JP4439231B2 - アキシャルピストン型流体モータ - Google Patents

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Description

この発明は、タイミングプレートを改良したアキシャルピストン型流体モータに関する。
従来のアキシャルピストン型流体モータとしては、例えば以下の特許文献1に記載されているようなものが知られている。
特開2000−97146号公報
このものは、ケーシングと、ケーシング内に収納され、軸線回りに回転可能なシリンダブロックと、シリンダブロックに形成されたシリンダ室に摺動可能に挿入され、シリンダ室への流体の給排により突出あるいは引っ込む複数のプランジャと、前記ケーシングとシリンダブロックとの間に介装された状態でケーシングに取付けられ、前記シリンダ室への流体の給排を行う弧状をした一対の流体ポートを有するタイミングプレートとを備え、該タイミングプレートのシリンダブロックと摺接する摺接面で、高圧側流体ポートにおけるシリンダブロックの回転方向後側端に低圧側流体ポートに向かって延びる切欠き溝が形成されたものである。
しかしながら、このような従来のアキシャルピストン型流体モータにあっては、切換弁を高速で切換えて流体モータに急激な起動動作あるいは停止動作を行わせると、前記切欠き溝から略 180度だけ離れた部位のタイミングプレート、シリンダブロックに摺動傷や焼き付きが発生することがあるという課題があった。
このため、本発明者は鋭意研究を重ね、前述した摺動傷、焼き付きが以下のような理由により発生することを知見した。即ち、流体モータの作動時、シリンダブロックとプランジャとの間には、通常、流体が潤滑膜として存在しているため、プランジャはシリンダ室と同軸関係を保持しながら、円滑に突出したり引っ込んだりしている。
これに対し、シリンダブロックの回転によりプランジャが前記切欠き溝の回転方向直後まで移動してきたときのみ、該プランジャは引っ込み側ストロークエンドから若干量突出した状態にあり、しかも、シリンダ室に対して高圧流体が供給されていない(供給開始直前である)という理由から、シリンダ室内の流体が不足気味となる。しかも、この状態でプランジャの先端部には回転方向の横力が作用しているため、該プランジャは前記横力によってシリンダ室内で僅かに回転方向に傾斜し、これにより、前述した流体の潤滑膜が切れてプランジャ、シリンダブロック(金属)同士が一部で直接摺接するようになり、突出途中のプランジャからシリンダブロックに突出側に向かう引き寄せ力が付与される。
ここで、流体回路を流れる高圧流体の圧力が通常のライン圧であるときには、スプリングの付勢力等によってタイミングプレート、シリンダブロックはケーシングに押し付けられているため、前述のようにシリンダブロックにプランジャから突出側に向かう引き寄せ力が付与されても、シリンダブロックが傾動するようなことはなく、この結果、シリンダブロックとタイミングプレートとの間に高圧側流体ポートから流体が漏れ出たとしても、それは周方向位置に拘わらずほぼ均一に僅かな量が漏れるだけである。
しかしながら、前述のように切換弁を高速で切換えて流体モータに急激な起動動作あるいは停止動作を行わせると、流体回路に高圧のピーク圧が発生するため、シリンダブロックとタイミングプレートとの間に大きな流体力が作用してこれらが離隔させられるが、このとき、シリンダブロックには前述のように切欠き溝近傍にプランジャから突出側に向かう引き寄せ力が付与されているので、シリンダブロックは前記切欠き溝から略 180度離れた部位を支点として、切欠き溝が形成されている部位付近がタイミングプレートから最も離隔するよう傾動する。
この結果、前記ピーク圧の高圧流体が切欠き溝付近からタイミングプレートとシリンダブロックとの間にある程度の量だけ漏れ出る一方、切欠き溝から略 180度離れ部位においては高い接圧のために流体の潤滑膜が切れ、タイミングプレート、シリンダブロック(金属)同士が直接摺接するようになる。そして、前述のように漏れ出た流体はタイミングプレート、シリンダブロック間を半径方向に流れて半径方向外端からドレン室に流出するが、前述のように漏れ出た流体量がある程度の量であるため、完全にドレン室に流出するためには若干の時間が必要になる。この結果、シリンダブロックとタイミングプレートとは、若干の時間高い接圧で金属同士が摺接することとなり、摺動傷や焼き付きが発生するのである。
この発明は、前記知見に基づきなされたもので、流体モータに急激な起動、停止動作を行わせたときにも、摺動傷や焼き付きの発生を防止することができるアキシャルピストン型流体モータを提供することを目的とする。
このような目的は、ケーシングと、ケーシング内に収納され、軸線回りに回転可能なシリンダブロックと、シリンダブロックに形成されたシリンダ室に摺動可能に挿入され、シリンダ室への流体の給排により突出あるいは引っ込む複数のプランジャと、前記ケーシングとシリンダブロックとの間に介装された状態でケーシングに取付けられ、前記シリンダ室への流体の給排を行う弧状をした一対の流体ポートを有するタイミングプレートとを備え、該タイミングプレートのシリンダブロックと摺接する摺接面で、高圧側流体ポートにおけるシリンダブロックの回転方向後側端に低圧側流体ポートに向かって延びる切欠き溝が形成されたアキシャルピストン型流体モータにおいて、流体ポートより半径方向外側の摺接面にタイミングプレートの半径方向外端まで延びる排出通路を少なくとも1個形成するとともに、いずれかの排出通路と前記後側端の切欠き溝とが少なくとも一部で周方向に重なり合うよう配置することにより、達成することができる。
前述のように流体ポートより半径方向外側に位置するタイミングプレートの摺接面に該タイミングプレートの半径方向外端まで延びる排出通路を少なくとも1個形成するとともに、いずれかの排出通路を、高圧側流体ポートの回転方向後側端に形成された切欠き溝の近傍に、即ち、これら排出通路、切欠き溝同士が少なくとも一部で周方向に重なり合うよう配置したので、流体モータに急激な起動動作あるいは停止動作を行わせることで、シリンダブロックが該切欠き溝から略 180度離れた部位を支点として、切欠き溝が形成されている部位付近がタイミングプレートから最も離隔するよう傾動し、これにより、高圧流体が該切欠き溝付近からタイミングプレートとシリンダブロックとの間にある程度の量漏れ出ても、この漏れ出た流体は切欠き溝近傍の排出通路内に速やかに流入集合した後、その半径方向外端から排出通路外に流出する。この結果、シリンダブロックは傾動から初期姿勢に速やかに復帰して、シリンダブロックとタイミングプレートとが全面で摺接するようになり、摺動傷や焼き付きの発生が防止される。
また、請求項2に記載のように構成すれば、高圧側流体ポートからシリンダブロック、タイミングプレート間に漏れ出た流体を環状溝に流入集合させ、潤滑膜用の流体として一時貯留することができる。また、環状溝への流体の流入量が多い場合には、請求項1に記載の排出通路から周方向に大きく離れた、前側端の切欠き溝に重なり合う排出通路からも流出させることで、環状溝から流体が溢れ出る事態を防止することができる。
さらに、請求項3に記載のように構成すれば、環状溝への流体の流入量が多い場合でも、簡単かつ確実に環状溝から流体を流出させることができる。
また、請求項4に記載のように構成すれば、シリンダブロックとタイミングプレートとの摺接面積を必要値以上に維持しながら、漏れ出た流体を確実に流入集合させた後排出させることができる。
以下、この発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1、2、3において、11はアキシャルピストン型流体モータ、ここでは斜板式流体モータであり、この流体モータ11はケース本体12を有し、このケース本体12の一端面には他方に向かって延びる断面円形の収納室13が形成されている。また、このケース本体12の一端には側板14が図示していないボルト等により固定され、これにより、前記収納室13はその一端開口がこの側板14により閉止されたドレン室となる。前述したケース本体12、側板14は全体として流体モータ11のケーシング15を構成する。
16は一側部が収納室13内に挿入された回転軸であり、この回転軸16は一対の軸受17、18を介して前記ケーシング15に、詳しくは側板14およびケース本体12にそれぞれ回転可能に支持されている。そして、この回転軸16の他端部はケース本体12から突出するとともに、図示していない減速機に連結されている。なお、19は回転軸16の他端部とケース本体12との間に介装されたシール部材である。
23はケーシング15の収納室13内に収納された円筒状のシリンダブロックであり、このシリンダブロック23内には略円筒状をしたスラスト部材24が挿入され、このスラスト部材24と前記シリンダブロック23とはスプライン結合により互いに連結されている。また、前記スラスト部材24は前記回転軸16の外側に嵌合されるとともに、該回転軸16にスプライン結合により連結されており、この結果、これら回転軸16、シリンダブロック23およびスラスト部材24は回転軸16の軸線回りに一体的に回転することができる。
このシリンダブロック23には軸線に平行に延びる複数のシリンダ室25が形成され、これらのシリンダ室25は周方向に等距離離れて配置されている。これらシリンダ室25内には複数(シリンダ室25と同数)のプランジャ26がそれぞれ摺動可能に挿入され、各プランジャ26の先端、即ち他端には球状の球部27が形成されている。また、各シリンダ室25は一端部に前記軸線を中心とする弧状のキドニーポート28を有し、これらキドニーポート28はシリンダブロック23の一端面に開口している。
31はシリンダブロック23より他側のケーシング15内、詳しくはシリンダブロック23の他端面とケーシング15の他側内面との間の収納室13に配置された斜板であり、この斜板31は図示していないピン等によりケーシング15に回転不能に連結されるとともに、その内部を前記回転軸16が貫通している。この斜板31のシリンダブロック23に対向する傾斜面32は軸線に垂直な垂直面に対して傾斜しており、この結果、該斜板31は中央を境界として厚肉部33と薄肉部34とに区分することができる。35はプランジャ26と同数のシューであり、各シュー35には前記球部27のほぼ半分が収納された球穴36が形成されている。
そして、各プランジャ26の先端(他端)はシュー35を介して斜板31の傾斜面32に摺動可能に係合している。この結果、シリンダ室25に流体が供給(流入)されると、プランジャ26はシリンダ室25から徐々に突出しながら厚肉部33から薄肉部34に向かって回転移動し、一方、シリンダ室25から流体が排出(流出)されるときには、プランジャ26はシリンダ室25内に徐々に引っ込みながら薄肉部34から厚肉部33に向かって回転移動する。
38は回転軸16の外側に遊嵌された略リング状のリテーナプレートであり、このリテーナプレート38はシリンダブロック23と斜板31との間に配置されている。また、このリテーナプレート38は全てのシュー35に係合しているとともに、半径方向内端部が前記スラスト部材24の他端部外周に球面接触している。39はシリンダブロック23の一端部内周に係止されたスナップリング40とスラスト部材24との間に配置されたスプリングであり、このスプリング39の付勢力はスラスト部材24、リテーナプレート38を介してシュー35に伝達され、該シュー35を斜板31の傾斜面32に押し付けるとともに、シリンダブロック23に伝達されて該シリンダブロック23および後述するタイミングプレートをシリンダケース15の一側内面、即ち側板14に押し付ける。
42はシリンダブロック23とケーシング15、詳しくは側板14との間にこれらに面接触した状態で介装され、シリンダブロック23より若干大径のリング状をしたタイミングプレートであり、このタイミングプレート42は前記ケーシング15にピン等を介して回転不能に取付けられている。このタイミングプレート42には軸線を中心とする長弧状をした一対の流体ポート43、44が形成され、前記流体ポート43はプランジャ26の突出側ストロークエンドと引っ込み側ストロークエンドを結ぶ直線の片側に、また、流体ポート44は前記直線の残り片側に配置され、互いに周方向に 180度離れている。
45、46はケーシング15、詳しくは側板14に形成された流入出通路であり、前記流入出通路45は流体ポート43に、流入出通路46は流体ポート44にそれぞれ常時連通している。これら流入出通路45、46は図示していない切換弁を介して流体ポンプおよびタンクに接続され、前記切換弁が切り換えられることによりいずれかが高圧(供給)側に、残りが低圧(排出)側となる。
そして、前記流入出通路45が流体ポンプに接続されて高圧側になり、流入出通路46がタンクに接続されて低圧側となったときには、高圧側の流体ポート43が流入出通路45から供給された高圧流体を前記直線の片側に位置するシリンダ室25に導く一方、低圧側の流体ポート44が直線の残り片側に位置するシリンダ室25から排出された低圧流体を流入出通路46に導き、シリンダブロック23を図2に矢印で示す方向に正回転させる。
これとは逆に、流入出通路46が流体ポンプに接続されて高圧側になり、流入出通路45がタンクに接続されて低圧側となったときには、高圧側の流体ポート44が流入出通路46から供給された高圧流体をシリンダ室25に導く一方、低圧側の流体ポート43がシリンダ室25から排出された低圧流体を流入出通路45に導き、シリンダブロック23を図2に矢印で示す方向とは逆方向に逆回転させる。
前述のように流入出通路45に高圧流体が供給されると、流体ポート43が高圧側流体ポートとなるとともに、シリンダブロック23が矢印方向に正回転するが、この流体ポート43の回転方向後側端でタイミングプレート42のシリンダブロック23と摺接する摺接面50には、低圧側流体ポートである流体ポート44に向かって延びる弧状の切欠き溝51が形成されている。一方、前述とは逆に流入出通路46に高圧流体が供給されると、流体ポート44が高圧側流体ポートとなるとともに、シリンダブロック23が矢印に対して逆回転するが、この流体ポート44の回転方向後側端でタイミングプレート42の摺接面50には、低圧側流体ポートである流体ポート43に向かって延びる弧状の切欠き溝52が形成されている。ここで、前述の回転方向とはシリンダブロック23の回転方向を意味する。
そして、このような位置に切欠き溝51、52を設けるようにすれば、シリンダ室25のキドニーポート28がシリンダブロック23の回転により高圧側の流体ポート43または44に重なり合って高圧側の流体ポート43または44からシリンダ室25に高圧流体が大量に流入するようになる直前に、切欠き溝51または52を通じて高圧流体がシリンダ室25に徐々に流量を増加させながら若干量流入するため、高圧流体の急激で大幅な圧力変化が緩和されて騒音を低減させることができる。
また、前記摺接面50で低圧側の流体ポート44、43における回転方向前側端にも高圧側の流体ポート43、44に向かって延びる切欠き溝53、54がそれぞれ形成されている。そして、このような位置に切欠き溝53、54を形成すると、切換弁が流れ位置から中立位置に切換えられて流体モータ11が慣性回転によりポンプ作用を行うようになったとき、シリンダ室25からプランジャ26により押出された高圧流体が、正回転時には切欠き溝53を通じて低圧側の流体ポート44に、逆回転時には切欠き溝54を通じて低圧側の流体ポート43にそれぞれ流入されるが、このときの騒音を前述と同様に低減させることができる。なお、前述の実施例では、流体モータ11が正逆回転するため切欠き溝51、52、53、54を設けたが、流体モータ11が一方向回転(例えば正回転)だけする場合には、切欠き溝52、54は省略してもよい。
58〜65は流体ポート43、44より半径方向外側のタイミングプレート42の摺接面50に形成された少なくとも1個、ここでは8個の半径方向に延びる排出通路であり、これらの排出通路58〜65は、いずれもタイミングプレート42の半径方向外端まで延びて開口するとともに、幅方向断面(接線方向断面)が深さの浅い矩形を呈している。そして、これら排出通路58〜65は、タイミングプレート42とシリンダブロック23とが面接触しているとき、シリンダブロック23側開口が該シリンダブロック23により閉止され、この結果、半径方向に延びる矩形穴を構成する。
そして、これら排出通路58〜65のうちのいずれかの排出通路、ここでは排出通路58、59は前記流体ポート43、44の回転方向後側端に形成された切欠き溝51、52の近傍、詳しくは前記切欠き溝51、52に少なくとも一部で周方向に重なり合うよう配置されている。このような位置に排出通路58を配置すれば、流体ポート43が高圧側であるとき、流体モータ11に急激な起動動作あるいは停止動作を行わせると、シリンダブロック23は該切欠き溝51から略 180度離れた部位を支点として、切欠き溝51が形成されている部位付近がタイミングプレート42から最も離隔するよう傾動するが、この傾動により、高圧流体が該切欠き溝51付近からタイミングプレート42とシリンダブロック23との間にある程度の量だけ漏れ出る。
しかしながら、このように漏れ出た流体は切欠き溝51近傍に形成された前記排出通路58内に速やかに流入集合した後、半径方向外側に向かって流れ、その後、排出通路58の半径方向外端から外側、ここではドレン室である収納室13に流出する。この結果、シリンダブロック23は傾動から初期姿勢に速やかに復帰して、シリンダブロック23とタイミングプレート42とが全面で摺接するようになり、摺動傷や焼き付きの発生が防止される。
一方、流体ポート44が高圧側であるとき、流体モータ11に急激な起動動作あるいは停止動作を行わせると、前述と同様にシリンダブロック23が傾動して高圧流体が切欠き溝52付近から漏れ出るが、この漏れ出た流体は切欠き溝52近傍の排出通路59内に速やかに流入集合した後、その半径方向外端から収納室13に流出する。この結果、シリンダブロック23は傾動から初期姿勢に速やかに復帰して、摺動傷や焼き付きの発生が防止される。
また、前記排出通路58〜65のうち、排出通路60、61は前記流体ポート44、43の回転方向前側端に形成された切欠き溝53、54の近傍、詳しくは前記切欠き溝53、54に少なくとも一部で周方向に重なり合うよう配置されている。68は流体ポート43、44より半径方向外側のタイミングプレート42の摺接面50に形成され、前記排出通路58〜65と同一深さの環状溝であり、この環状溝68は全ての排出通路58〜65の半径方向内端部同士をつなぐとともに、周方向に連続している。ここで、前述のように排出通路58〜65および環状溝68をタイミングプレート42の摺接面50に形成するのは、該タイミングプレート42がシリンダブロック23より小型部品で、しかも、硬度が低いため、成形作業が容易となるからである。
そして、前述のように構成すれば、高圧側流体ポート43または44からシリンダブロック23、タイミングプレート42間に漏れ出た流体を環状溝68に流入集合させ、潤滑膜用の流体として一時貯留することができる。また、高圧側流体ポート43または44から環状溝68への流体の流入量が多い場合には、前記排出通路58、59から周方向に大きく離れた、前側端の切欠き溝53、54に重なり合う排出通路60、61からも流出させることで、環状溝68から流体が溢れ出る事態を防止することができる。
また、残りの排出通路のうち、少なくとも1個の排出通路、ここでは2個の排出通路62、63は、正回転時における高圧側流体ポート43の後側端の切欠き溝51に重なり合う排出通路58と前側端の切欠き溝54に重なり合う排出通路61との間に周方向に等距離離して配置され、さらに、残りの排出通路のうち、少なくとも1個の排出通路、ここでは2個の排出通路64、65は、逆回転時における高圧側流体ポート44の後側端の切欠き溝52に重なり合う排出通路59と前側端の切欠き溝53に重なり合う排出通路60との間に周方向に等距離離して配置されている。このような位置に前記排出通路62〜65を配置すれば、環状溝68への流体の流入量が多い場合でも、簡単かつ確実に環状溝68から流体を収納室13に流出させることができる。
ここで、前記排出通路58〜65の幅方向断面積は 3〜25mm2 の範囲内とすることが好ましい。その理由は、前記幅方向断面積が 3mm2 未満であると、シリンダブロック23、タイミングプレート42間に漏れ出た流体を確実に流入集合させた後排出させることができない場合があり、一方、幅方向断面積が25mm2 を超えると、シリンダブロック23とタイミングプレート42との摺接面積が必要値以下となってしまうことがあるからである。また、前述の切欠き溝51〜54と排出通路58〜61との周方向重なり合い量は、漏れ出た流体を迅速かつ確実に排出通路58〜61に流入集合させるために、排出通路58〜61の幅の 1/2以上とすることが好ましい。
次に、前記実施例1の作用について説明する。
今、切換弁が切換えられて流入出通路45、流体ポート43が流体ポンプに接続されて高圧側になり、流入出通路46、流体ポート44がタンクに接続されて低圧側となっているとする。このとき、流入出通路45から高圧流体が流体ポート43を通じて直線の片側に位置するシリンダ室25に供給(流入)され、該シリンダ室25内のプランジャ26を斜板31に向かって突出させ傾斜面32に押し付ける。この結果、これらプランジャ26には斜板31の最薄肉部に向かう力が作用し、これにより、シリンダブロック23に軸線回りのトルクが付与される。この結果、プランジャ26、シリンダブロック23、回転軸16は一体的に正回転方向に回転するが、このとき、前記片側のプランジャ26はシュー35とともに傾斜面32上を斜板31の最薄肉部に向かって摺動する。
このようなシリンダブロック23の回転により、直線の残り片側に位置するプランジャ26は、斜板31の傾斜面32にシュー35を介して摺動しながら斜板31の最厚肉部に向かって移動するため、該傾斜面32に押されてシリンダ室25内に徐々に引っ込んで該シリンダ室25内の流体を押出し、流体ポート44、流入出通路46を通じてタンクに排出(流出)させる。そして、前述のようなシリンダブロック23の回転により、直線の片側および残り片側に位置するシリンダ室25と流体ポート43、44との接続が次々と変化する。
このような状態において、切換弁を急速に中立位置に切換え、流体モータ11に急激な停止動作を行わせると、ピーク圧が発生するため、シリンダブロック23は切欠き溝51から略 180度離れた部位を支点として、切欠き溝51が形成されている部位付近がタイミングプレート42から最も離隔するよう傾動するが、この傾動により、高圧流体が該切欠き溝51付近からタイミングプレート42とシリンダブロック23との間にある程度の量だけ漏れ出る。
しかしながら、このように漏れ出た流体は切欠き溝51近傍に形成された前記排出通路58内に速やかに流入集合した後、半径方向外側に向かって流れ、その後、排出通路58の半径方向外端からドレン室である収納室13に流出する。この結果、シリンダブロック23は傾動から初期姿勢に速やかに復帰して、シリンダブロック23とタイミングプレート42とが全面で摺接するようになり、摺動傷や焼き付きの発生が防止される。
その後、切換弁を前述と逆の流れ位置に切換えて流体モータ11を起動させると、流入出通路46が流体ポンプに、流入出通路45がタンクに接続され、流入出通路46、流体ポート44から高圧流体が直線の残り片側に位置するシリンダ室25に供給(流入)されるとともに、直線の片側に位置するシリンダ室25内から押し出された流体が流体ポート43、流入出通路45から排出(流出)され、回転軸16、シリンダブロック23が逆方向に回転する。ここで、前述のような切換弁の切換え動作を急激に行って流体モータ11に急激な起動動作を行わせた場合には、前述と同様にピーク圧によりシリンダブロック23が傾動して高圧流体が切欠き溝52付近から漏れ出るが、この漏れ出た流体は切欠き溝52近傍の排出通路59内に速やかに流入集合した後、その半径方向外端から収納室13に流出する。この結果、シリンダブロック23は傾動から初期姿勢に速やかに復帰して、摺動傷や焼き付きの発生が防止される。
なお、前述の実施例においては、流体モータが斜板式流体モータである場合について説明したが、この発明においては、斜軸式流体モータであってもよい。
この発明は、アキシャルピストン型、即ち斜板式、斜軸式の流体モータに適用できる。
この発明の実施例1を示す正面断面図である。 タイミングプレートの右側面図である。 摺接面近傍の正面断面図である。
符号の説明
11…流体モータ 15…ケーシング
23…シリンダブロック 25…シリンダ室
26…プランジャ 42…タイミングプレート
43、44…流体ポート 50…摺接面
51〜54…切欠き溝 58〜65…排出通路
68…環状溝

Claims (4)

  1. ケーシングと、ケーシング内に収納され、軸線回りに回転可能なシリンダブロックと、シリンダブロックに形成されたシリンダ室に摺動可能に挿入され、シリンダ室への流体の給排により突出あるいは引っ込む複数のプランジャと、前記ケーシングとシリンダブロックとの間に介装された状態でケーシングに取付けられ、前記シリンダ室への流体の給排を行う弧状をした一対の流体ポートを有するタイミングプレートとを備え、該タイミングプレートのシリンダブロックと摺接する摺接面で、高圧側流体ポートにおけるシリンダブロックの回転方向後側端に低圧側流体ポートに向かって延びる切欠き溝が形成されたアキシャルピストン型流体モータにおいて、流体ポートより半径方向外側の摺接面にタイミングプレートの半径方向外端まで延びる排出通路を少なくとも1個形成するとともに、いずれかの排出通路と前記後側端の切欠き溝とが少なくとも一部で周方向に重なり合うよう配置したことを特徴とするアキシャルピストン型流体モータ。
  2. 前記摺接面で、高圧側流体ポートにおけるシリンダブロックの回転方向前側端にも低圧側流体ポートに向かって延びる切欠き溝を形成するとともに、残りの排出通路のうちいずれかを前側端の切欠き溝に少なくとも一部で周方向に重なり合うよう配置し、さらに、全ての排出通路の半径方向内端部同士をつなぐ連続した環状溝を流体ポートより半径方向外側の摺接面に形成した請求項1記載のアキシャルピストン型流体モータ。
  3. 前記後側端の切欠き溝に重なり合う排出通路と前側端の切欠き溝に重なり合う排出通路との間に少なくとも1個の排出通路を周方向に等距離離して配置した請求項2記載のアキシャルピストン型流体モータ。
  4. 前記排出通路の幅方向断面積を 3〜25mm2 の範囲内とした請求項1記載のアキシャルピストン型流体モータ。
JP2003347254A 2003-10-06 2003-10-06 アキシャルピストン型流体モータ Expired - Lifetime JP4439231B2 (ja)

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