近年、電子機器の小型携帯化に伴い、回路基板材料として部品、素子の高密度実装が可能な耐熱性の高いポリイミド金属箔積層板の需要が増大している。ポリイミド金属箔積層板に要求される性能には、耐熱性や寸法安定性など様々なものがあるが、近年のフレキシブルプリント配線板(FPC)の微細配線化や多層積層化に伴い、金属箔と樹脂(ポリイミド)間の引き剥がし強度(ピール強度)の向上が特に要求されている。微細配線化が進むと、見かけ上ピール強度が低下したように見えるため、回路加工時の熱履歴や薬液処理、カバー材やレジストの剥離などによって容易に金属配線部がポリイミドから剥がれてしまうことが予想される。また一方で多層積層化が進むと、積層化するための高温、高圧力のプロセスや、回路加工プロセスでの薬液処理などが多く必要になるため、ポリイミド金属箔積層板にかかるストレスも多くなり、ピール強度が低下してしまうことが予想される。
以上のことからポリイミド金属箔積層板に関して、ピール強度の向上は重要課題の一つとして従来より検討されてきた。例えば、特開平5-222219号公報(特許文献1)ではポリイミドフィルム表面にプラズマ処理することで表面濡れ性を向上し、ポリイミドフィルムと接着剤、及び金属箔との間の接着性を改善することが検討されている。しかしながらこの方法では、大型なプラズマ処理装置が必要となり、製造コストが高くなってしまうといった問題がある。
そこで特開2001-233973号公報(特許文献2)や特開平6-100714号公報(特許文献3)などでは、ポリイミドフィルム表面を液体研磨剤で研磨することで意図的に荒らして表面の濡れ性を向上させたり、またはポリイミドフィルム製膜時に混入させたポリイミド微粒子をポリイミド表面に析出させることで、意図的に表面に凸凹を作製し、それによって表面濡れ性を向上させる方法が開示されている。しかしながらこれらの方法では、基本的には表面を数μm程度荒らすこととなり、今後ポリイミド層の薄膜化がいっそう進むとその表面の荒らした部分の寄与が全体の割合に対して多くなり、部分的な剛性の減少による破断や、ピンホール形成による誘電損失の悪化が予想され好ましくない。
また、その他の方法としてポリイミドフィルム表面の接着性を改善するために、特開平11-48423号公報(特許文献4)では非熱可塑性ポリイミドフィルムと熱可塑性ポリイミドフィルムの表面をそれぞれシランカップリング剤やシロキサンオリゴマー類で表面改質した後、両フィルムを張り合わせて接着性を改善することが検討されている。しかしながらこの方法で使用する接着層は熱可塑性ポリイミドフィルムであり、現状のポリイミドフィルムの製膜技術では安定的に製造できる膜厚は最薄でも8μm程度が限界であるため、薄い接着層の構成を作製することが困難である。つまりはポリイミド金属箔積層板にしたときに、薄膜化が難しいといった問題があり、これを改善するための技術の開発が望まれていた。
また、さらにその他の方法として、ポリイミドフィルムと金属、基板との接着性を改善するために、特開2004-339526号公報(特許文献5)ではポリイミド表面をエタノールアミンとN-メチルピロリドンあるいはジメチルホルムアマイドの混合溶液で処理することで接着性を改善することが報告されている。しかしながらこの方法で改善できるのは、ポリイミドフィルムと金属基板との間の接着性であり、ポリイミドフィルムとポリイミド接着層との間の界面の接着性は改善できない。ポリイミド金属積層板の場合、場合によっては金属とポリイミドの間より、むしろポリイミドフィルムと接着層との間の方が接着性が悪い場合があるので、この間の接着性を無視することはできない。
特開平5-222219号公報
特開2001-233973号公報
特開平6-100714号公報
特開平11-48423号公報
特開2004-339526号公報
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、ポリイミドフィルムの片面又は両面の表面を、ジメチルアセトアミド(DMAc)及び/又はN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に浸漬処理し、乾燥した後、該ポリイミドフィルム表面の片面又は両面に熱可塑性ポリイミド前駆体ワニスを塗布して接着性ポリイミドフィルムを製造し、該接着性ポリイミドフィルムの片面又は両面と金属箔を加熱圧着することを特徴とするポリイミド金属箔積層板の製造方法である。
本発明方法に用いることのできるポリイミドフィルムとしては、特に限定されず、市販品の入手可能なポリイミドフィルムを用いることが可能である。例えば、Kapton(登録商標)フィルム(東レ・デュポン(株)製)、Apical(登録商標)フィルム((株)カネカ製)、Upilex(登録商標)フィルム(宇部興産(株)製)等が挙げられる。
また、公知のジアミンと酸二無水物より製造可能なポリアミド酸溶液からポリイミドフィルムを製造することも可能である。その場合、ジアミン成分の例としては、特に限定されず、ポリイミド製造に用いられる公知のジアミンを使用することが可能である。
ジアミン成分の例としては、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、m-アミノベンジルアミン、p-アミノベンジルアミン、ビス(3-アミノフェニル)スルフィド、(3-アミノフェニル)(4-アミノフェニル)スルフィド、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、ビス(3-アミノフェニル)スルホキシド、(3-アミノフェニル)(4-アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3-アミノフェニル)スルホン、(3-アミノフェニル)(4-アミノフェニル)スルホン、ビス(4-アミノフェニル)スルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-アミノフェニキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、
ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’-ビス[3-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4-{4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス(3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(2-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(2-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(2-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、
1,2-ビス(3-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(3-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(4-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(2-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(2-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(2-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)-2-メチルベンゼン、1,3-ビス(3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)-4-メチルベンゼン、1,3-ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)-2-エチルベンゼン、1,3-ビス(3-(2-アミノフェノキシ)フェノキシ)-5-sec-ブチルベンゼン、1,3-ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)-2,5-ジメチルベンゼン、1,3-ビス(4-(2-アミノ-6-メチルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(2-(2-アミノ-6-エチルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(2-(3-アミノフェノキシ)-4-メチルフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(2-(4-アミノフェノキシ)-4-tert-ブチルフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)-2,5-ジ-tert-ブチルベンゼン、1,4-ビス(3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)-2,3-ジメチルベンゼン、1,4-ビス(3-(2-アミノ-3-プロピルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(3-(3-アミノフェノキシ)フェノキシ)-4-メチルベンゼン、1,2-ビス(3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ)-3-n-ブチルベンゼン、1,2-ビス(3-(2-アミノ-3-プロピルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼンビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(10-アミノデカメチレン)テトラメチルジシロキサン、ビス(3-アミノフェノキシメチル)テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。尚、これらは単独あるいは2種以上混合して、用いることができる。
また酸二無水物成分の例としては、特に制限はされず、例えばピロメリット酸二無水物、3-フルオロピロメリット酸二無水物、3,6-ジフルオロピロメリット酸二無水物、3,6-ビス(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’’,4,4’’-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’’’,4,4’’’-クァテルフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’’’’,4,4’’’’-キンクフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、メチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1-エチニリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-へキサフルオロプロパン二無水物、ジフルオロメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1,2,2-テトラフルオロ-1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロ-1,3-トリメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロ-1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5-デカフルオロ-1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、チオ-4,4’-ジフタル酸二無水物、スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルシロキサン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3-ビス〔2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル〕ベンゼン二無水物、1,4-ビス〔2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル〕ベンゼン二無水物、
ビス〔3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕メタン二無水物、ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕メタンニ無水物、2,2-ビス〔3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,2-ビス〔3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、カルボニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、メチレン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,1-エチニリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-プロピリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、オキシ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、チオ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、スルホニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、2,2’-ジフルオロ-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’-ジフルオロ-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、6,6’-ジフルオロ-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,5,5’ ,6,6’-ヘキサフルオロ-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、6,6’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,5,5’,6,6’-ヘキサキス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、
3,3’-ジフルオロオキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’-ジフルオロオキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、6,6’-ジフルオロオキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’-ヘキサフルオロオキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、6,6’-ビス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’-ヘキサキス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’-ジフルオロスルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’-ジフルオロスルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、6,6’-ジフルオロスルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’-ヘキサフルオロスルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、6,6’-ビス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’-ヘキサキス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’-ジフルオロ-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’-ジフルオロ-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、6,6’-ジフルオロ-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’-ヘキサフルオロ-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、6,6’-ジフルオロ-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’-ヘキサキス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、9-フェニル-9-(トリフルオロメチル)キサンテン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(トリフルオロメチル)キサンテン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ〔2,2,2〕オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシ)フェニル〕フルオレン二無水物、9,9-ビス〔4-(2,3-ジカルボキシ)フェニル〕フルオレン二無水物等が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して、使用することができる。
ポリアミド酸溶液は、前記のジアミンと酸二無水物を適当な配合比で適当な有機溶媒中で攪拌することで作製できる。ここで有機溶媒としては、ポリイミド製造の際に一般に用いられる公知の有機溶媒で特に問題なく、例としてN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホンなどの他、これらの2種以上の混合物、あるいはこれらの溶媒とベンゼン、トルエン、キシレン、ベンゾニトリル、ジオキサン、シクロヘキサンなどとを適宜混合させたものなどが挙げられる。
ポリイミドフィルムの製造方法としては、前記のポリアミド酸溶液を通常、キャスティングドラムあるいはエンドレスベルトの上にフィルム状に押し出しあるいは流延塗布し、そのドラム又はベルトの上で脱水閉環させてポリイミドに転化させ、さらにこれを自己支持性を備える程度に硬化させた後、そのポリイミドフィルムをドラムあるいはベルトから剥離して、ポリイミドフィルムを製造することができる。ここでポリアミド酸溶液を塗布する支持体は、キャスティングドラムやエンドレスベルトに限るものではなく、ガラス基板上、金属箔上、PETフィルム上などに塗布した後に剥離することも可能である。
本発明方法において、ポリイミドフィルムの厚さは特に限定されず、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜50μmであり、より更に好ましくは25μm程度である。このような厚みのポリイミドフィルムを用いることで、フィルム自体が適度な剛性を持つためにフィルムの搬送性が良くなり、フィルムの破断やねじれなどのトラブルを回避することができる。また10〜50μmと薄くすることで、回路加工や多層積層化の時の穴あけ加工性が良くなり、如いてはフレキシブルプリント配線板製造時の低コスト化につながる。
また本発明方法において、DMAc及び/又はNMPでポリイミドフィルム表面を処理する方法の一例を挙げると、ポリイミドフィルムをロール・ツー・ロール方式で搬送するライン中に、前記の極性溶媒が溜められた液槽を用意し、その液槽中を一定速度で一定方向に搬送した後、エアーナイフを用いてポリイミドフィルム表面に付着している残留溶媒を乾燥することで、ポリイミドフィルムの極表面層を膨潤剥離することができる。ここで、液槽中に滞留する時間と温度は1分以上で且つ常温(23℃)以上であるならば特に規制するものではないが、10〜30分で且つ50〜60℃程度であることが好ましい。
本発明方法において、熱可塑性ポリイミドとは、ガラス転移温度を有し、且つ180℃以上の高温で弾性率が100MPa以下と低くなり接着性を有するポリイミドのことを示すものとする。熱可塑性ポリイミドとしては、公知のジアミンと酸二無水物から得られる公知の熱可塑性ポリイミドを使用することが可能である。これらの原料のジアミン及び酸二無水物の例としては、前述のポリイミドフィルムの原料の例示を示すことができる。より好ましくは、下記に示されるような熱可塑性ポリイミドが例として挙げられる。
また、熱可塑性ポリイミド前駆体には、更にマイレイミド化合物を添加することも好ましい態様であり、より好ましくは下記式
で表されるビスマレイミド化合物を共重合したものを用いることができる。ビスマレイミド化合物を共重合することにより、ポリイミドの弾性率の向上が期待され、如いては耐熱性の向上が期待できる。ビスマレイミド化合物の添加許容量は、熱可塑性ポリイミド前駆体に対し、5〜20wt%程度が好ましい。
本発明方法において、熱可塑性ポリイミド層の形成の好ましい一例としては、ギャップ500μm以下に制御されたロールコーターによって膨潤処理されたポリイミドフィルム表面に薄く塗布し、およそ240℃・10分間程度乾燥することで形成することが可能である。このとき形成される熱可塑性ポリイミド層の厚みは特に限定されないが、0.1μm以上5μm以下程度が好ましい。
本発明方法において用いることのできる金属箔には、特に限定はなく、銅箔、ステンレス箔、アルミ箔、金箔、銀箔及びこれらの合金等が挙げられるが、銅箔及び銅合金が好ましい。金属箔の厚みは特に限定するものではないが、製造時の搬送性から5μm〜50μm程度のものが好ましい。
接着性ポリイミドフィルムと金属箔の加熱圧着方法の好ましい例として、金属箔を2箇所から、接着性ポリイミドフィルムを1箇所からフィードする3層ラミネーターを例として説明する。熱風によって270℃程度まで昇温された炉内に接着性ポリイミドフィルムを挟むようにして金属箔を2箇所からフィードし、これら金属箔と接着性ポリイミドフィルムを熱媒によって260℃まで昇温された2つの耐熱性ゴムロールにてラミネートする。このときの金属箔、及び接着性ポリイミドフィルムの炉内での滞留時間は、1分以内であることが好ましい。また、2つの耐熱性ゴムロール間のギャップは、500μm以下に制御することで、圧着抜けやシワの発生を抑制することが好ましい。
本発明方法のより詳細な条件の一例について説明する。まず、市販ポリイミドフィルム表面をNMP溶液を浸した液槽中に温度50℃の状態で30分間浸漬する。浸漬後、液槽から取り出したポリイミドフィルムの表面に付着したNMP溶液を、エアーガンを用いて常温乾燥し、膨潤処理済みのポリイミドフィルムを作成する。次に、さらにその上に熱可塑性ポリアミック酸溶液(熱可塑性ポリイミド前駆体溶液)を同様にアプリケーターにより塗布した後、すばやく窒素雰囲気下で10分間、温度240℃において乾燥・イミド化することで、厚み2〜3μm程度の熱可塑性ポリイミド層を形成する。以上のプロセスによって作製した接着性のポリイミドフィルムに対して、厚み18μmの圧延銅箔((株)日鉱マテリアルズ:BHYシリーズ)の粗化処理面を貼り合せた後、300℃、1時間、100kg/cm2の真空熱プレスによってポリイミドフィルムと圧延銅箔を接着してポリイミド金属箔積層板を製造することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。尚、実施例、比較例でおこなった評価は以下の方法にしたがっておこなった。
金属箔張積層板の引き剥がし強度(ピール強度)測定:
測定方法は、IPC−TM−650 methodに順じ、銅箔部分をエッチング加工することにより長さ50mm、幅3.2mmの銅箔パターンをMD、TD方向それぞれに形成し、その銅箔パターンを基板に対して90度方向に50mm/minの速度で引き剥がすことで実施した。それぞれ3回行なった。
実施例1
市販のポリイミドフィルム((株)カネカ製、商品名:アピカル(登録商標)25NPI(厚み25μm)、)をNMP有機溶媒中に温度50℃の状態で30分間浸漬した。浸漬後、液槽から取り出したポリイミドフィルムの表面に付着したNMP溶液を、エアーガンを用いて常温乾燥し、膨潤処理済みのポリイミドフィルムを作成した。さらにその上にジメチルアセトアミド溶媒中に熱可塑性ポリイミド前駆体として3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と1,3-(3-アミノフェノキシ)ベンゼンに1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼンを共重合させたものを窒素雰囲気下、温度240℃で10分間塗布・乾燥して接着性ポリイミドフィルムを得た。この時、熱可塑性ポリイミド層は乾燥後の厚みが2〜3μmとなるようにした。その後、圧延銅箔((株)日鉱マテリアルズ製、BHYシリーズ、厚さ18μm)の粗化処理面を接着性ポリイミドフィルムの接着層と貼り合せた後、300℃・1時間・100kg/cm2の真空熱プレスによってポリイミドフィルムと圧延銅箔を接着し、ポリイミド金属箔積層板を得た。得られたポリイミド金属箔積層板の銅箔とポリイミド層とのピール強度測定を前述の方法に従い、測定した。結果を表1に示す。
比較例1
ポリイミドフィルムを膨潤処理しない以外は、実施例1と同様の操作を行い、ポリイミド金属箔積層板を製造した。得られたポリイミド金属箔積層板の銅箔とポリイミド層とのピール強度測定を前述の方法に従い、測定した。結果を表1に示す。
また、剥離界面の場所についても表1に合わせて記載した。表1より、未処理の銅張積層板では剥離界面がポリイミド/ポリイミド界面であるのに対して、浸漬処理した銅張積層板では剥離界面が銅/ポリイミド界面に完全に移行していることが分かる。これはポリイミドフィルム表面を特定溶媒で浸漬処理することで、ポリイミドフィルムと熱可塑性ポリイミドの接着剤との間の接着性が改善されたことを示している。さらにピール強度に関しては、表1から分かるように浸漬処理した銅張積層板では銅/ポリイミド界面での剥離に移行しているために全体的にピール強度は向上していることが分かる。
以上のように、ポリイミドフィルムを特定溶剤に浸漬処理した銅張積層板では、接着性(ピール強度)が改善されることが分かった。