本発明は、IL−2共通γ鎖(cγc)およびその関連分子の、NIKにより制御されるシグナル活性を調節するための使用、ならびにそのような新規の分子に関する。
核因子κB(NF−κB)は、免疫応答、細胞増殖および生存性の制御に関与する真核生物の誘導型転写因子複合体のファミリーである(Ghoshら、1998)。NF−κB因子は、通常、IκBαやその関連タンパク質など、IκBと名づけられた、アンキリンに富む細胞質インヒビターのファミリーとの物理的結合により細胞質区画に隔離されている(Baldwinら、1996)。IκBは、サイトカイン、マイトジェンおよび特定のウイルス遺伝子産物など多様な刺激に応答して、速やかにセリン32および36がリン酸化され、ユビキチン化された後、26Sプロテアソームによって分解されるが、それによって、遊離したNF−κBが核に移行して、標的遺伝子の転写促進に関与することが可能になる(Mercurioら、1999、Pahlら、1999)。最近の分子クロニーング研究において、IκBのシグナル誘導によるリン酸化を仲介する多サブユニットのIκBキナーゼが確認された。IKKは、2種類の触媒性サブユニットであるIKKαおよびIKKβ、ならびに調節サブユニットのIKKγから構成されている。IKKαおよびIKKβの触媒活性はともに、炎症性サイトカイン、腫瘍壊死因子およびインターロイキン−1、T細胞レセプター、ならびにT細胞共刺激タンパク質であるCD28など、多数の様々なNF−κB誘導因子によって活性化させることができる(Karinら、2000)。
NF−κB誘導キナーゼであるNIK(MAP3K14)は、本出願人らが、1996年に、TNFレセプター結合アダプタータンパク質TRAF2に結合するタンパク質をスクリーニングしている際に発見した、マイトジェンによって活性化されるタンパク質キナーゼ(MAP3K)である(国際公開第97/37016号パンフレット)(Rotheら、1994、Takeuchiら、1996)。このタンパク質キナーゼを過剰発現させると、NF−κBが顕著に活性化され、また、触媒としては不活性なNIK変異体を発現させると、さまざまな誘導因子(LMP1、TNFR1、TNFR2、RANK、hTollR、CD3/CD28、インターロイキン−1R、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス−1 Tax、LPSなど(Mlininら、1997、Syllaら、1998、Darnayら、1999、Linら、1999、Geleziunasら、1998))に応答してNF−κBが活性化されるのを効果的に阻害するということは、NIKが、NF−κBの活性化シグナル伝達に関与していることを示唆するものである(Mlininら、1997)。
NIK遺伝子を標的とする遺伝子破壊(Yinら、2001)、およびNIKにミスセンス点変異(mNIKの855番目のコドンがグリシンからアルギニンに)(Shinkauraら、1999)を有する天然のマウス系統の研究によって、リンパ器官の発生におけるNIKの主要な役割が明らかになったため、このマウス変異系統は「リンパ形成不全(aly)」マウスと呼ばれている。aly/alyマウスおよびNIKノックアウトマウスとも、全身においてリンパ節およびパイエル板が欠如しており、脾臓および胸腺の構造が無秩序で、また、低い血清Ig濃度および移植片拒絶を起こさないという点を最も弾力性に富む(resilient)特徴とする免疫不全症を示す(Shinkauraら、1999)。これらの異常は、明らかに、さまざまなレセプターによる異常なシグナル伝達を反映したものである。NIK変異マウスの発育不全は、LTβレセプター(LTβR)が欠損したマウスに見られる発育不全と類似しており、NIKが、この特定のレセプターによるシグナル伝達に関与していることを示唆している。aly/alyマウスにおけるB細胞増殖能障害は、これらの細胞のLPSおよびCD40Lに対する応答不全と相関していることを示しているかもしれない(Garceauら、2000)。また、そのマウスの腹腔においてB1細胞が過剰量存在するのは、二次リンパ組織におけるケモカインレセプターのシグナル伝達が欠失する結果、消化管関連リンパ管組織系への腹膜細胞のホーミングに欠陥があるせいなのかもしれない(Fagarasanら、2000)。
これら、および恐らく他にもある免疫系の発達および機能の制御への寄与以外に、NIKは、さまざまな非免疫機能の制御にも関与していると思われる。aly/alyマウス(NIKノックアウトではない)は、乳腺の発達不全を示す(Miyawaki、1994)。さらに、インビトロ研究では、NIKが、骨格筋細胞の分化をもたらすシグナル伝達(Canicioら、2001)ならびにニューロンの生存性および分化(Foherら、2000)に関係していることを示した。
NF−κB活性化のメディエーターとして示唆されたNIKの役割に符合して、aly/alyマウスおよびNIK−/−マウス由来の線維芽細胞は、LTβRの活性化に応答してNF−κBを活性化することができない。さらに、NF−κB活性化を介して起こる、LTβRによるVCAM−1のアップレギュレーションが、aly/alyマウスの胚線維芽細胞では正常でない(Matsumotoら、1999)。IκBの不充分なリン酸化は、aly/aly B−リンパ球のCD40ライゲーションに対する応答においても注目されている。これに対し、これらのマウスの樹状細胞において、IκBのCD40誘導リン酸化は正常だと考えられた(Garceauら、1998)。aly/alyの腹膜細胞も、ケモカインSLCにNF−κB活性の上昇をもって応答することができない(Fagarasanら、2000)。しかしながら、これまでに調べられた細胞のいずれにおいても、NIKを変異させることによって、NF−κB活性化に対するTNFまたはIL−1の作用を取り除けるとは認められていない。
aly/alyマウスのリンパ器官におけるNF−κB分子種のパターンを評価したところ、Relタンパク質(A+p50)およびIκBから成るNF−κB複合体の制御における役割以外に、NIKは、他のNF−κB分子種の発現/活性化の調節にも関与していることが示された。最も注目すべきは、aly/alyマウスのリンパ球には、不活性型前駆体であるp100(NF−κB2)のタンパク質分解処理によって成熟したBリンパ球内で特異的に形成されるNF−κB分子種の1つであるp52が欠乏していることであり、このことは、p100−p52変換に欠損があることを示唆している(Yamadaら、2000)。実際、NIKは、p100の部位特異的リン酸化に関与することが明らかになっている。双方、IKKαのリン酸化により直接的に終わり(Both directly end trough phosphorylation of IKKα)、今度は、p100をリン酸化する。このリン酸化は、ユビキチン化およびp100を能動的にプロセッシングしてp52を形成させるための分子トリガーとして作用する。このp100のプロセッシング活性は、aly変異によって除去できることがわかっている(Xiaoら、2001、Senftlebenら、2001)。
MAP3Ksに対するNIKの構造的相同性に鑑みて、MAP3Ksが関与することが知られている他の3つの主なタンパク質キナーゼカスケード(MAPキナーゼカスケード:ERK、JNKおよびp38カスケード)におけるNIKの関与を解明しようとする試みがなされてきた(Akibaら、1998)。ある細胞においては、NIKはこれらのカスケードのいずれにも関与しないように見えるが、別の細胞(PC12)においては、NIKはERKカスケードに関与すると考えられている(Fochrら、2000)。ある種の細胞において、NIKが、JNKカスケードの下流標的であるJunのリン酸化シグナル伝達に、この特定のカスケードとは別の方法で関与する可能性を示す証拠も提示されている(Akibaら、1998、Natoliら、1997)。これらの知見を総合すると、NIKは、実際にNF−κB活性化のメディエーターとして作用するが、他の機能も担っている可能性があること、および、これらの機能を細胞特異的態様およびレセプター特異的態様で行なっていることが示されている。
他のMAP3K同様、NIKは、NIK分子内の「活性化ループ」をリン酸化した結果として活性化され得る。実際、このループの中にあるリン酸化部位(Thr−559)を変異させると、NIKの過剰発現の際のNF−κBの活性化が抑制される(Linら、1999)。また、NIKの活性は、そのキナーゼモチーフの上流および下流にある領域が互いに結合できることによって制御されているようである。NIKのキナーゼ部分の下流にあるC末端領域は、p100(Xiaoら、2001)やTRAF2(Malininら、1997)に対するのと同様、IKKαに直接結合できることが示されている(Regnierら、1997)。これらの相互作用は、明らかに、NF−κBシグナル伝達におけるNIKの機能に必要なものである。NIKのN末端領域は、基本モチーフ(BR)およびプロリンに富む反復モチーフ(PRR)から成る負の制御ドメイン(NRD)を含む(Xioaら、2000)。明らかに、N末端NRDは、NIKのC末端領域とシスに相互作用して、それによりNIKがその基質(IKKαおよびp100)に結合するのを阻害する。異所発現させたNIKは、各NIK分子におけるN末端領域とC末端領域とのこれらの結合が明らかに破壊されているオリゴマーを自発的に形成して、高レベルの構造的活性を示すように見える(Linら、1999)。NIKのC末端領域がTRAF2(他のTRAFも同様)に結合すると、NIKの活性化プロセスに関与する可能性が最も高い。しかしながら、その関与の正確な態様は知られていない。
さらに、NIK作用における下流の機序については、まだ予想以上に限られた情報しかない。NIKは、そのC末端領域のIKKαへの結合を介してIκBキナーゼ(IKK)複合体を活性化することができるという証拠が提示されている。実際に、IKKαの活性化ループ内のセリン−176をリン酸化でき、それによって活性化されることが明らかになっている(Lingら、1998)。このような作用機序と整合するように、aly/alyマウスの胚線維芽細胞(MEF)においてLTβRによるNF−κBの活性化が不十分になることの機序の研究結果は、NIKの変異が、IKKシグナルソーム(signalsome)の活性化とその結果としてのIκBのリン酸化を除去することが示された(Matsushimaら、2001)。しかし、これらの知見は、NIK−/−マウス由来のMEFの解析によって裏付けられてはいない。NIK欠失MEFはLTβへの応答によるNF−κBの活性化を明らかに示すことはできないが、IκBのリン酸化と分解については、正常にそれに応答しているように見える(Yinら、2001)。これらの知見によれば、NIKは、LTβRによるIKK複合体の活性化に全く関与せず、むしろNF−κB複合体が核に移行した後に、今のところ未知のメカニズムによって、その転写作用を調節することに関与している。また、NIKがp100のリン酸化とプロセッシングを開始する方法についてはまだ不明な点もある。C末端領域を介してp100に直接結合してそれをリン酸化するその能力は、p100が、NIKの直接の基質として作用することを示唆している(Xiaoら、2000)。それにもかかわらず、最近の研究では、NIKは、IKKαをリン酸化して活性化し、次にp100をリン酸化するという間接的な方法でp100のリン酸化をもたらすことが示唆されている(Senftlebenら、2001)。
ヤマモトおよびゲイナー(YamamotoおよびGaynor)が、ヒトの疾患の病因におけるNF−κBの役割を概説している(YamamotoおよびGaynor、2001)。NF−κB経路の活性化は、喘息、関節リウマチ(TakおよびFirestein、本パースペクティブシリーズ、参考文献のKarinら、2000参照)、および炎症性大腸疾患などの慢性炎症性疾患の病因に関係している。さらに、NF−κB制御の変化は、アテローム性動脈硬化症(CollinsおよびCybulsky、本シリーズ、参考文献のLeonardら、1995参照)およびアルツハイマー病(MattsonおよびCamandola、本シリーズ、参考文献のLinら、1999参照)など、炎症反応が少なくとも部分的に関与する他の疾患に関係する可能性がある。最後に、NF−κB経路の異常は、様々な人間の癌にもしばしば見られる。
いくつかの証拠が、サイトカイン遺伝子のNF−κB活性化が、肺における炎症性細胞の浸潤と多くのサイトカインおよびケモカインの脱制御という特徴をもつ喘息の病因への重要な引き金であることを示唆している(Lingら、1998)。同様に、NF−κB経路の活性化も、関節リウマチの病因において役割を担っている可能性が高い。TNF−αなど、NF−κBを活性化するサイトカインが関節リウマチ患者の滑液中で増加し、これらの患者の関節には慢性の炎症性変化および滑膜の肥厚が見られる(Malininら、1997)。TNF−α、またはTNF−αに結合するTNF−αレセプターの切断型に対する抗体を投与すると、関節リウマチ患者の症状を顕著に改善することができる。
また、リンパ球およびマクロファージの両方による前炎症性サイトカインの産生の増加も、クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性大腸炎の病因に関与するとされている(Matsumotoら、1999)。活動性クローン病および潰瘍性大腸炎の患者から採取した粘膜の生検試料においてNF−κB活性化が見られる。ステロイド剤による炎症性大腸炎患者の治療は、生検試料におけるNF−κB活性を低下させ、臨床症状を和らげる。これらの結果は、NF−κB経路の刺激が、これらの疾患に伴う炎症反応の促進に関与し得ることを示唆している。
アテローム性動脈硬化症は、損傷を受けた血管壁の内皮および平滑筋に対する多数の傷害によって発症する(Matsushimaら、2001)。内皮細胞、平滑筋、マクロファージおよびリンパ球から放出される多数の成長因子、サイトカインおよびケモカインが、この慢性の炎症性および線維増殖性(fibroproliferative)プロセスに関係している(Matsushimaら、2001)。炎症反応および細胞増殖の調節に関与している遺伝子のNF−κB制御が、アテローム性動脈硬化症の発症および進行において重要な役割を果たしている可能性が高い。
最後に、NF−κB経路の制御における異常は、アルツハイマー病の病因に関係している可能性がある。例えば、NF−κBの免疫応答性は、主に、アルツハイマー病における早期の老人斑型の中および周辺に見られるが、成熟した老人斑型では、NF−κB活性の大幅な低下を示す(Mercurioら、1999)。このように、NF−κB活性化は、アルツハイマー病の初期段階の間、老人斑および神経細胞のアポトーシスの始動に関係し得る。これらのデータは、NF−κB経路の活性化が、その病因に関係付けられる炎症成分を有する多くの疾患に関与する可能性を示唆している。
宿主の免疫および炎症反応が増加するという特徴をもつ疾患の病因における役割に加えて、NF−κB経路の構成的活性化は、いくつかのヒトの癌の病因にも関係すると言われている。NF−κB経路の制御の異常が、白血病、リンパ腫および固形癌など、ヒトの様々な悪性腫瘍に頻繁に見られる(Miyawakiら、1994)。これらの異常は、乳癌、卵巣癌、前立腺癌および大腸癌など、様々な腫瘍の核において構成的に高濃度のNF−κBをもたらす。これらの変化の大部分は、NF−κB経路の活性化を誘導するシグナル伝達経路を活性化する調節タンパク質が変化することによる可能性が高い。しかし、NF−κBファミリーのメンバーをコードする遺伝子の増幅および再構成に加えて、IκBタンパク質を不活性化する変異が、いくつかの腫瘍に見られるNF−κBの核レベルを高めることができる。
IL−2は、133個のアミノ酸からなるタンパク質(15.4 kDa)で、僅かに塩基性のpIをもち、他のいかなる因子に対しても配列相同性を示さない。マウスとヒトのIL−2は約65%の相同性を示す。IL−2は、153個のアミノ酸からなる前駆タンパク質として合成され、最初の20個のアミノ末端側アミノ酸は疎水性分泌シグナル配列として機能する。このタンパク質は、生物学的活性に必須の一個のジスルフィド結合(Cys58/105の位置)を含む。
マウスおよびヒトのIL−2はともに、相同種のT細胞の増殖を高効率で引き起こす。ヒトIL−2は、同じ濃度でマウスT細胞の増殖も促すのに対して、マウスIL−2によるヒトT細胞の刺激は、低効率(6倍から170倍)である。自己免疫におけるIL−2の関与には異論がある(O'sheaら、2002に概説されている)。IL−2投与が、免疫性甲状腺炎、関節リウマチおよびその他の関節症など、様々な自己免疫疾患に関連すると認められている。しかし、IL−2欠損マウスは、抗DNA抗体など、多数の自己抗体を産生する。約半数が自己免疫性溶血性貧血で死亡し、生き残ったものは炎症性大腸炎を発症する。重要なのは、外因性IL−2の投与により病状が正されることである。このことは、末梢性免疫寛容の維持におけるIL−2の役割を示唆している。
IL2は、Tリンパ球のすべての亜集団の成長因子である。IL2R−αレセプターサブユニットは、成人T細胞白血病(ATL)において発現される。単離されたばかりの白血病細胞もIL2を分泌し、それに応答するため、IL2は、ATLを悪化させることができるこれらの細胞に対して自己分泌増殖調節因子として機能し得る。
また、IL2は、活性化B細胞の増殖も促進する。このような活性には、例えばIL−4などの別の因子の存在が必要である。IL−2は、インビトロで希突起神経膠細胞の増殖も促す。
したがって、IL−2は、T細胞およびB細胞に対するその作用により、免疫応答における中心的な制御因子となっている。また、造血および腫瘍監視(surveillance)における抗炎症性反応にも関与している。IL2は、末梢白血球におけるIFN−γの合成を促進し、また、IL−1、TNF−αおよびTNF−βの分泌を誘導する。
IL2の生物学的活性は膜レセプターによって仲介される。異なった形で別個に発現される3種類のIL2レセプターに区別される。高親和性IL2レセプターが、細胞によって発現されるIL2レセプター全体の約10パーセントを構成する。このレセプターは、リガンド結合ドメインとして2種類のサブユニット、IL2R−αおよびIL2R−β、ならびにシグナル伝達成分としてのγ鎖からなる膜レセプター複合体である。IL2R−βは、休止期のTリンパ球上、NK細胞上、およびその他数多くの種類の細胞上で構造的に発現しているが、IL2R−αの発現は、通常、細胞が活性化した後にのみ見られる。しかし、IL2R−αは、数多くの腫瘍細胞およびHTLV−1感染細胞によって構造的に合成されている。
単球のIL2レセプター発現は、これらの細胞が腫瘍細胞障害性になるよう、IFNγによって誘導される。
このレセプターのマウスおよびヒトのγサブユニットは、ヌクレオチドおよびアミノ酸のレベルにおいて約70パーセントの配列が一致している。このサブユニットは、高親和性IL2レセプターおよび中度親和性IL2レセプターの生成に必要であるが、それ自体がIL2に結合するわけではない。これら2種類のレセプターは、それぞれ、α−β−γヘテロ三量体およびβ−γヘテロ二量体からなる。IL2レセプターのγサブユニットをコードする遺伝子は、ヒトの染色体Xq13の約4.2 kbの範囲に位置していて、8個のエクソンを含んでいる。連鎖研究におけるマーカーとの関係によって、この遺伝子と、X染色体連鎖重症複合型免疫不全症遺伝子であるSCIDX1とが同じ位置にあることが示唆されている。さらに、親族関係にない3人のX染色体連鎖SCID患者において、IL2R−γ遺伝子にそれぞれ異なった変異が見られた。
X染色体連鎖重症複合型免疫不全症(XSCID)は、IL2R−γ鎖の変異、すなわち、リンパ球の発生と機能に必須な多数のサイトカインレセプターの構成成分であるIL−2Rγ鎖をコードする遺伝子の変異が原因で生じる稀ながら死に至る可能性のある疾患である(Noguchiら、1993)。今までのところ、XSCIDを引き起こすIL2RGの異なる変異が100以上公表されている。最近の遺伝子ノックアウト実験で、リンパ球新生におけるcγcの極めて重要な役割が示されている(DiSantoら、1995)。
IL−2Rγ鎖は、IL−2、IL−4、IL−7、IL−9、IL−13、IL−15およびIL−21レセプター複合体のサブユニットであり、今では「共通γ鎖」(cγc)とも呼ばれている。
欧州特許出願0 578 932号明細書は、完全な共通γ鎖、特に、細胞外N−末端側ドメインに関係している。
自己免疫におけるIL−2の関与に呼応して、該疾患を予防または軽減するためにIL−2活性の調節因子の必要性が存在している。
本発明は、IL−2共通γ鎖(cγc)とNIKとの相互作用を調節するための、cγc、またはそのムテイン、変異体、融合タンパク質、好ましくは、41MDD(配列番号:2)、44MPD(配列番号:17)、cγcの細胞内ドメイン(ICDcγc)(配列番号:1)、1〜357(配列番号:20)、1〜341(配列番号:21)、機能的誘導体、円順列変異誘導体(circularly permutated derivative)もしくは断片の使用に関する。
また、本発明は、IL−2共通γ鎖(cγc)とNIKとの相互作用を調節するための、cγc、またはそのムテイン、変異体、融合タンパク質、円順列変異誘導体もしくは断片をコードするDNA、cγcのアンチセンスをコードするDNA、cγcに特異的な抗体、または、コンビナトリー化学合成法の生成物をルシフェラーゼ系においてスクリーニングして得られる低分子の使用に関する。
別の態様において、本発明は、NIK活性が病因に関係している疾患の治療のための医薬の製造における、cγc、またはそのムテイン、変異体、融合タンパク質、機能的誘導体、円順列変異誘導体もしくは断片の使用を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、NF−κBが病因に関係している疾患の治療のための医薬の製造における、cγc、またはそのムテイン、変異体、融合タンパク質、機能的誘導体、円順列変異誘導体もしくは断片、特異的DNA、アンチセンスDNA、特異的抗体、または、コンビナトリー化学合成法の生成物をルシフェラーゼ系においてスクリーニングして得られる低分子の使用に関する。
また、本発明は、NIK活性が病因に関係している疾患の治療方法であって、治療上有効な量のcγc、またはそのムテイン、変異体、融合タンパク質、機能的誘導体、円順列変異誘導体もしくは断片を、それを必要とする対象に投与することを含む方法も提供する。
さらに、本発明は、cγc、またはそのムテイン、変異体、融合タンパク質、機能的誘導体、円順列変異誘導体もしくは断片、特異的DNA、アンチセンスDNA、抗体、または、コンビナトリー化学合成法の生成物をルシフェラーゼ系においてスクリーニングして得られる低分子を含む医薬組成物であって、IL−2共通γ鎖(cγc)とNIKとの相互作用を調節するための医薬組成物、またはNIKもしくはNF−κBの活性がその病因に関係している疾患における医薬組成物に関する。
別の態様において、本発明は、NIKとcγcとの相互作用がその病因に関係している疾患の治療方法であって、治療上有効な量のcγc、またはそのムテイン、変異体、融合タンパク質、機能的誘導体、円順列変異誘導体もしくは断片を、それを必要とする対象に投与することを含む方法に関する。
本発明は、本発明のcγcをコードするDNA、このDNAを含むベクター、このベクターを含む宿主細胞などを提供する。
一つの実施態様において、該ベクターを原核生物または真核生物の宿主細胞、好ましくはCHOに導入し、その細胞を培養して、産生されたポリペプチドを単離することを含む、本発明のポリペプチドの製造方法が提供される。
また、本発明は、NIK結合ドメインを含む、cγcのポリペプチド断片、またはそのムテイン、変異体、融合タンパク質、機能的誘導体、円順列変異誘導体もしくは断片、好ましくは、41MDD(配列番号:2)、44MPD(配列番号:17)、cγcの細胞内ドメイン(ICDcγc)(配列番号:1)1〜357(配列番号:20)、1〜341(配列番号:21)を提供する。
別の態様において、本発明は、本発明のcγcのポリペプチド断片を特異的に認識して結合する、ポリクローナルもしくはモノクローナル抗体、キメラ抗体、完全ヒト化抗体、抗−抗−Id抗体、細胞内発現抗体(intrabodies)、またはそれらの断片を提供する。
さらに、本発明は、本発明のcγcのポリペプチド断片、特異的DNA、そのDNAアンチセンス、特異的抗体、または、NIK−cγc相互作用を阻害することができる低分子であって、コンビナトリー化学合成法によって製造した分子をルシフェラーゼ系においてスクリーニングして得られる低分子を含む医薬組成物であって、好ましくは、NIK活性を調節するための医薬組成物、または、NIKとcγcとの相互作用がその病因に関係している疾患を治療するための医薬組成物を提供する。
さらに、本発明は、NIK−cγc相互作用を阻害することができる低分子であって、コンビナトリー化学合成法によって製造した分子をルシフェラーゼ系においてスクリーニングして得られる低分子を提供する。
また、本発明は、NIK結合ドメインを含む、cγcの断片、またはそのムテイン、変異体、融合タンパク質、機能的誘導体、円順列変異誘導体もしくは断片の使用であって、過剰な免疫応答が原因で生じる疾患、好ましくは関節リウマチ、骨関節炎、炎症性大腸炎、喘息、心筋梗塞、アルツハイマー病またはアテローム性動脈硬化症の治療および/または予防のための医薬の製造における使用に関する。
また、本発明は、NIK結合ドメインを含むcγcの断片、またはそのムテイン、変異体、融合タンパク質、機能的誘導体、円順列変異誘導体もしくは断片の使用であって、免疫性甲状腺炎、関節リウマチおよびその他の関節症、自己免疫性溶血性貧血、ならびに炎症性大腸炎などの自己免疫疾患の治療および/または予防のための医薬の製造における使用に関する。
別の実施態様において、本発明は、NF−κBの活性化がその病因に関係している疾患、または、NIKとcγcとの相互作用がその病因に関係している疾患を治療および/または予防する方法であって、治療上有効な量のcγc、またはそのムテイン、変異体、融合タンパク質、機能的誘導体、円順列変異誘導体もしくは断片を、それを必要とする対象に投与することを含む方法に関する。
さらに別の実施態様において、本発明は、癌、関節リウマチ、骨関節炎、炎症性大腸炎、喘息、心筋梗塞、アルツハイマー病またはアテローム性動脈硬化症など、NF−κB活性化がその病理に関係している疾患を治療および/または予防する方法であって、に係る低分子を有効量、それを必要とする対象に投与することを含む、治療上有効な量のcγc、またはそのムテイン、変異体、融合タンパク質、機能的誘導体、円順列変異誘導体もしくは断片を、それを必要とする対象に投与することを含む方法に関する。
別の態様において、本発明は、関節リウマチ、骨関節炎、炎症性大腸炎、喘息、心筋梗塞、アルツハイマー病またはアテローム性動脈硬化症など、過剰な免疫応答が原因で生じる疾患を治療および/または予防する方法であって、NIK結合ドメインに相当するcγc断片を含むポリペプチド、またはそのムテイン、変異体、融合タンパク質、機能的誘導体、円順列変異誘導体もしくは断片を治療上有効な量、それを必要とする宿主に投与することを含む方法に関する。
また、本発明は、NF−κB活性を調節するための、cγc、またはそのムテイン、変異体、融合タンパク質、機能的誘導体、円順列変異誘導体もしくは断片の使用を開示する。
本発明は、IL−2共通γ鎖(cγc)とNIKとの相互作用が関与する病理における該相互作用の調節に関する。
本発明は、cγcとNIKとが相互作用すること、およびこの相互作用がNIKの活性に影響するという知見に基づく。
骨髄cDNAライブラリーのツーハイブリッドスクリーニングにおいて、NIKのC末端側断片(624〜947)をベイトとして使用して、cγcとNIKとの相互作用を検出した。この相互作用は、NIKおよびcγcを発現する哺乳動物細胞の溶解物において実施された免疫共沈降実験、ならびにNIKおよびcγcを自然に発現する細胞において実施された免疫共沈降実験により確認した。免疫共沈降実験によって、cγcが、NIKのC末端側断片(624〜947)または全長のNIKのいずれかと効率的に共沈降することが明らかになった。
cγcとNIKとの相互作用は、NIKおよびcγcを過剰発現するトランスフェクトされた哺乳動物細胞中だけでなく、内因性のNIKおよびcγcをもつ非末梢血単核細胞においても生じることが明らかになった。
cγcおよびNIK両方の欠失変異体を多数作成して、両タンパク質の結合ドメインを決定した。これらの相互作用を酵母2ハイブリッド試験および/または免疫沈降実験によって試験した(下記実施例参照)。NIKへの結合に関与するcγcのドメインは、44アミノ酸残基(282から325番目の残基)を含む、44MPD(配列番号:17参照)と名づけられたcγcの膜近位ドメイン(MPD)、および41アミノ酸残基(329から369番目の残基)を含む、41MDD(配列番号:2および図12参照)と名づけられたcγcの膜遠位ドメイン(MDD)に発見されている。cγcの末端にある12アミノ酸(cγcの358〜369番目の残基、図15、配列番号:3、配列番号:4の塩基配列)をcγcの細胞内ドメイン(cγcICD)から欠失させると、NIKへの結合が50%低下した。これは、これらの残基が結合において主な役割を果たしていることを示している。
また、NIKと相互作用する特定のアミノ酸を決定するため、41MDDの中に位置する残基に変異誘発を行なった。シグナル伝達タンパク質におけるプロリンに富んだモチーフと、それらの同族の(cognate)ドメインとの相互作用については充分に記述されている(Kay BK, Williamson MP, Sudol M, FASEB J、2000年2月、14(2):231-421)。cγcの膜遠位41アミノ酸の20%のアミノ酸はプロリンである。したがって、cγcの膜遠位41アミノ酸の中にある2つの異なった部位、すなわち1−PP336,337AAおよび2−PP360,361AAで、2個連続したプロリンをアラニンに変異させて、ツーハイブリッドアッセイ法で、NIKの結合に対するその変異の効果を試験した。cγcの変異誘導について得られた結果は、360および361番目の残基であるプロリンがNIKへの結合にとって重要であることを示している。したがって、本発明に係るムテインは、360および361番目の残基はプロリンのまま保持している。
cγcの結合に関与するNIKのドメインは、NIK640−720と名づけられていて、NIKのC末端から81個のアミノ酸残基(640〜720番目の残基)を含む(配列番号:18参照)。
cγcとNIKとの相互作用が機能的に重要であることが示された。レポーター遺伝子アッセイ法によって、cγcは、NIK誘導NF−κB活性化を調節することが明らかになった。実験条件下では、NIKを過剰発現させることによって、NF−κB活性化を誘導することが可能である。NF−κBの活性化は、NF−κB誘導型プロモーターの調節下でルシフェラーゼをコードする構造物(construct)によってトランスフェクトされた細胞において測定することができる。このルシフェラーゼ系を用いて、NIKを単独、またはさまざまな濃度のcγcとともに過剰発現する細胞においてNF−κBの活性化を測定した(詳細については下記実施例参照)。NF−κBの調節は、細胞内におけるNIK濃度対cγc濃度(NIK/cγc)に依存することが分かった。例えば、NIK/cγcが1よりも大きい場合に、NIKが介するNF−κB活性化の促進が観察され、NIK/cγcが約1以下の場合に、NIKが介するNF−κB活性化の阻害が観察された。NIKのドミナントネガティブ変異体を用いて実施した実験で、cγcのNF−κB促進活性は、NIKを介して特異的に発揮されることが明らかになった。
NIK結合ドメイン41MDDを含むcγc断片の一つを、cγc−NIK相互作用への干渉、すなわちNIKが介するNF−κB活性化の調節について、ルシフェラーゼ系において試験した。この目的で、ルシフェラーゼ発現(またはNF−κB活性化)を、NIKおよびcγcを1よりも大きな比率で過剰発現するトランスフェクトされた細胞において測定した。これらの条件下で、cγcは、NIKによって誘導されるNF−κBの活性化を促進する。NIK結合領域を含む41MDDの効果を、NIKおよびcγcを過剰発現する細胞中で測定した。41MDDの過剰発現は、NIKが介するNF−κB活性化を、おそらくcγc−NIK相互作用を阻害することによって阻害し得ることが分かった。
あるいは、cγc結合ドメインを含むNIKのC末端(624〜947番目の残基)をcγcおよびNIKとともに過剰発現させると、41MDDと同じ効果を示した。
NIKの活性化には、厳格な構造的要件があると考えられる。NIKの変異体AlyNIK(ヒトでは860番目のコドンが、マウスでは855番目のコドンがグリシンからアルギニンになる)は、cγcに結合することが分かったが、NIKが介するNF−κB活性化を上昇させることはできなかった。このように、Aly−NIKおよび野生型NIKの両方が、cγcへの結合および過剰発現の際と同レベルのNF−κB活性化を示したとしても、cγcの共発現によって、Aly−NIKによるNF−κB活性化が促進されることはなかった。
これらの結果は、AlyNIKまたはその断片を用いて、NIK−cγc相互作用を制御できることを示している。
連続的にC末端を欠失させたcγcの断片、1−357、1−341、1−325、1−303が、ルシフェラーゼ系において、NIKに介在されるNF−κBを調節することができるかを試験した。この目的で、NIKおよびcγcまたはcγc欠失変異体を約1の比率で過剰発現するトランスフェクトされた細胞において、ルシフェラーゼ発現およびNF−κBの活性化を測定した。これらの条件下で、cγcは、NIKによって誘導されるNF−κB活性化を阻害する。全長cγcおよび断片1−357(配列番号:20)、1−341(配列番号:21)などは、NIKが介するNF−κB活性化を阻害することができるが、一方、1−325および1−303などのNIK結合ドメインを欠失している変異体は、NIKが介するNF−κB活性化の活性に何の影響も与えないことがわかった。断片1−325および1−303が効果を持たないことによって、cγc−NIK相互作用の膜遠位ドメインの関与と、NF−κB調節におけるこの相互作用の役割が確認できる。
前述したように、NIKおよびcγcの相互作用はNF−κB活性の調節をもたらす。cγcによるNIK活性の調節をもたらすメカニズムと考えられるのは、cγc/NIK相互作用に際してNIKのリン酸化が促進されることかもしれない。インビトロでのキナーゼアッセイによって、NIKの自己リン酸化およびIKK1のリン酸化がcγcによって3倍促進されることが示された。したがって、インビトロでのキナーゼアッセイで得られた結果は、cγcによるNIK活性の調節とは、cγc/NIK相互作用に際してNIKのリン酸化が促進されることかもしれないという仮説を裏付けるものである。
リンフォトキシンβ(LTβ)レセプターをそのリガンドによって誘導するとNF−κBの活性化がもたらされる。文献において、LTβレセプターをそのリガンドによって誘導するとNIKが活性化されることが示唆されている。LTβレセプターを誘発することによりNF−κBが活性化される場合、cγcポリペプチドの細胞内ドメイン(cγcICD)またはその41膜遠位ドメイン(41MDD、配列番号:2)の過剰発現の効果を試験した。この活性化が内因性NIKによって仲介されると考えられる。ICDcγc発現は、LTβによるNF−κBの活性化を2.5倍促進し、一方、41MDDの発現は、LTβによるNF−κBの活性化を50%阻害した。これらの結果は、リンフォトキシンによる刺激およびNF−κBの調節がcγc−NIK相互作用に関係していることを示唆している。これらの結果は、cγcICDポリペプチドまたは41MDDが、LTβレセプターを介して開始されるシグナル伝達を調節することができることを示しており、また、ICDポリペプチド、またはその断片が、ペプチドに基づく薬剤設計の候補として役立つ可能性があるということを証明している。そのような薬物は、NIKの作用を調節することができるため、NIKの作用がその病因に関係する疾患を予防または軽減する上で有用である。NIKは、NF−κB活性化を誘導することが明らかになっている。従って、本発明に係るcγc断片は、NIKの作用がその病因に関係する疾患を治療および/または予防するために使用される。
得られた結果から、cγcを介するシグナル伝達は、NIK、およびシグナルソームタンパク質の補充、およびその結果として、NF−κBの調節に関与していることが明らかになった。したがって、cγcまたはその断片(例えば、MDD41もしくはMPD44(配列番号:17)など、NIK結合ドメインを含む)は、cγcを介するシグナル伝達を調節するために使用できるかもしれない。
上記したように、末梢血の単核細胞において内因性NIKとcγcとの相互作用が明らかになった。単核細胞においては、NIKが構造的にcγcと結合しており、IL−2誘導の際、シグナルソーム成分であるIKK−1、IKK−2、およびIKK−3が、cγcを介してIL−2レセプターに補充されることが分かった。IL−2レセプターの共通γ鎖が、IKK−1結合領域以外のさまざまな位置でNIKに結合することが分かった。同様の結果が、IL−15で細胞を刺激した際にも得られた。
IL−2刺激によってcγcと共沈降するシグナルソームの成分は、キナーゼアッセイにおいて活性を示すことが明らかになった。すなわち、これらの結果は、生理学的な条件下では、内因性cγcのNIKへの結合が起こるため、この相互作用が、NIK活性およびNIK依存型NF−κB活性化に関与することを示している。したがって、cγcとNIKとの相互作用を阻害すると、NF−κBの活性化の阻害を生じる可能性がある。
得られた結果は、IL−2のシグナル伝達に、NIKおよびシグナルソーム成分とcγcとの相互作用が必要であることを示している。したがって、cγcとNIKとの相互作用を阻害すると、IL−2シグナルを阻害できる。同様の結果が、IL−15で末梢血単核細胞を刺激することによっても得られた。
本発明は、cγcの使用に関し、またその断片に関し、またそれらの塩、機能的誘導体、前駆体、および活性画分、ならびにその活性型変異体、すなわち、cγc−NIK相互作用および/またはNF−κB活性化の調節および/またはcγcシグナル伝達などの同一の活性を有するポリペプチドまたはタンパク質を得るために、その構造中の1個以上のアミノ酸を欠失させるか、他のアミノ酸に置換するか、または、1個以上のアミノ酸をその配列に付加した他のタンパク質またはポリペプチドであって、対応する「融合タンパク質」、すなわち、別のタンパク質と融合された該ポリペプチドまたはその変異体を含むポリペプチドも含む他のタンパク質またはポリペプチドにも関する。したがって、該ポリペプチドは、例えばイムノグロブリンなど別のタンパク質に融合することができる。
本明細書において、用語「塩」は、カルボキシル基の塩と、本発明の該ポリペプチドまたはそのムテインのアミノ基の酸付加塩との両方を意味する。カルボキシル基の塩は、当技術分野において周知の手段によって形成させることができ、無機塩(例えばナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄または亜鉛の塩など)および有機塩基との塩(例えば、トリエタノールアミン、アルギニンもしくはリシンなどのアミン、ピペリジン、プロカインなどと形成される)などがあげられる。酸付加塩には、例えば、塩酸または硫酸などの鉱酸との塩、および、例えば、酢酸またはシュウ酸などの有機酸との塩などがある。もちろん、このような塩は、本発明の該ポリペプチドまたはそのムテインなどと実質的に同様の活性、例えば、cγc−NIK相互作用および/またはNF−κB活性化の調節、および/またはcγcシグナル伝達ができるなどの活性をもっていなければならない。
本明細書において使用される「機能的誘導体」の定義は、アミノ酸部分の側鎖上または末端のN基もしくはC基上に存在する官能基から、周知の方法にしたがって調製することができる誘導体を意味し、薬学的に許容される場合、すなわち、それらがタンパク質の活性を損なわない場合、またはそれらを含む医薬組成物に毒性を付与しない場合には本発明に含まれる。このような誘導体には、例えば、カルボキシル基のエステルまたは脂肪族アミド、および遊離アミノ基のN−アシル誘導体または遊離ヒドロキシル基のO−アシル誘導体などがあり、例えばアルカノイル基またはアロイル基などのアシル基を用いて形成される。
本発明において、タンパク質の「断片」は、化合物それ自体のポリペプチドの任意の断片または前駆体単独、または関連分子もしくはそこに結合する残基(たとえば、糖残基もしくはリン酸塩)と組み合せた断片または前駆体、またはポリペプチド分子の集合体であって、このような断片または前駆体が、本発明の該ポリペプチドの活性と同一の活性、例えば、cγc−NIK相互作用および/またはNF−κB活性化の調節および/またはcγcシグナル伝達ができるなどの活性を示す場合を意味する。
本明細書において使用される用語「円順列変異」は、直鎖分子であって、その両末端を直接またはリンカーを介して結合させて環状分子を作出し、次に、この環状分子を別の位置で開環させて、元の分子の末端とは異なる末端をもつ新しい直鎖分子を作出する直鎖分子を意味する。円順列変異体には、環状化されたのち開環されている分子と同等の構造を持つ分子も含まれる。したがって、円順列変異分子を直鎖分子としてデノボ合成し、環状化と開環段階を経ないことも可能である。分子の具体的な円順列変異は、その間でペプチド結合が除去されているアミノ酸残基を括弧に記入して名前を付ける。円順列変異分子は、DNA、RNAおよびタンパク質を含むが、一本鎖分子で、正常には両末端であるところがしばしばリンカーと融合しており、別の位置が新しい末端となったものを含む。Goldenbergら、J. Mol. Biol., 165:407-413(1983)、およびPanら、Gene 125:111-114(1993)を参照。両文献とも参考文献として本明細書に組み入れられる。円順列変異は、直鎖分子を取って、その末端を融合させて環状分子を形成させ、次に、その環状分子を別の位置で切断して、別の末端をもつ新しい直鎖分子を形成させるのと機能的には同じことである。したがって、円順列変異は、さまざまな位置で新しい末端を作出しながらも、タンパク質のアミノ酸の配列と同一性を本質的に保存する作用を有する。
本発明の該「ポリペプチドおよび/またはタンパク質」という用語は互換的であり、cγc、ならびに41MDDおよび44MPD、1−357および1−341など、NIKへの結合に関与する領域を含むcγcの断片を意味する。
また、本発明は、本発明のタンパク質のムテインまたは変異体に関し、ここで、ムテインは、例えば、cγc−NIK相互作用および/またはNF−κB活性化の調節および/またはcγcシグナル伝達ができるなどの、本発明の該タンパク質の天然の配列のみを本質的に有する本発明の該タンパク質と同一の生物活性を本質的に保持している。このような「ムテイン」は、ポリペプチドにおいて最高約25%、好ましくは12%未満のアミノ酸残基を欠失、付加、または別のアミノ酸残基と置換することができるが、このような改変が、タンパク質それ自体に関して、例えば、cγc−NIK相互作用および/またはNF−κB活性化の調節および/またはcγcシグナル伝達ができるなど、タンパク質ムテインの生物活性を実質的に変えないように改変されているムテインである。
これらのムテインは、周知の合成法および/または部位特異的変異誘発技術、または他の適当な周知技術によって製造される。
このようなムテインはいずれも、好ましくは基本的なcγc、および、ICDcγc、41MDDおよび44MPD、1−357および1−341など、NIKへの結合に関与する領域を含むcγcの断片であって、実質的に同様の活性をもつ断片の配列に充分重複するアミノ酸配列を有する。したがって、任意の所定のムテインが、本発明の基本的なタンパク質と実質的に同一の活性を有するか否かは、下記の実施例に記載した生物学的活性試験をそのムテインに対して行なうことを含む、通常の実験によって決定することができる。
本発明にしたがって使用することができるタンパク質のムテイン、またはそれをコードする核酸には、実質的にはcγc、および、41MDDおよび44MPD、1−357および1−341などと一致する配列であって、NIKへの結合に関与する領域を含むcγcの断片の有限な組み合わせが、本明細書に提示されている指示および手引きに基づいて、過度な実験を行なうことなく、当業者によって日常的に取得することができる置換されたペプチドまたはポリヌクレオチドとして含まれる。タンパク質の化学と構造の詳細な説明については、Schulz G.E.ら、Principle of Protein Structure, Springer-Verlag、New York, 1978;およびCreighton T.E., Proteins:Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, 1983を参照。これらは参考文献として本明細書に組み入れられる。コドン選択性などのヌクレオチド配列置換の表示については、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publications and Wiley Interscience, New York, NY, 1987-1995;Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY, 1989参照。
本発明によるムテインの好ましい変化には、「保存的」置換として知られるものがある。本発明の該タンパク質の本質的に天然の配列を有するタンパク質におけるそれらの保存的アミノ酸置換には、物理化学的性質が充分に似ているため、そのグループ内のメンバー同士の置換ではその分子の生物学的機能が保存されるグループ内での同義的アミノ酸が含まれる。Grantham, Science, Vol. 185, pp.862-864(1974)参照。アミノ酸の挿入および欠失も、特に、その挿入または欠失が数個のアミノ酸、例えば、25%未満、また好ましくは12%未満のアミノ酸に関するだけで、例えば、システイン残基など、機能的なコンフォメーションにとって重要なアミノ酸を除去または置換するのでなければ、前記記載の配列において、その機能を変えることなく行なうことができることは明らかである(Anfinsen, Principles That Govern The Folding of Protein Chanins, Science, Vol. 181, pp.223-230(1973))。このような欠失および/または挿入によって作出されたムテインは、本発明の範囲に含まれる。
好ましくは、同義のアミノ酸群は、表Aに規定される群である。より好ましくは、同義のアミノ酸群は、表Bに規定される群である。そして、最も好ましくは、同義のアミノ酸群は、表Cに規定される群である。
本発明における使用のためのタンパク質のムテインを得るために使用され得るタンパク質のアミノ酸置換の製造例としては、Markらによる米国特許RE第33,653号明細書、米国特許第4,959,314号明細書、同第4,588,585号明細書および同第4,737,462号明細書;Kothsらによる同第5,116,943号明細書、Namenらによる同第4,965,195号明細書、Chongらによる同第4,879,111号明細書、Leeらによる同第5,017,691号明細書などに示されたような任意の周知の方法手順;ならびに米国特許第4,904,584号明細書(Shawら)に示されたリジン置換タンパク質を含む。
本発明の別の好適な実施態様において、本発明において使用するための該タンパク質のムテインはいずれも、本発明に係る前記タンパク質、例えば、41MDDおよび44MPD、1−357および1−341タンパク質、またはその断片など、NIKへの結合を担う領域を含むcγcの断片などのアミノ酸配列に本質的に一致するアミノ酸配列を有する。「本質的に一致する」という用語は、基本的なタンパク質の配列に、特に、本発明の該タンパク質に対する能力に関する限りにおいて、その基本的な性質に影響を与えない微少な変化を加えたムテインを包含しようする語である。「本質的に一致する」という語に含まれると一般的に考えられる変化の種類は、本発明の該タンパク質をコードするDNAの従来からの変異誘発手法によって生じる変化であって、いくつかの小さな改変をもたらし、例えば、cγc−NIK相互作用および/またはNF−κB活性化の調節および/またはcγcシグナル伝達ができるなどという所望の活性に対してスクリーニングすることになる。
また、本発明は、本発明の該タンパク質の変異体も含む。好適な変異体は、本発明に係る該タンパク質と少なくとも80%のアミノ酸が同一である変異体であり、より好適な変異体は、少なくとも90%のアミノ酸が同一である変異体であり、もっとも好適な変異体は、少なくとも95%のアミノ酸が同一である変異体である。
本明細書において使用される「配列同一性」という用語は、アミノ酸配列を、ClustalW多重配列整列プログラム(Thompsonら、1994)のウインドウズ用インターフェイスであるClustal-Xプログラムを用いて相同性が低い領域を改良したHanksおよびQuinn(1991)によるアラインメントによって比較することを意味する。Clustal-Xプログラムは、インターネット上のftp://ftp-igbmc.u-strasbg.fr/pub/clustalx/で利用可能である。当然ながら、このリンクが切れている場合には、当業者は、過度の試行を要することなく、標準的なインターネット検索技術を用いて別のリンク先でこのプログラムのいくつかのバージョンを発見することができることが理解されるべきである。特段の記載がない限り、本願の有効な出願日におけるものとして、本明細書において言及するプログラムは、最新のバージョンのものが、本発明を実施するために使用されるものである。
「配列同一性」を決定する別法は以下の通りである。配列を、ジェネティック コンピューティング グループ(Genetic Computing Group)のGDAP(グローバルアラインメントプログラム)の第9版を用い、ギャップオープンペナルティーが−12(ギャップの最初の空白に対して)でギャップ拡張ペナルティーが−4(ギャップ中に付加されている連続した空白1個について)のデフォルト(BLOSUM62)マトリクス(−4から+11までの値)を用いて整列させる。整列後、一致した数を、求める配列におけるアミノ酸数に対する割合で表わすことによって同一性の割合を算出する。
本発明に係るムテインには、ストリンジェントな条件下で本発明に係る該タンパク質をコードするDNAまたはRNAにハイブリダイズするDNAまたはRNAなどの核酸によってコードされるものであって、例えば、cγc、ならびに、41MDDおよび44MPD、1−357および1−341など、NIKへの結合に関与する領域を含むcγcの断片をコードする天然の配列のすべてを本質的に含んでいるものが含まれる。例えば、このようなハイブリダイズするDNAまたはRNAは、本発明と同一のタンパク質をコードし、例えば、図13および14に示した配列(それぞれICDcγcおよび41MDDをコードする配列番号:5および6)、ならびに遺伝子コードの縮退によって、天然由来のヌクレオチド配列とはそのヌクレオチド配列が異なる可能性のある配列(すなわち、この縮退によって、いくらか異なった塩基配列が依然同じアミノ酸配列をコードし得る)である可能性がある。
本明細書において使用される「ハイブリダイゼーション」という用語は、核酸の鎖を、塩基対合によって相補鎖と結合させる処理を含むものである(Coombs J, 1994, Dictionary of Biotechnology, Stokton Press, New York, NY)。「増幅」は、核酸配列の追加のコピーを作出することと定義され、通常、当技術分野において周知のポリメラーゼ連鎖反応技術を用いて実施される(Dieffenbach and Dveksler, 1995, PCR Primer, a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Plainview, NY)。
「ストリンジェンシー」は、一般的に、約Tm−5℃(プローブの融解温度よりも5℃低い)からTmよりも約20℃から25℃低い温度の範囲に存在する。
「ストリンジェントな条件」という用語は、当業者が従来から「ストリンジェント」と言い習わしてきたハイブリダイゼーションおよびその後の洗浄の条件を意味する。Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publications and Wiley Interscience, New York, NY, 1987-1995;Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY, 1989参照。
本明細書において、ストリンジェントな条件は、ハイブリダイゼーション実験で使用する温度、一価のカチオンのモル濃度、およびハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドの割合の関数である。ある所定の条件の組み合わせに関するストリンジェシーの程度を判定するには、まず、DNA−DNAハイブリッドの融解温度Tmで表される、100%同一のハイブリッドの安定性を決定するためのマインコス(Meinkoth)ら(1984)の下記方程式を使用する。
Tm=81.5C+16.6(LogM)+0.41(%GC)−0.61(%form)−500/L
式中、Mは一価のカチオンのモル濃度、%GCはDNA中のGおよびCヌクレオチドの割合、%formはハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドの割合、そしてLは塩基対でのハイブリッドの長さである。100%同一なハイブリッドについて計算したTmからTmが1℃低下する毎に、許容されるミスマッチの量が約1%ずつ増加する。したがって、あるハイブリダイゼーション実験のために特定の塩濃度およびホルムアミド濃度で用いられるTmが、マインコスの方程式に従って100%ハイブリッドに対して計算されるTmよりも10度低いと、最高で約10%のミスマッチがあってもハイブリダイゼーションは起きることになる。
本明細書において、「高度にストリンジェントな条件」とは、前記数式によって計算しても、実際に測定してみても、標的配列と完全な二重鎖を形成させるTmよりも10度以内で低いTmを与える条件である。「中度にストリンジェントな条件」とは、前記数式によって計算しても、実際に測定してみても、標的配列と完全な二重鎖を形成させるTmよりも20度以内で低いTmを与える条件である。制限はないが、高度にストリンジェントな条件(ハイブリッドの計算または測定Tmよりも5〜10℃低い)および中度にストリンジェントな条件(ハイブリッドの計算または測定Tmよりも15〜20℃低い)の例は、2×SSC(標準生理食塩水−クエン酸塩)および0.5% SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の洗浄溶液を、ハイブリッドの計算Tmよりも低い適当な温度で使用する。条件の最終的なストリンジェンシーは、特に、用いたハイブリダイゼーション条件が、安定性の低いハイブリッドを安定したハイブリッドと一緒に形成できるような条件の場合には、一次的には洗浄条件によって決まる。洗浄条件のストリンジェンシーが高くなるほど、安定性の低いハイブリッドは取り除かれる。前記の高度から中度にストリンジェントな洗浄条件で用いることのできる一般的なハイブリダイゼーション条件は、6×SSC(または6×SSPE(標準生理食塩水−リン酸塩−EDTA))、5×デンハルト試薬(Denhardt's reagent)、0.5% SDS、100μg/mlの変性断片化サケ精子DNAの溶液における、Tmよりも約20から25℃低い温度でのハイブリダイゼーションである。混合プローブを使用する場合には、SSCの代わりに塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)を使用するのが好ましい(Ausubel, 1987, 1999)。
cγcの断片である41MDDおよび/または44MPDは、ペプチドに基づく薬剤設計の候補として役立つ可能性がある。これらの結合断片の構造に基づいて、NIKへのcγcの結合を妨害できる有機分子を設計することができる。そのような有機分子は、NIKの作用を調節することができ、炎症反応や、NIKとcγcとの相互作用が病因に関係している他の疾患の予防に役立つ薬剤として使用することができる。
「細胞内発現抗体」は、細胞中に形質導入されて、NIKとcγcとの相互作用などの望ましくない関連反応を阻害することができる特異的抗体であって、該抗体は、発現されると、望ましくない関連反応に関係する標的分子および/またはリガンドに細胞中で結合し、抗体を発現して、該抗体を該標的レセプターおよび/またはリガンドに結合させる。細胞内発現抗体の使用については、国際公開第99/14353号パンフレットに開示されている。
NIKの活性がその病因に関係している疾患において、NIKとcγcとの相互作用を阻害するために、41MDDおよび41DPMに対する抗体を製造し、細胞内に形質導入することができる。
NF−κBの活性化は、細胞の核内への移行、および多数の前炎症性遺伝子の活性化を含む。
関節リウマチ(炎症の場合)、骨関節炎、喘息、心筋梗塞、アルツハイマー病、またはアテローム性動脈硬化症などの障害においては、NF−κBが正常の範囲を超えて活性化される。NF−κBの阻害は細胞増殖抑制療法を補強するために採用されているため、癌治療においても有益である。
真核生物または真核生物発現系において、本発明のポリペプチドを細胞内、周辺質(periplasmic)などで産生することができ、または、培地内に分泌させることも可能である。産生されたcγc、ならびに41MDDおよび44MPD、1−357および1−341など、NIKへの結合に関与する領域を含むcγcの断片は、可溶型または不溶型(封入体)として回収することが可能である。
本発明の該ポリペプチドをコードするDNAを含むベクターを、原核生物または真核生物の系において該ポリペプチドを発現させるために使用し得る。
例えば、cγc、ならびに41MDDおよび44MPD、1−357および1−341など、NIKへの結合に関与する領域を含むcγcの断片をコードするDNAに融合した、ヒト成長ホルモンのシグナルペプチドのような有効なシグナルペプチドをコードする発現ベクターは、真核生物での発現および分泌に使用することが可能である。
本発明は、炎症性疾患の治療のための医薬を製造するために、cγc、ならびにそれに由来する41MDDおよび44MPD、1−357および1−341ペプチドなど、NIKへの結合に関与する領域を含むcγcの断片、またはそれらのムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、円順列変異誘導体もしくは断片、またはその塩を提供する。
これらの手段を治療または研究に関連して使用するには、それらを生きた生物の細胞中に導入する必要がある。そのためには、ペプチド、タンパク質およびオリゴヌクレオチドの膜透過性を向上させることが望ましい。親油性構造体による誘導体化は、より一層の膜透過性をもつペプチドおよびタンパク質を作出するのに用いることができる。例えば、前記のような周知の膜作用性(membranotropic)ペプチドの配列を、そのペプチドまたはタンパク質の配列に付加することができる。さらに、1個以上の極性基または荷電基で置換されている、前記の炭化水素鎖などの部分的親油性の構造体によってペプチドまたはタンパク質を誘導体化することができる。例えば、ペプチドのラウロイル誘導体がMuranishiら、1991によって記載されている。ペプチドおよびタンパク質のさらなる改変には、Zachariaら、1991に記載されているように、メチオニン残基を酸化し、それによってスルホキシド基を作出することが含まれる。また、Zachariaらは、比較的疎水性のペプチド結合が、そのケトメチレンイソエステル(COCH2)によって置換されているペプチドまたは誘導体についても記載している。これらの改変法、およびタンパク質およびペプチド化学の技術分野における当業者に周知の他の改変法によって、膜透過性を促進させる。
膜透過性を促進させる別の方法は、ウイルスレセプターなど、細胞表面上にあるレセプターを、ペプチドまたはタンパク質の細胞による取り込みを誘導するために使用することである。このメカニズムは、一定の細胞表面分子に特異的に結合するウイルスによってしばしば使用されている。結合すると、細胞はウイルスをその内側に取り込む。この細胞表面分子はウイルスレセプターと呼ばれている。例えば、インテグリン分子であるCARおよびAdVが、アデノウイルスに対するウイルスレセプターとして説明されている(Hemmiら、1998、およびその参考文献を参照)。CD4、GPR1、GPR15、およびSTRL33という分子が、HIVのレセプター/コレセプターであると同定されている(Edingerら、1998およびその参考文献を参照)。
このように、ペプチド、タンパク質またはオリゴヌクレオチドを、細胞表面レセプターに結合することが知られている分子と連結させると、該ペプチド、タンパク質またはオリゴヌクレオチドの膜透過性が促進される。連結体を形成するのに適した基の例は、糖、ビタミン、ホルモン、サイトカイン、トランスフェリン、アシアロ糖タンパク質などの分子である。Lowら、米国特許第5,108,921号明細書には、これらの分子を、ペプチド、タンパク質またはオリゴヌクレオチドの膜透過性を促進する目的で使用すること、および該連結体の製造が記載されている。
さらに、ロウらは、葉酸またはビオチンなどの分子に対するレセプターは豊富かつ非特異的に発現しているため、これらの分子を用いて連結体を生物内の多数の細胞に向かわせることができると記載している。
また、本発明のペプチド、タンパク質またはオリゴヌクレオチドの膜透過性を促進させるための、細胞表面タンパク質の前記使用も、本発明の該ペプチド、タンパク質またはオリゴヌクレオチドを特定の種類の細胞または組織に向かわせるためにも使用することができる。例えば、癌細胞を標的とすることが望ましい場合には、これらの細胞の表面上により豊富に発現されている細胞表面タンパク質を使用することが好ましい。その例は、葉酸レセプター、ムチン抗原であるMUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5AC、MUC5BおよびMUC7、糖タンパク抗原であるKSA、癌胎児性抗原、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、HER−2/neu、ならびにヒト絨毛性ゴナドトロピン−βなどである。前記Wangら、1998は、癌細胞を標的するための葉酸の使用を記載しており、Zhangら、1998は、前記した他の各抗原が、さまざまな種類の癌細胞、および正常細胞において比較的豊富であることを記載している。
したがって、本発明のタンパク質、ペプチドまたはオリゴヌクレオチドは、前述の連結法を用いて、所望の特定の種類の細胞に向かわせることができる。例えば、リンパ球系譜の細胞におけるNIKの活性化を阻害したいのであれば、例えば、これらの細胞上で発現しているMHCクラスII分子を用いて、cγc、ならびに41MDDおよび44MPD、1−357および1−341断片など、NIKへの結合に関与する領域を含むcγcの断片、本発明のムテインおよび誘導体をそのような細胞へ向かわせることができる。このことは、該MHCクラスII分子の定常領域に対する抗体、またはその抗原結合部位を、本発明のタンパク質またはペプチドに結合させることによって実現することができる。さらに、さまざまなサイトカイン、および他の細胞間コミュニケーション分子に対する多数の細胞表面レセプターが記載されており、これらの分子の多くが、多かれ少なかれ組織や細胞の種類に制限される方法で発現される。したがって、T細胞のサブグループを標的とするのが望ましい場合には、本発明の連結体を製造するためにCD4 T細胞表面分子を使用することができる。CD4結合分子は、その表面抗原gp42がCD4分子に特異的に結合することができるHIVウイルスによって提供される。
本発明のタンパク質、ペプチドおよびアンチセンス配列を、ウイルスベクターを用いて細胞内に導入することができる。この目的でのワクシニアベクターの使用については、分子生物学実験プロトコール第16章に詳述されている。アデノウイルスベクターの使用については、例えば、Teohら、1998、Narumiら、1998、Pedersonら、1998、Guang-Linら、1998、およびそれらにおける参考文献、Nishidaら、1998、Schwarzenbergerら、1998のすべて、およびCaoら、1998に記載されている。レトロウイルスによるアンチセンス配列の移動については、Danielら、1998に記載されている。
ウイルスをベクターとして使用する場合、通常、ウイルスの表面タンパク質を使用してウイルスを標的する。前記アデノウイルスなど、多くのウイルスは、細胞指向性においてはむしろ非特異的であるため、細胞の種類または組織に特異的なプロモーターを使用して、更なる特異性を付与することが望ましいかもしれない。Griscelliら、1998は、心室特異的な心臓ミオシン軽鎖2プロモーターを、アデノウイルスに仲介されて移動する遺伝子の心臓特異的ターゲティングのために使用することを教示している。
または、ウイルスベクターを改造して、その表面にさらに別のタンパク質を発現させたり、ウイルスベクターの表面タンパク質を変更して、所望のペプチド配列を組み込むことも可能である。このように、ウイルスベクターを改造して、一種類以上の付加的エピトープを発現させることができ、それを使用して、該ウイルスベクターを標的することができる。例えば、サイトカインエピトープ、MHCクラスII−結合ペプチド、またはホーミング分子に由来するエピトープを用い、本発明の教示にしたがって、ウイルスベクターを標的することができる。
本発明は、一種類以上のcγcタンパク質、および41MDDおよび44MPD、1−357および1−341など、NIKへの結合に関与する領域を含むcγcの断片、および/またはこれらの配列またはアンチセンスを含むDNAまたはベクターから選択される一種類以上の活性物質を含む医薬組成物を包含する。
本発明は、cγcタンパク質、ならびに41MDDおよび44MPD、1−357および1−341など、NIKへの結合に関与する領域を含むcγcの断片を認識して結合することができる特異的抗体を含む医薬組成物を包含する。
「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(MAbs)、キメラ抗体、可溶型または結合型で標識されうる抗体に対する抗イディオタイプ(抗−ID)抗体、およびヒト化抗体、ならびに酵素的切断、ペプチド合成または組換え技術など(これらに限定されるものではない)、周知の手法によって提供されるその断片を含むことを意味する。
モノクローナル抗体は、抗原に特異的な実質的に均一な抗体集団であって、実質的に類似したエピトープ結合部位を含む抗体集団を含む。Mabsは、当業者に周知の方法によって得ることができる。例えば、KohlerとMilstein、Nature、256:495-497(1975);米国特許第4,376,110号明細書;Ausubelら編、HarlowとLane, ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory(1988);およびColliganら編、Current Protocols in Immunology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience N.Y.(1992-1996)参照(これらの文献の内容は、その全体が参考文献として本明細書に組み入れられる)。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、GILD、およびそれらのサブクラスなどのイムノグロブリンクラスのものであればよい。本発明のmAbを産生するハイブリドーマは、インビトロ、インサイチュー、またはインビボで培養することができる。高力価のMabsがインビボまたはインサイチューで産生されるため、本方法は、現在のところ好適な産生方法となる。
キメラ抗体は、マウスMabに由来する可変領域とヒトイムノグロブリンの定常領域とを有する抗体のように、異なった部位が異なった動物種に由来する分子である。キメラ抗体は、主に、適用においては免疫原性を低下させ、また産生においては収量を増加させるために用いられる。例えば、マウスMabの方がハイブリドーマからの収率は高いが、ヒトにおける免疫原性が高いという場合に、ヒト/マウスキメラMabを使用する。キメラ抗体、およびそれを産生する方法は、当技術分野において周知されている(Cabillyら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3273-3277(1984);Morrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855(1984);Boulianneら、Nature 312:643-646(1984);Cabillyら、欧州特許出願第125023号明細書(1984年11月14日公開);Neubergerら、Nature 314:268-270(1985);Taniguchiら、欧州特許出願第171496号明細書(1985年2月19日公開);Morrisonら、欧州特許出願第173494号明細書(1986年3月5日公開);Neubergerら、国際公開第86/01533号パンフレット(1986年3月13日公開);Kudoら、欧州特許出願第184187号明細書(1986年6月11日公開);Sahaganら、J. Immunol. 137:1066-1074(1986);Robinsonら、国際公開第87/02671号パンフレット(1987年5月7日公開);Liuら、Proc. Natl. Acad. Sci USA 84:3439-3443(1987);Sunら、Proc. Natl. Acad. Sci USA 84:214-218(1987);Betterら、Science 240:1041-1043(1988);Riechmannら、Nature 332:323-327、およびHarlowとLane抗体:実験マニュアル、前掲。これらの文献は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
「完全ヒト化抗体」とは、ヒトイムノグロブリンの可変領域と定常領域との両方を含む分子である。完全ヒト化抗体は、自己免疫疾患などの慢性的かつ再発性の疾患に反復治療が必要とされる場合に治療目的で使用できる可能性がある。完全ヒト化抗体の製造方法の1つは、マウス液性免疫システムの「ヒト化」、すなわち、ヒトのイムノグロブリン(Ig)遺伝子座を、内因性Ig遺伝子を不活性化されているマウスに導入して、ヒトIgを産生することができるマウス系統(ゼノマウス(Xenomice))を作出することからなる。Ig遺伝子座は、物理的構造と遺伝子再配列の両面において、また、広範な免疫応答を最終的に生じさせるのに必要とされる発現過程においても極めて複雑である。抗体の多様性は、主に、Ig遺伝子座に存在するさまざまなV、DおよびJ遺伝子間の組み合わせによる再配列によって生じる。また、これらの遺伝子座にも、調節因子が散在していて、抗体の発現、対立遺伝子排除、クラススイッチ、および親和性成熟(affinity maturation)を調節している。再配列していないヒトIg導入遺伝子をマウスに導入することによって、マウスの組換え装置がヒト遺伝子に適合することが明らかされている。さらに、ゼノマウスを抗原で免疫することによって、様々なアイソタイプの抗原特異的hu−mAbsを分泌するハイブリドーマが得られる。
完全ヒト化抗体、およびそれらを作成する方法は、当技術分野において周知である(Mendezら、Nature Genetics 15:146-156(1997);Buggemannら、Eur. J. Immunol. 21:1323-1326(1991);Tomizukaら、Proc. Natl. Acad. Sci USA 97:722-727(2000);国際公開第98/24893号パンフレット)。
抗イディオタイプ(抗−ID)抗体は、通常、抗体の抗原結合部位と結合するユニークな決定基を認識する抗体である。Id抗体は、抗Idを調製しているMabの由来源と同じ種および遺伝子型の動物(例えばマウス系統)を免疫することによって調製することができる。免疫された動物は、これらのイディオタイプ決定基に対する抗体(抗Id抗体)を産生することによって、免疫する抗体のイディオタイプ決定基を認識して応答する。例えば、米国特許第4,699,880号参照(この文献は、参考文献として本明細書に組み入れられる)。
また、抗Id抗体は、さらに別の動物における免疫応答を誘導して、いわゆる抗−抗Id抗体を産生させるための「免疫原」としても使用することができる。抗−抗Idは、抗Idを誘導した元のMabとエピトープとしては同じであろう。このように、Mabのイディオタイプ決定基に対する抗体を使用して、同一の特異性を有する抗体を発現する別のクローンを同定することができる。
したがって、本発明のNIK、そのアイソフォーム、類似体、断片または誘導体に対して作成されるMabsを使用して、BALB/cマウスのような適当な動物において抗Id抗体を誘導することができる。このように免疫されたマウスの脾臓細胞は、抗Id Mabsを分泌する抗−Idハイブリドーマを作製するために使用される。さらに、抗−Id Mabsは、キーホールリンペットのヘモシアニン(KLH)などの担体に結合させることができ、さらに別のBALB/cマウスを免疫するために使用することができる。これらのマウスの血清は、前記NIKタンパク質、またはその類似体、断片もしくは誘導体のエピトープに特異的な元のMabの結合特性を有する抗−抗Id抗体を含むであろう。
このように、抗Id Mabsは、検定されているエピトープに構造的に類似した独自のイディオタイプエピトープ、すなわち「イディオトープ」を有する。また、「モノクローナル抗体」という用語は、完全な分子以外に、例えば、抗原に結合できるFabおよびF(ab')2などの、その断片も含むことを意味している。FabおよびF(ab')2断片は、完全な抗体のFc断片を欠いており、循環からより速やかに除去され、完全抗体よりも非特異的組織結合が起きにくいとされる(Wahlら、J. Nucl. Med. 24:316-325(1983))。
モノクローナル抗体は、ある分子と特異的に反応して、その分子を抗体に結合することができれば、その分子に「結合できる」と言われる。「エピトープ」という用語は、ある抗体によって結合されうる分子の部位を意味するものであり、同時にその抗体に認識される部位でもある。エピトープ、すなわち「抗原決定基」は、大抵、アミノ酸や糖側鎖など、化学的に活性のある表面分子グループからなり、特異的な三次元構造特性および特異的な電荷特性を有する。
「抗原」は、抗体が結合できる分子または分子の一部であり、さらに、抗原は、動物を誘導して、その抗原のエピトープに結合できる抗体を産生させることができる。抗原は、1個以上のエピトープを有することができる。前記の特異的反応とは、抗原が、高度に選択的な態様で、対応する抗体上のエピトープとは反応するが、他の抗原によって誘起された他の多数の抗体とは反応しないことを示唆しているものである。
「薬学的に許容し得る」の定義は、有効成分の生物学的活性の有効性を損なわなず、それが投与される宿主に毒性を示さない担体を含むということである。例えば、非経口投与のためには、有効タンパク質を、生理的食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミンおよびリンゲル溶液などのビヒクルに入れて注射用の単位剤形に処方することも可能である。
本発明に係る医薬組成物の有効成分は、さまざまな方法で個体に投与することができる。投薬経路には、皮内、経皮(例えば徐放製剤にして)、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経口、頭蓋内、硬膜外、局所的、および鼻腔内の経路などがある。これら以外の治療上有効な投薬経路、例えば、上皮組織または内皮組織による吸収や、有効成分をコードするDNA分子を(例えばベクターを介して)患者に投与して、有効成分のインビボでの発現および分泌をもたらす遺伝子治療などを用いることもできる。さらに、本発明に係るタンパク質を、薬学的に許容し得る界面活性剤、賦形剤、担体、希釈剤およびビヒクルなど、生物学的活性剤の他の成分とともに投与することもできる。
本発明は、IL−2cγcによるサイトカイン刺激シグナル伝達がその病因に関係している疾患の治療のための医薬の製造における、cγcタンパク質、ならびに、41MDDおよび44MPD、1−357および1−341などのNIKへの結合に関与する領域を含むcγcの断片を認識して結合することができる特異的抗体の使用に関する。
本発明は、IL−2cγcによるサイトカインのシグナル伝達がその病因に関係している疾患を治療する方法であって、cγcタンパク質、および/または41MDDおよび44MPD、1−357および1−341などのNIKへの結合に関与する領域を含むcγcの断片を認識して結合することができる特異的抗体を治療上有効な量投与することを含む方法に関する。
非経口(例えば静脈内、皮下、筋肉内など)投与のために、活性タンパク質を、溶液、懸濁液、乳化液または凍結乾燥粉末として、薬学的に許容し得る非経口用ビヒクル(例えば水、生理食塩水、デキストロース溶液など)、および等張性を維持する添加剤(例えばマンにトール)または化学的安定性を維持する添加剤(例えば防腐剤および緩衝剤)とともに処方することができる。この処方剤は、一般的に使用される技術によって滅菌される。
また、ヒトの体内における分子の半減期を延長させる連結処理を用いることによって、例えば、国際公開第92/13095号パンフレットに記載されているように、分子をポリエチレングリコールに連結することによって、本発明に係る活性タンパク質のバイオアベイラビリティーも改善することができる。
本発明は、例えば炎症性疾患および/または癌の患者など、必要性のある患者においてNIK応答を促進または阻害する方法であって、cγc、および、41MDDおよび44MPD、1−357および1−341などのNIKへの結合に関与する領域を含むcγcの断片、それらのムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、円順列変異誘導体もしくは断片を治療上有効な量投与することを含む方法に関する。
「治療上有効な量」とは、投与した際に、本発明の該ポリペプチドが、NIK、NF−κBおよび/またはcγcのシグナル伝達という生物学的活性の調節をもたらす量である。単回または複数回の用量として各個体に投与される用量は、投与経路、患者の状態および特徴(性別、年齢、体重、健康状態、大きさ)、症状の程度、併用される治療、治療頻度、および所望の効果など、さまざまな因子によって決まる。確立された用量範囲の調整および操作は、NIK cγcシグナル伝達、およびその断片の活性を測定するインビトロおよびインビボの方法同様、当業者が適宜行い得ることである。
cγc、ならびに41MDDおよび44MPD、1−357および1−341などのNIKへの結合に関与する領域を含むcγcの断片は、cγc−NIK相互作用を調節する治療上有益な分子の可能性があるものをスクリーニングするためのアッセイ法において使用することができる。NIK、cγc、およびNF−κB誘導型プロモーター下に置かれたレポーター遺伝子であるルシフェラーゼ遺伝子を発現するトランスフェクトされた細胞を、例えばコンビナトリアル化学法によって作製された多様な合成有機化合物の各々で処理することができる。処理した細胞におけるルシフェラーゼ発現(すなわちNF−κB活性化)を対照細胞に対して比較することもできる。NF−κB活性を調節することができる候補有機化合物を選択することもできる。試験化合物は、コンビナトリアル化学法だけでなく、他のハイスループット合成法によって得ることもできる。自動化された技術によって、スクリーニングすることができる個別化合物の大集団である分子ライブラリーの迅速な合成が可能になる。より大きくより多様な化合物ライブラリーを作製すれば、そのライブラリー内で有用薬剤が発見される可能性が高くなる。ハイスループットスクリーニングロボットを用いて、数千種類の化合物によるシグナルソーム形成の補充または破壊の阻害を試験することができる。
また、コンビナトリアル化学法によって作製された分子で、NIKとIL−2γ鎖レセプターとの相互作用を阻害し、cγcの細胞内ドメインを含むポリペプチド、またはそのムテイン、融合タンパク質、機能的誘導体、活性画分、円順列変異誘導体もしくは断片を含む分子のスクリーニングであって、タンパク質の一方(例えばNIKまたはNIK640−720)を、プレート中に(プレートに結合している特異的抗体によって)コーティングまたは捕捉すること、およびプレートに結合している他のタンパク質(例えば、cγc、IDcγc、またはこれらの断片)の結合を、有機化合物の存在下または非存在下で特異的抗体により検出することを含むスクリーニング。
本発明を、具体的な実施態様に関連して説明してきたが、当業者には、その代替、改変、変更した態様が明らかである。したがって、そのような代替、改変、変更した態様もすべて、添付した請求の範囲の精神と広い範囲内に包含しようとするものである。本明細書に記載した刊行物、特許および特許出願はすべて、各刊行物、特許および特許出願が具体的かつ個別に参考文献として本明細書に組み入れられると記載してあるのと同程度に、全体が参考文献として本明細書に組み入れられる。また、本出願における文献の引用または確認は、それら文献が、本発明の先行技術として利用できることを認めたものと解釈してはならない。
以下、本発明を下記の非制限的な実施例によって説明する。
ツーハイブリッドシステム法による、NIKと相互作用するタンパク質の検出
酵母でのツーハイブリッドシステム法は、タンパク質−タンパク質相互作用をインビボで検出するために広く用いられており、これを使用してDNA発現ライブラリーをスクリーニングし、NIKと相互作用するタンパク質を見つけ、同定した(詳細については実施例8参照)。リンパ系の発達および機能におけるNIKの極めて重要な役割を示す証拠から、ヒト骨髄ライブラリーを選択した。
NIKのN末端領域は、負の調節ドメイン(NRD)(NIKのC末端側領域と相互作用して、それによりNIKのその基質(IKKαおよびp100)への結合を阻害する)を含む。NIKのC末端領域およびN末端領域の間の相互作用は、NIKのその基質への結合を抑制する。NIKのC末端ドメインが、TRAF−2、IKK−1など、いくつかの重要な調節タンパク質およびP100へのNIKの結合に関与していることが発見され、このドメインが、その活性を調節するのに重要な、付加的なタンパク質に結合し得ることを示唆している。したがって、C末端側ドメインがNRDによって塞がれてしまう可能性があるため、ツーハイブリッドシステムにおいて完全な分子をベイトとして導入するのは望ましくない。そのため、ツーハイブリッドスクリーニングでは、NIKのC末端(624〜947番目のアミノ酸)をベイトとして使用している(詳細については実施例8参照)。
選択プレート上に5000個を上回るクローンが出現した。耐性クローンの約半数をα−ゲルアッセイによって解析したところ、青色の強度は様々であったが、それらの約60%が陽性であることが分かった。800のコロニーからプラスミドを単離・精製した。800のうち400のプラスミド(結合親和性の指標である発色強度によって選抜した)のDNAインサートを、cDNAライブラリーでインサートのフランキング配列に対応するプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅して、その配列を決定した。検出されたプレイのほとんどは、非特異的であることが明らかになった。例えば、DNAインサートの80%は、さまざまな遺伝子の3'側および5'側の非翻訳領域に一致しており、10%のインサートはイムノグロブリンをコードしていた。残りの10%が、タンパク質の領域をコードする断片に相当した。陽性コロニーには、播種後4〜8日で青色に変わるもの、約8〜12日で変わるもの、また、それより遅く、播種後12〜16日までに色づくものもあった。陽性コロニーにおける発色のスピードは、タンパク質−タンパク質の相互作用の強さの指標である。すなわち、発色が早いほど、相互作用が強い。
発見されたタンパク質の1つ、IL−2γ鎖レセプターをさらに解析するために選んだ。IL−2γ鎖レセプターは、IL−2、IL−4、IL−7、IL−9、IL−13、IL−15およびIL−21レセプター複合体のサブユニットであり、そのため、一般的には、「共通γ鎖」(cγc)と呼ばれている。
哺乳動物環境におけるIL−2γ鎖−NIK相互作用の評価
酵母のツーハイブリッドシステムにおける2種類の異なる哺乳動物タンパク質間の特異的相互作用の検出は、本来の哺乳動物環境においてタンパク質間に対応する相互作用が存在することを必ずしも示唆していない。したがって、哺乳動物環境におけるNIKとcγcとの相互作用を確認するために、NIKとcγcの免疫共沈降実験を、これらのタンパク質を過剰発現する293−T細胞の溶解物において実施した(詳細については実施例9参照)。
NIKとcγcを過剰発現させるために、等量のNIKおよびcγcの発現プラスミド(それぞれ、pcS3MTNIK(N末端にmyc標識を有する)およびpcDMA3で、両プラスミドとも同様の分子量)で293−T細胞をトランスフェクトした。過剰発現されたタンパク質を、どちらか一方のタンパク質(例えばNIK)に特異的な抗体で免疫沈降し、ウエスタンブロット解析によって、共沈降するタンパク質(例えばcγc)の存在を検出した。
図2に、免疫沈降物を抗cγc抗体によって検出したウエスタンブロット解析の結果をまとめた。解析した試料は以下の通りである。1:cγcを過剰発現し、抗cγcにより免疫沈降された細胞溶解物。この試料は、免疫沈降法の陽性対照である。cγcの分子量と一致する強いシグナルが観察された。2:cγcのみを過剰発現し、抗NIK抗体により免疫沈降された細胞溶解物。本実験におけるこの試料は、低濃度、かつおそらく不活性型で存在する内因性NIKタンパク質によるcγcの免疫共沈降を確認するためと、抗NIK抗体の特異性を確認するために実施した。このブロットにおいて、cγcに相当する分子量をもつタンパク質は検出されなかった。6:myc標識されたNIKおよびcγcをともに過剰発現し、抗myc抗体により免疫沈降された細胞の溶解物。cγcがNIKとともに免疫共沈降したことから、cγc−NIK相互作用は本来の環境においても起こることが実証された。3:6と同じであるが、NIKがNIKのaly変異体(ヒトにおける変異はG860Rで、マウスG855Rにおけるaly変異に対応する)に変わっている点が異なっている。cγcはNIK aly変異体とともに免疫共沈降した。これは、この変異体が、野生型NIKと同じ効率でcγcに結合できることを示している。4:ツーハイブリッドシステムにおいてベイトとして使用されたNIKの断片と同じ断片である、NIKのC末端(624〜947番目のアミノ酸)を過剰発現する細胞の溶解物。cγcに相当するバンドはブロットで検出されなかった。5:NIKのC末端およびcγcをともに過剰発現し、抗NIK抗体により免疫沈降された細胞の溶解物。cγcは、NIKのC末端と効率的に共沈降した。
これらの結果は、cγcが、NIKのC末端(cγcを同定したツーハイブリッドシステムにおいてベイトとして使用された)または全長NIKと効率的に共沈降することを示している。
図3は、抗NIK抗体によって検出した免疫沈降物および全細胞溶解物のウエスタンブロット解析結果をまとめたものである。解析した試料は以下の通りである。3:NIKのみを過剰発現し、抗NIK抗体により免疫沈降された細胞の溶解物。この試料は、免疫沈降法の陽性対照である。NIKに相当する分子量の強いシグナルが見られた。2:NIKのみを過剰発現し、抗cγc抗体により免疫沈降された細胞の溶解物。NIKに相当する分子量をもつタンパク質は検出できなかった。この結果は、cγc抗体の特異性も実証している。
1:NIKおよびcγcをともに過剰発現し、抗cγc抗体により免疫沈降された細胞の溶解物。この結果は、NIKがcγcによって効果的に免疫共沈降されることを示している。5はトランスフェクトされていない細胞の溶解物であり、4および6は、免疫沈降の前に、それぞれ、NIKおよびcγcの両方を過剰発現するか、またはNIKのみを過剰発現する細胞の溶解物である。NIKの分子量に相当する強いバンドがブロットにおいて見られ、これが過剰発現されていることを実証した。
免疫沈降物のウエスタンブロット解析によって得られた結果は、NIKおよびcγcによる双方向的な沈降が生じることを示しており、それらの相互作用が哺乳動物細胞においても起きることを実証した。NIKのC末端ドメイン、全長NIKおよびNIKaly変異体(NIK−G860R)のすべてが、cγcによって免疫共沈降された。
NIKへの結合を担うcγc中の領域のマッピング
NIKへの結合を担うcγcのドメインを決めるために、cγcの欠失変異体を作製し、それらのNIKへの結合を解析した(図1)。
欠失変異体は、10〜20アミノ酸の間隔で、cγcの細胞質ドメインに連続的に終止コドンを導入して作製した。ツーハイブリッドアッセイにより、SFY526異種性(heterologous)酵母株においてNIKへの結合を試験するために、全長cγc、またはその欠失変異体をコードするDNAをpGADT7プレイベクター(クローンテック社(Clonetech))に導入した。SFY526酵母株は、TRPおよびLeuについて原栄養菌株である。pGBKTプラスミド(ベイトベクター)はTrp1野生型遺伝子を有し、pGADは、野生型Leu2遺伝子を有する。したがって、二重にトランスフェクトされた酵母だけが、Leu Trp選択培地で増殖することができる。GAL4ドメインに融合したキメラタンパク質が相互作用して、GAL4の活性化ドメインがDNA結合ドメインの近傍に位置するようになると、二重にトランスフェクトされた酵母において機能的GAL4が回復される。LAC−Z発現量が、タンパク質−タンパク質相互作用の強さを示す指標となる。標準β−gal/コロニーリフトフィルターアッセイ(クローンテック社、酵母プロトコールハンドブック(Yeast Protocol Hnadbook)、第VI章)によってLac−Z活性を測定した。
ベイトであるNIKへのcγcおよび変異体の結合を測定するためにこれらをpGADT7プレイベクターに導入したところ、高い非特異性を示したため、これらの相互作用を逆向きに試験した。すなわち、欠失変異体をベイトベクターにクロニーングし、NIKまたはNIKのC末端(624〜947番目の残基)をプレイベクターにクロニーングした。表1にまとめたその結果は、いずれの欠失変異体もNIKおよびNIKのC末端の両方に強い結合を示さなかったが、cγcの細胞質ドメイン(ICD)だけが強い結合を示したことを示している。NIKおよびNIKのC末端の両方に対する、ほとんどのICD(近位の膜ドメインから5アミノ酸を欠失している)の結合は、全長cγc分子の結合よりも強かった。cγcICDの膜遠位末端側で12アミノ酸または44アミノ酸を欠失させると、NIKへの親和性が50%低下することが観察された。
様々な欠失変異体によって得られた結果は、cγcの膜遠位ドメインが、NIKへの結合に関与していることを示している。したがって、329〜369番目残基に相当するcγcの膜遠位ドメインからの41アミノ酸ポリペプチド(41MDDと呼ばれる)の結合を解析した。
全長NIKまたはC末端NIKへの41MDDポリペプチドの結合を両方向で試験した(すなわち、41MDDをプレイ、NIKをベイトとし、その逆も)。得られた結果を表2に示す。NIKをプレイパートナーとしたときに相互作用が比較的弱くなるが、NIKをベイトにすると強くなる。41MDDの相互作用は、全長NIKを用いたときよりも、NIKのC末端を用いたときに強くなる。これらの結果から、41MDDポリペプチドがNIKへの結合に関与していることが確認された。
同様に、cγcの膜近位ドメイン(MPD)の近くに位置する細胞内断片を含む構造物を用いてツーハイブリッド実験を実施した。その結果、282〜235番目のアミノ酸残基(44MPD)である44アミノ酸の領域もNIKに結合できることが示唆された。
免疫共沈降実験によってこの結果が確認された。GSTに融合された44MPDとmycNIKを細胞内で過剰発現させ、細胞を溶解して抗GST抗体で免疫沈降した(実施例9参照)。免疫沈降物をウエスタンブロットで解析した。結合したNIKを抗myc抗体で検出した。その結果、44MPD断片もNIKに結合することが実証された(図はない)。
NIKと相互作用する特異的アミノ酸を決定するために、ICDcγcにおいて、41MDDに位置する残基における変異誘発実験を実施した。シグナル伝達タンパク質のプロリンリッチモチーフと、その同族ドメインとの相互作用については充分に記述されている(Kay BK, Williamson MP, Sudol M. FASEB J、2000年2月、14(2):231-421)。41MDDアミノ酸の20%のアミノ酸はプロリンである。このため、41MDDの内部にある2つの異なった部位にある2つの連続したプロリンをアラニンに変異させた:1−PP336,337AAおよび2−PP360,361AA。
この変異は、以下のプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて実施した。
PP336,337AA変異体を作製するために、以下のプライマーを用いた。
5' ctcgtcagtgagattgccgcaaaaggaggggcccttg(配列番号:7)
5' caagggcccctccttttgcggcaatctcactgacgag(配列番号:8)
PP360,361AA変異体を作製するために、以下のプライマーを用いた。
5' gcccctactgggccgccgcatgttacaccctaaag(配列番号:9)
5' ctttagggtgtaacatgcggcggcccagtaggggc(配列番号:10)
また、41MDDにおいて、例えばK338、E344およびW358など、プロリン以外の残基においても変異作出を行なった。
K338A変異体を作製するために、以下のプライマーを用いた。
5' gtcagtgagattcccccagcaggaggggcccttggggag(配列番号:11)
5' ctccccaagggcccctcctgctgggggaatctcactgac(配列番号:12)
E344A変異体を作製するために、以下のプライマーを用いた。
5' ggaggggcccttggggcggggcctggggcctcc(配列番号:13)
5' ggaggccccaggccccgccccaagggcccctcc(配列番号:14)
W358A変異体を作製するために、以下のプライマーを用いた。
5' cagcatagcccctacgcggcccccccatgttac(配列番号:15)
5' gtaacatgggggggccgcgtaggggctatgctg(配列番号:16)
cγcICDの変異型はベイトとして使用し、実施例8に記載されているようにツーハイブリッドシステムでNIK−C末端との相互作用を試験した。
これらの結果を表3にまとめる。360番目と361番目の残基をプロリンからアラニンに置換すると、他の置換では実質的な効果はなかったのに対して、NIKへの親和性が50%低下した。
cγcの変異誘発で得られた結果は、41MDD領域の中にある360番目と361番目の残基のプロリンが、NIKへの結合に重要であることを明らかにしている。
NIKの過剰発現によるNF−κB誘導に対するcγcおよびその欠失変異体の効果
NF−κBの活性化を誘導するための実験上の方法の一つは、NIKを過剰発現することによるものである。
NIKが介在するNF−κBの活性化に対するcγcの効果を確認するために、NF−κB誘導型プロモーターの調節下でルシフェラーゼをコードするレポータープラスミド(pcDNA3ルシフェラーゼ)と、NIKをコードする発現プラスミド(pcS3MTNIK)とのみ、またはcγcをコードする発現プラスミド(pcDNA3cγc)とともに、細胞を一過的に(transiently)トランスフェクトした。ルシフェラーゼレポーターアッセイでNF−κBの活性化を測定した(詳細については、実施例10参照)。
pcS3MTNIKおよびpcDNA3ルシフェラーゼによって、293−T細胞をトランスフェクトした。細胞中に現れるルシフェラーゼ活性を測定することによって間接的にNF−κBの活性化を測定した。NIKによるNF−κB活性化に対するcγcの効果を評価するために、pcDNA3cγcをpcS3MTNIKおよびpcDNA3ルシフェラーゼとともに同時トランスフェクトした。いく種類かの同時トランスフェクションを実施して、pcS3MTNIKおよびpcDNA3ルシフェラーゼの濃度は一定にし、pcDNA3cγcの濃度を変えたときの効果を調べた。細胞をトランスフェクトしてから24時間後に回収し、溶解した後ルシフェラーゼ活性を測定した。
この実験の結果を図4にまとめる。NIKの過剰発現だけで、ルシフェラーゼ活性の発現が誘導されたことは、NF−κBが活性化されたことを示している。このようなルシフェラーゼ活性の上昇は、空のプラスミドのみ(pc)またはレポーター遺伝子および空のプラスミド(pc+luc)でトランスフェクトされた細胞では見られなかった。NF−κBの活性化に対するcγcの効果は、NIKに対するcγcの濃度に依存していることが分かった。例えば、cγcがNIKよりも低い濃度で発現された場合には、NIKの効果を増強する(NIKが1μgで、cγcが0.1μgのプラスミドDNA)が、同じか、それよりも高い濃度の場合には、NIKの効果を阻害した(NIKが1μgで、cγcが1μgのプラスミドDNA)。cγcプラスミドのみのトランスフェクションは、NF−κBの活性化をもたらさなかった(図5)。
NIKのC末端(624〜947番目の残基)は、基質およびcγcに結合することができる(実施例2参照)が、触媒作用的には不活性であるため、ドミナントネガティブな変異体(dnNIK)と見なすことができる。低濃度のcγcを発現し、NIKを過剰発現する細胞において観察されるNF−κB活性化の促進に対するdnNIK過剰発現の効果を測定した。その結果を図5にまとめる。既述した通り、NIKの過剰発現だけで、ルシフェラーゼ活性の上昇によって証明されたように、NF−κBの活性化を誘導した。NIKとともにdnNIKを過剰発現させると、このNF−κBの活性化が阻害された。cγcを低濃度で発現させると、NIKが介在するNF−κBの活性化がさらに促進されるのが観察された。しかし、このNF−κB活性化の促進は、dnNIKの過剰発現によって遮断された。この結果、cγcによるNF−κB誘導効果は、NIKを介して発揮されることが確認される。
ツーハイブリッド法によって、ヒトのAlyNIK変異体(ヒトにおける変異はG860Rで、マウスG855Rにおけるaly変異に対応する)はcγcに結合することが明らかになった(実施例2)。この変異体を過剰発現させただけで、野生型NIKと同じような効率でNF−κBの活性化を誘導した(図6)。alyNIK変異体が介在するNF−κB活性化に対するcγcの効果を試験した。その結果を図6にまとめる。cγcの発現は、alyNIKが介在するNF−κBの誘導を促進しなかった。したがって、alyNIK変異体はcγcに結合できるにもかかわらず、そのNF−κBを誘導する活性はcγcによって影響を受けない。
前記したように、NIKの過剰発現によって介在されるNF−κB活性化に対する全長cγcの効果は濃度依存的で、例えば、NIK介在性NF−κB活性化を阻害するには、NIKよりも高い濃度か同じ濃度のcγcが必要とされる。これに対して、NIK介在性NF−κB活性化を促進するには、NIKよりも低濃度のcγcが必要とされる。
NIKによって誘導され、cγcによって促進されるNF−κB活性化に対する、41MDD(cγcの遠位膜ドメインにある41残基で、NIKに結合することが分かっている)の過剰発現の効果を試験した。
ウエスタンブロット解析で証明すると、細胞内cγc、およびその断片をトランスフェクションによって哺乳動物細胞で発現させても、検出可能量のタンパク質を生じさせることができない(図示なし)。これは、膜貫通ドメインおよび細胞外ドメインの欠失によって生じた不安定性による可能性がある。細胞内ドメインは、cγcICDおよびその断片において露出しているかもしれないドメインで、細胞に存在するプロテアーゼとしての傾向をもつPESTドメインを含む。この問題を解決するために、41MDDのGST融合タンパク質を作製して安定させ、NIKおよびcγcによって誘導されるNF−κB活性化に対する41MDD−GST融合タンパク質の効果を試験した。
6ウェルプレートに1ウェル当たり150000個の293−T細胞を播種した。24時間後に3μg/ウェルの総DNA濃度(キャリアDNA pcDNA)で細胞をトランスフェクトした。pcDNAcγcを50ng/ウェルの濃度で用いて、NIKによるNF−κB活性の促進を誘導した。PcGST、および、融合タンパク質GST−41MDDをコードするプラスミドを2μg/ウェルという高濃度で、pcS3MTNIKおよびpcDNA3ルシフェラーゼは0.5μg/ウェルで用いた。トランスフェクトしてから24時間後に、抽出バッファー100μl中に細胞を回収し、凍結融解を繰り返して破砕した。遠心分離(微量遠心で14000rpm、1分間)によって溶解物を予備清澄化(precleared)した。10μlの溶解物のルシフェラーゼ活性を、360μlのアッセイ用バッファー中で測定した。結果は図7にまとめる。NIKの過剰発現およびcγcの低発現によって、NF−κB誘導が促進される。しかし、融合タンパク質GST−41MDDが、NIKおよびcγcと共発現されている試料では、NF−κBの活性化レベルは、以下のNIKのみの過剰発現で観察されるレベルよりも低い。この結果は、全長cγc同様、41MDDも、NIKよりも高い濃度で存在するときには、NIK依存的なNF−κB活性化を阻害することを示している。
NIKによって誘導されるNF−κB活性化に対する、cγc、およびcγcのC末端で欠失したさまざまな変異体の効果を試験した。cγcおよびcγc変異体をコードするプラスミドの使用濃度は0.5μg/mlで、NIKをコードするプラスミドと同じ濃度であった。このような条件下では、全長cγcは、NIKが介在するNF−κB活性化を阻害する結果になると予想される。
6ウェルプレートに1ウェル当たり150000個のHeLa細胞を播種した。24時間後に、総DNA(pcDNAをキャリアDNAとして使用した)を常に2μg/ウェルに保ちながらトランスフェクションを行なった。全長cγcをコードするプラスミド、およびその欠失変異体をコードするプラスミドはすべて、0.5μg/ウェルの濃度で使用した。NIKおよびルシフェラーゼをコードするプラスミドも0.5μg/ウェルで使用した。トランスフェクトしてから24時間後に、抽出バッファー100μl中に細胞を回収し、凍結融解を繰り返して破砕した。遠心分離(微量遠心で14000rpm、1分間)によって溶解物を予備清澄化した。溶解物のルシフェラーゼ活性を、360μlのアッセイ用バッファー中で測定した。
結果は図8にまとめる。NIKと同じ濃度で発現された全長cγcはNF−κB活性を阻害する。NIKへの結合に関与することが明らかにされたドメインである膜遠位ドメイン(図1)に連続的欠失を有するcγcを発現させると、NF−κB活性の阻害が同時に低下する結果となった。325番目と303番目の残基に終止コドンをもつ欠失変異体は、NIKの活性に影響を与えなかった。
これらの結果、cγcの膜遠位ドメインに存在する残基(325番目から369番目までの残基)がNIKの結合に関与しており、その活性を調節する上で重要であることが確認される。
NIKのキナーゼ活性に対するcγcの効果
前記実施例において、cγcがNIKに結合して、その活性を調節することが明らかにされている。この調節作用の基礎をなすメカニズムとして考えられるのは、cγc/NIK相互作用に際して生じるNIKのリン酸化促進であろう。
前記仮説を調べるために、cγcを単独で過剰発現する細胞(図9、レーン1)、NIKを単独で過剰発現する細胞(図9、左から3番目のレーン)、またはcγcとともにNIKを過剰発現する細胞(図9、左から2番目のレーン)、またはキナーゼIKKとともにNIKを過剰発現する細胞(図9、左から4番目のレーン)を破砕して、抗NIK抗体で免疫沈降した試料について、NIKのリン酸化をインビトロで測定した(詳細については、実施例11参照)。
既に記載されているように、5μciγ32P−ATPを用いてキナーゼ反応を行なった(Uhlikら、1998)。図9の結果は、cγcだけではキナーゼ活性を全く示さないことを明らかにしている(図9、左から1番目のレーン)。cγcの存在下では、NIKの自己リン酸化およびIKK1によるリン酸化は3倍増加するのが観察された(レーン2とレーン3とを比較されたい)。この結果は、cγcが、そのリン酸化を誘導することによってNIKの活性を調節しうることを示している。
LTβレセプターを介して伝達されるシグナルの調節におけるcγcの効果
リガンドによるLTβレセプターの誘導はNF−κBの活性化をもたらす。文献では、NIKが、LTβレセプターを介するシグナル伝達に関与することが示唆されている。したがって、LTβレセプターが介在するNF−κB活性化に対する、全細胞質cγcポリペプチドまたは41遠位ドメイン(329−369)の過剰発現の効果を試験した。ルシフェラーゼレポーターアッセイによってNF−κBの活性化を測定した(詳細については、実施例10参照)。
LTβレセプターを発現することが一般的に知られているマウス胚線維芽細胞から細胞株を調製した。6ウェルプレートの各ウェルにつき105個の該細胞株の細胞を播種した。24時間後に、GSTに融合されたcγcの細胞内ドメイン(cγcICD)を発現するプラスミドpcGST ICcgcにより、またはGSTに融合されたcγcの41遠位ドメインを発現するプラスミドpcGST41MDDにより、NF−κB誘導型プロモーターの調節下でルシフェラーゼレポータータンパク質をコードする発現プラスミド(pcDNA3ルシフェラーゼ)とともにトランスフェクションを行なった(遺伝子ポーター(Gene porter)トランスフェクション試薬、ジーンセラピーシステムズ社(Gene therapy systems))。細胞中に現れるルシフェラーゼ活性を測定することによって間接的にNF−κBの活性化を測定した。
空のベクター(pcDNA3)によって、総DNA濃度を2μg/ウェルに標準化した。pcGST ICcgcおよびpcGST41MDDは、約1μg/ウェルの濃度で使用した。トランスフェクトしてから24時間後に、50ng/mlの組換えLTβ(カタログ番号:L−5162、シグマ社(Sigma))によって細胞を1時間刺激した。
結果を図10にまとめる。cγcの細胞内ドメインの発現は、LTβによるNF−κB活性化を2.5倍促進したが、膜遠位41アミノ酸の発現は、LTβによるNF−κB活性化を50%阻害した。
上記結果は、cγcが、LTβレセプターによるシグナル伝達に関与し得ることを示唆している。cγcの41遠位ドメインはLTβレセプターによるシグナル伝達を阻害する。このことは、このポリペプチドまたはその断片が、ペプチドに基づく薬剤設計の候補として役立ち得ることを示している。そのような薬剤はNIKの作用を調節することができ、そのため、炎症性反応を予防または軽減する上で、または変調性免疫調節過程において有益である。
cγcとの相互作用に関係するNIKの領域のマッピング
一連のNIK欠失変異体とcγcとの相互作用を、酵母ツーハイブリッドシステムを用いて試験することによって、NIK内の結合領域を決定した。NIKの切断型変異体をpGBT9ツーハイブリッド用ベイトベクターにクロニーングし、cγcをpGADT7プレイベクターにクロニーングした。β−galアッセイによって、SFY526異種性酵母株において結合を調べた。
結果は、NIKにおけるcγc結合領域は、C末端の196アミノ酸(624〜820番目の残基)中に存在することを示している。
cγcへの結合を担っているNIKのドメインをより正確に定義するため、NIKのさらなる欠失変異体を作出して、免疫共沈降によってcγcへの結合を解析した。cγcとHis標識したNIK欠失変異体とをコードするベクターによって293T細胞をトランスフェクトして、種々の欠失変異体によるcγcへの結合を免疫共沈降によって調べた(詳細については、実施例9参照)。cγcに対する抗体を免疫共沈降に使用し、抗His抗体を用いて、ウエスタンブロット上の免疫沈降物からHis−NIK欠失変異体を検出した。結果を表4にまとめる。
これらの結果は、640番目と720番目のアミノ酸の間に存在する81個のアミノ酸残基(配列番号:18)を含むNIKのドメインが、cγcへの結合に関与していることを示している。
ツーハイブリッドシステム法
スクリーニングに使用されたツーハイブリッドシステムは、マッチメーカー(Matchmaker)バージョンIII(クローンテック社)であった。このシステムにおいて、ベイト遺伝子(NIK遺伝子)は、GAL4 DNA結合ドメイン(DNA−BD)との融合タンパク質として発現され、一方、プレイ遺伝子またはcDNAライブラリーは、GAL4活性化ドメイン(AD)との融合タンパク質として発現される。DNA−BDとADが近傍に来ると、4種類のレポーター遺伝子(HIS、ADE、lacZおよびα−galをコードする)の転写が活性化される。
リンパ系の発達および機能におけるNIKの極めて重要な役割を示している証拠に基づいて、ヒト骨髄ライブラリー(クローンテック社、カタログ番号:HY4053AH)をプレイとして選択した。
高度にストリンジェトな条件下のプレート上で、すなわち、LEU(ベイトをコードするプラスミドのための選抜マーカー)、TRP(プレイをコードするプラスミドのための選抜マーカー)、HISおよびADEを含まないプレートの中で増殖しているクローンに、α−gal発現を検出するための基質を染み込ませた。酵母細胞を(界面活性剤および機械的ストレスによって)破砕してから、DNAのフェノール抽出およびエタノール沈降によって、陽性クローンからプラスミドを精製した。プラスミドの中のcDNAインサートを、ライブラリーベクターpACT2に特異的なフランキングプライマーを用いたPCRによって増幅した。さらなる生化学的解析を行なうために、各増幅cDNAを、哺乳動物用発現ベクターに直接クロニーングした。
免疫沈降法
トランスフェクションのため、150万個の293−T細胞を10cmプレートに播種した。24時間後、総DNA濃度をプレート当たり20μgに維持しながら、myc標識したNIKとcγcの発現プラスミドにより、リン酸カルシウムを利用した同時トランスフェクション(分子クロニーング(Molecular Cloning)第2版、15.33)を実施した。30時間後、細胞を回収して、1%NP−40細胞溶解バッファー(0.5%NP−40、10mM Tris(pH7.5)、150nM NaCl、1mM EDTA)中で溶解した。免疫沈降は、cγcのC末端またはNIKに対して作製した各抗体(サンタクルス社(Santa Cruz)のウサギポリクローナル抗体)であって、あらかじめプロテインAスパース(sparse)(ウサギポリクローナル)またはプロテインGスパース(マウスモノクローナル)に吸着させておいた抗体とともに16時間インキュベートして実施した。免疫沈降物を細胞溶解バッファーで3回、緩衝食塩水で1回洗浄した。ビーズを40μlのレムリ(Laemmli)サンプルバッファーの中で煮沸し、20μlを10% SDS/PAGEにロードした。タンパク質を、このゲルからPVDF膜にブロットして、抗cγcおよび抗NIKでプローブし、その後、ホースラディッシュペルオキシダーゼを結合したヤギ抗ウサギ抗体で処理した。ルミノール(Luminol)(カタログ番号A8511、シグマ社)を基質に用いた増強化学発光法(Enhanced Chemi Luminiscence:ECL)によってブロットを発色させた。
NIKを介するNF−κB活性化アッセイ
293−T細胞(6ウェルプレートで1ウェル当たり1.5×105個)を、1ウェル当たり3μgの総DNA量でトランスフェクトした。必要があれば、空のベクターpcDNAをキャリアDNAとして用いた。1μgのpcS3MTNIK、およびNF−κBにより上方制御されるプロモーターであるHIV−LTR(ヒト免疫不全ウイルスの長鎖末端反復配列)による調節下でルシフェラーゼを発現するpcDNA3ベクター 0.5μgにより、実施例9に記載した通りに同時トランスフェクションを実施した。cγcをコードするDNA(pcDNAcγc)をpcDNAに導入し、トランスフェクションの24時間後に、NIK発現ベクターの濃度の10分の1、2分の1、および1分の1の割合で使用し、100μlの抽出バッファー(0.1Mリン酸カリウム、pH7.8、1mM DTT)に細胞を回収し、凍結および融解(液体窒素で1分間。22℃)を繰り返して破砕した。遠心分離(14000rpm、微量遠心、1分間)によって溶解物を予備清澄化(precleared)した。5μlの溶解物のルシフェラーゼ活性を、360μlのバッファー(20mMリン酸カリウム、20mMグリシル−グリシン、8.5μM硫酸マグネシウム、2mM EGTA、1mM DTT、1mM ATP、および5μM D−フリフェリン(カタログ番号L−6882、シグマ社)の中で分析した。
キナーゼアッセイ
10μgのpcS3MTNIKおよび10μgのpcDNAcγcまたはヒスチジン標識したIKK1(psHISIKK1)で、空のpcDNAをキャリアDNAとして用いて総DNA濃度をプレート当たり20μgに維持しながら、293−T細胞(10cmプレート当たり2×106個)をリン酸カルシウム法によってトランスフェクトした。24時間後、細胞を回収して、1%NP−40細胞溶解バッファー中で破砕し、予めプロテインAセファロースビーズに吸着させてあるウサギ抗NIK抗体によって8時間免疫沈降を行なった。既に記述されているように(Uhlikら、1998)、5μciγ32P−ATPを用いてキナーゼ反応を行なった。
NIK−cγc相互作用を阻害する非ペプチド低分子の製造とスクリーニング
コンビナトリアル化学合成法によって非ペプチド低分子のライブラリーを製造した。コンビナトリアル化学合成法の設計は、当技術分野において周知のものであり、例えばHermkensら、(1996)によって説明されている。NIK、cγc、およびNF−κB誘導型プロモーターの調節下でルシフェラーゼをコードするレポータープラスミド(pcDNA3ルシフェラーゼ)を発現する細胞を、各合成有機化合物に曝露し、実施例4に記載したように、NF−κB活性化を試験する。
NF−κBの活性化を阻害できる化合物を、さらなる試験のために選択する。
または、細胞を、cγc、およびNF−κB誘導型プロモーターの調節下でルシフェラーゼをコードするレポータープラスミド(pcDNA3ルシフェラーゼ)で一過的にトランスフェクトして、各合成有機化合物に曝露する。合成化合物に曝露した後、対応するレセプターへのリガンド結合によって内因性NIKが活性化される場合には、実施例6に記載したとおりにNF−κB活性化を試験する。
NF−κBの活性化を阻害できる化合物を、さらなる試験のために選択する。
内因性NIKとcγcとの相互作用
NIKとcγcとの相互作用を、哺乳動物細胞環境、すなわち、これらのタンパク質を過剰発現する293−T細胞の溶解物においてに明らかにした(実施例4参照)。これらの内因性タンパク質によって、これらタンパク質を天然に発現する細胞において、以下の実験を行なった。すなわち、末梢血単核細胞(PMBC)(500×106細胞)をIL−2とともにインキュベートして破砕し、抗cγc抗体によって免疫沈降した(免疫沈降については、実施例9参照)。cγcに結合して免疫共沈降したタンパク質を、関連する抗体を用いたウエスタンブロットで検出した。cγcとの免疫共沈降を試験された候補タンパク質は、NIK、IKKα(IKK1)、IKKβ(IKK2)、IKKγ(NEMO)など、通常、シグナルソームに存在するタンパク質であった。この免疫共沈降したタンパク質を細胞の溶解物中で試験し、0時間目と、IL−2とともに4時間インキュベートした後に調べた。図16Aにまとめた結果は、NIKが、IL−2による刺激を受ける前も後も、cγcにより共沈降されることを示している。したがって、NIKは、cγcと構造的に結合していることが分かった。微量のIKK−1が、基礎レベルで見られ、IL−2とともに4時間インキュベートすると、別のシグナルソーム成分、すなわちIKK−2およびNEMOが、cγcを介してIL−2レセプターに補充された。これらの結果は、IL−2レセプター共通γ鎖が、IKK−1結合領域とは別の位置でNIKに結合していることを示している。同様の結果が、IL−15で細胞を刺激した場合にも得られた(図16A、右図)。
cγcによって免疫共沈降したシグナルソームが活性を有するか否かを確認するため、前記免疫沈降物を、GST−IKBα1−54のリン酸化を測定するキナーゼアッセイで試験した(実施例11参照)。図16Bにまとめた結果は、IL−2によって刺激された細胞からの免疫沈降物だけがGST−IKBα1−54をリン酸化できることを示した。
したがって、これらの結果は、生理学的条件下において、NIKはcγcと構造的に結合していること、また、この相互作用はIL−2シグナル伝達およびNIK依存型のNF−κB活性化に関係していることを実証している。よって、cγcとNIKとの相互作用を阻害すると、IL−2のシグナル伝達活性の阻害と、NIKによって誘導されるNF−κB活性化の阻害という結果がもたらされる。
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cγcドメイン、および欠失変異体を作成するために終止コドンが導入された残基の配置図を示す。L:リーダー配列1〜23、ECD:細胞外ドメイン、TM:膜貫通ドメイン、ICD:細胞内ドメイン。
免疫沈降アッセイ法により測定した哺乳動物細胞におけるNIK−cγc相互作用に関する結果を示す。以下の試料について、ウエスタンブロット解析結果を抗cγcで検出した。1:pcDNA3cγcによりトランスフェクトされ、抗cγcにより免疫沈降された293−T細胞の溶解物、2:pcDNA3cγcによりトランスフェクトされ、抗NIK抗体により免疫沈降された293−T細胞の溶解物、6:pcS3MTNIK(myc標識されたNIKを発現する)およびpcDNA3cγcおよびNIKによりトランスフェクトされ、抗myc抗体により免疫沈降された293−T細胞の溶解物、4:pcdnNIK(NIKのC末端ドメイン624〜947番目の残基)によりトランスフェクトされ、抗cγc抗体により免疫沈降された293−T細胞の溶解物、および5:pcdnNIKおよびpcDNA3cγcによりトランスフェクトされ、抗NIK抗体(3および6のように抗myc抗体ではない)により免疫沈降された293−T細胞の溶解物。
免疫沈降アッセイ法により測定した哺乳動物細胞におけるNIK−cγc相互作用に関する結果を示す。免疫沈降物および293−T細胞の全溶解物を抗NIK抗体により検出してウエスタンブロット解析した。解析した試料は以下の通りである。3:pcS3MTNIKによりトランスフェクトされ、抗NIKにより免疫沈降された細胞の溶解物。2:pcS3MTNIKによりトランスフェクトされ、抗cγc抗体により免疫沈降された細胞の溶解物。1:pcS3MTNIKおよびpcDNA3cγcによりトランスフェクトされ、抗cγc抗体により免疫沈降された細胞の溶解物。5:トランスフェクトされなかった細胞の溶解物。4および6:免疫沈降の前に、それぞれ、pcS3MTNIKおよびpcDNA3cγcの両方、またはpcS3MTNIK単独によりトランスフェクトされた細胞の溶解物。
NIK誘導NF−κB活性化に対するcγcの濃度依存的作用を示す。NF−κBの活性化をルシフェラーゼレポーターアッセイ法(詳細については実施例10参照)によって測定する。NIKを過剰発現させて293−T細胞におけるNF−κB活性化を誘導した。以下のプラスミドによりトランスフェクトした細胞におけるルシフェラーゼ発現を測定した。空のプラスミド(試料pc)、空のプラスミドおよびNF−κB誘導型プロモーターの調節下でルシフェラーゼをコードするプラスミド(pcDNA3ルシフェラーゼ、0.5μg/ウェル)(試料pc+luc)、1μgのpcS3MTNIKおよびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料NIK 1mcg)、1μgのpcS3MTNIK、0.1μg/ウェルのpcDNA3cγcおよびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料NIK+cgc 0.1mcg)、1μgのpcS3MTNIK、0.5μg/ウェルのpcDNA3cγcおよびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料NIK+cgc 0.5mcg)、および1μgのpcS3MTNIKに1μg/ウェルのpcDNA3cγcおよびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料NIK+cgc 1mcg)
NIKのドミナントネガティブな変異体(dnNIK、624〜947番目の残基)の、cγcにより促進されるNF−κB活性化に対する効果を示す。NF−κBの活性化は、ルシフェラーゼレポーターアッセイ法によって測定する(詳細については、実施例10参照)。NIKを過剰発現させて293−T細胞におけるNF−κB活性化を誘導した。以下のプラスミドによりトランスフェクトした細胞においてルシフェラーゼ発現を測定した。空のプラスミド(試料pc)、空のプラスミドおよびNF−κB誘導型プロモーターの調節下でルシフェラーゼをコードするプラスミド(pcDNA3ルシフェラーゼ)(試料pc+luc)、pcS3MTNIKおよびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料NIK)、pcS3MTNIK、pcS3MTdnNIKおよびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料NIK+dnNIK)、pcDNA3cγcおよびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料cgc)、pcS3MTNIK、pcDNA3cγcおよびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料NIK+cgc)、pcS3MTdnNIK、pcDNA3cγcおよびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料cgc+dnNIK)、pcS3MTNIK、pcDNA3cγc、pcS3MTdnNIKおよびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料NIK+cgc+dnNIK)。pcS3MTdnNIK、pcS3MTNIKおよびpcDNA3cγcは、それぞれ1、1、および0.1μg/ウェルの濃度で使用した。
NIKaly変異体によって誘導されるNF−κB活性化に対するcγcの効果を示す。NF−κBの活性化は、ルシフェラーゼレポーターアッセイ法によって測定する(詳細については、実施例10参照)。NIKを過剰発現させることにより細胞におけるNF−κB活性化を誘導する。以下のプラスミドによりトランスフェクトした293−T細胞においてルシフェラーゼ発現を測定した。空のプラスミド(試料pc)、空のプラスミドおよびNF−κB誘導型プロモーターの調節下でルシフェラーゼをコードするプラスミド(pcDNA3ルシフェラーゼ)(試料pc+luc)、pcS3MTNIKおよびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料NIK)、pcDNA3ルシフェラーゼおよびpcDNA3cγc(試料cgc)、pcS3MTNIK、pcDNA3cγcおよびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料NIK+cgc)、1μgのpcS3MTalyNIK、およびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料alyNIK)、ならびにpcS3MTalyNIK、pcDNA3cγcおよびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料alyNIK+cgc)。pcS3MTalyNIK、pcS3MTNIKおよびpcDNA3cγcは、それぞれ1、1、および0.1μg/ウェルの濃度で使用した。
cγcの膜遠位末端(41MDD)に由来する41個のアミノ酸からなるポリペプチドの、NIK誘導NF−κB活性化、および全長cγcによる促進に対する効果を示す。NF−κBの活性化は、ルシフェラーゼレポーターアッセイ法によって測定する(詳細については、実施例10参照)。NIKを過剰発現させることにより293−T細胞におけるNF−κB活性化を誘導した。NIKを過剰発現させ、または全長cγcを低濃度で発現させてNF−κBの誘導を促進させる。以下のプラスミドによりトランスフェクトした細胞においてルシフェラーゼ発現を測定した。空のプラスミド(試料pc)、空のプラスミドおよびNF−κB誘導型プロモーターの調節下でルシフェラーゼをコードするプラスミド(pcDNA3ルシフェラーゼ)(試料pc+luc)、pcS3MTNIKおよびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料NIK)、pcS3MTNIK、pcDNA3cγcおよびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料NIK+cgc)、pcS3MTNIK、GSTを発現するプラスミド(pGST)およびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料NIK+GST)、pcS3MTNIK、pcDNA3cγc、pcGSTおよびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料NIK+GST+cgc)、pcS3MTNIK、pcDNA3cγc、pcGST−41MDDおよびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料NIK+cgc+41GST)。プラスミドpcS3MTNIK、pcDNA3cγc、pcGST−41MDDおよびpcDNA3ルシフェラーゼは、それぞれ0.5、0.05、2および0.5μg/mlの濃度で使用した。
NIK誘導NF−κB活性化に対する、cγc欠失変異体(タンパク質のC末端を欠失させた)の効果を示す。NF−κBの活性化は、ルシフェラーゼレポーターアッセイ法によって測定する(詳細については、実施例10参照)。NIKを過剰発現させることによりヒーラ(Hela)細胞におけるNF−κB活性化を誘導した。以下のプラスミドによりトランスフェクトした細胞においてルシフェラーゼ発現を測定した。空のプラスミドおよびNF−κB誘導型プロモーターの調節下でルシフェラーゼをコードするプラスミド(pcDNA3ルシフェラーゼ)(試料pc+luc)、pcS3MTNIKおよびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料NIK)、pcS3MTNIK、pcDNA3cγcおよびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料NIK+cgc)、pcS3MTNIK、pcDNA3cγc357およびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料NIK+1−357)、pcS3MTNIK、pcDNA3cγc341およびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料NIK+1−341)、pcS3MTNIK、pcDNA3cγc325およびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料NIK+1−325)、ならびにpcS3MTNIK、pcDNA3cγc303およびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料NIK+1−303)。プラスミドpcS3MTNIK、pcDNA3cγc/欠失型、pcDNA3ルシフェラーゼは、すべて0.5μg/mlの濃度で使用した。DNAの全量は、空のプラスミドpcDNA3により標準化した。
NIKのインビトロでのキナーゼ活性に対するcγcの効果を示す。10μgのpcDNA3cγc(レーン1)、10μgのpcDNA3cγcおよび10μgのpcS3MTNIK(レーン2)、10μgのpcS3MTNIK(レーン3)、または10μgのpcS3MTNIKおよびキナーゼIKK1をコードする10μgのプラスミド(pIKK1)(レーン4)で293−T細胞をトランスフェクトした。24時間後、細胞を回収し、溶解してから、予めタンパク質Aセファロースビーズに吸着させたウサギ抗NIK抗体により免疫沈降を実施した。既に記載されているように(Uhlikら、1998)、5μci ATPγによりキナーゼ反応を行なった。
全長ICDcγc、またはその41アミノ酸からなる膜遠位ドメインの過剰発現の、LTβレセプターを介して誘導されるNF−κB活性化に対する効果を示す。NF−κBの活性化は、ルシフェラーゼレポーターアッセイ法によって測定する(詳細については、実施例10参照)。マウス胚線維芽細胞におけるNF−κB活性化をLTβによって誘導した。以下のプラスミドによりトランスフェクトした細胞においてルシフェラーゼ発現を測定した。空のプラスミド(試料pc)、GSTを発現するプラスミド(pcGST)およびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料pcGST+luc)、cγcの細胞内ドメインとのGST融合タンパク質をコードするプラスミド(pGSTICcγc)およびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料GSTICcgc+luc)、ならびにcγcの膜遠位ドメインの41アミノ酸からなるポリペプチドとのGST融合タンパク質をコードするプラスミド(pGST41MDD)およびpcDNA3ルシフェラーゼ(試料GST−41MDD+luc)。プラスミドpGSTICcγcおよびpGST41MDDは、1μg/ウェルの濃度で使用し、pcDNA3ルシフェラーゼは0.5μg/ウェルの濃度で使用した。空のプラスミド、pcDNA3は、全量DNA濃度を2μg/ウェルに標準化するためのキャリアとして使用した。ルシフェラーゼ活性のレベルは、相対的な光ユニット(relative light units)(RLU)で表示した。
cγcの細胞内ドメインのアミノ酸配列を示す。
cγcの膜遠位ドメイン(41MDD)の41アミノ酸からなるポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
cγcの細胞内ドメイン(cγcICD)のヌクレオチド配列を示す。
cγcの膜遠位ドメイン(41MDD)の41アミノ酸からなるポリペプチドのヌクレオチド配列を示す。
NIKへの結合に関与する、cγcのC末端側12アミノ酸の配列を示す。
16Aは、内因性NIKおよびcγcの相互作用を示す。末梢血の単核細胞(PMBC)(500×106細胞個)をIL−2またはIL−15の存在下でインキュベートし、溶解して、抗cγc抗体で免疫沈降(IP)した(免疫沈降については、実施例9参照)。cγcに結合して免疫共沈降したタンパク質を、関連抗体を用いてウエスタンブロット(WB)で検出した。WBにおいてcγcとの免疫共沈降を検出するために使用した抗体は、ANTI−NIK、ANTI−IKKα(IKK−1)、ANTI−IKKβ(IKK2)、およびANTI−IKKγ(NEMO)であった。免疫共沈降したタンパク質は、IL−2と0から最長4時間およびIL−15と0から最長1時間インキュベートした後に試験した細胞の溶解物において検出された。非関連IgGを免疫沈降(IP)用の対照として使用した。
16Bは、cγcと免疫共沈降したシグナルソーム(signalosome)が活性であることを示す。16Aに記載したように調製した免疫沈降物を、リン酸化のための基質としてGST−IKBα1−54を用いて、キナーゼアッセイ法(詳細については実施例11参照)で試験した。