以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下においては、X−Yアドレス型の固体撮像装置の一例である、CMOS撮像素子をデバイスとして使用した場合を例に説明する。また、CMOS撮像素子は、全ての画素がNMOSよりなるものであるとして説明する。
ただしこれは一例であって、対象となるデバイスはMOS型の撮像デバイスに限らない。光や放射線などの外部から入力される電磁波に対して感応性をする単位構成要素をライン状もしくはマトリクス状に複数個配列してなる物理量分布検知用の半導体装置の全てに、後述する全ての実施形態が同様に適用できる。
<固体撮像装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るCMOS固体撮像装置の概略構成図である。この固体撮像装置1は、カラー画像を撮像し得る電子スチルカメラとして適用されるようになっており、たとえば、静止画撮像モード時には、全画素を順番に読み出すモードが設定されるようになっている。
固体撮像装置1は、入射光量に応じた信号を出力する受光素子を含む画素が行および列に配列された(すなわち2次元マトリクス状の)撮像部を有し、各画素からの信号出力が電圧信号であって、CDS(Correlated Double Sampling ;相関2重サンプリング)処理機能部が列ごとに設けられたカラム型のものである。すなわち、図1(A)に示すように、固体撮像装置1は、複数の単位画素3が行および列に配列された画素部(撮像部)10と、画素部10の外側に設けられた駆動制御部7と、CDS処理部(カラム回路)26とを備えている。駆動制御部7としては、たとえば、水平走査回路12と垂直走査回路14を備える。
図1(A)では、簡単のため行および列の一部を省略して示しているが、現実には、各行や各列には、数十から数千の画素が配置される。また、駆動制御部7の他の構成要素として、水平走査回路12、垂直走査回路14、およびCDS処理部26に所定タイミングのパルス信号を供給するタイミングジェネレータ20が設けられている。これらの駆動制御部7の各要素は、画素部10とともに、半導体集積回路製造技術と同様の技術を用いて単結晶シリコンなどの半導体領域に一体的に形成され、半導体システムの一例である固体撮像素子(撮像デバイス)として構成される。画素部10の各単位画素3は、デバイス全体の基準電圧を規定するマスタ基準電圧としての接地(GND)に接続されている。
タイミングジェネレータ20は、垂直ドレイン線57を駆動するための複数の制御パルスを生成するパルス信号生成部を備えた、本発明に係る駆動制御部の一実施形態である。このパルス信号生成部のみを備えることで、本発明に係る駆動制御装置として構成してもよい。いわゆる、タイミングジェネレータ用の半導体集積回路(IC;Integrated Circuit)とするなどである。
タイミングジェネレータ20は、画素部10や水平走査回路12など、他の機能要素とは独立して、別の半導体集積回路として提供されてもよい。この場合、画素部10や水平走査回路12などから成る撮像デバイスとタイミングジェネレータ20とにより、撮像装置が構築される。この撮像装置は、周辺の信号処理回路や電源回路なども組み込まれた撮像モジュールとして提供されてもよい。
単位画素3は、垂直列選択のための、垂直制御線15を介して垂直走査回路14と、垂直信号線19を介してCDS処理部26と、それぞれ接続されている。ここで、垂直制御線15は垂直走査回路14から画素に入る配線全般を示す。たとえば図16(B)の画素においては、転送配線55とリセット配線56や、ドレイン線が垂直走査回路14から入る場合には、ドレイン線も含む。
水平走査回路12や垂直走査回路14は、たとえばデコーダを含んで構成され、タイミングジェネレータ20から与えられる駆動パルスに応答してシフト動作(走査)を開始するようになっている。このため、垂直制御線15には、単位画素3を駆動するための種々のパルス信号(たとえば、リセットパルスRST、転送パルスTRG、DRN制御パルスDRNなど)が含まれる。
なお、タイミングジェネレータ20に加えて、水平走査回路12や垂直走査回路14を含んで、本発明に係る駆動制御装置として構成してもよい。この場合、たとえば垂直走査回路14内には、タイミングジェネレータ20により生成された、垂直ドレイン線57を駆動するための複数の制御パルスに基づき、レベルの異なる複数の制御パルスの組合せによって段階的にレベルが遷移する多値パルスを生成する多値レベルパルス生成部を設けるのがよい。
カラム回路としてのCDS処理部26は、列ごとに設けられており、1行分の画素の信号を受けて、その信号を処理する。たとえば、タイミングジェネレータ20から与えられるサンプルパルスSHPとサンプルパルスSHDといった2つのサンプルパルスに基づいて、垂直信号線19を介して入力された電圧モードの画素信号に対して、画素リセット直後の信号レベル(ノイズレベル)と信号レベルとの差分をとる処理を行なう。これにより、固定パターンノイズ(FPN;Fixed Pattern Noise )やリセットノイズといわれるノイズ信号成分を取り除く。なお、CDS処理部26の後段には、必要に応じてAGC(Auto Gain Control) 回路やADC(Analog Digital Converter)回路などをCDS処理部26と同一の半導体領域に設けることも可能である。
水平走査回路12は、水平方向の読出列を規定する(CDS処理部26内の個々のカラム回路を選択する)水平デコーダ12aと、水平デコーダ12aにて規定された読出アドレスに従って、CDS処理部26の各信号を水平信号線18に導く水平駆動回路12bとを有する。垂直走査回路14は、垂直方向の読出行を規定する(画素部10の行を選択する)垂直デコーダ14aと、垂直デコーダ14aにて規定された読出アドレス上(行方向)の単位画素3に対する制御線にパルスを供給して駆動する垂直駆動回路14bとを有する。
なお、垂直デコーダ14aは、信号を読み出す行の他に、電子シャッタ用の行なども選択する。タイミングジェネレータ20は、水平アドレス信号を水平デコーダ12aへ、また垂直アドレス信号を垂直デコーダ14aへ出力し、各デコーダ12a,14aは、それを受けて対応する行もしくは列を選択する。
CDS処理部26により処理された電圧信号は、水平走査回路12からの水平選択信号により駆動される図示しない水平選択スイッチを介して水平信号線18に伝達され、さらに出力バッファ28に入力され、この後、撮像信号S0として外部回路100に供給される。つまり、カラム型の固体撮像装置1においては、単位画素3からの出力信号(電圧信号)が、垂直信号線19→CDS処理部26→水平信号線18→出力バッファ28の順で出力される。その駆動は、1行分の画素出力信号は垂直信号線19を介してパラレルにCDS処理部26に送り、CDS処理後の信号は水平信号線18を介してシリアルに出力するようにする。垂直制御線15は、各行の選択を制御するものである。
垂直列や水平列ごとの駆動が可能である限り、それぞれのパルス信号を単位画素3に対して行方向および列方向の何れに配するか、すなわちパルス信号を印加するための駆動クロック線の物理的な配線方法は自由である。
固体撮像装置1の外部回路100としては、各撮影モードに対応した回路構成が採られる。たとえば、図1(B)に示すように、出力バッファ28から出力されたアナログの撮像信号S0をデジタルの撮像データD0に変換するA/D(Analog to Digital )変換部110と、A/D変換部110によりデジタル化された撮像データD0に基づいてデジタル信号処理を施すデジタル信号処理部(DSP;Digital Signal Processor)130とを備える。
デジタル信号処理部130は、たとえば色分離処理を施してR(赤),G(緑),B(青)の各画像を表す画像データRGBを生成し、この画像データRGBに対してその他の信号処理を施してモニタ出力用の画像データD2を生成する。また、デジタル信号処理部130には、記録メディアに撮像データを保存するための信号圧縮処理などを行なう機能部が備えられる。
また外部回路100は、デジタル信号処理部130にてデジタル処理された画像データD2をアナログの画像信号S1に変換するD/A(Digital to Analog )変換部136を備える。D/A変換部136から出力された画像信号S1は、図示しない液晶モニタなどの表示デバイスに送られる。操作者は、この表示デバイスの表示画像を見ながら各種の操作を行なうことが可能になっている。
単位画素3は、その詳細については図示を割愛するが、従来技術の項にて図16(B)に示した3トランジスタ構成のものと同様となっている。ドレイン線57は、画素部10の大部分の画素に共通で、列方向に延びて画素部10の端で共通になっているか、または、電荷生成部32の上では穴が開いた格子状の配線である。ダミー画素など、ドレイン線57が別になっている画素が一部あってもよい。また、画素部10の周囲には、図示を割愛しているが、Pウェルの電位を与える配線とコンタクトが設けられている。
ドレイン線57は大部分または全部の画素に接続されているので、ドレイン線57をローに振るときに、画素部10のPウェルの電位が揺れ、周辺と中央で揺れ幅と時間が異なるため、中央で電荷生成部32から漏れる電荷が多くなり、中央の飽和信号電荷が減少する。つまり、従来技術の項で説明したように、このままでは、周辺部の画素と中心部の画素で特性が異なる、という問題を呈する。
図2〜図10は、上記画素ウェルがカップリングで揺れる問題とその対策アプローチを説明する図である。先ず図2は、画素ウェルがカップリングで揺れる問題と、これに起因した飽和シェーディングを具体的に説明する図である。デバイスとしては、約30万画素(640×480ピクセル)のVGA規格に準じるCMOSセンサを使用した。単位画素3は、従来技術の第2例で示した3トランジスタ構成のもので、画素ピッチは4.1μmである。なお、VGAとは、“Video Graphics Array”の略称であり、グラフィックス・モードや表示解像度を定義したものである。
試作デバイスに供給する電源電圧は3.0V、クロック周波数は6MHz(フレームレート13.3fps)とする。試作デバイスは、転送ゲート駆動電圧のローレベル(以下転送ゲートローレベルともいう)を可変にできるようになっており、さらに、ドレイン線57のローレベルの電位(ここでは0V)をデバイスの外部から供給する端子(DRN駆動バッファの接地側配線端子)DRNLを持つ。単位画素3に対するその他の駆動は0V(接地;GND)と電源電圧(3.0V)で行なう。
飽和シェーディングの測定方法としては、電荷生成部が十分飽和する光量を照射しながら、出力バッファ28にて得られる信号を、画面中心付近の1ラインをオシロスコープなどの波形モニタで観測し、周辺部分と中央部分との差をシェーディング量として測定することとした。図2に示すように、検証に用いた試作デバイスでは、周辺部分と中央部分とに大きな差が見られる。そして、中央部分での信号出力が周辺部分での信号出力よりも小さいことが分かる。
図3は、ドレイン線57の電圧変化を調べるための測定回路を示す図である。試作デバイスのDRN駆動バッファ140の接地側配線端子DRNLとGNDとの間に制御抵抗146を挿入して、この制御抵抗146の電圧を測定することとした。電圧源149は0Vとしている。なお、このDRN駆動バッファ140は、垂直走査回路14の垂直駆動回路14b内に設けられている。
DRN制御パルス(パルス形状のDRN制御信号)を、試作デバイスのDRN駆動バッファ140(図示せず)に入力した際、制御抵抗146で測定される電圧波形はDRN駆動バッファ140に流れる電流波形を反映したもので、ドレイン線57における電圧波形をも表す。
図4は、制御抵抗146を接地側配線端子DRNLとGNDとの間に挿入して、DRN制御パルスを鈍らせたときの、抵抗値と飽和シェーディングとの関係を示す図である。図中、転送ゲートのローレベル電圧をVtlで示す。測定に使用した抵抗値は、E12系列に則った、1,10,47,150,330,680,1000(単位はそれぞれΩ)である。
図4(A)に示すように、Vtl=−0.6Vの場合は、1Ω〜10Ωの範囲では飽和シェーディング量の変化が小さく、10Ω程度から飽和シェーディング量に変化の兆しが見られ、50Ω以上で大きな変化が見られる。つまり、制御抵抗146の抵抗値が10Ω程度よりも小さければ、現状のデバイスに影響を与えないということである。また10Ω程度以上にすれば、飽和シェーディングを小さくする効果が得られ、50Ω以上で有為な効果が得られるということである。
また、図4(B)に示すように、Vtl=−1Vの場合は、1Ω〜10Ωの範囲でも飽和シェーディング量に大きな変化が見られ、50Ω〜200Ωの範囲で最も小さく、それ以上になると(たとえば200Ω〜1000Ω程度までは)飽和シェーディング量が少し増える傾向にある。つまり、制御抵抗146の抵抗値が10Ω程度以上で飽和シェーディングを小さくする有為な効果が見え、50〜200Ω程度が最も良いと考えられる。
図5は、図4に示した結果を、制御抵抗146における電圧波形の立下り時間(オフ時の遷移時間)と飽和シェーディングとの関係で示した図である。CMOSセンサにおける駆動パルス形状は、転送配線55、リセット配線56、およびドレイン線57の何れについても、通常、立下り時間および立上り時間(オン時の遷移時間)を、数ns(たとえば1〜3ns)以下にする。よって、制御抵抗146に現れる電圧波形の立下り時間および立上り時間が、およそ数ns以下であれば、概ね、通常の条件にてデバイスが駆動されていると考えてよい。
図5(A)に示すように、Vtl=−0.6Vの場合は、1Ω〜10Ωの範囲に対応する立下り時間10ns(通常の3〜10倍程度以上)までは飽和シェーディング量の変化が小さく、10Ω程度に対応する10ns程度から飽和シェーディング量に変化の兆しが見られ、50Ω程度に対応する40ns以上で大きな変化が見られる。
つまり、立下り時間に着目すると、10ns程度よりも小さければ、現状のデバイスに影響を与えないということである。また、10ns程度以上にすれば、飽和シェーディングを小さくする効果が得られ、40ns以上で有為な効果が得られるということである。この効果は、立下り時間10000ns(通常の3000〜10000倍程度以下)まで継続している。
また、図5(B)に示すように、Vtl=−1Vの場合は、10ns〜40nsでも飽和シェーディング量に大きな変化が見られ、立下り時間40ns(通常の13〜20倍程度)以上で有為な効果が見え、特に抵抗値50〜200Ω程度に対応する170〜600〜1000ns(通常の56〜1000倍程度)の範囲で飽和シェーディング量が最も小さく、それ以上(たとえば1000ns〜5000ns程度までは;通常の330〜5000倍程度)になると飽和シェーディング量が少し増える傾向にある。
つまり、DRN電圧を鈍らせることで飽和シェーディングを改善することが可能で、立下り時間が40ns程度以上で飽和シェーディングを小さくする有為な効果が見え、170〜600ns程度(たとえば、通常の56〜600倍程度)が最も良いと考えられる。
このように、ローレベル電圧Vtlによって、効果の現れる範囲が異なるが、オフ時の遷移時間(本例では立下り時間)を、概ね、通常のものに対して、3〜10(平均で5倍程度)以上で10000(1万)倍以下の範囲で、さらに好ましくは、50〜600倍程度の範囲で、DRN電圧を鈍らせることで、飽和シェーディングを改善することが可能である。
図6〜図10は、Pウェル電位の揺れをシミュレーションで再現した結果を示す図である。それぞれ、制御抵抗146の値別に示している。なお、ここでシミュレーション結果を示しているのは、Pウェル電位の揺れを実測することは難しかったためである。各図におけるW1〜W4の波形線は、各図中に示した各デバイス位置でのものである。また、図6中に示すように、SEL_0の波形線は、DRN制御パルスのものを示し、VSS_Dの波形線は、実験で測定した端子におけるものである。
図示するように、制御抵抗146の値を大きくすると、ドレイン線57におけるDRN電圧の立下り時間が長くなり、Pウェル電位の揺れが小さくなり、中心部と周辺部での差も小さくなることが分かる。つまり、制御抵抗146の値を大きくすることや、DRN電圧の立下り時間を長くすることは、周辺部の画素と中心部の画素の特性を揃えることに繋がり、このことは、飽和シェーディングを改善する上で効果が高いことが分かる。
本実施形態の構成では、上記の解析結果に基づき、ウェル揺れに起因した問題を改善する手法として、DRN電圧を鈍らせることで飽和シェーディングなどを改善する構成を採る。具体的には、ドレイン線57をローに振るときの立下り時間を制御し、この飽和シェーディング現象を改善する仕組みを設ける。この仕組みについて簡単に説明すると、先ず、ドレイン線57をローに振るときに、立下り時間を長くして緩やかに立ち下げるという駆動方法を採る。
これにより、Pウェルの電位の振れ幅を小さくすることができ、あるいは、画素部10の周辺と中心のPウェル電位差を小さくすることができる。本実施形態の構成では、この立下り時間を、通常の駆動手法における場合よりも、有為に(意図的に)長くする。
制御抵抗146の値を大きくすると、ドレイン線57におけるDRN電圧の立下り時間が長くなり、Pウェル電位の揺れが小さくなり、中心部と周辺部での差も小さくなることが分かる。つまり、制御抵抗146の値を大きくすることや、DRN電圧の立下り時間を長くすることは、周辺部の画素と中心部の画素の特性を揃えることに繋がり、このことは、飽和シェーディングを改善する上で効果が高いことが分かる。
本実施形態の構成では、上記の解析結果に基づき、画素内の基板電位が揺れることに起因して生じる問題を改善する手法として、DRN電圧を鈍らせる構成を採る。具体的には、ドレイン線57をローに振るときの立下り時間やハイに振るときの立上り時間を、多値パルス駆動技術を利用して制御する仕組みを設ける。レベル間の切替タイミングは、制御抵抗146の抵抗値によって電圧応答を変化させるのと同じ考え方に基づき、対局的に見たときに、制御抵抗146の抵抗値による応答変化と同程度の変化を与え得るように調整すればよい。
この仕組みについて簡単に説明すると、先ず、ドレイン線57をローに振るときに、ドレインを駆動するパルス電圧を、段階的に小さくすることで、大局的に見たときに、垂直ドレイン線57における駆動電圧の立下り時間を長くして緩やかに立ち下げるという駆動方法を採る。
これにより、Pウェルの電位の振れ幅を小さくすることができ、あるいは、画素部10の周辺と中心のPウェル電位差を小さくすることができる。本実施形態の構成では、この立下り時間を、通常の駆動手法における場合よりも、有為に(意図的に)長くする。
「立下り時間を、通常の駆動手法における場合よりも、有為に長くする」際の定義手法としては、通常の駆動手法における駆動パルスの立下り時間に対する割合(倍数)で規定する方法や、画素数(より具体的には駆動周期)との対応における立下り時間の割合で規定する方法、またはPウェルの周辺部と中央部との電位差が所定レベル(画質劣化が目立たないレベル)以下となる時間として定義する手法、など様々な定義手法が考えられる。
また、通常の駆動手法における駆動パルスの立下り時間に対する割合(倍数)で規定する場合、自身の通常の駆動におけるDRN電圧の立下り時間との比較に限らず、他の駆動パルスとの比較で規定してもよい。たとえば、DRN電圧の立下り時間が、転送配線やリセット配線の立下り時間の何れよりも所定倍数以上長くなるように、各配線を駆動するバッファの大きさを決めてもよい。
また、選択画素を非選択状態に復帰させる動作はブランキング期間内にDRN制御パルスをローレベルにすることで行なわれる。駆動周期との対応における立下り時間の割合で規定する場合、その最大値の規定の仕方が問題になるが、たとえばその最大値をDRN制御パルスのローレベル期間で規定し、この範囲内で実際の立下り時間を規定するとよい。本実験のCMOSセンサであれば、DRN制御パルスのローレベル期間(すなわちドレイン線57に対するオフ期間)は、600ns程度に設定している。
なお、立下り時間がドレイン線57に対するオフ期間以上となるように設定することを排除するものではなく、本実験でも600ns以上の立下り時間は測定データの補外曲線から求めたものであるが、この場合には、選択画素を非選択状態に復帰させるだけの低い電圧までは到達することが要求される。
何れにしても、周辺部の画素と中心部の画素で特性が異なるという問題や、その原因がPウェル電位差に起因するものであるという点を発見し、この問題を解消するべく、本実施形態のアプローチによる手法は、Pウェル電位差に起因する画質劣化(飽和シェーディング現象)が目立たないレベルにその立下り時間を設定するという点に特徴を有する。
たとえば、図2〜図10に示した結果に基づき、画素部10の他のパルスである転送パルスTRGとリセットパルスRSTの各立下り時間と比べて10倍以上長い立下り時間を与える。たとえば、CMOSセンサの他の部分でのパルス形状は、立下り時間がおよそ数ns以下であるが、これをドレイン線57でのDRN電圧は40ns(ナノ秒)以上となるようにする。この40nsというのは、VGA(約30万画素)のCMOSセンサから30フレーム/秒で画像を出力する場合における画素クロック周期の約半分の期間である。ここでは、VGA準拠のCMOSセンサの場合で示したが、他の表示解像度のものでも、画素クロック周期の約半分の期間以上であればよいと考えられる。
表示解像度すなわち総画素数が異なれば、当然のことながら、それに応じ、立下り時間の絶対量も異なる。なおここで、立下り時間としては、一般的な定義、すなわちハイレベルを100、ローレベルを0として、90から10まで遷移する時間ということでよい。
同様のことは、立上りの遷移時にも言えることであり、ドレイン線57をハイに振るときに、垂直ドレイン線57を駆動するパルス電圧を段階的に大きくすることで、大局的に見たときに、垂直ドレイン線57における駆動電圧の立上り時間を長くして緩やかに立ち上げるという駆動方法を採る。これにより、Pウェルの電位の振れ幅を小さくすることができる。本実施形態の構成では、この立上り時間を、通常の駆動手法における場合よりも、有為に(意図的に)長くする。
「立上り時間を、通常の駆動手法における場合よりも、有為に長くする」際の定義手法も、「立下り時間」の定義手法に準じて考えればよい。たとえば、通常の駆動手法における駆動パルスの立上り時間に対する割合(倍数)で規定する方法や、画素数(より具体的には駆動周期)との対応における立上り時間の割合で規定する方法、あるいはPウェルの周辺部と中央部との電位差が所定レベル(画質劣化が目立たないレベル)以下となる時間として定義する手法、など様々な定義手法が考えられる。
以下、画素内の基板電位が揺れることに起因して生じる問題を改善する手法の具体的な事例について説明する。
図11は、多値パルス駆動によって、ドレイン線57に印加される駆動電圧の立下り時間や立上り時間を制御する方法の基本を説明する図である。ここでは、3値駆動を例示している。
先ず図11(A)は、単位画素3を駆動する基本構成の回路図を示す。図示するように、3TR構成の単位画素3は、光電変換を行なうことで受光した光に対応する信号電荷を生成する光感応素子としての埋込フォトダイオードなどからなる電荷生成部32と、電荷生成部32により生成された信号電荷に対応する信号電圧を増幅するための、ドレイン線(DRN)に接続された増幅用トランジスタ42と、電荷生成部32をリセットするためのリセットトランジスタ36とを、それぞれ有している。
また、転送配線(TRG)55を介して走査される読出選択用トランジスタ(転送ゲート部)34が、電荷生成部32と増幅用トランジスタ42のゲートとの間に設けられている。この読出選択用トランジスタ34は、電荷生成部32で生成された信号電荷をノードとしてのフローティングディフュージョン38へ転送するためのスイッチとして機能するものである。
転送配線(TRG)55は、図1に示した垂直走査回路14の垂直駆動回路14bより駆動されるが、本実施形態においては、垂直駆動回路14bの転送駆動バッファ150の後段にフローティングスイッチSW153を設け、このフローティングスイッチSW153を介して転送駆動バッファ150と転送配線55とが接続されるようにしている。フローティングスイッチSW153は、その制御端子にハイレベルが供給されることでオンするようになっている。
なお、本実施形態の特徴部分である、垂直ドレイン線57に対して多値パルス駆動を行なうという点においては、このフローティングスイッチSW153は、必須の構成要素ではなく、転送配線55と転送駆動バッファ150とを直接に接続した構成としてもよい。
フローティングスイッチSW153は、読出選択用トランジスタ34のゲートと転送駆動バッファ150の出力とを切り離すことで転送配線55をフローティングにするためのスイッチとして機能する。このフローティングスイッチSW153を設けた理由は以下の通りである。
垂直ドレイン線57をハイレベルからローレベルに遷移させるとPウェルが負の方向に引っ張られる。これにより、電荷生成部32のフォトダイオード下の電位も、ポテンシャル図で言うと、負の方向に押し上げられる。ここで、フォトダイオードと転送ゲートTRGとしての読出選択用トランジスタ34下の電位の上がり方の差はフォトダイオードの方が大きいので、結果として、フォトダイオードの信号電荷がフローティングディフュージョン38へ溢れ出す。信号電荷の漏れは、飽和電荷量の減少、固定パターンノイズ、あるいはシェーディングの発生要因となる。
そこで、転送ゲートTRG(読出選択用トランジスタ34)をフローティングにすると、負荷が軽くなり、転送ゲートTRGのポテンシャルもフォトダイオードと同様にポテンシャルが押し上げられるので、信号電荷はフォトダイオードからフローティングディフュージョン38へは漏れ出さなくなる。
つまり、3TR構成の単位画素3を駆動したときに、画素ウェル電位が揺れることによって発生する、電荷生成部32からの信号電荷の漏れを低減することが可能となる。これにより、飽和電荷量の減少、固定パターンノイズ、あるいはシェーディングの発生を抑制することが可能となり、画素サイズが小さい3TR構成の単位画素3を備えてなるCMOSイメージセンサにおいても、低ノイズで、飽和電荷量の大きいセンサを作成することができるようになる。
増幅用トランジスタ42のゲートおよびリセットトランジスタ36のソースは読出選択用トランジスタ34を介して電荷生成部32に、リセットトランジスタ36のドレインおよび増幅用トランジスタ42のドレインはドレイン線57に、それぞれ接続されている。また、増幅用トランジスタ42のソースは垂直信号線53に接続されている。
読出選択用トランジスタ34は、転送配線55を介して転送駆動バッファ150により駆動されるようになっている。リセットトランジスタ36は、リセット配線56を介してリセット駆動バッファ152により駆動されるようになっている。転送駆動バッファ150およびリセット駆動バッファ152ともに、基準電圧である0Vと電源電圧の2値で動作する。特に、この画素における従来例の読出選択用トランジスタ34のゲートに供給されるローレベル電圧は0Vである。
一方、選択行を決めるための選択信号線SELとして機能する垂直ドレイン線57は、基本的には、全画素共通の配線にする。ただし、DRN駆動バッファ140の負荷を軽減するため幾つかに分けて駆動する形態を採ることもある。
そして、この垂直ドレイン線57を駆動するDRN駆動バッファ140は、本実施形態特有の構成として、3値以上の多値レベルの駆動パルスで駆動されるようにする。
図11(B)は、DRN駆動バッファ140を駆動するDRN制御パルスDRNすなわち垂直ドレイン線57を駆動する信号や、転送ゲートTRGとしての読出選択用トランジスタ34を駆動する転送パルスTRGおよびリセットトランジスタ36を駆動するリセットパルスRSTのタイミング例を示したタイミングチャートである。
先ず、フローティングディフュージョン38の電荷をリセットするため、転送パルスTRG(ローレベル)を転送駆動バッファ150に供給することで転送配線55をロー(Low)レベルに下げておき、同時にリセットパルスRSTを入れて(t10〜t22)、リセットトランジスタ36をアクティブにすることでフローティングディフュージョン38をリセットする。
次にリセットトランジスタ36がアクティブの期間(t10〜t20)に、選択信号線SELとして機能する垂直ドレイン線57を駆動するDRN駆動バッファ140に、DRN制御パルスDRNを3値で段階的にローレベルに下げ、この後3値で段階的にハイレベルに上げる(t10〜t18)。
このようにして垂直ドレイン線57に3値パルスを段階的に供給することでPウェル電位の揺れを抑えるようにした後、リセットトランジスタ36をインアクティブにし(t20)、転送パルスTRG(ハイレベル)を転送駆動バッファ150に供給することで読出選択用トランジスタ34をアクティブにする(t24〜t26)。
読出選択用トランジスタ34をアクティブにする際には、転送駆動バッファ150と転送配線55とが接続されていて転送パルスTRGが読出選択用トランジスタ34のゲートに伝達される必要があるので、転送駆動バッファ150に転送パルスTRG(ハイレベル)を供給する前にはフローティングスイッチSW153をオンにしておく(t22)。
逆に言えば、それ以前は、フローティングスイッチSW153をオフにしておく。こうすることで、通常であれば、選択信号線SELとして機能する垂直ドレイン線57がオフ→オンと(つまり上下に)動くときに、Pウェル電位の揺れが大きく見られるけれども、フローティングスイッチSW153を切り、転送ゲートとしての読出選択用トランジスタ34のゲートをフローティングにすることで、Pウェル電位の揺れを低減する。垂直ドレイン線57を3値パルスで段階的に駆動することでPウェル電位の揺れを低減することと相俟って、Pウェル電位の揺れ低減効果が飛躍的に向上する。
フローティングスイッチSW153をオンにして(t22)、転送駆動バッファ150に転送パルスTRG(ハイレベル)を供給することで(t24〜t26)、電荷生成部32で得られる画素の情報(信号電荷)をフローティングディフュージョン38へ送り、増幅用トランジスタ42により電荷情報を垂直信号線53に読み出す。
信号電荷を読み出した後には、転送配線55をフローティングにするため、フローティングスイッチSW153をオフにする(t28)。
ここで、垂直ドレイン線57を駆動する3値のレベルとしては、たとえば、従来0V(オフ時)/3V(オン時)の2値で駆動していたデバイスに対しては、たとえば、ローレベル=0V,ミドルレベル=1V,ハイレベル=3Vで駆動する。こうすることで、オンからオフへの遷移時には3V→1V→0Vへと電圧が次第に変化するように駆動できる。オフからオンへの遷移時にも同様であり0V→1V→3Vへと電圧が次第に変化するように駆動できる。大局的に見れば、漸次変化するように垂直ドレイン線57を駆動できる。
ここでは、3V→1V→0Vや0V→1V→3Vへの切替タイミングは、概ね“1T”で均等にしている。これにより、大局的に見た場合には、オフ時やオン時の遷移時間が、リセット配線および転送配線を駆動する際の電圧応答における各オフ時やオン時の遷移時間の何れよりも遅くすることができ、たとえば5倍以上でかつ1万倍以下、さらに好ましくは50〜600倍の範囲なるように、ドレイン配線の駆動電圧を鈍らして駆動することができる。
たとえば、DRN駆動バッファ140から出力されドレイン線57を駆動するDRN電圧のパルス形状は、立下り時間がたとえば40ns以上とすることができる。そして、このような駆動を行うことによって、Pウェル電位の揺れを緩和することが可能となる。
オンからオフへの遷移時だけでなく、オフからオンへの遷移時にも緩やかにと立ち上げることで、オフからオンへの遷移時にもPウェル電位の揺れを防止できる。たとえば、立上り側は、飽和電子数には影響しない。しかしPウェルを揺らし、しかも周辺と中央で異なる点では立下りと同様である。
また、画素内に低電圧のN型拡散層がある場合には、そこがPウェルと順バイアスになり、Pウェル中に電子が注入され、それが電荷生成部32に入ってしまう危険性がある。よって、時間が許せば、立ち上がりも緩やかになるように駆動することが好ましい。ただし、垂直ドレイン線57がハイのときに画素の信号電流を流すので、問題となるほどの電圧低下を起こさない程度にする必要がある。
図12は、DRN駆動バッファ140を駆動するDRN制御パルスDRNすなわち垂直ドレイン線57を駆動する信号の他のタイミング例を示したタイミングチャートである。
図11(B)に示した例では、3V→1V→0Vや0V→1V→3Vへの切替タイミングを概ね均等にしていたが、図12(A)に示す例では、切替タイミングを不均等(立下り時と立上り時とで非対称)に調整している。たとえば比で表したとき、オフへの遷移時には3V→1Vへの遷移を“1T”、1V→0Vへの遷移を“2T”としつつ、オンへの遷移時には、1V→0Vへの遷移を“1T”としている。
こうすることで、オフへの遷移は比較的遅く、オンへの遷移は比較的早くするようにしている。このことは、抵抗を利用して駆動したときの過渡応答として現れる駆動波形に近づける意義がある。切替タイミングの調整はタイミングジェネレータ20の制御で簡単に可能であるから、遷移過程すなわち垂直ドレイン線57へ印加される電圧変化を比較的自由に設定することができる。
図12(B)に示す例では、3値駆動に代えて、4値駆動にした例を示している。ここでは、0V,1V,2V,3Vの4値で駆動する場合を示しており、オンからオフへの遷移時には、3V→2V→1V→0Vへと電圧が順に変化するように駆動するとともに、オフからオンへの遷移時には、0V→1V→2V→3Vへと電圧が順に変化するように駆動し、切替タイミングを均等に調整している。
また、図12(C)に示す例も、3値駆動に代えて、0V,1V,2V,3Vの4値駆動にした例を示しているが、オンからオフへの遷移時には、3V→2V→1V→0Vへと電圧が順に変化するように駆動する一方で、オフからオンへの遷移時には、0V→2V→3Vへと切り替えることで、オフへの遷移時とオンへの遷移時とで切替タイミングを不均等に調整している。
こうすることで、オンへの遷移時には、比較的電圧が早く上昇するように駆動することができる。これにより、オフからオンへの遷移時にPウェル電位の揺れを防止できるとともに、比較的速く立ち上げることで画素信号電流の読出しに悪影響を与え難くすることができる。
3値ではなく4値にしたことで、使用できる電圧レベルが増える分、電圧変化を緩和することができるとともに、オフへの遷移時とオンへの遷移時のパルス電圧の設定値を異なるものと(非対称に)することで、遷移過程における波形応答を微細に調整することもできる。図12(A)に示した例よりも、さらに抵抗を利用して駆動したときの過渡応答として現れる駆動波形に近づけることができる。
5値以上のパルス駆動にすればさらに自由度が増すのは言うまでもない。ただしDRN駆動バッファ140の出力応答が追従しなければ、段階的に垂直ドレイン線57の電圧レベルを変化させることにはならず、実質的には連続的に電圧を変化させることとなる。よって、極端にレベル数を増やすことは無駄になるので、この点を勘案して段階数を設定すればよい。
図13は、多値パルスを使用してドレイン線57に印加される駆動電圧の立下り時間や立上り時間を制御する遷移時間制御方法をデバイスに適用した事例を示す図である。
ここで、図13(A)はドレイン線57を駆動する回路に着目した概念図、図13(B)はドレイン線57を駆動するDRN駆動バッファ(以下単にバッファともいう)140近傍の詳細例を示した図、図13(C)は駆動タイミングの一例を示す図である。
図13(A)に示すように、画素部10の各列に対応してドレイン線57が列方向に延びており、下端でDRN駆動バッファ(以下単にバッファともいう)140を包含した出力IF(インタフェース)部143の出力端子に接続されている。出力IF部143は各列にあり、画素部10の外側からドレイン線57を駆動する3値レベルの制御パルス(DRN制御パルス)が印加される。これを受けて各出力IF部143は、各列のドレイン線57に対して同じ駆動をする。つまり、各列のドレイン線57は全画素に対して実質的に共通である。
図13(B)に示すように、3種類のドレイン制御パルスDRN1,DRN2,DRN3の供給を受けて、0V,1V,3Vの3つのレベルの多値レベルパルスを生成するレベルシフト部142を設け、ドレイン線57とレベルシフト部142との間にドレイン線57を駆動する出力IF部143を配している。出力IF部143は、3つのレベルに対応したそれぞれのDRN駆動バッファ140とスイッチを兼用した構成とされている。ドレイン制御パルスDRN1,DRN2,DRN3は、図1に示したタイミングジェネレータ20から供給される。
つまり、タイミングジェネレータ20は、複数のDRN制御パルスDRN1,DRN2,DRN3を生成するパルス信号生成部として機能するとともに、複数のDRN制御パルスの組合せを垂直走査回路14に供給することで、レベルの異なる複数のDRN制御パルスの組合せにより段階的にハイレベルからローレベルへ、またローレベルからハイレベルへと遷移する多値パルスを生成させ、この生成された多値パルスによって垂直ドレイン線57を駆動する駆動制御装置として機能している。
レベルシフト部142は、タイミングジェネレータ20からの複数のDRN制御パルスに基づき、レベルの異なる複数のDRN制御パルスの組合せによって、段階的にハイレベルからローレベルへ、またローレベルからハイレベルへと遷移する多値パルスを生成する多値レベルパルス生成部として機能している。
このように、多値レベルのDRN制御パルスを使用した垂直ドレイン線57の遷移時間制御方法をデバイスに適用することで、DRN駆動バッファ140を介して垂直ドレイン線57に印加されるDRN制御パルスの立下り時間や立上り時間をたとえば40ns以上とすることができる。これにより、Pウェル電位の揺れを緩和することで、画素部10の中心部で飽和電子数が少ないという飽和電荷量の減少問題を解決することができ、Pウェル電位差を実用レベルに低減することができ、飽和シェーディングや固定パターンノイズという画質劣化を抑制・改善することができる。
図14は、多値レベルのDRN制御パルスを使用した垂直ドレイン線57の遷移時間制御方法をデバイスに適用した他の事例(以下変形例という)を示す図である。図14に示すように、この変形例では、画素部10の横方向からドレイン線57を駆動する構成としている点に特徴を有する。画素部10の左右端部にて、DRN駆動バッファ140の出力端子に垂直ドレイン線57が接続されている。
ドレイン線57は、フォトダイオード(電荷生成部32)上では穴の開いた格子状の配線となっている。DRN駆動バッファ140は各行に設けられており、このDRN駆動バッファ140は、画素部10の外側からの3値以上の多値レベルのDRN制御パルスによって各行のドレイン線57に対して同じ駆動をする。
こうすることで、図13に示したと同様、ドレイン線57を駆動するパルス形状を、立下り時間が40ns以上にすることができ、各列にDRN駆動バッファ140を設ける構成のものと同様の効果を享受することができる。
なお、多値レベルのDRN制御パルスを使用した垂直ドレイン線57の遷移時間制御方法は、図13や図14に示したような構成の他に、画素部全面のドレイン線57を1個のDRN駆動バッファ140で駆動する構成にも適用できる。このような構成は、通常の設計では現実的に採用されないが、この第1例では採用できる。この場合、立下り時間を数ns以下とする従来の仕組みを採ったとすれば、DRN駆動バッファ140の負荷を考慮して、DRN駆動バッファ140に使用するバッファ最終段NMOSのW/L比を設定する必要がある。これに対して、本実施形態では、垂直ドレイン線57の遷移時間を緩やかにとすればよいので、W/L比の設定自由度も増す。
図15は、出力IF部143の詳細を説明する図である。図15(A)は、その一例を示しており、また図15(B)は、この一例におけるスイッチ回路の具体例を示している。レベルシフト部(SFT)142は、垂直駆動回路14b内に設けられる。
レベルシフト部142には、タイミングジェネレータ20から、駆動制御パルスとして、3種類のDRN制御パルスDRN1,DRN2,DRN3が入力される。タイミングジェネレータ20は、これら3種類のDRN制御パルスDRN1,DRN2,DRN3の相互間の出力タイミングを調整するタイミング調整部21を有している。
タイミング調整部21は、図示しない固体撮像装置1の全体の動作を制御する中央制御部からの指令に基づき、DRN制御パルスDRN1,DRN2,DRN3の出力タイミングを設定する。なお、中央制御部は、カメラ装置に備えられる操作パネルなどを介してユーザの指示を受けることで、このタイミング調整指示をタイミング調整部21に与える。たとえば、出力画像を確認しながら、飽和シェーディング量が少なくなるように調整することが可能となり、使い勝手が非常によい。
図15(A)に示す出力IF部143は、レベルシフト部142でレベルシフトされた3値のそれぞれに対応した個々のDRN制御パルスDRN1,DRN2,DRN3を入力とする3つのDRN駆動バッファ140(それぞれに参照子−1,−2,−3を付して示す)と、スイッチSW1,SW2,SW3を有するスイッチ回路を備えた構成となっている。つまり、レベルシフト後にバッファ140を介してスイッチSWを駆動する。各スイッチSW1,SW2,SW3の一方には対応する電圧0V,1V,3Vが入力され、他方は共通に接続されて垂直ドレイン線57に入力されるようになっている。
3つのスイッチSW1,SW2,SW3に、3値のそれぞれに対応した個々のDRN制御パルスDRN1,DRN2,DRN3をタイミングジェネレータ20からの入力とし、各スイッチSW1,SW2,SW3の出力を共通に接続してレベルシフト部142を構成し、各スイッチSW1,SW2,SW3の出力を1つのDRN駆動バッファ140に入力されるように構成することも考えられるが、DRN駆動バッファ140自体も個々のDRN制御パルスDRN1,DRN2,DRN3に従って動作させるのが好ましく、3つに分離している。
各スイッチSW1,SW2,SW3としては、たとえば図15(B)に示すように、MOSトランジスタを用いた簡単なものでよく、回路構成が非常に簡単になる。ただし、MOSトランジスタは垂直ドレイン線57を駆動するものであるから、十分な駆動能力を有する大きめのものを使用する。
なお、スイッチSW1としては、アクティブHのパルスを受けてオンするn−MOSを使用し、スイッチSW2,SW3としては、アクティブLのパルスを受けてオンするp−MOSを使用する。何れも、電源電圧範囲0−3Vで問題が生じないように各端子を図のように配線しておく。
各スイッチSW1,SW2,SW3は、ドライバとしても機能するが、その駆動能力は、スイッチの素子サイズ(トランジスタの大きさ)によって変えることができる。
以上説明したように、本実施形態のように、多値レベルのDRN制御パルスを使用して垂直ドレイン線57の遷移時間を制御することとすれば、駆動電圧の立下り時間や立上り時間を積極的に(意図的に)長くすることができる。そしてこれにより、選択トランジスタのない3トランジスタタイプの画素構造であっても、ウェル電位が揺れることによって生じ得る、画素部中央部での飽和電子数の低下を防ぐことができる。この結果、Pウェル電位差に起因する固定パターンノイズや飽和シェーディングなど画質劣化を実用上目立たないレベルにすることができ、画質が改善されるようになる。
たとえば、デバイス側は従来のものと同様の3TR構成の単位画素を有するものを使用しつつ、DRN駆動バッファ140に入力する駆動信号の波形を、上述した条件を満たすように鈍らせて入力する構成とすることも考えられる。しかしながらこの場合、タイミングジェネレータ20から供給される駆動パルスを上述した条件を満たすように鈍らせる波形整形回路を設ける必要があり、鈍らせる度合いを自由に調整することは難しい。
これに対して本実施形態のように、多値レベルのDRN制御パルスを使用することで、対局的に見たときに垂直ドレイン線57の電圧波形が上述した条件を満たすようにしているので、デバイス側は従来のものと同様の3トランジスタ構成の単位画素を有するものを使用することができるとともに、タイミングジェネレータ20の制御によって遷移時間の調整も自由に可能となり、使い勝手がよい。
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
また、上記の実施形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の発明を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
たとえば、上記実施形態では、NMOSより構成されている単位画素で構成されたセンサを一例に説明したが、これに限らず、PMOSよりなる画素のものについても、電位関係を反転(電位の正負を逆に)して考えることで、上記実施形態で説明したと同様の作用・効果を享受可能である。
また、上記実施形態では、フォトダイオード1個と、トランジスタ3個の画素を例に説明したが、これに限らず、2個のフォトダイオードと2個の読出選択用トランジスタに対して、リセットトランジスタと増幅用トランジスタは1個ずつで共有するなど、原理的に、4TR構成において画素選択のために用いられている選択トランジスタを省略した構成の単位画素を備えたデバイスについても同様である。
また、上記においては、実験的に最も影響の大きかった飽和シェーディングに注目したが、画素部の中心部と周辺部でウェルの電位が異なる揺れ方をすると、飽和信号量以外の特性もシェーディングを持つことは自明である。ドレイン線を駆動する立下り時間や立上り時間を鈍らせることは、ウェルの電位の揺れを低減し、かつ均一に近づけるので、飽和信号量以外のシェーディング現象の改善にもなっている。
1…固体撮像装置、3…単位画素、5…画素信号生成部、7…駆動制御部、10…画素部、100…外部回路、110…A/D変換部、12…水平走査回路、12a…水平デコーダ、12b…水平駆動回路、14…垂直走査回路、14a…垂直デコーダ、14b…垂直駆動回路、15…垂直制御線、20…タイミングジェネレータ、21…タイミング調整部、26…CDS処理部、28…出力バッファ、32…電荷生成部、34…読出選択用トランジスタ、36…リセットトランジスタ、38…フローティングディフュージョン、40…垂直選択用トランジスタ、42…増幅用トランジスタ、51…画素線、52…垂直選択線、53…垂直信号線、55…転送配線、56…リセット配線、57…垂直ドレイン線、130…デジタル信号処理部、136…D/A変換部、140…DRN駆動バッファ、142…レベルシフト部、143…出力IF部、150…転送駆動バッファ、152…リセット駆動バッファ、154…選択駆動バッファ