JP4430959B2 - 成形型 - Google Patents

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Description

本発明は、被成形物を成形する成形型に関する。
従来、この種の成形型としては、ガラス状カーボンで形成された構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2003−165729号公報(第3−6頁)
ところが、この成形型は、ガラス状カーボンにて形成されているため、プレス成形時の耐衝撃性が優れていない。
そこで、このガラス状カーボンに気相成長炭素繊維などのコンポジット材を混合させて型材料とし、この型材料から成形型を製造することも考えられるが、この場合には、この型材料中の気相成長炭素繊維の方がガラス状カーボンよりも構成分子の結合力が強いので、この型材料の表面を切削などして加工した際に、この型材料の表面の加工面から気相成長炭素繊維が突出してしまう。このため、この気相成長炭素繊維が突出した部分での加工効率が低下してしまい、この型材料の加工面を平滑に成形することが容易ではないという問題を有している。
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、表面の平滑な成形を容易にできる成形型を提供することを目的とする。
求項記載の成形型は、被成形物を成形する成形型であって、少なくともガラス状カーボンおよびカーボンナノファイバを含有し、表面側のカーボンナノファイバの含有率が、この表面側以外の部分のカーボンナノファイバの含有率よりも小さく、かつ、カーボンナノファイバの含有率が表面側に向けて段階的に小さいものである。
そして、ガラス状カーボンよりもカーボンナノファイバの方が構成原子の結合力が強いので、少なくともガラス状カーボンおよびカーボンナノファイバを含有する成形型の表面側のカーボンナノファイバの含有率を、この表面側以外の部分のカーボンナノファイバの含有率よりも小さくする。この結果、この成形型の表面側を切削などして加工した際に、この成形型の加工面からカーボンナノファイバが突出しにくくなるから、この成形型の表面の平滑な成形が容易になる。かつ、成形型のカーボンナノファイバの含有率を、この成形型の表面側に向けて段階的に小さくすることにより、このカーボンナノファイバの含有率の相違による成形型の表面側の部分の剥がれを防止できる。
請求項記載の成形型は、被成形物を成形する成形型であって、少なくともガラス状カーボンおよびカーボンナノファイバを含有し、表面側のカーボンナノファイバの含有率が、この表面側以外の部分のカーボンナノファイバの含有率よりも小さく、かつ、カーボンナノファイバの含有率が表面側に向けて連続的に小さいものである。
そして、ガラス状カーボンよりもカーボンナノファイバの方が構成原子の結合力が強いので、少なくともガラス状カーボンおよびカーボンナノファイバを含有する成形型の表面側のカーボンナノファイバの含有率を、この表面側以外の部分のカーボンナノファイバの含有率よりも小さくする。この結果、この成形型の表面側を切削などして加工した際に、この成形型の加工面からカーボンナノファイバが突出しにくくなるから、この成形型の表面の平滑な成形が容易になる。かつ、成形型のカーボンナノファイバの含有率を、この成形型の表面側に向けて連続的に小さくすることにより、カーボンナノファイバの含有率の相違による成形型の表面側の部分の剥がれをより確実に防止できる。
請求項記載の成形型は、請求項1または2記載の成形型において、少なくとも表面側の加工される部分のカーボンナノファイバの含有率が、この表面側以外の部分のカーボンナノファイバの含有率よりも小さいものである。
そして、成形型における少なくとも表面側の切削などの加工される部分のカーボンナノファイバの含有率を、この表面側以外の部分のカーボンナノファイバの含有率よりも小さくする。この結果、成形型の表面側以外の部分をより大きくできるから、成形型中により多くのカーボンナノファイバを含有させることができるので、この成形型がより高強度になる。
請求項記載の成形型は、請求項1ないしいずれか記載の成形型において、カーボンナノファイバは、気相成長炭素繊維であるものである。
そして、少なくともガラス状カーボンおよび気相成長炭素繊維を含有する成形型とすることにより、この成形型がより硬質になる。
請求項記載の成形型は、請求項1ないしいずれか記載の成形型において、カーボンナノファイバは、カップスタック型炭素繊維であるものである。
そして、少なくともガラス状カーボンおよびカップスタック型炭素繊維を含有する成形型とすることにより、この成形型がより硬質になる。
請求項記載の成形型は、請求項1ないしいずれか記載の成形型において、表面側は、ガラス状カーボンの単層であるものである。
そして、成形型の表面側をガラス状カーボンの単層とすることにより、この成形型の表面側を切削などして加工した際に、この成形型の加工面からカーボンナノファイバが突出しなくなるので、この成形型の表面側の平滑な成形がより容易になる。
求項記載の成形型によれば、ガラス状カーボンよりもカーボンナノファイバの方が構成原子の結合力が強いので、成形型の表面側のカーボンナノファイバの含有率を、この表面側以外の部分のカーボンナノファイバの含有率よりも小さくすることにより、この成形型の表面側を切削などして加工した際に、この成形型の加工面からカーボンナノファイバが突出しにくくなるから、この成形型の表面の平滑な成形を容易にできる効果に加え、成形型のカーボンナノファイバの含有率を、この成形型の表面側に向けて段階的に小さくすることにより、このカーボンナノファイバの含有率の相違による成形型の表面側の部分の剥がれを防止できる。
請求項載の成形型によれば、ガラス状カーボンよりもカーボンナノファイバの方が構成原子の結合力が強いので、成形型の表面側のカーボンナノファイバの含有率を、この表面側以外の部分のカーボンナノファイバの含有率よりも小さくすることにより、この成形型の表面側を切削などして加工した際に、この成形型の加工面からカーボンナノファイバが突出しにくくなるから、この成形型の表面の平滑な成形を容易にできる効果に加え、成形型のカーボンナノファイバの含有率を、この成形型の表面側に向けて連続的に小さくすることにより、カーボンナノファイバの含有率の相違による成形型の表面側の部分の剥がれをより確実に防止できる。
請求項記載の成形型によれば、請求項1または2記載の成形型の効果に加え、成形型の少なくとも表面側の切削などの加工される部分のカーボンナノファイバの含有率を、この表面側以外の部分のカーボンナノファイバの含有率よりも小さくすることにより、この成形型の表面側以外の部分をより大きくでき、この成形型中により多くのカーボンナノファイバを含有できるので、この成形型をより高強度にできる。
請求項記載の成形型によれば、請求項1ないしいずれか記載の成形型の効果に加え、少なくともガラス状カーボンおよび気相成長炭素繊維を含有する成形型とすることにより、この成形型をより硬質にできる。
請求項記載の成形型によれば、請求項1ないしいずれか記載の成形型の効果に加え、少なくともガラス状カーボンおよびカップスタック型炭素繊維を含有する成形型とすることにより、この成形型をより硬質にできる。
請求項記載の成形型によれば、請求項1ないしいずれか記載の成形型の効果に加え、成形型の表面側をガラス状カーボンの単層とすることにより、この成形型の表面側を切削などして加工した際に、この成形型の加工面からカーボンナノファイバが突出しなくなるので、この成形型の表面側の平滑な成形をより容易にできる。
以下、本発明の成形型の第1の実施の形態を図1ないし図3を参照して説明する。
図1ないし図3において、1は成形型としての光学デバイス製造用のプレス型1であり、このプレス型1は、ガラスを含む材料、具体的にはガラス材料を融解して、被成形物としての光学素子である、例えばマイクロレンズやマイクロチャネルなどの光学デバイスを高温プレス成形にて製造する成形型である。このとき、このプレス型1は、一辺が約7μm程度のマイクロレンズを製造する。
なお、このプレス型1では、軟化状態にしたガラス材料による高温プレス成形で光学デバイスをも製造できる。さらに、このプレス型1は、ガラス状カーボン(Glassy Carbon:GC)と、少なくともカーボンナノファイバ(Carbon Nano Fibers:CNF)である気相成長炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fibers:VGCF)を含有した複合材である型材料としての型材2にて成形されている。すなわち、このプレス型1には、気相成長炭素繊維がコンポジット材として含有されている。ここで、この気相成長炭素繊維は、ガラス状カーボンよりも構成原子の結合力が強い。
このガラス状カーボンは、結晶学的にはアモルファス、すなわち非晶質な構造を示す炭素の1つである。すなわち、このガラス状カーボンは、熱硬化性樹脂の焼成炭化によって得られる無定形で均質緻密な組織を有する高強度の炭素質材料である。一方、気相成長炭素繊維は、気相法によって成長させて合成された高結晶性のカーボンナノファイバである。すなわち、この気相成長炭素繊維は、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)などの金属の微粒子を触媒として、炭化水素ガスを熱分解して得られるもので、例えば10nm前後の鉄微粒子を触媒として、ベンゼン蒸気や、メタンガスを1100℃付近の温度で熱分解して得られ、網面が繊維軸に対して平行に配向して年輪状を呈し、極めて高い引張り強さおよび引張り弾性率を有している。
したがって、これらガラス状カーボンおよび気相成長炭素繊維の複合材である型材2から製造されたプレス型1は、強度、硬度などの材質特性に優れており、ガラス状カーボン特有の緻密で表面が平滑な性質を有している。すなわち、このプレス型1は、高強度および高硬度の材質特性によって、プレスの衝撃によるチッピングや割れの発生を抑制し、また型表面への傷も付きにくくなる一方、緻密で表面平滑な材質性状から、溶融ガラスとの濡れ性が低く、反応性もほとんどなく、冷却固化したガラスとの離型性に優れた性能を発揮する。
さらに、型材2は、傾斜機能が付加されたガラス状カーボンにて構成されている。また、この型材2は、図2に示すように、例えば直径10mm高さ5mm以上10mm以下の円筒状に形成されている。そして、この型材2は、図1に示すように、この型材2の表面部分である表面側2aの0.5mm程度がガラス状カーボンの純領域である単層3にて構成されている。この単層3は、図3に示すように、型材2の加工表面中の最も切削される部分である凹部13の深さよりも若干厚く形成されている。
また、この型材2の表面側2a以外の部分である、この表面側2aの反対の底面側2bには、ガラス状カーボンに気相成長炭素繊維が15体積%含有された高含有領域4が形成されている。そして、この型材2の高含有領域4と単層3との間には、ガラス状カーボンの混合割合としての混合率であるフィラー含有量を底面側2bから表面側2aに向けて徐々に連続的に減少させた傾斜層である傾斜領域5が形成されている。この傾斜領域5は、型材2の底面側2bから表面側2aに向けて傾斜的にフィラー含有量が減少している。言い換えると、この傾斜領域5は、型材2の内部から表面側2aに向けて気相成長炭素繊維の混合比が小さくなるように構成されている。
したがって、型材2は、集束イオンビームが施される部位である表面側2aの気相成長炭素繊維の含有量を小さくして平滑な型面を加工できるようにしながら、集束イオンビーム加工が施されない部位である内部については気相成長炭素繊維の含有量を多くしてプレス型1の強度の強さを維持させる。
次に、上記第1の実施の形態の成形型の製造方法を図4ないし図15を参照して説明する。
まず、図4および図5に示すように、予め作成したCAD(Computer Aided Design)データ11に基づいて、このCADデータ11を水平に均等な間隔で40分割にスライスしたBMP(bit map)データ12を作成する。このとき、このCADデータ11には、上面視矩形状であり断面凹弧状の複数、例えば12個の凹部13が設けられている。これら凹部13は、縦方向および横方向それぞれに沿ってマトリクス状に形成されており、マイクロレンズに対応した形状に設けられている。
次いで、40分割した1番先端側のBMPデータ12に基づいて、型材2の表面に集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)Bを照射する。ここで、この集束イオンビームBは、型材2の表面に対して直角に近い照射角度、例えばこの型材2の表面に対して垂直な位置から±5゜の範囲で照射される。このとき、図6および図7に示すように、この型材2の表面に形成される凹部13のうちマイクロレンズの頂点部分、すなわち、型材2の最も深く加工しなければならない部分である略点状の領域14に対して略垂直に集束イオンビームBを略点状に照射して、この型材2を加工する(ステップ1)。
言い換えると、この集束イオンビームBは、型材2の最も深く加工すべき領域14に対して均一に照射されて、この最も深く加工すべき領域14を所定の深さにスパッタ加工する。このとき、この集束イオンビームBの照射位置が固定されているとともに、この集束イオンビームBの照射強度、すなわちパワーも固定されている。
この後、図8ないし図15に示すように、40分割したBMPデータ12のうち、先端側の2枚目から40枚目のBMPデータ12に基づいて、ステップ1で加工した部分を中心として、集束イオンビームBの照射によって加工すべき範囲である領域14を円形状に徐々に広げながら、型材2の表面に対して集束イオンビームBを操作して略垂直に照射して、この型材2を加工する(ステップ2からステップ40)。
すなわち、型材2の加工すべき領域14の面積が小さい方から大きい方へと段階的に集束イオンビームBを照射させる。このとき、各ステップでの集束イオンビームBによる加工に際しては、これら各ステップ以前の全ステップにて加工した領域14に対しても集束イオンビームBを照射させるため、数回に亘って集束イオンビームBが照射された領域14が徐々に深くスパッタ加工される。
言い換えると、型材2の加工すべき領域14を所定量の深さ、例えば0.2μm毎に分けて、これら領域14の最も深く加工すべき領域14から順番に段階的に集束イオンビームBを複数回に亘って照射してスキャンする。このとき、この集束イオンビームBの一回の照射によって型材2の表面が所定の深さにスパッタ加工される。したがって、型材2の最も深く加工される領域14の深さが5μmの場合には、この最も深く加工される領域14には、集束イオンビームBが計25回照射されてスキャンされる。
このとき、この集束イオンビームBを複数回に亘って照射する際に、この集束イオンビームBにて前回加工した領域14の周縁部15に再度集束イオンビームBが照射されてスパッタされるので、この前回加工した領域14の周縁部15の角が丸められなだらかになる。したがって、型材2を深く加工する部分から段階的に複数回に亘って集束イオンビームBを照射してスキャンすることにより、この集束イオンビームBのスキャン毎に形成される型材2の加工面の周縁部15が滑らかになり、この型材2の最終的な加工面がより滑らかになる。
さらに、図12および図13に示すように、集束イオンビームBを照射すべき領域14を円形状に広げていった結果、この領域14に隣設した領域14から所定距離間隙を介した部分まで加工した場合には、この隣設した領域14に対して加工領域の周縁部15が直線状となるように加工していく。このとき、この領域14の直線状に加工した周縁部15は、集束イオンビームBを照射する領域14を円形状に徐々に拡張した状態に対応する円弧状に加工される。
この後、集束イオンビームBを照射すべき領域14をさらに広げていくと、図14および図15に示すように、この領域14に隣設するそれぞれの領域14に対して平行な矩形状に集束イオンビームBを照射してスキャンすることとなる。この結果、ステップ40まで集束イオンビーム加工を施すことにより、CADデータ11に対応したマイクロレンズ用の型面形状である凹部13がマトリクス状に形成されたプレス型1が作製されて製造される。
上述したように、上記第1の実施の形態によれば、ガラス状カーボンよりも気相成長炭素繊維の方が構成原子の結合力が強いので、これらガラス状カーボンおよび気相成長炭素繊維の複合材の型材2の表面を集束イオンビームBでスパッタ加工させた際に、気相成長炭素繊維の部分で加工効率が低下するため、この型材2の表面に気相成長炭素繊維が突出してしまい、型材2の加工面に凹凸が形成されてしまう。そこで、この型材2の表面側2aの気相成長炭素繊維の含有率を、この型材2の底面側2bよりも小さくしたことにより、この型材2の表面を切削して加工した際に、この型材2の加工面から気相成長炭素繊維が突出しにくくなるから、この型材2の表面の平滑な成形を容易できる。
このとき、レンズの材料となるガラス材料をプレス型1でプレス加工した際に、このプレス型1が加熱されるので、型材2の表面側2aの気相成長炭素繊維の含有率が極端に相違すると、熱膨張率の相違によって、型材2の表面の層が剥がれやすくなってしまう。そこで、この型材2の気相成長炭素繊維の含有率を、この型材2の表面側2aに向けて傾斜させて連続的に小さくすることにより、この気相成長炭素繊維の含有率の相違に起因した、型材2の表面側2aと底面側2bとの熱膨張率の相違による型材2の表面側2aの部分である単層3の剥がれを防止できる。
また、この型材2の表面側2aをガラス状カーボンの単層3としたことにより、この型材2の表面部分をスパッタ加工した際に、この型材2の加工表面から気相成長炭素繊維が全く突出しなくなるので、この型材2の表面の平滑な成形をより容易にできる。
この結果、型材2の表面側2aにおいては、気相成長炭素繊維の含有量が少なくガラス状カーボンの割合が高いことによる集束イオンビーム加工による平滑性を高く保ちながら、型材2の表面のガラス状カーボンの単層3が傾斜領域5から剥離することを防止できる。
よって、気相成長炭素繊維の含有量に傾斜性を持たせた型材2を利用して、マイクロレンズ用の金型やガラス製のマイクロチャネル用の金型などを形成することにより、型材2の加工面の平滑度が高いため、精度の高いマイクロレンズ用金型やバイオデバイス金型などを得ることができるとともに、精度の高いマイクロレンズやバイオデバイスなどを生産できる。
このとき、型材2の表面側2aでの気相成長炭素繊維の含有比率、あるいは型材2の表面からどれくらいの深さまで気相成長炭素繊維の含有量を小さくするかについては、光学デバイスなどの成型品に求められる成型精度によって適宜決定される。また、型材2の内部の気相成長炭素繊維の含有量については、要求されるプレス型1の強度によって適宜決定される。
一方、ガラス状カーボンおよび気相成長炭素繊維の複合材である型材2からプレス型1を製造することにより、このプレス型1を高強度および高硬度にできるが、このプレス型1を切削やレーザなどで加工した場合には、このプレス型1の加工面の精度に限界があり、微細な形状への研磨ができず、このプレス型1の表面の微細な加工が容易ではないから、カメラレンズなどの比較的大きな被成形物が対象となる。このため、例えば液晶パネルに使用されるマイクロレンズなどに対応した微細な型面であるプレス面を成形することが容易ではない。
そこで、マイクロレンズなどの比較的小さな被成形物のプレス型1を製造する場合には、微細な切削加工が可能な集束イオンビームBを型材2の表面に照射して、この型材2を加工する。この結果、このプレス型1の表面の加工面であるプレス面を滑らかに加工成形でき、このプレス面の平滑度を向上できる。したがって、プレス成形時の耐衝撃性に優れたプレス型1の微細な加工が容易にできるから、マイクロレンズなどのミクロンサイズの光学デバイスの型材2に適している。よって、精度の高いプレス型1を製造できるから、精度の高いマイクロレンズなどの光学デバイスを得ることができる。
このとき、型材2の表面に対してある程度の照射角度で集束イオンビームBを照射する場合よりも、この型材2の表面に対して略垂直、具体的には型材2の表面に対して垂直な位置から±5゜の範囲内で集束イオンビームBを照射させることにより、型材2の表面をより滑らかに加工成形でき、この型材2の表面に形成されたプレス面の平滑度をより向上できるから、この型材2から製造されるプレス型1の微細な加工をより容易にできる。
さらに、型材2の表面に形成される凹部13のうちマイクロレンズの頂点部分、すなわち型材2の最も深く加工しなければならない領域14から段階的に集束イオンビームBを照射して、この型材2の表面にプレス面となる凹部13を形成する。この結果、この型材2の加工すべき領域14の面積が小さい部分から大きい部分へと段階的に集束イオンビームBを照射してスキャンして加工することにより、各段階での加工面の周縁部15がスパッタされて角が丸められてなだらかになるので、型材2の加工面をより滑らかにできる。
よって、この型材2を加工する深さが場所によって異なる凹弧状の凹部13であっても、この型材2から製造されるプレス型1それぞれの凹部13の内周面を滑らかに成形できるので、このプレス型1の微細な加工をより容易にできる。これに対し、型材2の加工すべき領域14の面積が大きい部分から小さい部分へと段階的に集束イオンビームBを照射して、この型材2の表面を加工した場合には、各段階での加工面の周縁部が段状のまま残ってしまうから、この型材2の表面を滑らかに加工できない。
なお、上記第1の実施の形態では、型材2の底面側2bを、ガラス状カーボンに気相成長炭素繊維が15体積%含有された高含有領域4としたが、図16および図17に示す第2の実施の形態のように、この型材2の底面側2bを、ガラス状カーボンに気相成長炭素繊維が3体積%含有された高含有領域4とすることもできる。
さらに、図18および図19に示す第3の実施の形態のように、この型材2の表面側2aの単層3以外の部分を、ガラス状カーボンに気相成長炭素繊維が15体積%含有された高含有領域4として、この型材2の気相成長炭素繊維の含有率を表面側2aに向けて段階的に小さくすることもできる。この場合も、気相成長炭素繊維の含有率の相違による型材2の単層3の剥がれを防止できる。
このとき、図20および図21に示す第4の実施の形態のように、この型材2の表面側2aの単層3以外の部分を、ガラス状カーボンに気相成長炭素繊維が3体積%含有された高含有領域4としてもよい。ここで、型材2を単層3と高含有領域4との2層としたが、気相成長炭素繊維の含有率を表面側2aに向けて段階的に少なく変化させて3層や5層などの多層の型材2としてもよい。そして、この型材2の気相成長炭素繊維の含有率の変化は、連続的であっても不連続的であってもよい。
また、上記各実施の形態で、型材2の気相成長炭素繊維の含有量を表面側2aに向けて段階的に小さくさせるために、この型材2の基礎となる底面側2bの図示しない基材の表面に気相成長炭素繊維の含有量が段階的に異なる複数の塗料を刷毛などにて塗布した後、これら塗料が塗布された基材を焼成して型材2とすることもできる。
さらに、型材2の単層3以外の部分をより大きくできれば、この型材2により多くの気相成長炭素繊維が含有され、この型材2をより高強度にできる。そこで、図22に示す第5の実施の形態のように、集束イオンビームBで加工した後の型材2の加工表面に沿ってガラス状カーボンの単層3が残るように、この単層3を設ければよいが、集束イオンビーム加工前に断面凹弧状の単層3を設けることは容易ではないから、集束イオンビームBで加工して切削された後の型材2の表面全体が単層3で覆われるように、集束イオンビーム加工前の型材2の表面側2aにある程度の厚さの単層3を設けるとよい。
また、型材2の表面を切削あるいはビーム加工である程度加工した後、この加工面を集束イオンビームBでさらに加工する際の表面側2aの層の気相成長炭素繊維の含有量を、底面側2bの気相成長炭素繊維の含有量よりも小さくさせても、同様の作用効果を奏することができるとともに、この型材2の加工時間を短縮できる。
さらに、照射位置および照射強度のそれぞれが固定された集束イオンビームBで型材2の表面を加工したが、この型材2を加工する際に、集束イオンビームBの照射位置からこの集束イオンビームBが照射される型材2の表面までの距離の相違に対応させて、この集束イオンビームBの照射強度を変化させることもできる。
具体的な構成としては、予め作成した型材2の加工データであるCADデータ11に基づいて、このCADデータ11を確認しながら集束イオンビームBの照射強度をその都度変化させたり、集束イオンビームBにて任意の型材2を加工した結果であるアフターデータとしてテーブルデータを作成し、このテーブルデータに基づいて、新たな型材2を加工する際の集束イオンビームBの照射強度を変化させたり、集束イオンビームBの照射強度をモニタリングして測定しながら、この集束イオンビームBの照射強度を適宜変化させたりする。
この結果、集束イオンビームBの照射位置から、この集束イオンビームBが照射される型材2の表面までの距離が相違する場合であっても、この型材2の加工面である凹部13の内周面を均一かつ面一に加工できる。したがって、この型材2から製造されるプレス型1の表面であるプレス面を滑らかに成形でき、このプレス面の平滑度を向上できるため、このプレス型1の微細な加工をより容易にできる。
さらに、マイクロレンズなどの光学デバイス以外の被成形物として、例えばマイクロタスや、マイクロチャネル、飲み込んで人体の内部に入れた状態で外部からの電磁波によって操作するカプセル型の内視鏡のレンズなどであっても、対応させて用いることができる。
ここで、上述したプレス型1の製造方法は、いわゆるミクロン(μm)サイズのレンズの成形型の加工に適しているが、いわゆるミリ(mm)サイズの比較的大きなレンズの型材2の加工には適していない。ところが、この場合には、型材2の表面をレーザや切削などにてある程度加工してから、この型材2の加工面に集束イオンビームBを照射して、この型材2の加工面を加工することによって、大きなレンズ用の型材2であっても対応させて用いることができる。
さらに、全体をガラス状カーボンと気相成長炭素繊維との複合材にて成形したプレス型1について説明したが、少なくともこのプレス型1にてプレス成形する際にガラス材料が接触する表面、すなわち内表面のみが複合材にて成形されていれば、上記一実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。例えば、シリコンカーバイトや酸化アルミナなどのセラミック材あるいはタングステンカーバイトなどから構成される基体に対し、ガラス状カーボンと気相成長炭素繊維との複合材を積層し、この積層した部分にプレス面を形成してもよい。なお、融解させたガラス材料あるいは軟化状態にしたガラス材料であってもプレス型1を対応させることにより用いることができる。
次に、上記各実施の形態の成形型の複合材の混合比の相違による特性変化について説明する。
まず、2000℃で焼成したガラス状カーボンであるGC20に対する気相成長炭素繊維のフィラー含有量であるCNF含有量としての混合比を変化させて、この気相成長炭素繊維が0.5体積%(vol%)、1体積%、1.5体積%、12体積%および15体積%混合された複合材の型材2であるVGCF0.5%、VGCF1.0%、VGCF1.5%、VGCF12%、VGCF15%のそれぞれを製造する。
また、GC20に対するCNFであるカップ積層型としてのカーボンナノファイバであるカップスタック型炭素繊維(Cup Stack Carbon Fibers:CSCF)の混合比を変化させて、このカップスタック型炭素繊維が1体積%、2体積%、3体積%および12体積%混合された複合材の型材2であるCSCF1%、CSCF2%、CSCF3%、CSCF12%のそれぞれを製造する。さらに、比較例として、GC20のみの型材2も製造する。
この状態で、これら型材2の表面に対して集束イオンビームBを照射して、これら型材2の表面をスパッタ加工した。このとき、この集束イオンビームBの照射のためのFIB装置としては、SMI2050(セイコーインスツルメンツ株式会社製)を用いた。またこのとき、このFIB装置のイオン源を液体ガリウムとし、このFIB装置にて照射させる集束イオンビームBのビーム径を110nmとするとともに、この集束イオンビームBの加速電圧を30kVとし、試料電流を1318pAとし、加工時間を15分とし、加工形状を10×10×深さ(μm)とした。
この結果、図23に示すように、型材2の表面に対してチルト角を30゜傾斜させて、これら型材2の加工面の表面を撮影したところ、VGCFおよびCSCFそれぞれの混合比が小さいほど、これら型材2の加工面の平滑度が向上したため、これら型材2の加工面を滑らかにできる。
このとき、図24に示すように、各型材2の表面である加工表面(10μm×10μm)中の3μm×3μmの測定範囲の粗さ(Ra)を、測定装置として走査型プローブ顕微鏡(SPM−9500シリーズ:株式会社島津製作所製)を用いて測定した平均値を算出したところ、VGCFおよびCSCFそれぞれの混合比が小さいほど、これら型材2の加工表面のRa値が小さいため、これら型材2の加工表面を滑らかにできる。
さらに、最大荷重を0.25Nとし負荷速度を4.8×10−3N/secとした圧子圧入法にて各型材2のビッカース硬度を測定したところ、図25および図26に示すように、気相成長炭素繊維の混合比が1.5%程度であり、カップスタック型炭素繊維の混合比が2%程度の場合に、ビッカース硬度がそれぞれ最も大きくなった。
また、最大荷重を0.25Nとし繰り返し回数を3回とし負荷速度を4.8×10−3N/secとした繰り返し圧子圧入法にて各型材2のヤング率を測定したところ、図25および図27に示すように、気相成長炭素繊維の混合比が1.5%程度であり、カップスタック型炭素繊維の混合比が2%程度の場合に、ヤング率(GPa)それぞれが最も大きくなった。
同様に、各型材2の熱伝導率をレーザーフラッシュ法にて測定したところ、図25および図28に示すように、気相成長炭素繊維の混合比が15%程度であり、カップスタック型炭素繊維の混合比が12%程度の場合に、熱伝導率(W/m・K)が最も大きくなった。すなわち、各型材2における気相成長炭素繊維あるいはカップスタック型炭素繊維の混合比が大きければ大きいほど熱伝導率が向上すると考えられる。特に、各型材2に対して気相成長炭素繊維を15体積%混合させた場合には、チタン(約20W/m・K)に匹敵する程、熱伝導率が向上した。
さらに、集束イオンビームBの照射による型材2表面の加工深さを検討したところ、図29および図30に示すように、気相成長炭素繊維の混合比が1.5%程度であり、カップスタック型炭素繊維の混合比が2%程度の場合に、集束イオンビームBの照射による型材2表面の加工深さが最も深くなった。
本発明の第1の実施の形態の成形型に用いる型材料を示す説明断面図である。 同上成形型に用いる型材料を示す説明斜視図である。 同上成形型を示す説明断面図である。 同上成形型の製造方法に用いるCADデータを示す説明図である。 同上CADデータを示す説明図である。 同上成形型の製造方法に用いるステップ1でのBMPデータを示す説明図である。 同上ステップ1でのBMPデータに基づいて型材料に集束イオンビームを照射する状態を示す説明断面図である。 同上成形型の製造方法に用いるステップ10でのBMPデータを示す説明図である。 同上ステップ10でのBMPデータに基づいて型材料に集束イオンビームを照射する状態を示す説明断面図である。 同上成形型の製造方法に用いるステップ20でのBMPデータを示す説明図である。 同上ステップ20でのBMPデータに基づいて型材料に集束イオンビームを照射する状態を示す説明断面図である。 同上成形型の製造方法に用いるステップ30でのBMPデータを示す説明図である。 同上ステップ30でのBMPデータに基づいて型材料に集束イオンビームを照射する状態を示す説明断面図である。 同上成形型の製造方法に用いるステップ40でのBMPデータを示す説明図である。 同上ステップ40でのBMPデータに基づいて型材料に集束イオンビームを照射した状態を示す説明断面図である。 本発明の成形型の第2の実施の形態に用いる型材料を示す説明断面図である。 同上成形型を示す説明断面図である。 本発明の成形型の第3の実施の形態に用いる型材料を示す説明断面図である。 同上成形型を示す説明断面図である。 本発明の成形型の第4の実施の形態に用いる型材料を示す説明断面図である。 同上成形型を示す説明断面図である。 本発明の成形型の第5の実施の形態に用いる型材料を示す説明断面図である。 本発明の実施例で気相成長炭素繊維あるいはカップスタック型炭素繊維の混合比を変化させた場合の成形型の表面を示す写真である。 本発明の実施例で気相成長炭素繊維あるいはカップスタック型炭素繊維の混合比を変化させた場合の成形型の表面の粗さを示す表である。 同上成形型の測定結果を示す表である。 同上成形型のビッカース硬度を示すグラフである。 同上成形型のヤング率を示すグラフである。 同上成形型の熱伝導率を示すグラフである。 同上成形型の加工深さを示す表である。 同上成形型の加工深さを示すグラフである。
1 成形型としてのプレス型
2a 表面側
3 単層

Claims (6)

  1. 被成形物を成形する成形型であって、
    少なくともガラス状カーボンおよびカーボンナノファイバを含有し、
    表面側のカーボンナノファイバの含有率が、この表面側以外の部分のカーボンナノファイバの含有率よりも小さく、かつ、カーボンナノファイバの含有率が表面側に向けて段階的に小さい
    ことを特徴とした成形型。
  2. 被成形物を成形する成形型であって、
    少なくともガラス状カーボンおよびカーボンナノファイバを含有し、
    表面側のカーボンナノファイバの含有率が、この表面側以外の部分のカーボンナノファイバの含有率よりも小さく、かつ、カーボンナノファイバの含有率が表面側に向けて連続的に小さい
    ことを特徴とした成形型。
  3. 少なくとも表面側の加工される部分のカーボンナノファイバの含有率が、この表面側以外の部分のカーボンナノファイバの含有率よりも小さい
    ことを特徴とした請求項1または2記載の成形型。
  4. カーボンナノファイバは、気相成長炭素繊維である
    ことを特徴とした請求項1ないしいずれか記載の成形型。
  5. カーボンナノファイバは、カップスタック型炭素繊維である
    ことを特徴とした請求項1ないしいずれか記載の成形型。
  6. 表面側は、ガラス状カーボンの単層である
    ことを特徴とした請求項1ないしいずれか記載の成形型。
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