JP4431920B2 - 低摩耗構造体 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、被覆層を有する有機材料或いは無機材料の構造体の動摩擦係数が0.5以下である耐擦傷性・耐摩耗性に優れた低摩擦構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年,材料の多様化に伴い、材料表面の耐擦傷性・耐摩耗性は、単なる付加価値としてではなく製品本来の機能発現、寿命といった観点から必要不可欠な機能である場合も少なくない。耐擦傷性・耐摩耗性を付加するために材料面、構造体の設計・加工面から様々な検討がなされている。材料面からは、目的に応じて耐擦傷性、耐摩耗性に優れた材料を選択する場合もあるが、目的とする構造体表面に耐擦傷性・耐摩耗性に優れたコーティング剤を塗布し保護膜を形成する方法は非常に簡便であるためしばしば用いられる。例えば、パソコン、携帯電話、ビデオ等の液晶ディスプレイ、各種スクリーン、タッチパネル、ハードディスク、各種電気・電子部品、各種フィルム・シート等に使用される金属、ガラス、セラミックス或いはプラスチックスでも比較的硬い基材に対する保護膜、さらにはOA機器内で用いる帯電ロール、現像ロール、転写ロール、定着ロール、中間転写ベルト等の基材となるゴム、靴、家具、衣料、各種内装材、農ビ等の基材となる合成皮革、人工皮革、軟質塩ビのように比較的柔らかい基材に対する保護膜が挙げられる。これら保護膜は,用途によりその要求される特性は若干異なるが,耐擦傷性・耐摩耗性を実現するために,保護膜表面の動摩擦係数を低下させることは有効な手段の一つである。
【0003】
従来より、耐擦傷性・耐摩耗性の向上を目的とした保護膜としては、主に紫外線、電子線硬化型の高Tg、高架橋密度ポリマー、ソル−ゲル法等により形成される有機・無機ハイブリッド材料等のように高い表面硬度を有するいわゆるハードコート剤が数多く提案され実用化されている。しかし、これらのハードコート剤は金属、ガラス、或いは比較的硬いプラスチックスに対しては有効であるが、ゴム、軟質塩ビ、熱可塑性ウレタン等のように柔らかい基材に対しては、皮膜の割れが発生し適用し難い。
【0004】
一方、フッ素、シリコーンを含有する化合物は、高耐候性、撥水・撥油性、滑り性等のように他の化合物では発現できない特異な性質を持ち、各種塗料、コーティング剤に応用されている。しかし、実用的材料として用いる場合、基材に対する密着性が低下する場合が多いため、様々な密着性成分の導入が試みられており、加水分解性シリル基も有力な密着性成分の一つである。
【0005】
特開平8−143820号公報には、炭素炭素不飽和二重結合とパーフルオロ基を有する単量体と炭素炭素不飽和二重結合とアルコキシシリル基を有する単量体を必須成分とする重合体(A)並びに炭素炭素不飽和二重結合とアルコキシシリル基を有する単量体(B)の重合体から成る撥水コーティング用樹脂組成物が提案されている。
【0006】
また、特開平9−71749号公報には、フルオロアルキル基およびシロキサン結合を有する重合体において、架橋構造特に加水分解性シリル基を導入した生物付着防止性重合体、あるいは該重合体を表面に施工した生物付着防止性海洋構造体が提案されている。
【0007】
しかし、これらの提案の中には密着性と撥水性或いは耐汚染性両立のために、特定の組成物が有効であることは詳述されているが、これらの組成物が耐擦傷性・耐摩耗性に対して効果があること、更にはそれを示唆する記述もない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来のいわゆるハードコート剤では解決できなかった様々なタイプの基材に対して耐擦傷性・耐摩耗性を発現し得るコーティング剤を利用し、耐擦傷性・耐摩耗性に優れた構造体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)及び加水分解性シリル基含有エチレン性不飽和単量体(C)を必須成分として共重合させた重合体(1)であって、前記重合体(1)中におけるフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)の導入量が15〜75重量%である重合体(1)を必須構成成分とする被膜が基材に被覆してなり、該被膜の動摩擦係数が0.5以下であることを特徴とする低摩耗構造体を提供する。本発明に係わる低摩耗構造体の特徴は、特定の構造を有する重合体(1)を必須構成成分とする塗布液を塗布してなる保護膜を有することと、その保護膜表面の動摩擦係数が0.5以下であるということである。
【0010】
以下に、第一の特徴である塗布液中の必須構成成分である重合体(1)について説明する。
【0011】
はじめに重合体(1)としては、フッ素化アルキル基及び/又はシリコーン鎖を含有し、且つ、加水分解性シリル基を含有し、基材に被覆した場合にその動摩擦係数が0.5以下となる被膜を形成する重合体であれば特に制限はない。かかる重合体としては、製造の容易さ等からフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)及び/又はシリコーン鎖含有エチレン性不飽和単量体(B)を用いて得られるもので、それ自体の動摩擦係数が0.5以下のものが好ましい。
【0012】
上記フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)としては、分子中にエチレン性不飽和基とフッ素化アルキル基を有する化合物であれば特に制限はないが、原料の入手性、コーティング適性、或いは重合反応性の観点からアクリルエステル基およびその類縁基を含有するものが適しており、具体的には下記一般式(1)にて表されるフッ素化(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0013】
尚、(メタ)アクリレートとしては、メタクリレート、アクリレート、フルオロ(メタ)アクリレート、塩素化(メタ)アクリレート、シアノ(メタ)アクリレート、その他の置換基を有する(メタ)アクリレートを包含することができる。
【0014】
【化1】
Figure 0004431920
【0015】
式中、Rfは炭素数1〜20のパ−フロロアルキル基、または部分フッ素化アルキル基であり、直鎖状、分岐状、または主鎖中に酸素原子が介入したもの、例えば
【0016】
【化2】
Figure 0004431920
【0017】
等でも良く、R1 はH,CH3, Cl, FまたはCNであり、Xは2価の連結基で、具体的には (CH2)n ,
【0018】
【化3】
Figure 0004431920
【0019】
(但し、nは1〜10の整数であり、R2 はHまたは炭素数1〜6のアルキル基である。)、
【0020】
【化4】
Figure 0004431920
【0021】
等であり、aは0または1である。)にて表わされる化合物である。
【0022】
以下、特に断わりのない限り、メタアクリレート、アクリレート、ハロ(メタ)アクリレートおよびシアノ(メタ)アクリレートを総称して(メタ)アクリレートとする。
【0023】
フッ素化(メタ)アクリレートの具体例として以下の如きものが挙げられる。
A-1 : CH2=CHCOOCH2CH2C8F17
A-2 : CH2=C(CH3)COOCH2CH2C8F17
A-3 : CH2=CHCOOCH2CH2C12F25
A-4 : CH2=C(CH3)COOCH2CH2C12F25
A-5 : CH2=CHCOOCH2CH2C10F21
A-6 : CH2=C(CH3)COOCH2CH2C10F21
A-7 : CH2=CHCOOCH2CH2C6F13
A-8 : CH2=C(CH3)COOCH2CH2C6F13
A-9 : CH2=CHCOOCH2CH2C4F9
A-10 : CH2=CFCOOCH2CH2C6F13
A-11 : CH2=C(CH3)COOCH2CH2C20F41
A-12 : CH2=C(CH3)COOCH2CH2C4F9
A-13 : CH2=C(CH3)COO (CH2)6 C10F21
A-14 : CH2=C(CH3)COOCH2CF3
A-15 : CH2=CHCOOCH2CF3
A-16 : CH2=CHCOOCH2C8F17
A-17 : CH2=C(CH3)COOCH2C8F17
A-18 : CH2=C(CH3)COOCH2C20F41
A-19 : CH2=CHCOOCH2C20F41
A-20 : CH2=C(CH3)COOCH2CF(CF3)2
A-21 : CH2=C(CH3)COOCH2CFHCF3
A-22 : CH2=CFCOOCH2C2F5
A-23 : CH2=CHCOOCH2(CH2)6CF(CF3)2
A-24 : CH2=C(CH3)COOCHCF2CFHCF3
A-25 : CH2=C(CH3)COOCH(C2H5)C10F21
A-26 : CH2=CHCOOCH2(CF2)2H
A-27 : CH2=C(CH3)COOCH2(CF2)2H
A-28 : CH2=CHCOOCH2(CF2)4H
A-29 : CH2=CHCOOCH2CF3
A-30 : CH2=C(CH3)COO(CF2)4H
A-31 : CH2=CHCOOCH2(CF2)6H
A-32 : CH2=C(CH3)COOCH2(CF2)6H
A-33 : CH2=CHCOOCH2(CF2)8H
A-34 : CH2=C(CH3)COOCH2(CF2)8H
A-35 : CH2=CHCOOCH2(CF2)10H
A-36 : CH2=CHCOOCH2(CF2)12H
A-37 : CH2=CHCOOCH2(CF2)14H
A-38 : CH2=CHCOOCH2(CF2)18H
A-39 : CH2=CHCOOC(CH3)2(CF2)4H
A-40 : CH2=CHCOOCH2CH2(CF2)7H
A-41 : CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF2)7H
A-42 : CH2=C(CH3)COOC(CH3)2(CF2)6H
A-43 : CH2=CHCOOCH(CF3)C8F17
A-44 : CH2=CHCOOCH2C2F5
A-45 : CH2=CHCOOCH2CH(OH)CH2C8F17
A-46 : CH2=C(CH3)COOCH2CH(OH)(CH2)4C18F37
A-47 : CH2=CHCOOCH2CH2N(C3H7)SO2C8F17
A-48 : CH2=C(CH3)COOCH2CH2N(CH3)SO2C6F13
A-49 : CH2=C(Cl)COO(CH2)6NHSO2C12F25
A-50 : CH2=CHCOOCH2CH2N(C2H5)COC7F15
A-51 : CH2=CHCOO(CH2)8N(CH3)COC12F25
A-52 : CH2=CHCOO(CH2)2(CF2)8CF(CF3)2
尚、本発明がこれら具体例によって何等限定されるものでないことは勿論である。
【0024】
フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)は、1種類だけを用いても構わないし、2種類以上を同時に用いても構わない。
【0025】
本発明において、構造体の被膜(保護膜)表面の動摩擦係数の低下、ひいては耐擦傷性・耐摩耗性付与の観点からフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)を重合体(1)の成分として使用する。重合体(1)中におけるフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)の導入量は、基材、塗布厚、目的とする構造体により異なるが、15〜75重量%であり、25〜65重量%が好ましい。フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)を共重合せしめることにより効率的に動摩擦係数を低下させ、結果として耐擦傷性・耐摩耗性に優れた構造体を得ることが可能となる。また、単量体(A)を導入することにより、耐擦傷性・耐摩耗性を発現させ得るだけでなく、耐汚染性特にすす、煤煙、指紋など親油成分に関与する耐汚染性が向上する。単量体(A)を90重量%以下の量で共重合すると、それ以上の量の場合に比べて基材に対する密着性が高く好ましい。
【0026】
尚、本発明の効果を達成すれば、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体を用いる以外のフッ素化アルキル基導入手段、例えば官能基を有する重合体に該官能基と反応する反応性基を有するフッ素化アルキル基含有化合物を反応せしめる方法等によって重合体(1)を合成しても差し支えない。
【0027】
次に、重合体(1)の成分として使用され得るシリコーン鎖含有エチレン性不飽和単量体(B)としては、1分子中にシリコーン鎖とエチレン性不飽和基を有する化合物であれば特に制限はないが、エチレン性不飽和基としては、原料の入手性、コーティング適性、或いは重合反応性の観点から(メタ)アクリルエステル基およびその類縁基を含有するものが適している。具体的には、下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
【0028】
【化5】
Figure 0004431920
【0029】
〔式中、R3及びR4は炭素数1〜20のアルキル基又はフェニル基で、それらは同一でも異なっていても良く、又シロキシ単位毎に同一でも異なっていても良い。
pは3〜520の整数、qは0又は1であり、Yは2価の連結基で、
-CH2CH(OH)CH2OCO-、-(CH2)n1NHCH2CH(OH)CH2OCO-、-(CH2)n1OCO-、
-(CH2)n1-O-(CH2)m1OCO-、又は-OCH2CH(OH)CH2OCO-(但し、n1、m1は2〜6の整数である。)であり、R1は前記と同じであり、Zは炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、 又はCH2=C(R1)-(Y)q-である。]にて表される化合物、
又は一般式(3)
【0030】
【化6】
Figure 0004431920
【0031】
[式中、R3'、R3''、R3'''、R4'、R4''、R4'''、R5'、R5''、R5'''は炭素数1〜20のアルキル基又はフェニル基で、これらは同一でも異なっていても良く、r,s,tは0〜200の整数で、これらは同一でも異なっていても良く、Y,q,R1 は前記と同意義である。〕にて表わされる化合物が挙げられる。
【0032】
この様なシリコ−ン鎖含有エチレン性不飽和単量体(B)の具体例としては、以下の如き化合物が挙げられる。
【0033】
【化7】
Figure 0004431920
【0034】
【化8】
Figure 0004431920
【0035】
【化9】
Figure 0004431920
【0036】
【化10】
Figure 0004431920
【0037】
【化11】
Figure 0004431920
【0038】
【化12】
Figure 0004431920
【0039】
【化13】
Figure 0004431920
【0040】
【化14】
Figure 0004431920
【0041】
【化15】
Figure 0004431920
【0042】
但し、Me、Phはそれぞれメチル基、フェニル基を表わす。
【0043】
尚、本発明が上記具体例によって、何等限定されるものでないことは勿論である。
【0044】
シリコ−ン鎖含有エチレン性不飽和単量体(B)は、1種類だけを用いても構わないし、2種類以上を同時に用いても構わない。
【0045】
本発明において、保護膜表面の動摩擦係数の低下、ひいては耐擦傷性・耐摩耗性付与の観点から、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)と共にシリコーン鎖含有エチレン性不飽和単量体(B)は重合体(1)の成分として特に好ましいものである。重合体(1)中におけるシリコーン鎖含有エチレン性不飽和単量体(B)の導入量は、基材、塗布厚、目的とする構造体により異なるが、通常0〜70重量%であり、3〜55重量%が好ましく、5〜45重量%が特に好ましい。シリコーン鎖含有エチレン性不飽和単量体(B)が欠落しても、目的とする構造体によっては前述したフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)の効果により動摩擦係数を低下させ得ることも可能であるが、多くの場合は単量体(B)を共重合せしめることにより効率的に動摩擦係数を低下させ、結果として耐擦傷性・耐摩耗性に優れた構造体を得ることが可能となる。単量体(B)を70重量%以下で共重合すると、それ以上の量で用いた場合に比べて密着性が高く、また保護膜表面の撥油性がより高いことにより、すす、煤煙、指紋など親油成分に関与する耐汚染性にも優れている。
【0046】
尚、本発明の効果を達成すれば、シリコーン鎖含有エチレン性不飽和単量体を用いる以外のシリコーン鎖導入手段、例えば官能基を有する重合体に該官能基と反応する反応性基を有するシリコーン鎖含有化合物を反応せしめる方法等によって重合体(1)を合成しても差し支えない。
【0047】
本発明者等の知見によれば、保護膜表面の動摩擦係数の低下、ひいては耐擦傷性・耐摩耗性付与の観点から、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)またはシリコーン鎖含有エチレン性不飽和単量体(B)を含有する重合体を塗布することが有効であるが、より効果的または高度に耐擦傷性・耐摩耗性を実現するためには、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)及びシリコーン鎖含有エチレン性不飽和単量体(B)を同時に含有する重合体を塗布することが好ましい。この際、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)の導入量は、目的とする構造体により異なるが、20〜70重量%が好ましく、30〜60重量%が特に好ましい。また、シリコーン鎖含有エチレン性不飽和単量体(B)の導入量は、目的とする構造体により異なるが、5〜50重量%が好ましく、10〜40重量%が特に好ましい。
【0048】
このようにフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)及びシリコーン鎖含有エチレン性不飽和単量体(B)を同時に含有する重合体を塗布することにより、効果的または高度に耐擦傷性・耐摩耗性を実現できるばかりでなく、単量体(A)または単量体(B)の何れかのみを含有する重合体を用いた場合よりも、該構造体に耐汚染性、滑り性、非粘着性をも効果的に付与することが可能となる。
【0049】
次に、本発明の重合体(1)に係わるもう一つの必須構成成分である加水分解性シリル基について述べる。本発明において、加水分解性シリル基は、保護膜表面では耐擦傷性・耐摩耗性を発現し得る機能性重合体を、目的とする基材に対して良好な密着性を実現する上で重要な成分である。加水分解性シリル基とは、下記一般式(4)で示されるものを表わす。
【0050】
【化16】
Figure 0004431920
【0051】
ここで、R1は加水分解性基、即ち珪素原子に結合した場合、加水分解によりシラノール基に変換され得る官能基を意味し、具体例としては水酸基、炭素数1〜18の直鎖状或いは分岐状アルキル基を含有するアルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。また、R2は水素原子、炭素数1〜18の直鎖状或いは側鎖状アルキル基、アリール基、水素原子、ハロゲン原子、nは1〜3の整数を表わす。
【0052】
重合体(1)中への加水分解性シリル基の導入方法については、特に制限はないが、単量体(A)及び/または単量体(B)更には必要に応じて他の単量体と共に重合反応により導入する方法(重合反応による導入)、予め単量体(A)及び/または単量体(B)を必須成分として含有する重合体中に、目的とする加水分解性シリル基を含有する化合物と反応し得る官能基を導入した後、該加水分解性シリル基を含む化合物を反応せしめることにより導入する方法(高分子反応による導入)が挙げられる。上述した重合反応により導入する場合に利用できる加水分解性シリル基を含有する化合物の具体例としては、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメチルビニルトリエトキシシラン更にはこれらをフッ素化等により変性した化合物等の重合性化合物、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、フッ素化等により変性した化合物等のように連鎖移動剤として用いられる化合物が挙げられる。また、高分子反応により導入する場合に利用できる加水分解性シリル基を含有する化合物の具体例としては、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、メチルトリクロロシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びそのフッ素化等により変性した化合物が挙げられる。尚、本発明が上記具体例によって、何等限定されるものでないことは勿論である。
【0053】
加水分解性シリル基の導入は、保護膜表面の耐擦傷性・耐摩耗性、場合によっては滑り性、防汚性を損なうことなく、基材に対する密着性を発現させる上で必要不可欠である。加水分解性シリル基が欠如すると、保護膜の基材に対する密着性が欠如するため、目的とする構造体の耐久性の低下を引き起こす。加水分解性シリル基の導入量は、目的とする基材の種類、保護膜の基材に対する接着強度、膜厚等により異なるが、0.05〜40重量%が好ましく、0.5〜25重量%がより好ましく、2〜20重量%が特に好ましい。加水分解性シリル基の導入量が上記範囲の場合には十分な密着性や耐擦傷性・耐摩耗性が得られる。
【0054】
また、本発明に係わる重合体(1)には、単量体(A)、(B)以外にも、それ以外のエチレン性不飽和単量体を共重合成分として導入することが可能である。単量体(A)、(B)以外のエチレン性不飽和単量体は、目的とする構造体に係わる基材、耐擦傷性・耐摩耗性以外の機能、重合反応性、コスト等を考慮して、目的に応じて適宜導入されるものである。
【0055】
このようなエチレン性不飽和単量体としては、特に制限はなく公知公用の化合物であれば何れでも使用できる。具体的には、スチレン、核置換スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ビニルスルホン酸、酢酸ビニル等の脂肪酸ビニル、またα,β−エチレン性不飽和カルボン酸、即ちアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の一価ないし二価のカルボン酸、またα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の誘導体として、アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以後この表現はアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルの両方を総称するものとする。)、即ち(メタ)アクリル酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ドデシル、ステアリルエステル等、また(メタ)アクリル酸の炭素数1〜18のヒドロキシアルキルエステル、即ち2−ヒドロキシエチルエステル、ヒドロキシプロピルエステル、ヒドロキシブチルエステル等、更にはモノ(アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェ−ト、モノ(メタクリロキシエチル)アシッドホスフェ−ト等が挙げられる。
【0056】
また(メタ)アクリル酸の炭素数1〜18のアミノアルキルエステル即ちジメチルアミノエチルエステル、ジエチルアミノエチルエステル、ジエチルアミノプロピルエステル等、また(メタ)アクリル酸の、炭素数が3〜18のエーテル酸素含有アルキルエステル、例えばメトキシエチルエステル、エトキシエチルエステル、メトキシプロピルエステル、メチルカルビルエステル、エチルカルビルエステル、ブチルカルビルエステル等、更に橋状結合含有モノマーとしては、例えばジシクロペンタニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等、またアルキル炭素数が1〜18のアルキルビニルエーテル、例えばメチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等、(メタ)アクリル酸のグリシジルエステル、即ちグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等、またサートマー社製スチレンマクロモノマー4500、東亜合成(株)社製AA−6、AN−6等の各種マクロモノマーが挙げられる。また、市販品として共栄社化学(株)社製HOA−MS、HOA−MPL、HOA−MPE、HOA−HH、東亞合成(株)社製アロニックス M−5300、M−5400、M−5500、M−5600、M−5700等が挙げられる。
【0057】
更に、重合度1〜100の、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、そしてエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等のポリアルキレングリコ−ルのモノ(メタ)アクリル酸エステル、若しくは末端が炭素数1〜6のアルキル基によってキャップされた重合度1〜100の、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、そしてエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等のポリアルキレングリコ−ルのモノ(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。また、市販品としては、新中村化学工業(株)社製NKエステルM−20G、M−40G、M−90G、M−230G、AM−90G、AMP−10G、AMP−20G、AMP−60G、日本油脂(株)社製ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350、PME−100、PME−200、PME−400、PME−4000、PP−1000、PP−500、PP−800、70PEP−350B、55PET−800、50POEP−800B、NKH−5050、AP−400、AE−350、が挙げられる。尚、本発明がかかる具体例によって、何等限定されるものでないことは勿論である。
【0058】
更に、1分子中に2個以上の不飽和結合を有するエチレン性不飽和単量体として、重合度1〜100の、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、そしてエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等のポリアルキレングリコ−ルのジ(メタ)アクリル酸エステル、若しくは末端が炭素数1〜6のアルキル基によってキャップされた重合度1〜100の、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、そしてエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等のポリアルキレングリコ−ルのジ(メタ)アクリル酸エステル、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキシド(EO)変性物、テトラメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びそのEO変性物、ビスフェノールAジアクリレート及びそのEO変性物、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレートが挙げられる。また、市販品としては、新中村化学工業(株)社製NKエステル1G、2G、3G、4G、9G、14G、23G、BG、HD、NPG、A−200、A−400、A−600、A−HD、A−NPG、APG−200、APG−400、APG−700、A−BPE−4、701A、日本油脂(株)製ブレンマーPDE−50、PDE−100、PDE−150、PDE−200、PDE−400、PDE−600、ADE−200、ADE−400も使用することができる。尚、本発明ではかかる具体例によって、何等限定されるものでないことは勿論である。
【0059】
単量体(A)、(B)以外のエチレン性不飽和単量体は1種類だけを用いても2種類以上を同時に用いても構わない。
【0060】
本発明に係わる重合体(1)の製造方法には何ら制限はなく、公知公用の方法即ちラジカル重合法、カチオン重合法、アニオン重合法等の重合機構に基づき、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、更に乳化重合法等によって製造できる。
【0061】
また、重合体の構造についても特に制限はなく、上記重合機構に基づいたランダム、交互、ブロック共重合体、各種リビング重合法或いは高分子反応を応用し分子量分布を制御したブロック、グラフト、スター型重合体等を自由に選択可能である。更に、このような重合体を得た後に、各種高分子反応、放射線、電子線紫外線等のエネルギー線を応用した方法等により重合体を変性することも可能である。
【0062】
これらの方法の中で、工業的にはラジカル重合法が簡便であり好ましい。この場合重合開始剤としては、当業界公知のものを使用することができ、例えば過酸化ベンゾイル、過酸化ジアシル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、フェニルアゾトリフェニルメタン等のアゾ化合物、Mn(acac)3 等の金属キレート化合物等が挙げられる。また、必要に応じてラウリルメルカプタン、2−メルカプトエタノ−ル、エチルチオグリコ−ル酸、オクチルチオグリコ−ル酸等の連鎖移動剤や、更にγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のカップリング基含有チオ−ル化合物を連鎖移動剤を併用することが可能である。
【0063】
また、光増感剤や光開始剤の存在下での光重合、あるいは放射線や熱をエネルギー源とする重合によっても本発明に係る重合体(1)を得ることができる。
【0064】
重合は、溶剤の存在下又は非存在下のいずれでも実施できるが、作業性の点からは溶剤存在下であることが好ましい。溶剤としては、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、n−ブタノ−ル、iso−ブタノ−ル、tert−ブタノ−ル等のアルコ−ル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類、2−オキシプロピオン酸メチル、 2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−オキシプロピオン酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、 2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル等のモノカルボン酸エステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の極性溶剤、 メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、エチルセロソルブアセテート等のエーテル類、プロピレングリコ−ル、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テル、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テルアセテ−ト、プロピレングリコ−ルモノエチルエ−テルアセテ−ト、プロピレングリコ−ルモノブチルエ−テルアセテ−ト等のプロピレングリコ−ル類及びそのエステル類、1,1,1−トリクロルエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類、更にパ−フロロオクタン、パ−フロロトリ−n−ブチルアミン等のフッ素化イナ−トリキッド類のいずれも使用できる。尚、本発明がかかる具体例によって、何等限定されるものでないことは勿論である。
【0065】
本発明に係わる重合体(1)の分子量としては、目的とする構造体、コーティング方法、膜厚等により、最適なものが選択されるが、通常ポリスチレン換算の数平均分子量でMn=1,000〜200,000であり、3,000〜80,000が好ましく、更に6,000〜40,000が特に好ましい。重合体(1)の分子量がこの範囲であれば、コーティングした保護膜の皮膜形成能が高いため保護膜としての耐久性が高く、目的とする膜厚に制御することが容易であったり、コーティング作業性が低下することなく、耐擦傷性・耐摩耗性の優れている。
【0066】
次に、重合体(1)以外の塗布液の構成成分について述べる。目的とする低摩耗構造体を作製するために、重合体(1)を含有する塗布液を目的とする基材上に塗布し、皮膜化させることにより保護膜を形成させることが必要である。この、塗布作業性、皮膜化過程を容易にするために、該塗布液中には重合体(1)以外の成分を適宜導入することが可能である。塗布作業という観点からは、重合体(1)を溶融塗布することも場合によっては可能であるが、通常は、水若しくは、各種有機溶剤、各種単官能単量体或いは多官能単量体中に溶解或いは分散させるかことが有効である。有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、n−ブタノ−ル、iso−ブタノ−ル、tert−ブタノ−ル等のアルコ−ル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶剤、 メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のエーテル類、1,1,1−トリクロルエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類、更にパ−フロロオクタン、パ−フロロトリ−n−ブチルアミン等のフッ素化イナ−トリキッド類が挙げられる。尚、本発明がかかる具体例によって、何等限定されるものでないことは勿論である。
【0067】
水或いは有機溶剤を用いる場合、その導入量は目的とする膜厚、重合体(1)の分子量、塗布液中の他の成分、塗布方法等を考慮し最適な濃度が選択される。
【0068】
また、加水分解性シリル基を密着性成分として有効に働かせるために、必要に応じて硬化触媒を併用することも有効である。硬化触媒としては、加水分解性シリル基の加水分解反応を促進するための公知公用の触媒、更には加水分解したシラノール基が縮合、或いは基材中若しくは塗布液中に存在する反応性基と反応させるために、公知公用の触媒を自由に用いることが可能である。このような触媒の具体例としては、ジブチル錫ジラルレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジフェニル錫ジアセテート、オクチル酸錫、ジオクチル酸錫等の錫化合物、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸、アルキルスルホン酸、フッ素化アルキルスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の酸、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、トリエチルテトラミン、ドデシルジブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン化合物が挙げられる。尚、本発明がかかる具体例によって、何等限定されるものでないことは勿論である。
【0069】
このような硬化触媒は、塗布液中の他の成分、塗布方法、乾燥温度、系のポットライフ等を考慮し使用され得るが、その導入量は、重合体(1)100重量部に対して,0.01〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部が特に好ましい。硬化触媒を上記量で用いる場合、十分な硬化速度が得られ、作業性が低下することなく、ポットライフが長く作業性を阻害しないばかりでなく、均質性が失われずに目的とする保護膜が得られる。
【0070】
また、本発明に係わる塗布液中には、目的とする保護膜に応じてコーティング適性、密着性、コスト等を考慮して重合体(1)以外の公知公用の樹脂類を併用することも可能である。併用し得る樹脂類の具体例としては、NBR、クロロプレン、EPDM等のゴム類、セルロース系樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、不飽和ポリエステル、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等或いはこれらを自由に組み合わせた共重合体等が挙げられる。また、併用する樹脂類は1種類だけを用いても2種類以上のものを同時に用いても構わない。尚、本発明が上記具体例によって、何等限定されるものでないことは勿論である。
【0071】
さらに塗布液中には必要に応じて、顔料、染料、カ−ボン等の着色剤、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム等の無機粉末、高級脂肪酸、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(テトラフロロエチレン)、ポリエチレン等の有機微粉末、更に耐光性向上剤、耐候性向上剤、耐熱性向上剤、酸化防止剤、増粘剤、沈降防止剤、炭化水素系、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤、消泡剤等の各種充填剤を適宜添加することが可能である。
【0072】
次に、本発明の構造体に係わる基材及び重合体(1)の被覆方法について述べる。
【0073】
本発明に係わる基材としては、公知公用の有機材料及び無機材料、更には有機・無機ハイブリッド材料を自由に用いることができる。有機材料の具体例としては、天然ゴム、NBR、クロロプレンゴム、EPDM、フッ素ゴム等のゴム類、セルロース系樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂、PPS、PEK、PEEK等のエンジニアリングプラスチックス等或いはこれらを自由に組み合わせた共重合体、部分的に変性したもの、ブレンド物、複合体等が挙げられる。無機材料としては、ガラス、各種金属、セラミックス、さらにはこれらを複合化した材料が挙げられる。また、基材の形状、大きさにも特に制限はなく、延伸フィルム、未延伸フィルム、シート、各種成形体等を制限なく選択できる。これらの基材には、目的とする保護膜を十分に接着させるために、基材と重合体(1)の接着剤によるプライマー処理、各種ガスによるプラズマ処理等を行うことも可能である。
本発明に係わる塗布方法は、目的とする基材の形状、大きさ、塗布液の粘度、重合体(1)の分子量、膜厚等により合目的な方法を選択するが、塗布方法としては公知公用の方法を制限なく使用できる。具体的塗布方法としては、ロールコーター、静電塗装、バーコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、スピンコーター、コンマコーター、ディッピング塗布、スプレー塗布等の方法が挙げられる。尚、本発明がかかる具体例によって、何等限定されるものでないことは勿論である。
【0074】
また、目的とする塗布液を塗布した後には、必要に応じて熱による不揮発分の乾燥工程、架橋成分の熱硬化工程、或いはエネルギー線硬化工程、熱によるエージング工程等を、適宜加えることが可能である。
【0075】
最後に、本発明に係わる低摩耗構造体の必須要件である、保護膜表面の動摩擦係数について説明する。従来技術の項でも述べたように、本発明の目的である耐擦傷性・耐摩耗性を目的とする構造体表面に発現させるためには、UV硬化皮膜に代表される高架橋密度・高Tg皮膜の形成が数多く提案されている。しかし、柔軟性基材に対しては皮膜の割れ等、用途によって不適切な場合がある。
【0076】
本発明者等の知見によれば、上述した特定の構造を有する重合体(1)を含む塗布液を用いて、目的とする基材上に動摩擦係数の低い被膜を形成させることにより、低摩耗構造体を得ることができる。被膜表面の動摩擦係数は、目的とする低摩耗構造体の耐擦傷性・耐摩耗性のレベルにより異なるが、0.5以下であり、0.3以下が好ましく、0.2以下がより好ましい。
【0077】
本発明に於ける動摩擦係数の値は、重合体(1)の組成、分子量、塗布液中の重合体(1)以外の成分、塗布方法、乾燥条件、エージング条件、膜厚等により影響されるので、本発明者等はこのような条件を考慮した上で結果として形成された基材の保護膜表面を測定するものであり、かかる動摩擦係数が0.5以下である場合に有用な耐擦傷性・耐摩耗性を発現し得るのである。
【0078】
尚、かかる動摩擦係数については、基材の硬度によって影響を受けるため、鉛筆硬度が2B以下の基材を用いる場合には硬度が下がるに応じて荷重1〜5gから下げた荷重を適宜選択して当該係数を測定する。また、鉛筆硬度がB以上の基材を用いる場合には硬度が上がるに応じて荷重10〜50gから上げた荷重を適宜選択して当該係数を測定する。
【0079】
このような低摩耗構造体は、例えば、パソコン、携帯電話、ビデオ等の液晶ディスプレイ、各種スクリーン、タッチパネル、ハードディスク、各種電気・電子部品、各種フィルム・シートの様に金属、ガラス、セラミックス或いはプラスチックスでも比較的硬い基材に対する保護膜、さらにはOA機器内で用いる帯電ロール、現像ロール、転写ロール、定着ロール、中間転写ベルト、靴、家具、衣料、各種内装材、農ビ等として利用できる。
【0080】
以下に本発明に係る具体的な合成例、実施例を挙げ本発明をより詳細に説明するが、本具体例等によって発明が何等限定されるものではないことは勿論である
【0081】
【実施例】
重合体(1)の合成
合成例1
撹拌装置、コンデンサ−、温度計を備えたガラスフラスコにイソプロピルアルコール(以下IPAと略す);23.4重量部、メチルイソブチルケトン(以下MIBKと略す);33.3重量部を仕込み80℃まで昇温する。一方、滴下ロート中にフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A−1);35重量部、シリコーン鎖含有エチレン性不飽和単量体(B−3);15重量部、γ−メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン;35重量部、メチルルメタクリレ−ト;15重量部、IPA;10重量部、重合開始剤としてパーブチルO(日本油脂製・t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート);1重量部を予め仕込み、ガラスフラスコにセットする。窒素ガス気流中、攪拌下で滴下ロートより、モノマー混合物を3時間かけて滴下する。次いで3時間80℃にてホールドした後、予めパーブチルO;0.5重量部をIPA;33.3重量部に溶解させた溶液追加触媒としてを加え、さらに80℃にて8時間ホールドし、重合を完結させた。
次いで、MIBK;83.3重量部、IPA;50.0重量部を加えることにより、固形分濃度30重量%の重合体溶液を得た。
【0082】
この重合体のゲルパ−ミエ−ショングラフ(以下GPCと略す)によるポリスチレン換算分子量はMn=27,200であった。この重合体を重合体1−1とする。
【0083】
合成例2〜11
モノマー混合物中の単量体及び重合開始剤を表1に示す割合で用いた以外は合成例1と同様にして相当する重合体を得た。これらの重合体の分子量測定の結果を表1及び2に併せて記した。尚、表1中の各原料の仕込比は重量部で、原料の記号は本文に掲載した化合物を示している。
【0084】
【表1】
Figure 0004431920
【0085】
【表2】
Figure 0004431920
【0086】
【実施例】
(実施例1)
合成例1で合成した重合体1−1;100重量部、硬化触媒としてトリエチルアミン;1重量部をガラスフラスコ中に投入しスターラーチップで攪拌することにより均一な塗布液を得た。
次いで、調整した塗布液を、厚さ1mmのNBRゴム上にバーコーター#05にて塗布し、100℃にて1分間乾燥した後、120℃にて15分間熱処理を行うことにより、NBRゴム上に保護膜を形成させた。保護膜表面の動摩擦係数は0.18であった。
【0087】
尚、動摩擦係数は表面性測定機(HEIDON−14)にて、荷重5g、摩擦対象を鋼球圧子にて測定した値である。
【0088】
保護膜表面の耐擦傷性・耐摩耗性及び防汚性を下記方法により評価した。評価した結果は表にまとめて示した。
(実施例2〜9、参考例1及び比較例1〜4)
表3〜5に示す配合により、実施例1と同様に塗布液を得、形成した保護膜表面の評価を行った。評価結果は表3〜5に示した。
【0089】
表3及び4より明らかなように、本発明に係わる低磨耗構造体は優れた耐擦傷性・耐磨耗性、防汚性を示す。
<試験方法及び評価基準>
(1)密着性
セロテープ剥離による碁盤目テストにより評価した。
【0090】
表2には、100マス中剥離しなかったマス目の数を示している。
(2)耐擦傷性・耐摩耗性
耐擦傷性・耐摩耗性の評価は、学振型摩擦堅牢度試験機((株)興亜商会)を用いて荷重;200g、対象布;綿金巾にて500回しゅう接した後の皮膜の状態を目視にて5段階評価で判定した。
【0091】
5:皮膜に損傷がない
4:皮膜の一部に傷が付いている
3:皮膜全体に傷が付いている
2:皮膜に割れが発生している
1:皮膜の脱落が発生している
(3)防汚性評価
下記組成のドライソイル中に試験片を浸漬し、70℃の熱風乾燥機中に1時間放置後取り出す。取り出した試験片のドライソイル付着状態を目視にて5段階評価で判定した。
【0092】
5:付着量少(防汚性良好)
1:付着量多(防汚性不良)
ドライソイル組成
関東ローム7種/ポルトランドセメント/陶土/硅土/すす/鉄さび/鉱油
=38/17/17/17/1.75/0.5/8.75
【0093】
【表3】
Figure 0004431920
【0094】
【表4】
Figure 0004431920
【0095】
【表5】
Figure 0004431920
【0096】
【発明の効果】
本発明に係わる低磨耗構造体は、従来のいわゆるハードコート剤ではなく、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体及び/又はシリコーン鎖含有エチレン性不飽和単量体を重合せしめ、密着性成分として加水分解性シリル基を導入した特徴的な重合体を塗布してなる保護膜を形成している。この保護膜表面の動摩擦係数を0.5以下に制御することにより、該構造体は、優れた耐擦傷性・耐磨耗性、さらには滑り性、防汚性をも発現し得る。

Claims (4)

  1. フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)及び加水分解性シリル基含有エチレン性不飽和単量体を必須成分として共重合させた重合体(1)であって、前記重合体(1)中におけるフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)の導入量が15〜75重量%である重合体(1)を必須構成成分とする被膜が基材に被覆してなり、該被膜の動摩擦係数が0.5以下であることを特徴とする低摩耗構造体。
  2. 前記重合体(1)が、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)及び加水分解性シリル基含有エチレン性不飽和単量体に加え、シリコーン鎖含有エチレン性不飽和単量体(B)を必須成分として共重合させた重合体である請求項1記載の低摩擦構造体。
  3. 被膜が重合体(1)及び硬化触媒を必須成分とし、且つ該触媒により重合体(1)の加水分解性シリル基を加水分解せしめてなることを特徴とする請求項1又は2記載の低摩擦構造体。
  4. 前記重合体(1)100重量部に対して、前記硬化触媒の使用量が0.1〜5重量部である請求項3記載の低摩擦構造体。
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