JP4429573B2 - 移動体への給電装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気機器のカバーや自動車のドアーのような移動体に追従して配線体が巻き取り、巻き戻しできる移動体への給電装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気機器や自動車の電気配線にフラットケーブルが用いられるようになってきている。図5(A)(B)に示すようにフラットケーブル1は、通常、平行に並設された銅やアルミニュウム等の帯状導体よりなるフラット導体2がポリエチレンテレフタレートの如きプラスチックのフラット絶縁被覆3で被覆された構造になっている。このようなフラットケーブル1は、その反発力を利用して、自動車のラゲッジドアやスライドドア等への給電用配線体として利用されている。
【0003】
即ち、図6に示すように、1枚のフラットケーブル1が収納ボックス4内に巻込まれており、収納口5から延出したフラットケーブル1の端末1aは、スライドドアのように左右に移動する図示しない移動体に固定されたランプ,モータ,制御機器といった給電機器に接続されている。一方、収納ボックス4内に巻き取られたフラットケーブル1の中心端末1bは、端末固定部6の接続部7で給電又は送信配線部と接続されている。
【0004】
移動体の移動に伴って、フラットケーブル1の端末1aが引っ張られた時には、フラットケーブル1は巻き戻されて収納口5から繰り出される。このようなフラットケーブル1の巻き戻し時や、巻取り時に、フラットケーブル1が最小巻き径以下にならないように、収納ボックス4内の中心にヘリカル状に強制ガイド8が設けられている。
【0005】
また、移動体が反対に収納ボックス4側に移動した時には、フラットケーブル1はその自己復元力によってゼンマイ状に巻き取られて、収納口5から収納ボックス4内に収納される。さらに、収納ボックス4内には、フラットケーブル1が円状に巻き戻るようにガイド部9が設けられている。
【0006】
また、従来の他の例では、図7に示すように、フラットケーブル1の引き出し長さがあまり必要でない場合には、例えば自動車のバックドア10のような回転移動する移動体に固定されたフラットケーブル1が、ローラ11,12に挟持されてボデイ13側に固定された収納ボックス14にその他端側が収納されている。バックドア10と反対側のフラットケーブル1は、端末固定部15に固定されて、電力又は信号の給電配線部と接続されている。ローラ11,12はそれぞれクロックスプリング16を内蔵させてローラユニット17内に配置されている。バックドア10の回転と共に引っ張られたフラットケーブル1は、ローラ11,12の回転によってクロックスプリング16を巻き戻し、バックドア10の回転による戻りと共にフラットケーブル1は、クロックスプリング16の巻き取りバネの力によって収納ボックス14内に引き込まれる仕組みとなっている。
【0007】
これらの構造で使用されるフラットケーブル1は、通常、0.15mm〜0.3 mm厚の並設された複数条の銅製のフラット導体2にフラット絶縁被覆3を被覆したものが用いられ、これらフラット導体2は数アンペア以上の電力用負荷への配線と数ミリアンペアの信号用配線としてそれぞれ用いられている。あるいは、1枚のフラットケーブル1に移動体に支持された負荷の種類と数に合わせて、電力用として0.15mm〜0.3 mm厚の複数のフラット導体2と、信号用として0.1 mm以下の厚さの複数のフラット導体2を並設したフラットケーブル1が用いられている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように1枚のフラットケーブル1が収納ボックス4,14に巻き取られている構造では、電力用、信号用と給電に必要な配線数だけのフラット導体2を並設したフラットケーブル1を用いなければならず、フラット導体2の数が多い場合にはフラットケーブル1の幅が広くなり、狭隘な場所での収納ボックス4,14の設置やフラットケーブル1の配線が困難になる問題点があった。また、1枚のフラットケーブル1に厚さ、幅の異なるフラット導体2を並設したフラットケーブル1を使用することは、コスト高になると共に、フラット導体2の厚みによってフラットケーブル1の曲げ部にかかる応力が増大するので、電力用の厚いフラット導体2が許容できる耐久曲げ回数に対応した最小巻き径しかフラットケーブル1の巻取り設計ができないという問題点があった。
【0009】
本発明の目的は、多心のフラット導体を必要とする移動体への給電にあっても、収納ボックスの幅やフラットケーブルの幅を広くすることなく、狭隘な場所でも移動体への給電ができる移動体への給電装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、移動体に支持された電気装置に接続されるフラットケーブルが、移動体の移動に追従して巻取り及び巻き戻しができるように収納ボックス内に巻き取られている移動体への給電装置を対象とする。本発明が対象とする給電装置においては、移動体に支持された電気装置に接続されるフラットケーブルの端末が端末固定部に固定されるとともに収納ボックス内にゼンマイ状に巻かれて収納され、移動体の移動に伴ってフラットケーブルが引っ張られたときにはフラットケーブルが収納ボックスから繰り出され、移動体が収納ボックス側に移動したときにはフラットケーブルがその自己復元力により収納ボックス内に収納されるように構成されている。
【0011】
本発明に係る移動体への給電装置では、フラットケーブルとして、信号供給用フラットケーブルとこの信号供給用フラットケーブルよりもフラット導体の厚みが厚い電力供給用フラットケーブルとの2つの独立のフラットケーブルが設けられて、これらのフラットケーブルが、電力供給用フラットケーブルを外側にして互いに固定されることなく重ね巻きされている。
【0012】
このように電力供給用フラットケーブルと信号供給用フラットケーブルとを設けて、これらのフラットケーブルを重ね巻きすると、多心のフラット導体を必要とする移動体への給電にあっても、収納ボックスの幅やフラットケーブルの幅を広くすることなく、狭隘な場所でも移動体への給電を行うことができる。
【0013】
フラットケーブルはフラット導体の厚さによってフラットケーブルの巻取り、巻き戻し耐久回数が異なる性質があるが、信号供給用フラットケーブルのフラット導体よりもフラット導体の厚さが厚く、曲げ応力に弱い電力供給用フラットケーブルを巻取り半径の大きい外側に配置すると、巻取り、巻き戻しの信頼性を向上させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1及び図2は本発明に係る移動体への給電装置の実施の形態の一例を示したもので、図1は本例の移動体への給電装置の横断面図、図2は図1に示す移動体への給電装置の巻取り中心部でのフラットケーブルと給電ハーネスとの接続部の斜視図である。なお、図6と対応する部分には、同一符号を付けて示している。
【0015】
本例の移動体への給電装置では、図1に示すように、フラットケーブルは電力供給用フラットケーブル1Aと信号供給用フラットケーブル1Bとに分けて構成されている。これら電力供給用フラットケーブル1Aと信号供給用フラットケーブル1Bとは、信号供給用フラットケーブル1Bを内側にし、電力供給用フラットケーブル1Aを外側にして互いに固定されることなく重ね巻きされている。
【0016】
これら電力供給用フラットケーブル1Aと信号供給用フラットケーブル1Bとの巻取り中心部では、図2に示すように、フラットケーブル1A,1Bの端末が端末固定部6を介して給電ハーネス18に接続されている。即ち、フラットケーブル1A,1Bの導体端末は、端末固定部6の内部の複数のL形バスバー19に接続されていて、収納ボックス4の外に突き出た端部6Aで、その内部のL形バスバー19の端部が給電ハーネス18のコネクタ20内の雌型端子に接続されている。
【0017】
ところで、このようなフラットケーブルを繰り返し巻取り、巻き戻しを行う移動体への給電装置においては、フラットケーブルの曲げ部に起こる応力とフラットケーブル及びフラット導体の厚さ並びに曲げ半径との関係は、次式で表わすことができる。
【0018】
σ=(t/2)E/[R+(t´/2)]
ここで、σ:曲げ部に起こる応力、t:フラット導体厚さ、t´:フラットケーブル総厚さ、E:フラット導体のヤング率、R:フラットケーブルを曲げる半径
この式から明らかなように、繰り返し曲げによってフラットケーブルにかかる応力σは、その曲げ半径を一定とした時に、フラットケーブルの厚さ、特にフラット導体の厚さが厚いほど大きくなり、フラットケーブルにかかる応力σを規制したときには、フラットケーブルの曲げ半径Rを大きくとる必要があることが判る。
【0019】
前記のような移動体への給電装置での実際の使用においては、一般に移動体の繰り返し運動回数に応じたフラットケーブルの繰り返し巻き曲げ耐久回数が使用条件として求められる。
【0020】
従って、要求される曲げ耐久回数を満足するための最小曲げ半径で設計されたフラットケーブル巻取り機構が必要となる。
【0021】
図3は、図4の試験方法によって求められた繰り返し曲げ半径に対する摺動屈曲回数の関係を表わしたものである。電力供給用フラットケーブル1Aは、フラット導体の厚さ0.25mm,幅2.8 mm、フラット絶縁被覆の厚さ0.05mm、フラット絶縁被覆をフラット導体を間にして相互に貼り合わせる接着剤の厚さ0.04mmの寸法のもの、信号供給用フラットケーブル1Bは、フラット導体の厚さ0.1 mm,幅2.5 mm、フラット絶縁被覆の厚さ0.05mm、接着剤の厚さ0.04mmの寸法のものを用いた結果である。この結果は、前述の曲げ部に起こる応力式から明らかであって、例えば、要求屈曲回数が50万回以上を求められた場合には、信号供給用フラットケーブル1Bの最小曲げ半径は、約12mm以上でもよいが、電力供給用フラットケーブル1Aでは約20mm以上の曲げ半径を必要とすることになる。この図3における横軸の摺動屈曲回数は、対数で目盛ってある。
【0022】
この試験は、図4に示すような側壁W1 ,W2 間に半径Rの曲率でフラットケーブル1を位置決めし、側壁W1 ,W2 のどちらかに沿ったフラットケーブル1を側壁W1 または側壁W2 に沿って上下に移動させ、フラットケーブル1に曲げ半径Rの繰り返し曲げ応力を発生させ、フラット導体が破断した時の屈曲回数を測定したものである。
【0023】
以上のように、フラット導体の厚みが厚い電力供給用フラットケーブル1Aは、フラット導体の厚みが薄い信号供給用フラットケーブル1Bと同様な曲率で繰り返し曲げを与えることはできないが、本発明のように2枚重ねたフラットケーブル1A,1Bの巻き始めの曲率半径は、電力供給用フラットケーブル1Aの最小曲げ半径に合わせて設計しても、曲げ応力に弱い電力供給用フラットケーブル1Aを、より小さい曲げ半径で曲げることができる信号供給用フラットケーブル1Bより外側に巻くことで、実際には信号供給用フラットケーブル1Bに比べ、電力供給用フラットケーブル1Aは常に信号供給用フラットケーブル1Bの巻き外周の外でかなり大きな曲げ半径で繰り返し曲げを受けることになり、電力供給用フラットケーブル1Aの限界屈曲回数に対する信頼性が大きく増加することになる。
【0024】
【発明の効果】
本発明に係る移動体への給電装置では、電力供給用フラットケーブルと信号供給用フラットフラットケーブルとの2つのフラットケーブルが設けられて、これらのフラットケーブルが互いに固定されることなく重ね巻きされているので、多心のフラット導体を必要とする移動体への給電にあっても、収納ボックスの幅やフラットケーブルの幅を広くすることなく、狭隘な場所でも移動体への給電を行うことができる。
【0025】
また、信号供給用フラットケーブルを内側に、電力供給用フラットケーブルを外側にして重ね巻きすると、信号供給用フラットケーブルに比べて繰り返し曲げ応力に弱い電力供給用フラットケーブルの曲げ耐久回数に対する信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る移動体への給電装置の実施の形態の一例を示した横断面図である。
【図2】 図1に示す移動体への給電装置の巻取り中心部でのフラットケーブルと給電ハーネスとの接続部の斜視図である。
【図3】 電力供給用フラットケーブルと信号供給用フラットケーブルの繰り返し曲げ半径に対する摺動屈曲回数の関係を表わした図である。
【図4】 図3の関係を得るためのフラットケーブル屈曲試験の説明図である。
【図5】 (A)はフラットケーブルの一例を示す平面図、(B)は(A)の横断面図である。
【図6】 従来の移動体への給電装置の一例の横断面図である。
【図7】 従来の移動体への給電装置の他の例の横断面図である。
【符号の説明】
1 フラットケーブル
1A 電力供給用フラットケーブル
1B 信号供給用フラットケーブル
2 フラット導体
3 フラット絶縁被覆
4 収納ボックス
5 収納口
6 端末固定部
7 接続部
8 強制ガイド
9 ガイド部
10 バックドア
11,12 ローラ
13 ボデイ
14 収納ボックス
15 端末固定部
16 クロックスプリング
17 ローラユニット
18 給電ハーネス
19 L形バスバー
20 コネクタ
Claims (1)
- 移動体に支持された電気装置に接続されるフラットケーブルの端末が端末固定部に固定されるとともに収納ボックス内にゼンマイ状に巻かれて収納され、前記移動体の移動に伴って前記フラットケーブルが引っ張られたときには前記フラットケーブルが前記収納ボックスから繰り出され、前記移動体が前記収納ボックス側に移動したときには前記フラットケーブルがその自己復元力により前記収納ボックス内に収納されるように構成された移動体への給電装置において、
前記フラットケーブルとして、信号供給用フラットケーブルと前記信号供給用フラットケーブルよりもフラット導体の厚みが厚い電力供給用フラットケーブルとの2つの独立のフラットケーブルが設けられて、これらのフラットケーブルが、前記電力供給用フラットケーブルを外側にして互いに固定されることなく重ね巻きされていることを特徴とする移動体への給電装置。
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