しかしながら、垂直配向モードの液晶表示装置では、液晶分子を配向膜に対し垂直方向に配向させているために、液晶分子が配向膜の表面から受ける方位角方向の配向規制力が小さく、電圧を印加した場合に、各液晶分子を所定の方向に傾斜させる配向規制力を保ちにくいという問題がある。このため、垂直配向モードの液晶層に電圧を印加して液晶分子を水平状態とすることによって白色表示をする場合には、次のような問題が生じる。
図17は、垂直配向モードの液晶表示装置の1絵素を拡大して示す平面図、図18は、
図17のX−X’線における断面図である。図18に示すように、この液晶表示装置の液晶パネルは、一対の相互に対向するガラス基板310および410の間に、垂直方向に配向された液晶分子351を有する液晶層350が封入されており、一方のガラス基板310上には、絵素電極320がマトリクス状に形成されている。図17に示すように、各絵素電極320の周囲には、相互に平行となった各一対のゲートバスライン100とソースライン110とが相互に直交するように形成されている。ゲートバスライン100とソースバスライン110とは、その交差部において、ソースライン110が上側、ゲートバスライン100が下側になるように交差しており、交差部においてゲートバスライン100とソースライン110とが電気的に絶縁されている。絵素電極320の周囲において、ゲートバスライン100とソースバスライン110との交差部の一カ所には、ゲート電極をゲートバスライン100に接続されたTFT(薄膜トランジスタ)部130が形成されている。
絵素電極320が設けられたガラス基板310には、液晶分子351を垂直方向に配向させる配向膜330が形成されている。他方のガラス基板410上には、対向電極420がほぼ全面にわたって設けられており、この対向電極420を覆うように液晶分子351を垂直方向に配向させる配向膜430が形成されている。
このような、垂直配向モードの液晶表示装置では、液晶層350に電圧が印加されて駆動状態になると、絵素電極320と各ソースバスライン110との間に電界が発生し、各ソースバスライン110近傍の垂直方向に配向された液晶分子351が電界の強さに応じて、図18に矢印(A)および(B)で示すように、対向電極420側の液晶分子351の端部が絵素電極320の中心側に位置するように傾く。図17のY−Y’線方向に沿っても、同様に、垂直配向された液晶分子351は、対向電極420側の端部が絵素電極320の中心側に位置するように傾く。垂直方向に配向された液晶分子351は、1本のソースバスライン110に対して、それぞれ反対方向に傾き、また、1本のゲートバスライン100に対しても反対方向に傾く傾向がある。この結果、垂直配向された液晶分子351に対して特別な配向規制を行わない場合には、液晶分子351が絵素電極320と各ソースバスライン110および各ゲートバスライン100との間に生じる電界の影響を受けて傾き、垂直配向された液晶分子351は、各絵素電極320の中心に向かうように、4つの方向にそれぞれ傾斜して配向される。
各絵素電極320の中央部の液晶分子351は、特別な配向規制が行われていないために、どのような配向方向を取ることも可能である。そのため、液晶分子351に対する4つの傾斜方向の境界の位置は、電界および段差等の様々な影響を受けることにより、各絵素においてばらつきが生じる。この結果、液晶パネルを斜めから見る場合には、この4つの傾斜方向の境界の位置がばらつくことによって、それぞれの液晶分子351の傾斜方向が異なる領域の面積が等しくならず、視覚特性のばらつきである著しい画像表示のザラツキとして感じられる。垂直配向された液晶分子351の傾斜状態のばらつきを抑制するためには、各配向膜330および430の表面の分子の配向方向を1方向に揃えればよい。このために、例えば、水平配向された液晶分子に特に有効なラビング処理が、垂直配向された液晶分子351にも適用される。すなわち、絹布等を用いて各配向膜330および430の表面を所定の方向に擦るラビング処理により液晶分子351に垂直配向に対して若干のティルト角を形成して配向させる。絵素電極320とゲートバスライン100およびソースバスライン110との間に生じる電界の影響を上回るように、液晶分子351が配向膜330および430の表面から受ける配向規制力とするには、垂直配向に対するティルト角を約3度以上にすれば良い。
ところが、液晶分子351が垂直配向された液晶層350の配向膜330および430は、ラビング処理を行なっても、垂直配向された液晶分子351に対する配向規制力が弱いために、垂直配向される液晶分子351に対して安定したティルト角が得られにくく、ラビング処理条件のわずかな相違により、液晶分子のティルト角にばらつきが発生する。ティルト角が3度以上であれば、液晶分子351の垂直方向に対する配向方向を、一方向に規制できるが、ティルト角のばらつきにより液晶分子351には筋状の配向不良が観察される。このように、垂直配向される液晶分子351に配向不良が発生しないラビング処理条件を設定することは容易でない。
また、画像表示における視角特性を良くするためには、垂直方向に配向される液晶分子351を、1絵素内において、垂直方向に対してそれぞれ異なる方向に傾斜する複数の領
域を作ることが有効であるが、ラビング処理では2方向以上のの異なる配向方向の領域を作ることは容易でない。
液晶分子に対して配向膜による配向規制力をもたせるラビング処理以外の方法としては、対向電極に開口部を形成して電界を変化させる方法(特開平6−301036号公報お
よび特願平6−21152号公報)、および、ガラス基板に凸形状部を形成する方法(I
DW’97p159A Vertically Aligned LCD Providing Super−High Image Quality)等がある。これらの方法
では、開口部における斜め電界の発生および凹凸形状部における液晶分子の傾きによって、液晶分子を垂直方向に対して所定の傾斜方向となるように制御するために、液晶分子にティルト角を設ける必要がなく、液晶分子に筋状の配向不良が発生するおそれがない。さらに、各絵素中に、液晶分子が垂直方向に対して異なる方向に傾斜する複数の領域が得られるように、容易に2分割、4分割等に分割することができる。この結果、開口部または凹凸形状部が液晶分子の垂直方向に対する傾斜方向の異なる領域の境界部となるために、液晶分子が異なる方向に傾斜する領域の境界位置がばらつくことによる画像表示のザラツキが生じることもない。しかし、いずれの方法でも、液晶分子の傾斜方向を異ならせるために開口部、凹凸形状部等の配列方向規制手段を境界部分に設ける必要があり、絵素電極、対向電極の両方に対して配列方向規制手段の形成が必要となり、製造に際して大幅にプロセスの増加を伴うという問題がある。
さらに、配向膜に対する凸形状部、絵素電極に対するスリット等の配列方向規制手段を設け、電圧を印加した時に、液晶分子が複数の方向に傾斜されるように規制して画像表示の視角特性の改善を図る場合には、配列方向規制手段上においては、傾斜方向が一定せず、傾斜方向が異なる領域の境界が定まらないために、各傾斜方向の領域の面積比を一定に保つことが容易ではない。このため、液晶層への印加電圧のON/OFFの際に、各配向領域の境界は、印加電圧による電界の影響により揺れ動くスイッチングドメインとなり、映像の残像現象が生じたり、画像表示の著しいザラツキとして視認される。
これに対して、垂直方向に配向された液晶分子を異なる方向に傾斜させる領域の境界を一定に保つ方法が、特開2000−155317号公報および特開平10−96929号公報に開示されている。
特開2000−155317号公報には、液晶分子の配列方向規制手段として、絵素電極に設けられるスリットと配向膜に設けられる凸形状部とを対向する基板のそれぞれに交互に配置する構成、および、絵素電極に設けられるスリットと配向膜に設けられる凸形状部とを対向する基板のそれぞれに、相互に対向させて形成する構成が開示されている。しかし、この公報に開示された構成では、絵素電極のスリットおよび配向膜の凸形状部の加工精度に限界があり、それらの幅が大きくなるおそれがある。しかも、対向する基板にも同様のスリットおよび凸形状部を設ける場合には、対向するスリットおよび凸形状部同士を高精度で位置合せする必要があり、製造プロセスの増加を伴う等、現実的に実施が困難となるおそれがある。
また、特開平10−96929号公報には、電圧印加時に、液晶分子が垂直方向に対して異なる方向に傾斜する領域の境界部分の液晶分子を、電圧印加時においても、垂直方向に配向させる構成が開示されている。しかし、この構成でも、電圧印加時に傾斜方向が異なる表示領域の液晶分子に、ある程度のプレティルト角を持たせる必要があり、画像表示の均一性である各液晶分子のプレティルト角の均一化が容易でないという問題がある。
本発明は、このような課題を解決するものであり、その目的は、製造に際して大幅にプロセスの増加を伴うことなく、液晶分子の配向不良を防止することができ、その結果、画像表示のザラツキが改善されて高品位画像表示の可能な液晶表示装置を提供することにある。
本発明の液晶表示装置は、一対の基板間に液晶層が設けられるとともに、それぞれの基板に該液晶層の液晶分子を垂直方向に配向する第1配向膜が設けられており、複数の絵素に対してそれぞれ電圧が印加されることによって各絵素が駆動される液晶表示装置であって、少なくともいずれか一方の該第1配向膜には、該第1配向膜による液晶分子の配向方向とは異なる方向に液晶分子を配向させる第1の配向領域が、各絵素毎に、それぞれ設けられていることを特徴とする。
本発明の液晶表示装置は、一対の基板間に液晶層が設けられるとともに、それぞれの基板に該液晶層の液晶分子を垂直方向に配向する第1配向膜が設けられており、複数の絵素に対してそれぞれ電圧が印加されることによって各絵素が駆動される液晶表示装置であって、少なくともいずれか一方の該第1配向膜には、各絵素毎に該第1配向膜による液晶分
子の垂直方向の配向に対して、垂直方向を基準にして所定の傾斜角を有するように液晶分子を配向させる第2配向膜から成る第1の配向領域が、各絵素毎に、それぞれ設けられていることを特徴とする。
前記液晶層に電圧が印加された時に、液晶分子を垂直方向に対して相反する方向に傾斜させる配列方向規制手段が設けられている。
前記配列方向規制手段は、各絵素に対して電圧を印加する絵素電極を複数領域に分割する線に沿って設けられている凸形状部である。
前記配列方向規制手段は、各絵素に対して電圧を印加する絵素電極を複数領域に分割するスリットである。
前記配列方向規制手段は、前記凸形状部および前記スリットを有する。
前記第1の配向領域は、前記凸形状部または前記スリットにて分割された領域の中央部分に沿って設けられている。
前記第1の配向領域は、前記凸形状部または前記スリットにて分割された領域の境界に沿って設けられている。
前記第1の配向領域は、前記凸形状部または前記スリットにて分割された領域の中央部分および境界に沿って設けられている。
前記第1の配向領域を形成する前記第2配向膜が設けられた基板に対向する基板に設けられた前記第1配向膜に、該第1の配向領域を形成する該第2配向膜に対向して、該第1配向膜による液晶分子の垂直方向の配向に対して、垂直方向を基準にして所定の傾斜角を有するように液晶分子を配向させる第3配向膜が設けられている。
前記第1の配向領域を形成する前記第2配向膜が設けられた基板に対向する基板に設けられた前記凸形状部または前記スリットの上部に、該第1の配向領域を形成する該第2配向膜に対向して、該第1配向膜による液晶分子の垂直方向の配向に対して、垂直方向を基準にして所定の傾斜角を有するように液晶分子を配向させる第4配向膜が設けられている。
前記第1の配向領域の液晶分子の配向方向が、前記一対の基板を挟むように配置された一対の偏光板の内、一方の偏光板の偏光軸方向と一致する。
前記第1の配向領域は、前記第1配向膜と同一の高分子膜である。
前記第1の配向領域の液晶分子の配列方向は、ラビング処理により設定される。
前記第1配向膜の第1の配向領域以外の領域は、ラビング処理後も液晶分子を垂直配向させる。
前記第1配向膜の前記第1の配向領域は、該第1配向膜に光を照射することにより形成される。
前記光が紫外線、偏光紫外線、可視光、赤外光、レーザー光である。
前記第1配向膜の前記第1の配向領域は、該第1配向膜に化学処理を施すことにより形成される。
本発明の液晶表示装置は、一対のガラス基板に液晶分子を垂直方向に配向させる第1配向膜が形成されており、そのいずれか一方のガラス基板に形成されている第1配向膜には、その第1配向膜による液晶分子の配向方向とは異なる方向に液晶分子を配向させる第1の配向領域が、各絵素毎に、設けられることによって、大幅にプロセスの増加を伴うことなく、液晶分子の配向不良を防止して、画像表示のザラツキの改善が可能となる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態である液晶表示装置の1絵素を拡大して示す平面図、図2は、図1のA−A’線における断面図である。この液晶表示装置の液晶パネルは、図2に示すように、一対の相互に対向するガラス基板31および41の間に、垂直方向に配向された液晶分子35aを有する液晶層35が封入されており、一方のガラス基板31上には、絵素電極32がマトリクス状に形成されている。
図1に示すように、各絵素電極32の周囲には、相互に平行となった各一対のゲートバスライン10とソースバスライン11とが相互に垂直になるように形成されている。ゲートバスライン10とソースバスライン11とは、その交差部において、ソースバスライン11が上側、ゲートバスライン10が下側となるように交差しており、交差部においてゲートバスライン10とソースバスライン11とが電気的に絶縁されている。絵素電極32を取り囲む一対のゲートバスライン10の一方と一対のソースバスライン11の一方との交差部には、ゲート電極をゲートバスライン10に接続されたTFT(薄膜トランジスタ)部13が形成されている。
図2に示すように、絵素電極32が設けられたガラス基板31には、液晶層35の液晶分子35aを垂直方向に配向させる配向膜33が形成されている。他方のガラス基板41における液晶層35に対向する表面には、カラーフィルター(図示せず)を介して、対向電極42がほぼ全面にわたって設けられており、この対向電極42を覆うように液晶分子35aを垂直方向に配向させる配向膜43が形成されている。
各絵素電極32には、配列方向規制手段としての一対の第1スリット34aおよび第2スリット34bが設けられている。一方の第1スリット34aは、絵素電極32の長手方向に沿った一方の側縁部の中央から、その側縁部に対してほぼ45°の傾斜角で相反する方向に延出した一対の直線部分を有し、各直線部分同士が直角に屈曲されるように接続さ
れている。他方の第2スリット34bは、第1スリット34aの各直線部分にそれぞれ平行な一対の直線部分を有し、各直線部分同士が直角に屈曲されるように接続されている。この第2スリット34bは、第1スリット34aの屈曲部が位置する側縁部とは反対側の側縁部の近傍に設けられており、屈曲部が絵素電極32の長手方向を二等分する直線上に位置している。
ガラス基板41に設けられた対向電極42に液晶分子35aを垂直方向に配向させるために設けられた配向膜43は、液晶層35の液晶分子35aを所定の水平方向に配向させる第1の配向領域46によって分割されている。この第1の配向領域46は、絵素電極32において、第1スリット34aおよび第2スリット34bの間の領域を二等分する各スリット34aおよび34bに平行な線分に沿って、および、第1スリット34aおよび第2スリット34bの各直線部分にて分割された絵素電極32の三角形状の各コーナー部分を分割するように、第1スリット34aおよび第2スリット34bの各直線部分と平行に設けられている。直線状に形成された第1の配向領域46は、その直線方向に直行する幅方向に沿って、液晶分子35aを水平に配向させる。
このような構成の液晶表示装置では、電圧が印加されない状態において、各配向膜33および43によって、液晶層35の液晶分子35aは、垂直方向に配向されるが、第1の配向領域46の近傍では、液晶分子35aが第1の配向領域46の幅方向に沿った水平方向に配向されることにより、液晶分子35aは、垂直方向に対して第1の配向領域46に向かって傾斜するように配向規制力が作用する。
このような状態で、液晶表示装置が駆動状態になって、各絵素電極32と対向電極42との間に電圧が印加されると、各電極に設けられた第1スリット34aおよび第2スリット34b部分では、各スリット34aおよび34bのエッジ部分において、各スリット34aおよび34bから離れる方向に傾斜した電界が発生し、その傾斜した電界に垂直になるように液晶分子35aが矢印(D)および(C)で示すように傾斜する。
この場合、第1の配向領域46は、その幅方向に沿った水平方向に液晶分子35aを配向させる配向規制力が作用するために、傾斜した電界の方向により、液晶分子35aは、第1の配向領域46を境界として、相反する方向に傾斜する。したがって、第1の配向領域46を境界線として第1の配向領域46の両側の液晶層35領域では、液晶分子35aが相反する方向に傾斜する。
しかも、各絵素内では、第1の配向領域46と第1スリット34aおよび第2スリット34bが平面的に交互に配置されているために、第1スリット34aおよび第2スリット34bの両側では、それぞれ図2に矢印(C)または(D)で示すように、垂直配向され
た液晶分子35aが、電圧印加時に、第1の配向領域46に向かって異なる方向に傾斜する。
このように、第1の配向領域46と第1スリット34aおよび第2スリット34bとを平面的に交互に配置することにより、第1スリット34aおよび第2スリット34bによって傾斜方向が規定された液晶分子35aは、さらに、第1の配向領域46によって、傾斜方向の境界が形成される。これにより、画像表示のザラツキを防止することができる。液晶分子35aを所定方向に傾斜させる配向規制力は、第1の配向領域46と、配列方向規制手段である第1スリット34aおよび第2スリット34bとの間隔を小さくするほど、増加させることができる。
図3は、本発明の第2の実施形態である液晶表示装置の1絵素の断面図である。この断面は、図1のA−A’線に対応しており、液晶分子35aを垂直配向させるために絵素電
極32を覆って設けられた配向膜33には、対向電極42を覆う配向膜43に設けられた第1の配向領域46と対向する領域に、液晶分子35aを水平方向に沿って配向させる第2の配向領域49が設けられている。その他の構成は、図1および図2に示す液晶表示装置と同様になっている。
このように、絵素電極32を覆う配向膜33にも液晶分子35aを水平方向に配向させる第2の配向領域49を、さらに、形成することにより、第2の配向領域49の両側の液晶層35領域では、異なる液晶分子35aが第2の配向領域49を境界として、相反する方向に安定して傾斜する。
図4は、本発明の第3の実施形態である液晶表示装置の1絵素の断面図である。この断面は、図1のA−A’線に対応しており、液晶分子35aを垂直配向させるために絵素電極32を覆って設けられた配向膜33には、図3に示す液晶分子35aを水平方向に配向させる第2の配向領域49が設けられているが、対向電極42を覆う配向膜43には、第1の配向領域46は設けられていない。その他の構成は、図1および図3に示す液晶表示装置と同様になっている。
このように、対向電極42を覆う配向膜43には、第1の配向領域46を設けずに、絵素電極32を覆う配向膜33だけに液晶分子35aを水平方向に配向させる第2の配向領域49を形成することによっても、第2の配向領域49の両側の液晶層35領域では、異なる液晶分子35aが第2の配向領域49を境界として、相反する方向に安定して傾斜する。
図5は、本発明の第4の実施形態である液晶表示装置の1絵素の断面図である。この断面は、図1のA−A’線に対応しており、図1および図2に示す第1スリット34aおよび第2スリット34bが設けられた部分に対応して、配向膜33上に配列方向規制手段として、それぞれが絶縁物として構成された第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bが設けられている。その他の構成は、図1および図2に示す液晶表示装置と同様になっている。
このように、第1スリット34aおよび第2スリット34bに代えて配向膜33上に第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bを設けると、第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bのそれぞれの凸部形状によって形成される斜面に対して、液晶分子35が垂直に配列するので、第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bのそれぞれの凸部形状の両側において、相反する方向に液晶分子35aを傾斜させることができる。この結果、図2に示す場合と同様に、第1の配向領域46の両側の液晶層35領域では、異なる液晶分子35aが第1の配向領域46を境界として、相反する方向に安定して傾斜する。
尚、第1スリット34aおよび第2スリット34b、または、第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bと、第1の配向領域46および第2の配向領域49との配置、形状は、特に限定されるものでない。また、配列方向規制手段である第1スリット34aおよび第2スリット34b、または、第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bと第1の配向領域46および第2の配向領域49とは、ガラス基板31および41に沿った方向の間隔が30μmとされているが、10〜150μmの範囲内であれば良好な配向規制力が得られる。
図6は、本発明の第5の実施形態である液晶表示装置の1絵素を拡大して示す平面図、図7は、図6のA−A’線における断面図である。
図6に示すように、相互に平行となった各一対のゲートバスライン10の間の中央部に
は、補助容量ライン15がゲートバスライン10と平行に設けられており、各ソースバスライン11とは直交している。補助容量ライン15とソースバスライン11とは、その交差部において、ソースバスライン11が上側、補助容量ライン15が下側になるように交差しており、交差部において、ソースバスライン11と補助容量ライン15とが電気的に絶縁されている。また、補助容量ライン15は、各絵素電極32とも、相互に絶縁されている。
各絵素電極32上には、配列方向規制手段としての一対の第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bが設けられている。一方の第1凸形状部36aは、一対のゲートバスライン10の間の中央に設けられている補助容量ライン15上の絵素電極32の長手方向に沿った一方の側縁部の中央から、その側縁部に対して所定の傾斜角で相反する方向に延出した一対の直線部分によって、鈍角に屈曲された状態になっている。他方の第2凸形状部36bは、第1凸形状部36aの各直線部分にそれぞれ平行な一対の直線部分によって、鈍角に屈曲された状態になっている。この第2凸形状部36bは、第1凸形状部36aの屈曲部が位置する側縁部とは反対側の側縁部の近傍に設けられており、屈曲部が絵素電極32の長手方向を二等分する補助容量ライン15上に位置している。その他の構成は、図1に示す液晶表示装置と同様になっている。
図7に示すように、絵素電極が設けられたガラス基板31には、液晶層35の液晶分子35aを垂直方向に配向させる配向膜33が形成されている。他方のガラス基板41における液晶層35に対向する表面には、カラーフィルター(図示せず)を介して、対向電極42がほぼ全面にわたって設けられており、この対向電極42を覆うように液晶分子35aを垂直方向に配向させる配向膜43が形成されている。また、ガラス基板31および41には、液晶層35とは反対側の表面に、それぞれ偏光板47および48が設けられている。
各絵素電極32上には、配列方向規制手段としての一対の第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bが設けられている。一方の第1凸形状部36aは、一対のゲートバスライン10の間の中央に設けられている補助容量ライン15上の絵素電極32の長手方向に沿った一方の側縁部の中央から、その側縁部に対して所定の傾斜角で相反する方向に延出した一対の直線部分を有し、各直線部分同士が鈍角に屈曲されるように接続されている。他方の第2凸形状部36bは、第1凸形状部36aの各直線部分にそれぞれ平行な一対の直線部分を有し、各直線部分同士が鈍角に屈曲されるように接続されている。この第2凸形状部36bは、第1凸形状部36aの屈曲部が位置する側縁部とは反対側の側縁部の近傍に設けられており、屈曲部が絵素電極32の長手方向を二等分する補助容量ライン15上に位置している。
ガラス基板41に設けられた対向電極42に液晶分子35aを垂直方向に配向させるために設けられた配向膜43は、液晶層の液晶分子35aを所定のティルト角に配向させる配向膜46bから成る第1の配向領域46によって分割されている。この第1の配向領域46は、絵素電極32において、第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bの間の領域を二等分する各凸形状部36aおよび36bに平行な線分に沿って、および、第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bの各直線部分にて分割された絵素電極32の三角形状の各コーナー部分を分割するように、第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bの各直線部分と平行に設けられている。
このような構成の液晶表示装置では、電圧が印加されない状態において、各配向膜33および43によって、液晶層35の液晶分子35aは、垂直方向に配向されるが、第1の配向領域46の近傍では、液晶分子35aが第1の配向領域46の所定のティルト角に配向させることにより、液晶分子35aは、垂直方向に対して第1の配向領域46に向かっ
て傾斜するように配向規制力が作用する。配列方向規制手段としての第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bの近傍では、第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bによって形成される斜面に対して、液晶分子35aが垂直に配列するので、第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bのそれぞれの凸部形状の両側において、相反する方向に液晶分子35aを傾斜させることができる。また、液晶分子35aを所定のティルト角に配向させる配向膜46bから成る第1の配向領域46は、第1の配向領域46の両側の液晶層35に対して境界部として作用する。この結果、第1の配向領域46の両側の液晶層35では、液晶分子35aが相反する方向に傾斜する。
したがって、このような状態で、液晶表示装置が駆動状態になり、液晶層35に電圧が印加されると、第1の配向領域46の両側において液晶分子35aの傾斜方向は相反するが、第1の配向領域46の両側の液晶分子35aは、第1の配向領域46を境界部として、相反する方向に安定して傾斜する。
しかも、各絵素内では、第1の配向領域46と第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bが平面的に交互に配置されているために、第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bの両側では、それぞれ図7に示すように、垂直配向された液晶分子35aが電圧印加時に、第1の配向領域46に向かって異なる方向に傾斜する。
このように、第1の配向領域46と第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bとを平面的に交互に配置することにより、第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bによって傾斜方向が規定された液晶分子35aは、さらに、第1の配向領域46によって、傾斜方向の境界が形成される。これにより、画像表示のザラツキを防止することができる。液晶分子35aを所定方向に傾斜させる配向規制力は、第1の配向領域46と、配列方向規制手段としての第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bとの間隔を小さくするほど、増加させることができる。
図8は、本発明の液晶表示装置に用いる偏光板47および48の偏光軸方向47aおよび48aと第1の配向領域46のラビング方向46aとの関係を示す図である。図8に示すように、第1の配向領域46のラビング方向46aに対応する液晶分子35a(図示せず)の配向方向は、ガラス基板31および41を挟むようにして、ガラス基板31および41に配置される一対のクロスニコルの偏光板47および48に対して、一方の偏光板47または48の偏光軸方向47aまたは48aと一致するように設定される。図8では、液晶分子35aは、4方向にそれぞれ配向され、一対の偏光板47または48の偏光軸は、全ての4つの配向方向に対し45°の角度になるように配置される。第1の配向領域46のラビング方向46aは、一方の偏光板47または48の偏光軸方向47aまたは48aと一致するように設けられるので、4つの配向方向に対し45°の角度の方向に設定される。
図8では、第1の配向領域46のラビング方向46aと偏光板48の偏光軸方向48aとが一致する。これらの第1の配向領域46のラビング方向46aと偏光板48の偏光軸方向48aとを一致させることにより、液晶層35に電圧が印加されない場合、偏光板47の偏光軸方向47aと、液晶分子35aの1つを楕円体と見なした場合の長軸方向とが直交する位置関係にあることにより、第1の配向領域46は、光を透過させずに、黒色状態を保持する。また、液晶層35に電圧が印加される場合にも、液晶分子35aの配向方向は、偏光板の透過軸と直交する関係にあり、第1の配向領域46は、黒色状態を保持する。この結果、液晶層35への電圧印加の有無に関わらず、第1の配向領域46は、常に良好な黒色状態を保持することになる。
このように、第1の配向領域46のラビング方向46aと偏光板47および48の偏光
軸方向47aおよび48aとが前述したように配置されることによって、第1の配向領域46では、常に良好な黒色状態を保持することが可能となり、画像の高コントラストが得られるとともに、画像表示のザラツキ等の発生を抑制し高品位な画像表示の可能な液晶表示装置が得られる。
図9は、本発明の第6の実施形態である液晶表示装置の1絵素の断面図である。この断面は、図6のA−A’線に対応しており、液晶分子35aを垂直配向させるために絵素電極32を覆って設けられた配向膜33には、対向電極42を覆う配向膜43に設けられた配向膜46bから成る第1の配向領域46と対向する領域に、液晶分子35aを所定のティルト角に配向させる第1の配向領域46となる配向膜46cが設けられている。その他の構成は、図6および図7に示す液晶表示装置と同様になっている。
このように、絵素電極32を覆う配向膜33にも液晶分子35aを所定のティルト角に配向させる第1の配向領域46となる配向膜46cを形成することにより、第1の配向領域46の両側の液晶層35領域では、異なる液晶分子35aが第1の配向領域46を境界として、相反する方向に安定して傾斜し、配向膜46bおよび46cから成る第1の配向領域46の液晶分子35aに対する配向規制力をさらに向上させることができる。
図10は、本発明の第7の実施形態である液晶表示装置の1絵素を拡大して示す平面図、図11は、図10のA−A’線における断面図である。図10および11に示すように、この液晶表示装置の液晶パネルの各絵素の絵素電極32上には、液晶分子35aの配列方向規制手段としての一対の第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bが設けられており、さらに、第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bも上部の第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bを覆っている配向膜33には、それぞれ第1の配向領域46を形成する配向膜46dおよび配向膜46eが設けられている。その他の構成は、図6および図7に示す液晶表示装置と同様になっている。
このように、絵素電極32上の第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bを覆う配向膜33にも、それぞれ液晶分子35aを所定のティルト角に配向させる配向膜46dおよび46eを形成することにより、配向膜46dおよび46eの両側の液晶層35では、異なる液晶分子35aが配向膜46dおよび46eを境界として、相反する方向に安定して傾斜し、第1の配向領域46が複数形成された状態になり、さらに、液晶分子35aに対する配向規制力が得られる。また、図10および11の液晶表示装置では、第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bの上部の配向膜33に、第1の配向領域46を形成する配向膜46dおよび配向膜46eを設けたが、第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bに対向する配向膜43に、第1の配向領域46を形成する配向膜46dおよび配向膜46eを設けても良い。
尚、本発明の第5〜7の実施形態である液晶表示装置においても、液晶分子35aの配列方向規制手段を第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bとして設けたが、絵素電極32等に前述した各スリット34aおよび34bを設けても良く、さらに、凸形状部およびスリットの両方を設けても良い。また、配列方向規制手段である第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bの面積および第1の配向領域46を形成する配向膜46b、46c等の面積は、大きすぎると液晶表示装置の光の透過率および画像表示品位に対する影響が大きくなるために、小さく形成することが好ましく、その幅は10μm以下にすることが好ましい。また、第1の配向領域46の配向方向は、第1の配向領域46を形成する配向膜46b、46c等の形状および面積に関わらず、一対のクロスニコルの偏光板47および48の一方の偏光板47または48の偏光軸方向47aまたは48aと一
致するように配置され、これにより第1の配向領域46は、常に良好な黒色状態を示す。
図12は、本発明の第8の実施形態である液晶表示装置の1絵素における拡大断面図であり、図13(a)は、その平面図である。図12は、図13(a)のX−X’線における断面図である。本実施形態では、絵素内には、配列方向規制手段としての第1スリット34aおよび第2スリット34b、および、第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36bは設けられず、絵素電極32と各ソースバスライン11との間で発生する電界のみを利用する。そして、対向電極42を覆う配向膜43には、第1の配向領域46が形成されている。第1の配向領域46は、絵素電極32の各対角線に沿ってそれぞれ形成されている。
このような構成の液晶表示装置では、電圧が印加されない状態において、各配向膜33および43によって、液晶層35の液晶分子35aは、垂直方向に配向されるが、第1の配向領域の近傍では、液晶分子35aを第1の配向領域46の幅方向に沿った水平方向に配向することにより、液晶分子35aは、垂直方向に対して第1の配向領域に向かって傾斜した状態に配向される。そして、このような状態で、液晶表示装置が駆動状態になると、絵素電極32とソースバスライン11との間に電界が発生し、ソースバスライン11の近傍の液層分子35が、電界の向きに応じて図12に矢印(E)または(F)で示すように、一律に第1の配向領域46に向かって配向され、第1の配向領域46が、異なる液晶分子35の傾斜方向の境界となる。
したがって、図12のように、第1の配向領域46と各ソースバスライン11とを垂直配向された液晶分子35を挟んで対向する領域に形成する場合にも、第1の配向領域46の両側の液晶層35領域では、異なる液晶分子35が第1の配向領域46を境界として、相反する方向に安定して傾斜する。これにより、画像表示のザラツキを防止することができる。また、各ゲートバスライン10に近接した各側縁部では、絵素電極32と各ゲートバスライン10との間に生じる電界が、液晶分子35をそれぞれ逆方向(図12に矢印に示す方向EおよびFに準じる方向)に傾けるように作用する。したがって、図13(a)のY−Y’線に沿った方向にも、同様の効果があり、それぞれ液晶分子35は、2つの方向に傾斜して配向され、1絵素内では4つの方向に傾斜して配向される。
図13(a)に示すように、第1の配向領域46が絵素電極32の対角線上に配置されることにより、絵素電極32の各側縁部にて、決定された液晶分子35の配向方向の境界を安定化することができる。
また、第1の配向領域46は、図13(b)に示すように、絵素電極32の中央部にのみ設けてもよい。この場合にも、4つの配向方向の領域の交点を決めることができるので、配向領域の境界は、第1の配向領域46と絵素電極32の四隅とを結ぶ線で安定し、4つの配向方向の領域が安定して得られる。
尚、第1の配向領域46は、一対の相互に対向するガラス基板31または41のどちらか一方にのみ設けても十分な効果が得られるが、一対の相互に対向するガラス基板31および41の両方の対向する位置に設けられることにより、液晶分子35に対する配向規制力がより強まり、より大きな効果が得られる。第1の配向領域46の面積は、大きすぎると液晶表示装置の光の透過率および画像表示品位に対する影響が大きくなるために、小さく形成することが好ましく、その幅は10μm以下にすることが好ましい。
図14は、本発明の第9の実施形態である液晶表示装置の1絵素を拡大して上方向から見た平面図、図15は、図14のA−A’線における断面図である。本実施形態では、絵素内には、図6および7に示すような配列方向規制手段としての第1凸形状部36aおよび第2凸形状部36b、および、絵素電極32等への各スリット34aおよび34bは設けられず、絵素電極32の両側のエッジ部分において、絵素電極32とソースバスライン
11との間に発生する液晶分子35aをそれぞれ逆方向に傾ける電界のみを利用する。そして、対向電極42を覆う配向膜43には、第1の配向領域46を形成する配向膜46fが形成されている。第1の配向領域46を形成する配向膜46fは、絵素電極32の中央部のみに形成されている。
このような構成の液晶表示装置では、電圧が印加されない状態において、各配向膜33および43によって、液晶層35の液晶分子35aは、垂直方向に配向されるが、第1の配向領域46の近傍では、液晶分子35aを第1の配向領域46の所定のティルト角に配向することにより、液晶分子35aは、垂直方向に対して第1の配向領域46に向かって傾斜した状態に配向される。そして、このような状態で、液晶表示装置が駆動状態になると、絵素電極32とソースバスライン11との間に電界が発生し、ソースバスライン11の近傍の液層分子35が、電界の向きに応じて、一律に第1の配向領域46の配向膜46fに向かって傾斜した状態に配向され、第1の配向領域46が、第1の配向領域46の両側の異なる液晶分子35aの傾斜方向の境界部となる。
したがって、図15のように、第1の配向領域46を形成する配向膜46fと各ソースバスライン11とを垂直配向された液晶分子35aを挟んで対向する領域に形成する場合にも、第1の配向領域46の両側の液晶層35領域では、異なる液晶分子35aが第1の配向領域46を境界として、相反する方向に安定して傾斜する。このことより、画像表示のザラツキを防止することができる。また、各ゲートバスライン10に近接した各側縁部では、絵素電極32と各ゲートバスライン10との間に生じる電界が、液晶分子35aをそれぞれ逆方向に傾けるように作用する。したがって、図14のB−B’線に沿った方向にも、同様の効果があり、それぞれ液晶分子35aは、2つの方向に配向され、1絵素内では4つの方向に配向される。
図14に示すように、第1の配向領域46を形成する配向膜46fが絵素電極32の中央部にのみ配置されることにより、4つの配向方向の領域の交点を決めることができるので、配向領域の境界は、第1の配向領域46と絵素電極32の四隅とを結ぶ線で安定し、4つの配向方向の領域が安定して得られる。
尚、第1の配向領域46を形成する配向膜46fは、一対の相互に対向するガラス基板31または41のどちらか一方にのみ設けても十分な効果が得られるが、一対の相互に対向するガラス基板31および41の両方の対向する位置に設けられることにより、液晶分子35aに対する配向規制力がより強まり、より大きな効果が得られる。
本実施形態においても、第1の配向領域46の配向方向は、ガラス基板1および2を挟むようにして設置される一対のクロスニコルの偏光板47および48の内、一方の偏光板47または48に対して、偏光板47または48の偏光軸方向47aまたは48aと一致するように設定されることより、第1の配向領域46は、常に良好な黒色状態が得られる。
また、絵素電極32に対する第1の配向領域46を形成する配向膜46fの配置は、前述した以外の位置でもよい。第1の配向領域46を形成する配向膜46fの配置数および面積は、各絵素の面積および絵素電極32と各ソースバスライン11との間で発生する電界の電界効果による配向規制力の大きさとにより、適切な所定値が設定される。例えば、絵素電極32を2分割するような場合には、第1の配向領域46を形成する配向膜46fは、分割された各々の絵素電極32の領域のほぼ中心部に配置されたり、各絵素の面積が大きく絵素電極32と各ソースバスライン11との間で発生する電界の電界効果が小さい場合には、第1の配向領域46を形成する配向膜46fは、液晶分子35aに対する配向規制力を強くするために、1絵素内の複数個所に配置される。第1の配向領域46を形成
する配向膜46fの形状は、図14に示す以外に、任意の形状であればよい。
尚、第1の配向領域46は、各絵素の表示領域に設置されるために、その面積は、液晶表示装置の光の透過率に影響を及ぼさない、小さいことが好ましい。
図16(a)および(b)は、図1および図2に示す本発明の液晶表示装置の製造プロセスの一例の説明図である。図16(a)は、絵素電極32,TFT部13等が形成されるガラス基板31上の製造プロセスを示す。ガラス基板31上には、絵素電極32が形成される。絵素電極32の一部には、液晶分子の配向方向を規制するスリット34が形成される。スリット34は、絵素電極32が形成される時に、同時にパターニングすることにより形成される。絵素電極32の上には、液晶分子35を配向させる配向膜33(JALS−204:JSR社製)が形成される。配向膜33には、有機高分子膜の1つであるポリイミド膜が使用され、この配向膜33は液晶分子を垂直配向させる性質を有している。尚、図5に示す凸形状部36aおよび36bを設ける場合には、配向膜33を形成する前に、レジスト等の絶縁性を有する感光性樹脂をパターニングすることにより、絶縁物である感光性樹脂によって各凸形状部36aおよび36bが形成される。
図16(b)は、第1の配向領域46が形成されるガラス基板41上の製造プロセスを示す。ガラス基板41上には、カラーフィルター(図示せず)が設けられており、その上に、対向電極42が形成される。対向電極42の上には、液晶分子を配向させる配向膜43(JALS−204:JSR社製)が形成される。配向膜43には、有機高分子膜の1つであるポリイミド膜が使用され、この配向膜43は液晶分子を垂直方向に配向させる性質を有している。
配向膜43が形成されると、第1の配向領域46を形成するマスク44を配置する。マスク44は、例えば、常用されているフォトマスクと同様のマスクを使用することができる。マスク44は、光45を透過しない遮光部44aと光45を透過する透過部44bとを有する。光45は、マスク44を通して、図1に示す第1の配向領域46に対応する部分の配向膜43に照射される。
光45の照射時期は、配向膜43の形成後であれば、任意の時点で実施可能であり、配向膜43の塗布後、仮焼成後、本焼成後、のいずれの時でも良い。さらに、ポリイミド膜からなる配向膜43に照射する光45の種類としては、紫外光、可視光、赤外光、または配向膜43の材料に対する所定の波長のレーザ光のいずれを用いてもよいが、配向状態を変化させるために高エネルギーが容易に得られる光源である波長が400nm以下の紫外光が好ましい。このような波長の光45は、高圧水銀灯、低圧水銀灯、水銀キセノン灯などで容易に得られる。この紫外光を照射する場合には、照射エネルギー7mW/cm2で
17分間(約7J/cm2)照射する。このプロセスによって、第1の配向領域46は、
液晶分子35を垂直方向に配向させる高分子鎖が切断され、液晶分子35を配向させることのない水平配向性を保持する。
尚、水平配向部分でのティルト角は、60°以下になる程度で十分な効果がある。
第1の配向領域46が形成されるガラス基板41は、紫外光の光45の照射が終了すると、ガラス基板31と対向して、第1の配向領域46とスリット34が平面的にそれぞれ交互に平行になるように貼り合わせられる。そして、液晶がガラス基板31上の配向膜33とガラス基板41上の配向膜43との間に封入され、液晶表示装置が作製される。
尚、第2の配向領域49は、第1の配向領域46を形成するプロセスと同様に形成できる。
次に、本発明の図6および図7に示す液晶表示装置の製造プロセスの一例を説明する。
まず、絵素電極32,TFT部13等が形成されるガラス基板31上の製造プロセスを示す。ガラス基板31上には、絵素電極32が形成される。絵素電極32の一部には、液晶分子の配向方向を規制する凸形状部が形成される。凸形状部は、絵素電極32が形成された後に、レジスト等の絶縁性を有する感光性樹脂をパターニングすることにより形成される。絵素電極32の上には、液晶分子35aを配向させる配向膜33(JALS−204:JSR社製)が形成される。配向膜33には、有機高分子膜の1つであるポリイミド膜が使用され、この配向膜33は液晶分子35aを垂直配向させる性質を有している。
さらに、第1の配向領域46が形成されるガラス基板41上の製造プロセスを示す。ガラス基板41上には、カラーフィルター(図示せず)が設けられており、その上に、対向電極42が形成される。対向電極42の上には、液晶分子を配向させる配向膜43(JALS−204:JSR社製)が形成される。配向膜43には、有機高分子膜の1つであるポリイミド膜が使用され、この配向膜43は液晶分子を垂直方向に配向させる性質を有している。
配向膜43が形成されると、第1の配向領域46を形成するマスクを配置する。マスクとしては、例えば、常用されているフォトマスクと同様のマスクを使用することができる。マスクは、光を透過しない遮光部と光を透過する透過部とを有する。光は、マスクを通して、図6に示す第1の配向領域46に対応する部分の配向膜43に照射される。配向膜43の光を照射された第1の配向領域46に対応する部分は、液晶分子35aに対する垂直配向力が弱くなる。配向膜43の第1の配向領域46に対応する部分への光の照射後、その部分の液晶分子35aの配向が一方向に傾斜するようにラビング処理を行う。これにより、第1の配向領域46に対応する部分の下方の液晶分子35aがティルト角を有することにより、所定の方向に傾斜する。また、液晶分子35aを所定のティルト角に配向させる第1の配向領域46は、配向膜43の所定の位置に紫外線の光を照射、または、配向膜43の所定の位置をアルカリ、酸等の溶液に短時間さらすことによって、配向膜43の垂直配向力を減少させ、その後、光照射処理または化学処理を行った配向膜43の所定の位置にラビング処理を行うことによって形成される。
このように、第1の配向領域46に対応する部分を形成する配向膜43には、第1の配向領域46の形成される領域が、光照射処理または化学処理によって、垂直配向力が減少し、さらに、ラビング処理により配向規制力を生じる配向膜材料を使用する必要がある。そして、配向膜43の光照射処理または化学処理が施されていない領域は、ラビング処理後もラビング方向に配向規制力を生じず、液晶分子35aを垂直配向させる垂直配向力を保持していなければならない。
光の照射時期は、配向膜43の形成後であれば、任意の時点で実施可能であり、配向膜43の塗布後、仮焼成後、本焼成後、ラビング処理後のいずれの時でも良い。さらに、ポリイミド膜からなる配向膜43に照射する光45の種類としては、紫外光、可視光、赤外光、または配向膜43の材料に対する所定の波長のレーザ光のいずれを用いてもよいが、配向状態を変化させるために高エネルギーが容易に得られる光源である波長が400nm以下の紫外光が好ましい。このような波長の光は、高圧水銀灯、低圧水銀灯、水銀キセノン灯などで容易に得られる。これらの光を照射する場合には、照射エネルギー30J/cm2以下の条件で照射する。このプロセスによって、第1の配向領域46は、液晶分子3
5aを垂直方向に配向させる高分子鎖が切断され、液晶分子35aを配向させることのない水平配向性を保持する。この時、水平配向部分でのティルト角は、60°以下になる程、十分な効果がある。
例えば、紫外光を照射する場合には、照射エネルギー5J/cm2の条件で照射する。
この時、紫外光が照射された水平配向部分でのティルト角は、20°以下、紫外光が照射されない垂直配向部分でのティルト角は、89°以上であった。
第1の配向領域46が形成されるガラス基板41は、紫外光等の光の照射が終了すると、ガラス基板31と対向して、第1の配向領域46とスリット34が平面的にそれぞれ交互に平行になるように貼り合わせられる。そして、負の誘電率異方性を有する液晶がガラス基板31上の配向膜33とガラス基板41上の配向膜43との間に封入され、液晶表示装置が作製される。
尚、配向膜43には、前述の有機高分子膜の1つであるポリイミド膜以外に、ポリビニルシンナメートを使用してもよい。ポリビニルシンナメートを使用した配向膜43は、ガラス基板41に塗布後、所定の角度から紫外線の光または偏光紫外線の光を照射されると、紫外線の光または偏光紫外線の光を照射された部分にラビング処理を施さないでも、液晶分子35aを所定のティルト角に配向させる配向規制力を生じる特性を有している。このように、配向膜43にポリビニルシンナメートを使用した場合には、ラビング処理は不要となり、製造プロセスの短縮が図れる。