上述のような従来の換気装置では、厨房の環境改善を図りつつ厨房が負圧になり過ぎることを抑えて厨房においてドラフト感を抑えることを可能にしている。
ところが、従来の換気装置のように厨房にのみ着目した換気制御では、厨房の状態を考慮した環境改善が図られているものの、厨房の周囲の部屋等における換気時の状況は考慮されていない。このため、厨房の周囲に位置する部屋等の状況によっては、不特定な場所からの空気の流入等によって厨房で発生した調理雰囲気が周囲の部屋等に向けて誘導されるようにして漏れ出すしまうおそれがある。特に、厨房の調理終了時等に厨房の排気量を下げた場合等には、このような調理雰囲気の漏れ出しはよりいっそう顕著なものとなるおそれがある。
本発明は上述した点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、厨房において生じる調理雰囲気の近傍空間への漏れ出しを抑えることができる給排気制御装置、給排気装置および給排気方法を提供することにある。
第1の発明は、厨房を含有する厨房含有空間に対する給排気の制御を行う給排気制御装置に関する発明であって、取得部と、制御部とを備えている。取得部は、厨房の空気を厨房含有空間外に排気可能な排気手段の排気量に関する情報である厨房排気情報と、厨房含有空間外の温度情報と、連続空間の温度情報と、厨房の温度情報と、を取得する。ここでの厨房排気情報としては、例えば、排気手段の風量測定値、消費電力の値やインバータ制御における周波数等もしくは時間経過に伴うこれらの変化量等の情報等が含まれる。ここでの連続空間の温度情報は、連続空間の気温であってもよいし、連続空間の空調を行うための空気調和装置等が設けられている場合にはその設定温度等であってもよい。また厨房の温度情報についても同様に、厨房の気温であってもよいし、厨房の空調を行うための空気調和装置等が設けられている場合にはその設定温度等であってもよい。制御部は、第1給気手段の給気量を、厨房含有空間外の温度情報と連続空間の温度情報との関係に応じて制御し、第2給気手段の給気量を、厨房含有空間外の温度情報と厨房の温度情報との関係に応じて制御し、第1給気手段の給気量と第2給気手段の給気量との合計が、排気手段の排気量を越えないように調整する。ここで、第1給気手段とは、連続空間に対して厨房含有空間外の空気を取り込み可能な手段のことをいう。また、連続空間とは、厨房含有空間のうち、厨房と空間的に連続している空間のことをいう。第2給気手段とは、厨房含有空間外の空気を厨房に取り込み可能な手段のことをいう。さらに、制御部は、厨房含有空間外の温度情報と連続空間の温度情報とに基づいて、厨房含有空間外の温度が連続空間に関する温度よりも低いと判断した場合に、第1給気手段の給気量を上げる制御を行う。
従来の換気装置では、油煙や臭気等の調理雰囲気が発生する厨房について特に着目して換気制御を行っているが、換気時における厨房の周囲の部屋等の状況は考慮されていない。このため、厨房の近傍に位置する部屋等の状況によっては、厨房で発生した調理雰囲気が漏れ出してしまうおそれがある。
また、従来の換気装置では、室外の温度条件と室内の温度条件との2つの要素を対象とし、それぞれの温度状況を比較することで、室内に居る人間にとって室外の気温のほうがより快適な場合等に、室外の空気を室内に積極的に取り込む換気制御が行われている。ところが、室内に厨房を有している厨房含有空間については、室内の温度分布が不均一で部分的に異なる温度状態となりがちである。このように、厨房含有空間の換気を行う場合には、従来の換気制御のように室内の温度条件と室外の温度条件と2つの要素のみを単純に比較することによる制御では、例えば、室内の厨房以外の空間では快適状態であるにもかかわらず厨房が快適でない状態にある等、状況に違いが生じ、厨房含有空間を構成する部分ごとの空間の快適性を考慮して換気制御を行うことは難しい。また、このような室内空間の部分空間ごとについて、空気調和装置等を用いて温度を調整することも可能であるが、省エネの観点からすると必ずしも好ましいとはいえない場合がある。
これに対して、第1の発明では、厨房と比較して連続空間が負圧の状態となるように調整することができ、厨房から連続空間へと流れる気流を抑えることが可能になる。このため、厨房において発生する調理雰囲気が連続空間に対して漏れ出す程度を抑えることができるようになる。
さらに、例えば、連続空間に居る人間にとって、連続空間の温度よりも厨房含有空間外の温度のほうが快適に感じられる温度条件の場合に、第1給気手段の給気量を増加させる制御を行うことにより、連続空間の温度調整を行う空気調和装置等の運転に要するエネルギーを低減もしくは不用とさせながら連続空間の快適性の悪化を抑えることが可能になる。また、連続空間に居る人間にとって、厨房含有空間外の温度よりも連続空間の温度のほうが快適に感じられる温度条件の場合に、第1給気手段の給気量を低下させる制御を行うことにより、ある程度の量の新鮮な空気を取り込みながら連続空間における空調負荷を低減させ、連続空間の快適性の悪化を抑えることが可能になる。
一方、制御部は、厨房含有空間外の温度情報と厨房の温度情報との関係に応じて、厨房含有空間外の空気を厨房に取り込み可能な第2給気手段の給気量についても制御を行う。このため、例えば、厨房に居る人間にとって、厨房の温度よりも厨房含有空間外の温度のほうが快適に感じられる温度条件の場合に、第2給気手段の給気量を増加させる制御を行うことにより、厨房の温度調整を行う空気調和装置等の運転に要するエネルギーを低減もしくは不用とさせながら厨房の快適性の悪化を抑えることが可能になる。また、厨房に居る人間にとって、厨房含有空間外の温度よりも厨房の温度のほうが快適に感じられる温度条件の場合に、第2給気手段の給気量を低下させる制御を行うことにより、ある程度の量の新鮮な空気を取り込みながら厨房における空調負荷を低減させ、厨房の快適性の悪化を抑えることが可能になる。
このように、ここでは、連続空間と厨房とにおいて温度が異なることで給気や排気を必要とするタイミングに差異が生じるような場合であっても、連続空間に居る人間にとっての快適性と厨房に居る人間にとっての快適性との両方を反映させた給排気制御を行うことができるようになる。したがって、省エネ化を図りつつ連続空間および厨房の両空間の快適性を損なわないための制御を行うことが可能になる。
さらに、厨房と空間的に連続している連続空間では、熱源を有する調理装置が使われることによって厨房で生じる熱が伝わりやすく、温度が高い状態になりがちであるが、第1の発明では、制御部が、厨房含有空間外の温度が連続空間に関する温度よりも低いと判断した場合に、第1給気手段の給気量を上げる制御を行う。このため、連続空間における温度が上昇して温度条件が悪化した場合であっても、連続空間と比べて温度の低い厨房含有空間外の空気を、連続空間に対して積極的に取り込むことができ、連続空間における温度を下げることが可能になる。したがって、上記温度条件の場合には、連続空間の温度調整のためのエネルギーが不要になったり空調負荷を低減させたりすることが可能になる。このため、ここでは、省エネによって連続空間の外気冷房を行うことができるようになる。
第2の発明は、厨房を含有する厨房含有空間に対する給排気の制御を行う給排気制御装置に関する発明であって、取得部と、制御部とを備えている。取得部は、厨房の空気を厨房含有空間外に排気可能な排気手段の排気量に関する情報である厨房排気情報と、厨房含有空間外の温度情報と、連続空間の温度情報と、厨房の温度情報と、を取得する。ここでの厨房排気情報としては、例えば、排気手段の風量測定値、消費電力の値やインバータ制御における周波数等もしくは時間経過に伴うこれらの変化量等の情報等が含まれる。ここでの連続空間の温度情報は、連続空間の気温であってもよいし、連続空間の空調を行うための空気調和装置等が設けられている場合にはその設定温度等であってもよい。また厨房の温度情報についても同様に、厨房の気温であってもよいし、厨房の空調を行うための空気調和装置等が設けられている場合にはその設定温度等であってもよい。制御部は、第1給気手段の給気量を、厨房含有空間外の温度情報と連続空間の温度情報との関係に応じて制御し、第2給気手段の給気量を、厨房含有空間外の温度情報と厨房の温度情報との関係に応じて制御し、第1給気手段の給気量と第2給気手段の給気量との合計が、排気手段の排気量を越えないように調整する。ここで、第1給気手段とは、連続空間に対して厨房含有空間外の空気を取り込み可能な手段のことをいう。また、連続空間とは、厨房含有空間のうち、厨房と空間的に連続している空間のことをいう。第2給気手段とは、厨房含有空間外の空気を厨房に取り込み可能な手段のことをいう。さらに、制御部は、厨房含有空間外の温度情報と厨房の温度情報とに基づいて、厨房含有空間外の温度が厨房に関する温度よりも低いと判断した場合に、第2給気手段の給気量を上げる制御を行う。
従来の換気装置では、油煙や臭気等の調理雰囲気が発生する厨房について特に着目して換気制御を行っているが、換気時における厨房の周囲の部屋等の状況は考慮されていない。このため、厨房の近傍に位置する部屋等の状況によっては、厨房で発生した調理雰囲気が漏れ出してしまうおそれがある。
また、従来の換気装置では、室外の温度条件と室内の温度条件との2つの要素を対象とし、それぞれの温度状況を比較することで、室内に居る人間にとって室外の気温のほうがより快適な場合等に、室外の空気を室内に積極的に取り込む換気制御が行われている。ところが、室内に厨房を有している厨房含有空間については、室内の温度分布が不均一で部分的に異なる温度状態となりがちである。このように、厨房含有空間の換気を行う場合には、従来の換気制御のように室内の温度条件と室外の温度条件と2つの要素のみを単純に比較することによる制御では、例えば、室内の厨房以外の空間では快適状態であるにもかかわらず厨房が快適でない状態にある等、状況に違いが生じ、厨房含有空間を構成する部分ごとの空間の快適性を考慮して換気制御を行うことは難しい。また、このような室内空間の部分空間ごとについて、空気調和装置等を用いて温度を調整することも可能であるが、省エネの観点からすると必ずしも好ましいとはいえない場合がある。
これに対して、第2の発明では、厨房と比較して連続空間が負圧の状態となるように調整することができ、厨房から連続空間へと流れる気流を抑えることが可能になる。このため、厨房において発生する調理雰囲気が連続空間に対して漏れ出す程度を抑えることができるようになる。
さらに、例えば、連続空間に居る人間にとって、連続空間の温度よりも厨房含有空間外の温度のほうが快適に感じられる温度条件の場合に、第1給気手段の給気量を増加させる制御を行うことにより、連続空間の温度調整を行う空気調和装置等の運転に要するエネルギーを低減もしくは不用とさせながら連続空間の快適性の悪化を抑えることが可能になる。また、連続空間に居る人間にとって、厨房含有空間外の温度よりも連続空間の温度のほうが快適に感じられる温度条件の場合に、第1給気手段の給気量を低下させる制御を行うことにより、ある程度の量の新鮮な空気を取り込みながら連続空間における空調負荷を低減させ、連続空間の快適性の悪化を抑えることが可能になる。
一方、制御部は、厨房含有空間外の温度情報と厨房の温度情報との関係に応じて、厨房含有空間外の空気を厨房に取り込み可能な第2給気手段の給気量についても制御を行う。このため、例えば、厨房に居る人間にとって、厨房の温度よりも厨房含有空間外の温度のほうが快適に感じられる温度条件の場合に、第2給気手段の給気量を増加させる制御を行うことにより、厨房の温度調整を行う空気調和装置等の運転に要するエネルギーを低減もしくは不用とさせながら厨房の快適性の悪化を抑えることが可能になる。また、厨房に居る人間にとって、厨房含有空間外の温度よりも厨房の温度のほうが快適に感じられる温度条件の場合に、第2給気手段の給気量を低下させる制御を行うことにより、ある程度の量の新鮮な空気を取り込みながら厨房における空調負荷を低減させ、厨房の快適性の悪化を抑えることが可能になる。
このように、ここでは、連続空間と厨房とにおいて温度が異なることで給気や排気を必要とするタイミングに差異が生じるような場合であっても、連続空間に居る人間にとっての快適性と厨房に居る人間にとっての快適性との両方を反映させた給排気制御を行うことができるようになる。したがって、省エネ化を図りつつ連続空間および厨房の両空間の快適性を損なわないための制御を行うことが可能になる。
さらに、熱源を有する調理装置が使用される厨房では、温度が高い状態になりやすく、調理者の作業条件が悪化しがちであるが、第2の発明では、制御部が、厨房含有空間外の温度が厨房に関する温度よりも低いと判断した場合に、第2給気手段の給気量を上げる制御を行う。このため、厨房における温度が上昇して温度条件が悪化した場合であっても、厨房と比べて温度の低い厨房含有空間外の空気を厨房に対して積極的に取り込むことができ、厨房における温度を下げることが可能になる。したがって、上記温度条件の場合には、厨房の温度調整のためのエネルギーが不要になったり空調負荷を低減させたりすることが可能になる。このため、ここでは、省エネによって厨房の外気冷房を行うことができるようになる。
第3の発明は、厨房を含有する厨房含有空間に対する給排気の制御を行う給排気制御装置に関する発明であって、取得部と、制御部とを備えている。取得部は、厨房の空気を厨房含有空間外に排気可能な排気手段の排気量に関する情報である厨房排気情報と、厨房含有空間外の温度情報と、連続空間の温度情報と、厨房の温度情報と、を取得する。ここでの厨房排気情報としては、例えば、排気手段の風量測定値、消費電力の値やインバータ制御における周波数等もしくは時間経過に伴うこれらの変化量等の情報等が含まれる。ここでの連続空間の温度情報は、連続空間の気温であってもよいし、連続空間の空調を行うための空気調和装置等が設けられている場合にはその設定温度等であってもよい。また厨房の温度情報についても同様に、厨房の気温であってもよいし、厨房の空調を行うための空気調和装置等が設けられている場合にはその設定温度等であってもよい。制御部は、第1給気手段の給気量を、厨房含有空間外の温度情報と連続空間の温度情報との関係に応じて制御し、第2給気手段の給気量を、厨房含有空間外の温度情報と厨房の温度情報との関係に応じて制御し、第1給気手段の給気量と第2給気手段の給気量との合計が、排気手段の排気量を越えないように調整する。ここで、第1給気手段とは、連続空間に対して厨房含有空間外の空気を取り込み可能な手段のことをいう。また、連続空間とは、厨房含有空間のうち、厨房と空間的に連続している空間のことをいう。第2給気手段とは、厨房含有空間外の空気を厨房に取り込み可能な手段のことをいう。さらに、制御部は、厨房含有空間外の温度情報と連続空間の温度情報と厨房の温度情報とに基づいて、厨房含有空間外の温度が連続空間に関する温度より高く厨房に関する温度より低いと判断した場合に、第1給気手段の給気量に対する第2給気手段の給気量の比率を上げる制御を行う。
従来の換気装置では、油煙や臭気等の調理雰囲気が発生する厨房について特に着目して換気制御を行っているが、換気時における厨房の周囲の部屋等の状況は考慮されていない。このため、厨房の近傍に位置する部屋等の状況によっては、厨房で発生した調理雰囲気が漏れ出してしまうおそれがある。
また、従来の換気装置では、室外の温度条件と室内の温度条件との2つの要素を対象とし、それぞれの温度状況を比較することで、室内に居る人間にとって室外の気温のほうがより快適な場合等に、室外の空気を室内に積極的に取り込む換気制御が行われている。ところが、室内に厨房を有している厨房含有空間については、室内の温度分布が不均一で部分的に異なる温度状態となりがちである。このように、厨房含有空間の換気を行う場合には、従来の換気制御のように室内の温度条件と室外の温度条件と2つの要素のみを単純に比較することによる制御では、例えば、室内の厨房以外の空間では快適状態であるにもかかわらず厨房が快適でない状態にある等、状況に違いが生じ、厨房含有空間を構成する部分ごとの空間の快適性を考慮して換気制御を行うことは難しい。また、このような室内空間の部分空間ごとについて、空気調和装置等を用いて温度を調整することも可能であるが、省エネの観点からすると必ずしも好ましいとはいえない場合がある。
これに対して、第3の発明では、厨房と比較して連続空間が負圧の状態となるように調整することができ、厨房から連続空間へと流れる気流を抑えることが可能になる。このため、厨房において発生する調理雰囲気が連続空間に対して漏れ出す程度を抑えることができるようになる。
さらに、例えば、連続空間に居る人間にとって、連続空間の温度よりも厨房含有空間外の温度のほうが快適に感じられる温度条件の場合に、第1給気手段の給気量を増加させる制御を行うことにより、連続空間の温度調整を行う空気調和装置等の運転に要するエネルギーを低減もしくは不用とさせながら連続空間の快適性の悪化を抑えることが可能になる。また、連続空間に居る人間にとって、厨房含有空間外の温度よりも連続空間の温度のほうが快適に感じられる温度条件の場合に、第1給気手段の給気量を低下させる制御を行うことにより、ある程度の量の新鮮な空気を取り込みながら連続空間における空調負荷を低減させ、連続空間の快適性の悪化を抑えることが可能になる。
一方、制御部は、厨房含有空間外の温度情報と厨房の温度情報との関係に応じて、厨房含有空間外の空気を厨房に取り込み可能な第2給気手段の給気量についても制御を行う。このため、例えば、厨房に居る人間にとって、厨房の温度よりも厨房含有空間外の温度のほうが快適に感じられる温度条件の場合に、第2給気手段の給気量を増加させる制御を行うことにより、厨房の温度調整を行う空気調和装置等の運転に要するエネルギーを低減もしくは不用とさせながら厨房の快適性の悪化を抑えることが可能になる。また、厨房に居る人間にとって、厨房含有空間外の温度よりも厨房の温度のほうが快適に感じられる温度条件の場合に、第2給気手段の給気量を低下させる制御を行うことにより、ある程度の量の新鮮な空気を取り込みながら厨房における空調負荷を低減させ、厨房の快適性の悪化を抑えることが可能になる。
このように、ここでは、連続空間と厨房とにおいて温度が異なることで給気や排気を必要とするタイミングに差異が生じるような場合であっても、連続空間に居る人間にとっての快適性と厨房に居る人間にとっての快適性との両方を反映させた給排気制御を行うことができるようになる。したがって、省エネ化を図りつつ連続空間および厨房の両空間の快適性を損なわないための制御を行うことが可能になる。
さらに、熱源を有する調理装置等が使用される厨房では、調理装置等から離れて存在している連続空間と比べて、温度が高い状態になりやすく、調理者にとっての作業環境も悪化しがちであるが、第3の発明では、厨房含有空間外の温度が連続空間に関する温度より高く厨房に関する温度より低いと制御部が判断した場合に、制御部は、第1給気手段の給気量に対する第2給気手段の給気量の比率を上げる制御を行う。このため、厨房含有空間外の温度が連続空間の温度より高く厨房の温度より低い場合に、連続空間に対する給気よりも厨房に対する給気のほうを優先させることができるようになる。このため、連続空間に対する不必要な空気の流入を抑えて厨房に対する必要な空気の流入を促進させる制御を行うことができ、連続空間における空調負荷を低減させつつ省エネ化を図りながら厨房の外気冷房を行うことが可能となる。
なお、ここでは、第1給気手段の給気量と第2給気手段の給気量との比率を変えることに伴って、排気手段の排気量を上げる制御をしてもよい。また、例えば、厨房において発生する油煙量等が少なく厨房空気の清浄化の観点からは給気の必要性が少ないような場合であっても、厨房における温度の快適化の観点からは給気が必要となる場合があり、この場合には、第1給気手段の給気量に対する第2給気手段の給気量の比率を上げる制御を行うことにより、より効果的な省エネによって厨房の温度を快適化させる制御を行うことが可能になる。
第4の発明は、第1の発明から第3の発明のいずれかにおいて、取得部は、厨房における温度、湿度、臭気、油煙、有害気体量、浮遊粉塵量または調理器具稼働状況のうち少なくともいずれか1つの情報である調理雰囲気情報を取得する。制御部は、調理雰囲気情報に基づいて排気手段の排気量を制御する。ここでの有害気体としては、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素等の人体に害のある成分を含む気体のことをいう。また、ここでの調理器具稼働状況としては、調理器具の稼働の有無、稼働している台数、使用ガス量・電気量等の値が含まれる。
ここでは、厨房における調理雰囲気情報を取得し、この調理雰囲気情報に基づいて厨房の排気手段を制御することで、排気手段の連動制御を、厨房における状況に応じて行うことが可能になる。
第5の発明は、厨房を含有する厨房含有空間に対する給排気を行う給排気装置に関する発明であって、排気手段と、第1給気手段と、第1から第4の発明のいずれか1つの発明とを備えている。
従来の換気装置では、油煙や臭気等の調理雰囲気が発生する厨房について特に着目して換気制御を行っているが、換気時における厨房の周囲の部屋等の状況は考慮されていない。このため、厨房の近傍に位置する部屋等の状況によっては、厨房で発生した調理雰囲気が漏れ出してしまうおそれがある。
これに対して、第5の発明では、給排気制御装置が、排気手段の排気量に関する情報を取得して、これに基づいて排気手段の排気量と第1給気手段の給気量との少なくともいずれか一方を制御する。したがって、給排気制御装置における制御では、厨房の排気手段の排気量等を把握することで、連続空間への給気量が厨房からの排気量を越えないように制御することができる。これにより、厨房と比較して連続空間が負圧の状態となるように調整することができ、厨房から連続空間へと流れる気流を抑えることが可能になる。このため、厨房において発生する調理雰囲気が連続空間に対して漏れ出す程度を抑えることができるようになる。
第6の発明は、厨房を含有する厨房含有空間に対する給排気を行う給排気装置に関する発明であって、排気手段と、第1給気手段と、第2給気手段と、第1から第4の発明のいずれか1つの発明とを備えている。
従来の換気装置では、油煙や臭気等の調理雰囲気が発生する厨房について特に着目して換気制御を行っているが、換気時における厨房の周囲の部屋等の状況は考慮されていない。このため、厨房の近傍に位置する部屋等の状況によっては、厨房で発生した調理雰囲気が漏れ出してしまうおそれがある。
これに対して、第6の発明では、給排気制御装置が、排気手段の排気量に関する情報を取得して、これに基づいて排気手段の排気量と第1給気手段の給気量との少なくともいずれか一方を制御する。したがって、給排気制御装置における制御では、厨房の排気手段の排気量等を把握することで、連続空間への給気量が厨房からの排気量を越えないように制御することができる。これにより、厨房と比較して連続空間が負圧の状態となるように調整することができ、厨房から連続空間へと流れる気流を抑えることが可能になる。このため、厨房において発生する調理雰囲気が連続空間に対して漏れ出す程度を抑えることができるようになる。
第7の発明は、厨房を含有する厨房含有空間に対する給排気を行う給排気方法に関する発明であって、第1ステップと第2ステップとの2つのステップから構成されている。第1ステップでは、厨房含有空間外へ排気される厨房の空気の排気量に関する情報と、厨房含有空間外の温度情報と、連続空間の温度情報と、厨房の温度情報と、を取得する。ここでの排気量に関する情報としては、例えば、排気手段の風量測定値、消費電力の値やインバータ制御における周波数等もしくは時間経過に伴うこれらの変化量等の情報等が含まれる。ここでの連続空間の温度情報は、連続空間の気温であってもよいし、連続空間の空調を行うための空気調和装置等が設けられている場合にはその設定温度等であってもよい。また厨房の温度情報についても同様に、厨房の気温であってもよいし、厨房の空調を行うための空気調和装置等が設けられている場合にはその設定温度等であってもよい。第2ステップでは、厨房含有空間のうち厨房と空間的に連続している連続空間へ給気される厨房含有空間外の空気の給気量を、厨房含有空間外の温度情報と連続空間の温度情報との関係に応じて調整し、厨房へ供給される厨房含有空間外の空気の供給量を、厨房含有空間外の温度情報と厨房の温度情報との関係に応じて調整し、連続空間へ給気される厨房含有空間外の空気の給気量と厨房へ供給される厨房含有空間外の空気の供給量との合計が、厨房含有空間外へ排気される厨房の空気の排気量を越えないように調整し、厨房含有空間外の温度情報と連続空間の温度情報とに基づいて、厨房含有空間外の温度が連続空間に関する温度よりも低い場合に、連続空間へ給気される厨房含有空間外の空気の給気量を上げる。
第8の発明は、厨房を含有する厨房含有空間に対する給排気を行う給排気方法に関する発明であって、第1ステップと第3ステップとの2つのステップから構成されている。第1ステップでは、厨房含有空間外へ排気される厨房の空気の排気量に関する情報と、厨房含有空間外の温度情報と、連続空間の温度情報と、厨房の温度情報と、を取得する。ここでの排気量に関する情報としては、例えば、排気手段の風量測定値、消費電力の値やインバータ制御における周波数等もしくは時間経過に伴うこれらの変化量等の情報等が含まれる。ここでの連続空間の温度情報は、連続空間の気温であってもよいし、連続空間の空調を行うための空気調和装置等が設けられている場合にはその設定温度等であってもよい。また厨房の温度情報についても同様に、厨房の気温であってもよいし、厨房の空調を行うための空気調和装置等が設けられている場合にはその設定温度等であってもよい。第2ステップでは、厨房含有空間のうち厨房と空間的に連続している連続空間へ給気される厨房含有空間外の空気の給気量を、厨房含有空間外の温度情報と連続空間の温度情報との関係に応じて調整し、厨房へ供給される厨房含有空間外の空気の供給量を、厨房含有空間外の温度情報と厨房の温度情報との関係に応じて調整し、連続空間へ給気される厨房含有空間外の空気の給気量と厨房へ供給される厨房含有空間外の空気の供給量との合計が、厨房含有空間外へ排気される厨房の空気の排気量を越えないように調整し、厨房含有空間外の温度情報と厨房の温度情報とに基づいて、厨房含有空間外の温度が厨房に関する温度よりも低い場合に、厨房へ供給される厨房含有空間外の空気の供給量を上げる。
第9の発明は、厨房を含有する厨房含有空間に対する給排気を行う給排気方法に関する発明であって、第1ステップと第4ステップとの2つのステップから構成されている。第1ステップでは、厨房含有空間外へ排気される厨房の空気の排気量に関する情報と、厨房含有空間外の温度情報と、連続空間の温度情報と、厨房の温度情報と、を取得する。ここでの排気量に関する情報としては、例えば、排気手段の風量測定値、消費電力の値やインバータ制御における周波数等もしくは時間経過に伴うこれらの変化量等の情報等が含まれる。ここでの連続空間の温度情報は、連続空間の気温であってもよいし、連続空間の空調を行うための空気調和装置等が設けられている場合にはその設定温度等であってもよい。また厨房の温度情報についても同様に、厨房の気温であってもよいし、厨房の空調を行うための空気調和装置等が設けられている場合にはその設定温度等であってもよい。第2ステップでは、厨房含有空間のうち厨房と空間的に連続している連続空間へ給気される厨房含有空間外の空気の給気量を、厨房含有空間外の温度情報と連続空間の温度情報との関係に応じて調整し、厨房へ供給される厨房含有空間外の空気の供給量を、厨房含有空間外の温度情報と厨房の温度情報との関係に応じて調整し、連続空間へ給気される厨房含有空間外の空気の給気量と厨房へ供給される厨房含有空間外の空気の供給量との合計が、厨房含有空間外へ排気される厨房の空気の排気量を越えないように調整し、厨房含有空間外の温度情報と連続空間の温度情報と厨房の温度情報とに基づいて、厨房含有空間外の温度が連続空間に関する温度より高く厨房に関する温度より低い場合に、連続空間へ給気される厨房含有空間外の空気の給気量に対する厨房へ供給される厨房含有空間外の空気の供給量の比率を上げる。
本発明では、厨房において発生する調理雰囲気が連続空間に対して漏れ出す程度を抑えることが可能になる。
<換気システムの外観構成等>
本発明の一実施形態が採用された換気システムの全体構成を図1、ブロック構成部を図2において、それぞれに示す。また、本換気制御が適用される場合の各構成要素間の関係を図3において示す。
換気システムは、厨房SKと客室SGとを有する厨房含有空間SIを対象に換気制御を行うためのシステムであって、主に、客室給気装置5と、厨房排気装置11と、厨房給気装置15と、センサ30と、コントローラ40とを備えている。なお、ここでの厨房SKと客室SGとは、厨房含有空間SI内で空間的に連続している関係にある。また、客室SGには客室SGの空気を調和させるための空気調和装置3が設けられており、厨房SKには熱源を有する調理装置20が設けられている。この調理装置20は、コンロ21a、フライヤー21b、グリル21cの3つの調理器21から構成されている。
客室給気装置5は、厨房含有空間外SO(以下、単に屋外SOという。)の空気を客室SGに対して取り込む装置であって、インバータ7と、客室給気用換気扇6とを有している。インバータ7は、コントローラ40に対して接続されて周波数制御が行われる。客室給気用換気扇6は、インバータ7の周波数制御を介して、客室SGに取り込む空気量が調整されるように回転される。
厨房排気装置11は、厨房SKの空気を屋外SOに対して送り出すための装置であって、インバータ13と、厨房排気用換気扇12とを有している。インバータ13は、コントローラ40に対して接続されて周波数制御が行われる。厨房排気用換気扇12は、インバータ13の周波数制御を介して、屋外SOに対して送り出される空気量が調整されるように回転される。ここでの、厨房排気装置11の排気によって、厨房において発生する温度、湿度、油煙等の調理雰囲気が、厨房SKから屋外SOに向けて排出される。
厨房給気装置15は、屋外SOの空気を厨房SKに対して取り込む装置であって、インバータ17と、厨房給気用換気扇16とを有している。インバータ17は、コントローラ40に対して接続されて周波数制御が行われる。厨房給気用換気扇16は、インバータ17の周波数制御を介して、厨房SKに取り込む空気量が調整されるように回転される。なお、ここでの厨房給気装置15は、厨房排気装置11とは離れた位置に配置される。これは、厨房排気装置11から排気された調理雰囲気が再び厨房SKに取り込まれてしまうことを防ぐためである。
センサ30は、厨房SKの調理器21の温度をセンシングする調理器温度センサ31と、厨房SKの気温をセンシングする厨房温度センサ32と、客室SGの温度および湿度をセンシングする客室温湿度センサ35と、屋外SOの温度および湿度をセンシングする屋外温湿度センサ36とを有している。このうち、調理器温度センサ31は、コンロ温度センサ31a、フライヤー温度センサ31b、グリル温度センサ31cとから構成されており、これらは厨房SKに設置されたコンロ21a、フライヤー21b、グリル21cに対応して、それぞれの調理器21の温度を測定可能となるように配置される。これらによってセンシングされた各情報は、コントローラ40の取得部41において受信される。なお、ここでの厨房温度センサ32は、調理器21と客室SGとの間付近において、調理器21の温度変化を敏感に感じることができる位置に配置される。これにより、厨房SKの温度変化を素早く検知することができ、厨房SKの状況変化をコントローラ40による換気制御に対してより迅速に反映させることができるようになる。このため、厨房SKにおいて発生した調理雰囲気が拡散してしまう前にできるだけ素早く調理雰囲気を捕らえて屋外SOに排出することができる。
コントローラ40は、取得部41と、制御部42とを有している。取得部41は、厨房排気装置11の排気量に関する情報、すなわちインバータ13の周波数情報を常時あるいは定期的に取得する。また、取得部41は、センサ30の調理器温度センサ31a,31b,31cと、客室温湿度センサ35と、屋外温湿度センサ36とからそれぞれ情報を取得する。
制御部42には、各調理器21(コンロ21a,フライヤー21b,グリル21c)ごとに、必要排気量の値があらかじめ設定される。そして、客室給気装置5の単位時間当たりの給気量(以下、単に「給気量」という。)が厨房排気装置11の単位時間当たりの排気量(以下、単に「排気量」という。)を越えないように、厨房給気装置15も稼働している場合には厨房給気装置15と客室給気装置5の合計給気量が厨房排気装置11の排気量を越えないように、取得部41が取得した厨房排気装置11の排気量の情報とセンサ30からの情報と各調理器21ごとにあらかじめ設定されている必要排気量の値とに応じて、厨房排気装置11の排気量と客室給気装置5、厨房給気装置15の給気量を制御する。これにより、客室SGに対して厨房SKを負圧の状態に維持でき、厨房SKから客室SGに向かう気流を抑え、客室SGから厨房SKに向かう気流を増加させることができる。これにより、ここでの換気システムでは、厨房SKで発生する調理雰囲気が客室SGに対して漏れ出してしまうことを効果的に抑えることができる。
<換気システムによる換気制御動作>
以下に、上述した換気システムの換気制御動作を説明する。
厨房SKにおいては、熱源を有している調理装置20のコンロ21a、グリル21b、フライヤー21bのいずれかが、調理者によって稼働されることにより、厨房SKにおける温度の上昇が生じる。なお、フライヤー21bを用いた場合についても、油煙が発生すると共に厨房SKにおける温度が上昇する。
調理器温度センサ31は、上述のようにして厨房SKの調理器21の温度を測定し、コントローラ40は、取得部41において厨房SKにおける気温の上昇について把握する。例えば、コンロ21aが稼働されて、コンロ温度センサ31aによって温度が検知されると、コントローラ40はその温度の上昇を把握できる。
このようにして、厨房SKの温度を把握したコントローラ40は、制御部42によって、客室給気装置5、厨房排気装置11や厨房給気装置15を制御する。この制御部42では、主に、以下に述べる温度換気制御と給排気バランス制御と外気冷房制御との3つの観点から制御が行われる。
1つ目の観点として、コントローラ40の制御部42では、あらかじめ設定されている各調理器21(コンロ21a,フライヤー21b,グリル21c)ごとの運転時に要する排気量と調理器温度センサ31から得られる情報とに応じて、厨房排気装置11の排気量を調整するという、温度換気制御が行われる。すなわち、ここでは、コンロ温度センサ31aがコンロ21aの温度を測定し、フライヤー温度センサ31bがフライヤー21bの温度を測定し、グリル温度センサ31cがグリル21cの温度を測定する。そして、コントローラ40の制御部42が、これらの測定結果に基づいてそれぞれの調理器21が稼働中か否かを判断・推定し、図4において示すように、稼働中と推定された調理器21特有の運転時に要する排気量に基づいて、厨房排気装置11の排気量の調整が行われる。また、設定されている各調理器21ごとの運転時に要する排気量の値を基準に、対応して設置されている各調理器温度センサ31から得られる温度に応じて、運転時に要する排気量の設定値に対して以下に述べる調理器別補正係数21aV,21bV,21cVによる補正が行われる。なお、調理雰囲気以外の環境負荷に対する排気の必要性(必要最低限の換気量の確保)の観点から、調理器21のすべてが稼働していないと推定される場合であっても、必要最低限の所定の換気量が確保される。ここでは、厨房排気装置11の排気面速度が、一般的に良いとされている0.4m/s以上の状況を少なくとも確保できるように制御される。
2つ目の観点として、コントローラ40の制御部42では、客室給気装置5、厨房排気装置11や厨房給気装置15を制御して各給気量や排気量を調整し、客室給気装置5の給気量と厨房給気装置15の給気量との合計量が、厨房排気装置11の排気量を越えないように調整するという、給排気バランス制御が行われる。図5において示すように、従来の換気システムでは厨房の排気量制御とは無関係に給気量を一定の給気量5cとして特に変更させないで給気を行っており、厨房の排気量を下げる制御を行った場合に、給排気バランスが崩れ、厨房が客室に対して正圧の状態となる(図5における「排気量=給気量」のラインを下回る領域)ことがある。この場合、厨房において発生した調理雰囲気が客室に対して大量に漏れ出してしまうことある。これに対して、ここでの給排気バランス制御では、客室給気装置5の給気量と厨房給気装置15の給気量との合計量が、厨房排気装置11の排気量を越えないように制御を行う(図5の「排気量>給気量」のラインへシフトさせる。)。これによって、客室SGに対して厨房SKが負圧の状態となるように制御され、厨房SKにおいて発生する調理雰囲気の客室SGに対する漏れ出しが抑えられることになる。
3つ目の観点として、コントローラ40の制御部42では、厨房温度センサ32と客室温度センサ35と屋外温度センサ36とからそれぞれ温度情報を取得して、客室SGや厨房SKについて外気を積極的に取り込むことが有効となるタイミングを考慮した外気冷房制御が行われる。この外気冷房制御については、後述する。
すなわち、ここでは、厨房SKの温度の上昇に伴って厨房排気装置11の排気量を上げつつ、客室給気装置5の給気量と厨房給気装置15との合計との関係において厨房SKと客室SGとの給排気バランスが維持され、所定の条件下において屋外SOの空気を積極的に取り込んで外気冷房を行うという制御が行われる。
(一日の換気制御の例)
以下に、一日の屋外SOの気温の変化と外気冷房との関係を示した図6および各時間帯における換気制御を個別に説明した図7を用いて、本換気システムによる一日の換気制御の一例を説明する。ここでは、屋外SOの気温が低い場合において、その低い温度の空気を積極的に客室SGや厨房SKに対して取り込むことで冷房するという、省エネによる冷房を説明する。
図6において、屋外SOの気温の変化を、実線の放物線によって示している。また、時間軸に平行に引かれている実線は客室SGにおける設定温度を示しており、点線は厨房SKにおいて設けられている空気調和装置3の設定温度を示している。ここでの、厨房SKは、調理器21から発生する熱によって気温が高くなりがちであるため、厨房SKにおける設定温度は、客室SGにおける設定温度よりも高い値とされている。
ここで、図6において、屋外SOの気温が厨房SKの設定温度よりも高い時間帯は(図6のT1で示す時間帯)、厨房SKに対しても客室SGに対してもなるべく外気は取り込まないように制御する。これは、屋外SOの気温のほうが高く、外気冷房に適さない状況だからである。このT1の時間帯では、制御部42は、例えば、図7のCASE1において示すように、厨房排気装置11からの排気量を100%とした場合に、客室給気装置5の給気量が10%、厨房給気装置15の給気量が80%の比率となるように調整される。これにより、厨房SKが負圧となるように維持して調理装置20から生ずる油煙等の調理雰囲気が客室SGに向けて漏れ出してしまうことを抑えつつ、このような調理雰囲気を屋外SOに向けて有効に排出することができ、客室SGの快適性を向上させることができる。また、客室SGについては、換気に必要な量の空気の取り込みを確保しつつ、気温のより高い屋外SOの空気の取り込みを抑えることで、厨房SKの不必要な温度上昇を防いでいる。
屋外SOの気温が厨房SKの設定温度よりも低く客室SGの設定温度よりも高い時間帯は(図6のT2−1,T2−2で示す時間帯)、厨房SKの温度状況が厨房SKの設定温度よりも高い状態であれば厨房SKに対して外気冷房を促進させ、客室SGに対しての外気冷房はできるだけ控える。厨房SKの設定温度よりも屋外SOの気温のほうが低く、客室SGの外気冷房は有効ではないが、厨房SKの外気冷房が有効となるからである。このT2の時間帯では、制御部42は、例えば、図7のCASE2において示すように、厨房排気装置11からの排気量を100%とした場合に、客室給気装置5の給気量が10%、厨房給気装置15の給気量が80%の比率となるように調整する。これにより、厨房SKが負圧となるように維持して調理雰囲気の客室SGへの漏れ出しを抑え、屋外SOに向けて有効に排出することができ、調理装置20から生ずる熱で気温が上がりがちな厨房SKを中心に外気冷房を行うことができる。これにより、省エネによって厨房SKの冷房を行い、厨房SKの空間を快適な状態にすることができる。なお、ここでの厨房SKに対する外気冷房は、厨房SKの気温が非常に高い状態となっている場合等には、厨房排気装置11の排気量と厨房給気装置15の給気量との両方について、より多い量に調整する制御が行われる。この場合には、高温となっている厨房SKの空気が屋外SOの冷たい空気と迅速に入れ替えられ、厨房SKの快適性をより迅速に向上させたり、快適性をより効果的に向上させることができる。
屋外SOの気温が客室SGの設定温度よりも低い時間帯は(図6のT3−1,T3−2で示す時間帯)、厨房SKの温度状況が厨房SKの設定温度よりも高い状態であれば厨房SKに対して外気冷房を促進させ、客室SGの温度状況が客室SGの設定温度よりも高い状態であれば客室SGに対する外気冷房についても促進させる。客室SGの設定温度よりも屋外SOの気温のほうが低く、厨房SKおよび客室SGへの外気冷房が有効となるからである。このT3の時間帯では、制御部42は、例えば、図7のCASE3において示すように、厨房排気装置11からの排気量を100%とした場合に、客室給気装置5の給気量が50%、厨房給気装置15の給気量が40%の比率となるように調整する。これにより、厨房SKが負圧となるように維持して調理雰囲気の客室SGへの漏れ出しを抑え、屋外SOに向けて有効に排出することができる。また、調理装置20から生ずる熱によって暑くなりがちな厨房SKだけでなく、客室SGに対しても積極的に外気冷房を行う。これにより、客室SGに設けられている空気調和装置3の空調負荷の低減を図ることも可能となり、省エネにより客室SGおよび厨房SKの両空間を快適な状態にすることができる。
<換気システムにおける換気制御動作の流れ>
第1実施形態における換気システムの換気制御動作の流れについて、図8に示すフローチャートを用いて説明する。
ステップS1では、初期設定として、様々な値をコントローラ40に設定する。まず、各調理器21ごとにおける運転時に要する排気量について、コンロ21aとフライヤー21bとグリル21cとについてそれぞれ入力し、稼働中の調理器21の組み合わせに応じた厨房排気装置11の必要排気量V(以下の表1参照)を定めて設定する。
なお、ここでは、各調理器21の運転時に要する排気量ごとに、その温度状況に応じて補正するための調理器別補正係数21aV,21bV,21cVについての設定も行う。この調理器別補正係数21aV,21bV,21cVは、各調理器21の運転時に要する排気量に対して、その稼働中の調理器21の温度状況が反映されるように設定する。例えば、フライヤー21bが長時間稼働されてその温度が上昇した場合に、フライヤー21bの運転時に要する排気量の設定値に対して、フライヤー補正係数21bVとフライヤー温度センサ31bで検知される温度等とにより求まるフライヤー補正分を加減して、厨房排気装置11の必要排気量Vに反映させる制御が行われる。ここでの各調理器21ごとの運転時に要する排気量や、調理器別補正係数21aV,21bV,21cVについては、各調理器21における調理の性質や稼働に要する火力等に応じて定められる。例えば、フライヤー21bでは油煙が発生することが考慮された値が定められ、グリル21cでは火力が大きいことが考慮された値が設定される。
具体的には、以下の表1に示すように設定される。
なお、表1において示すように、コンロ21a,フライヤー21b,グリル21cのすべてが稼働していない状態であっても、必要排気量V=V0の値を確保するように設定する。これは、建築基準法に定める必要最低限の換気量を確実に確保するために設定される。なお、表1において、例えば、調理器21のうち、コンロ21aとグリル21cとが稼働中の場合の必要排気量Vを必要排気量V=V5と設定されている場合に、さらにコンロ補正分とグリル補正分が反映され、厨房排気装置11の必要排気量Vが制御される。
なお、以下の表2において示すように、厨房温度センサ32の検知する温度に応じた客室給気装置5と厨房給気装置15との適切な給気量の配分の設定を行う。これにより、厨房SKの快適性維持に必要な換気制御を行うだけでなく、客室SGや厨房SKに対する外気冷房制御によって省エネ運転が可能となる。
表2では、必要排気量Vを1.0とした場合の客室給気装置5の給気量と厨房給気装置15の給気量との給気配分α1,α2について示している。ここでは、上述した換気制御の図6,図7に対応したものを例に挙げて示している。客室給気装置5の給気配分α1と厨房給気装置15の給気配分α2とは、屋外温湿度センサ36により得られる屋外SOの温度・湿度と、厨房温度センサ32により得られる厨房SKの温度と、客室温湿度センサ35により得られる客室SGの温度・湿度との関係および所定の温湿度条件に基づいて設定する。さらに、ここでの給気配分α1,α2は、厨房SKが客室SGに対して負圧にならない範囲で、かつ上述の厨房SKや客室SGに対する外気冷房が有効となるように設定する。また、温度の比較において、ハンチングをさけるために、ここでは所定のヒステリシスを設けておく。
なお、上述の表2におけるα1,α2を基準としつつ、屋外SOの空気と外気冷房の対象空間の空気とのエンタルピー(乾燥空気の有する顕熱と水蒸気の有する顕熱および潜熱との合計、すなわち湿り空気の保有する熱量の総和)の差を配分比率に反映させるための配分補正係数C(C1,C2,C3)を設定する。これにより、例えば、冷房時にはエンタルピーがより低い空間における空気を積極的に取り込むように配分補正係数Cによって配分比率を補正して、より効果的な外気冷房、環境改善および空調負荷の低減化を図ることが可能になっている。また、この補正において温度および湿度が考慮されていることで、例えば、気温および湿度が低い空気による外気冷房を促進させる等、体感温度についての快適性の向上を図ることも可能になっている。
例えば、上述のCASE2のように、客室SGの外気冷房は抑えて厨房SKの外気冷房のみが有効となる環境条件下において、厨房SKの温度が非常に高くなっている状況等においては、厨房SKの温度を下げるために厨房排気装置11の必要排気量Vが高い値に設定されてしまい、これに伴い客室給気装置5の給気量もその比率を維持するために高い値に設定されてしまうことになるため、客室SGに対して高温多湿の不要な外気を必要以上に取り込んでしまう場合がある。これに対して、α1,α2の給気配分比率を客室SGの空気と屋外SOの空気とのエンタルピー差および厨房SKの空気と屋外SOの空気とのエンタルピー差をそれぞれ考慮した配分補正係数C2を適切に設定して補正することで、客室SGへの給気量は必要最低限の量に抑えて客室SGの空調負荷を低減させつつ、厨房SKの環境改善を迅速化させる制御を行うことができる。
また、例えば、上述のCASE3のように、客室SGの外気冷房も厨房SKの外気冷房も両方とも有効となる環境条件下において、厨房SKの気温および湿度が非常に高い状況となっており(例えば37℃で80%)、客室SGの気温や湿度(例えば20℃で40%)と屋外SOの気温や湿度(例えば18℃で40%)との差が、厨房SKの気温や湿度と屋外SOの気温や湿度との差と比べてわずかであるような状況下においては、外気冷房は客室SGに対しても厨房SKに対してもいずれも有効な環境条件ではあるものの、客室SGの環境改善の必要性は少なく厨房SKの環境改善の必要性が高い場合等、厨房SKの環境をより迅速に改善させたい状況もありえる。このように、厨房SKの環境が屋外SOの温度や湿度と著しく異なる環境であるならば、配分補正係数C2と同様に、α1,α2の給気配分比率を客室SGの空気と屋外SOの空気とのエンタルピー差および厨房SKの空気と屋外SOの空気とのエンタルピー差をそれぞれ考慮した配分補正係数C3を適切に設定して補正することで、温度差の著しい厨房SKの外気冷房を優先させて、客室給気装置5の給気配分α1を減らしてその分を厨房給気装置15の給気配分α2の増加分に割り当てるように補正することができる。
また、例えば、上述のCASE1のように、客室SGの外気冷房も厨房SKの外気冷房も控えるべき環境条件の場合には、α1,α2の給気配分比率を客室SGと屋外SOとのエンタルピー差および厨房SKと屋外SOとのエンタルピー差をそれぞれ考慮した配分補正係数C1を適切に設定して補正することで、客室SKの環境を優先して必要最低限度の換気量に制御して、客室SGにおける空調負荷を低減させることも可能となる。
なお、厨房SKと屋外SOとの間に設けられている窓が曇ることを防止するために、所定の温湿度条件を満たさない場合には、CASE3の給気配分による制御を行うように、具体的な所定の温湿度条件と共に設定する。ここでの所定の温湿度条件とは、窓面の曇りを抑えることができる厨房SKと屋外SOとの両空間の温度と湿度との条件である。
上述の様々な初期設定が終了すると、ステップS2へ移行する。
ステップS2では、コントローラ40の取得部41が、センサ30の調理器温度センサ31と厨房温度センサ32と客室温湿度センサ35と屋外温湿度センサ36とから、それぞれの温度や湿度の情報を取得する。
ステップS3では、コントローラ40の制御部42が、厨房SKの温度と客室SGの温度と屋外SOの温度とを比較して、ステップS1で設定されているCASE1〜3のいずれかを選定して給気配分α1・α2を定めて、センサ30から得られる屋外SO,客室SG,厨房SKのそれぞれのエンタルピーを反映させた配分補正係数C1,C2,C3により補正を行い、(α1+α2)<1の条件を満たすようにして、客室給気装置5と厨房給気装置15との給気配分を定める。
ステップS4では、制御部42が、センサ30の調理器温度センサ31により得られる各調理器21の温度に基づいて、コンロ21a,フライヤー21b,グリル21cのいずれが稼働中であるか判断する。ここで、少なくとも1つの調理器21が稼働中であれば、ステップS5へ移行する。また、すべての調理器21が停止している場合には、ステップS6に移行する。
ステップS5では、制御部42が、センサ30の調理器温度センサ31により得られる各調理器21の温度に基づいて、コンロ21a,フライヤー21b,グリル21cのうち稼働中の調理器21を推定し、ステップS1で設定されている表1を参照することで必要排気量V(V1〜V6)を定めて、稼働中の調理器21に対応した調理器別補正係数21aV,21bV,21cVによる補正を行い、厨房排気装置11の排気量を定める。
ステップS6では、制御部42が、厨房排気装置11の排気量を必要最低限の換気量V0に定める。
ステップS7では、制御部42が、厨房排気用換気扇12の排気量がステップS5もしくはステップS6で定められた必要排気量Vとなるように、インバータ13の周波数を制御する。また、制御部42は、客室給気用換気扇6の給気量がV(1−α1)となり、厨房給気用換気扇16の給気量がV(1−α2)となるように、インバータ7,17の周波数をそれぞれ制御する。
ステップS7の動作が終了した後に、一定時間の間隔をおいて、以上のステップS2〜S7を繰り返す。
<特徴>
(1)
従来の換気システムでは、油煙や臭気等の調理雰囲気が発生する厨房について特に着眼した換気制御を行っているが、換気時における厨房周囲の部屋等の状況は考慮されていない。このため、厨房周辺の部屋等の状況によっては、厨房で発生した調理雰囲気が漏れ出してしまうおそれがある。特に、厨房の排気量を減らせる制御を行った場合には、調理雰囲気の屋外への排出が促進されにくくなることから給排気バランスが崩れやすく、厨房が客室に対して正圧となってしまうおそれがある。このため、厨房において発生した油煙や蒸気等の調理雰囲気が客室に対して大量に漏れ出してしまうことがある。
これに対して、上記実施形態における換気システムでは、調理器温度センサ31の検知する温度に応じて稼働中の調理器21を推定し厨房排気装置11の必要排気量Vを定めてこの必要排気量Vを把握して厨房SKと比較して客室SGが負圧の状態となるように、厨房排気装置11の排気量や客室給気装置5や厨房給気装置15の給気量を調整する換気制御を行うことができる。これにより、厨房SKから客室SGへと流れる気流が抑えられ、厨房SKにおいて発生する調理雰囲気が客室SGに対して漏れ出さないようにして客室SGの環境の悪化を抑えつつ、厨房SKの環境を向上させることができる。
(2)
従来の換気システムでは、調理器の温度の測定が状況変化に遅れてしまうことがあり、厨房の排気装置の換気制御に反映される頃には調理器から生じた調理雰囲気が拡散してしまって有効に排出することが困難となることがある。
これに対して、上記第1実施形態における換気システムでは、調理器温度センサ31は調理器21自体の温度を測定し、厨房温度センサ32は調理器21と客室SGとの間において調理器21の近傍の気温を測定する。このため、従来の場合と比べて、各測定対象である厨房の状況の変化をより迅速に検知することができ、厨房SKの状況変化を換気制御に対してより迅速に反映させることができる。このため、厨房SKにおいて発生した調理雰囲気が拡散してしまう前に、できるだけ素早く調理雰囲気を捕らえて屋外SOに排出することができる。
(3)
従来の換気システムでは、厨房が含まれている空間に対して強制給気を行っており、空間内で無秩序な気流が生じる等により、調理雰囲気が自由に誘導されてしまうため、不特定な場所から屋外に排出されることがある。また、不快な調理雰囲気よりも調和空気が優先して排出されてしまうことがあり、空調負荷が増大してしまうため、エネルギー効率の観点からも好ましくない。
これに対して、上記第1実施形態における換気システムでは、厨房SKから屋外SOへの強制的な排気を行いつつ客室SGに対する強制的な給気量を制御することにより、厨房含有空間SIにおいて生じうる無秩序な気流の発生を抑えて、客室SGから厨房SKへと向かう気流を生じやすくしている。このため、従来のような任意の場所からの調理雰囲気の排出を抑えて、厨房排気装置11によって排出される空気の調和空気の含有率を低減させて、不快な調理雰囲気を調和空気よりも優先的に排出できるようになり、空調負荷の低減化を図ることが可能になる。
なお、近隣住民に対する環境面での配慮から、有害成分や多量の臭気を含む調理雰囲気をそのままの状態で屋外SOに排出するのではなく、所定のフィルタを通過させたり清浄化処置を施す等により、ある程度清浄化された後に屋外SOに排出されるように調整している場合がある。このような場合でも、不快な調理雰囲気が不特定な場所から屋外SOに向けて漏れ出してしまうと、空気清浄効果が得られないままでの不快な調理雰囲気が排出されることになってしまう。これに対して、上記第1実施形態における換気システムでは、調理雰囲気が無秩序に屋外SOに対して漏れ出してしまうことを抑えて、客室SGから厨房SKへの気流に乗せて、適切に清浄化処置を施すことのできる場所を通過させて、屋外SOに対しては、ある程度清浄化された空気を排出することができるようになる。このような効果は、住宅が密集している地域に存在する厨房等では、特に有効である。また、地球環境の改善という観点からも、発生した調理雰囲気を劣悪な状態のままで屋外SOに排出させることは好ましくない。
(4)
また、上記第1実施形態における換気システムでは、客室SGや屋外SOについては、温度だけでなく湿度についても換気制御のパラメータとして用いられている(CASE3の換気制御)。これにより、厨房含有空間SIと屋外SOとの境界面(ガラス面)において曇りが生じることを有効に抑えることができ、屋外SOから客室SGが見えにくくなるような状況の発生を抑えて、営業面での支障を改善している。
(5)
従来の換気システムでは、客室よりも屋外の気温が快適な環境条件下において、屋外の空気を単純に客室に対して取り込む換気制御を行っており、適切な給排気バランスが崩れていることにより、厨房で発生した調理雰囲気が客室に対して漏れ出してしまうことある。
これに対して、上記第1実施形態における換気システムでは、給排気バランスを保つことで厨房SKにおいて発生する調理雰囲気が客室SG側に向けて漏れ出す程度を抑え、屋外SOの空気を客室SGに取り込んで外気冷房やフレッシュ感の向上を図ることができる。これにより、調理雰囲気の漏れ出しを抑えつつ客室SGの快適性を向上させる制御を省エネによって実現できるようになる。
なお、上述のような客室SGに対する外気冷房が有効となる温度条件下では、給気配分α1、α2の補正によって客室給気装置5の給気量を積極的に増加させる制御が行われ、より省エネ化させることもできる。一方、上述のCASE2において、客室給気装置5の給気量増加とともに厨房排気装置11の排気量も増加させる配分補正係数を反映させた制御を行う等によって、給排気バランスの崩れを抑えつつ客室SGの快適性をより迅速に向上させることができる。このような制御は、客室SGの気温と屋外SOの気温との差異が大きく、客室SGの気温による不快感が強い場合において特に有効的な制御となる。
(6)
また、客室SGに対する外気冷房は抑えつつ厨房SKに対する外気冷房を促進させたい(有効となる)環境条件下において、厨房SKの温度が非常に高くなっている場合等では、厨房排気装置11の必要排気量Vが高い値に設定されてしまうことにより客室給気装置5の給気量も高い値に設定され、厨房SKに対して、不快な状態の外気を換気に必要な量を超えて大量に取り込んでしまうことがある。
これに対して、上記第1実施形態における換気システムでは、上述のCASE2における制御のように、配分補正係数C2を適切に設定して補正することで、客室SGへの給気量は必要最低限の量に抑えて客室SGの空調負荷を低減させつつ、厨房SKの環境がより迅速に改善させるように換気制御することができる。
<第1実施形態の変形例>
(A)
上記第1実施形態における換気システムでは、調理器温度センサ31は、コンロ温度センサ31aと、フライヤー温度センサ31bと、グリル温度センサ31cとから構成されており、厨房SKに設置されたコンロ21a、フライヤー21b、グリル21cに対応して、それぞれの調理器21の温度を測定している。しかし、各調理器温度センサ31の温度の測定対象としては、このような各調理器自体の温度に限られるものではなく、各調理器21の近傍の気温や、各調理器において調理される調理対象自体の温度(フライヤー21bの油温度等)、厨房SKの温度状態に影響を与えるような温度を測定するための対象であればよい。また、調理器温度センサ31の測定対象を、調理装置20の近傍の気温とすることで、厨房SKの状況変化をより迅速に検知でき、迅速な換気制御を可能として調理雰囲気の拡散があまり進行していない段階で、調理雰囲気をできるだけ逃さず捕らえて、屋外SOに向けて効果的に排出することができる。
(B)
上記第1実施形態における換気システムは、厨房温度センサ32を各調理器21の温度を測定するための調理器温度センサ31と共通のセンサとした構成の換気システムであってもよい。また、厨房温度センサ32は、主に、外気冷房制御における温度比較において必要となり、厨房SKにおける環境を改善するために厨房SKにおける状態をコントローラ40に知らせるための構成として位置づけられるものである。したがって、厨房SKの状況をコントローラ40に対して迅速に反映させるセンサとしては、厨房SKの状況をより詳細に測定するために、測定対象を油煙とした油煙センサや、測定対象を湿度とした湿度センサや、測定対象を一酸化炭素や二酸化炭素等の有害気体とした有害気体センサ等のセンサを別途設けることで換気制御をより詳細に行うようにしてもよい。この他、臭気,有害気体量,浮遊粉塵量等を測定可能なセンサを別途設けてもよい。
これにより、例えば、厨房SKにおいて発生している油煙量が多い場合や、稼働している調理器21の台数が多い場合等、厨房SKにおける調理雰囲気の量が多いと想定される場合について、厨房排気装置11の排気量を増加させる制御を行うことができ、厨房SKの環境を迅速に改善させることが可能になる。また、厨房SKにおける調理雰囲気の量が少ない場合には、厨房排気装置11の排気量を減少させる制御を行うことが可能となる。このため、厨房SKの状況が変化する場合であっても、その状況の変化に応じた制御が可能となり、厨房SKの快適性の悪化を抑えることができる。なお、このように厨房SKの快適性の悪化を抑える目的で、厨房排気装置11の排気量の制御に伴い客室給気装置5の給気量も制御されるため、客室SGと厨房SKとの給排気バランスを維持して、厨房SKから客室SGへの調理雰囲気の漏れ出しを抑えつつ厨房SKの環境改善を図ることができる。さらに、調理雰囲気が少ない場合に厨房排気装置11の排気量を抑えた制御を行うことにより、過大な排気を抑えて、厨房排気装置11を省エネ運転させることができる。一方、空気調和装置3が設けられている客室SGでは、過大な換気を抑えた制御によって、空調負荷を軽減させることができる。
(C)
上記第1実施形態における換気システムでは、センサ30のうちの調理器温度センサ31a、31b、31cは、複数台設置されており、それぞれの場所の温度を検知している。これに対して、厨房SKの大きさが比較的小さい場合や、厨房SKに設置されている調理装置20台数が少なかったり熱源による火力等が小さい場合には、調理器温度センサ31は、1つから構成されており、厨房SKの一カ所に設置されているものであってもよい。
(D)
上記第1実施形態における調理装置20では、コンロ21a、フライヤー21b、フライヤー21bの3つから構成されている場合を例に挙げて説明した。しかし、ここでの調理装置20としては、これらに限られるものではなく、上述したものの他に、グリドル,オーブン,電子レンジ,ゆで麺器,蒸し器,湯煎器,電磁調理器,食洗器もしくは炊飯器等から構成され、その調理器の数についても2以上のより多い調理器によって構成されていてもよい。
(E)
上記第1実施形態における換気制御では、厨房SKおよび客室SGの設定温度に基づいて制御を行っている。これに対して、換気制御を行っている時点での厨房SKの気温や客室SGの気温に基づいて制御を行うようにしてもよい。
(F)
上記第1実施形態における換気システムでは、調理器21は、コンロ21a,フライヤー21b,グリル21cの3種類であり、稼働中の調理器21を推定することで厨房排気装置11の排気量の制御を行っている。これに対して、調理器21としては、1種類から構成されている換気システムであってもよく、この場合には、図9に示すように、その種類の調理器21について設定されている排気量と、稼働中の調理器21の推定台数とに基づいて、厨房排気装置11の排気量を制御するようにしてもよい。また、複数種類の調理器21が種類ごとに単数・複数設置されている場合であってもよく、この場合には、各調理器21の種類に応じて設定されている排気量と、それぞれの種類の稼働中の推定台数とに基づいて、総合的に厨房排気装置11の排気量を調整するようにしてもよい。
(G)
上記第1実施形態におけるコントローラ40の取得部41は、厨房排気装置11の換気量の判断に、インバータ13の周波数を参照している。これに対して、この他にも、例えば、厨房排気装置11の風量、消費電力もしくはこれらの変化量等の情報を参照してもよい。
(H)
上記第1実施形態における換気制御は、厨房SKや客室SGを外気冷房する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は、これに限られるものではなく、客室SGや、厨房SKに居る人間にとってより快適に感じられる気体が存在する空間から、厨房SKや客室SGへそのような快適に感じられる空気を取り込むようにしてもよい。例えば、空気のフレッシュ感を向上させるような制御や、外気による暖房を行ってもよい。
(I)
上記第1実施形態における換気制御では、調理器温度センサ31による各調理器21の温度の検知に基づいて各調理器21の稼働状況を判断している。これに対して、このような各調理器21の稼働状況の判断は、調理器21に加熱接点(スイッチ)等が設けられている場合に、その加熱接点等により、稼働状況を判断可能な構成を採用してもよい。
<第2実施形態>
上述した第1実施形態では、本発明の一実施形態として、厨房SKを有する厨房含有空間SIを換気するための換気システムについて説明した。
しかし、本発明はこれに限られるものではなく、図10において示すように、厨房含有空間SIの換気を行うものは、客室給気装置5と、厨房排気装置11と、厨房給気装置15と、センサ30と、コントローラ40とを有している換気装置50であってもよい。このような、1個の換気装置50としても、上記第1実施形態の換気システムと同様の効果を奏することができる。なお、上述した各変形例は、この換気装置50に対しても適用することができる。
<第3実施形態>
上述した第1実施形態では、本発明の一実施形態として、厨房SKを有する厨房含有空間SIを換気するための換気システムについて説明した。
しかし、本発明はこれに限られるものではなく、図11,図12において示すように、厨房含有空間SIの換気を行うものは、客室給気装置5と、複数の厨房排気装置11を有する厨房排気装置群10と、厨房給気装置15と、センサ30と、コントローラ40とから構成される換気システムであってもよい。このような、換気システムであっても、上記第1実施形態の換気システムと同様の効果を奏することができる。なお、上述した各変形例は、この換気システムに対しても適用することができる。
また、ここでは、厨房排気装置群10が、コンロ21aに対応して配置される厨房排気装置11aと、フライヤー21bに対応して配置される厨房排気装置11bと、グリル21cに対応して配置される厨房排気装置11cとを有している。そして、厨房排気装置11a、厨房排気装置11b、厨房排気装置11cは、上述した第1実施形態の厨房排気装置11と同様に、それぞれインバータ13a、13b、13cと、厨房排気用換気扇12a、12b、12cとを有している。また、センサ30の調理器温度センサ31は、各調理器21ごとに対応して設けられているフード60(61a、61b、61c)の温度を測定する。なお、換気制御については、上述の第1実施形態と同様である。
ここでは、各調理器21a、21b、21cに対してそれぞれ厨房排気装置11a、11b、11cが設けられている。このため、コントローラ40は、それぞれ厨房排気装置11a、11b、11cについて、それぞれの換気量を制御することができ、各調理器21に対応して設けられているフード60の温度に応じた換気制御により、厨房SKの環境をより詳細に調整することができるようになる。また、例えばコンロ21aが停止中の場合には厨房排気装置11aも停止制御する等、厨房排気装置11a、11b、11cごとに運転・停止制御や換気量調整制御等を行うことが可能になり、調理器21の一部が稼働中で部分的に換気が必要となる場合であっても、厨房排気装置群10の全体を稼働させる必要がなく、厨房排気装置11a、11b、11cを必要に応じて稼働させることができ、不必要な換気運転を抑えた省エネ換気制御を行うことが可能になる。すなわち、フライヤー21bのみが稼働している場合には、厨房排気装置11bのみを運転すれば足りる場合もあり、厨房排気装置11a、11b、11cのそれぞれについて対応する調理器21の稼働状況に応じた排気量としてそれぞれの排気量を違えることも可能であり、省エネで高効率な排気を実現することができる。また、調理器温度センサ31の測定対象のフード61a、61b、61cの温度として、調理器21の近傍の位置を対象とすることで、厨房の状況変化を換気制御に対してより迅速に反映させることができ、調理雰囲気の拡散があまり進行していない段階で、調理雰囲気をできるだけ逃さず捕らえて、屋外SOに向けて効果的に排出させることができる。
なお、上述の第1〜3実施形態による換気制御は、空間内の温度や湿度等が不均一な状態となりがちな換気対象であれば適応することができ、上記実施形態と同様な考え方により給排気の制御を行うことで、上述と同様な環境の改善を図ることが可能になる。