以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の実施形態に係るカード処理装置の外観を示す斜視図であり、図2は、図1に示すカード処理装置を一部破断して示す概略斜視図である。本実施形態に係るカード処理装置1では、パチンコ台同士の間に設置される台間機に搭載されるものを想定しているが、もちろんこれに限定されるものではなく、設置スペースに制約のある機器全般に適した構成となっている。図1,2において、カード処理装置1は、前面が開放した略直方体形状の筐体2を有し、この筐体2の前面に、着脱自在なフロントカバー3が装着されている。フロントカバー3は、データを読取り及び書込み可能なカード4が挿入されるカード挿入部5を有している。そして、カード処理装置1は、カード挿入部5から挿入されたカード4を筐体2内に複数枚保管可能になっていると共に、カード4に対して情報の読取り又は書込み(以下、「読み書き」という)を行うようになっている。なお、本実施形態では、カード処理装置1は5枚のカード4を保管できるようになっている。
筐体2は、約4.0cmの幅を有し、更に、一般的に汎用されているカードサイズ(54×86mm)のカード4を横長に起立した状態で抜き差し及び収納できる高さと奥行きを有している。そして、筐体2内には、後述するカード保持ユニット12、前後移動駆動装置30、左右移動駆動装置40、ロック解除ユニット50、制御ユニット60、読み書き装置70等の各部材が備えられている。また、筐体2は、カード保持ユニット12の可動範囲を確保するため、カード保持ユニット12の両側に可動空間2A,2B(後述する)を有している(図4参照)。なお、以下の説明では、図2に示すように、カード4を抜差しするX方向(カード挿入方向)を前後方向とし、それに交差するY方向を左右方向とする。
カード4は、各種情報を記憶するICチップ4aを内蔵した厚さ0.8mm程度のICカードであり、RFID(Radio Frequency Identification)システムにより各種情報の読取りや書込みが行われるようになっている。RFIDシステムには、近傍型と近接型とがあり、近接型は、近傍型より読み書きを行うヘッドが読み書き対象のカードに接近した状態で読み書きを行うようになっている。本実施形態に係るカード処理装置1は、近接型のRFIDシステムに適用されるものであり、カード4はそれに適合する構造となっている。
フロントカバー3は、正面外側の高さ方向中央に適宜窪んだカード把持用の凹部21を有し、この凹部21を含むようにして高さ方向に長く形成されたカード挿入部5を有している。カード挿入部5は、横長に起立した状態のカードを抜差し可能な高さと、カード4の厚さに対応して、その厚さよりも2倍程度大きい幅の開口(カード挿入口)23を有し、図4に示すように、内側に厚さ規制部13が設けられている。カード挿入部5は、厚さ規制部13において、開口23の左右方向の幅がカード4の厚さの約1.5倍に狭められている。これにより、カード挿入部5に挿入可能なカード4の枚数は1枚のみとなり、一度に複数枚のカード4が挿入されないようになっている。
ここで、カード4は、後述するように、ばねの付勢によって筐体2から排出される。このため、厚さ規制部13の幅が狭すぎる場合、例えば、筐体2内にカード挿入部5から折り曲げられた変形カードが挿入されたとき、ばねの付勢だけではカード4を筐体2外に排出することができない虞がある。したがって、厚さ規制部13は、後述するカードガイド6の可動範囲と重ならないように前方に位置している。
図3は、図1に示すIII−III線概略断面図であり、図4は、図3に示すIV−IV線で切断したときのカード処理装置1の概略断面図である。図3,4に示すように、カード保持ユニット12は、5つのカードケース8(8a,8b,8c,8d,8e)と、これらのカードケース8を収容するケースマガジン9とを有している。1つのカードケース8では1枚のカード4を保持するようになっており、カード保持ユニット12は、複数のカードケース8によって複数枚(本実施形態では5枚)のカードを収納できるようになっている。なお、図3では、カード未納状態のカードケース8を示している。
各カードケース8は、カードガイド6と、カードストッパ7と、ケースプレート10およびロック部11を有していて、横長に起立した状態のカード4を1枚収納できるようになっている。各カードケース8は、ケースマガジン9の中に、各カードガイド6の後述する開放端6eの向きをカード挿入部5側に揃えてケースプレート10の平板部10aに交差する方向(左右方向)に並列されている。また、カードケース8は、ケースマガジン9の中を各々前後方向(カード挿入方向)にスライド移動可能となっている。
また、フロントカバー3内の上方には、ケースプレート10の後述する位置決め用突起10hが嵌入して当接する位置決め用のガイド溝14aを有する位置決め部14が設けられている。
図4に示すように、各カードケース8は、ケースマガジン9の中において、左側(図4の下側であり、ケースマガジン9の後述するサイドプレート24側)から順に、カードガイド6とケースプレート10とが交互に並んでいる。カードガイド6の幅は2.5mm程度であり、隣接するケースプレート10,10の間隔は、3mm程度となっている。そして、カード4は、幅2.5mm程度の収納領域10Aに保持されるようになっている。この収納領域10Aは、図4に示すように、ケースプレート10に一体的に形成された後壁部10b及びカードガイド6の厚さにより確保される。なお、図4の下側(サイドプレート24側)に配されたカードケース8では、ケースプレート10とサイドプレート24とに挟まれた領域が収納領域10Aとなり、ここにカード4が収納されるようになっている。また、図4は、カード4が2枚保管された状態のカード処理装置1を示している。
図5は、カードガイド6を示す側面図である。カードガイド6は、互いに対向する上片6aおよび下片6bと、後片6cとによって構成された略U字状のフレーム構造となっており、収納領域10Aを確保するため、カード4の厚さよりも若干厚く形成されている。そして、上片6a、下片6b及び後片6cに囲まれた領域6Aに、横長に起立した状態のカード4が収納されるようになっている。また、領域6Aは、カード4の外形に対応した形状となっており、カードガイド6の後片6cに対向する側は、カード4が抜き差しされるための開放端6eとなっている。
また、各カードガイド6は、図3に示すように、上片6aと下片6bのそれぞれにばね15a,15bが固定されていて、このばね15a,15bに支持されたまま、各ケースプレート10の平板部10aに接触した状態で保持され、平板部10aに沿って前後に移動可能となっている。
更に、各カードガイド6は、上片6aにおける開放端6eの近傍にラック部6fを有し、後片6cの近傍に係止突起6gを有している。そして、このラック部6fがカードストッパ7の後述する歯車部7dと噛み合わさり、係止突起6gがロック部11に係合および離脱可能になっている。
再び図3を参照して、カードストッパ7は、軸7aによってケースプレート10の上側端部に軸止され、軸7aを中心に回動するようになっている。このカードストッパ7は、軸7aにより軸止されているアーム部7bの一端に係止片7cを有し、アーム部7bの他端に歯車部7dを有し、この歯車部7dが各カードガイド6のラック部6dと噛合している。この歯車部7dとラック部6fとの噛み合わせにより、カードストッパ7が、カードガイド6の平板部10aに沿う前後移動に連動し、開閉状態が切換可能になっている。すなわち、カードガイド6が前後方向に移動(スライド)すると、歯車部7dとラック部6fとの噛合によりカードストッパ7が軸7aを中心に回動し、この回動に合わせて係止片7cが回動する。これにより、係止片7cが開放端6eの一部を塞ぐ又は開放して開閉状態を切替え、カード4の抜差可能状態と抜差不能状態とが切替わるようになっている。
ケースプレート10は、平板部10aと、後壁部10bとを有している。平板部10aは、カードガイド6よりも大きく、カードガイド6を保持可能な大きさの平板状に形成され、手前側に凹部21に対応した切欠部10cを有し、内側に後述する読み書き装置70のヘッド71を挿通可能なヘッド挿通孔10dを有している。このヘッド挿通孔10dは、ヘッド挿通孔10dを挿通したヘッド71がICチップ4aにアクセス可能な様に、カードケース8に収納されたカード4におけるICチップ4aに対応する位置(ICチップ4aの左右方向)に設けられている。また、ケースプレート10は、平板部10aの上部に、手前側から順に、カードストッパ7の軸7aが軸止され、ばね15aのカードガイド6固定側の反対側端部が固定され、さらにロック部11が軸止されている。また、平板部10aの下部には、ばね15bにおけるカードガイド6固定側の反対側端部が固定され、さらに、前後方向のほぼ中間に切欠部10eを有している。
そして、各ケースプレート10は、ケースマガジン9の中に、カードガイド6、カードストッパ7及びロック部11と共に一体的に左右方向に配列して収納され、かつケースマガジン9の後述する案内ローラ16に案内されながら、平板部10aに沿って前後に移動するようになっている。ケースプレート10の上部には、上述したように、位置決め用突起10hが設けられている。そして、ケースプレート10が平板部10aに沿って前方に移動した際、フロントカバー3に設けられた位置決め部14のガイド溝14aに上記位置決め用突起10hが嵌入して当接することにより、後述する読み書き可能な位置に正確に位置決めされるようになっている。
ロック部11は、ケースプレート10の上側端部の後側に軸止されている。このロック部11は、カードガイド6の係止突起6gに係合および離脱可能な爪部11aと、バネ部11bとを有している。
図6は、本実施形態に係るケースマガジンを示す平面図であり、図7は、本実施形態に係るケースマガジンを示す正面図である。また、図8は、図7に示すケースマガジンの左側面図であり、図9は、図7に示すケースマガジンの右側面図である。これらの図において、ケースマガジン9は、2枚の板状のサイドプレート24,25と、回転軸16a,16aとを有し、更に、案内ローラ16,位置決め棒17、押圧部18およびラック部19を有している。また、ケースマガジン9は、横軸9a,9bによって左右方向へのスライドが案内されるようになっている。
サイドプレート24,25は、ケースプレート10よりも大きく、位置決め棒17及び回転軸16a,16aにより接続され、それぞれ筐体2内部の左側および右側に配置されている。このうち、左側に配置されるサイドプレート24は、図8に示すように、ヘッド71を挿通可能なヘッド挿通孔24aを有している。このヘッド挿通孔24aは、ケースプレート10のヘッド挿通孔10dとほぼ同一の形状であり、ヘッド挿通孔10dと同様に、カードケース8に収納されたカード4におけるICチップ4aに対応する位置に設けられている。案内ローラ16は、サイドプレート24,25の下側における前方および後方箇所に軸止された回転軸16a,16aの回りに回転自在に、カードケース8の個数に対応して前後5つづつ設けられ、各案内ローラ16が各カードケース8(各ケースプレート10)の前後移動を案内するようになっている。
位置決め棒17は、サイドプレート24,25の後側に備えられており、その両端がサイドプレート24,25に固定されている。この位置決め棒17は、各カードケース8の後方向の移動を規制し、後方向の位置決めをするために設けられている。
押圧部18は、板ばね18aと、押圧突起18bと、ばね受部18cとを有している。板ばね18aは、一端がばね受部18cに固定され、他端に押圧突起18bが固定されている。押圧突起18bは、サイドプレート24,25の間に納まる幅を有し、板ばね18aにより、下方向に押さえつけられるようになっている。ばね受部18cは、サイドプレート24,25の内面に軸止されており、図7に示すように、その下側の表面に、各カードケース8(の各ケースプレート10)を案内する案内溝18dが5つ形成されている。ラック部19は、サイドプレート24,25の間に納まる長さに形成され、サイドプレート24,25の間の下側部分に固定されている。
再び図3を参照して、前後移動駆動装置30は、筐体2の下側(底部)に設置されている。この前後移動駆動装置30はDCモータ31、複数のギア32a,32b,32c、前後の移動量を検出するセンサ(図示せず)、トルクリミッタ33、押出突起34を有し、カード挿入部5に対応する位置にあるカードケース8を前後方向に移動させ得るようになっている。すなわち、前後移動駆動装置30は、DCモータ31が駆動することにより、その駆動力がモータ軸上のギア32aからウォームギア32b、ラックギア32cへと順に伝達され、その後、ラックギア32cから押出突起34に駆動力が伝達されて押出突起34が前後に移動するようになっている。押出突起34は、切欠部10eに納まっているが、切欠部10eよりも小さいので、両者の寸法差が遊びとなっている。そして、押出突起34の移動量は上記センサにより検出するようになっている。
左右移動駆動装置40は、筐体2の下側(底部)における前後移動駆動装置30の後側に設置されている。この左右移動駆動装置40は、ステッピングモータ41と、複数のギア42a,42bと、図示しないセンサとを有し、ケースマガジン9を各カードケース8と共に左右方向に移動させ得るようになっている。すなわち、左右移動駆動装置40は、ステッピングモータ41が駆動することにより、その駆動力がモータ軸上のギア42a、42bに伝達され、ギア42bからラック部19に伝達される。すると、図6に示すギア42bの矢印R方向の回転に伴い、ケースマガジン9が各カードケース8とともに左右方向に移動するようになっている。そして、その左右方向の移動量をセンサにより検出するようになっている。
ロック解除ユニット50は、DCソレノイド51と、リリースプレート52とを有している。このロック解除ユニット50は、DCソレノイド51により、リリースプレート52を移動させて、ロック部11を上下に回動させるようになっている。
制御ユニット60は、図示しないCPU(Central Processing Unit),ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)等を有している。この制御ユニット60は、カード処理装置1内に設けられた各種センサから信号を入力する一方、ROMに記憶されている制御プログラムにしたがいCPUが作動することにより、各種の制御信号を出力して、前後移動駆動装置30、左右移動駆動装置40、ロック解除ユニット50および読み書き装置70の動作を制御する。
読み書き装置70は、図13に示すように、筐体2の左側に設置されている。この読み書き装置70は、読み書きを行うヘッド71と、ヘッド案内部材72、ばね73と、支持部材74とを有している。ヘッド案内部材72は、ヘッド71が裏面に固定され、そのヘッド71と反対側に平坦部72aを有し、この平坦部72aが各ケースプレート10のヘッド挿通孔10dを挿通し、カード4に接触するようになっている。また、ヘッド案内部材72は、平坦部72aからアーム部72b、ばね受け部72cを介して支持部材74により回動自在に支持されている。ばね73は、ばね受け部72cと支持部材74とに介在していて、ばね受け部72cを右方向に付勢している。支持部材74は、筐体2の内側面に固定され、ヘッド案内部材72のばね受け部72cを回動自在に支持している。この構成により、平坦部72aは、右方向に付勢されてヘッド挿通孔10dを挿通し、収納されたカード4の表面にばね73の付勢力をもって接触する。なお、カード4がカードケース8に新たに挿入された場合、平坦部72aは、カード4が収納される位置よりもやや右に位置した状態から、挿入されたカード4に押されて左方向に回転し、カード4の表面に接触することになる。
次に、以上の構成を有するカード処理装置1の動作内容について、図3,4,10〜15を参照して説明する。
カード処理装置1にカード4が1枚も保管されていない状態で、ユーザがそのカード処理装置1に対し1枚のカード4を新規に挿入した場合、カード4は、まず、カードケース8eに収納される。続いて、2枚目のカード4を挿入したときは、カードケース8eの隣に並列したカードケース8dに収納される。さらに3枚目以降のカード4を挿入したときは、カードケース8c,8b,8aという順にそれぞれ収納される。
一方、カード4を抜き取るときは、上述した収納の場合とは逆に、カードケース8a,8b,8c,8d,8eが、順にカード挿入部5の後方に配置されてカード抜取り動作が順次行われる。この場合は、ケースマガジン9が左方向に順次移動する。
このようなカードケース8では、ケースマガジン9の移動に伴って左右方向に移動するときを除いて、カード4が収納されたカードケース8の左隣に位置する空の状態のカードケース8が後述する前進配置(他のカードケース8よりもカード挿入部5に近づいた状態)となっている。そして、その状態でユーザからの指示を待ち受ける。なお、いずれのカードケース8もカード4を収納していない場合は、一番右側に位置するカードケース8eが前進配置となる。
図10は、カードケースが前進配置となっているときのカード処理装置内を示す概略断面図であり、図11は、図10に示すXI−XI線で切断したときのカード処理装置の概略断面図である。カード処理装置1は、制御ユニット60の制御にしたがって前後移動駆動手段30におけるDCモータ31が作動し、押出突起34に駆動力が伝達され、切欠部10eに沿って押出突起34が前進して切欠部10eの壁部10fに当接し、ケースプレート10自体を前進させる。これにより、カードケース8が前進し(以下、カードケース8が前進した状態を「前進配置」という)、カードが収納可能な状態(受け入れる状態)となる。
前進配置のカードケース8が空の状態から、ユーザがカード挿入部5からカード4を横長に起立した状態で挿入することによってカードケース8にカード4が収納されると、図10に示すように、カード4がカードケース8aにおけるカードガイド6の開放端6eから収納領域10Aに納まる。
さらに、カード4を押し込むと、カード4が後片6cに当接してカードガイド6が後方向に移動(後退)し、このカードガイド6の後退に連動して、カードストッパ7が回動する。そして、カード4の押し込み量が所定量に達すると、係止片7cが開放端6eの一部を塞ぎ、カード4の縁に圧接する状態となる。つまり、カード4をカードケース8に収納すると、カードストッパ7が閉まり、ユーザがカード4を自由に抜差しできないようになる。
また、このとき、カードガイド6の係止突起6gがロック部11の爪部11aに係合し、カードガイド6の前後位置が固定される。これにより、図12に示すように、カード4がカードケース8aにおけるカードガイド6に保持された状態(カード保持状態)が得られる。しかも、このカード保持状態では、カードガイド6の後退により、ばね15a,15bが引き伸ばされているため、カードガイド6が前方に付勢されている。
そして、カード4がカードガイド6に保持されたカード保持状態になったことを、図示しないセンサが検出すると、制御ユニット60の制御により、後述する情報の読み書き可能状態に移行する。なお、この読み書き可能状態になったときに、制御ユニット60の制御により、図示しないLED(Light Emitting Diode)を点灯させるなどしてユーザに読み書き可能状態であることを通知するようにしてもよい。
次に、情報の読み書きが行われた後のカード保持状態において、ユーザからカード4の取り出しの指示を受けた場合について説明する。ユーザからのカード4の取り出し指示を通知する信号が制御ユニット60に入力されると、制御ユニット60が取り出し命令をロック解除ユニット50に出力してDCソレノイド51を作動させ、リリースプレート52を移動させる。このとき、リリースプレート52がロック部11を上下に回動させるため、カードガイド6の係合が解除される。すると、カードガイド6は、ばね15a,15bに付勢されているため前方に移動(前進)する。このとき、カードガイド6は、前進に連動させてカードストッパ7を回動させ、塞いでいた開放端6eを開放させながら前進する。すると、カードガイド6とともにカード4が所定量前進し、カード挿入部5から所定量突出する(図10参照)。ユーザは、この突出部分をつまんで、カード4を取り出すことができる。このように、正常な作業としてカード抜取りを行いたいときは、カードガイド6に対するカードストッパ7の閉鎖状態が解除されるようになっているから、抜差し動作に影響が及ぶことはない。
次に、情報の読み書きが行われた後のカード保持状態において、ユーザからカード4をカード処理装置1内へ保管する指示を受けた場合について説明する。ユーザからの指示を受けると、まず、制御ユニット60の制御にしたがって、前後移動駆動手段30におけるDCモータ31が作動して押出突起34に駆動力が伝達され、抜差し操作の対象のカードケース8における切欠部10eに沿って押出突起34が前進して切欠部10eの壁部10f(図3参照)に当接し、ケースプレート10自体を案内ローラ16により案内させながら後方向へ、位置決め棒17に当接するまで移動(後退)させる。これにより、ケースプレート10が位置決め棒17により後方向を位置決めされた状態で配置され(以下カードケース8が後退した状態を「後退配置」という)、カード4がカード処理装置1内へ保管される。なお、図14は、後退配置となっているカードケース8を示している。
次に、カードケース8のうちのいずれか1つが空の状態で前進配置となっているとき、ユーザからカード処理装置1内に保管されているカード4を取り出す指示を受けた場合について説明する。ユーザからの指示を受けると、まず、制御ユニット60の制御にしたがって、前後移動駆動手段30におけるDCモータ31が作動して押出突起34に駆動力が伝達され、前進配置となっていた空のカードケース8における切欠部10eの壁部10fが後方向へ移動(後退)される。これにより、前進配置となっていた空のカードケース8が後退配置となる。次に、制御ユニット60の制御にしたがい、左右移動駆動装置40を作動させてステッピングモータ41に駆動力を生成させ、ケースマガジン9をカードケース8a〜8eとともに左方向に移動させ、取り出し対象のカード4を収納したカードケース8をカード挿入部5の後方に配置させる。このときの「取り出し対象のカード4を収納したカードケース8」は、前進配置となっていた空のカードケース8の右隣に位置するカードケース8である。次いで、制御ユニット60の制御にしたがい、前後移動駆動手段30におけるDCモータ31が作動して、押出突起34が切欠部10eの壁部10fを前方向へ移動させ、取り出し対象のカード4を収納したカードケース8を前進させる。そして、制御ユニット60が取り出し命令をロック解除ユニット50に出力してDCソレノイド51を作動させ、リリースプレート52を移動させる。すると、上述したように、カードガイド6の係合が解除されると共にカードストッパ7が回動し、塞いでいた開放端6eを開放させながらカードガイド6が前進する。これにより、カード4は、カードガイド6とともに所定量前進し、カード挿入部5から所定量突出する。ユーザは、この突出部分をつまんで、カード4を取り出すことが可能となる。
このようなカード処理装置1において、カード4を保管するときは、ケースマガジン9が右方向に移動して、カードケース8に順次カード4が収納されることとなる。カード4が5枚収納された満杯収納状態になったとき、ケースマガジン9は筐体2内部右側の可動空間2B内に移動した状態となり、サイドプレート25が筐体2の右側面に近接することになる。なお、図4は、カードケース8d,8eにそれぞれカード4が収納された状態を示している。
以上のようにして、カード処理装置1は、カード4を複数枚(5枚)保管することができる。その各カード4は、それぞれカードケース8に収納されるが、各カードケース8は、カードガイド6における開放端6eの向きを前方に向けるように揃えて、それぞれの平板部10aの交差方向に配列されている。つまり、カード処理装置1は、各カード4を収納するカードケース8が並列配置されているため、複数枚のカードを保管可能でありながら、保管されるカード4がカードの長さ方向(カード挿入方向)に並ばないようになっている。したがって、一般的に汎用されているカードサイズのカード4を複数枚保管可能としながら、カード処理装置1を小型化することができる。これにより、カード処理装置1は、寸法制約の大きい機器に適した構造を有したものとなる。
一方、カード処理装置1は、各カード4を収納するカードケース8がカードストッパ7を有し、このカードストッパ7により、収納されたカード4の抜取りや別のカード等の別部材を外から差し込むことなどができないようになっている。そのため、カードケース8にカード4が収納され、カードストッパ7が閉鎖しているときに、その収納されているカード4に対する不正行為を防ぐことができる。
次に、本実施形態に係るカード処理装置によるカードへの読み書き状態について説明する。
図12は、読み書き時のカード処理装置内を示す概略断面図であり、図13は、図12に示すXIII−XIII線で切断したときのカード処理装置の概略断面図である。カード処理装置1は、上述した読み書き可能状態になると、以下のようにしてカード4に対する情報の読み書きを行う。
カード処理装置1は、複数のカード4が保管されているときは、最も左側に保管されているカード4を対象として読み書き動作を実行する。例えば、図13に示すように、3枚のカード4がカードケース8c、8d、8eに収納されているときは、カードケース8cに収納されているカード4を対象に読み書き動作を実行する。このとき、上述したように、ヘッド71による読み書き対象のカード4が収納された対象のカードケース(対象カードケース)8cのみがカード挿入部5の後方で前進配置となっており(図12および図13参照)、他のカードケース8は、カード挿入部5から左右方向にずれた位置で後退配置となっている。
前進配置となっている対象カードケース8は、上述したように、フロントカバー3内の上方に備えられた位置決め部14によって前進配置に位置決めされている。詳しくは、図15に示すように、前方に移動する対象カードケース8が、位置決め部14に設けられた位置決め用のガイド溝14aに位置決め用突起10hが嵌入し当接することによって、カード4の厚み方向及びカード挿入方向に位置決めされている。これにより、カード4が正確に読み書きできる位置に容易かつ確実に停止される。
カード4が読書きできる位置にある場合、ヘッド71およびヘッド案内部材72は、サイドプレート24のヘッド挿通孔24aおよびカード未収納のカードケース8(ここでは、カードケース8a,8b)におけるケースプレート10のヘッド挿通孔10dを挿通している。そして、ヘッド案内部材72の平坦部72aがばね73の付勢力によりカード4の表面に接触するとともに、ヘッド71はカード4に内蔵されたICチップ4aの近傍に配置される。このとき、平坦部72aの厚さは約1mm程度であるので、カードの厚みのほぼ中央に配置されたICチップ4aとヘッド71との距離は近接型のRFIDシステムに必要な1.2〜2.4mmを保持することができる。
ヘッド案内部材72は、左右方向の位置を自在に変えることができるとともに、ばね73により付勢されていることにより読み書きの対象とするカード4にヘッド案内部材72を押し付けることができる。したがって、変形したカード4であっても、ヘッド案内部材72がカード4の表面の変形に追従し、ICチップ4aとヘッド71との距離を確実に保てる。これにより、正確かつ確実にカード4への情報の読み書きが可能になる。カード処理装置1では、この読み書き可能状態で制御ユニット60から読み書き開始命令が読み書き装置70に入力されると、カード4に記憶されている情報の読取りまたはカード4への書込みを行う。
本実施形態に係るカード処理装置1では、各カードケース8を左右方向に並列状に配置し、ヘッド71が配置されている側と反対の右側のカードケース8から順にカード4を収納する制御としているので、サイドプレート24のヘッド挿通孔24aおよびカード未収納のケースプレート10のヘッド挿通孔10dを通してヘッド71が対象カードケース8に収納されたカード4のICチップ4aに近接可能になり、簡単な装置構造でカード4への情報の読み書きが可能になる。さらに、本実施の形態に係るカード処理装置1では、図13に示すように、各カードケース8とヘッド71とがともに左右方向に並列状に配置されている。これにより、前後に大きなスペースが不要となり、設置スペースが前後に制約された場所に非常に適したものとなる。
また、図12,13に示すように、読み書き時における読み書き対象のカード4は、カード挿入部5の開口(カード挿入口)23に差し込まれた状態で読み書きが行われる。これにより、開口23がカード4によって塞がれた状態となるため、カード処理装置1内に保管されている他のカード4に対し、開口23からの不正なアクセスを防止することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、非接触型の読み書き方式であるRFIDシステムを適用した場合について説明したが、接触型や磁気式のカード読み書き方式を適用してもよい。
1…カード処理装置、4…カード、6…カードガイド、8a〜8e…カードケース、10…ケースプレート、10d…ヘッド挿通孔、23…開口(カード挿入口)、71…ヘッド。