JP4436401B2 - オープンシールド工法およびオープンシールド機 - Google Patents

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Description

本発明は、上下水道、共同溝、電信・電話などの付設地下道や、乗用車専用道路等の地下構造物を構築するためのオープンシールド機およびオープンシールド工法に関するものである。
上下水道、共同溝、電信・電話などの付設地下道等の地下構造物を市街地などに施工する工法として、オープンシールド工法が広く用いられている。オープンシールド工法は開削工法(オープンカット工法)とシールド工法の長所を活かした合理性に富む工法であり、オープンシールド工法に関する特許文献としては、例えば以下のものが存在する。
特開2006−112101号公報 特開2006−112100号公報
このオープンシールド工法で使用するオープンシールド機1の概略は図19に示すように、基本的には左右の側壁板1aと、これら側壁板1aに連結する底板1bとからなる前面、後面および上面を開口したもので、前記側壁板1aと底板1bの先端を刃口11として形成し、また側壁板1aの中央または後端近くに推進ジャッキ2を後方に向け上下に並べて配設する。図中3は隔壁を示す。
かかるオープンシールド機1を使用して施工するオープンシールド工法は、図示は省略するが、発進坑内にこのオープンシールド機1を設置して、オープンシールド機1の推進ジャッキ2を伸長して発進坑内の反力壁に反力をとってオープンシールド機1を前進させ、地下構造物を形成する第1番目のコンクリート函体4を上方から吊り降ろし、オープンシールド機1のテール部1c内で縮めた推進ジャッキ2の後方にセットする。推進ジャッキ2と反力壁との間にはストラットを配設して適宜間隔調整をする。
また、発進坑は土留壁で構成し、オープンシールド機1を発進させるにはこの土留壁を一部鏡切りするが、必要に応じて薬液注入などで発進坑の前方部分に地盤改良を施しておくこともある。
ショベル等の掘削機9でオープンシールド機1の前面または上面から土砂を掘削しかつ排土する。この排土工程と同時またはその後に推進ジャッキ2を伸長してオープンシールド機1を前進させる。この前進工程の場合、コンクリート函体4の前にはボックス鋼材または型鋼を用いた枠体よりなるプレスバー8を配設し、オープンシールド機1は後方にセットされたコンクリート函体4から反力をとる。
そして第1番目のコンクリート函体4の前に第2番目のコンクリート函体4をオープンシールド機1のテール部1c内で吊り降ろす。以下、同様の排土工程、前進工程、コンクリート函体4のセット工程を適宜繰り返して、順次コンクリート函体4をオープンシールド機1の前進に伴い縦列に地中に残置し、さらにこのコンクリート函体4の上面に埋戻土5を入れる。
なお、コンクリート函体4をオープンシールド機1のテール部1c内に吊り降ろす際には、コンクリートブロック等による高さ調整材7をコンクリート函体4下に配設し、このテール部1c内でコンクリート函体4の左右および下部の空隙にグラウト材6を充填する。
このようにして、オープンシールド機1が到達坑まで達したならばこれを撤去して工事を完了する。
このようなオープンシールド工法では、前記のごとくコンクリート函体4をオープンシールド機1の前進に伴い縦列に地中に残置し、コンクリート函体4は、オープンシールド機1のテール部1c内に吊り降ろされ、オープンシールド機1の前進とともに該テール部1cから出て地中に残されていくものであり、オープンシールド機1はこのように地中に残置したコンクリート函体4に反力をとって前進する。
オープンシールド機1としてはこの他、図20に示すように機体を前後方向で複数に分割し、テール部1cとしての後方の機体の前端を、断面積を僅かに縮小し、これをフロント部1dとしての前方の機体の後端に嵌入し、相互の嵌合部としての中折れ部1eで屈曲可能としたものもある。
これは、フロント部1dとしての前方の機体の前端と上面を開放面としてあり、機体内で後部に後方へ向けて中折ジャッキ30を左右によせて、また上下複数段に配設している。これに対してテール部1cは、機体内で前部に後方へ向けて推進ジャッキ2を左右によせて、また上下複数段に配設している。図中50はフロント部1dの前端に設けた可動分割刃口、51はテール部1cの後端に設けた後部土留板、34はストラット、8はプレスバー(押角)である。
前記いずれのシールド機においても、使用するコンクリート函体4は鉄筋コンクリート製で、図21に示すように左側板4a、右側板4bと上床板4cと下床板4dとからなる一体のもので、前後面が開口10として開放されている。
ところで、前記のようにテール部1cの底板1b上にコンクリート函体4を載置するようにすると、例えば施工箇所の地盤が軟弱な粘性土質地盤であっても、底板1bの存在によりヒービングの影響を受ける心配が無い。また、地下水位の高い砂質地盤であっても、底板1bの存在により、ボイリングの影響を受ける心配が無いというメリットがある。
また、前記のようにオープンシールド機1のテール部1c内でコンクリート函体4の左右および下部の空隙に、裏込め注入材としてグラウト材6を充填すると、固決したグラウト材6によりコンクリート函体4の周囲が固められて安定し、更に、コンクリート函体4内への地下水の浸入を防止することができる。よって、このような裏込め注入を行いながら掘進する施工法(裏込注入タイプ)は、高地下水位の箇所や、軟弱で不安定な地盤まで幅広い土質条件に対応できるというメリットがある。
また、敷設したコンクリート函体4の左右および下部の空隙を埋めるための埋め戻し作業を不用とするため、埋め戻し作業のために周辺より多量の土砂を運搬する必要もなく、埋め戻し作業に伴う騒音も抑えることができるため、家屋近接部等の周辺影響を最小限に抑える必要がある箇所の施工に適する。
しかし、施工距離が長い場合には、地盤が安定した箇所と不安定な箇所とが混在するなど、施工条件が異なる箇所が混在することが多々ある。周辺環境に充分配慮し、且つ、効率良く経済的に施工するためには、施工箇所の条件に合わせた施工が必要となる。
例えば、地下水の影響が少なく自立性の有る安定した地盤において、近接構造物が少ない箇所に施工する場合には、コンクリート函体の周囲に裏込め注入をする必要はなく、むしろ裏込め注入を行わず、据付たコンクリート函体4の左右の空隙部に埋戻しを行いながら掘進することにより、グラウト材6の使用を控える方が好ましい場合もある。
そのような場合には、裏込め注入を行わずに掘進する施工法(裏込注入無しタイプ)用のオープンシールド機として、底板1bの無いオープンシールド機を使用し、テール部1c内に吊り降ろしたコンクリート函体4を直接、掘削孔内に載置する。
このように、施工箇所の条件によって施工方法が異なると、施工箇所毎に使用するオープンシールド機も使い分ける必要がある。
しかし、施工法毎にオープンシールド機を用意するとなると、多くの台数のオープンシールド機が必要となり、不経済である。
また、施工途中でオープンシールド機を交換しようとすると、オープンシールド機の側壁板によって土留めされている土砂の崩壊を防ぐため、オープンシールド機周辺に矢板を打ち込むなどして土留めしておかなければならず、更に、掘削孔内においてオープンシールド機の搬出及び搬入作業を行うことになり、多くの手間と労力を要する。
更に、オープンシールド工法は、開削は可能でも矢板等による土留めが困難な場所に適用されることが多々あり、そのような場合には、オープンシールド機の周辺を矢板で土留めしてオープンシールド機を交換すること自体が不可能である。
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、施工途中で施工法を変更する場合であっても、施工法毎に複数のオープンシールド機を用意してこれを交換することなく、各施工法に対応できるオープンシールド工法およびオープンシールド機を提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明のオープンシールド工法は第1に、左右の側壁板とこれら側壁板に連結する底板とからなる前後端及び上面を開口したシールド機内に推進ジャッキを設け、シールド機前面または前部上面より前方の土砂を掘削機で掘削・排土する工程と、推進ジャッキを伸長して後続するコンクリート函体等の既設地下構造物を反力にしてシールド機を前進させる工程と、シールド機のテール部内で縮めた推進ジャッキの後方に新たな地下構造物をセットする工程とを適宜繰り返して順次地下構造物を縦列に埋設するオープンシールド工法において、地下構造物周囲への裏込め注入を必要とする施工箇所ではテール部に底板を装着した状態で、この底板上に載置した地下構造物の周囲に裏込め注入を施し、裏込め注入を必要としない施工箇所では前記底板を取り外した状態で、掘削した地盤上に地下構造物を直接載置してその周囲に土砂を埋め戻すことを要旨とするものである。
または、地盤が崩壊しにくい施工箇所ではテール部から底板を取り外した状態で、掘削した地盤上に地下構造物を直接載置してその周囲に土砂を埋め戻し、地盤が崩壊し易い施工箇所では、テール部に底板を装着するとともにシールド機のフロント部前方を閉鎖壁で覆った状態で、この底板上に地下構造物を吊り下ろし該地下構造物の周囲に裏込め注入を施す工程と、閉鎖壁とフロント部内とによる囲繞空間内を掘削・排土する工程と、前記閉鎖壁を撤去してシールド機を前進させる工程とを繰り返すことを要旨とするものである。
そして本発明のオープンシールド機としては、第1に、左右の側壁板とこれら側壁板に連結する底板とからなる前後端及び上面を開口したシールド機で、後方のテール部内左右に推進ジャッキを後方に向け上下に並べて配設したオープンシールド機において、テール部の底板を着脱自在に配設し、テール部の底板上に地下構造物を載置可能とする底板装着状態と、掘削した地盤上に地下構造物を直接載置可能とする底板離脱状態とを、選択して使用可能とすることを要旨とするものである。
そして第2に、テール部の左右側壁板下端において、底板の左右側縁を着脱自在に接合すること、または、テール部の左右側壁板下端に内向きの張り出し部を設け、この張り出し部の先端において、底板の左右側縁を着脱自在に接合することを要旨とする。
更に第3に、底板がテール部後方へと移動するのを規制する移動規制手段を、底板と側壁板との接合部または、底板とテール部前部との間に設けることを要旨とするものである。
そして第4に、左右側壁板間に配設して機体内を前後に区画する隔壁を前後にスライド可能に設けること、または、左右側壁板間に配設して機体内を前後に区画する隔壁を開閉自在とすること、または、左右側壁板間に配設して機体内を前後に区画する隔壁を上下2段に構成し、上段の隔壁を開閉自在とし、下段の隔壁を既設水路の底面に合わせて高さ調節自在とすることを要旨とするものである。
更に第5に、オープンシールド機の幅方向の閉鎖壁をフロント部の前方に着脱自在に配設することを要旨とする。
請求項1記載の本発明によれば、施工範囲内に裏込注入タイプと裏込注入無しタイプとの、異なるタイプの施工法による施工箇所が存在し、施工途中で施工法を変更する場合に、施工法毎に複数のオープンシールド機を用意してこれを交換しなくても、底板の着脱のみによって、裏込注入タイプと裏込注入無しタイプとの、異なるタイプの両施工法に対応させることができる。
そしてこのように、施工法毎に複数のオープンシールド機を用意する必要がないため経済的であり、また、施工途中でオープンシールド機の入れ替え作業を行う必要がないため、効率の良い施工が可能となる。
請求項2記載の本発明によれば、施工範囲内に裏込注入タイプの施工が必要となる地盤が崩壊し易い箇所と、裏込注入無しタイプの施工が可能な地盤が崩壊し難い箇所とが混在し、施工途中で施工法を変更する場合、施工法毎に複数のオープンシールド機を用意してこれを交換しなくても、テール部の底板の着脱によって、裏込注入タイプと裏込注入無しタイプとの、異なるタイプの両施工法に対応させることができる。
更に、地盤が崩壊し易い施工箇所においては、テール部に底板を装着した上でオープンシールド機のフロント部前方を閉鎖壁で覆った状態で、テール部への地下構造物の吊り下ろしとその周囲の裏込め注入を行うから、底板の存在によりその作業中にヒービングの影響を受けることが無く、また、閉鎖壁の存在により、作業中にシールド機前方の地山が崩れてフロント部になだれ込んで周辺地山の崩壊が進んでしまうことがない。
そしてその状態で、この閉鎖壁とフロント部内とによる囲繞空間内を掘削・排土する工程により、フロント部前方からフロント部内に崩壊した土砂が流入するのを防ぎつつフロント部内を空にすることができ、これにより、次の工程において閉鎖壁を撤去してからシールド機を前進させる際に、フロント部内に溜まった土砂の土圧により推進推力が増大してしまうのを防ぐことができる。
また、オープンシールド機の前進中以外は閉鎖壁によりフロント部前方を覆い続けるから、フロント部前方が開口している時間は短く、その間に周辺地山の崩壊が進んでしまうことも無い。
そして、これらは底板の着脱および閉鎖壁の配置・撤去のみで実現できるから、施工法毎に別途オープンシールド機を用意してこれを施工途中に交換しなくても、個々の施工箇所に合った施工法に対応させることができる。このため、経済的且つ効率の良い施工が可能となる。
請求項3記載の本発明によれば、コンクリート函体が載置される底板をテール部に着脱自在に取付けるようにしたから、裏込め注入を必要としない箇所では底板を取付けずにオープンシールド機を使用することにより、テール部に吊り降ろしたコンクリート函体を地中に直接載置することができる。また、裏込め注入を必要とする箇所ではテール部に底板を取付けることにより、テール部に吊り降ろしたコンクリート函体を一旦底板上に載置して、テール部内においてコンクリート函体の周囲に裏込め注入を行うことができる。
このように、底板の着脱のみによって、裏込注入タイプと裏込注入無しタイプとの、異なるタイプの両施工法に対応させることができ、施工法毎に複数のオープンシールド機を用意しなくても済むため経済的である。
また、施工範囲内に異なる施工法による施工箇所が存在する場合でも、底板の着脱のみで各施工法に対応させることができ、施工途中におけるオープンシールド機の交換を不用として効率良く施工することができる。
請求項4記載の本発明によれば、テール部の左右側壁板下端において、底板の左右側縁を着脱自在に接合するようにしたから、底板は両側壁板下端において左右が安定して支持され、これにより、底板上に載置されるコンクリート函体の荷重もしっかりと支えることができる。
また、底板の左右側縁をテール部に接合固定することで、底板の後端側に更に接合手段を設けることを不用とし、このような底板後端側の接合手段によって、テール部から底板を取り外してオープンシールド機を使用する際の、テール部内の地下構造物のテール部後方への移動が阻害されてしまうことがない。
請求項5記載の本発明によれば、前記請求項2記載の本発明と同様に、底板は両側壁板下端において左右が安定して支持されて、底板上に載置されるコンクリート函体の荷重もしっかりと支えることができるとともに、底板の後端側に更に接合手段を設けることによる作業性の阻害を防ぐことができる。
そしてそれに加えて、底板を取り外してオープンシールド機を使用する際、側壁板下端の張り出し部の存在により、テール部の地盤への接地面積をその分大きくすることができ、比較的軟弱な地盤でもオープンシールド機の自重によるオープンシールド機の沈下を低減することができる。
請求項6記載の本発明によれば、底板のテール部後方への移動が規制されるから、底板上に載置された地下構造物を反力として推進ジャッキを伸長してオープンシールド機を推進する際、地下構造物がオープンシールド機の後方に相対的に移動するのに伴って底板も後方に引きずられ、地下構造物とともにテール部の後方に抜け落ちてしまうことがない。
請求項7記載の本発明によれば、施工範囲に崩壊し易い地質の箇所が含まれ、掘削排土および前進がスムーズに行われない場合であっても、隔壁を前方にスライドさせてフロント部内の土砂を前方に押し出すことにより、フロント部内およびその前方の土砂を圧密して、フロント部前方の土砂を崩壊し難くするとともに、フロント部内およびその前方の土砂の掘削・排土を容易とする施工法にも対応可能となる。
なお、この隔壁は動かさなければ、フロント部内の土砂の更なる圧密を必要としない通常の施工法に対応することができる。
また、既設水路の改修・延長工事など、施工範囲に部分的に既設水路が存在する場合、工期中に集中豪雨などがあると、堰き止めた水無し水路に流れ込んだ水が流水となって、オープンシールド機に流れ込み、さらに隔壁で阻止されてこれがオープンシールド機の前部に溜まり、かつ、溢れ出して非常に危険な状態を惹起するおそれがある。また、工期中常に既設水路を塞き止め続けるためにはその間の排水ルートを別途確保する必要があるが、それには多くの労力を要する上、排水ルートの確保が困難な場合もある。よって、このような場合には、オープンシールド機前方の水を後方へと流す施工法が必要となる。
請求項8記載の本発明によれば、既設水路部分の改修中に放流する必要が生じた場合には、テール部に底板を取付けた状態で隔壁を開くことにより、シールド機全体が断面U字形の樋となり、水をオープンシールド機の後方に送る施工法にも対応させることができる。
そして、前記以外の場合には隔壁を閉じておくことで、通常通り隔壁で土留めする施工法に対応することができる。
また、既設水路の改修・延長工事においては、新設の水路が既設水路よりも深い場合があり、そのような場合には、集中豪雨時などで前方からオープンシールド機に流水がありこれを後方に流す必要が生じると、その水を後方へ流しつつ、既設水路の底面より下側部分の土留めする施工法が必要となる。
請求項9記載の本発明によれば、そのような場合にはテール部に底板を取付けた状態で、上段の隔壁を開いてオープンシールド機を樋としてその水をオープンシールド機の後方に流しつつ、高さ調節自在の下段の隔壁の上端位置を既設水路の底面に合わせて、それより下側の土砂を土留めする施工法が可能となる。
なお、前記以外の場合には上段の隔壁を閉じておくことで、下段の隔壁より上の部分についても上段の隔壁により、通常通り土留めする施工法に対応することができる。
請求項10記載の本発明によれば、着脱自在の閉鎖壁を配設したから、施工範囲に崩壊し易い地質の箇所が含まれる場合に、フロント部内を掘削する間等はフロント部前方に閉鎖壁を配設して土留めし、オープンシールド機を前進させる時だけフロント部前方から閉鎖壁を取り外すことで、フロント部前方の土留めが解除された状態を短時間に抑えてオープンシールド機前方の地山の崩壊を防ぐことができる施工法にも対応することができる。
なお、フロント部前方の閉鎖壁を要しない程度に自立性のある箇所を施工する場合には、着脱自在の閉鎖壁を取り外すことで、フロント部前方を常に開いた状態で施工する通常の施工法に対応することができる。
以上述べたように本発明のオープンシールド工法およびオープンシールド機は、施工途中で施工法を変更する場合であっても、施工法毎に複数のオープンシールド機を用意してこれを交換することなく、各施工法に対応できるため、経済的且つ効率の良い施工が可能となる。
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明のオープンシールド機の第1実施形態のテール部を示す縦断背面図であり、図2は全体平面図である。本発明のオープンシールド機を使用するオープンシールド工法の基本構成は前記従来例と同様であるから、ここでの詳細な説明は省略する。また、前記従来例と同一の構成要素については、同一の符号を付す。
本発明のオープンシールド機も前記図20に示す従来例と同じく、機体を前後方向で複数に分割し、テール部1cを備える後方の機体(テール機)23の前端を、断面積を僅かに縮小し、これをフロント部1dを備える前方の機体(フロント機)24の後端に嵌入し、相互の嵌合部としての中折れ部1eで屈曲可能としたものである。
テール機23はその前部且つフロント機24後端へ嵌入する断面積の縮小部分の後端において、左右側壁板25間にテール部仕切り壁31を配設し、これより前方を中折れ部1e、後方をテール部1cとして、テール部仕切り壁31の背面には設置するコンクリート函体の側板の位置に合わせて、後方へ向けて推進ジャッキ2を左右両側に、また上下複数段に配設している。
中折れ部1eおよび縮めた状態の推進ジャッキ2後端よりも前の部分のテール部1cにおいては図3にも示すように、フロント部1dと同様に左右の側壁板25に連結する底板部27を備えるが、テール部1cのそれ以降の部分においては、左右側壁板25および底板部27とは連通しない金属板による底板20を配置し、その左右両縁に取付け板21aを残した状態で左右両端に上面開口のボルトボックス21を形成し、これに対応させて、左右側壁板25下端に取付け板17a部分を残して内面開口のボルトボックス17を形成する。
そして両ボルトボックス21、17において、六角ボルト18およびナット15により両取付け板21a、17a同士を固定して、底板20を左右の側壁板25間に着脱自在に取付ける。なお、取付け板21a、17aの当接面および底板部27後端と底板20先端との当接面には、その片側若しくは両側に、水膨潤ゴムによるシール材(不図示)を貼着しておく。
これに対して、フロント機24後部にはテール機23先端の嵌入部分の前端において左右側壁板1a間にフロント部仕切り壁32を配設し、これより前方をフロント部1dとして、その底面には左右の側壁板1aに連結する底板1bを備え、前記側壁板1aと底板1bの先端を刃口11として形成する。また、フロント部1dの前端と上面は開放面としてあり、フロント部仕切り壁32背面に後方へ向けて中折ジャッキ30を左右によせて、また上下複数段に配設している。
そして、フロント部仕切り壁32の前面の左右に前方に向けて、上下2段の土圧調整ジャッキ28を設け、その先端にフロント部1d内を前後に区画する隔壁3を取付けて、隔壁3をフロント部1d内において前後にスライド自在に支承する。
次に、このように構成するオープンシールド機1を使用して行う本発明のオープンシールド工法の1実施形態について説明する。なお、コンクリート函体の埋設方法および使用するコンクリート函体は前記従来例と同様である。
まず、地下水位が高いか、地盤が不安定な箇所を施工する場合、テール部1cに底板20を取付けた状態で、地中においてオープンシールド機1を掘進させるとともに順次コンクリート函体4を吊り降ろし、コンクリート函体4を縦列に埋設する過程において、オープンシールド機1のテール部1cにコンクリート函体4を吊り降ろして、底板20上に載置する。
底板20はボルト締めにより、左右とも安定してテール部1cの側壁板25に支持されて取付けられるから、底板20上に載置されるコンクリート函体4の荷重もしっかりと支えることができる。
なお、コンクリート函体4をテール部1cに吊り降ろす際に、コンクリートブロック等による高さ調整材をコンクリート函体4下に配設し、このテール部1c内でコンクリート函体4の左右および下部の空隙に一次注入として、裏込め材としてのグラウト材を充填する。
一次注入が完了すれば、バックホウなどの掘削機でフロント部1d内およびその前方の切羽地山を掘削する。その後、推進ジャッキ2を伸長させて、テール部1c内のコンクリート函体4から反力を取り、オープンシールド機1を前進させる。これにより、コンクリート函体4がオープンシールド機1の後方に相対的に移動する。
このとき、底板20はボルト締めにより左右側壁板25に固定されて後方への移動が規制されるから、コンクリート函体4の後方への移動に伴って、底板20がコンクリート函体4とともにテール部1cの後方に抜け落ちてしまうことがない。すなわち六角ボルト18が、底板20と側壁板25との接合部において、底板20の後方への移動規制手段として作用する。
また、左右側壁板1aおよび底板部27と底板20との間はシール材によって止水されているから、地下水位が高い箇所を施工する場合であっても、底板20の周りからテール部1c内に地下水が浸入することがなく、コンクリート函体4の設置および裏込め注入の作業が阻害されることがない。
また、オープンシールド機1の前進に伴い隔壁3が前方に移動することにより、フロント部1d内およびその前方の土砂が圧密されるが、周辺地山が崩壊し易い地質である場合には、更に土圧調整ジャッキ28を伸長させて隔壁3を前方へ押し出し、これによってフロント部1d内およびその前方の土砂を更に圧密して、掘削機での掘削・排土を容易とすることができる。
このように、地質が崩壊し易いなど地盤が不安定だったり、地下水位が高い箇所を施工する場合には、テール部1cに底板20を装着することにより、裏込注入タイプの施工を行うことができる。
一方、施工途中で周辺地山の様子が変わり、地下水位が低く、地盤が安定している箇所を続けて施工する場合には、以下の手順でテール部1cから底板20を取り外す。まず、テール部1cにおいてコンクリート函体4と縮めた推進ジャッキ2との間にストラット34およびプレスバー8を配置し、推進ジャッキ2を伸長させて、底板20上のコンクリート函体4をテール部1cの後方へと押し出す。
次に、ストラット34およびプレスバー8を撤去して、ボルト18およびナット15をボルトボックス21、17から取り外し、底板20を上から引き上げてテール部1cより撤去する。
このようにしてテール部1cから底板20を取り外すことにより、図5に示すように、テール部1cにおいてコンクリート函体4を吊り下ろした際に遮る物が無くなり、掘削された地盤上にコンクリート函体4を直接載置することができる。これにより、裏込注入無しタイプの施工が可能となる。
なお、底板20が無くなった分の厚みの調節は、テール部1cにおいてコンクリート函体4を吊り下ろす前に、掘削された地盤上に掘削土を埋め戻すか、砂利などを敷き詰めて行う。
一方、地下水位が低く地盤が安定した箇所から、地盤が不安定だったり、地下水位が高い箇所へと施工箇所が切り替わる場合には、前記同様、テール部1cにおいてコンクリート函体4と縮めた推進ジャッキ2との間にストラット34およびプレスバー8を配置し、推進ジャッキ2を伸長させて、テール部1c内のコンクリート函体4をテール部1cの後方へと押し出す。
そして、ストラット34およびプレスバー8を撤去して、テール部1cに底板20を吊り下ろし、前記のように、ボルトボックス21、17において底板20を左右側壁板25下端にボルト締めして取付ける。
このように、底板20の着脱のみによって、裏込め注入を行う施工法と行わない施工法との、両方の施工法に対応させることができ、施工範囲内に異なる施工法による施工箇所が存在する場合でも、施工途中におけるオープンシールド機1の交換を不用として効率良く施工することができる。
なお、周辺の事情から設置するコンクリート函体4の横幅に対してオープンシールド機1の横幅をあまり大きくできない場合には、前記のように左右の側壁板25の下端に直接、底板20を取付けることが好ましいが、そうでない場合には図6に示すように、側壁板1aの下端を内向きに屈曲させて張り出し部16を形成するようにしても良い。左右の張り出し部16間の距離は、設置するコンクリート函体の横幅よりも長くなるよう設定する。
この場合も前記同様、図7に示すように、金属板による底板20の左右両縁に取付け板21aを残した状態で左右両端に上面開口のボルトボックス21を形成し、これに対応させて、左右側壁板25下端に取付け板17a部分を残して内面開口のボルトボックス17を形成する。
そして前記同様、底板20の周囲をシール材で止水した状態で、両ボルトボックス21、17において、六角ボルト18およびナット15によりボルト締めして、底板20を左右の張り出し部16間に着脱自在に取付ける。
このように張り出し部16を設けるようにすれば、図8に示すように、底板20を取り外してオープンシールド機1を使用する際、張り出し部16の分だけ、テール部1cの地盤への接地面積を大きくすることができ、比較的軟弱な地盤でもオープンシールド機1の自重によるオープンシールド機1の沈下を低減することができる。
なお、いずれの場合も底板20の取付けはボルト締めにより行うようにしたが、これに限らず、側壁板25下端または張り出し部16先端と、底板20の左右側縁とに互いに係合する段差を設けて、これを係合させて底板20を取付けるようにしても良い。
ただし、底板20の取付け手段によっては底板20のテール部1c後方への移動が規制されない場合には、このような移動を規制するため、ピンやフック等による移動規制手段を、底板20と側壁板25との接合部または、底板20とテール部1c前部との間に設ける必要がある。
底板20の取付けをボルト締めにより行えば、底板20を左右の側壁板25間で保持できて着脱が容易であるのみならず、同時に底板20のテール部1c後方への移動も規制することができるため、好適である。
次に、本発明のオープンシールド機の第2実施形態を、図9に示す。テール部1cの着脱自在の底板20の構成は前記第1実施形態と同一であるので、説明を省略する。
本実施形態のオープンシールド機1も前記第1実施形態同様に、機体を前後に分割して屈曲可能としたものであるが、テール機23にテール部仕切り板31を設けず、テール機23の前部且つフロント機24後端へ嵌入する断面積の縮小部分の後端において、左右側壁板25より内向きに突出壁52を設け、これより前方を中折れ部1e、後方をテール部1cとする。そして、突出壁52の背面には設置するコンクリート函体の側板の位置に合わせて、後方へ向けて推進ジャッキ2を左右両側に、また上下複数段に配設する。
また、フロント機24にもフロント部仕切り壁32を設けず、フロント機24後部においてテール機23先端の嵌入部分の左右側壁板1aを内側から減厚し、これにより形成される段差部33に後方へ向けて中折ジャッキ30を左右によせて、また上下複数段に配設している。
なお、段差部33より前方をフロント部1dとするとともに、フロント機24の底面には左右の側壁板1aに連結する底板1bを備え、前記側壁板1aと底板1bの先端を刃口11として形成し、フロント部1dの前端と上面は開放面とする。
フロント部1dの中ほどよりやや後ろ寄りの左右側壁板1a間には、フロント部1dを前後に区画する開閉式の隔壁3を配設する。隔壁3は後方に開く観音開き式扉を蝶番を介して取付けるものである。
なお、隔壁3の開閉方式としては前記のような後ろ開きの観音開き式に限らず、この他、折り戸式(図10)、前開きの観音開き式(図11)、上下スライド式(図12)、シャッター式(図13)、前方傾倒式(図14)など、様様な方式が採用可能である。
ただし、前開きの観音開き式を採用する場合には、蝶番を隔壁3の両端に取付けると、隔壁3を開いた際に、フロント部1d内に取り込んだ既設水路40の側壁42の存在により、隔壁3を目いっぱい開くことができないため、隔壁3の開閉部分の横幅を、既設水路40の内幅(側壁42間の幅)と同程度かそれよりも小さめに設定することが好ましい。
そして、中折れ部1eにおいて、テール機23とフロント機24との左右の隙間をゴムなどの柔軟性に富む止水材36により閉塞する。
使用法および作用について説明すると、施工範囲内に既設水路40が存在し、これを撤去しながら新たにコンクリート函体4を設置することにより、水路の改修工事を行う場合に、既設水路40の水を施工箇所より上流で塞き止めた上で、テール部1cに底板20を取付けて隔壁3を閉じた状態で、オープンシールド機1を既設水路40に対向させる。
そして既設水路40の後端の1区分をフロント部1d内に取り込み、既設水路40後端の周囲を側壁板1aによって土留めした状態で既設水路40を1区分撤去して、テール部1cの底板20上へコンクリート函体4を吊り下ろし、隔壁3より前方の土砂を掘削し、コンクリート函体4周囲の裏込め注入、および、推進ジャッキ2の伸長によるオープンシールド機1の推進を繰り返し行う。
そして1日の作業が終わり既設水路40より塞き止めた水を放流する場合、または、集中豪雨などにより既設水路内に流れ込んだ水を排水する必要が生じた場合には、既設水路40の後端をフロント部1d内に取り込んだ状態で隔壁3を開く。
これにより、オープンシールド機1が断面U字形の樋となって、既設水路40から後方のコンクリート函体4による改修済み水路へと排水可能となり、オープンシールド機1内より水が溢れる危険性を回避できるとともに、別途排水ルートを確保せずに済む。
また、オープンシールド機1のテール部1cには底板20が装着された状態であり、側壁板25および底板部27と底板20との間と、テール機23とフロント機24との嵌着部分の隙間は止水されているから、放流時に水がオープンシールド機1から漏れて周辺地山を洗掘してしまうことがない。
一方、施工途中で周辺地山の様子が変わり、地下水位が低く、地盤が安定している箇所を続けて施工する場合には、前記第1実施例と同様に、テール部1cの底板20上のコンクリート函体4を後方へと押し出してからボルト締めを解除して底板20を取り外し、テール部1cに底板20が無い状態として、吊り下ろされたコンクリート函体4を掘削された地盤上に直接載置し、裏込め注入を行わないタイプの施工法により施工する。
次に、本発明のオープンシールド機の第3実施形態を、図15および図16に示す。本実施形態の基本構成は前記第1実施形態と同一であるが、隔壁3を上下2段に分けた点で前記第1実施形態と異なる。
下段の隔壁37にはその位置に対応させて、フロント部1dの底板1bの上面より垂直下向きに戸袋39を形成するとともに、左右の側壁板1aの内側に上下方向のスライド溝(付図示)を形成し、下段の隔壁37の下端を戸袋39に収めて、上下にスライド自在とする。
また、下段の隔壁37のスライド範囲は、オープンシールド機1に対して既設水路40の底面がとり得る高さの範囲に設定し、下段の隔壁37の高さを既設水路40の底面の高さに合わせて調節できるようにする。
一方、上段の隔壁38は開閉式のものであり、その開閉方式は前記第2実施例と同様に各種の方式を採用可能であるが、スライド式(図12)やシャッター式(図13)など、下端の高さ調節が可能な方式を採用する場合には、最も下げた状態の下段の隔壁37の上端と同じ高さまで、上段の隔壁38の下端を下げられるように設定する。
また、下端の高さ調節が不可能な方式を採用する場合には、下端の位置を、最も下げた状態の下段の隔壁37の上端と同じ高さにするとともに、下段の隔壁37との前後位置関係については、下段の隔壁37に対して上段の隔壁38を、開閉方向と同方向に配設する。
このオープンシールド機1の使用法および作用について説明する。施工範囲内に既設水路40が存在し、これを撤去しながら新たにコンクリート函体4を設置することにより、水路の改修工事を行う場合であって、オープンシールド機1の底面と既設水路40の底面とに高低差がある場合に、まずは前記第2実施例同様に既設水路40の水を施工箇所より上流で塞き止めた上で、テール部1cに底板20を取付けて上段の隔壁38を閉じた状態で、オープンシールド機1を既設水路40に対向させ、既設水路40を撤去しつつ裏込め注入タイプの施工を行う。なお、各工程については前記第2実施形態と同様であるので、ここでの詳細な説明を省略する。
そして1日の作業が終わり既設水路40より塞き止めた水を放流する場合、または、集中豪雨などにより既設水路内に流れ込んだ水を排水する必要が生じた場合には、既設水路40の後端をフロント部1d内に取り込んだ状態で、下段の隔壁37を上下にスライドさせてその高さを既設水路40の底面の高さに合わせ、上段の隔壁38を開く。
なお、下段の隔壁37を上下にスライドさせた際の位置決め固定は、側壁板25に対して下段の隔壁37を適宜ボルト締めするなどして行う。
これにより、オープンシールド機1が断面U字形の樋となって、既設水路40から後方のコンクリート函体4による改修済み水路へと排水可能となる。
また、既設水路40の底面より下の部分の土砂がフロント部1d内に残っていても、これを下段の隔壁37によって土留めするから、フロント部1d内の土砂が水とともに後方に押し流されてテール部1dに溜まりコンクリート函体4の設置作業を阻害したり、改修済みの既設水路内に溜まって水路の内部空間を狭めたりしてしまうことがない。
このように、隔壁3を上下2段とすることで、オープンシールド機1の底面と既設水路40の底面とに高低差がある場合であっても、高低差分の土砂を下段の隔壁37によって土留めしつつ、上段の隔壁38を開いて既設水路40からの水をオープンシールド機1内を通して後方に送ることができる。
また、水路の改修作業中でも放流が可能となり、別途排水ルートを確保せずに済むこと、及び、放流時にオープンシールド機1から多量の水が漏れて周辺地山を洗掘してしまうことがない点については、前記第2実施例と同様である。
なお、下段の隔壁37は上下にスライド自在とすることで容易に高さ調節を行うことができるが、高さ調節の方法はこれに限らず、例えば下段の隔壁37を更に上下複数に分割し、配設する板の数によって調節することもできる。
一方、施工途中で周辺地山の様子が変わり、地下水位が低く、地盤が安定している箇所を続けて施工する場合に、テール部1cにおいて底板20を取り外して裏込め注入無しタイプの施工を行う点は、前記第1実施例と同様である。
次に、本発明のオープンシールド機の第4実施形態について説明する。図17に示すように、本実施形態のオープンシールド機1も機体を前後に分割して屈曲可能としたものであり、中折れ部1eより後方部分の構成は前記第1実施形態と同様であるから、ここでの詳細な説明は省略する。
本実施形態のオープンシールド機1はフロント機24の後部において、左右側壁板1a間に隔壁3を配設し、隔壁3を含んでそれより前方をフロント部1dとして、フロント部1dの前方を覆うように、金属板による閉鎖壁13を幅方向に配設し、左右側壁板1aの先端に外側から被せるように、その両端を後方に折り曲げる。
なお、閉鎖壁13左右両端の折り曲げ部分の内側と、フロント部1dの側壁板1a先端外側とに、互いに嵌合するガイド溝を設けても良い。これにより、閉鎖壁13をフロント部1dの上下にスライドさせて着脱自在とするとともに、閉鎖壁13を配設した状態で閉鎖壁13がフロント部1d前方に傾倒しないようにすることができる。
次に、このように構成するオープンシールド機1を使用した本発明のオープンシールド工法の1実施形態について説明する。なお、コンクリート函体の埋設方法および使用するコンクリート函体は前記従来例と同様である。
まず、地盤が崩壊し易い箇所を施工する場合、テール部1cに底板20を取付けた状態で、第1工程として図17に示すように、フロント部1dの前方に閉鎖壁13を配置する。
そしてその状態でフロント部1d内の土砂をバックホウなどの掘削機により掘削排土する。このとき、フロント部1d前方は閉鎖壁13により覆われているから、フロント部1d内を掘削している間にオープンシールド機1前方の地山が崩れてフロント部1d内になだれ込み、周辺地山が緩んでしまうということがない。
また、閉鎖壁13による土留めにより、前方からフロント部1d内に崩壊した土砂が流入するのを防ぎつつフロント部1d内を掘削排土して空にすることができる。
そしてフロント部1d内が空になると、第2工程としてフロント部1dから閉鎖壁13を撤去してフロント部1d前方を開き、すぐに推進ジャッキ2を伸長させて後方のコンクリート函体4を反力としてオープンシールド機1を前進させる。
このとき、フロント部1d内は先の掘削排土の工程において空になっているから、フロント部1d内に溜まった土砂の土圧によりオープンシールド機1の推進推力が増大して、オープンシールド機1の推進が困難になったり、推進反力を伝達させるコンクリート函体4に過大な負荷をかけて破損してしまったりするのを防ぐことができる。
そして前進が終わったら第3工程として、すぐにフロント部1dの前方に閉鎖壁13を配置して、その状態のまま推進ジャッキ2を縮め、テール部1cにコンクリート函体4を吊り下ろし、底板20上で裏込め注入(一次注入)を行い、前記第1工程に戻る。
このように、次にオープンシールド機1を前進させる直前まで閉鎖壁13によりフロント部1d前方を覆い続けるから、フロント部1d前方が開口している時間は短く、その間に周辺地山の崩壊が進んでしまうことが無い。
一方、施工途中で周辺地山の様子が変わり、地盤が崩壊し難い箇所を続けて施工する場合には、閉鎖壁13を使用せず、フロント部1d前方を開放した状態で施工を行う。なお、テール部1cにおいて底板20を取り外して裏込め注入無しタイプの施工を行う点は、前記第1実施例と同様である。
このように、施工範囲内に地盤が崩壊し易い箇所とそうでない箇所が混在する場合の各施工法は、テール部1cでの底板20の着脱およびフロント部1d前方での閉鎖壁13の配置・撤去のみで実現できるから、施工法毎に別途オープンシールド機1を用意してこれを施工途中に交換しなくても、個々の施工箇所に合った施工法に対応させることができる。
なお、閉鎖壁13の配設方法としては、フロント部1dの前方に被せるように配設するのみならず、フロント部1d内において、左右側壁板1a間の前方位置に着脱自在に配設することも可能であり、更に図18に示すように左右複数に分割して、底板1bの先部上面に立設したH形鋼29をガイドとして上下にスライドさせて着脱自在としても良い。
ただし、閉鎖壁13および左右側壁板1aによるフロント部1d内の囲繞空間を最大限確保するためには、前記実施例のごとく、フロント部1dの先端に被せるように閉鎖壁13を配設することが好ましい。
以上、本実施例のオープンシールド工法は、フロント部1dに対して着脱自在の閉鎖壁13を備えるオープンシールド機1を使用して行うようにしたが、これに限らず、閉鎖壁13を備えない既存のオープンシールド機に別途閉鎖壁13を組み合わせて使用して行うこともできる。
また、機体を前後に複数分割した屈曲可能なオープンシールド機のみならず、図19のような全体が一体型のオープンシールド機にも適用可能である。
本発明のオープンシールド機の第1実施形態のテール部を示す縦断背面図である。 本発明のオープンシールド機の第1実施形態を示す全体平面図である。 底板と側壁板下端との取り付け部分を示す縦断背面図である。 本発明のオープンシールド機の第1実施形態を示す縦断側面図である。 底板を外した状態のテール部を示す縦断背面図である。 側壁板下端に内向きの張り出し部を設けたテール部の実施例を示す縦断背面図である。 底板と張り出し部との取り付け部分を示す縦断背面図である。 図6のオープンシールド機について底板を外した状態のテール部を示す縦断背面図である。 本発明のオープンシールド機の第2実施形態を示す全体平面図である。 開閉式隔壁の第2例を示す平面図である。 開閉式隔壁の第3例を示す平面図である。 開閉式隔壁の第4例を示す平面図である。 開閉式隔壁の第5例を示す平面図である。 開閉式隔壁の第6例を示す平面図である。 本発明のオープンシールド機の第3実施形態を示す全体平面図である。 本発明のオープンシールド機の第3実施形態を示す縦断側面図である。 本発明のオープンシールド機の第4実施形態のフロント部を示す平面図である。 閉鎖壁の他の例を示す平面図である。 オープンシールド工法の概略を示す縦断側面図である。 従来の機体を前後に分割したオープンシールド機の縦断側面図である。 従来のコンクリート函体の斜視図である。
符号の説明
1 オープンシールド機 1a 側壁板
1b 底板 1c テール部
1d フロント部 1e 中折れ部
2 推進ジャッキ 3 隔壁
4 コンクリート函体 4a 左側板
4b 右側板 4c 上床板
4d 下床板 5 埋戻土
6 グラウト材 7 高さ調整材
8 プレスバー 9 掘削機
10 開口 11 刃口
13 閉鎖壁 15 ナット
16 張り出し部 17 ボルトボックス
17a 取付け板 18 六角ボルト
20 底板 21 ボルトボックス
21a 取付け板 23 テール機
24 フロント機 25 側壁板
27 底板部 28 土圧調整ジャッキ
29 H形鋼 30 中折れジャッキ
31 テール部仕切り壁 32 フロント部仕切り壁
33 段差部 34 ストラット
36 止水材 37 下段の隔壁
38 上段の隔壁 39 戸袋
40 既設水路
41 底床板 42 側壁
50 可動分割刃口 51 後部土留板
52 突出壁

Claims (10)

  1. 左右の側壁板とこれら側壁板に連結する底板とからなる前後端及び上面を開口したシールド機内に推進ジャッキを設け、シールド機前面または前部上面より前方の土砂を掘削機で掘削・排土する工程と、推進ジャッキを伸長して後続するコンクリート函体等の既設地下構造物を反力にしてシールド機を前進させる工程と、シールド機のテール部内で縮めた推進ジャッキの後方に新たな地下構造物をセットする工程とを適宜繰り返して順次地下構造物を縦列に埋設するオープンシールド工法において、地下構造物周囲への裏込め注入を必要とする施工箇所ではテール部に底板を装着した状態で、この底板上に載置した地下構造物の周囲に裏込め注入を施し、裏込め注入を必要としない施工箇所では前記底板を取り外した状態で、掘削した地盤上に地下構造物を直接載置してその周囲に土砂を埋め戻すことを特徴とするオープンシールド工法。
  2. 左右の側壁板とこれら側壁板に連結する底板とからなる前後端及び上面を開口したシールド機内に推進ジャッキを設け、シールド機前面または前部上面より前方の土砂を掘削機で掘削・排土する工程と、推進ジャッキを伸長して後続するコンクリート函体等の既設地下構造物を反力にしてシールド機を前進させる工程と、シールド機のテール部内で縮めた推進ジャッキの後方に新たな地下構造物をセットする工程とを適宜繰り返して順次地下構造物を縦列に埋設するオープンシールド工法において、地盤が崩壊しにくい施工箇所ではテール部から底板を取り外した状態で、掘削した地盤上に地下構造物を直接載置してその周囲に土砂を埋め戻し、地盤が崩壊し易い施工箇所では、テール部に底板を装着するとともにシールド機のフロント部前方を閉鎖壁で覆った状態で、この底板上に地下構造物を吊り下ろし該地下構造物の周囲に裏込め注入を施す工程と、閉鎖壁とフロント部内とによる囲繞空間内を掘削・排土する工程と、前記閉鎖壁を撤去してシールド機を前進させる工程とを繰り返すことを特徴とするオープンシールド工法。
  3. 左右の側壁板とこれら側壁板に連結する底板とからなる前後端及び上面を開口したシールド機で、後方のテール部内左右に推進ジャッキを後方に向け上下に並べて配設したオープンシールド機において、テール部の底板を着脱自在に配設し、テール部の底板上に地下構造物を載置可能とする底板装着状態と、掘削した地盤上に地下構造物を直接載置可能とする底板離脱状態とを、選択して使用可能とすることを特徴とするオープンシールド機。
  4. テール部の左右側壁板下端において、底板の左右側縁を着脱自在に接合する請求項3記載のオープンシールド機。
  5. テール部の左右側壁板下端に内向きの張り出し部を設け、この張り出し部の先端において、底板の左右側縁を着脱自在に接合する請求項3記載のオープンシールド機。
  6. 底板がテール部後方へと移動するのを規制する移動規制手段を、底板と側壁板との接合部または、底板とテール部前部との間に設ける請求項4または請求項5記載のオープンシールド機。
  7. 左右側壁板間に配設して機体内を前後に区画する隔壁を前後にスライド可能に設ける請求項3ないし請求項6のいずれかに記載のオープンシールド機。
  8. 左右側壁板間に配設して機体内を前後に区画する隔壁を開閉自在とする請求項3ないし請求項6のいずれかに記載のオープンシールド機。
  9. 左右側壁板間に配設して機体内を前後に区画する隔壁を上下2段に構成し、上段の隔壁を開閉自在とし、下段の隔壁を既設水路の底面に合わせて高さ調節自在とする請求項3ないし請求項6のいずれかに記載のオープンシールド機。
  10. オープンシールド機の幅方向の閉鎖壁をフロント部の前方に着脱自在に配設する請求項3ないし請求項9のいずれかに記載のオープンシールド機。
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