JP4437199B2 - 屋上緑化工法 - Google Patents
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Description
建物の屋上緑化については、環境の整った場所で栽培した緑化プランターや緑化マット状物を隙間なく多数並べて配置したり、層状に形成した植生基盤材に種子を蒔いたり植物の苗を植え付けたりすることで所望の緑化面積を確保している。
(1)従来の緑化技術は植生形態が平面的であるため、緑化プランターや緑化マット状物等の設置面積を超えた範囲で植生をすることが技術的に難しい。
殊に、建物を建てる場合も各自治体が制定した緑化条例の適用を受けて一定以上の緑化面積の確保が求められることから、必要な緑化面積に対して建物の屋上面積が満たないときは、建物そのものの計画の見直しを迫られる。
(2)屋上緑化には特殊組成の植生基盤を大量に使用したり、大型の潅水施設の設置を必要としたりするために設置コストやメンテナンスコストが嵩み、近時のトータルコストの低廉化に対応し難い。
(3)限られた屋上面積の下で植生面積を広げるためには、必然的に植生間隔を密にすることとなって、採光性や通風性が悪化して生育環境として好ましくない。
(4)植物の生育環境の観点に立てば客土等の植生基盤の層厚は厚くすることが望ましいが、その反面、植生基盤の層厚に比例して建物の荷重負担が増すために建物の補強対策が必要となる。そのために、従来の屋上緑化技術にあっては、植生基盤を薄く敷き詰めると共に、薄層の植生基盤に耐え得る品種の植物を選定して植生している。
このように従来は、植物の生育環境に必要なだけの植生基盤の層厚を確保することが技術的に困難であったという問題と、屋上緑化に適応可能な植物がセダム系植物等の特定の品種、乾燥地域に適した草本類や、コケ類に限られてしまい、植生可能な植物の選択幅が非常に狭いといった問題がある。
(5)複数の緑化プランターを設置して緑化する方法は古くから知られているが、部分的な小面積の緑化には適するが、設置面積を超えた大規模面積の緑化には対応することができない。
(1)植物の植生間隔を密にすることなく、設置面積を超えた緑化面積を確保できること。
(2)簡易な施工と低コスト化の両立を図ること。
(3)屋上緑化に付加価値を付与すること。
本願の第2発明に係る屋上緑化工法は、前記した第1発明において、複数の多面緑化体を均一間隔、または不均一間隔で点在させたことを特徴とするものである。
本願の第3発明に係る屋上緑化工法は、前記した第2発明において、文字、図形または模様の形態となるように前記複数の多面緑化体を屋上に点在させたことを特徴とするものである。
本願の第4発明に係る屋上緑化工法は、前記した第1乃至第3発明の何れかにおいて、前記各多面緑化体にスカートを付設したことを特徴とするものである。
前記した参考例において、複数の多面緑化体を均一間隔、または不均一間隔で点在させてもよいし、文字、図形または模様の形態となるように前記複数の多面緑化体を屋上に点在させてもよい。
前記した参考例において、前記多面緑化体が有孔構造の箱体と、前記箱体に収容した植生基盤と、前記箱体の少なくとも側面に立体的に植生した植物とにより構成してもよい。
前記した参考例において、前記各多面緑化体にスカートを付設してもよいし、また必要に応じて前記各多面緑化体に潅水装置を付設してもよい。
(1)設置面積に対して緑化面積が卓越した多面緑化体を屋上に点在させることで、限られた屋上面積の下で、全緑化体の総設置面積を越えた緑化面積を確保することができ、場合によっては屋上面積を超えた緑化面積を確保することも可能である。
(2)全多面緑化体の総設置面積を越えた面積の緑化面を立体的に形成できることから、各自治体が制定した緑化条例の適用対象である建物の屋上緑化を実現し易くなる。
(3)本発明は複数の多面緑化体をドット配置すると共に、建物の荷重負担を増大させることなく、一つの多面緑化体に植物の生育に十分な植生基盤の量を確保し得るものであるから、従来の屋上緑化技術が内包する緑化面積の確保の問題と、植生基盤による建物の荷重負担の問題と、植物の生育環境の整備の問題と、植物の選択肢の問題のすべての問題点を解消できて、良好な屋上緑化の実現が可能となる。
殊に、層状に形成した客土等の植生基盤に平面的に植生した従来の緑化技術と比較して、緑化面積に対する多面緑化体中の植生基盤の重量を著しく軽量化することができる。
(4)本発明は安価な多面緑化体を点在させるだけで多くの緑化面積を確保できる利点を有しつつ、従来の屋上緑化システムと比べて単位面積当たりの緑化コストと維持管理コストを大幅に低減することが可能となる。
(5)各多面緑化体の間に形成される空間を通風空間、採光空間として活用できるだけでなく、植物の成長に伴う将来の緑化領域として、或いはメンテナンススペースや散策通路スペースとしても有効活用することができる。
(6)各多面緑化体による遮熱作用と蓄水作用、および緑化体の影を活用した遮熱作用によって、既設構造物のヒートアップ現象の優れた抑止効果を達成できる。
(7)各多面緑化体にスカートを付設すると、屋上の遮熱と太陽光の照り返しの防止と落葉受けとして機能させることができる。照り返しの防止や落葉受けを図ることが可能となる。
(8)各多面緑化体の配置形態(ドット配置)を任意に選択することで文字や図形等を表示して、屋上緑化の付加価値を高めることができる。
(9)多面緑化体の箱体を金属製カゴで構成する場合は、金属屋根へクランプ金物での固定が容易であること等、建築物の屋根へ固定することになじみやすい。
まず、屋上緑化システムに使用する多面緑化体について説明する。
図1に一部を省略した既設構造物の屋上50に複数の多面緑化体10を既設の建造物や構造物の水平または傾斜した屋上50に点在させて設置した屋上緑化システムを示す。
本発明では緑化体として設置面積に対して緑化面積が卓越した多面緑化体10を使用するものである。
図2,3示すように、多面緑化体10は縦横の複数の面に各種の植物を立体的に植生したもので、有孔構造の箱体20と、箱体20に収容した植生基盤と、箱体20の底面を除いた側面21に上面を加えた複数の面に各種の植物4とにより構成し、植物4を植生した多面緑化体10の少なくとも複数の側面21が緑化面となる。
多面緑化体10の大きさは運搬性や取扱性を考慮した適宜の寸法でよい。
以降に多面緑化体10の主要な構成部材について詳述する。
箱体20は図2に示すように方形を呈する複数の側面21と、一枚の底面22とよりなる有孔構造の箱で、各側面21の両側を互いに突合せて囲繞し、突合せ箇所を連結コイル等の連結具23で接続して立方形に形成する。
箱体20の素材はその他に、凹凸のない溶接金網、一般金網、エキスパンドメタル、有孔板等が使用可能である。箱体20の形状は図示したキューブ形に限定されるものではなく、それ以外の多角形状体、球体等であってもよい。
薄厚の植生ブロックマット5は、ハウスや路地を問わず生育環境の整った場所で時間を十分にかけて生育したもので、植物の生育に適した土壌や公知の植生基盤を含む植生基盤を成形予定の平面四角形を呈する薄鉢のトレー容器に充填し、この植生基盤に播種または苗を植栽して各種の植物4を育成する。
植生ブロックマット5を育成する際に、通気性と通水性を有し、かつ、植物の根系の透過を阻止する性状のシートをトレー容器内に予め敷設して植生すると、伸張を規制されて植生基盤の全体に広がった植物の根系が土粒を保持するために植生基盤が安定化するので、崩れ難く取り扱いに便利である。
また植生ブロックマット6の使用に代わり、内張りシートに植生した形態を採用することも可能である。
箱体20内の植生基盤30にボリュームがあるので、公知の広範囲に亘る植物を植生するのに適して、植物4としては草本類、木本類、竹類などの公知の植物のいずれか一種または複数種を組み合わせたもので、例えば貧栄養で厳しい環境に適応できる性質の野草、ツタ植物、コケ類等や低木等を採用できる。
これまでの植生基盤は、農作物の栽培と同様に成長量を重視する考えに基づきたくさんの栄養素を含む富栄養のものであったが、本発明では多面緑化体10の大半を占める植生基盤30に貧栄養のものを使用する。
本発明でいう貧栄養とは、植物4の枯死に直結する過度の養分不足の環境を意味するものではなく、例えば鉱物イオン物質をバランス良く混入した無機質主体の基盤で、植物4の過度の成長を抑制して長く生育させる性質の基盤状態を意味する。
また必要に応じて植生基盤30に保水材を混入しておく場合もある。
図3に基づいて多面緑化体10の製造方法について説明すると、まず箱体20内に植生ブロックマット5を縦向きにして収容し、各側面21の内側に、植物4の繁茂面を外向きにして植生ブロックマット5を配置する。側面21全面を植生ブロックマット5で囲ったら、その内側に貧栄養の植生基盤30を大量に投入する。
箱体20の上面には、貧栄養の植生基盤30に植物4を直接植生するか、または植生ブロックマット5を水平に設置して、箱体20の複数の面に植物4を立体的に生やした多面緑化体10を得る。
据付面に対して緑化面積が卓越する多面緑化体10を使用し、前記複数の多面緑化体10を所定の間隔を隔てて屋上50に設置する。
また屋根50に勾配がついていたり、強風が予想される環境下においては、図4に示すようにアングル材製の据え付け枠52を予め屋根50に取り付けて置き、この据え付け枠52に多面緑化体10の底部を収容して固定するとよい。多面緑化体10の固定手段は設置現場に応じて適宜公知の手段を適用することができる。
屋外に露出した各多面緑化体10は、自然降雨により植生基盤30に保水されて人工的な散水は不要であり、植物4の生育環境の管理を特別行わなくて済む。
したがって、多面緑化体10の設置面積に対して、多面緑化体10の側面部分も緑化面積となることから、隣り合う多面緑化体10の間の植物の存在しない面も実質的に緑化した場合と同様の緑化面積を確保することができる。そのため、多面緑化体10を点在させるだけで、全ての多面緑化体10の総設置面積(設置面積)に対して倍加した大規模な緑化面積を提供することが可能となる。
さらに、多数の多面緑化体10による蓄水作用と、多数の多面緑化体10の据付面と立体的な多面緑化体10の影による遮熱作用との相乗作用により、屋根50のヒートアップ現象に対し優れた抑止効果を発揮する。
多面緑化体10を屋根50に点在させる配置形態としては、つぎの配列が可能である。
a)複数の多面緑化体10を直線状、曲線状、方形状または円形状、同心多重状、またはこれらを組み合わせた形状に配置する。
b)複数の多面緑化体10を均一、不均一の間隔を隔てて配置する。
c)複数の多面緑化体10を隣接させて列状に配置する。
d)上記したa〜cを適宜組み合わせて配置する。
図4に示すように多面緑化体10の裾部の周囲にスカート60を付設すると、屋上50の遮熱と太陽光の照り返しの防止と落葉受けとして機能させることができる。スカート60としては、板体の他に網状物や布等を使用できる。
また図示を省略するが、必要に応じて前記各多面緑化体10に公知の潅水装置を追加して付設してもよい。
5・・・植生ブロックマット
10・・・多面緑化体
20・・・箱体
21・・・側面
22・・・底面
30・・・貧栄養の植生基盤
50・・・屋上
51・・・ベースブロック
52・・・据え付け枠
60・・・スカート
Claims (4)
- 屋上に緑化面を形成する屋上緑化工法であって、
設置面積に対して緑化面積が卓越した複数の多面緑化体を使用し、
前記多面緑化体は凹凸を有する複数の屈曲線材と複数の直線状線材とを交差させて厚みを付与して形成し、方形を呈する複数の側面を有する有孔構造の箱体と、前記箱体の複数の側面の内側に配置し、基盤マットの全体に植物の根系が広がるように植生して予め製造した複数の植生ブロックマットと、前記箱体に収容した植生基盤とにより構成するとともに、前記箱体の少なくとも側面に植物を立体的に植生し、
前記多面緑化体を屋上に点在させて設置したことを特徴とする、
屋上緑化工法。 - 請求項1において、複数の多面緑化体を均一間隔、または不均一間隔で点在させたことを特徴とする、屋上緑化工法。
- 請求項2において、文字、図形または模様の形態となるように前記複数の多面緑化体を屋上に点在させたことを特徴とする、屋上緑化工法。
- 請求項1乃至請求項3の何れかにおいて、前記各多面緑化体にスカートを付設したことを特徴とする、屋上緑化工法。
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