JP4156342B2 - 液晶表示装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、情報機器の表示部等に用いられる液晶表示装置に関し、特に広視野角及び高輝度が要求される液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、画素毎に薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)を備えたアクティブマトリクス型の液晶表示装置は、薄型・軽量、低電圧駆動、低消費電力といった特徴を活かして、様々な用途に広く用いられるようになってきている。近年の液晶表示装置は、大画面で且つ高精細を実現し、さらに広視野角及び高輝度、高コントラスト化が図られている。これにより、CRT(Cathode−Ray Tube)に匹敵するほどの表示特性が実現され、従来、CRTが主流であったモニタやテレビ受像機などの用途にも用いられるようになってきている。
【0003】
液晶分子を垂直配向させて駆動するVA(Vertically Aligned)モードの液晶表示装置では、配向膜にラビング等の配向処理を施さないと電圧印加時に液晶分子は様々な方向に傾斜する。この結果、各画素でそれぞれ異なる面積の配向領域が形成される。また各画素では、配向領域の境界線(ディスクリネーション)が、画素毎に配置が異なる暗線として視認される。これにより、特に斜め方向から表示画面を見たときに表示画面上にむらやざらつき、残像等が視認され、表示品質が極めて低くなってしまう。このため、CRTに匹敵する表示特性を実現する液晶表示装置として、MVA(Multi−domain Vertical Alignment)などの配向分割方式を利用した広視野角を実現した液晶表示装置が実用化されている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
MVA方式の液晶パネルは、一対の基板の少なくとも一方の表面に、突起、窪み、または電極に設けたスリットのいずれか、またはそれらの組み合わせからなるドメイン規制手段を備えている。液晶材料としては負の誘電率異方性を有するネマティック液晶が用いられる。当該液晶は、電圧無印加時において液晶分子が基板に対してほぼ垂直に配向している。電圧印加時には、ドメイン規制手段により、液晶分子の傾斜する配向方位が各画素内において複数方位になるように規制される。液晶パネルの両側には、吸収軸が互いに直交するように偏光素子が配置される。
【0005】
図8は、従来のMVA方式の液晶表示装置のTFT基板の1画素の構成を示している。図8(a)は、4分割配向を実現する画素電極構造を示し、図8(b)は、上下2分割配向を実現する画素電極構造を示している。図8(a)に示すように、TFT基板上には、図中左右方向に延びるゲートバスライン112が互いにほぼ平行に複数形成されている。不図示の絶縁膜を介してゲートバスライン112に交差して、図中上下方向に延びるドレインバスライン114が互いにほぼ平行に複数形成されている。複数のゲートバスライン112とドレインバスライン114とで囲まれた領域が画素領域になっている。
また、画素領域のほぼ中央を横切って、ゲートバスライン112にほぼ平行に延びる蓄積容量バスライン118が形成されている。
【0006】
ゲートバスライン112及びドレインバスライン114の交差位置近傍には、TFT110が形成されている。TFT110のドレイン電極122は、ドレインバスライン114から引き出され、ゲートバスライン112上に形成された動作半導体層及びその上に形成されたチャネル保護膜(ともに図示せず)の一端辺側に位置するように形成されている。一方、TFT110のソース電極124は、ドレイン電極122に所定の間隙を介して対向し、動作半導体層及びチャネル保護膜の他端辺側に位置するように形成されている。ゲートバスライン112のチャネル保護膜直下の領域は、TFT110のゲート電極として機能するようになっている。また、ソース電極124は、コンタクトホール(図示せず)を介して画素電極116に電気的に接続されている。
【0007】
画素領域には、画素電極116が形成されている。図8(a)に示すように、画素電極116は、両バスライン112、114にほぼ平行又は垂直に延びる幹部128と、幹部128から分岐して斜めに延びる枝部130と、隣接する枝部130間のスリット132とを有している。TFT基板と所定のセルギャップで対向して貼り合わされる対向基板上には、複数の画素領域を含む表示領域全面に透明電極(図示せず)が形成されている。図8(a)に示すTFT基板と不図示の対向基板とを用いて作製されたMVA−LCDでは、画素電極116の幹部128と枝部130及びスリット132によって液晶分子の配向方向が決定される。
【0008】
両基板間には、負の誘電率異方性を有する液晶が封止されている。液晶分子は、両基板の対向面に形成された垂直配向膜(図示せず)の配向規制力により基板面にほぼ垂直に配向している。図8(a)に示す枝部130とスリット132の幅は例えば共に3μmであり、枝部ピッチ及びスリットピッチは共に6μmである。この程度の微細なスリット構造になると、電圧印加時に液晶分子Lcがスリット132の延伸方向と平行な方向に傾斜するようになる。両基板の透明電極間に所定の電圧が印加されて、液晶分子Lcがスリット132の延伸方向に沿って傾斜し始めると、その傾斜は各液晶分子Lcに順次伝播してスリット132間の領域の液晶分子Lcは同一方向に傾斜する。
【0009】
このように、画素電極116にスリット132を配置することにより、液晶分子Lcの傾斜方向を領域毎に規制することができる。図8(a)に示すようにスリット132を互いにほぼ垂直な2方向に形成すると、液晶分子は1画素内で4方向に傾斜する。各領域の視角特性が混合される結果、MVA−LCDでは白表示又は黒表示において広い視野角が得られる。MVA−LCDでは、表示画面に垂直な方向から上下左右方向への角度80°においても10以上のコントラスト比が得られる。
【0010】
したがって、図8(a)に示すように、液晶分子が4つの方位に傾斜するようにスリット電極を形成した場合には、4ドメインの配向が実現される。また、図8(b)に示すように、液晶分子が2つの方位に傾斜するようにスリット電極を形成した場合には、2ドメインの配向が実現される。
【0011】
しかしながら、図8(a)、(b)に示す画素電極116を用いたMVA−LCDでは、電圧印加から液晶分子Lcの配向の伝播が完了するまでの応答時間が長くなってしまう結果、枝部130上で液晶分子Lcの配向ベクトルの特異点がランダムに発生してしまう。また、画素毎あるいはフレーム毎に特異点の形成位置が移動するため、特に斜め方向から表示画面を見たときに表示画面上にむらやざらつき等が視認され、表示品質が低下してしまうという問題が生じる。
【0012】
次に、液晶分子Lcの傾斜方位と2つの偏光素子P、Aの吸収軸の方向との関係について、図8及び図9を用いて説明する。図8(a)、(b)に示すように、液晶分子Lcの傾斜時の配向方位から45°傾いて2つの偏光素子P、Aの吸収軸の方向が設定されている。図9は基板面に垂直にみたときの液晶分子Lcの傾斜方位と2つの偏光素子P、Aの吸収軸の方向との関係を示している。図9(a)は電圧無印加時であり、液晶分子Lcは基板面に対して垂直に配向している。一方の偏光素子Pを通過した光は、液晶分子Lcの複屈折の影響を受けることなく液晶中を通過し、他方の偏光素子Aにより遮断され、黒表示が得られる。
【0013】
電圧印加時には、負の誘電率異方性を有する液晶分子Lcは基板面に対して傾き、十分大きな電圧を印加したときには液晶分子Lcは基板面に対してほぼ平行になる。最適な白表示を実現するためには、液晶分子Lcの配向方位は偏光素子P、Aの吸収軸の方向に対して制約を受ける。
【0014】
電圧印加時に液晶分子Lcが偏光素子P、Aの吸収軸と平行あるいは直交する方位に傾斜した場合を図9(b)に示す。この場合は、電圧無印加時と同様に、一方の偏光素子Pを通過した光は、液晶分子Lcの複屈折の影響を受けることなく液晶中を通過し、他方の偏光素子Aにより遮断される。したがって、白表示を得ることができない。
【0015】
最適な白表示を得るためには、図9(c)に示すように、液晶分子Lcの配向方位が偏光素子P、Aの吸収軸に対して45°をなすようにしなければならない。この場合、一方の偏光素子Pを通過した直線偏光の光は、液晶分子Lcの複屈折の影響を受け楕円偏光となり、他方の偏光素子Aを通過する光が生じるため白表示が得られる。
したがって、4ドメイン分割のMVA−LCDで良好な白表示を得るには、電圧印加時に液晶分子Lcが傾斜配向すべき方位は、図9(d)に示す4方位に限られる。
【0016】
【特許文献1】
特開2000−29010号公報
【0017】
【特許文献2】
特開平9−211445号公報
【0018】
【特許文献3】
特許第2947350号公報
【0019】
【非特許文献1】
岩本、都甲、飯村、2000年日本液晶学会討論会講演予稿集、PCa02、2000
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
以上説明したように、例えば4ドメイン分割のMVA−LCDでは、液晶分子Lcの傾斜配向する方位が図9(d)に示す4方位のみであることが望ましい。しかしながら液晶の連続性により、実際には図9(d)に示す4方位以外の配向方位に傾斜する液晶分子Lcが存在する。
【0021】
例えば、図8(a)に示す4ドメインの電極構造を有するMVA−LCDでは、偏光素子P、Aの吸収軸に対して45°をなすように形成された微細なスリット132により、液晶分子Lcはそれぞれ異なる4つの方位に傾斜する。しかし、各ドメインが隣接する境界の領域においては、液晶分子Lcは偏光素子P、Aの吸収軸に対して平行あるいは直交する方位に傾斜せざるを得ない。
【0022】
液晶分子Lcが偏光素子P、Aの吸収軸に対して平行あるいは直交する方位に傾斜した領域では光は透過しない。したがって、図8(a)に示す電極構造の場合、白表示において十字状に黒い領域が生じ、透過率を低下させる大きな要因となっている。
また、液晶分子Lcを所定の方向に傾斜させるためには、図8(a)に示すような微細なピッチのライン・アンド・スペースパターンを形成して、電極の枝部130とスリット132とを形成する必要がある。しかし、パネルの大型化に伴い、フォトリソグラフィ工程で分割露光を用いるような場合には、露光条件のわずかな変化から各分割領域毎に枝部130とスリット132の幅が異なって形成されてしまうことがあり、パネルに画像を表示する際の表示画面に輝度むらが生じてしまい、製造歩留まりが低下してしまうという問題が生じる。
【0023】
本発明の目的は、製造歩留まりが向上し、広視野角および高輝度で良好な表示品質が得られる液晶表示装置を提供することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、所定のセルギャップで対向配置される第1及び第2の基板と、前記第1及び第2の基板間に封止された液晶と、前記第1の基板の前記液晶に面する側に形成された第1の電極と、前記第2の基板の前記液晶に面する側に形成された第2の電極と、前記第1の電極に形成された第1のスリットと、前記第2の電極に形成され、基板面に垂直方向にみて、前記第1のスリットの延伸方向とほぼ直交する方向に延伸する第2のスリットとを有することを特徴とする液晶表示装置によって達成される。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施の形態による液晶表示装置について図1乃至図7を用いて説明する。まず、本実施の形態による液晶表示装置の概略の構成を図1を用いて説明する。図1に示す液晶表示装置は、TFT等が形成されたTFT基板2とカラーフィルタ(CF)等が形成されたCF基板4とを対向させて貼り合わせ、両基板2、4間に液晶を封止した構造を有している。
【0026】
図2は、TFT基板2上に形成された素子の等価回路を模式的に示している。TFT基板2上には、図中左右方向に延びるゲートバスライン12が互いに平行に複数形成されている。絶縁膜を介してゲートバスライン12に交差して、図中上下方向に延びるドレインバスライン14が互いに平行に複数形成されている。複数のゲートバスライン12とドレインバスライン14とで囲まれた各領域が画素領域となる。マトリクス状に配置された各画素領域には、TFT10と画素電極16が形成されている。各TFT10のドレイン電極は隣接するドレインバスライン14に接続され、ゲート電極は隣接するゲートバスライン12に接続され、ソース電極は画素電極16に接続されている。各画素領域のほぼ中央には、ゲートバスライン12と平行に蓄積容量バスライン18が形成されている。これらのTFT10や画素電極16、各バスライン12、14、18は、フォトリソグラフィ工程で形成され、「成膜→レジスト塗布→露光→現像→エッチング→レジスト剥離」という一連の半導体プロセスを繰り返して形成される。
【0027】
図1に戻り、TFT基板2には、複数のゲートバスライン12を駆動するドライバICが実装されたゲートバスライン駆動回路80と、複数のドレインバスライン14を駆動するドライバICが実装されたドレインバスライン駆動回路81とが設けられている。これらの駆動回路80、81は、制御回路82から出力された所定の信号に基づいて、走査信号やデータ信号を所定のゲートバスライン12あるいはドレインバスライン14に出力するようになっている。TFT基板2の素子形成面と反対側の基板面には偏光板83が配置され、偏光板83のTFT基板2と反対側の面にはバックライトユニット85が取り付けられている。一方、CF基板4のCF形成面と反対側の面には、偏光板84が貼り付けられている。
【0028】
図3は、TFT基板2とCF基板4の1画素の電極構成の一部を示している。なお、図3では、説明を容易にするためTFT基板2側に形成されたTFT10や各バスライン12、14、18等の図示は省略し、CF基板4側のCFの図示等も省略している。
【0029】
図3において、TFT基板2の画素領域には、例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜からなる画素電極16が形成されている。画素電極16は、幅aで図の上下に延伸する複数(図では4本例示)の長方形状(帯状)の電極部20を有している。それぞれ隣り合う電極部20間には、透明導電膜が形成されていない幅bのスリット22が形成されている。スリット22で分離された各電極部20は図示を省略した接続電極で電気的に接続されている。
【0030】
TFT基板2の画素領域に対向するCF基板2の対応領域には、例えばITO等の透明導電膜からなる共通電極24が形成されている。共通電極24は、幅aで図の左右に延伸する複数(図では4本例示)の長方形状(帯状)の電極部26を有している。それぞれ隣り合う電極部26間には、透明導電膜が形成されていない幅bのスリット28が形成されている。スリット28で分離された各電極部26は図示を省略した接続電極で電気的に接続されている。電極部20、26の幅aは例えば37μmであり、スリット22、28の幅bは例えば8μmである。
【0031】
このように、本実施の形態によるMVA−LCDは、所定のセルギャップで対向配置されるTFT基板(第1の基板)2及びCF基板(第2の基板)4と、基板2、4間に封止された液晶と、TFT基板2の液晶に面する側に形成された画素電極(第1の電極)16と、CF基板4の液晶に面する側に形成された共通電極(第2の電極)24と、画素電極16に形成された第1のスリット22と、共通電極24に形成され、基板面に垂直方向にみて、第1のスリット22の延伸方向とほぼ直交する方向に延伸する第2のスリット28とを有している。
【0032】
画素電極16及び共通電極24の間に封止されている液晶は、画素電極16及び共通電極24に対して電圧無印加の時には、液晶分子が基板面に対してほぼ垂直に配向し、電圧印加により液晶分子が傾斜する際には、第1及び第2のスリット22、28により配向方位が規制される。
【0033】
また、図3に示すように、基板面に垂直方向にみて、第1及び第2のスリット22、28により画定される画素電極16及び共通電極24の重なり領域は、ほぼ正方形形状になっている。
【0034】
TFT基板2の液晶に面する側と反対側に配置された偏光板(第1の偏光素子)83とCF基板4の液晶に面する側と反対側に配置された偏光板(第2の偏光素子)84とは、偏光板83の吸収軸Pと偏光板84の吸収軸Aとがほぼ直交するクロスニコルに配置されている。また、偏光板83、84の吸収軸P、Aは、第1及び第2のスリット22、28の延伸方向に対し、ほぼ45°傾いている。
【0035】
図3に示す電極構造は、従来より格段に広幅の電極部20、26及び第1及び第2のスリット22、28を有しており、電極形成時のフォトリソグラフィ工程で微細なパターニングを必要としないため、高い歩留まりで製造することが可能となる。また、液晶分子の配向を規制する第1及び第2のスリット22、28が、画素電極16だけでなく共通電極24にも形成されているため、一方の電極にのみスリットが設けられている従来構造に比べて、配向の安定性、均一性、および応答性が格段に向上する。また、両電極の第1及び第2のスリット22、28の延伸方向が直交しているため、基板同士を貼り合わせる際の精度を高くする必要も生じない。
【0036】
図4は、本実施の形態による液晶表示装置の電圧印加時の液晶配向の様子を示している。図4(a)は、電極部20、26間に2.5Vの電圧を印加したときの液晶配向状態を示している。同様に、図4(b)は、電極部20、26間に3.0Vの電圧を印加したときの液晶配向状態を示し、図4(c)、(d)は、それぞれ4.0V、5.0Vの電圧を印加したときの液晶配向状態を示している。図4に示すように、いずれの印加電圧においても安定した配向特性が得られ、各領域の液晶分子が均一な傾斜角度で配向している。これにより、画像のちらつきや、ざらつき感を抑制して表示品質を向上させることができる。
【0037】
図5は、電極部26の幅を変化させた電極構造における電圧印加時の液晶配向の様子を示している。電極部20の電極幅a1は37μmでスリット22のスリット幅bは8μmであるが、電極部26の電極幅a2は25μmでスリット28のスリット幅bは8μmである。基板面に垂直方向にみて、第1及び第2のスリット22、28により画定される画素電極16及び共通電極24の重なり領域は横長の長方形形状になっている。図5(a)は、電極部20、26間に2.5Vの電圧を印加したときの液晶配向状態を示している。同様に、図5(b)は、電極部20、26間に3.0Vの電圧を印加したときの液晶配向状態を示し、図5(c)、(d)は、それぞれ4.0V、5.0Vの電圧を印加したときの液晶配向状態を示している。図5に示すように、画素電極16及び共通電極24の重なり領域が長方形形状になると、図4に示したような正方形形状の構造と比較して、液晶分子の配向の安定性及び均一性が低下することが分かる。したがって、画素電極16及び共通電極24の重なり領域はほぼ正方形形状になるようにすることが望ましい。
【0038】
ところで、図1乃至図4を用いて説明した本実施形態による液晶表示装置(MVA-LCD)は、偏光板83、84の吸収軸P、Aに対して45°以外の方位に配向した液晶分子からの光の透過光量は減衰するため透過率が低下してしまうという欠点を有している。この欠点を改善する方法として、図6に示すように、液晶パネルの両側に第1及び第2の1/4波長板30、32を1層ずつ配置する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0039】
図6に示すように、液晶パネル(TFT基板2及びCF基板4、及びそれらに挟持された液晶層を含む)を挟んで、互いにクロスニコルに偏光板83、84が配置されている。液晶パネルと偏光板83との間には、1/4波長板30が配置されている。また液晶パネルと偏光板84との間には、1/4波長板32が配置されている。液晶パネルと1/4波長板30、32の間には、視角特性を向上させるために、TACフィルムのような負の位相差を有する層が配置されてもよい。なお、図中上方が観察者側になり、図中下方が光源側になっている。
【0040】
1/4波長板30の光学軸(遅相軸)C1と偏光板83の吸収軸Pとのなす角は、ほぼ45°である。すなわち、光源から射出された光が偏光板83と1/4波長板30とをこの順に透過すると円偏光になる。また、1/4波長板32の光学軸C2と偏光板84の吸収軸Aとのなす角は、ほぼ45°である。両1/4波長板30、32の光学軸P、Aは互いにほぼ直交している。
【0041】
図6に示した配置の場合、入射光強度をIin、透過光強度をIout、液晶層のリタデーションをRLCとすると、以下の関係が成り立つ。
out=(1/2)Iinsin2(RLC/2)
すなわち、透過光強度Ioutは、入射光強度をIinを一定とすればRLCのみで決まる。つまり、透過光強度Ioutは、リタデーションをRLCを変化させる液晶分子の傾斜角度には依存するが液晶分子の配向方位には依存しない。
【0042】
このような構成を採用することにより、図4に示したような、格子状やX状に生じる低透過率領域を消滅させることができ、十分高い光透過率を有するMVA−LCDが実現できる。
【0043】
図7は、本実施の形態による液晶表示装置の変形例に係る電極構造を示している。図7に示すように、TFT基板上には、図中左右方向に延びるゲートバスライン12が互いにほぼ平行に複数形成されている。不図示の絶縁膜を介してゲートバスライン12に交差して、図中上下方向に延びるドレインバスライン14が互いにほぼ平行に複数形成されている。複数のゲートバスライン12とドレインバスライン14とで囲まれた領域が画素領域になっている。
また、画素領域のほぼ中央を横切って、ゲートバスライン12にほぼ平行に延びる蓄積容量バスライン18が形成されている。
【0044】
ゲートバスライン12及びドレインバスライン14の交差位置近傍には、TFT10が形成されている。TFT10のドレイン電極11は、ドレインバスライン14から引き出され、ゲートバスライン12上に形成された動作半導体層及びその上に形成されたチャネル保護膜(ともに図示せず)の一端辺側に位置するように形成されている。一方、TFT10のソース電極13は、ドレイン電極11に所定の間隙を介して対向し、動作半導体層及びチャネル保護膜の他端辺側に位置するように形成されている。ゲートバスライン12のチャネル保護膜直下の領域は、TFT10のゲート電極として機能するようになっている。また、ソース電極11は、コンタクトホール(図示せず)を介して後述する画素電極16の図左側の電極部20と電気的に接続されている。
【0045】
TFT基板2の画素領域には、例えばITO等の透明導電膜からなる画素電極16が形成されている。画素電極16は、長辺が図の上下方向にある長方形形状に形成されており、図の上下に等幅で延伸する2本の長方形状(帯状)の電極部20を有している。隣り合う電極部20間には、透明導電膜が形成されておらず画素電極16の長辺方向に延伸する所定幅のスリット22が形成されている。スリット22で分離された2つの電極部20は例えば蓄積容量バスライン18上部に形成した接続電極29で電気的に接続されている。
【0046】
TFT基板2の画素領域に対向するCF基板2の対応領域には、例えばITO等の透明導電膜からなる共通電極24が形成されている。共通電極24は、所定幅で図の左右に延伸する複数(図では7本例示)の長方形状(帯状)の電極部26を有している。それぞれ隣り合う電極部26間には、透明導電膜が形成されていないスリット28が形成されている。スリット28で分離された各電極部26は図示を省略した接続電極で電気的に接続されている。
【0047】
このように、本変形例によるMVA−LCDは、所定のセルギャップで対向配置されるTFT基板(第1の基板)2及びCF基板(第2の基板)4と、基板2、4間に封止された液晶とを有している。液晶には、負の誘電率異方性を有するネマティック液晶が用いられている。また、本変形例によるMVA−LCDは、TFT基板2の液晶に面する側に形成された画素電極(第1の電極)16と、CF基板4の液晶に面する側に形成された共通電極(第2の電極)24と、画素電極16に形成された第1のスリット22と、共通電極24に形成され、基板面に垂直方向にみて、第1のスリット22の延伸方向とほぼ直交する方向に延伸する第2のスリット28とを有している。
【0048】
画素電極16及び共通電極24の間に封止されている液晶は、画素電極16及び共通電極24に対して電圧無印加のときには、液晶分子が基板面に対してほぼ垂直に配向し、電圧印加により液晶分子が傾斜する際には、第1及び第2のスリット22、28により配向方位が規制される。
【0049】
また、図7に示すように、スリット22、28により画定される画素電極16及び共通電極24の重なり領域は、基板面に垂直方向にみてほぼ正方形形状になっている。
【0050】
また、TFT基板2の液晶に面する側と反対側に配置された偏光板(第1の偏光素子)83の吸収軸Pと、CF基板4の液晶に面する側と反対側に配置された偏光板(第1の偏光素子)84の吸収軸Aとがほぼ直交するようにクロスニコルに配置されている。また、偏光板83、84の吸収軸P、Aは、第1及び第2のスリット22、28の延伸方向に対し、ほぼ45°傾いている。
【0051】
また、TFT基板2と偏光板83との間には図6に示した第1の1/4波長板30が配置され、CF基板4と偏光板84との間には図6に示した第2の1/4波長板32が配置されている。さらに、偏光板83の吸収軸Pと第1の1/4波長板30の遅相軸C1とが45°をなし、偏光板84の吸収軸Aと第2の1/4波長板32の遅相軸C2とが45°をなし、第1の1/4波長板30の遅相軸C1と第2の1/4波長板32の遅相軸C2とは互いにほぼ直交している。
【0052】
図7に示す電極構造は、従来より格段に広幅の電極部20、26及びスリット22、28を有しており、電極形成時のフォトリソグラフィ工程で微細なパターニングを必要としないため、高い歩留まりで製造することが可能となる。また、液晶分子の配向を規制するスリット22、28が、画素電極16だけでなく共通電極24にも形成されているため、一方の電極にのみスリットが設けられている従来構造に比べて、配向の安定性、均一性、および応答性が格段に向上している。また、両電極のスリット22、28の方向が直交しているため、基板同士を貼り合わせる際の精度を高くする必要も生じない。
【0053】
本変形例によれば、いずれの印加電圧においても安定した配向特性が得られ、各領域の液晶分子を均一な傾斜角度で配向させることができる。これにより、画像のちらつきや、ざらつき感を抑制して表示品質を向上させることができる。さらに、図1乃至図4に示したMVA−LCDより透過率が向上するため明るい表示を得ることができる。また、輝度を同じにすればバックライト等の光源装置の射出光量を抑制できるため、低消費電力のMVA−LCDを実現できる。
【0054】
本変形例においても、両側の基板とも電極をパターニングしてスリットを設け、且つ両方のスリットの方向を直交させている。これにより、片側の基板のみ電極をパターニングしている場合に比べて、配向の安定性、均一性、および応答性が格段に向上する。従って、製造歩留りを向上させて、広視野角および高輝度の液晶表示装置を実現することが可能となる。
【0055】
本発明は、上記実施の形態に限らず種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では対向基板にCFが形成されたCF基板を用いているが、本発明はこれに限らず、例えば、TFT基板側にCFを形成したいわゆるCF−on−TFT構造のMVA−LCDにももちろん適用可能である。また、画素電極に反射導電膜を用いた反射型MVA−LCDあるいは、例えば透明電極と反射電極とを組み合わせた半透過型MVA−LCDに本発明の電極構造を適用することができる。
【0056】
なお、上記実施形態及びその変形例における共通電極24と画素電極16の重なり領域は必ずしも正方形形状でなくともよく、共通電極24と画素電極16に設けるスリット22、28のピッチも、画素サイズなどに合わせて適宜変化させることができる。
【0057】
以上説明した本実施の形態による液晶表示装置は、以下のようにまとめられる。
(付記1)
所定のセルギャップで対向配置される第1及び第2の基板と、
前記第1及び第2の基板間に封止された液晶と、
前記第1の基板の前記液晶に面する側に形成された第1の電極と、
前記第2の基板の前記液晶に面する側に形成された第2の電極と、
前記第1の電極に形成された第1のスリットと、
前記第2の電極に形成され、基板面に垂直方向にみて、前記第1のスリットの延伸方向とほぼ直交する方向に延伸する第2のスリットと
を有することを特徴とする液晶表示装置。
【0058】
(付記2)
付記1記載の液晶表示装置において、
前記液晶は、
前記第1及び第2の電極に対して電圧無印加の時には、液晶分子が基板面に対してほぼ垂直に配向し、
電圧印加により前記液晶分子が傾斜する際には、前記第1及び第2のスリットにより配向方位が規制されること
を特徴とする液晶表示装置。
【0059】
(付記3)
付記1又は2に記載の液晶表示装置において、
前記第1の電極は、画素領域毎に形成された画素電極であり、
前記第2の電極は、複数の前記画素領域を含む表示領域に形成された共通電極であること
を特徴する液晶表示装置。
【0060】
(付記4)
付記3記載の液晶表示装置において、
前記画素電極は長方形形状であり、
前記第1のスリットの延伸方向は、前記画素電極の長辺方向であること
を特徴とする液晶表示装置。
【0061】
(付記5)
付記1乃至4のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
基板面に垂直方向にみて、前記第1及び第2のスリットにより画定される前記第1及び第2の電極の重なり領域は、ほぼ正方形形状であること
を特徴とする液晶表示装置。
【0062】
(付記6)
付記1乃至5のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
前記第1の基板の前記液晶に面する側と反対側に配置された第1の偏光素子と、
前記第2の基板の前記液晶に面する側と反対側に配置され、前記第1の偏光素子の吸収軸とほぼ直交するように吸収軸が配置された第2の偏光素子と
を有することを特徴とする液晶表示装置。
【0063】
(付記7)
付記6記載の液晶表示装置において、
前記第1の基板と前記第1の偏光素子との間に配置された第1の1/4波長板と、
前記第2の基板と前記第2の偏光素子との間に配置された第2の1/4波長板と
を有することを特徴とする液晶表示装置。
【0064】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によれば、製造歩留まりが向上し、広視野角および高輝度で良好な表示品質が得られる液晶表示装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による液晶表示装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態による液晶表示装置の等価回路を模式的に示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態による液晶表示装置の電極構造の概略を示す図である。
【図4】本発明の一実施の形態による液晶表示装置の電極構造による駆動状態を示す図である。
【図5】本発明の一実施の形態による液晶表示装置の他の電極構造による駆動状態を示す図である。
【図6】本発明の一実施の形態による液晶表示装置における偏光素子と1/4波長板の配置関係を示す図である。
【図7】本発明の一実施の形態による液晶表示装置の他のl電極構造の概略を示す図である。
【図8】MVA−LCDのTFT基板の概略の構成を示す図である。
【図9】負の誘電率異方性を有する液晶分子に電圧を印加した際の動作を説明する図である。
【符号の説明】
2 TFT基板
4 CF基板
10、110 TFT
12、112 ゲートバスライン
14、114 ドレインバスライン
16、116 画素電極
18、118 蓄積容量バスライン
20、26 電極部
22、28 スリット
24 共通電極
30、32 1/4波長板
80 ゲートバスライン駆動回路
81 ドレインバスライン駆動回路
83、84 偏光板
85 バックライトユニット
122 ドレイン電極
124 ソース電極
130 枝部
132 スリット
Lc 液晶分子

Claims (4)

  1. 所定のセルギャップで対向配置される第1及び第2の基板と、
    前記第1及び第2の基板間に封止された液晶と、
    前記第1の基板の前記液晶に面する側に画素領域毎に形成され、各々が接続電極で電気的に接続された複数の長方形状の電極部を有する画素電極と、
    前記画素電極に接続されて前記画素領域毎に形成されたTFTと、
    前記第2の基板の前記液晶に面する側の複数の前記画素領域を含む表示領域に形成され、各々が接続電極で電気的に接続された複数の長方形状の電極部を有して前記画素電極との間に電圧が印加される共通電極と、
    前記画素電極の隣り合う前記電極部間に形成されて、前記液晶の液晶分子が傾斜する配向方位を規制する第1のスリットと、
    前記共通電極の隣り合う前記電極部間に形成され、基板面に垂直方向にみて、前記第1のスリットの延伸方向とほぼ直交する方向に延伸して前記液晶分子が傾斜する配向方位を規制する第2のスリットと
    を有することを特徴とする液晶表示装置。
  2. 請求項1記載の液晶表示装置において、
    前記液晶は、
    前記第1及び第2の電極に対して電圧無印加の時には、液晶分子が基板面に対してほぼ垂直に配向し、
    電圧印加により前記液晶分子が傾斜する際には、前記第1及び第2のスリットにより配向方位が規制されること
    を特徴とする液晶表示装置。
  3. 請求項記載の液晶表示装置において、
    前記画素電極は長方形形状であり、
    前記第1のスリットの延伸方向は、前記画素電極の長辺方向であること
    を特徴とする液晶表示装置。
  4. 請求項1乃至のいずれか1項に記載の液晶表示装置において、
    基板面に垂直方向にみて、前記第1及び第2のスリットにより画定される前記第1及び第2の電極の重なり領域は、ほぼ正方形形状であること
    を特徴とする液晶表示装置。
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