JP4430772B2 - 鉛蓄電池、鉛蓄電池用添加剤及びそれらの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は鉛蓄電池、鉛蓄電池用添加剤及びそれらの製造方法に係り、特に、正極板と負極板とをセパレータを介して積層した鉛蓄電池であって、負極板、又は、負極板及びセパレータにリグニンを添加した鉛蓄電池、該鉛蓄電池用添加剤及びそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、鉛蓄電池には負極の活物質粒子(海綿状金属鉛)を微細化し反応表面積を増大させることで容量を発現させる物質としてリグニン添加剤が用いられている。現在、鉛蓄電池に用いられているリグニンは、製紙工業において、木材(リグノセルロース)からパルプ(セルロース)を得る工程での副産物として得ることができる。製紙工業では、木材を破砕・粉砕したチップをアルカリ蒸解法(クラフト蒸解法)又はサルファイト蒸解法により、高温・高圧の条件で処理して、パルプ(セルロース繊維)とリグニンとに分離している。アルカリ蒸解法で得られたリグニンをクラフトリグニン、サルファイト蒸解法で得られたリグニンをリグニンスルホン酸と呼び、これらの工業リグニンが活物質膨張剤(エキスパンダ)として鉛蓄電池の負極活物質に添加され、又は、更にセパレータにも含有されて用いられている。
【0003】
工業リグニンに代わるものとして、過去、スルホン酸系界面活性剤、β−ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、高分子系界面活性剤等、種々の有機化合物が検討されてきたが、容量発現性や効果の持続性の点で上述した工業リグニンに勝るものが無く、工業リグニンに代わるものは現在に至るまで見いだされていない。このため、工業リグニンが、過去30年以上に亘って活物質膨張剤として用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
天然状態でのリグニンは木材を形作っている細胞と細胞の間に3次元の網目状に存在して細胞同士を繋ぐバインダの働きをしている。上述の製紙工業における蒸解プロセスは、高温・高圧の条件下で、天然リグニンの3次元構造を破壊することによって、リグニンとセルロースとを分離している。この結果、リグニンはランダムに分解を受けるとともに、分子レベルで高度な変性(酸化、分子内転移、自己縮合)を受けている。このリグニンを鉛蓄電池に用いた場合に、リグニン分子は高度な変性を受けているので、分子のランダム縮合による官能基の不活性化や安定性が損なわれていて本来持っている性能を発揮できず、更に、分子内に酸に対する活性官能基を多く含むので、充放電又は保持中に電解液の硫酸イオンと反応して性能劣化が生じて、極板(電池)性能が低下する、という問題点がある。
【0005】
また、最近では、電池を使用する機器の小型化が進み、鉛蓄電池は高率放電されることが多くなり、従来の使われ方と比べて使用可能期間が短くなっている。特に、高温環境下で使用された場合には、高率放電によって使用可能期間は更に短くなる。
【0006】
従って、鉛蓄電池の高率放電用途での性能と寿命は負極板の性能に大きく影響されるので、更なる高容量化及び長寿命化のニーズに応えるためには、これら工業リグニンに優る新規添加剤の開発が必要になっている。
【0007】
本発明は上記事案に鑑み、高率放電で使用されても高容量で長寿命な鉛蓄電池、エキスパンダとして工業リグニンより優れた特性を有する鉛蓄電池用添加剤及びそれらの製造方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の第1態様は、正極板と負極板とをセパレータを介して積層した鉛蓄電池であって、前記負極板、又は、前記負極板及びセパレータにリグニンを添加した鉛蓄電池において、前記リグニンは、リグノセルロース素材から蒸解プロセスを経て得られたリグニンにフェノール誘導体を添加し、酸を添加して作製したものであり、前記フェノール誘導体は、該フェノール誘導体の全部又は一部にメトキシ基を有するものが用いられたことを特徴とする。
【0009】
クラフト蒸解法やサルファイト蒸解法で単離された工業リグニンは、リグニン分子のランダム解重合や自己縮合のために、毬藻状に分子が絡み合った分子構造を採る。この分子構造に固有して、エキスパンダとして有効に作用するフェノール基又はメトキシ基は、高分子表面に存在する部分のみが負極に対して有効であり、分子内部に存在する官能基は有効に機能できなくなっている。従って、高分子表面の官能基が電池の寿命と共に失活することで、分子内部には有効な官能基を持っているにもかかわらず、エキスパンダとしての効果が失われて時間の進行と共に電池性能が低下する。本態様では、リグノセルロース素材から蒸解プロセスを経て得られたリグニンにフェノール誘導体を添加し、酸を添加して作製したリグニンを負極板、又は、負極板及びセパレータに添加するので、自己縮合によって毬藻状に絡み合った高分子体がフェノール誘導体の攻撃を受けて解離し、直鎖状の高分子に構造変換され、リグニン分子中の官能基が負極活物質粒子表面へ有効に作用できるようになると共に、フェノール誘導体として、メトキシ基を有するフェノール誘導体を用いることにより、リグニン高分子中のメトキシ基を更に増やすことができることから、エキスパンダとしての効果をより高めることができるので、効果の持続性も向上させることができる。従って、本態様によれば、リグニン分子中の官能基が有効に負極活物質表面に作用するので、高率放電で使用されても高容量で長寿命な鉛蓄電池を実現することができる。
【0010】
この場合において、酸として、60質量%以上の濃度を有する硫酸を用いると、上述したリグニンの改質反応速度を早めることができる。
【0011】
本発明の第2態様は、負極板、又は、負極板及びセパレータに添加される鉛蓄電池用添加剤を、リグノセルロース素材から蒸解プロセスを経て得られたリグニンにフェノール誘導体を添加し、酸を添加して作製したリグニンとしたものであり、フェノール誘導体には、該フェノール誘導体の全部又は一部にメトキシ基を有するものが用いられる。また、本発明の第3の態様は、正極板と負極板とをセパレータを介して積層した鉛蓄電池であって、前記負極板、又は、前記負極板及びセパレータにリグニンを添加した鉛蓄電池の製造方法において、前記リグニンは、リグノセルロース素材を蒸解してリグニンを得る蒸解ステップと、前記蒸解ステップで得られたリグニンにフェノール誘導体を添加する誘導体添加ステップと、前記誘導体添加ステップでフェノール誘導体が添加されたリグニンに酸を添加する酸添加ステップとを含んで作製されたものであり、前記フェノール誘導体に、該フェノール誘導体の全部又は一部にメトキシ基を有するものが用いられたことを特徴とする。第3の態様において、フェノール誘導体は、2−メトキシフェノール又は2,6−ジメトキシフェノールであり、酸添加ステップで添加される酸に60質量%以上の濃度を有する硫酸が用いられることが好ましい。そして、本発明の第4の態様は、負極板、又は、前記負極板及びセパレータに添加される鉛蓄電池用添加剤の製造方法において、リグノセルロース素材を蒸解してリグニンを得る蒸解ステップと、前記蒸解ステップで得られたリグニンにフェノール誘導体を添加する誘導体添加ステップと、前記誘導体添加ステップでフェノール誘導体が添加されたリグニンに酸を添加する酸添加ステップとを含み、前記フェノール誘導体に、該フェノール誘導体の全部又は一部にメトキシ基を有するものが用いられたことを特徴とする。第4の態様において、フェノール誘導体は、2−メトキシフェノール又は2,6−ジメトキシフェノールであり、酸添加ステップで添加される酸に60質量%以上の濃度を有する硫酸が用いられることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明を密閉型鉛蓄電池に適用した第1の実施の形態について説明する。まず、本実施形態の密閉型鉛蓄電池の作製手順について、リグニンの作製、負極板の作製、電池の製造の順に説明する。なお、本実施形態以下の実施形態では、正極板に従来の(公知の)正極板を使用したので、説明を簡潔にするために、正極作製手順についてはその説明を省略する。
【0013】
<リグニン>
クラフトリグニン又はリグニンスルホン酸と、詳細を後述するように、フェノール誘導体としての、有機溶媒のアセトンに溶解させたメトキシフェノール、ジメトキシフェノール若しくはジメトキシフェノールとジメチルフェノールとの混合物とを十分混合させた後に、濃度が60質量%以上の硫酸を加えて、約25°Cの雰囲気温度下で後述する所定時間、激しく攪拌して十分に反応させた後、所定溶液を加えてリグニンを沈殿させるか又は過剰な水を投入して不溶解なリグニンを回収し、得られたリグニンを乾燥させた(以下、このリグニンを改質リグニンという。)。なお、本実施形態では、クラフトリグニンに米国Westvaco社の商品名IndulineCを、リグニンスルホン酸(サルファイトリグニン)に日本製紙株式会社製の商品名バニレックスNを用いた。
【0014】
<負極板>
酸化鉛(PbO)を主成分とする鉛粉に、上述した改質リグニンを0.2質量%及び硫酸バリウムを1質量%添加して混合した後、鉛粉100質量部に対して比重1.26の希硫酸10質量部と、水7質量部と、を加えて練合し、負極用のペースト状活物質を作製した。このペースト状活物質を、69mm×44mm×2.4mmサイズの鉛−カルシウム−錫合金からなる集電体格子に充填して、温度45°C、湿度98RH%の雰囲気下で24時間熟成させ、60°Cの雰囲気温度で16時間乾燥させて未化板とした。この未化板を、比重1.050の希硫酸中で24時間化成して負極板とした(以下、リグニン含有負極板という。)。
【0015】
<電池の製造>
リグニン含有負極板4枚と従来の手順で作製した正極板3枚とを、セパレータ(リグニンを含有しない。)を介して積層して極板群を組み立て、該極板群をABS製の電槽に組込んで、比重1.31(20°C)の電解液(希硫酸)を56ml電槽内に注入した後、密閉して7Ah−2Vの密閉形鉛蓄電池Aを完成させた。
【0016】
(第2実施形態)
次に、本発明を密閉型鉛蓄電池に適用した第2の実施の形態について説明する。本実施形態は改質リグニンを負極板及びセパレータに含有させたものである。なお、本実施形態において上述した第1実施形態と同一の部材は同一の部材名称を使用してその説明を省略し、異なる箇所のみ説明する。
【0017】
<リグニン含有セパレータ>
アセトンに第1実施形態で説明した改質リグニンを後述する所定質量%溶解し、この溶液をガラス繊維製のマットに浸した後、該マットを所定温度雰囲気で乾燥させてアセトンを除去し、改質リグニンを含有するセパレータ(以下、リグニン含有セパレータという。)を作製した。
【0018】
<電池の製造>
第1実施形態に示したリグニン含有負極板4枚と正極板3枚とを、リグニン含有セパレータを介して積層して極板群を組み立て、該極板群をABS製の電槽に組込んで、比重1.31(20°C)の電解液(希硫酸)を56ml電槽内に注入した後、密閉して7Ah−2Vの密閉形鉛蓄電池Bを完成させた。
【0019】
(実施例)
次に、上述した改質リグニンについて詳述すると共に、以上の実施形態に従って種々異なるフェノール誘導体を用いて作製した改質リグニンを添加した実施例の電池について説明する。また、実施例の電池と比較のために作製した比較例の電池についても併記する。なお、実施例1および実施例5は参考として示したものであり、本発明の範囲に入るものではない。
【0020】
<実施例1>
下表1に示すように、実施例1では、フェノール誘導体として液体のクレゾールを用いて改質リグニンを作製した(以下、このリグニンをリグニン1と仮称する。)。すなわち、クラフトグリニン1g当たりクレゾールを10ml加え、クラフトリグニンと十分に混合した後、クラフトリグニン1gに対して濃度が70質量%の硫酸を20ml加えて、20分間、約25°Cの雰囲気で激しく攪拌して十分に反応させる。攪拌を停止すると硫酸溶液層とリグニン1を含むクレゾール溶液層とに速やかに分離される。このクレゾール溶液層に過剰のエチルエーテルを加えて、リグニン1を沈殿させた後に、乾燥させてリグニン1を得た。上述したように、このリグニン1を負極板に添加して、密閉形鉛蓄電池Aを完成させた(以下、実施例1の電池という。)。
【0021】
【表1】
【0022】
<実施例2>
表1に示すように、実施例2では、フェノール誘導体として固体の2−メトキシフェノールを用いて改質リグニンを作製した(以下、このリグニンをリグニン2と仮称する。)。すなわち、2−メトキシフェノール1gを、アセトン10mlに溶解させる。クラフトリグニン1g当たり2−メトキシフェノールの溶液を10ml加え、クラフトリグニンと2−メトキシフェノールとを十分に混合させた後、この混合物に濃度が70質量%の硫酸を20ml加えて、60分間、約25°Cの雰囲気で激しく攪拌して十分に反応させる。反応終了後、全反応溶液に過剰な水に投入して不溶解なリグニン2を回収した後、乾燥させてリグニン2を得た。上述したように、このリグニン2を負極板に添加して、密閉形鉛蓄電池Aを完成させた(以下、実施例2の電池という。)。
【0023】
<実施例3>
表1に示すように、実施例3では、フェノール誘導体として固体の2、6−ジメトキシフェノールを用いて改質リグニンを作製した(以下、このリグニンをリグニン3と仮称する。)。すなわち、2,6−ジメトキシフェノール1gを、アセトン10mlに溶解させる。クラフトリグニン1g当たり2,6−ジメトキシフェノールの溶液を10ml加え、クラフトリグニンと2,6−ジメトキシフェノールとを十分に混合させた後、この混合物に濃度が70質量%の硫酸を20ml加えて、60分間、約25°Cの雰囲気で激しく攪拌して十分に反応させる。反応終了後、全反応溶液に過剰な水に投入して不溶解なリグニン3を回収した後、乾燥させてリグニン3を得た。上述したように、このリグニン3を負極板に添加して、密閉形鉛蓄電池Aを完成させた(以下、実施例3の電池という。)。
【0024】
<実施例4>
表1に示すように、実施例4では、フェノール誘導体として固体の2、6−ジメトキシフェノールと2、6−ジメチルフェノールとのモル比で1:1のフェノール誘導体混合物を用いて改質リグニンを作製した(以下、このリグニンをリグニン4と仮称する。)。すなわち、フェノール誘導体混合物1gを、アセトン10mlに溶解させる。クラフトリグニン1g当たりフェノール誘導体混合物の溶液を10ml加え、クラフトリグニンとフェノール誘導体混合物とを十分に混合させた後、この混合物に濃度が70質量%の硫酸を20ml加えて、60分間、約25°Cの雰囲気で激しく攪拌して十分に反応させる。反応終了後、全反応溶液に過剰な水に投入して不溶解なリグニン4を回収した後、乾燥させてリグニン4を得た。上述したように、このリグニン4を負極板に添加して、密閉形鉛蓄電池Aを完成させた(以下、実施例4の電池という。)。
【0025】
<実施例5>
表1に示すように、実施例5では、上述した実施例1においてクラフトリグニンをリグニンスルホン酸に置き換えてリグニン5を作製し、上述したように、このリグニン5を負極板に添加して、密閉形鉛蓄電池Aを完成させた(以下、実施例5の電池という。)。
【0026】
<実施例6>
表1に示すように、実施例6では、上述した実施例2においてクラフトリグニンをリグニンスルホン酸に置き換えてリグニン6を作製し、上述したように、このリグニン6を負極板に添加して、密閉形鉛蓄電池Aを完成させた(以下、実施例6の電池という。)。
【0027】
<実施例7>
表1に示すように、実施例7では、上述した実施例3においてクラフトリグニンをリグニンスルホン酸に置き換えてリグニン7を作製し、上述したように、このリグニン7を負極板に添加して、密閉形鉛蓄電池Aを完成させた(以下、実施例7の電池という。)。
【0028】
<実施例8>
表1に示すように、実施例8では、上述した実施例4においてクラフトリグニンをリグニンスルホン酸に置き換えてリグニン8を作製し、上述したように、このリグニン8を負極板に添加して、密閉形鉛蓄電池Aを完成させた(以下、実施例8の電池という。)。
【0029】
<実施例9>
表1に示すように、実施例9では、アセトンに上述したリグニン8を1質量%溶解し、この溶液を厚さ1.8mmのガラス繊維製のマットに浸した後、該マットを60°Cで乾燥させアセトンを除去して、リグニン8を含有するリグニン含有セパレータを得た。また、負極板にはリグニン8を添加して、上述した密閉型鉛蓄電池Bを完成させた(以下、実施例9の電池という。)。
【0030】
<比較例1>
表1に示すように、比較例1では、上記実施例1〜4で負極板に添加したリグニン1〜4に代えて、上述したクラフトリグニンを(そのまま)負極板に添加して、上述した密閉型鉛蓄電池Aを完成させた(以下、比較例1の電池という。)。
【0031】
<比較例2>
表1に示すように、比較例2では、上記実施例5〜8で負極板に添加したリグニン5〜8に代えて、上述したリグニンスルホン酸を(そのまま)負極板に添加して、上述した密閉型鉛蓄電池Aを完成させた(以下、比較例2の電池という。)。
【0032】
(試験)
作製した実施例及び比較例の各電池について、以下の条件で初期放電時間及び加速試験後の放電時間を測定した:
(1)初期放電時間測定:21A放電(3CA相当、25°C、放電終止電圧:1.3V)して、初期の放電時間を測定した。
(2)加速試験後の放電時間測定:初期放電時間測定後、60°Cの恒温槽中で2.275Vの一定電圧でトリクル充電を行い、7ヶ月後に21A放電(25°C、放電終止電圧:1.3V)して放電時間を測定した。なお、60°Cでの加速試験による7ヶ月は、25°Cの温度環境下では約7年間の使用に相当する。
【0033】
(試験結果・評価)
下表2に、初期放電時間及び加速試験後の放電時間の測定結果を示す。
【0034】
【表2】
【0035】
表2に示すように、実施例1〜9の電池は、比較例1、2の電池より初期放電時間が長く高容量である。また、加速試験後の放電時間は、比較例1、2の電池より概ね2倍近くである。従って、リグニン1〜8を用いた実施例1〜9の電池は、高容量で高寿命であることがが分かる。
【0036】
また、表1及び表2に示すように、実施例1〜9の電池のうちでも、高容量、高寿命の点で、フェノール誘導体にメトキシ基を有するもの(実施例2、6)が好ましく、2個以上のメトキシ基を有するもの(実施例3、7)の方がより好ましく、部分的にメトキシ基を有するフェノール核を有するもの(実施例4、8)が更に好ましく、また更に、負極板の他にセパレータにも改質グリニンを添加(含有)した実施例9の電池が高容量、高寿命の点で最も好ましいことが判明した。
【0037】
従って、以上の実施形態の鉛蓄電池は、電池の性能、特に高率放電で使用される電池の容量と寿命を著しく改善することができる。また、活物質利用率が向上するので、従来と同一容量の電池を作る際には、従来の負極板と比べて活物質量を減らすことが可能であり、鉛の使用量を低減することができる。このことは、鉛電池の製造コストの低減や、環境に対する負荷低減にも有効であり、その工業的価値は極めて大きいものである。
【0038】
なお、以上の実施例では、硫酸濃度に70質量%を例示したが、硫酸濃度が60質量%以下ではリグニン1〜8の改質反応の速度が遅くなるので、硫酸濃度を60質量%以上とすることが好ましい。
【0039】
また、以上の実施形態では、各種フェノール誘導体の溶媒としてアセトンを用いた例を示したが、ジエチルエーテルなど他の有機溶媒を用いても同様の結果が得られた。
【0040】
そして、以上の実施形態では、密閉型鉛蓄電池について例示したが、本発明は鉛蓄電池の用途、形状等に限定されることなく上述した特許請求の範囲において種々の態様を採ることができる。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、リグニン分子中の官能基が有効に負極活物質表面に作用するので、高率放電で使用されても高容量で長寿命な鉛蓄電池を実現することができる、という効果を得ることができる。
Claims (8)
- 正極板と負極板とをセパレータを介して積層した鉛蓄電池であって、前記負極板、又は、前記負極板及びセパレータにリグニンを添加した鉛蓄電池において、前記リグニンは、リグノセルロース素材から蒸解プロセスを経て得られたリグニンにフェノール誘導体を添加し、酸を添加して作製したものであり、前記フェノール誘導体は、該フェノール誘導体の全部又は一部にメトキシ基を有するものが用いられたことを特徴とする鉛蓄電池。
- 前記フェノール誘導体は、2−メトキシフェノール又は2,6−ジメトキシフェノールであることを特徴とする請求項1に記載の鉛蓄電池
- 前記酸に60質量%以上の濃度を有する硫酸を用いることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鉛蓄電池。
- 負極板、又は、前記負極板及びセパレータに添加される鉛蓄電池用添加剤において、前記添加剤は、リグノセルロース素材から蒸解プロセスを経て得られたリグニンにフェノール誘導体を添加し、酸を添加して作製したリグニンであり、前記フェノール誘導体は、該フェノール誘導体の全部又は一部にメトキシ基を有するものが用いられたことを特徴とする鉛蓄電池用添加剤。
- 正極板と負極板とをセパレータを介して積層した鉛蓄電池であって、前記負極板、又は、前記負極板及びセパレータにリグニンを添加した鉛蓄電池の製造方法において、前記リグニンは、リグノセルロース素材を蒸解してリグニンを得る蒸解ステップと、前記蒸解ステップで得られたリグニンにフェノール誘導体を添加する誘導体添加ステップと、前記誘導体添加ステップでフェノール誘導体が添加されたリグニンに酸を添加する酸添加ステップとを含んで作製されたものであり、前記フェノール誘導体に、該フェノール誘導体の全部又は一部にメトキシ基を有するものが用いられたことを特徴とする鉛蓄電池の製造方法。
- 前記フェノール誘導体は、2−メトキシフェノール又は2,6−ジメトキシフェノールであり、前記酸添加ステップで添加される酸に60質量%以上の濃度を有する硫酸が用いられたことを特徴とする請求項5に記載の鉛蓄電池の製造方法。
- 負極板、又は、前記負極板及びセパレータに添加される鉛蓄電池用添加剤の製造方法において、リグノセルロース素材を蒸解してリグニンを得る蒸解ステップと、前記蒸解ステップで得られたリグニンにフェノール誘導体を添加する誘導体添加ステップと、前記誘導体添加ステップでフェノール誘導体が添加されたリグニンに酸を添加する酸添加ステップとを含み、前記フェノール誘導体に、該フェノール誘導体の全部又は一部にメトキシ基を有するものが用いられたことを特徴とする鉛蓄電池用添加剤の製造方法。
- 前記フェノール誘導体は、2−メトキシフェノール又は2,6−ジメトキシフェノールであり、前記酸添加ステップで添加される酸に60質量%以上の濃度を有する硫酸が用いられたことを特徴とする請求項7に記載の鉛蓄電池用添加剤の製造方法。
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