる。補助プロセッサ(開示しない)は、前記入力の発生時有線ロジックと共に動作させることができる。例えば、頭字語は32ビット デジタルワードを表わすことができる。
【0020】
補助プロセッサは、テキサス州ダラスのテキサス インストルメンツ社から市販されているTMS 320C26等の既知のマイクロプロセッサからなる。これは、例えば、1kmジャイロのために、ジャイロプロセッサを表わす40MHzクロックと相違する2kHzより大きくない速度とτ当たり5マイクロ秒に近い予算時間での更新を要するデータ(ジャイロパラメータを含む)を提供するのに使用される。
【0021】
下記に詳細に説明されるジャイロプロセッサは、例えば、米国特許第5,337,143号のループコントローラに示されているような“セレクト”ルーチンの存在を表わすいわゆるテスト及び分岐ソフトウェア指令をなくすように整えられている。
【0022】
以下の説明で示される頭字語は、各々32ビット デジタルワードからなり、以下のとおり示される。
【0023】
【表1】
デジタルワード パラメータの機能
1.PERT ループのアナログゲインを観測するため外乱入力
2.DCOMP ループへの外乱入力の影響を補償するための値
3.ADOFF ジャイロから受け取られる出力のDCオフセット
4.OINT ADOFFエラーを計算するためにジャイロプロセッサより得られる値
5.PMSF デジタル−アナログ変換器が位相変調器を駆動するために2πの位相に変換する(位相変調器スケールファクタ)値
6.SINT PMSFエラーを計算するためにジャイプロセッサより得られる値
7.AGC アナログゲインエラーを計算するためにジャイロプロセッサより得られる値
8.Δθ ジャイロがτの間に回転した角度の値
9.CREAR 一次積分器がゼロにリセットされたか否かを判定する値
10.PINT 現在の角速度に対応する一次積分器の値
【0024】
補助プロセッサでパラメータを更新するために使用される種々の関係は、当業者に知られ、理解されている周知の物理的原理に依っている。パラメータと、ジャイロプロセッサ32にパラメータを供給するためのロジックとの相互動作は、マイクロプロセッサ制御式システムについて、係属中の特許出願第08/520,217号に開示され説明されており、参照によりここに含まれる。
【0025】
図2は、図1の光ファイバジャイロのループコントローラ10の機能を示すブロック図である。ジャイロプロセッサ28は、各ループ遷移時間τの間にアナログ−デジタル変換器22からジャイロ12の出力の強度を表わすデジタルワードを入力として受け取る。この値は、アナログ−デジタル変換器22での処理から生じるDCオフセットつまりエラー(ADOFF)が30で補償される。補助プロセッサは、以下に説明されるジャイロプロセッサ28内で計算される変数値(OINT)の変動に応じてDCオフセット値を定期的に更新する。
【0026】
DCオフセットが補償されたジャイロ12の出力は32に印加され、ここで、前の遷移時間の間に注入されたわずかな動揺または外乱値±dが補償される。32で印加される外乱補償値は、34で一定の外乱値DCOMPに+1または−1を乗算することにより発生する。±1の値は、3遷移時間前(t−3τ)に印加された外乱または変動(PERT)から引き出された外乱補償符号PCSを表わす。この符号は、ループゲインの測定のためにジャイロに印加される外乱の極性(PTBS)を決定する予め決められた疑似ランダムまたはランダムシーケンスから選択される。外乱補償符号PCSと外乱補償値DCOMPは、32での加算に先立って34で乗算される。
【0027】
DCオフセットと外乱が補償されたジャイロ12の出力はオフセットエラー積分器36に印加され、ここで、和が算出され、外乱補償された値の平均OINTを発生する。30から得られる、オフセット補償されたジャイロ出力は、38で、外乱信号を復調するための外乱補償符号PCSと乗算される。外乱補償値DCOMPが40でその結果に加算され、正味のエラー項を形成する。正味エラーは42で積分され、ゲインエラー信号AGCが得られる。外乱補償DCOMPが入力信号の外乱成分を“ゼロ化”した場合には、積分42の出力は一定になるだろう。さもなければ、補償されない外乱の追加量または残留量の存在が、ループゲインエラーの存在を示すだろう。
【0028】
変動とオフセットが補償されたジャイロ信号は、44で、前の変調(MOD)を示す一連の±1に相当する復調符号PDSと乗算される。44の出力は速度エラーを表わす。この値は、合計され、速度コントローラ46に供給される。速度コントローラ46の構成は、詳細に開示され、以下に解析される。速度コントローラ46は、以下に説明されることになる位相積分器52にデジタルゲイン及び速度帰還を与えるばかりでなく(ジャイロ速度エラーから)ジャイロ速度推定値を発生することにより、角速度入力Ωの存在時にジャイロをゼロに維持するように機能する。
【0029】
ジャイロ速度の推定値は48で積分され、姿勢変化に関連した種々のナビゲーションパラメータを発生するために用いられる角度位置値の変化Δθを発生する。速度コントローラ46内部の縦続接続された積分器の各々と関連する1組のCLEAR信号(“0”または“−1”の値を有する)は、本発明にしたがって構成されたシステムにおける残留ジャイロエラーの次数を決定することがわかるだろう。
【0030】
また、44の出力は、50で、前のτの積分の間位相積分器52で発生したCLEAR信号と乗算される。50における乗算はスケールファクタエラー復調を発生し、これは54で積分されて、位相変調器スケールファクタエラーの推定値(信号SINT)を提供する。
【0031】
縦続接続された積分器で発生した速度値を表わす32ビットワードは、速度コントローラ46内で左方へシフトされ、速度推定値にデジタルゲインを与える。(各々の左方へのシフトは、結果的に2との有効な乗算になる。有限ワード長のため、シフタの出力は範囲が制限される。固有の232を法とする動作は、32ビット動作の選択から生じる。正確に2πを表わすためにシフトの232出力を左方へセットすることにより、ジャイロプロセッサ28で実行されるアルゴリズムに、2πを法とする位相制御が構築される。これは、変調器に印加される電圧範囲を2πに等しい位相シフト範囲に制限する。その結果、クローズドループ光ファイバジャイロの分野の当業者に知られている2π“リセット”が、スレショールド試験なしに自然かつ自動的に起こる。)
【0032】
速度コントローラ46に供給され、上記に説明したように積分され左方へシフトされる速度エラー信号εは、角速度の存在時にジャイロをゼロに維持するための“再バランス”信号を与える。この信号は、上述のように避けられない残留信号εを残す、角速度によって誘導されたサニャック位相シフトをキャンセルしようとする。速度コントローラ46の出力は、56で、τごとに、変調値MOD(従来的に、±π/2、または“過変調を用いる光ファイバジャイロスコープにおける交差結合を克服する方法及び装置”と題するジョン・ジー・マーク(John G. Mark)等の米国特許出願第08/613,558号において説明されている過変調に対応する他の値に対応する)出力と加算される。説明したように2πの232表現にしたがって、π/2は230の値に相当する。(MODに含まれる)変調の符号はτごとに変えることができる。上記に説明したように、56で与えられるMODの値は、決定論的、直交的、ランダムまたは何か他の種類のものとすることができる。
【0033】
次いで、外乱または変動値が58で速度プラス変調に加算される。この外乱信号は、60で外乱値PERTと外乱符号PTBSを乗算することによって発生する。58の出力は、速度プラス変調プラス外乱を表わし、帰還及び変調を終了する。速度プラス変調プラス外乱値は52で積分され、ループが閉じられる。52における求和は、デジタルステップ位相積分プラスCARRY信号(追加の動作が33番目のビットのトグリングになった時はいつでも発生する)を発生する。CARRY信号は62から出力される。CARRYは、44で決定される速度エラー値と組み合わせて、スケールファクタエラーSINTを決定するのに使用される。
【0034】
ループコントローラ10は、“調整できない”基準を有するデジタル−アナログ変換器24と共に動作するように整えられる。すなわち、デジタル−アナログ変換器24はスケールファクタ変動に対する調整を含む必要がない。前記変動は、しばしば温度に依存し、位相変調器16に供給されるアナログ電圧及び位相変調器16に供給されるアナログ電圧間の関係と、ジャイロ12内を逆伝播する光波間で結果的に生じる位相シフトとに影響を与える。この変動の補償は、まず、64で変化勾配の最上位ビットを補足し、変化勾配の値をオフセットバイナリから、変化勾配がゼロに関して対称的になっている(すなわち、DC成分がない)ことを保証する、2の補数形式に変換することによって達成される。
【0035】
次いで、変化勾配を示す32ビットワードの最上位16ビットが66で抽出され、この16ビット表現は、68で位相変調器スケールファクタ推定値PMSFと乗算される。68の出力は、2の補数形式に整えられたデジタル−アナログ変換器24に書き込まれる。
【0036】
スケールファクタエラーを決定するループを参照すると、変化勾配の積分のCARRY出力は70で±1値に変換される。(この値はジャイロプロセッサ28内で発生し、−1は一次積分器52からのCARRYビットを示し、+1はそれの欠如を示す。)
【0037】
70の出力は、72で3τだけ遅延され、次いで50で44からの速度エラー値と乗算される。50の出力は54で積分され、位相年長期スケールファクタPMSFを更新するのに使用される二次スケールファクタエラー積分値SINTを発生する。
【0038】
前に述べたように、上記に説明したもののようなクローズドループジャイロシステムは、より高次の運動(例えば、振動、加速度、角度的ジャーク及びより高次の成分)の存在時に安定な動作点を維持する際の問題にさらされる。これは、帰還とサニャック位相間の時間遅れすなわち遅延による避けられない残留信号の存在に起因する。
【0039】
図3は、クローズドループジャイロの線形z変換モデルである。クローズドループジャイロの通常動作は、ループ遷移時間τごとに時間遅延を累積し、上記に説明した残留エラーεの存在という結果になる。
【0040】
表示法の慣習として、図3及びそれに続く図4乃至では、z変換が、図1または図2のいずれかで前に定義された構成要素の動作を特徴づける場合は、前記変換は、図面及び文書の両方において括弧内のその(すでに紹介された)数字で示される。次に図3を参照すると、z-1観測遅延74は、ジャイロコイル中を進む光で費やされる固有の1τ遅延を定義する。この遅延は、一般的に、従来技術にしたがう速度コントローラ(46)の単一帰還積分器(46A)の1/(1−z-n)関数に入力される。このような単一帰還積分器配置は、例えば、上記に参照した係属中の特許出願第08/520,217号において教示されている。1/(1−z-1)動作は位相積分器(52)を特徴づける。この動作の出力は、変調、復調及びアナログ−デジタル変換等のτごとに必要な種々の計算に帰因するz-(n-1)遅延80を介して処理される。(1−z-1)関数(16)は位相変調器の動作を特徴づける。
【0041】
図3に示されたループは、より高次の補償のない、いわゆる“デッドビート”タイプのものである。一次残留エラーは速度コントローラの単一積分器(46A)構成から生じることが以下にわかるだろう。それだけで、残留エラーεとサニャック スケールファクタΩの比は以下のとおり引き出すことができる(SSFはサニャック スケールファクタを表わす)。
【0042】
Y/Ω=SSF(z-1/(1−z)÷(1+z-n/(1−z-n))=SSF
・z-1 (1)
ε/Ω=(1−z-n)Y/Ω=SSF・z-1(1−z-n) (2)
残留信号εは、デッドビート ループ特性を確認する式2においてサニャック速度Ωと一次関係をもつ。
【0043】
本発明では、ジャイロループは、避けられない残留信号がサニャック出力Yとより高次の関係をもつように再形成される。本発明によるジャイロループの設計の理論及び由来は、以下の図4乃至6に示される種々の処理の説明から追う。
【0044】
図4では、クローズドループ ジャイロは、初めに、人為的遅延84を含む負帰還路の挿入によって再形成される。正帰還及び人為的遅延86を有する第2のループは第1のループ内に位置している。この第2のループは、前に差ノード90で引き算された遅延値を加算ノード88で加算しているだけなので、図4の第2のループ配置の追加は正味の効果を生ぜず、第2のループの入力及び出力の両方において同一エラーまたは残留信号εのままとなる。(差ノード90における“漸減”後かつ“加算ノード”88における“再漸増”前の架空の正味残留信号は、ε′で示されていることに注意されたい。)
【0045】
遅延86及び加算ノード88を含む第2のループは、積分器のz変換1/(1−z-n)を有し、その紹介は後続の引き出しステップで明らかになることに注意すべきである。
【0046】
図4に戻って参照すると、以下の関係が図4の再構成されたジャイロループの動作を定義する(SSF=サニャック スケールファクタ)。すなわち、
Y/Ω=SSF・z-1 (3)
ε/Ω=(1−z-n)Y/Ω=SSF・z-1(1−z-n) (4)
ε′/Ω=(1−z-n)ε/Ω=SSF・z-1(1−z-n2 (5)
【0047】
ここで、第2のループの内部に生じた残留信号ε′はサニャック速度Ωと二次的関係をもっている。同等のz変換線図が図5に示される。この線図は、εよりむしろε′を残留エラー信号とする、位相変調器へ向かう帰還路への第2のループの負帰還路の変換を表わす。図5は、クローズドループ ジャイロシステムの動作に正味の影響を与えない図4の再配置を表わし、残留エラーとジャイロ速度間の二次的関係を実現する速度コントローラの再構成に導くことがわかるだろう。
【0048】
前に述べたように、前図の人為的遅延86及び加算ノード88からなる正帰還ループは、z変換1/(1−z-n)、すなわち積分器を示す項で表わすことができる。したがって、正(または内部)帰還はこの図面では第2の帰還積分器(46B)で置換されている。
【0049】
差ノード90と人為的遅延84からなる図4の負帰還ループは時間遅延z-nで示されている。これは74,(52),80及び82の正味または結果と同等である。したがって、図4に紹介されている負帰還路は、システムに正味の影響を与えることなく、(前の)正帰還路の出力93を図5に示されるような(52),80,82及び74の始めに転送することによって削除することができる。このループは図5において加算ノード94を加えて再構成され、それにより、積分器(46B)の出力は、図示のジャイロ制御への追加のフィードフォワード信号として供給される。この再構成が行われた場合、新たな残留信号ε′が、観測遅延74における一次デッドビート エラー信号に取って代わる。しかしながら、従来のクローズドループ ジャイロのエラー信号εと違って、新たなエラー信号ε′がジャイロ速度Ωと二次的関係をもつ。
【0050】
図5のジャイロのz変換線図に戻って参照すると、このクローズドループは、図3のデッドビート ループと第2の積分器(46B)の追加だけ違っていることがわかる。第2の積分器(46B)の出力を加算ノード94へフィードフォワードすることにより、第2の積分器(46B)は、第1の積分器(46A)に対して縦続接続関係に整えられる。
【0051】
この前処理は、ジャイロ速度Ωと連続したより高次の関係をもつ残留エラー項で特徴づけられるクローズドループ構成を得るために、何回でも繰り返すことができる。図6は、三次残留エラーε″で特徴づけられるループの線形z変換を示す。図6の線図は、前図の動作の拡張によって得られたものである。二次構成と違って、この三次配置は図5の二次ループから始められる。一方は正帰還を有しかつ他方は負帰還を有する一対の第2の帰還ループが、観測遅延74の後に挿入される。その後、正帰還内部ループは第3の積分器(46C)で置換される。次いで、正帰還ループは、74,(52),80及び82の積が同等遅延z−nに等しいという事実の利点を採用して、新たな路100で置換される。新たな三次エラー信号ε″は観測遅延74の出力から発生する。
【0052】
三次効果を確認すると、以下の1組の式が図6の構成を示す。すなわち、
Y/Ω=SSF・z-1 (6)
ε″/Ω=SSF・z-1(1−z-n3 (7)
【0053】
この処理及び結果ループ構成を参照すると、(1)クローズドループ ジャイロに(m+1)番目の積分器を追加し、(2)次いで、m個のループ積分器の出力を連続的に正的にフィードフォワードする(すなわち、第1の(m−1)ループ積分器の出力をm−1加算ノードに供給する)ことにより、連続的により高次の残留エラー項εm が得られると総括することができる。この反復処理の結果は、次のように要約することができる。すなわち、残留エラーεm 及びサニャック速度Ω間のm次的関係を得るために、(m−1)個のループ積分器が縦続接続関係に追加され、縦続接続された積分器(46A),(46B),(46C),...等からなる速度コントローラ(46)を形成する。
【0054】
図7は、前記のとおりに得られた速度コントローラ46の配置を示す概略線図である。このようなコントローラ46を図1及び図2のクローズドループ ジャイロへ組み込むことにより、上記に引き出されたより高次の効果によって実質的なエラー減少を得ることができる。図示されているように、速度コントローラは、互いに縦続接続関係に相互接続された帰還積分器46A,46B及び46Cからなり、積分器46A及び46Bの出力はノード102で加算され、3個の積分器のすべての出力はノード94で加算される。ジャイロをゼロに維持するための再バランス信号を提供するために、シフト レフト104において、縦続接続された増幅器の出力にデジタルゲインが与えられる。次いで、この再バランス信号は変調56に供給される。帰還積分器46Cの出力は、ジャイロ速度推定値として出力され、Δθ積分器52に供給される。
【0055】
積分器46Aは、積分器46Cを選択的にリセットしてゼロの値に保持するための関連CLEAR 46A′を含む。これは、速度コントローラ46の動作から積分器を除去する。前に述べたように、これは予め決められた信号の入力によって達成される。このようなCLEARが供給され、縦続接続された積分器46Aが速度コントローラ46から除去された場合、クローズドループ ジャイロは、上記の図5の動作形態を維持する。この形態は、残留エラーと入力速度間の二次的関係を発生する。さもなければ、図6の形態が得られ、残留エラーとジャイロ速度間に三次的関係が存在する。同様に、CLEAR動作46B′は、ループ動作から積分器46A及び46Bを除去するためにCLEAR 46A′と組み合わせることができる。これは、図3の標準形態にコントローラを縮小する。また、CLEAR動作46C′は、積分器46Cの値をクリアすることによってループをゼロに初期化する(すなわち、スタートアップにする)ためにリセットするのを可能にするべく組み込まれる。
【0056】
図8は、従来技術と本発明(二次108及び三次110形態)にしたがって構成されたジャイロループの周波数特性のグラフである。グラフの横座標は、検出ジャイロ信号の周波数をHzで表わし、縦座標は、残留エラー対検出ジャイロ信号の大きさの比の対応値をdBで表わす。線105は、同一スケールで、測定された角速度対本当の角速度の大きさ転送関数
【数1】
Figure 0004445049
を表わす。線105は、一次、二次及び三次ループに適用する。出力信号の大きさは周波数範囲にわたって入力角速度を正確に追跡しているのがわかる。これはフラットな0dBレスポンスで示される。
【0057】
図8のグラフは、1kmジャイロという仮定に基づいている。通常動作状態では、このような装置は2000Hz以下の範囲の振動にさらされると思われることに注意すべきである。この範囲より上では、プロットは理論的関心を帯びるだけである。線106,108及び110は、それぞれ、一次残留エラーレスポンスを示す(従来の)クローズドループ ジャイロと、二次及び三次エラー項を示す本発明によるジャイロとに関する残留エラー対入力ジャイロ信号の大きさの比(すなわち、|ε/Ω|,|ε′/Ω|,|ε″/Ω|)を表わす。図からわかるように、本発明により構成されたシステムの関連周波数範囲において、残留エラー内容の実質的な減少が観測される。例えば、1,000Hzでは、本発明による二次システムは、一次残留エラー特性を有する従来のクローズドループ ジャイロに勝る、約20dBに近い改善を示しているが、三次システムは40dBに近い改善を示している。
【0058】
一次及びより高次の残留エラーを示すジャイロの相対的性能は、曲線106,108及び110の交差点112で一致するカットオフ周波数を越えた周波数で相当な変化を経験するのがわかる。3ジャイロループ遷移持間のシステム遅延を有する1kmジャイロに対して、前記カットオフ周波数は、前述のように、通常出会う振動周波数の範囲よりかなり上の約10kHzであるのが示されている。このため、非常に高い周波数での劣化は、本発明によって提供される実質的な利点に決して矛盾しない。
【0059】
本発明はその好適な実施例に関して示され、説明されたが、それに限らない。むしろ、本発明は、付随の請求項で定義されかつそれのすべての同等物をその範囲内に含むかぎりにおいてのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を用いるためのクローズドループ光ファイバジャイロのブロック図である。
【図2】本発明を組み込んだ光ファイバジャイロのループコントローラの機能を示すブロック図である。
【図3】クローズドループ ジャイロの線形z変換モデルである。
【図4】本発明の速度コントローラを駆動する際に用いられる処理を示すと共に、それにより前記構成を性質的に確かめるためのz変換線図である。
【図5】本発明の速度コントローラを駆動する際に用いられる処理を示すと共に、それにより前記構成を性質的に確かめるためのz変換線図である。
【図6】本発明の速度コントローラを駆動する際に用いられる処理を示すと共に、それにより前記構成を性質的に確かめるためのz変換線図である。
【図7】図4乃至6の処理によって得られるような速度コントローラの配置を示す概略線図である。
【図8】従来技術及び本発明(二次及び三次形態)にしたがって構成され、それにより本発明を性質的に確かめるジャイロループの周波数レスポンスのグラフである。

Claims (11)

  1. 光ファイバジャイロスコープと、位相変調器と、光検出器と、位相積分器及び帰還積分器を有するループコントローラとを含むタイプのクローズドループシステムであって、残留エラーにさらされるクローズドループシステムにおいて、
    a)前記帰還積分器は複数の積分器からなり、
    b)前記複数の積分器は、ある積分器の第1の出力と、該ある積分器の前段までの全ての積分器の第2の出力とが供給されるように配置された加算ノードへ前記第2の出力をフィードフォワードするように、相互接続されていることを特徴とするクローズドループシステム。
  2. 請求項1記載のクローズドループシステムにおいて、前記複数の積分器は縦続接続関係に相互接続されるクローズドループシステム。
  3. 請求項2記載のクローズドループシステムにおいて、さらに、
    a)デジタルゲインを供給する手段とを含み、
    b)前記手段は、前記縦続接続された積分器の和を受けるように配列されることにより再バランス信号を発生するクローズドループシステム。
  4. 請求項3記載のクローズドループシステムにおいて、前記縦続接続された増幅器のうちの1つはジャイロ速度推定値信号を提供するクローズドループシステム。
  5. 請求項1記載のクローズドループシステムにおいて、さらに、
    a)前記複数の積分器は2つの積分器からなり、
    b)前記積分器は、前記残留エラーが周波数の二次関数となるように縦続接続関係に配列されるクローズドループシステム。
  6. 請求項5記載のクローズドループシステムにおいて、前記縦続接続された積分器のうちの1つはジャイロ速度推定値信号を提供するクローズドループシステム。
  7. 請求項1記載のクローズドループシステムにおいて、さらに、
    a)前記複数の積分器は3つの積分器からなり、
    b)前記積分器は、前記残留エラーが周波数の三次関数となるように配列されるクローズドループシステム。
  8. 残留エラーにさらされるクローズドループシステムを形成する方法であって、当該システムは、光ファイバジャイロスコープと、位相変調器と、光検出器と、位相積分器及び帰還積分器を有するループコントローラとを含み、前記帰還積分器を形成するステップを含み、
    前記帰還積分器を形成するステップは、さらに、
    a)複数の積分器を用意するステップと、
    b)前記複数の帰還積分器のある積分器の第1の出力と、該ある積分器の前段までの全ての積分器の第2の出力とが供給されるように配置された加算ノードへ前記第2の出力をフィードフォワードするように、前記複数の帰還積分器を相互接続するステップとを含む方法。
  9. 請求項記載の方法において、相互接続するステップは、さらに、前記積分器を縦続接続関係に相互接続するステップを含む方法。
  10. 請求項記載の方法において、さらに、
    a)2つの積分器を用意するステップと、
    b)前記帰還積分器の出力が一次残留エラーを補償するように、前記積分器を縦続接続関係に相互接続するステップとを含む方法。
  11. 請求項記載の方法において、さらに、
    a)3つの積分器を用意するステップと、
    b)前記帰還積分器の出力が二次残留エラーを補償するように、前記積分器を縦続接続関係に相互接続するステップとを含む方法。
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